説明

イオンを冷却するためのイオントラップ

イオンの運動エネルギーを変える方法であって、イオントラップの捕捉領域にイオンを捕捉するステップと、捕捉領域を通してガスビームを指向するステップとを含み、それにより捕捉イオンの運動エネルギーを変える方法が提供される。また、イオンを分離する方法であって、イオンが捕捉領域の第1の軸に沿ってイオントラップの捕捉領域に入るようにするステップと、第1の軸に沿ってガスビームを指向するステップと、第1の軸の方向で電位を印加するステップとを含み、イオン移動度に基づいてイオンの分離を引き起こす方法が提供される。この方法を行うためのイオントラップおよび質量分析計も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはイオンを冷却するためにイオンの運動エネルギーを変えるためのイオントラップ、およびイオントラップ内でイオンの運動エネルギーを変える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い分解能の質量分析計では、分析するイオンのエミッタンスが低いことが望ましい。なぜなら、低いエミッタンスが分解能および感度を改良するからである。イオンビームのエミッタンスは、1つにはイオンビームの温度によって決定される。従来、イオンは、ガスとの衝突によって冷却される。しかし、質量分析器は高真空で動作するので、質量分析器の外部でイオンを冷却することが望ましい。
【0003】
既存の解決策は、2つの発散ストラテジに従っている。第1のストラテジは、例えば米国特許第6,674,071号明細書に示されているように、質量分析器の外部で、イオンを冷却するのに適したガスを含むトラップ内でイオンを冷却することである。しかし、そのようなデバイスでは、イオンはガスの温度までしか冷却することができない。このガスは、それを捕捉する材料と熱平衡状態にあるときにトラップ内に効果的に保持されるので、トラップのイオン光学系のガスに限定される。これは、冷却されるイオンビームの実現可能な最小のエミッタンスに制限を課す。
【0004】
さらに、このトラップを使用して、冷却されたイオンを質量分析計に注入するとき、さらなる問題が生じる。ガスによってイオンを加速すると、イオンの断片化が生じることがあり、イオンを放出する前にガスを除去すると、動作速度がかなり制限される。典型的に行われているように、電場を使用してイオンを加速する場合、すべてのイオンが一定のエネルギーまで加速されるが、イオンの速度はそれらの質量に依存する。したがって、そのような場合には、トラップから分析器への経路長を最短にして、分析器の外部での飛行時間質量分離を低減しなければならない。このとき、分析器内へのガスキャリーオーバーの防止が重大な問題となる。この問題は、典型的には、コストおよび複雑さの増加ならびに性能の低下という犠牲を払って、トラップと分析器の見通し線をなくし、かつ小さな開口を使用することによって軽減される。しかしまた、これにより経路長がさらに長くなり、したがって外部質量分離の問題を悪化させる。
【0005】
このストラテジの一実装形態では、ガスをパルスとして導入することが知られている。これは、イオン冷却後に、分析中のガス負荷を低減する一助となる。これに関するより以前の例として、以下のものが挙げられる。J.CarlinおよびB.S.Freiser,Anal.Chem.55(1983),571;B.Emary、R.E.Kaiser、H.I.Kenttamaa、およびR.G.Cooks,J.Am.Soc.Mass Spectrom.1(1990)308;ならびにR.C.BeavisおよびB.T.hait,Chem.Phys.Lett.181(1991)479。
【0006】
この技法のより最近の例としては、以下のものが挙げられる。英国特許第2439107号明細書;ならびにD.Papanastasiou、O.Belgacem、M.Sudakov、およびE.Raptakis,Rev.Sci.Instrum.79(2008)055103。しかし、この技法と静的動作の間に根本的な差はない。どちらの技法においても、ガスは、非常に拡散されてイオントラップに入る。
【0007】
第2のストラテジは、ガスジェットを通してイオンビームを指向するものである。例えば、米国特許第5,373,156号明細書は、生成中に断熱的に冷却されてジェットとして指向される水素またはヘリウムなどの軽量ガスを使用して、非常に重いイオン(300,000〜2,000,000Da)を冷却するための方法を記載している。また、ガスジェットは、質量分析器のすぐ上流でイオンを減速させ、それにより、起こり得る断片化または質量分離の問題をなくす。しかし、そのようなデバイスは、冷却されたイオンを質量分析器に即座に注入させるように設計されているので、捕捉との適合性がない。さらに、ガスキャリーオーバーが、そのようなデバイスに伴う問題として残っている。
【0008】
ガスジェットは、イオンの衝突誘起解離(CID)のために使用されている。米国特許第4,328,420号明細書には、イオンビームに直交して交差するガスジェットを用いた衝突セルとして作用する中央区域を有する3つの四重極区域を有する質量分析計が開示されている。衝突セルに入り、イオン経路に直交して交差するガスジェットを用いたCIDに関する同様の構成が、米国特許出願公開第2004/0119015号明細書および米国特許出願公開第2007/0085000号明細書に開示されており、イオントラップを有する構成を含む。そのようなイオントラップは、イオンの貯蔵用のトラップ内でかなりの圧力の浴ガスをさらに採用し、したがってシステムのガス負荷をかなり追加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
こうした背景において、本発明は、イオンの運動エネルギーを変える方法であって、イオントラップの捕捉領域にイオンを捕捉するステップと、捕捉領域を通してガスビームを指向するステップとを含み、それにより捕捉されたイオンの運動エネルギーを変える方法を提供する。
【0010】
本発明は、別の態様では、イオンを分離する方法であって、イオンがイオントラップの捕捉領域の第1の軸に沿って捕捉領域に入るようにするステップと、第1の軸に沿ってガスビームを指向するステップと、第1の軸の方向で電位を印加するステップとを含み、イオン移動度に基づいてイオンの分離を引き起こす方法を提供する。
【0011】
好ましくは、ガスは冷却ガスであり、それにより、捕捉されたイオンが冷却される。好ましくは、この方法は、トラップからイオンを放出することが望まれるまでの期間にわたって、捕捉領域内にイオンを貯蔵するステップを含む。より好ましくは、捕捉されたイオンは、ガスビームによって実質的に解離されない。すなわち、例えば意図せずに少数のイオンがビームによって解離されることがあるが、イオンの大部分はビームによって解離されない。最も好ましくは、捕捉されたイオンは、ガスビームによって冷却はされるが実質的に解離されない。
【0012】
それにより、トラップ内に貯蔵されたイオンを低温に冷却し、トラップから質量分析器に、または質量分析の前の別のデバイスに放出することができる。これは、大きな自由度をもたらす。なぜなら、それにより、例えばパルス質量分析器を含めた様々なタイプの質量分析器にそのようなイオンを最適化することができるからである。ガスジェット冷却の従来技術における方法とは対照的に、この方法は、機器に導入されるときのイオンビームだけでなく、機器の真空環境内で処理を受けたイオンビームと共に使用することができる。
【0013】
ガスビームの粒子はすべて、全粒子に共通の主要成分をもつ運動ベクトルを有すると考えることができ、したがってガス粒子の発散は小さい。その結果、トラップ体積内部でのガスの分布は不均一である。有利には、本発明は、通常よりもはるかに低い浴ガス圧力を用いて、イオントラップ内でのイオンの効率的な捕捉および貯蔵を可能にする。なぜなら、指向されたガスビームを使用することで、ビームの領域内でのガスとイオンの十分な衝突により、優れたイオン貯蔵および冷却能力が得られることが判明しているからである。このようにして、本発明のイオントラップは、高い圧力の浴ガスを使用する必要があるイオントラップにおいて通常採用されるよりも低い圧力(すなわちガスビームなしでの圧力)で動作することができる。したがって、本発明により、質量分析計システムの残りの部分に対するガス負荷をそれに対応して減少させることができるようになる。したがって、好ましくは、本発明は、それ自体ではトラップ内にイオンを貯蔵する、特にイオンを捕捉、貯蔵、および冷却することができないほど低いイオントラップ内の圧力(すなわちビームなしでの圧力)を用いて動作される。例えば、浴ガスを使用するイオントラップの典型的な圧力は約1×10-3mbarとなることがあるのに対し、本発明によるイオントラップの圧力は1×10-4mbar未満でよい。好ましくは、イオントラップ内の圧力は、約1×10-4mbar以下、より好ましくは1×10-4未満、さらに好ましくは約5×10-5mbar以下、例えば1×10-5mbarの範囲である。好ましい実施形態では、この方法は、トラップでイオンを受け取るステップをさらに含む。
【0014】
好ましくは、捕捉領域が第1の軸を備える。第1の軸は、好ましくは捕捉領域の長手軸であり、すなわち、捕捉領域の長さまたは最長寸法の方向での軸である。好ましくは、捕捉されたイオンは、第1の軸に沿って捕捉領域を繰り返し横切る。第1の軸は、直線でも、曲線でも、または直線部分と曲線部分の組合せでもよい。したがって、好ましくは、イオントラップは第1の軸に沿って細長い(すなわち細長方向で、それに直交する方向よりも長い)。すなわち、好ましくは、トラップは、ビームの方向とほぼ同一直線上に配置された長手軸を有する細長いトラップである。そのような実施形態では、好ましくは、トラップからのイオンの放出は別の方向であり、すなわちガスビーム方向に対してある角度(好ましくは直交)である。より好ましくは、ガスビームは、実質的に第1の軸に沿って指向される。これは、好ましくは、ビームの少なくとも一部が第1の軸の少なくとも一部を包むようなビームの発散であることを意味する。したがって、ガス粒子の運動ベクトルの主要成分が、第1の軸に沿って指向される。最も好ましくは、イオントラップは、第1の軸に沿って細長い直線状のイオントラップである。それにより、捕捉されたイオンは、かなりの相互作用長さにわたってガスビームと相互作用する。さらに好ましくは、捕捉領域内に捕捉すべきイオンは、実質的に第1の軸に沿ってトラップ内に注入される。1つの好ましい実施形態タイプでは、ガスビームは、実質的に第1の軸に沿って指向されるが、実質的に第1の軸に沿ってトラップ内に注入されるイオンとは逆向きである。別の好ましい実施形態タイプでは、ガスビームは、実質的に第1の軸に沿ってトラップ内にイオンが注入されるのと同じ方向に、実質的に第1の軸に沿って指向される。好ましくは、捕捉されたイオンは、第2の軸に沿ってイオントラップから放出され、第2の軸は第1の軸とは異なる。したがって、好ましい実施形態では、イオンを、それらがトラップに入るときに沿った軸とは異なる軸に沿ってイオントラップから放出させることができる。このようにして、有利には、ガスを通るイオンの加速によるイオンの断片化の危険が軽減される。ガスが第1の軸に沿って指向されるので、イオンを第2の軸に沿って放出することによって、イオンはガスビームに沿っては加速されず、ガスビーム外で加速される。より好ましくは、第2の軸は第1の軸に実質的に直交し、イオンが加速されるときにガスビーム内を進む経路長を最短にする。好ましくは、第2の軸の方向に進むガスビームの割合は、第1の軸の方向に進むガスビームの割合よりもかなり小さい。有利には、第2の軸に沿ったガスの流量は、実質的にゼロである。したがって、トラップは、好ましくは低圧トラップである。より好ましくは、トラップは、イオンの運動エネルギーを変えるためのガス、すなわち浴ガスによって不均一に加圧される。
【0015】
好ましい実施形態では、ガスビームを指向するステップが、ガスジェットを生成することを含む。ガスジェットは、周囲の媒体に投射されるただ1つの好ましい運動方向を有するガスのストリームである。好ましくは、この方法はまた、ガス入口またはノズルでガスを受け取るステップも含む。この場合、イオントラップ内部の圧力は、ガス入口の外部の圧力よりも大幅に低くすることができる。これにより、ガスは、超音速膨張によりイオントラップに入るときに断熱的に冷却される。任意選択で、イオントラップ内部のガスの温度は、受け取られるイオンの温度よりもかなり低い。任意選択で、イオントラップ内部のガスの温度は、イオントラップの温度よりもかなり低い。イオンが捕捉領域内に捕捉または貯蔵される一方で、捕捉領域を通して連続的にガスビームを指向することができ、あるいは、例えばガスビームをパルス化することによって捕捉領域を通して断続的にガスビームを指向することができる。ガスビームは、イオンが捕捉領域内に捕捉または貯蔵される時間全体にわたって、または時間全体よりも短い時間にわたって、捕捉領域を通して指向することができる。
【0016】
好ましい実施形態では、捕捉領域に入るガスビームの一部が、壁に衝突する前にイオントラップから出る。任意選択で、ガスビームのこの部分は、少なくとも10%であるが、より好ましくなっていく順で、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも90%とすることができる。
【0017】
任意選択で、イオントラップは、第1の軸に沿って配置された差動排気口を備える。このとき、この方法は、差動排気口の前記ガスに近い方の側で第1の圧力の領域を生成するステップと、差動排気口の他方の側で第2の圧力の領域を生成するステップとをさらに含み、第2の圧力が第1の圧力よりも低い。
【0018】
好ましくは、差動排気口が、スキマーコーンを使用して形成される。有利には、スキマーコーンが、ガス入口と、ガス入口を通って流れるガスのマッハディスクに対して識別される位置との間に位置される。すなわち、スキマーコーンは、ガス入口を通って流れるガスがフリージェット条件下でサンプリングされるように位置される。有利には、導入口は、イオンのイオン移動度分離を引き起こすために電位を受け取るように配置される。有益には、イオントラップは、このイオン移動度分離がイオントラップの第1の軸に沿って生じるように配置される。より一般には、様々な実施形態において、本発明の方法は、好ましくは、イオンの移動度に基づいてイオンの分離を引き起こすために捕捉領域にわたって電位勾配を印加するステップを含む。より好ましくは、そのような実施形態では、この方法は、第1の軸に沿ってガスビームを指向するステップと、第1の軸の方向で電位勾配を印加するステップとを含み、それにより、イオン移動度に基づくイオンの分離を第1の軸に沿って引き起こす。有益には、イオントラップは、イオンのイオン移動度分離がイオントラップの第1の軸に沿って生じるように、すなわち空間分離がこの軸に沿って生じるように配置される。好ましくは、分離されたイオンは、第1の軸とは異なる、より好ましくは第1の軸と同一直線上でない第2の軸に沿ってトラップから放出され、例えば第2の軸は第1の軸と直交する。好ましくは、第1の軸の方向で電位勾配が印加されて、ガスビームからの力と打ち消し合う電気的な力を生成し、それにより、特定のイオン移動度のイオンが、この電位勾配上の特定の点、すなわちこれらの2つの力が互いに打消し合う点で平衡し、すなわちそれにより空間内でのイオン移動度分離を行うことができる。電位勾配が変更または走査される場合、イオンのイオン移動度依存抽出(走査)を実施することができる。軸方向電場を有するイオントラップが米国特許第5,847,386号明細書によって教示されているが、トラップを通して指向されるガスビームの使用は、そこでは開示されていない。
【0019】
イオンは、いくつかの異なる構成で捕捉することができる。1つの好ましい実施形態では、受け取られたイオンを捕捉するステップが、1組の四重極ロッドを使用する。別の方法として、受け取られたイオンをイオントラップ内で捕捉するステップは、巡回経路に沿って進むようにイオンを指向するステップを含み、巡回経路は第1の軸を含む。例えば、電極のレーストラック構成が、回路を提供するために使用されることがある。
【0020】
本発明の第2の態様では、イオンの運動エネルギーを変えるためのイオントラップが提供される。イオントラップは、電極構成と、ポンピング構成と、制御装置とを備え、制御装置が、受け取られたイオンを捕捉領域内に捕捉するために前記電極構成を制御するように構成され、かつ前記捕捉領域を通してガスビームを指向するためにポンピング構成を制御するように構成され、それにより捕捉されたイオンの運動エネルギーを変える。好ましくは、ガスは冷却ガスであり、イオンを冷却するように構成される。
【0021】
好ましくは、捕捉領域が第1の軸を備える。好ましくは、制御装置は、捕捉されたイオンをイオントラップから第2の軸に沿って放出するために電極構成を制御するようにさらに構成される。任意選択で、第2の軸は第1の軸に直交する。
【0022】
好ましい実施形態では、制御装置は、ガスジェットを生成するためにポンピング構成を制御するようにさらに構成される。任意選択で、制御装置は、イオントラップ内部の圧力がガス入口のイオントラップとは反対の側での圧力よりもかなり低くなるようにポンピング構成を制御するようにさらに構成される。
【0023】
いくつかの実施形態では、イオントラップはまた、第1の軸に沿って配置された差動排気口を備えることもできる。この場合、制御装置は、差動排気口のガス入口に近い方の側で第1の圧力の領域を生成し、差動排気口の他方の側で第2の圧力の領域を生成するために前記ポンピング構成を制御するようにさらに構成することができる。有利には、第2の圧力は第1の圧力よりも低い。
【0024】
任意選択で、差動排気口は、スキマーコーンを使用して形成される。好ましくは、スキマーコーンが、ガス入口と、ガス入口を通って流れるガスのマッハディスクに対して識別される位置との間に位置される。すなわち、スキマーコーンは、ガス入口を通って流れるガスがフリージェット条件下でサンプリングされるように位置される。有利には、この方法は、イオンを、捕捉される前に導入口を通してイオントラップに入れるステップと、イオンのイオン移動度分離を引き起こすように導入口に電位を印加するステップとをさらに含む。有益には、このイオン移動度分離は、イオントラップの第1の軸に沿って行われる。
【0025】
一実施形態では、電極構成は、1組の四重極ロッドを備える。代替実施形態では、電極構成は、第1の軸を含む巡回経路内に構成され、制御装置は、イオンが巡回経路に沿って進むように指向されるように電極構成を制御するようにさらに構成される。
【0026】
本発明のさらなる態様では、イオンの運動エネルギーを変えるためのイオントラップであって、受け取られたイオンをイオントラップの捕捉領域内で捕捉するための手段と、捕捉領域を通してガスビームを指向するための手段とを備えて、それにより捕捉されたイオンを冷却する。好ましくは、ガスは冷却ガスであり、イオンを冷却するように構成される。
【0027】
本発明のさらなる態様では、前述したようなイオントラップと、冷却されたイオンをイオントラップから受け取るように構成された質量分析器とを備える質量分析計が提供される。好ましくは、質量分析計は、イオンを発生するように構成されたイオン源も備える。任意選択で、イオントラップは第1のイオントラップでよく、第2のトラップを提供することもでき、イオン源と第1のイオントラップの間に位置される。この場合、有利には、第2のイオントラップはガスで充填される。好ましい実施形態では、質量分析器は、Orbitrapタイプの質量分析器、飛行時間質量分析器、または多重巻構成もしくは多重反射構成の少なくとも一方を備える飛行時間質量分析器のうちの1つを備える。
【0028】
本発明のさらなる別の態様では、第1の軸を備える捕捉領域を有するイオントラップと、第1の軸に沿って捕捉領域を通してガスビームを指向するための手段と、第1の軸の方向で電場を印加するための手段とを備えるイオン移動度分離装置が提供される。好ましくは、装置は、イオンが第1の軸に沿って、より好ましくはガスビームと逆向きで捕捉領域に入るようにするための手段をさらに備える。
【0029】
好ましい実施形態では、イオントラップは、捕捉すべきイオンを発生させるためのイオン源と、捕捉領域を通してガスビームを指向するための手段との中間に位置され、イオントラップと、イオン源と、捕捉領域を通してガスビームを指向するための手段とが、ほぼ直線状の構成(すなわち直線構成)で配置される。そのような実施形態でさらに好ましくは、イオン源と、捕捉領域を通してガスビームを指向するための手段とが、捕捉領域の第1の軸上に実質的に位置する。
【0030】
いくつかの実施形態では、この方法は、ガスビームまたはジェットを変調するステップをさらに含むことができる。好ましくは、ガスビームの密度が時間変調される。有利には、イオンは、捕捉領域内のガスビームの密度が所定の最高レベルよりも低くなるときに放出される。
【0031】
そのような変調は、好ましくはパルス弁によって行われ、捕捉領域を通って進む一連のガスプラグを生成する。例えば、これは、ガスプラグが伝達されるときにイオンを冷却でき、プラグ間のギャップ時間中にイオンを抽出できるようにすることがある。さらに、これは、抽出プロセス中のイオンとガスの相互作用を減少させることができる。一実施形態では、抽出されたイオンが沿って進む経路内にさらなる弁が位置される。この弁は、イオンが分析器に向かって進むことができるようにする目的でのみ開かれる。これは、捕捉領域および分析器外部の他の領域からの分析器に対するガス負荷を減少させ、差動排気を使用しなくてよく、複雑さを減らし、コストを節約する。パルス弁は、例えば圧電式または電磁式の構成を備えることがあり、パルスでまたは調和振動して動作することがあり、捕捉領域から分析器内へのイオンの注入に同期される。
【0032】
本発明は様々な様式で実施することができるが、以下、それらのいくつかを、単に例として添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による方法および質量分析計の第1の好ましい実施形態を示す図である。
【図2】本発明による方法および質量分析器の第2の実施形態を示す図である。
【図3】本発明による方法および質量分析計の第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
まず図1を参照すると、本発明による質量分析計の第1の実施形態が示されている。イオンが、イオン源10から第1の開口20を通してイオントラップ25内に導入され、イオントラップ25は、好ましくは四重極であるロッド30の拡張された組によって画定される。ロッド30は、第1の開口20と第2の開口40によって境界を画される長手方向軸35を定義する。質量分析器50が、長手方向軸に垂直な方向でイオントラップに隣接して提供される。外部ガスライン95がノズル90に結合され、ノズルに隣接するスキマーコーン80が差動排気口を画定する。
【0035】
RF電位がイオントラップ25のロッド30に印加され、それによりイオンは、イオントラップの長手方向軸35に沿って指向される。イオンは、第1の開口20と第2の開口40に印加される電圧によって軸方向で閉じ込められる。ガスが、外部ガスライン95からノズル90を通って第1のポンピング領域85内に進み、質量分析計に入る。それにより、外部ガスライン95からポンピング領域85内に受け取られるガスの超音速膨張によって、ガスがガスジェット70を生成する。スキマーコーン80は、ガスジェット70の小さい発散を保証するために、ノズル90から十分に離して位置される。次いで、ガスジェット70は、第2のポンピング領域75を通して長手方向軸35に沿って指向される。
【0036】
それにより、ガスジェットは、イオンとの相互作用によって、イオントラップ25内に捕捉されているイオンを冷却する。イオンは、冷却された後、放出軸60に沿って直交方向に、分析用の質量分析器50内に放出することができる。質量分析器50は、Orbitrap(商標)である。
【0037】
ガス圧、温度、ポンピング、およびノズル90とスキマーコーン80の幾何的パラメータは、スキマーの先端がマッハディスクを通ってフリージェット内に入るように選択される(例えば、Beijerinck他、Chem.Phys.96(1985)153〜173およびその参考文献参照)。例えば、大気条件での窒素またはアルゴンを使用することができ、直径50ミクロンのノズルを通して、200L/sターボ分子ポンプによって排気された領域85内に入れて膨張させる。ガスジェットマッハディスクは、ノズル90から約24mmの位置に配置され、このときスキマー80は、ノズル90から約12〜15mmの位置に配置することができる。
【0038】
スキマーコーン80のサイズおよび形状は、スキマーコーン80を通る流れを減少させることがある離脱衝撃波の発生を最小限に抑えるように選択されることが好ましい。例えば、内径1mmであり、縁部が鋭利であり、70度(内側)および90度(外側)の拡がり角をもつスキマーコーン80が好ましい。イオントラップは、スキマーに近接して、例えばスキマーから10〜20mm離して位置される。トラップ内で必要なガス流は、従来の衝突冷却に関する既知のガス厚さを使用して概算することができる(約(1...3)*1019mol/m2)。これらの条件で、数ミリ秒間、冷却が行われる。ガス密度を増加させることによって冷却を加速することができ、ガス密度の増加は、外部ガスライン95にガスを供給するガスリザーバ内の圧力の増加によって実現される。
【0039】
従来のイオントラップとは異なり、局所的に高い圧力を生成するためにトラップを取り囲む必要はない。逆に、より「開かれた」ロッド構成により、トラップ25から質量分析器50へのイオン抽出中の衝突を最小限に抑えることができる。
【0040】
上述した実施形態に対する代替形態および改良形態が可能である。受け取られたイオンの深冷を実現するために、低温のガスジェット分子を使用することができる。深冷は、イオンがジェットとほぼ同じ速度で移動し、同時にRF場によって閉じ込められる場合に実現される。
【0041】
この原理の実装形態が図2に示されている。図2には、本発明による質量分析計の第2の実施形態が示されている。図1と同じ機能を図示する場合、同一の参照番号を使用する。イオントラップ100は、レーストラック形状で形成され、第1の区域110、第2の区域120、第3の区域130、および第4の区域140を備える。
【0042】
イオン源10内で発生されたイオンが、イオントラップ100に向けて指向される。イオントラップ100の区域120に印加される電位は、イオンが到達できるように、例えば数十マイクロ秒間、オフに切り替えられる。注入されたイオンは、イオントラップ100の周回に沿って移動する。ガスジェット70が、ノズル90およびスキマーコーン80を通して発生され、それにより区域110に向けて指向される。イオントラップ100内に捕捉されているイオンは、ガスジェット70を周期的に通過し、速度と温度の両面でガス分子とより一層平衡される。本明細書で言及するとき、捕捉領域を通るビームの指向とは、捕捉領域の少なくとも一部を通るビームの指向を意味することを理解されたい。例えば、図2では、ガスジェットは、捕捉領域の一部分、すなわち区域110を通して指向される。
【0043】
イオンは、複数回の巡回の後に平衡状態に達し、抽出の準備が整う。次いで、イオントラップ100の区域140がオフに切り替えられて、イオンがパルス発生器150内に進むことができるようにする。イオンは、パルス発生器150から質量分析器50に注入される。異なるm/zのイオンが実質的に同じ速度を有するので、イオントラップ100からパルス発生器150への移送中の質量差別は最小限に抑えられる。
【0044】
デューティサイクルを増加させるために代替構成を採用することができ、これも図2に示されている。イオンが区域130内に達した後に区域140および区域120に反射電位を印加し、次いで先の区域130での電圧を徐々に減少させて、区域130内でイオンを断熱捕捉することによって、イオンがレーストラックを移動する間にイオンを区域130内で停止させることができる。区域130内の圧力が非常に低いので、内部イオン温度は擾乱を受けない。
【0045】
この圧搾プロセスの終了時、区域120から反射電位を除去することによって、イオンは別のパルス発生器151内に解放される。次いで、イオンは、別の質量分析器51に放出される。しかし、この構成では、圧搾によりエネルギー幅が増大する。
【0046】
図3を参照すると、本発明による第3の実施形態が示される。図1および図2と同じ機能を図示する場合、同一の参照番号を使用する。例えば国際公開第2008/081334号パンフレットに説明されているようなC字形トラップ形状のイオントラップ200が提供され、このイオントラップ200は複数の細長い電極230によって画定され、そのうちの少なくともいくつかは、それらの長手軸に沿って湾曲している。細長い電極230は捕捉領域の長手軸235を定義し、したがって長手軸235はわずかに湾曲している。質量分析器50が、捕捉領域の長手軸235に直交する方向でC字形トラップ200に隣接して提供される。C字形トラップ200は、図1のイオントラップ25と同様に、その周囲に開いている。これは、イオントラップにおいて典型的なことではなく、イオントラップは通常、それらの周囲に比べて高い圧力で動作され、その高い圧力は、衝突ガスの閉じ込めおよび供給によって維持される。C字形トラップ200は、そうではなく、典型的には約1×10-4mbar以下の低いトラップ内圧で動作され、この内圧は、イオントラップにおいて通常見られる圧力よりも低い。トラップのすぐ周囲の圧力は、典型的には約1×10-5〜1×10-6mbarである。
【0047】
イオンは、イオン源10から八重極ガイド280および第1の開口220を通って、実質的に長手軸235に沿ってイオントラップ200内に導入される。イオンがイオントラップの長手軸235に沿って指向されるように、イオントラップ200の電極230にRF電位が印加される。イオンは、第1の開口220と第2の開口240に印加される電圧によって軸方向で閉じ込められる。
【0048】
C字形トラップ200と連絡する衝突セル290は、トラップ200に比べて高い圧力で動作される。囲壁内での衝突セル290の圧力は、1×10-2mbar〜1×10-3mbarの範囲である。この例での衝突セル290とC字形トラップ200の圧力差は約100倍である。衝突セル290からのガスは、衝突セルの開口(図示せず)を通り、開口240を通ってC字形トラップ200に入る。衝突セル290の形状および構成(例えば、衝突セルの囲壁の形状や、衝突セル内部のロッドまたは積層プレートの配置)が、ガスビーム270の発生を促し、このビーム270は、超音速ガスジェットよりも大きい発散ではあるが、小さい発散で実質的に長手軸235に沿って進む。したがって、捕捉領域の長手軸235のわずかに湾曲した性質は、ガスビーム270のわずかな発散によって相殺される。ガスビーム270は、イオンとの相互作用によって、C字形トラップ200内に捕捉されているイオンを冷却する。イオンは、冷却された後、放出軸260に沿って直交方向に、分析用の質量分析器50内に放出することができる。質量分析器50は、Orbitrap(商標)である。
【0049】
イオン注入、捕捉領域の長手軸、およびガスビームの方向は、ほぼ同一直線上にあり(すなわち小さな角度公差の範囲内にあり)、また、C字形トラップからの放出は長手軸に対してある角度であることが分かる。
【0050】
ビーム270からのガス負荷は、イオン導入口220およびC字形トラップ200の上下を通して逃がされる。
【0051】
代替または追加の動作モードでは、イオンは、C字形トラップ200に入り(任意選択で、C字形トラップ内で中間貯蔵され)、C字形トラップから長手軸235に沿って衝突セル290に放出され、衝突セル290内で断片化され、および/または反応を受け、次いで衝突セル290からガスビーム270と共にC字形トラップ200内に再び注入される。
【0052】
いくつかの具体的な実施形態を説明してきたが、当業者は、様々な修正形態および置換形態を企図することができる。イオントラップを制御するために、例えばトラップのロッドでの電位およびポンピング構成を制御するために、制御装置を提供することができる。例えば、直線状のロッド30を有する四重極イオントラップ25を考察したが、別の方法として、ロッドが湾曲し、長手方向軸も同様に湾曲していてもよい。また、上では四重極ロッドを使用したが、当業者には理解されるように、別の方法として、これらは六重極、八重極、または任意の他の拡張されたロッド、またはプレート形状でもよい。同様に、質量分析器50はOrbitrap(商標)であるが、当業者は、捕捉質量分析器など同様のタイプ、または飛行時間タイプの質量分析器を理解されよう。飛行時間タイプの質量分析器は、多重反射分析器、および追加または代替として多重巻分析器を含むことがある。これらのタイプの分析器は残留ガス圧の影響を特に受けやすいので、提案した解決策は、これらの分析器に特に有益である。これは特に、質量が比較的大きいイオンに関して当てはまる。さらに、イオンの初期エネルギー幅が減少されるとき、これらの分析器の分解能が高まる。
【0053】
衝撃波を発生させずにジェット膨張が行われる場合、ガス分子を、速度の幅を狭くして10K〜30Kまで冷却することができる。イオンの捕捉中、この冷却がイオンに影響を及ぼし、(特にイオン数が少なく、したがって空間電荷効果を無視できるときに)イオンの運動エネルギーおよび内部エネルギーを大幅に減少させる。これは、分解能、質量精度、伝達率など、上述した分析器の分析パラメータを改良する。高分子イオン(タンパク質やDNAなど)に関しては、内部エネルギーの減少は、質量分析器内での飛行中の準安定崩壊が減少するという追加の利点をもたらす。
【0054】
当業者は、ガスジェット70を得るために多くの異なる方法があることを理解されよう。本明細書では外部ガスライン95を説明したが、そうではなく、これは単に大気でもよい。別の方法として、スキマーコーン80が開口40の働きをすることもある。ガスジェットの発生に関してターボ分子ポンプを上述したが、当業者は、別の方法として回転式ポンプを使用することもできることを理解されよう。
【0055】
第1の実施形態の好ましい実装形態では、イオントラップ25は、イオン源10とイオントラップ25の間に位置された従来のガス充填イオントラップと組み合わせることができる。これは、イオンの事前冷却(すなわち内部運動エネルギーの大部分の除去)のために使用することができる。このために、この追加のトラップを、ガスジェットがイオントラップ25を通過した後のガスジェット用のシンクとして使用し、次いでポンピングの送達率を<1L/sに制限すれば十分である。当然、ガスを専用のガスラインまたは先のポンピング領域85から送達することもできる。
【0056】
静的ガスジェットを上述してきたが、他の形態のガスジェットも可能である。さらなる実施形態では、ガスジェットはパルス弁によって変調され、パルス弁は、ノズル90の近くに位置されて、捕捉領域を通って飛行する一連のガスプラグを生成する。これにより、例えば、上述したようにこれらのガスプラグによってイオンを冷却することができるが、プラグ間のギャップ時間中にイオンを抽出することができ、したがって抽出プロセス中のイオンとガスの相互作用を減少させる。別の弁を抽出経路に位置させることができ、この弁は、分析器に向けたイオン抽出および輸送の時間中にのみ開き、したがって差動排気の使用を減らす、または完全になくす。パルス弁は、圧電式または電磁式のものでよく、パルスでまたは調和振動して動作することができる。弁の切替え時間または振動期間は、数百〜数千マイクロ秒の範囲であることが好ましい。
【0057】
ジェット膨張が安定に保たれており、好ましくはガス分子およびイオンの低い温度によって達成されている場合、イオンは膨張方向に沿って一定の力を受ける。この力は、イオンのガスダイナミック断面積および荷電状態、すなわちイオン移動度に比例する。開口20に電圧を印加することによって電位勾配が生成されて、打ち消し合う電気的な力を生成する場合、特定のイオン移動度のイオンが、この電位勾配上で、これら2つの力が互いに打ち消し合う一点で平衡し、すなわち空間内でのイオン移動度分離を行うことができる。開口20での電圧が変更または走査される場合、イオンの移動度依存抽出(走査)を実施することができる。これは、検出用の質量分析計を使用して、または使用せずに、さらなる次元のイオン分離のための基礎として使用することができる。例えば、この分離は、多価イオンから1価イオンを分離するために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンの運動エネルギーを変える方法であって、
イオントラップの捕捉領域内にイオンを捕捉するステップと、
前記捕捉領域を通してガスビームを指向するステップとを含み、それにより前記捕捉されたイオンの運動エネルギーを変え、前記捕捉されたイオンを実質的に解離させない方法。
【請求項2】
前記ガスビームが、実質的に一方向に沿って伝播する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉領域が第1の軸を定義し、前記ガスビームが前記第1の軸に沿って指向され、前記方法が、
捕捉されたイオンを前記イオントラップから第2の軸に沿って放出するステップ
をさらに含み、前記第2の軸が前記第1の軸とは異なる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の軸が前記第1の軸に直交する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記トラップが、前記第1の軸に沿って細長く、前記第1の軸が、前記捕捉領域を通るガスビームの方向とほぼ同一直線上に位置される請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
イオンを実質的に前記第1の軸に沿って前記トラップ内に注入するステップを含む請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
ガスを指向するステップが、ガスジェットを生成することを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
イオンを貯蔵および冷却する方法である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ガスをガス入口で受け取るステップをさらに含み、
前記イオントラップ内部の圧力が、前記ガス入口の前記イオントラップとは反対の側での圧力よりもかなり低い請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記イオントラップが、前記第1の軸に沿って配置された差動排気口を備え、前記方法が、
前記差動排気口の前記ガス入口近い方の側で第1の圧力の領域を生成するステップと、
前記差動排気口の他方の側で第2の圧力の領域を生成するステップと
をさらに含み、前記第2の圧力が前記第1の圧力よりも低い請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記差動排気口が、スキマーコーンを使用して形成される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スキマーコーンが、前記ガス入口と、前記ガス入口を通って流れるガスのマッハディスクに対して識別される位置との間に位置される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ビームなしでの前記イオントラップの圧力自体が、前記トラップ内にイオンを貯蔵できないほど低い請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ビームなしでの前記イオントラップ内の圧力が、約1×10-4mbar以下である請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
イオンの移動度に基づいて前記イオンの分離を引き起こすように前記捕捉領域にわたって電位勾配が印加される請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記イオンを、捕捉される前に導入口を通して前記イオントラップに入れるステップと、
イオンの移動度に基づいてイオンの分離を引き起こすように導入口に電位を印加するステップと
をさらに含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
受け取られたイオンを捕捉するステップが、1組の四重極ロッドを使用する請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記捕捉領域が巡回経路を備え、前記巡回経路が第1の軸を含む請求項3〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ガスビームの密度を変調するステップをさらに含む請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
イオンの運動エネルギーを変えるためのイオントラップであって、
電極構成と、
ポンピング構成と、
制御装置とを備え、前記制御装置が、受け取られたイオンを捕捉領域内に捕捉するために前記電極構成を制御するように構成され、かつ前記捕捉領域を通してガスビームを指向するために前記ポンピング構成を制御するように構成され、それにより前記捕捉されたイオンの運動エネルギーを変え、前記捕捉されたイオンを実質的に解離させないイオントラップ。
【請求項21】
イオンを受け取るように構成された導入口をさらに備える請求項20に記載のイオントラップ。
【請求項22】
前記捕捉領域が第1の軸を備え、前記制御装置が、捕捉されたイオンを前記イオントラップから第2の軸に沿って放出するために前記電極構成を制御するようにさらに構成され、前記第2の軸が前記第1の軸とは異なる請求項20または21に記載のイオントラップ。
【請求項23】
前記第2の軸が前記第1の軸に直交する請求項22に記載のイオントラップ。
【請求項24】
前記制御装置が、ガスジェットを生成するために前記ポンピング構成を制御するようにさらに構成される請求項20〜23のいずれか一項に記載のイオントラップ。
【請求項25】
前記制御装置が、前記イオントラップ内部の圧力がガス入口の外部の圧力よりもかなり低くなるように前記ポンピング構成を制御するようにさらに構成される請求項20〜24のいずれか一項に記載のイオントラップ。
【請求項26】
前記第1の軸に沿って配置された差動排気口をさらに備え、
前記制御装置が、前記差動排気口の前記ガス入口に近い方の側で第1の圧力の領域を生成し、前記差動排気口の他方の側で第2の圧力の領域を生成するために前記ポンピング構成を制御するようにさらに構成され、前記第2の圧力が前記第1の圧力よりも低い請求項25に記載のイオントラップ。
【請求項27】
前記差動排気口が、スキマーコーンを使用して形成される請求項26に記載のイオントラップ。
【請求項28】
前記スキマーコーンが、前記ガス入口と、前記ガス入口を通って流れるガスのマッハディスクに対して識別される位置との間に位置される請求項27に記載のイオントラップ。
【請求項29】
前記制御装置が、前記ビームなしでの前記イオントラップ内部の圧力自体が前記トラップ内にイオンを貯蔵できないほど低くなるように前記ポンピング構成を制御するようにさらに構成される請求項20〜28のいずれか一項に記載のイオントラップ。
【請求項30】
前記制御装置が、前記ビームなしでの前記イオントラップ内部の圧力が約1×10-4mbar以下であるように前記ポンピング構成を制御するようにさらに構成される請求項20〜29のいずれか一項に記載のイオントラップ。
【請求項31】
前記導入口が、前記イオンのイオン移動度分離を引き起こすように電位を受け取るように構成される請求項21に従属したときの請求項28に記載のイオントラップ。
【請求項32】
前記電極構成が、1組の四重極ロッドを備える請求項20〜31のいずれか一項に記載のイオントラップ。
【請求項33】
前記電極構成が、前記第1の軸を含む巡回経路内に構成され、前記制御装置が、前記捕捉領域が前記巡回経路を備えるように前記電極構成を制御するようにさらに構成される請求項20〜31のいずれか一項に記載のイオントラップ。
【請求項34】
イオンの運動エネルギーを変えるためのイオントラップであって、
受け取られたイオンを前記イオントラップの捕捉領域内で捕捉するための手段と、
前記捕捉領域を通してガスビームを指向するための手段とを備え、それにより前記捕捉されたイオンの運動エネルギーを変え、前記捕捉されたイオンを実質的に解離させないイオントラップ。
【請求項35】
請求項20〜34のいずれか一項に記載のイオントラップと、
前記イオントラップから冷却されたイオンを受け取るように構成された質量分析器と
を備える質量分析計。
【請求項36】
前記質量分析器が、Orbitrapタイプの質量分析器、飛行時間質量分析器、または多重巻構成もしくは多重反射構成の少なくとも一方を備える飛行時間質量分析器のうちの1つを備える請求項35に記載の質量分析計。
【請求項37】
イオンを分離する方法であって、イオンがイオントラップの捕捉領域の第1の軸に沿って前記捕捉領域に入るようにするステップと、前記第1の軸に沿ってガスビームを指向し、前記第1の軸の方向で電位を印加して、イオン移動度に基づいてイオンの分離を引き起こすステップとを含む方法。
【請求項38】
第1の軸を備える捕捉領域を有するイオントラップと、前記第1の軸に沿って前記捕捉領域を通してガスビームを指向するための手段と、前記第1の軸の方向で電場を印加するための手段とを備えるイオン移動度分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−503298(P2012−503298A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528285(P2011−528285)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061822
【国際公開番号】WO2010/034630
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(508306565)サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】