説明

アーク放電防止コネクタ

【課題】不完全嵌合状態のコネクタ同士が充電中に衝撃等で嵌合離脱したときい、端子間にアーク放電が発生しないコネクタを提供する。
【解決手段】パワー端子10T1と信号端子10T2を内蔵するコネクタ本体10Mと、レバー10Lと、レバー10Lを握ると嵌合方向に移動するハンドル10Hと、コネクタの嵌合状態でレバー10Lの戻りを阻止するリリースレバー11とを備えたコネクタ10において、リリースレバー11の先端に仮係止アーム11Bと本係止アーム11Aとを設け、半嵌合位置で仮係止アーム11Bと係合する仮係止片10Bと、本嵌合位置で本係止アーム11Aと係合する本係止片10Aとをハンドル10Hに設け、半嵌合位置でパワー端子10T1が相手側端子と接触しかつ信号端子10T2が前記相手側信号端子と非接触とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車の充電に用いられる給電コネクタに関し、給電側と受電側の両コネクタの嵌合作業が低挿入力で行われ、かつ半嵌合状態でパワー端子がオスメスで接触している状態から仮にパワー端子同士が離脱したとしても、離脱する際のアーク放電が起こらないようにするアーク放電防止コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体などに固定される受電側コネクタと嵌合される給電側コネクタで、レバーを備えた低挿入力の給電側コネクタは公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
〈特許文献1記載の給電コネクタの構成〉
図4は特許文献1記載の給電コネクタを示す縦断面図である。
図4において、給電側コネクタ100は、筒状ケース100Cと、筒状ケース100Cの前半部に摺動可能に装着され、後端をハンドル100Hに押圧されることでコイルバネの反発力に抗して前進し、内部に複数の端子を収容したコネクタ本体100Mと、筒状ケース100Cの後半部の横長孔に挿着したピン100P2で軸支されたハンドル100Hと、中間部が筒状ケース100C内でレバー軸100P1により枢着され、先端がハンドル100Hの軸孔と共に筒状ケース100Cの横長孔に挿着したピン100P2で軸支されたレバー100Lと、コネクタ本体100Mが相手側コネクタと嵌合した状態でレバー100Lの回動を阻止するリリースレバー101とを備えて成り、レバー100Lをハンドル100H側に握り込むとレバー軸100P1を中心にレバー100Lの作用側先端が反時計方向に回動してコネクタ本体100Mを相手側コネクタ方向に前進させ、相手側コネクタと嵌合させるものである。
嵌合が完了したとき、リリースレバー101の先端に形成された係止突部101Kが、図4(1)の拡大図で示すように、レバー100Lの作用部の先端に形成された係止段部100Kと係合して、レバー100Lはリリースレバー101によりロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−85926号公報
【0005】
〈特許文献1記載の給電コネクタの課題〉
給電コネクタ100を嵌合操作する際に、通常はレバー100Lを握り込むことで嵌合ができるようになっているが、レバー100Lを握ったとき相手側コネクタ200との嵌合操作中に両コネクタハウジング間で干渉摩擦が発生することがある。例えば、図4の丸A内に示すコネクタハウジング100C1と相手側のコネクタハウジング200C1との干渉摩擦や、丸B内に示すコネクタハウジング100C2と相手側のコネクタハウジング200C2との干渉摩擦などである。このような干渉摩擦が生じると、レバー100Lを握りきらない状態でレバー100Lが止まってしまう。レバー100Lを握りきると、リリースレバー101の先端の係止突部101Kは、図4(1)の拡大図で示すようにレバー100Lの係止段部100Kと係合状態になり、レバー100Lがロックされのであるが、レバー100Lを握りきらない状態でレバー100Lが止まってしまうと、図4(2)の拡大図で示すように、リリースレバー101の先端の係止突部101Kはレバー100Lの係止段部100Kと半係合状態となり、レバー100Lがロックされない。一方で、コネクタの端子100Tと相手側コネクタの端子200Tは互いに接続された状態(図4の丸C参照)であるので、充電が開始される。このため、何らかの衝撃が加わると、リリースレバー101の先端の係止突部101Kとレバー100Lの係止段部100Kとの半係合状態から係合が外れ、レバー10Lが元の位置に戻ってしまうことが起こりうる。そうすると、コネクタの端子100Tと相手側コネクタの端子200Tが充電状態から端子同士が外れてしまうので、外れる際に端子間にアーク放電が起こり、端子が損傷するおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アーク放電は、パワー端子同士が離間する際にまだ通電状態にある場合(信号端子が先に離間するが、制御部が通電を遮断する前)に生じるもので、レバー反力による不意の離脱時に一気にコネクタが離脱すると、信号端子離間からパワー端子離間までに時間がなく、この際にアーク放電が発生した。
本発明はこの点に鑑みてなされたもので、相手側コネクタとの嵌合操作中に両コネクタハウジング間で干渉摩擦が発生してレバーを握りきらない半嵌合状態で止まってしまうことがあり、かつその後、パワー端子同士が外れることが起きても、パワー端子にアーク放電が起こらないようにしたアーク放電防止コネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、(1)〜(3)の発明はアーク放電防止コネクタに係り、次のことを特徴としている。
(1) 筒状ケースと、前記筒状ケースの前半部に摺動可能に内装されてパワー端子と信号端子を内蔵するコネクタ本体と、前記筒状ケースの後半部に回動可能に装着されたレバーと、ハンドルと、前記レバーを握り込んで前記コネクタ本体が前記相手側コネクタと嵌合した状態で前記レバーの戻りを阻止するリリースレバーと、を備え、前記レバーに枢着され前記レバーを握ることでその回動操作により前記コネクタ本体が前記筒状ケース内を移動するアーク放電防止コネクタにおいて、前記リリースレバーの前記コネクタ本体の軸方向に延びる作用アームの先端に仮係止アームと、さらに前記仮係止アームの先端に本係止アームを設け、前記コネクタ本体の半嵌合位置で前記仮係止アームと係合する仮係止片と、前記コネクタ本体の本嵌合位置で前記本係止アームと係合する本係止片とを前記ハンドル又は前記コネクタ本体に設け、前記仮係止アームと前記仮係止片が係合した状態で、前記パワー端子が相手側コネクタのパワー端子と接触し、かつ前記信号端子が前記相手側コネクタの信号端子と非接触であること。
(2) 前記作用アームの先端に前記仮係止アームをピンを介して旋回可能に設け、さらに前記仮係止アームの先端に前記本係止アームをピンを介して旋回可能に設けたこと。
(3) 前記パワー端子が前記信号端子よりも前記相手側コネクタの端子と早く接触するように寸法をずらして設定したこと。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、上記(1)の発明によれば、本係止位置で不完全係合となった状態で何らかの衝撃が加わって不完全係合状態から係合が外れても、ハンドル又はコネクタ本体は本係止位置から後退して直近の仮係止位置でロックされ、この仮係止位置では、信号端子が離脱するが、パワー端子は依然として接触した状態であり、アーク放電は発生しない。そこで、この状態において信号端子の離脱を検出して充電回路がパワー端子への通電を停止することで安全な取り外しあるいは再度の嵌合を行うことができる。
上記(2)の発明によれば、作用アームの先端に仮係止アームをピンを介して旋回可能に設け、さらに仮係止アームの先端に本係止アームをピンを介して旋回可能に設けたので、仮係止アームと本係止アームの旋回運動が確実となる。
(3) パワー端子が信号端子よりも相手側コネクタの端子と早く接触するように寸法をずらして設定したことにより、パワー端子と信号端子の嵌合タイミングを容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(A)は本発明に係るアーク放電防止コネクタが非嵌合(初期)状態の正面図、図1(B)は図1(A)の丸で囲った部分の拡大図である。
【図2】図2(A)は本発明に係るアーク放電防止コネクタが仮嵌合状態の正面図、図2(B)は図2(A)のコネクタ本体近傍の拡大縦断面図、図2(C)(1)〜(3)は図2(B)の丸で囲った部分(1)〜(3)のそれぞれの拡大図である。
【図3】図3(A)は本発明に係るアーク放電防止コネクタが本嵌合状態の正面図、図3(B)は図3(A)のコネクタ本体近傍の拡大縦断面図、図3(C)(1)〜(3)は図3(B)の丸で囲った部分(1)〜(3)のそれぞれの拡大図、図3(C)(4)は、図3(C)(3)が完全係合状態を示す図であるのに対して、不完全係合状態を示す図である。
【図4】図4は引用文献1記載のハンドル付きコネクタを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈本発明に係るアーク放電防止コネクタ〉
次に、本発明に係るアーク放電防止コネクタについて図面に基づいて説明する。 図1および図2において、アーク放電防止コネクタ10は、自動車に搭載のバッテリの受電側コネクタと嵌合する給電側コネクタで、筒状ケース10Cとコネクタ本体10M(図2(A))とレバー10Lとハンドル10Hとリリースレバー11とを備えて成る。以下、筒状ケース10Cとコネクタ本体10Mとレバー10Lとハンドル10Hとリリースレバー11について説明する。
【0011】
〈筒状ケース10C〉
筒状ケース10Cは、その前半部にコネクタ本体10M(図2(A)参照)を摺動可能に内装し、その後半部の横長孔に挿着したピン10P2でハンドル10Hを軸支し、さらに、レバー10Lの中間部をレバー軸10P1により枢着している。
【0012】
〈コネクタ本体10M〉
コネクタ本体10M(図2(A)および(B))は内部に複数のパワー端子10T1(図2(C)(1))と複数の信号端子10T2(図2(C)(2))を収容して成り、筒状ケース10Cの前半部に摺動可能に内装されており、また、コネクタ本体10Mはコイルスプリング10S(図2(B))の反発力で常時後方(反嵌合方向)へ付勢されているが、コネクタ本体10Mの後端をハンドル10Hによってコイルスプリング10Sの反発力に抗して押圧することで筒状ケース10Cの中を嵌合方向へ前進する。
【0013】
〈レバー10L〉
レバー10Lはその中間部が筒状ケース10Cの後半部にレバー軸10P1(図1(A))により枢着され、その先端がハンドル10Hの軸孔と共に筒状ケース10Cの横長孔に挿着したピン10P2(図1(A)および(B))で軸支されている。
【0014】
〈ハンドル10H〉
ハンドル10Hは、くの字形状をした管状の長尺体で、内部には大小複数本の電線ケーブルW(図2(B))を挿通し、電線ケーブルWのそれぞれの先端はコネクタ本体10M内のパワー端子10T1(図2(C)(1))や信号端子10T2(図2(C)(2))に接続されている。
ハンドル10Hは筒状ケース10Cの後半部の横長孔に挿着したピン10P2(図1(A)および(B))でレバー10Lの先端部と共に筒状ケース10Cに軸支している。
したがって、レバー10Lをハンドル10H側に握り込むとレバー軸10P1を中心にレバー10Lの作用部10W(図1(B))の先端が図で反時計方向に回動して、ハンドル10Hが前進し、前進するハンドル10Hがコネクタ本体10Mの後端を押圧し、コネクタ本体10Mはコイルスプリング10Sの反発力に抗して筒状ケース10Cの中を前進し、相手側コネクタ(受電側コネクタ)と嵌合するようになる。
【0015】
〈本発明の特徴1:ハンドル10Hの本係止片10Aおよび仮係止片10B〉
ハンドル10Hの側面に本発明により本係止片10Aおよび仮係止片10Bが次のように設けられている。すなわち、後述するリリースレバー11(図1(B))の仮係止アーム11Bの仮係止爪BKおよび本係止アーム11Aの本係止爪AKがそれぞれ停止している状態において、三角形部材から成る仮係止片10Bおよび本係止片10Aがその仮係止爪BKおよび本係止爪AKとそれぞれ係合できるようにハンドル10Hの側面に設けられているのが特徴である。
【0016】
〈リリースレバー11〉
リリースレバー11(図1(B))は、レバー10Lを握り込むことでコネクタ本体10Mが相手側コネクタと嵌合状態となり、その後、レバー10Lの戻りを阻止するためのもので、コネクタ本体10Mの軸方向に延びる作用アーム11Xと筒状ケース10Cの後方外部に突出する操作アーム11Yと、両アームの中間から真下に延びるロックアーム11Zとにより略T字状に形成されて成り、これらのアームの中間部がハンドル10Hの上方において筒状ケース10Cに介装したピンにより回動自在に保持されている。
【0017】
《作用アーム11X》
作用アーム11Xには、本発明によりその先端に、旋回可能に仮係止アーム11Bが取り付けられ、さらに、この仮係止アーム11Bの先端に旋回可能に本係止アーム11Aが取り付けられている(これについては後述する)。
《操作アーム11Y》
操作アーム11Yは筒状ケース10Cの後方から外部に突出しており、操作アーム11Yを押し下げると、リリースレバー11の作用アーム11Xが旋回して、仮係止アーム11Bおよび本係止アーム11Aがハンドル10Hとのロックから解除される。
《ロックアーム11Z》
ロックアーム11Zは下端部にロック孔を有し、このロック孔と対向するプランジャとコイルスプリングを備えた電磁コイルが筒状ケース10C側に固定されている。そこで、給電側コネクタと受電側コネクタとの完全嵌合により電磁コイル励磁がされると、プランジャが伸びてロック孔内に進入し、リリースレバー11がロックされる。
また、充電終了と同時に電磁コイルが消磁されるとプランジャがコイルスプリングの弾発力により瞬間的に後退してロックが解除される。
したがって、給電中に誤ってリリースレバー11の操作アーム11Yを押し下げてロックを解除しようとしても、電磁コイルのプランジャによりレバーはロック状態に維持されているので、給電時の離脱は確実に防止される。
【0018】
〈本発明の特徴2:リリースレバーに本係止アーム11Aと仮係止アーム11B〉
前述したように、リリースレバー11の作用アーム11Xの先端には、ピン11P2(図1(B))を中心に旋回可能に仮係止アーム11Bが取り付けられ、さらに、この仮係止アーム11Bの先端には、ピン11P1(図1(B))を中心に旋回可能に本係止アーム11Aが取り付けられている。各本係止アーム11Aおよび仮係止アーム11Bは、それぞれの先端に下向きの本係止爪AK、仮係止爪BKを形成したのが特徴である。仮係止アーム11Bおよび本係止アーム11Aはケース1OCの内壁に設けたコイルスプリングにより図で下方に常時付勢されている。ハンドル10Hの側面に設けられた仮係止片10Bおよび本係止片10Aは、ハンドル10Hの前進に伴って、まず、仮係止片10Bが仮係止アーム11Bの仮係止爪BKと係合し、さらに前進すると本係止片10Aが本係止アーム11Aの本係止爪AKと係合するようになる。これらの動作は、レバー10Lをハンドル10H側に握り込む従来と同じワンアクションの通常動作でロックが可能であり、作用アーム11Xに本係止アーム11Aと仮係止アーム11Bを設けたことで特に作業性が悪化することはない。
【0019】
〈本発明の特徴3:パワー端子10T1と信号端子10T2のずらし設定〉
コネクタ本体10M内には、充電電流(大電流)の流れるパワー端子10T1(図2(C)(1))と、充電回路の制御をする制御信号等(小電流)の流れる信号端子10T2(図2(C)(2))とが存在しており、パワー端子10T1の相手側コネクタのパワー端子20T1(図2(C)(1))との接続と、信号端子10T2の相手側コネクタの信号端子20T2(図2(C)(2))との接続との間に、本発明によって時間差を設けるようにしたのが特徴である。
すなわち、初期状態(コネクタ同士が未嵌合)の場合はパワー端子10T1も信号端子10T2も当然未接続であるが、コネクタ同士が仮嵌合の場合は図2のようにパワー端子10T1が接続され(図2(C)(1))、信号端子10T2は未接続となるように(図2(C)(2))設定している。そして、コネクタ同士が本嵌合した場合は図3(C)(1)および(2)のようにパワー端子10T1も信号端子10T2も接続となる。
これらの設定は、コネクタ本体10M内でパワー端子10T1と信号端子10T2の位置を数mm程度ずらして、パワー端子10T1を信号端子10T2より数mm程度前進した位置に設定することで実現できる。
【0020】
〈本発明のコネクタの嵌合動作〉
次ぎに本発明のコネクタの嵌合動作について、図1に戻って説明する。
《給電コネクタが非嵌合(初期)のとき》
レバー10Lはまだ握られていないので、図1は非嵌合時(初期状態)のように、レバー10Lの先端は回動せず、ハンドル10Hは後退したままであり、したがってコネクタ本体10Mは筒状ケース10Cの中に収容されたままなので、まだ見えない(注:図2(A)では半嵌合なのでコネクタ本体10Mの先端が少し見えている。)。
したがってハンドル10Hの側面に設けられた仮係止片10Bおよび本係止片10Aは、リリースレバー11の本係止アーム11Aの本係止爪AKおよび仮係止アーム11Bの仮係止爪BKの後方にあり、それぞれ係合に至っていない。
【0021】
《給電コネクタが半嵌合のとき》
レバー10Lを握り込むと、図2の半嵌合状態となり、レバー10Lの先端が回動して、ハンドル10Hは前進し、コネクタ本体10Mの先端が筒状ケース10Cから少し露出する。このとき、ハンドル10Hの側面に設けられた仮係止片10Bが図2(C)(3)に示すようにリリースレバー11の仮係止アーム11Bの仮係止爪BKと係合する。この状態で、パワー端子10T1は図2(C)(1)に示すように相手側パワー端子20T1と接続し、信号端子10T2は図2(C)(2)に示すように未接続である。
【0022】
《給電コネクタが本嵌合のとき》
レバー10Lをさらに握り込むと、コネクタ同士は図3の本嵌合状態となり、レバー10Lの先端がさらに回動してハンドル10Hはさらに前進し、コネクタ本体10Mの先端が筒状ケース10Cから大きく露出して相手側コネクタと完全嵌合(本嵌合)する。
このとき、ハンドル10Hが前進するので、ハンドル10Hの仮係止片10Bがそれまで係合していた仮係止アーム11Bの仮係止爪BKから離れ、次ぎに本係止片10Aが、図3(A)および図3(C)(3)で示すように、本係止アーム11Aの本係止爪AKと係合するようになる。この状態で、パワー端子10T1は図3(C)(1)に示すように相手側パワー端子20T1とさらに深く接触し、信号端子10T2も図3(C)(2)に示すように相手側信号端子20T2の中に割って入り電気的に接続される。
【0023】
《本係止位置で不完全係合の場合にアーク放電が発生しない理由》
図3(C)(4)のように本係止位置で本係止アーム11Aと本係止片10Aとが不完全な係合をしている場合には、パワー端子同士も信号端子同士も接続しているのでパワー端子には充電電流が流れている。そして何らかの衝撃が加わると不完全係合ゆえ本係止アーム11Aと本係止片10Aと係合が外れることがあり、そうするとハンドル10Hはコイルスプリング10Sの付勢力により直ちに後退し、本発明により設けられた直近の係止片10Bが仮係止アーム11Bと係合してハンドル10Hの後退はストップして、仮係止状態となる。この仮係止位置では、信号端子10T2が離脱するが、パワー端子10T1は依然として接触した状態であり、アーク放電は発生しない。そこで、この状態において信号端子10T2の離脱を検出して充電回路がパワー端子10T1への通電を停止することで安全な取り外しあるいは再度の嵌合を行うことができる。
これに対して、従来装置にはこの仮係止状態がないので、レバー反力による不意の離脱時に一気にコネクタが離脱し、信号端子離間からパワー端子離間までに時間がなく、この際にアーク放電が生じてしまった。
【0024】
〈まとめ〉
以上のように、本発明によると、レバーを握ったとき相手側コネクタとの嵌合操作中に両コネクタハウジング間で干渉摩擦が発生して、本係止位置でレバーを握りきらない状態(不完全係合状態)でレバーが止まって充電が開始し、その後この状態で何らかの衝撃が加わって不完全係合状態から係合が外れてしまっても、ハンドルは本係止位置から後退して直近の仮係止位置でロックされ、この仮係止位置では、信号端子が離脱するが、パワー端子は依然として接触した状態であり、アーク放電は発生しない。そこで、この状態において信号端子の離脱を検出して充電回路がパワー端子への通電を停止することで安全な取り外しあるいは再度の嵌合を行うことができる。
なお、上記実施例ではハンドルはケース内を前後移動する構成のものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、ハンドルがケース内を前後移動しない構成のものであっても適用可能である。その場合は、本発明に係る仮係止片および本係止片はコネクタ本体に設ければよい。
【符号の説明】
【0025】
10:アーク放電防止コネクタ
10C:筒状ケース
10H:ハンドル
10L:レバー
10A:本係止片
10B:仮係止片
10M:コネクタ本体
10P1:レバー軸
10P2:ピン
10S:コイルスプリング
10T1:パワー端子
10T2:信号端子
10W:作用部
11:リリースレバー
11A:本係止アーム
11B:仮係止アーム
11X:作用アーム
11Y:操作アーム
11Z:ロックアーム
AK:本係止爪
BK:仮係止爪
W:電線ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケースと、前記筒状ケースの前半部に摺動可能に内装されてパワー端子と信号端子を内蔵するコネクタ本体と、前記筒状ケースの後半部に回動可能に装着されたレバーと、ハンドルと、前記レバーを握り込んで前記コネクタ本体が前記相手側コネクタと嵌合した状態で前記レバーの戻りを阻止するリリースレバーと、を備え、前記レバーに枢着され前記レバーを握ることでその回動操作により前記コネクタ本体が前記筒状ケース内を移動するアーク放電防止コネクタにおいて、
前記リリースレバーの前記コネクタ本体の軸方向に延びる作用アームの先端に仮係止アームと、さらに前記仮係止アームの先端に本係止アームを設け、
前記コネクタ本体の半嵌合位置で前記仮係止アームと係合する仮係止片と、前記コネクタ本体の本嵌合位置で前記本係止アームと係合する本係止片とを前記ハンドル又は前記コネクタ本体に設け、
前記仮係止アームと前記仮係止片が係合した状態で、前記パワー端子が相手側コネクタのパワー端子と接触し、かつ前記信号端子が前記相手側コネクタの信号端子と非接触であることを特徴とするアーク放電防止コネクタ。
【請求項2】
前記作用アームの先端に前記仮係止アームをピンを介して旋回可能に設け、さらに前記仮係止アームの先端に前記本係止アームをピンを介して旋回可能に設けたことを特徴とする請求項1記載のアーク放電防止コネクタ。
【請求項3】
前記パワー端子が前記信号端子よりも前記相手側コネクタの端子と早く接触するように寸法をずらして設定したことを特徴とする請求項2記載のアーク放電防止コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243638(P2012−243638A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113931(P2011−113931)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】