説明

アーク溶接装置

【課題】 被溶接物に搭載された耐電圧の低い電子部品を損傷しないようにしたアーク溶接装置を得る。
【解決手段】
溶接電源の一極に接続された導電性ブロック2の表面に密着し、導電性ブロック2と電気的に結合された導電性シート19と、溶接電源の多極である電極14との間でアーク起動を行い、任意のアーク起動回数毎に異なる表面でアークが起動されるように導電性シート19を導電性ブロック2上を移動させるように構成し、被溶接物の被溶接個所を保持するクランプ治具と導電性ブロック2とを電気的に切断された状態で導電性シート19の表面でアーク起動を行うと共に、アーク起動後に導電性ブロック2とクランプ治具とを電気的に接続し、電極14を移動して被溶接個所に対向させて被溶接個所の溶接を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被溶接物に搭載された耐電圧の低い電子部品を損傷しないようにしたアーク溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接は、電極と被溶接物の間にアークを発生させ、そのアーク熱で被溶接物を溶融接合する接合法で、抵抗溶接やはんだ付と比べて接合品質のばらつきが小さいという特徴がある。電極と被溶接物の間にアークを起動させるためには、電極と被溶接物の間に数kVから10数kVの高周波電圧や直流高電圧を印加する必要があり、それらを発生させるための回路が溶接電源に組み込まれている。
このアーク溶接を電子部品のリード、もしくは電子部品が接続されたブスバーに適用する場合、高周波電圧や直流高電圧が被溶接物の電気回路に廻り込んで電子部品が破壊されないよう、溶接電源に接続された導電性のクランプ治具で被溶接個所を1箇所づつ確実に掴んで、接合箇所と電源の片極を接続していた。
特許文献1は、複数の電子部品のリード端子と、これに接続される接続部をもつ導体を接続するに際し、リード端子と導体の接続部を整列させて溶接するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−134688号公報(第3〜5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶接電源に接続された導電性のクランプ治具で被溶接個所を1箇所づつ確実に掴んで、接合箇所と電源の片極を接続していた場合でも、回路構成によっては電磁誘導によって高周波電圧や直流高電圧が電気回路に廻り込む可能性があり、耐電圧の低い電子部品を含んだ電気回路ではアーク溶接を適用できなかった。特許文献1でも同様であった。
すなわち、アークスタート時の高周波電圧や直流高電圧が、電磁誘導やクランプの不具合で電気回路に廻り込み、耐電圧の低い電子部品が破壊されるという問題があった。
また、この電子部品破壊を恐れ、一点一点に電源極の接触工程とアーク起動を行うと、工数が多くなり被溶接箇所の多いものでは非常に生産性が悪いという問題もあった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、被溶接物に搭載された耐電圧の低い電子部品を損傷しないアーク溶接装置を得ることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わるアーク溶接装置においては、溶接電源の一極に接続された電極、溶接電源の他極に接続された第一の導電性ブロック、この第一の導電性ブロックの表面に密着し、第一の導電性ブロックと電気的に結合され、電極との間でアーク起動が行われると共に任意のアーク起動回数毎に異なる表面でアークが起動されるように第一の導電性ブロック上を移動される導電性シート、及び導電性材料により形成され、被溶接物の被溶接個所を保持するクランプ手段を備え、第一の導電性ブロックとクランプ手段を電気的に切断された状態で導電性シートの表面でアーク起動を行うと共に、アーク起動後に第一の導電性ブロックとクランプ手段とを電気的に接続し、電極を移動して被溶接個所に対向させ、被溶接個所の溶接を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、溶接電源の一極に接続された電極、溶接電源の他極に接続された第一の導電性ブロック、この第一の導電性ブロックの表面に密着し、第一の導電性ブロックと電気的に結合され、電極との間でアーク起動が行われると共に任意のアーク起動回数毎に異なる表面でアークが起動されるように第一の導電性ブロック上を移動される導電性シート、及び導電性材料により形成され、被溶接物の被溶接個所を保持するクランプ手段を備え、第一の導電性ブロックとクランプ手段を電気的に切断された状態で導電性シートの表面でアーク起動を行うと共に、アーク起動後に第一の導電性ブロックとクランプ手段とを電気的に接続し、電極を移動して被溶接個所に対向させ、被溶接個所の溶接を行うので、アーク起動を被溶接物と電気的に切断された状態で行うことにより、被溶接物に搭載された耐電圧の低い電子部品を損傷しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置を示す全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置のアーク起動を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置の被溶接部と導電性ブロックの電気的接続を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置の被溶接物の溶接を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置のクランプ治具と被溶接個所の関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるアーク溶接装置のクランプ治具を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるアーク溶接装置のくし歯形状のクランプ治具を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態3によるアーク溶接装置のガスノズルを示す図である。
【図9】この発明の実施の形態4によるアーク溶接装置の複数のクランプ治具間をつなぐ導電ブロックを示す図である。
【図10】この発明の実施の形態5によるアーク溶接装置の気密チャンバを示す図である。
【図11】この発明の実施の形態6によるアーク溶接装置の移動する導電性シートを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態7によるアーク溶接装置の電極と被溶接個所を囲う空間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置を示す全体構成図である。
図1において、被溶接物1と電気的に切断された導電性ブロック2(第一の導電性ブロック)が配置され、導電性ブロック2は溶接電源3の片極に電気接続されている。導電性ブロック2上に溶接電源3の片極(導電ブロック2と逆極)に接続された電極を有するトーチ4を配置し、アーク起動が行われる。導電性ブロック2はシリンダ5などにより可動し、可動先にはクランプ治具6(クランプ手段)によりクランプされた被溶接箇所が配置されている。クランプ治具6はシリンダ7などにより可動する。トーチ4はロボット8により可動される。また、溶接電源3及びガス供給源9からトーチ4に電源及びガスを供給するゲーブル10が設けられている。シリンダ5、7、クランプ治具6及びロボット8は、ベース11上に固定される。また、ロボット8、溶接電源3、シリンダ5、7は、制御装置12により制御される。
【0010】
図2は、この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置のアーク起動を示す図である。
図2において、1、2、4〜6は図1におけるものと同一のものである。被溶接物1の被溶接個所13がクランプ治具6に保持されている。トーチ4に電極14が設けられている。被溶接個所13は、電子部品のリードまたは電子部品を含み電気的回路を構成するブスバーである。 図3は、この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置の被溶接部と導電性ブロックの電気的接続を示す図である。
図3において、1、2、4〜6、13、14は図2におけるものと同一のものである。
図4は、この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置の被溶接物の溶接を示す図である。
図4において、1、2、4〜6、13、l4は図2におけるものと同一のものである。
図5は、この発明の実施の形態1によるアーク溶接装置のクランプ治具と被溶接個所の関係を示す図である。
図5において、1、4、6、13は図2におけるものと同一のものである。
【0011】
次に、動作について説明する。
まず始めに、この導電性ブロック2上にトーチ4を配置し、アーク起動を行う。この導電性ブロック2は、シリンダ5などにより可動し、可動先にはクランプ治具6によりクランプされた被溶接箇所13が配置されている。なお、クランプ治具6は、被溶接箇所13直下の被溶接箇所材料を保持する構成とし、クランプ治具6の材料は、導電性を有するもので作られる。
【0012】
次に、図3に示すように、アーク起動を確認した後に導電性ブロック2を移動し、導電性ブロック2と被溶接箇所13のクランプ治具6を接触させることで両者を電気的に接続する。この導電性ブロック2の移動は、制御装置12の制御により行ってもよく、また、手動により行ってもよい。なお、この導電性ブロック2とクランプ治具6の接触による電気的接続に代わり、導電性ブロック2が接続された溶接電源3の片極とクランプ治具6とを直接ケーブル等で接続してもよい。ただし、このクランプ治具6と溶接電源3の電気的接続は、アーク起動後に行い、アーク起動前には両者を電気的に切断しておく。
次に、図4に示すように、アークを形成したまま、導電性ブロック2からクランプ治具6に挟まれた被溶接箇所13の直上へトーチ4を移動し、TIG溶接が行われる。このトーチ4の移動は、導電性ブロック2の移動完了後に行ってもよく、また、導電性ブロック2の移動と並行して行ってもよい。
なお、アーク起動の確認は、溶接電源の内部の電気回路、または、溶接電源の出力端子に接続されたケーブルに電流計を設置して導電性ブロック2に流れる電流値をモニタ手段によりモニタし、その電流値が所望の値に達していることを制御装置12により確認して実施されるか、またはアークを視認することにより行ってもよい。
【0013】
このような手順で溶接を行うと被溶接物1と離れたところでアークを起動するため、電磁誘導によってアーク起動時の高周波電圧や直流高電圧が被溶接物1の電気回路に廻り込むことを防止でき、被溶接物1に搭載された耐電圧の低い電子部品を損傷しない。
また、導電性ブロック2に流れる電流値を、モニタすることでアーク起動を確認できることから、アーク起動から最小のタイムラグで導電性ブロック2の可動ができ、装置のサイクルタイムを短縮できて生産性が向上する。
さらに、図5に示すように、クランプ治具6で被溶接箇所13以外を覆うことで、アーク光が被溶接物1にあたることを防止し、その輻射熱で被溶接物1の損傷を防止できる。同時に設備の損傷も防止できる。
【0014】
ここで、クランプ治具6を熱伝導率が高く、高強度の銅合金により形成することで、クランプ治具6の温度上昇が抑えられて損傷が抑制でき、その寿命が向上する。
また、クランプ治具6を水冷することで、クランプ治具6の温度上昇が抑えられて損傷が抑制でき、その寿命が向上する。
【0015】
また、アーク起動用の導電性ブロック2を熱伝導率が高い純銅または銅合金により形成することで、導電性ブロック2の温度上昇が抑えられて損傷が抑制でき、その寿命が向上する。
さらに、アーク起動用の導電性ブロック2を水冷することで、導電性ブロック2の温度上昇が抑えられて損傷が抑制でき、その寿命が向上する。
【0016】
また、アーク起動用の導電性ブロック2と溶接トーチ4の電極の距離を1mm以下にすることで、確実にアークが起動することから、アーク不起動による装置の停止を防止できる。
また、アーク起動時の設定電流を溶接時の設定電流よりも低くすることで、導電性ブロック2の温度上昇が抑えられて損傷が抑制でき、その寿命が向上する。
さらにまた、アーク起動時の導電性ブロック2と溶接トーチ4の位置関係を任意のアーク起動回数毎に変更することで、導電性ブロック2表面が常にアーク起動し易い状態となり、アーク不起動による装置停止を防止できる。
また、溶接電流の低下を検出し、制御装置12によりアーク電圧をゼロにすることで、無負荷電圧による耐電圧の低い部品の損傷を防止できる。
【0017】
加えて、直流高電圧によってアーク起動をする溶接電源を用いることで、電磁誘導の影響が低減でき、導電性ブロック2と被溶接物1の距離を近づけることが可能となって、装置がコンパクトになるとともに、サイクルタイムが短縮できて生産性が向上する。
また、TIG溶接電源やプラズマ溶接電源を用いることで、スパッタが発生せず、被溶接物の短絡不良を防止できる。
【0018】
実施の形態1によれば、被溶接物と電気的に切断された状態の導電ブロックでアーク起動させ、アーク起動時の高周波電圧や直流高電圧が被溶接箇所に直接負荷しないことから、被溶接物に搭載された耐電圧の低い電子部品を損傷しない。 また、導電性ブロックに流れる電流値をモニタすることでアーク起動を確認できることから、アーク起動から最小のタイムラグで導電性ブロックの可動ができ、装置のサイクルタイムを短縮できて生産性が向上する。
また、クランプ治具で被溶接箇所以外を覆うことにより、アーク光が被溶接物にあたることを防止し、その輻射熱で被溶接物の損傷を防止でき、同時に設備の損傷も防止できる。
【0019】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2によるアーク溶接装置のクランプ治具を示す図である。
図6において、1、6、13は図2におけるものと同一のものである。
図7は、この発明の実施の形態2によるアーク溶接装置のくし歯形状のクランプ治具を示す図である。
図7において、6、13は図6におけるものと同一のものである。
【0020】
実施の形態2は、図6のように、実施の形態1記載の被溶接箇所13が複数ある場合、被溶接箇所13は同一の形状とし、一括でクランプできるクランプ治具6を設ける。
これにより、1点ずつアーク起動をすることなく同一の条件で溶接ができるため、生産性が向上する。
【0021】
また、図7に示すように、クランプ治具6をくし歯形状にすることで、被溶接箇所13をトーチが移動する時にアークが途切れないことから、高周波電圧や直流高電圧の負荷で耐電圧の低い電子部品を損傷する恐れがあるアーク再起動が起こらない。
さらに、クランプ治具6と溶接トーチ4の電極との距離が5mm以下にすることで、クランプ治具6をくし歯形状にしなくても被溶接箇所13をトーチ4が移動する時にアークが途切れないことから、高周波電圧や直流高電圧の負荷で耐電圧の低い電子部品を損傷する恐れがあるアーク再起動が起こらない。
【0022】
実施の形態2によれば、同一形状の被溶接箇所が複数ある場合、一括してクランプでき、1点ずつアーク起動をすることなく同一の条件で溶接ができるため、生産性が向上する。
また、被溶接箇所をトーチが移動する時にアークが途切れないことから、高周波電圧や直流高電圧の負荷で耐電圧の低い電子部品を損傷する恐れがあるアーク再起動が起こらないようにすることができる。
【0023】
実施の形態3.
図8は、この発明の実施の形態3によるアーク溶接装置のガスノズルを示す図である。
図8において、1、6、13、14は図2におけるものと同一のものである。
【0024】
実施の形態3は、被溶接個所13を覆うシールドガスの供給についてのものである。通常は、トーチ4からシールドガスが供給されるが、実施の形態3では、実施の形態2で述べた複数の被溶接箇所13を一括でクランプする場合に、図8に示されるように、ガスノズル15から供給されるシールドガスが同時に複数の被溶接箇所13を覆うようにし、このガスノズル15は、固定され、電極14のみが移動して被溶接箇所13を順次溶接するようにしている。
【0025】
実施の形態3によれば、これにより、電極に追従してガスノズルが移動しないことから、被溶接箇所のシールド雰囲気が安定に形成され、溶接部の表面酸化やブローホールが発生しない。
【0026】
実施の形態4.
図9は、この発明の実施の形態4によるアーク溶接装置の複数のクランプ治具間をつなぐ導電ブロックを示す図である。
図9において、1、6、13は図2におけるものと同一のものである。図9では、クランプ治具6が複数有り、クランプ治具6間を導電性ブロック16でつなぎ、その導電性ブロック16をシリンダ17などにより可動する。
【0027】
実施の形態4は、実施の形態1のクランプ治具6が複数ある場合のもので、クランプ治具6間をつなぐ導電性ブロック16(第二の導電性ブロック)をシリンダ17などにより挿入配置する。
これにより、被溶接箇所13の間が離れている、またクランプ方向が異なる場合も、クランプ部ごとにアーク起動することなく溶接ができるため、生産性が向上する。
【0028】
ここで、導電性ブロック16を熱伝導率が高い純銅または銅合金により形成することで、導電性ブロック16の温度上昇が抑えられて損傷が抑制でき、その寿命が向上する。
また、導電性ブロック16を水冷することで、導電性ブロック16の温度上昇が抑えられて損傷が抑制でき、その寿命が向上する。
【0029】
実施の形態4によれば、被溶接箇所の間が離れているときや、クランプ方向が異なる場合にも、クランプ部ごとにアーク起動することなく溶接ができるため、生産性が向上する。
【0030】
実施の形態5.
図10は、この発明の実施の形態5によるアーク溶接装置の気密チャンバを示す図である。
図10において、1、4、6、13、14は図2におけるものと同一のものである。気密チャンバ18には、Arガスなどの不活性ガスが充満している。
【0031】
実施の形態5は、図10に示されるように、電極14および被溶接個所13をArガスなどの不活性ガスを充満した気密チャンバ18の中に入れて溶接する。
これにより、被溶接箇所13のシールド雰囲気が安定に形成され、溶接部の表面酸化やブローホールが発生しない。
【0032】
実施の形態5によれば、被溶接箇所のシールド雰囲気が安定に形成され、溶接部の表面酸化やブローホールが発生しない溶接を行うことができる。
【0033】
実施の形態6.
図11は、この発明の実施の形態6によるアーク溶接装置の移動する導電性シートを示す図である。
図11において、2、4、5、14は図2におけるものと同一のものである。図11では、電極14に対向して導電性ブロック2上に導電性シート19が移動するように配置され、この導電性シート19をシート送り機構20により移動させ、電極14に対向する位置にアーク起動個所21ができるようにする。この導電性シート19は回転ブラシ22(清浄化手段)により清浄化される。
【0034】
実施の形態6は、図11に示されるように、導電性ブロック2の表面に密着した導電性シート19を配置し、任意のアーク起動回数毎に導電性シート19を移動して異なる表面位置(アーク起動個所21)でアークを起動する。
【0035】
ここで、導電性シート19の表面をブラシがけなどで機械的に清浄化することで、一度アーク起動したシート表面で再度アーク起動できることから、導電性シートの寿命が向上する。
【0036】
実施の形態6によれば、これにより、導電性シートが常にアークが起動し易い状態であり、アークが確実に起動することから、アーク不起動による装置停止を防止できる。
【0037】
実施の形態7.
図12は、この発明の実施の形態7によるアーク溶接装置の電極と被溶接個所を囲う空間を示す図である。
図12において、1、2、4〜6、13、14は図2におけるものと同一のものである。囲い23は、空間を形成する。
【0038】
実施の形態7は、図12に示されるように、側面および底面が囲み空間を形成する囲い23に、上面から電極14、穴の開いた底面から被溶接箇所13を配置し、トーチ4の移動範囲全体を一つの囲い23に囲まれた空間とする。
この囲い23内で溶接することにより、アーク光の輻射熱を囲いで遮光できるため、被溶接物1の被溶接箇所13以外の熱的な損傷が防止できると共に、熱による設備の損傷も防止できる。
【0039】
ここで、この囲い23に囲まれた空間にArなどの空気よりも重い不活性ガスを供給して溶接すれば、被溶接箇所13のシールド雰囲気が安定に形成され、溶接部の表面酸化やブローホールが発生しない。
【0040】
実施の形態7によれば、アーク光の輻射熱を囲いで遮光できるため、被溶接物の被溶接箇所以外の熱的な損傷が防止できると共に熱による設備の損傷も防止でき、被溶接個所のシールド雰囲気を安定に形成でき、溶接部の表面酸化やブローホールが発生しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 被溶接物
2 導電性ブロック
3 溶接電源
4 トーチ
5 シリンダ
6 クランプ治具
7 シリンダ
8 ロボット
9 ガス供給源
10 ケーブル
11 ベース
12 制御装置
13 被溶接個所
14 電極
15 ガスノズル
16 導電性ブロック
17 シリンダ
18 気密チャンバ
19 シート
20 シート送り機構
21 アーク起動個所
22 回転ブラシ
23 囲い


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電源の一極に接続された電極、上記溶接電源の他極に接続された第一の導電性ブロック、この第一の導電性ブロックの表面に密着し、上記第一の導電性ブロックと電気的に結合され、上記電極との間でアーク起動が行われると共に任意のアーク起動回数毎に異なる表面でアークが起動されるように上記第一の導電性ブロック上を移動される導電性シート、及び導電性材料により形成され、被溶接物の被溶接個所を保持するクランプ手段を備え、上記第一の導電性ブロックと上記クランプ手段を電気的に切断された状態で上記導電性シートの表面でアーク起動を行うと共に、上記アーク起動後に上記第一の導電性ブロックと上記クランプ手段とを電気的に接続し、上記電極を移動して上記被溶接個所に対向させ、上記被溶接個所の溶接を行うことを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項2】
溶接電源の一極に接続された電極、上記溶接電源の他極に接続された第一の導電性ブロック、この第一の導電性ブロックの表面に密着し、上記第一の導電性ブロックと電気的に結合され、上記電極との間でアーク起動が行われると共に任意のアーク起動回数毎に異なる表面でアークが起動されるように上記第一の導電性ブロック上を移動される導電性シート、及び導電性材料により形成され、被溶接物の被溶接個所を保持するクランプ手段を備え、上記溶接電源の他極と上記クランプ手段を電気的に切断された状態で上記導電性シートの表面でアーク起動を行うと共に、上記アーク起動後に上記溶接電源の他極と上記クランプ手段とを電気的に接続し、上記電極を移動して上記被溶接個所に対向させ、上記被溶接個所の溶接を行うことを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項3】
上記導電性シートの表面を機械的に清浄化する清浄化手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のアーク溶接装置。
【請求項4】
上記クランプ手段は、複数の被溶接箇所を一括で保持することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項5】
上記クランプ手段は、上記複数の被溶接個所をそれぞれ挟むようにくし歯形状を有していることを特徴とする請求項4記載のアーク溶接装置。
【請求項6】
上記クランプ手段と上記電極との距離を5mm以下にすることを特徴とする請求項4または請求項5記載のアーク溶接装置。
【請求項7】
上記クランプ手段は、複数設けられ、上記クランプ手段間を接続するように配置された第二の導電性ブロックを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項8】
上記第二の導電性ブロックは、銅合金により形成されていることを特徴とする請求項7記載のアーク溶接装置。
【請求項9】
上記第二の導電性ブロックは、水冷されていることを特徴とする請求項7または請求項8記載のアーク溶接装置。
【請求項10】
固定位置に配置され、上記複数の被溶接個所を覆うようにシールドガスを供給するガスノズルを備えたことを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項11】
不活性ガスを充満させた気密チャンバを備え、上記気密チャンバの不活性ガス中に上記電極および上記被溶接個所が収納されて溶接が行われることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項12】
上記クランプ手段は、アーク光を被溶接物と遮断するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項13】
側面及び穴が設けられた底面を有する囲いを備え、この囲いの上部から上記電極を配置し、上記底面の穴より上記被溶接個所を配置して上記囲いの中で溶接することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項14】
上記囲いには、空気より比重の大きい不活性ガスが供給されることを特徴とする請求項13記載のアーク溶接装置。
【請求項15】
上記クランプ手段は、銅合金により形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項16】
上記クランプ手段は、水冷されていることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項17】
上記第一の導電性ブロックは、純銅または銅合金により形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項18】
上記第一の導電性ブロックは、水冷されていることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項19】
上記第一の導電性ブロックを流れる電流をモニタするモニタ手段を備え、このモニタ手段によりモニタされた電流値が所定値を超えたとき上記アーク起動が確認されることを特徴とする請求項1〜請求項18のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項20】
上記アーク起動時の設定電流は、溶接時の設定電流よりも低いことを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項21】
溶接電流の低下を検知し、アーク電圧をゼロにする制御装置を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項20のいずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項22】
上記溶接電源は、直流高電圧を供給することを特徴とする請求項1〜請求項21いずれかに記載のアーク溶接装置。
【請求項23】
上記溶接電源は、TIG溶接電源またはプラズマ溶接電源であることを特徴とする請求項1〜請求項21のいずれかに記載のアーク溶接装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−160661(P2009−160661A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105431(P2009−105431)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【分割の表示】特願2003−346031(P2003−346031)の分割
【原出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】