説明

アースドリルのケリーバ

【課題】分割ケリーバの上端に設ける緩衝材が確実に保持でき、緩衝材の変形、脱落、破損が防止できる取付け構造を有するアースドリルのケリーバを提供する。
【解決手段】水平断面サイズの異なる複数本の分割ケリーバ15a〜15dを相互に回り止めして相対的に上下動可能に嵌合する。最も外側の分割ケリーバ15a以外の分割ケリーバ15b〜15dのうちの少なくとも1本の分割ケリーバ15b、15cの上端に、上下に間隔を持たせて2枚のリング状プレート33、34を溶着する。2枚のリング状プレート33、34の間に緩衝材32をその外周がリング状プレート33、34の外周より突出するように嵌めてボルト35により固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリルのケリーバに係り、より詳しくは伸縮式ケリーバにおける分割ケリーバ間の横揺れ衝突による騒音発生を防止する緩衝材の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アースドリルは、例えばフロントフレームの上部にケリードライブ装置を取付け、このケリードライブ装置の回転駆動体の孔に上下動可能にかつ相対回転不能にケリーバを貫挿し、ケリーバの下端にアースドリルバケットを取付けてなる。ケリーバは、旋回体に搭載したウインチから巻取り繰出しされてブームの頂部から垂下されるワイヤロープにスイベルジョイント(回転ジョイント)を介して接続され、支持される。
【0003】
そして、掘削時には、前記ケリードライブ装置に備えた液圧モータの作動により回転駆動体とともにケリーバを回転させ、ケリーバやバケットの自重あるいはさらに必要な場合には前記ケリードライブ装置に備えた加圧装置によりバケットに荷重を付加して掘削を行ない、バケット内に土砂が充満したらウインチによりケリーバと共にバケットを地上に引き上げて排土するという作業を繰り返して、構築物の基礎としての主として場所打ち杭のための縦孔を掘削する。
【0004】
従来のアースドリルのケリーバとしては、一般的には水平断面のサイズが異なる複数本の分割ケリーバを相互に回り止めして、かつ伸縮可能に嵌合して多段伸縮式に組み合わされた伸縮式ケリーバが用いられる。このような伸縮式ケリーバを有する従来のアースドリルにおいて、ケリーバの横揺れにより隣接するケリーバどうしが衝突した際の衝撃音の発生を防止するため、最も外側の分割ケリーバであるアウターケリーバより内側の分割ケリーバの上端の外周部に、非金属でなる緩衝材を取付けている。従来は、前記緩衝材を、それぞれボルト(特許文献1参照)、リベット(特許文献2参照)、ケリーバの外周面に突設した突部(特許文献3参照)により取付けている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−328675号公報
【特許文献2】実公平7−35909号公報
【特許文献3】特開2004−278168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような伸縮式ケリーバにおいては、ケリーバの伸縮に伴い、ケリーバのスラスト方向(鉛直方向)の力が緩衝材に加わり易い。このため、緩衝材をケリーバに固定しているボルトやリベットや突部により受けているため、緩衝材が変形したり、破損したり、脱落しやすいという問題点がある。また、脱落は、ボルトやリベットの折損により生じる場合もある。なお、緩衝材に加わる力としては、ケリーバのラジアル方向や回転方向もあるが、ラジアル方向の力は各段のガタ分のみであるため小さく、回転方向の駆動力は被駆動リブで受けるため、緩衝材には基本的には加わらない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、分割ケリーバの上端に設ける緩衝材が確実に保持でき、緩衝材の変形、脱落、破損が防止できる取付け構造を有するアースドリルのケリーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアースドリルのケリーバは、水平断面サイズの異なる複数本の分割ケリーバを相互に回り止めして相対的に上下動可能に嵌合してなるアースドリルのケリーバにおいて、
最も外側の分割ケリーバ以外の分割ケリーバのうちの少なくとも1本の分割ケリーバの上端に、上下に間隔を持たせて2枚のリング状プレートを溶着(溶接またはろう付けを意味する。以下同じ。)し、
前記2枚のリング状プレートの間に緩衝材をその外周がリング状プレートの外周より突出するように嵌めてボルトにより固定した
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、ケリーバの伸縮に伴って緩衝材にスラスト方向に作用する力は、緩衝材を嵌め込んだ上下のリング状プレートにより受けられるため、緩衝材が確実に保持される。このため、緩衝材の脱落や破損が防止される。また、緩衝材にスラスト方向に作用する力は、緩衝材を嵌め込んだ上下のリング状プレートにより受けられるため、緩衝材を固定するボルトには前記スラスト方向の力が加わらない。このため、ボルトの変形が無くなり、緩衝材の交換が容易となる。また、ボルトの折損による緩衝材の脱落が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明のケリーバを適用するアースドリルの一例を側面図である。図1において、1はクローラ式走行体、2はこの走行体1上に旋回装置3を介して設置した旋回体である。この旋回体3上には、後述の各部の液圧シリンダおよび液圧モータ等のアクチュエータの液圧源と電源となる発電機を備えたパワーユニット4や運転室5等が搭載される。
【0011】
6は旋回体2に起伏可能に取付けられたブーム、7は旋回体2に起伏可能に取付けられたフロントフレーム、9はフロントフレーム7の上部に取付けたケリードライブ装置であり、このケリードライブ装置9は公知のものである。本例においてはブーム6が非伸縮式である場合を示しているが、このブームには多段伸縮式のものを用いる場合もある。10はブーム6を起伏させる液圧シリンダである。11はフロントフレーム7を起伏させるためにフロントフレーム7に取付けた液圧シリンダで、この液圧シリンダ11の伸縮により巻取り繰り出しされるワイヤロープ12を液圧シリンダ11とフロントフレーム7とブーム6にそれぞれ取付けたシーブ13に掛け回して旋回体2に接続しており、液圧シリンダ11の伸縮によりフロントフレーム7が起伏する。なお、ブーム6やフロントフレーム7の起伏装置にはウインチを用いたもの等、種々のものがある。
【0012】
15はケリードライブ装置9の回転駆動体(図示せず)に上下動可能に、かつ相対回動不能に貫挿するケリーバ、16はケリーバ10の下端に取付けた軸掘バケットであり、この軸掘バケット16は底部に土砂の掘削爪や土砂の取り込み口を有する円錐形の開閉可能な底蓋16aを有するものである。
【0013】
17は旋回体2上に搭載したウインチ、18はウインチ17により巻取り繰出しされるワイヤロープである。このワイヤロープ18はブーム6の頂部のシーブ19より垂下され、スイベルジョイント(回転ジョイント)20を介してケリーバ15に接続される。なお、ケリーバ15の下端に取付けるバケットとしては軸掘バケットのみでなく、開閉可能な拡大翼を有する拡底バケット、あるいは軸掘り拡底掘削の両機能を備えたバケットを取付ける場合がある。また、拡底掘削を行なうための液圧ホースを巻き取るためのホースリールや拡大翼の開閉角度を検出する機器につながる電気信号伝達のためのケーブルを巻くケーブルリールを搭載したターンテーブルを、ケリードライブ装置9の下部にセンタージョイント(拡大翼を開閉する液圧装置用の作動液供給や電気信号伝達を行なうための回転ジョイント)を介して取付ける場合もある。
【0014】
図2の縦断面図および図3の横断面図に示すように、ケリーバ15は水平断面のサイズが異なる複数本の筒状分割ケリーバ15a〜15dを、相対的に上下動可能でかつ相対的に伸縮可能に嵌合してなるもので、最も内側のケリーバ15dに図1に示したスイベルジョイント20を介して前記ワイヤロープ18が上端の接続部21に接続される。22は最も内側の分割ケリーバ15dの下端部に設けたバケット結合部であり、この結合部22に前記軸掘バケット16等のバケットが結合される。23はこの結合部22の上部に設けたばね受け、24はこのばね受け23の上部に分割ケリーバ15dに対して上下動可能に取付けたばね受けであり、これらのばね受け23、24の間にコイルばねからなる緩衝材25が介装される。この緩衝材25は、ケリーバ15の収縮時に分割ケリーバ15dが隣接する分割ケリーバ15cの下端に衝突したときの衝撃を緩和するものである。
【0015】
分割ケリーバ15a〜15dの外周には、ほぼ全長にわたり、縦方向に複数本(図示例では3本)の回転力受け用のリブ26a〜26dが溶着される。最外周の分割ケリーバ15aのリブ26aは。ケリードライブ装置9に備えるリング状の回転駆動体(図字せず)の内周に設けられた回転力伝達用の溝に嵌合されるものである。他の分割ケリーバ15b〜15dのリブ26b〜26dは、それぞれ外側に隣接する分割ケリーバ15a〜15cの下部内周面に。周方向に並べて溶着した複数枚(本例では6枚)の回転力伝達用プレート27a〜27cの間に挿入され、隣接する外側の分割ケリーバ15a〜15cの回転力が、プレート27a〜27cの回転方向の端部とリブ26b〜26dとの当接により伝達される。
【0016】
28a〜28cはそれぞれ分割ケリーバ15b〜15dの上部外周面に取付けられたストッパであり、分割ケリーバ15b〜15dがそれぞれ外側に隣接する分割ケリーバ15a〜15dに対して下降し、それぞれ分割ケリーバ15a〜15cの下部内周面に設けた係止部(図示せず)に係止されて分割ケリーバ15b〜15dが抜け止めされるものである。
【0017】
29は最外周の分割ケリーバ15aの上端に設けたフランジ、30はその下面にボルト31により取付けた硬質ゴムあるいはプラスチックもしくはこれらを組み合わせものからなる緩衝材であり、前記ケリードライブ装置9の回転駆動体の上面に当接した際の衝撃および衝撃音の発生を防止するものである。
【0018】
32は分割ケリーバ15b、15cの上端に設けた緩衝材であり、ケリーバ15の横揺れに伴う衝撃音の発生を防止するものである。図4はこの緩衝材32の取付け構造を示す断面図、図5はこのケリーバの平面図、図6は緩衝材32の平面図、図7は図6のE−E断面図である。
【0019】
分割ケリーバ15b、15cの上端には上下に間隔を持ってリング状プレート33、34をそれぞれ溶着する。上方のリング状プレート33には緩衝材32のボルト35を挿通する貫通孔33aを設け、下方のリング状プレート34には貫通孔33aに対応する箇所にねじ孔34aを設ける。
【0020】
緩衝材32は硬質ゴムまたはプラスチックもしくはこれらを組み合わせたものからなるもので、図6、図7に示すように、緩衝材32は円弧状のリングを分割したような弧状をなし、各緩衝材32にはそれぞれボルト35を挿通する複数個の貫通孔32aを有する。これらの緩衝材32は、リング状プレート33、34間にそれぞれ複数枚ずつ嵌め込み、ボルト35をそれぞれ上方のリング状プレート33の貫通孔33a、緩衝材32の貫通孔32aに挿通し、下方のリング状プレート34のねじ孔34aにねじ込むことにより固定する。このように緩衝材32を取付けた状態では緩衝材32はそれぞれリング状プレート33、34の外周より外側に突出し、ケリーバ15の横揺れの際には緩衝材32が分割ケリーバ15a、15bの内周面に当接する。
【0021】
この実施の形態によれば、ケリーバ15の伸縮に伴って緩衝材32にスラスト方向に作用する力は、緩衝材32を嵌め込んだ上下のリング状プレート33、34により受けられるため、緩衝材32が確実に保持される。このため、緩衝材32の脱落や破損が防止される。また、緩衝材32にスラスト方向に作用する力は、緩衝材32を嵌め込んだ上下のリング状プレート33、34により受けられるため、緩衝材32を固定するボルト35には前記スラスト方向の力が加わらない。このため、ボルト35の変形が無くなり、緩衝材32の交換が容易となる。また、ボルト35の折損による緩衝材32の脱落が防止される。
【0022】
上記実施例においては、分割ケリーバを2本以上備えたものに適用できる。上記実施の形態においては、4本の分割ケリーバ15a〜15dにより構成され、最外周の分割ケリーバ15a以外の15b〜15dのうち、2本の分割ケリーバ15b、15cに緩衝材31を取付けた例を示したが、分割ケリーバ15b、15c、15dのうちの1本に緩衝材31を取付けてもよく、分割ケリーバ15b〜15dの全部に緩衝材31を取付けることがより好ましい。
【0023】
また、上記実施例においては、下方のリング状プレート34にねじ孔34aにボルト35をねじ込むことによってボルト35を固定したが、下方のリング状プレート34と別体または溶着したナットにボルト35を螺合してボルト35を固定するようにしてもよい。
【0024】
また本発明のケリーバは、角形のケリーバにも適用できる。また本発明のケリーバは、前記旋回体2の前部にリーダを立て、そのリーダに沿ってケリードライブ装置を上下動可能に取付け、そのケリードライブ装置にケリーバ15を貫挿した構造のアースドリルにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のケリーバを適用するアースドリルの一例を示す側面図である。
【図2】本発明のケリーバの一実施の形態を示す縦断面図である。
【図3】図2のケリーバの横断面図である。
【図4】図2の部分拡大図である。
【図5】図2のケリーバの平面図である。
【図6】本実施の形態の緩衝材の平面図である。
【図7】図6の緩衝材のE−E断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1:走行体、2:旋回体、3:旋回装置、4:パワーユニット、5:運転室、6:ブーム、7:フロントフレーム、9:ケリードライブ装置、10、11:液圧シリンダ、12:ワイヤロープ、13:シーブ、15:ケリーバ、15a〜15d:分割ケリーバ、16:軸掘バケット、17:ウインチ、18:ワイヤロープ、19:シーブ、20:スイベルジョイントジョイント、21:接続部、22:結合部、23、24:ばね受け、25:緩衝材26a〜26d:リブ、27a〜27d:回転力伝達用プレート、28a〜28c:ストッパ、29:フランジ、30:緩衝材、31:ボルト、32:緩衝材、33、34:リング状プレート、33a:貫通孔、34a:ねじ孔、35:ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平断面サイズの異なる複数本の分割ケリーバを相互に回り止めして相対的に上下動可能に嵌合してなるアースドリルのケリーバにおいて、
最も外側の分割ケリーバ以外の分割ケリーバのうちの少なくとも1本の分割ケリーバの上端に、上下に間隔を持たせて2枚のリング状プレートを溶着し、
前記2枚のリング状プレートの間に緩衝材をその外周がリング状プレートの外周より突出するように嵌めてボルトにより固定した
ことを特徴とするアースドリルのケリーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−106482(P2008−106482A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289261(P2006−289261)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】