イオントラップ装置に平衡なRF電界を実現するためのシステム及び方法
【課題】四重極イオントラップ内の電界歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を効果的に補正するためのシステム及び方法。
【解決手段】イオントラップにおいて非線形の電界成分を減少させ、最小の中心線高周波電位を生み出す幾何学的表面形状によって補正が行われる。イオントラップは、イオントラップの内部の捕捉容積部を長手方向に貫通する中心線と、中心線にほぼ平行である内部Y電極表面を有する1対のY電極と、中心線にほぼ平行である内部X電極表面を有する1対のX電極とを含む。X電極は1又はそれ以上の放出スロットを有し、捕捉されたイオンが該放出スロットを通じて前記イオントラップから放出される。内部Y電極表面は、各々がY曲率半径を有し、内部X電極表面は、各々がX曲率半径を有する。X曲率半径は、Y曲率半径よりも小さくなるように選択される。イオントラップの中心線に平衡な中心線電位が与えられる。
【解決手段】イオントラップにおいて非線形の電界成分を減少させ、最小の中心線高周波電位を生み出す幾何学的表面形状によって補正が行われる。イオントラップは、イオントラップの内部の捕捉容積部を長手方向に貫通する中心線と、中心線にほぼ平行である内部Y電極表面を有する1対のY電極と、中心線にほぼ平行である内部X電極表面を有する1対のX電極とを含む。X電極は1又はそれ以上の放出スロットを有し、捕捉されたイオンが該放出スロットを通じて前記イオントラップから放出される。内部Y電極表面は、各々がY曲率半径を有し、内部X電極表面は、各々がX曲率半径を有する。X曲率半径は、Y曲率半径よりも小さくなるように選択される。イオントラップの中心線に平衡な中心線電位が与えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する本発明の実施形態は、一般に、イオントラップ装置を実現するための技術に関し、より具体的には、イオントラップ装置において平衡な高周波(RF)電解を実現するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析計測を実行する効果的な方法を開発することは、現代の電子分析機器の設計者及び製造者にとって重要な検討課題である。しかしながら、電子装置を用いて分析手順を効果的に行うことにより、システム設計者に対して多くの課題が生み出される可能性がある。例えば、装置の機能性及び性能の強化に対する要求が増加することにより、より多くのシステム機能が必要となり、追加の資源が必要となる可能性がある。機能性又はその他の要件の増加により、生産コスト及び経営の非効率性が増加した結果、これに対応する不利益な経済的影響がもたらされる可能性もある。
【0003】
さらに、様々な強化された動作を行うためのシステム能力により、システムユーザに付加的な利益がもたらされる場合もあるが、様々な装置の構成要素の制御及び管理に関するさらなる要求が突きつけられる可能性もある。例えば、いくつかの実施形態では、イオントラップ装置を利用して、イオン化した試験サンプルに対して様々な分析手順を行うことができる。イオントラップの1又はそれ以上の放出スロットを通じ、質量選択方法で、イオントラップ内に捕捉された試験サンプルから得られるイオンを放出又は「スキャンアウト」することができ、この放出されたイオンを検出することにより、注入された試験サンプルに対応するマススペクトルを作り出すことができる。
【0004】
このような放出スロットの利用により、イオントラップの電磁界特性がいくつかの望ましくない非線形特性を示すようになる場合がある。イオン化した試験サンプルの最適化された分析を行うために、イオントラップは、電界特性ができる限り線形の状態で理想的に作動すべきである。従って、いくつかの実施形態では、イオントラップの物理的特性の選択を、この放出スロットを補うように行うことができ、これによりイオントラップ内により線形の電界特性が得られるようになる。
【0005】
イオントラップの物理的な容積を変更することにより非線形の電界特性を改善することができるが、これは同時にイオントラップに非平衡な中心線電位をもたらす可能性がある。このような非平衡な中心線電位は、イオントラップの作動中に様々な動作問題を引き起こす可能性がある。例えば、入ってくるイオンが非平衡な中心線電位に影響を受ける場合、イオントラップ内にイオン化した試験サンプルを挿入するイオン注入手順が悪影響を受ける可能性がある。この非平衡な中心線電位により、イオントラップ装置の捕捉効率において、低い注入効率又は深刻なマスバイアスがもたらされる可能性がある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,797,950号公報
【特許文献2】米国特許第5,420,425号公報
【非特許文献1】Raymond E.March及びJohn F.J.Todd編集、CRCシリーズ現代質量分析、「イオントラップ質量分析の基礎」、第1巻、「イオントラップ質量分析の実用面」第4(IV)章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
システム資源に対する要求の増大及び分析要件の複雑性が増加することにより、関連する電子技術にとって分析計測を実行するための新しい技術の開発が懸案事項となることは明らかである。従って、全ての前述の理由から、分析計測を実行するための有効な技術の開発は、現代の分析機器の設計者、製造者及びユーザにとって依然として重要な検討課題のままとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、四重極イオントラップにおける電界の歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を効果的に補正するためのシステム及び方法が開示され、この補正は、イオントラップにおいて非線形の電界成分を減少させると共に、最小中心線の高周波電位を生み出す幾何学的表面形状により行われる。1つの実施形態では、このイオントラップは、以下に限定されるわけではないが、各々が中心線の周りに配置された1対のY電極及び1対のX電極と、イオントラップ内の捕捉容積部を長手方向に貫通するZ軸とを含む。いくつかの実施形態では、これらの電極の少なくとも1つは、注入されたイオンをイオントラップからスキャンするための1又はそれ以上の放出スロットを含む。
【0009】
中心線を通ってY電極間に延びるY軸に沿って、Y電極の分離距離を定めることができる。同様に、中心線を通ってX電極間に延びるX軸に沿って、X電極の分離距離を定めることができる。本実施形態では、Yの分離距離とXの分離距離とはほぼ同じ長さとなる。いくつかの実施形態では、イオントラップ内に注入されたイオンの捕捉に影響を与えるY高周波(RF)信号がY電極に印加される。同様に、イオントラップ内に注入されたイオンの捕捉に影響を与えるX高周波(RF)信号がX電極に印加される。しかしながら、これらの電圧及びこれらの効果は必ずしも排他的なものではない。YのRF信号とXのRF信号とは通常同じ周波数であり、互いに位相が180度ずれている。さらに本実施形態では、YのRF信号とXのRF信号とは通常ほぼ同じ電圧レベルとなる。
【0010】
いくつかの実施形態では、放出スロットによって生じる非線形の電界特性を効果的に補正しながら、同時にイオントラップの中心線に平衡電位を与えるために、X電極の曲率半径がY電極の曲率半径に対して小さくなるようにX電極の形状を選択する。
【0011】
いくつかの実施形態では、Y電極及びX電極は、各々が中心線に面する双曲線の内部電極表面で実現される。しかしながら、他の任意の効果的な電極の幾何学的表面形状を代替として利用することもできる。本発明によれば、任意の適切な容積又は幾何学的表面形状を選択して、イオントラップの中心線において平衡の又は約ゼロボルトのRF電位を生み出すことができる。電極形成の結果、イオントラップは大幅に改善された線形の電界特性を示し、非線形の電界成分は最小化される一方で、中心線に平衡の又は約ゼロボルトのRF電位を生じるようにもなる。少なくとも前述の理由から、本発明は、イオントラップに平衡なRF電界を効果的に実現するための改善されたシステム及び方法を提供する。
【0012】
本発明の性質及び目的をより良く理解するために、添付の図面と併せて行う以下の詳細な説明を参照されたい。図面のいくつかの図を通じて、同様の参照番号は対応する部品を意味するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は分析計測技術における改善に関する。当業者が本発明を作り、使用できるように、以下の説明及び説明図を示し、特許出願及びその要件との関連において提供する。当業者であれば、開示する実施形態に対する様々な変形が明らかとなるであろうし、本明細書における一般的な原理を他の実施形態に応用することもできる。従って、本発明は、図示の実施形態に限定されることは意図されておらず、本明細書で説明する原理及び特徴と一致する最も広い範囲を含むことになる。
【0014】
まず図1を参照すると、本発明の1つの実施形態によるイオントラップ112の立面図が示されている。代替の実施形態では、図1〜図12に示す実施形態と併せて説明する構成要素及び構成のいくつかに加えて、或いはそれらの代わりに、別の構成要素及び構成を使用して図1〜図12の実施形態を実施することができる。例えば、図1の実施形態は3つに区切ったイオントラップ112を示しているが、本発明はこの特定の断面構成に限定されるものではない。また、図1〜図12は、本発明のいくつかの原理を図示し、説明するために本明細書で提示する図面を示したものであり、従って、図1〜図12は描く対象を絶対尺度で表した図面であると必ずしも解釈すべきではない。
【0015】
図1の実施形態では、イオントラップ112は、以下に限定されるわけではないが、垂直なY軸に沿い向かい合って配列した1対のY電極116(a)及び116(b)を含む。また、イオントラップ112は、水平なX軸に沿い向かい合って配列した1対のX電極120(a)及び120(b)も含む。図1の実施形態では、上述の水平なX軸は、垂直なY軸から約90度回転している。電極116(a)、116(b)、120(a)及び120(b)の各々は、イオントラップ112内の捕捉容積部を通って中心線を形成する長手方向のZ軸にほぼ平行である。前述のZ軸は、X軸及びY軸の両方に対してほぼ直角である。
【0016】
作動中、イオントラップ112内に注入されたイオンを収容するために、様々な選択された捕捉電位が、X電極120(a)及び120(b)、並びにY電極116(a)及び116(b)に印加される。図1の実施形態では、上述の捕捉電位は、任意の有効な信号源から生じた適当な高周波(RF)信号を含むことができる。次に、イオン化した試験サンプルから得られるイオンを、イオントラップ112のイオン注入端部を通じて捕捉容積部に注入することができる。次に、イオントラップ112内のイオンを、X電極120(a)及び120(b)の対向する放出スロット124を通じて、質量選択方法で半径方向に放出又はスキャンアウトすることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、イオントラップ112は、異なる数の放出スロット124(例えば、単一の放出スロット124)を有することができる。放出されたイオンを検出することにより、注入された試験サンプルに対応するマススペクトルを生み出すことができるという利点が得られる。イオントラップの様々な実施形態に関するより詳細な説明は、2004年9月28日に発行された「質量分析計として作動する二次元四重極イオントラップ」と題する米国特許第6,797,950号、及び1995年5月30日に発行された「イオントラップ質量分析計システム及び方法」と題する米国特許第5,420,425号において見い出すことができる。イオントラップ112の実施形態及び機能性について、図2〜図11と併せて以下さらに説明する。
【0018】
ここで図2を参照すると、図1のイオントラップ112の1つの基本的な実施形態の断面図が示されている。図2の実施形態は、Z軸(図1を参照)に沿ってイオントラップ112の片側から見た形のイオントラップ112の断面を示したものである。図2の実施形態では、イオントラップ112は、以下に限定されるわけではないが、Y電極116(a)、Y電極116(b)、X電極120(a)及びX電極120(b)を含み、これらの各々は、Z軸に沿ってイオントラップ112の捕捉容積部を長手方向に貫通する中心線214の周りに配置される。図2の実施形態では、X電極120(a)は、イオントラップ112からイオンをスキャンアウトするための放出スロット124(a)を含み、X電極120(b)も同様に放出スロット124(b)を含む。
【0019】
図2の実施形態では、Y軸は、Y線分216(a)及びY線分216(b)から形成されている。Y線分216(a)は、中心線214からY電極116(a)までの距離であり、Y線分216(b)は、中心線214からY電極116(b)までの距離である。図2の実施形態では、Y線分216(a)及び線分216(b)はほぼ同じ長さであり、すなわち実質的に同じものである。同様に、X軸は、X線分220(a)及びX線分220(b)から形成されている。X線分220(a)は中心線214からX電極120(a)までの距離であり、X線分220(b)は中心線214からX電極120(b)までの距離である。図2の実施形態では、X線分220(a)及び線分220(b)はほぼ同じ長さであり、すなわち実質的に同じものである。本発明の説明においては、電極の分離距離に関して実質的に同じということは、長さが互いに1〜3%の差異、すなわち、例えば3%より少ない差異、2%より少ない差異、又は1%より少ない差異の範囲内にあるということを意味する。
【0020】
図2の実施形態では、イオントラップ112内に注入されたイオンの捕捉を行うY電極116(a)及び116(b)に高周波(RF)信号Y212(a)が印加される。同様に、イオントラップ112内に注入されたイオンの捕捉を行うX電極120(a)及び120(b)に高周波(RF)信号X212(b)が印加される。図2の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常ほぼ同じ周波数であり、互いに位相が約180度ずれている。図2のイオントラップ112の理想的なケースでは、中心線214は通常約ゼロボルトの電位を有する。図1のイオントラップ112で発生する電磁界に関する1つの問題について、図3と併せて以下さらに説明する。
【0021】
ここで図3A及び図3Bを参照すると、図1のイオントラップ112の線形の電界強度特性及び非線形の電界強度特性を示すグラフが示されている。図3Aのグラフでは、理想的なイオントラップ内における電界の強さを垂直軸320で示す一方、水平軸316は理想的なイオントラップ内における位置を示す。図3Aのグラフは、理想的なイオントラップは、理論的には、イオントラップ捕捉容積部全体を通じて線形の電界強度特性を示すであろうということを示している。しかしながら、(図1のイオントラップ112を含む)いくつかのイオントラップは、X電極120(a)及び120(b)を貫通する放出開口部、すなわちスロット124(a)及び124(b)を有する。これらの放出スロット124(a)及び124(b)によって、例えば、より非線形の電界成分が与えられることにより、及び典型的には四重極の電位成分が減少することにより、イオントラップ112内の電磁界特性が変化することになる。
【0022】
図3Bのグラフは、図2のイオントラップ112が、放出スロット124(a)及び124(b)を備えた結果として、非線形の電界強度特性、特に負の偏差を示すということを示している。イオン化した試験サンプルの最適化された分析を行うために、イオントラップ112は、理想的には線形の、或いはできるだけ負にならない電界特性で作動すべきである。例えば、これらの種類の電界は、不正確な質量数決定をもたらす化学的依存性の質量シフトが観測される原因となる可能性がある。これらの質量シフトは、Raymond E.MarchとJohn F.J.Toddによって編集されたCRCシリーズ現代質量分析、「イオントラップ質量分析の基礎」、第1巻、「イオントラップ質量分析の実用面」の第4(IV)章でさらに詳しく説明されており、本文献は参照により本明細書に組み入れられる。図2のイオントラップ116の非線形の電界成分を最小化又は補正するための1つの実施形態について、図4と併せて以下さらに説明する。
【0023】
図2の実施形態の場合とは異なり、図4の実施形態は、補正特性を組み入れたイオントラップ112を示しており、すなわち、このイオントラップは、X線分220(a)及び220(b)の両方をY線分216(a)及び216(b)よりも長くすることにより、X軸方向に「引き伸ばされて」いる。前述のX軸方向への引き伸ばし手順は、放出スロット124(a)及び124(b)を補正するための有益な効果を有しており、イオントラップ112内により線形の電界特性を与える。
【0024】
また、図4の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常時にはほぼ同じ電圧レベルである。例示のために、図4には、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をRF信号Y212(a)に一致するが、位相が180度ずれたもの(マイナス100ボルト)として示している。その他の任意の効果的かつ適当な一致する電圧レベルを利用することもできる。電圧の大きさを等しくした結果、電極の間隔は等しくないものの、この配置により実質的に0に等しくない実質的な中心線電位がもたらされる。図4のイオントラップ112の中心線214の非平衡な電位に関する1つの問題について、図5と併せて以下さらに説明する。
【0025】
図5の略図は、Z軸(図1を参照)に沿ってイオントラップ112の片側から見た形の図4のイオントラップ112の断面を示したものである。図5の実施形態では、イオントラップ112は、以下に限定されるわけではないが、Y電極116(a)、Y電極116(b)、X電極120(a)及びX電極120(b)を含み、これらの各々は、Z軸に沿ってイオントラップ112の捕捉容積部を長手方向に貫通する中心線214の周りに配置される。図5の略図に示すように、イオントラップ112は補正特性を含み、このイオントラップは、図2〜図4と併せて上述したように、いくつかの電界の欠点を補正するためにX軸方向に「引き伸ばされて」いる。
【0026】
図5の略図では、X電極が特定の量だけ間隔をあけて配置された場合に結果として得られる電位に相当する約24.4ボルトの非平衡かつ非ゼロの電位を有する中心線214を示している。当然ながら、代替の実施形態では、イオントラップ112の特定の実施形態に従って、様々な他の非平衡な中心線電位を生み出すことができる。図5の実施形態では、X電極120(a)及び120(b)は、Y電極116(a)及び116(b)よりもさらに中心線214から離して配置され、従って、図5のイオントラップ112の中心線電位に対する影響は少なくなる。
【0027】
前述したように、X軸方向とY軸方向における電極配置の違いにより、非線形の電界特性が改善される(通常は最小化される)だけでなく、イオントラップ112に非平衡な中心線電位がもたらされる。このような非平衡な中心線電位は、イオントラップ112の作動中に様々な動作問題を引き起こす可能性がある。例えば、中心軸に沿ってイオンを注入する段階を含む、イオントラップ112内にイオン化した試験サンプルを挿入するイオン注入手順は、入ってくるイオンが非平衡な中心線電位にさらされた場合、中心線214に平衡なゼロボルト電位を有する場合に比べて悪影響を受ける可能性がある。これにより、捕捉効率において、低い注入効率又は深刻なマスバイアスがもたらされる可能性がある。また、いくつかの実施形態では、非平衡な中心線電位にさらされた結果、イオントラップ112からイオンを放出する際に様々な種類の問題が生じる可能性もある。イオンの放出は、質量分析中、イオン分離中、又は第2の分析機器内への軸方向放出中に発生する。非ゼロの中心線は、軸方向に放出されたイオンの運動エネルギの広がりを引き起こす可能性があり、これが第2の分析機器にとって問題となる場合がある。図5のイオントラップ112の非平衡な中心線電位を補正する1つの実施形態について、図6〜図8Dと併せて以下さらに説明する。
【0028】
図6では、実施形態は図4に類似しているが、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、電圧レベルが一致しないように明確に選択される。図6の実施形態では、中心線214からX電極120(a)及び120(b)が配置された長い方の距離を補正し、これにより中心線214に平衡な又はゼロに近い電位を与えるために、RF信号X212(b)の振幅はRF信号Y212(a)の振幅よりも大きくなるように選択される。例示のために、図6は、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をマイナス145ボルトに等しいものとして示している。この場合も、この電圧レベルは特定のX電極の位置ずれに対応するものであるが、他の任意の効果的かつ適当な一致しない電圧レベルを利用することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、RF信号X212(b)の振幅を、RF信号Y212(a)の振幅に対して約44パーセント増加させることができる。いくつかの実施形態では、(5パーセント、2パーセント又は1パーセントなどの)所定のパーセンテージのY信号の振幅よりも小さな中心線高周波電位を生み出すようにX信号の振幅を選択することができる。一致しないRF信号を利用してイオントラップ112の平衡な中心線214の電位を実現させることについて、図8A〜図8Dと併せて以下さらに説明する。
【0029】
ここで図7A、図7B及び図7Cを参照すると、図4のイオントラップ112の1つの実施形態の非平衡な中心線電位をさらに示す特定の時間依存した波形が示されている。図7A、図7B及び図7Cのグラフでは、水平軸324上に時間を示し、垂直軸316上に振幅を示している。図7Aのグラフでは、例示のために、RF信号X212(b)はプラスマイナス100ボルトの間で変化する。同様に、図7Bのグラフでは、RF信号Y212(a)はプラスマイナス100ボルトの間で変化するが、RF信号X212(b)に対して位相が180度ずれている。図7Cのグラフでは、中心線近くのX方向とY方向との間の電位が平衡でないため、中心線214における電位は著しく非ゼロとなり、プラスマイナス24.4ボルトの間で変化することが示されている。
【0030】
これを、図6のイオントラップ112の1つの実施形態の平衡な中心線電位を表す波形を示す図8A、図8B及び図8Cのグラフと対比することができる。図8Aのグラフでは、例示のために、RF信号X212(b)は、プラスマイナス145ボルトの間で変化する。これに対して、図8Bのグラフでは、RF信号Y212(a)は、プラスマイナス100ボルトの間で変化するが、RF信号X212(b)に対して位相が180度ずれている。従って、RF信号X212(b)の振幅は、RF信号Y212(a)の振幅とは一致してはいないが、X電極とY電極の間隔が異なるため、中心線近くの電位は逆向きではあるがかなり等しくなる。これらの2つの平衡な電位の結果として、図8Cのグラフに示す中心線電位214はゼロボルトに近くなる。本発明の1つの態様では、平衡な中心線電位を実現できるだけでなく、適当な補正特性と組み合わせることにより、四重極イオントラップ内に存在する四重極電位の成分が最大化され、通常、(8重極及びそれよりも高次の多重極である)非線形の電界成分が最小化される。
【0031】
ここで図8Dを参照すると、図6のイオントラップ112の1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す図5と同様の略図が示されている。図6及び図7の場合と同様に、図8Dの実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は一致する同じ電圧レベルではない。図8Dの実施形態では、RF信号X212(b)の振幅は、中心線214からX電極120(a)及び120(b)が配置された長い方の距離を補正するために、RF信号Y212(a)の振幅よりも大きくなるように選択される。例示のために、図8Dは、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をマイナス145ボルトに等しいものとして示している。しかしながら、他の任意の効果的かつ適当な一致しない電圧レベルを選択し、利用することもできる。
【0032】
図8Dの略図で示すように、X軸方向及びY軸方向において上述の一致しないRF信号を利用することにより、中心線214に約ゼロボルトの平衡な中心線電位がもたらされるという利点が得られる。イオントラップ112の非平衡な中心線電位を補正する別の実施形態について、図9〜図11と併せて以下さらに説明する。
【0033】
ここで図9を参照すると、図1のイオントラップ112の別の実施形態に関する断面図が示されている。図9の実施形態は、Z軸(図1を参照)に沿ってイオントラップ112の片側から見た形のイオントラップ112の断面を示したものである。図9の実施形態では、イオントラップ112は、以下に限定されるわけではないが、Y電極116(a)、Y電極116(b)、X電極120(a)及びX電極120(b)を含み、これらの各々は、Z軸に沿ってイオントラップ112の捕捉容積部を長手方向に貫通する中心線214の周りに配置されている。図9の実施形態では、X電極120(a)は、イオントラップ112からイオンをスキャンアウトするための放出スロット124(a)を含み、X電極120(b)も同様に放出スロット124(b)を含む。
【0034】
図9の実施形態では、Y軸は線分216(a)及び線分216(b)から形成されている。線分216(a)は中心線214からY電極116(a)までの距離であり、線分216(b)は中心線214からY電極116(b)までの距離である。図9の実施形態では、線分216(a)及び線分216(b)はほぼ同じ長さである。同様に、X軸は線分220(a)及び線分220(b)から形成されている。線分220(a)は中心線214からX電極120(a)までの距離であり、線分220(b)は中心線214からX電極120(b)までの距離である。図9の実施形態では、線分220(a)及び線分220(b)はほぼ同じ長さである。
【0035】
図9の実施形態では、イオントラップ112内に注入されたイオンを捕捉するために、Y電極116(a)及び116(b)に高周波(RF)信号Y212(a)が印加される。同様に、イオントラップ112内に注入されたイオンを捕捉するために、X電極120(a)及び120(b)に高周波(RF)信号X212(b)が印加される。図9の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常ほぼ同じ周波数であり、互いに位相が約180度ずれている。
【0036】
また、図9の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常ほぼ同じ電圧レベルである。例示のために、図9は、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をRF信号Y212(a)に一致するが、位相が180度ずれたもの(マイナス100ボルト)として示している。他の任意の効果的かつ適当な一致する電圧レベルを利用することもできる。また、いくつかの実施形態では、図6と併せて示し、説明したように、図9の実施形態は、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)に一致しない電圧レベルを利用することもできる。
【0037】
図9の実施形態では、効率的に補正を行うために、すなわち四重極の電位成分を最大化し、及び/又は放出スロット124(a)及び124(b)(図3A及び図3Bを参照)によって生み出された非線形の電界成分を最小化するために、両X電極120(a)及び120(b)の曲率半径を示すX電極の内部表面の幾何学的表面形状が、両Y電極116(a)及び116(b)の曲率半径を示すY電極の内部表面の幾何学的表面形状よりも小さくなるようにX電極120(a)及び120(b)を選択する。例えば、図9の図面では、Y電極116(a)及び116(b)の曲率半径に一致する曲率半径を、X電極120(a)及び120(b)の上に重ね合わせて破線120(c)及び120(d)で示している。図9に示すように、X電極120(a)及び120(b)の寸法全体は、対応する曲率半径120(c)及び120(d)よりもY軸方向に短く、この結果X電極120(a)及び120(b)の曲率半径はより小さなものとなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、各々が中心線214に面した双曲線の電極表面でY電極116(a)、Y電極116(b)、X電極120(a)及びX電極120(b)が実現される。しかしながら、他の任意の効果的な電極表面形状を代替として利用することもできる。例えば、より複雑に湾曲した、区分的に線形な、或いは非曲線形状を利用することができる。表面形状には、(V形形状、断面形状、部分的円形状などの)1又はそれ以上の切り目、溝、凹部、突起、堀、又は同様に本発明の範囲内にあるようなその他の構成が含まれる。これらの表面形状は、通常、電極の全長に沿ってZ軸方向に均一に伸びる。いくつかの単純な実施形態では、対応するX電極120(a)及び120(b)の有効半径を小さくすることにより、イオントラップ112の電極表面を、前述の一致しない電極形成手順を施した半円の形で実現することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、Y電極116(a)及びY電極116(b)の半径は約4ミリメートルであり、一方X電極120(a)及びX電極120(b)の半径は約3.35ミリメートルまで小さくなっている。別の実施形態では、他の任意の適当な寸法を選択して、中心線214に平衡なゼロボルト電位を生み出すことができる。また、いくつかの実施形態では、X電極120(a)及びX電極120(b)の半径を小さくする代わりに、Y電極116(a)及びY電極116(b)の半径を大きくして同様の結果を得ることができる。電極を不一致なものにした結果、図9のイオントラップ112は、著しく改善された線形の電界特性を示すようになる。双曲線の電極表面に一致しない電極形成手順を施すための1つの技術について、図10と併せて以下さらに説明する。
【0040】
ここで図10を参照すると、本発明による双曲線の曲率半径を定めるための技術を示す略図が示されている。
【0041】
図10の略図では、垂直なY軸1020と水平なX軸1016との交点に位置する(xc,yc)1032に面するX電極120(a)及び120(b)の双曲線の電極表面を示している。第1の対角線軸1024と第2の対角線軸1028とは、オフセット1032で交差する。対角線軸1024及び対角線軸1028はまた、多角形1044の4つの頂点の位置も決定する。図10の実施形態によれば、水平軸1016に沿ったY軸1020からX電極120(b)までの距離としてx半径(rx)値1036を示している。また、水平軸から多角形1044のY頂点1048までの距離としてy半径値(ry)1040を示している。
【0042】
同様の電極形成手順を利用することにより、イオントラップ112のその他の双曲線の電極表面の形状を定めることができる。例えば、約0.25ミリメートルの高さに放出スロット124(a)及び124(b)(図2)を有するいくつかの実施形態では、ほぼゼロに等しい変数xc及びycと、ほぼ4ミリメートルに等しい変数rx及びryとを用いて、Y電極116(a)及び116(b)を定めることができる。上述の実施例では、0.8ミリメートルにほぼ等しい変数xcと、ほぼゼロに等しい変数ycと、ほぼ3.2ミリメートルに等しい変数rx及びryとを用いて、X電極120(a)及び120(b)を定めることができる。上述の電極形成手順の1つの効果について、図11と併せて以下さらに説明する。
【0043】
ここで図11を参照すると、図9のイオントラップ112の1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図が示されている。図11の略図は、Z軸(図1を参照)に沿ってイオントラップ112の片側から見た形の図9のイオントラップ112の断面を示している。図11の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常ほぼ同じ周波数であり、互いに位相が約180度ずれている。例示のために、図11は、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をマイナス100ボルトに等しいものとして示している。しかしながら、他の任意の効果的かつ適当な電圧レベルを選択し、利用することもできる。図9の実施形態と併せて上述したように、X電極120(a)及び120(b)の形状は、Y電極116(a)及び116(b)の曲率半径に対してX電極120(a)及び120(b)の曲率半径が小さくなるように選択されている。このようにして、図11の実施形態は、イオントラップ112に優れた比較的線形の電界特性を与える。従って、上述の全ての理由から、本発明は、イオントラップ112に平衡なRF電界を効果的に実現するための改善されたシステム及び方法を提供することになる。
【0044】
以上、いくつかの実施形態に関して本発明について説明してきた。当業者であれば、本開示に照らして他の実施形態が明らかとなるであろう。例えば、上記実施形態において説明した構成及び技術のうちのいくつかとは別の構成及び技術を使用して本発明を実施することができる。さらに、上記説明したシステム以外のシステムと組み合わせて、本発明を効果的に使用することができる。従って、説明した実施形態に関するこれらの及びその他の変更も本発明によって保護されることが意図されており、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の1つの実施形態によるイオントラップの立面図である。
【図2】図1のイオントラップの1つの基本的な実施形態に関する断面図である。
【図3A】イオントラップの線形電界の強度特性を示すグラフである。
【図3B】イオントラップの非線形電界の強度特性を示すグラフである。
【図4】図1のイオントラップの1つの実施形態に関する断面図である。
【図5】図4のイオントラップの1つの実施形態の非平衡な中心線電位を示す略図である。
【図6】本発明による図1のイオントラップの1つの実施形態に関する断面図である。
【図7A】図4のイオントラップの1つの実施形態の非平衡な中心線電位を示す波形である。
【図7B】図4のイオントラップの1つの実施形態の非平衡な中心線電位を示す波形である。
【図7C】図4のイオントラップの1つの実施形態の非平衡な中心線電位を示す波形である。
【図8A】図6のイオントラップの1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図である。
【図8B】図6のイオントラップの1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図である。
【図8C】図6のイオントラップの1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図である。
【図8D】図6のイオントラップの1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図である。
【図9】本発明による図1のイオントラップの1つの実施形態に関する断面図である。
【図10】本発明による双曲線の曲率半径を形成するための技術を示す略図である。
【図11】本発明の1つの実施形態による、図9のイオントラップの平衡な中心線電位を示す略図である。
【符号の説明】
【0046】
116(a) Y電極
116(b) Y電極
120(a) X電極
120(b) X電極
212(a) 高周波(RF)信号Y
212(b) 高周波(RF)信号X
214 中心線
216(a) 線分
216(b) 線分
220(a) 線分
220(b) 線分
【技術分野】
【0001】
開示する本発明の実施形態は、一般に、イオントラップ装置を実現するための技術に関し、より具体的には、イオントラップ装置において平衡な高周波(RF)電解を実現するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析計測を実行する効果的な方法を開発することは、現代の電子分析機器の設計者及び製造者にとって重要な検討課題である。しかしながら、電子装置を用いて分析手順を効果的に行うことにより、システム設計者に対して多くの課題が生み出される可能性がある。例えば、装置の機能性及び性能の強化に対する要求が増加することにより、より多くのシステム機能が必要となり、追加の資源が必要となる可能性がある。機能性又はその他の要件の増加により、生産コスト及び経営の非効率性が増加した結果、これに対応する不利益な経済的影響がもたらされる可能性もある。
【0003】
さらに、様々な強化された動作を行うためのシステム能力により、システムユーザに付加的な利益がもたらされる場合もあるが、様々な装置の構成要素の制御及び管理に関するさらなる要求が突きつけられる可能性もある。例えば、いくつかの実施形態では、イオントラップ装置を利用して、イオン化した試験サンプルに対して様々な分析手順を行うことができる。イオントラップの1又はそれ以上の放出スロットを通じ、質量選択方法で、イオントラップ内に捕捉された試験サンプルから得られるイオンを放出又は「スキャンアウト」することができ、この放出されたイオンを検出することにより、注入された試験サンプルに対応するマススペクトルを作り出すことができる。
【0004】
このような放出スロットの利用により、イオントラップの電磁界特性がいくつかの望ましくない非線形特性を示すようになる場合がある。イオン化した試験サンプルの最適化された分析を行うために、イオントラップは、電界特性ができる限り線形の状態で理想的に作動すべきである。従って、いくつかの実施形態では、イオントラップの物理的特性の選択を、この放出スロットを補うように行うことができ、これによりイオントラップ内により線形の電界特性が得られるようになる。
【0005】
イオントラップの物理的な容積を変更することにより非線形の電界特性を改善することができるが、これは同時にイオントラップに非平衡な中心線電位をもたらす可能性がある。このような非平衡な中心線電位は、イオントラップの作動中に様々な動作問題を引き起こす可能性がある。例えば、入ってくるイオンが非平衡な中心線電位に影響を受ける場合、イオントラップ内にイオン化した試験サンプルを挿入するイオン注入手順が悪影響を受ける可能性がある。この非平衡な中心線電位により、イオントラップ装置の捕捉効率において、低い注入効率又は深刻なマスバイアスがもたらされる可能性がある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,797,950号公報
【特許文献2】米国特許第5,420,425号公報
【非特許文献1】Raymond E.March及びJohn F.J.Todd編集、CRCシリーズ現代質量分析、「イオントラップ質量分析の基礎」、第1巻、「イオントラップ質量分析の実用面」第4(IV)章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
システム資源に対する要求の増大及び分析要件の複雑性が増加することにより、関連する電子技術にとって分析計測を実行するための新しい技術の開発が懸案事項となることは明らかである。従って、全ての前述の理由から、分析計測を実行するための有効な技術の開発は、現代の分析機器の設計者、製造者及びユーザにとって依然として重要な検討課題のままとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、四重極イオントラップにおける電界の歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を効果的に補正するためのシステム及び方法が開示され、この補正は、イオントラップにおいて非線形の電界成分を減少させると共に、最小中心線の高周波電位を生み出す幾何学的表面形状により行われる。1つの実施形態では、このイオントラップは、以下に限定されるわけではないが、各々が中心線の周りに配置された1対のY電極及び1対のX電極と、イオントラップ内の捕捉容積部を長手方向に貫通するZ軸とを含む。いくつかの実施形態では、これらの電極の少なくとも1つは、注入されたイオンをイオントラップからスキャンするための1又はそれ以上の放出スロットを含む。
【0009】
中心線を通ってY電極間に延びるY軸に沿って、Y電極の分離距離を定めることができる。同様に、中心線を通ってX電極間に延びるX軸に沿って、X電極の分離距離を定めることができる。本実施形態では、Yの分離距離とXの分離距離とはほぼ同じ長さとなる。いくつかの実施形態では、イオントラップ内に注入されたイオンの捕捉に影響を与えるY高周波(RF)信号がY電極に印加される。同様に、イオントラップ内に注入されたイオンの捕捉に影響を与えるX高周波(RF)信号がX電極に印加される。しかしながら、これらの電圧及びこれらの効果は必ずしも排他的なものではない。YのRF信号とXのRF信号とは通常同じ周波数であり、互いに位相が180度ずれている。さらに本実施形態では、YのRF信号とXのRF信号とは通常ほぼ同じ電圧レベルとなる。
【0010】
いくつかの実施形態では、放出スロットによって生じる非線形の電界特性を効果的に補正しながら、同時にイオントラップの中心線に平衡電位を与えるために、X電極の曲率半径がY電極の曲率半径に対して小さくなるようにX電極の形状を選択する。
【0011】
いくつかの実施形態では、Y電極及びX電極は、各々が中心線に面する双曲線の内部電極表面で実現される。しかしながら、他の任意の効果的な電極の幾何学的表面形状を代替として利用することもできる。本発明によれば、任意の適切な容積又は幾何学的表面形状を選択して、イオントラップの中心線において平衡の又は約ゼロボルトのRF電位を生み出すことができる。電極形成の結果、イオントラップは大幅に改善された線形の電界特性を示し、非線形の電界成分は最小化される一方で、中心線に平衡の又は約ゼロボルトのRF電位を生じるようにもなる。少なくとも前述の理由から、本発明は、イオントラップに平衡なRF電界を効果的に実現するための改善されたシステム及び方法を提供する。
【0012】
本発明の性質及び目的をより良く理解するために、添付の図面と併せて行う以下の詳細な説明を参照されたい。図面のいくつかの図を通じて、同様の参照番号は対応する部品を意味するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は分析計測技術における改善に関する。当業者が本発明を作り、使用できるように、以下の説明及び説明図を示し、特許出願及びその要件との関連において提供する。当業者であれば、開示する実施形態に対する様々な変形が明らかとなるであろうし、本明細書における一般的な原理を他の実施形態に応用することもできる。従って、本発明は、図示の実施形態に限定されることは意図されておらず、本明細書で説明する原理及び特徴と一致する最も広い範囲を含むことになる。
【0014】
まず図1を参照すると、本発明の1つの実施形態によるイオントラップ112の立面図が示されている。代替の実施形態では、図1〜図12に示す実施形態と併せて説明する構成要素及び構成のいくつかに加えて、或いはそれらの代わりに、別の構成要素及び構成を使用して図1〜図12の実施形態を実施することができる。例えば、図1の実施形態は3つに区切ったイオントラップ112を示しているが、本発明はこの特定の断面構成に限定されるものではない。また、図1〜図12は、本発明のいくつかの原理を図示し、説明するために本明細書で提示する図面を示したものであり、従って、図1〜図12は描く対象を絶対尺度で表した図面であると必ずしも解釈すべきではない。
【0015】
図1の実施形態では、イオントラップ112は、以下に限定されるわけではないが、垂直なY軸に沿い向かい合って配列した1対のY電極116(a)及び116(b)を含む。また、イオントラップ112は、水平なX軸に沿い向かい合って配列した1対のX電極120(a)及び120(b)も含む。図1の実施形態では、上述の水平なX軸は、垂直なY軸から約90度回転している。電極116(a)、116(b)、120(a)及び120(b)の各々は、イオントラップ112内の捕捉容積部を通って中心線を形成する長手方向のZ軸にほぼ平行である。前述のZ軸は、X軸及びY軸の両方に対してほぼ直角である。
【0016】
作動中、イオントラップ112内に注入されたイオンを収容するために、様々な選択された捕捉電位が、X電極120(a)及び120(b)、並びにY電極116(a)及び116(b)に印加される。図1の実施形態では、上述の捕捉電位は、任意の有効な信号源から生じた適当な高周波(RF)信号を含むことができる。次に、イオン化した試験サンプルから得られるイオンを、イオントラップ112のイオン注入端部を通じて捕捉容積部に注入することができる。次に、イオントラップ112内のイオンを、X電極120(a)及び120(b)の対向する放出スロット124を通じて、質量選択方法で半径方向に放出又はスキャンアウトすることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、イオントラップ112は、異なる数の放出スロット124(例えば、単一の放出スロット124)を有することができる。放出されたイオンを検出することにより、注入された試験サンプルに対応するマススペクトルを生み出すことができるという利点が得られる。イオントラップの様々な実施形態に関するより詳細な説明は、2004年9月28日に発行された「質量分析計として作動する二次元四重極イオントラップ」と題する米国特許第6,797,950号、及び1995年5月30日に発行された「イオントラップ質量分析計システム及び方法」と題する米国特許第5,420,425号において見い出すことができる。イオントラップ112の実施形態及び機能性について、図2〜図11と併せて以下さらに説明する。
【0018】
ここで図2を参照すると、図1のイオントラップ112の1つの基本的な実施形態の断面図が示されている。図2の実施形態は、Z軸(図1を参照)に沿ってイオントラップ112の片側から見た形のイオントラップ112の断面を示したものである。図2の実施形態では、イオントラップ112は、以下に限定されるわけではないが、Y電極116(a)、Y電極116(b)、X電極120(a)及びX電極120(b)を含み、これらの各々は、Z軸に沿ってイオントラップ112の捕捉容積部を長手方向に貫通する中心線214の周りに配置される。図2の実施形態では、X電極120(a)は、イオントラップ112からイオンをスキャンアウトするための放出スロット124(a)を含み、X電極120(b)も同様に放出スロット124(b)を含む。
【0019】
図2の実施形態では、Y軸は、Y線分216(a)及びY線分216(b)から形成されている。Y線分216(a)は、中心線214からY電極116(a)までの距離であり、Y線分216(b)は、中心線214からY電極116(b)までの距離である。図2の実施形態では、Y線分216(a)及び線分216(b)はほぼ同じ長さであり、すなわち実質的に同じものである。同様に、X軸は、X線分220(a)及びX線分220(b)から形成されている。X線分220(a)は中心線214からX電極120(a)までの距離であり、X線分220(b)は中心線214からX電極120(b)までの距離である。図2の実施形態では、X線分220(a)及び線分220(b)はほぼ同じ長さであり、すなわち実質的に同じものである。本発明の説明においては、電極の分離距離に関して実質的に同じということは、長さが互いに1〜3%の差異、すなわち、例えば3%より少ない差異、2%より少ない差異、又は1%より少ない差異の範囲内にあるということを意味する。
【0020】
図2の実施形態では、イオントラップ112内に注入されたイオンの捕捉を行うY電極116(a)及び116(b)に高周波(RF)信号Y212(a)が印加される。同様に、イオントラップ112内に注入されたイオンの捕捉を行うX電極120(a)及び120(b)に高周波(RF)信号X212(b)が印加される。図2の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常ほぼ同じ周波数であり、互いに位相が約180度ずれている。図2のイオントラップ112の理想的なケースでは、中心線214は通常約ゼロボルトの電位を有する。図1のイオントラップ112で発生する電磁界に関する1つの問題について、図3と併せて以下さらに説明する。
【0021】
ここで図3A及び図3Bを参照すると、図1のイオントラップ112の線形の電界強度特性及び非線形の電界強度特性を示すグラフが示されている。図3Aのグラフでは、理想的なイオントラップ内における電界の強さを垂直軸320で示す一方、水平軸316は理想的なイオントラップ内における位置を示す。図3Aのグラフは、理想的なイオントラップは、理論的には、イオントラップ捕捉容積部全体を通じて線形の電界強度特性を示すであろうということを示している。しかしながら、(図1のイオントラップ112を含む)いくつかのイオントラップは、X電極120(a)及び120(b)を貫通する放出開口部、すなわちスロット124(a)及び124(b)を有する。これらの放出スロット124(a)及び124(b)によって、例えば、より非線形の電界成分が与えられることにより、及び典型的には四重極の電位成分が減少することにより、イオントラップ112内の電磁界特性が変化することになる。
【0022】
図3Bのグラフは、図2のイオントラップ112が、放出スロット124(a)及び124(b)を備えた結果として、非線形の電界強度特性、特に負の偏差を示すということを示している。イオン化した試験サンプルの最適化された分析を行うために、イオントラップ112は、理想的には線形の、或いはできるだけ負にならない電界特性で作動すべきである。例えば、これらの種類の電界は、不正確な質量数決定をもたらす化学的依存性の質量シフトが観測される原因となる可能性がある。これらの質量シフトは、Raymond E.MarchとJohn F.J.Toddによって編集されたCRCシリーズ現代質量分析、「イオントラップ質量分析の基礎」、第1巻、「イオントラップ質量分析の実用面」の第4(IV)章でさらに詳しく説明されており、本文献は参照により本明細書に組み入れられる。図2のイオントラップ116の非線形の電界成分を最小化又は補正するための1つの実施形態について、図4と併せて以下さらに説明する。
【0023】
図2の実施形態の場合とは異なり、図4の実施形態は、補正特性を組み入れたイオントラップ112を示しており、すなわち、このイオントラップは、X線分220(a)及び220(b)の両方をY線分216(a)及び216(b)よりも長くすることにより、X軸方向に「引き伸ばされて」いる。前述のX軸方向への引き伸ばし手順は、放出スロット124(a)及び124(b)を補正するための有益な効果を有しており、イオントラップ112内により線形の電界特性を与える。
【0024】
また、図4の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常時にはほぼ同じ電圧レベルである。例示のために、図4には、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をRF信号Y212(a)に一致するが、位相が180度ずれたもの(マイナス100ボルト)として示している。その他の任意の効果的かつ適当な一致する電圧レベルを利用することもできる。電圧の大きさを等しくした結果、電極の間隔は等しくないものの、この配置により実質的に0に等しくない実質的な中心線電位がもたらされる。図4のイオントラップ112の中心線214の非平衡な電位に関する1つの問題について、図5と併せて以下さらに説明する。
【0025】
図5の略図は、Z軸(図1を参照)に沿ってイオントラップ112の片側から見た形の図4のイオントラップ112の断面を示したものである。図5の実施形態では、イオントラップ112は、以下に限定されるわけではないが、Y電極116(a)、Y電極116(b)、X電極120(a)及びX電極120(b)を含み、これらの各々は、Z軸に沿ってイオントラップ112の捕捉容積部を長手方向に貫通する中心線214の周りに配置される。図5の略図に示すように、イオントラップ112は補正特性を含み、このイオントラップは、図2〜図4と併せて上述したように、いくつかの電界の欠点を補正するためにX軸方向に「引き伸ばされて」いる。
【0026】
図5の略図では、X電極が特定の量だけ間隔をあけて配置された場合に結果として得られる電位に相当する約24.4ボルトの非平衡かつ非ゼロの電位を有する中心線214を示している。当然ながら、代替の実施形態では、イオントラップ112の特定の実施形態に従って、様々な他の非平衡な中心線電位を生み出すことができる。図5の実施形態では、X電極120(a)及び120(b)は、Y電極116(a)及び116(b)よりもさらに中心線214から離して配置され、従って、図5のイオントラップ112の中心線電位に対する影響は少なくなる。
【0027】
前述したように、X軸方向とY軸方向における電極配置の違いにより、非線形の電界特性が改善される(通常は最小化される)だけでなく、イオントラップ112に非平衡な中心線電位がもたらされる。このような非平衡な中心線電位は、イオントラップ112の作動中に様々な動作問題を引き起こす可能性がある。例えば、中心軸に沿ってイオンを注入する段階を含む、イオントラップ112内にイオン化した試験サンプルを挿入するイオン注入手順は、入ってくるイオンが非平衡な中心線電位にさらされた場合、中心線214に平衡なゼロボルト電位を有する場合に比べて悪影響を受ける可能性がある。これにより、捕捉効率において、低い注入効率又は深刻なマスバイアスがもたらされる可能性がある。また、いくつかの実施形態では、非平衡な中心線電位にさらされた結果、イオントラップ112からイオンを放出する際に様々な種類の問題が生じる可能性もある。イオンの放出は、質量分析中、イオン分離中、又は第2の分析機器内への軸方向放出中に発生する。非ゼロの中心線は、軸方向に放出されたイオンの運動エネルギの広がりを引き起こす可能性があり、これが第2の分析機器にとって問題となる場合がある。図5のイオントラップ112の非平衡な中心線電位を補正する1つの実施形態について、図6〜図8Dと併せて以下さらに説明する。
【0028】
図6では、実施形態は図4に類似しているが、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、電圧レベルが一致しないように明確に選択される。図6の実施形態では、中心線214からX電極120(a)及び120(b)が配置された長い方の距離を補正し、これにより中心線214に平衡な又はゼロに近い電位を与えるために、RF信号X212(b)の振幅はRF信号Y212(a)の振幅よりも大きくなるように選択される。例示のために、図6は、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をマイナス145ボルトに等しいものとして示している。この場合も、この電圧レベルは特定のX電極の位置ずれに対応するものであるが、他の任意の効果的かつ適当な一致しない電圧レベルを利用することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、RF信号X212(b)の振幅を、RF信号Y212(a)の振幅に対して約44パーセント増加させることができる。いくつかの実施形態では、(5パーセント、2パーセント又は1パーセントなどの)所定のパーセンテージのY信号の振幅よりも小さな中心線高周波電位を生み出すようにX信号の振幅を選択することができる。一致しないRF信号を利用してイオントラップ112の平衡な中心線214の電位を実現させることについて、図8A〜図8Dと併せて以下さらに説明する。
【0029】
ここで図7A、図7B及び図7Cを参照すると、図4のイオントラップ112の1つの実施形態の非平衡な中心線電位をさらに示す特定の時間依存した波形が示されている。図7A、図7B及び図7Cのグラフでは、水平軸324上に時間を示し、垂直軸316上に振幅を示している。図7Aのグラフでは、例示のために、RF信号X212(b)はプラスマイナス100ボルトの間で変化する。同様に、図7Bのグラフでは、RF信号Y212(a)はプラスマイナス100ボルトの間で変化するが、RF信号X212(b)に対して位相が180度ずれている。図7Cのグラフでは、中心線近くのX方向とY方向との間の電位が平衡でないため、中心線214における電位は著しく非ゼロとなり、プラスマイナス24.4ボルトの間で変化することが示されている。
【0030】
これを、図6のイオントラップ112の1つの実施形態の平衡な中心線電位を表す波形を示す図8A、図8B及び図8Cのグラフと対比することができる。図8Aのグラフでは、例示のために、RF信号X212(b)は、プラスマイナス145ボルトの間で変化する。これに対して、図8Bのグラフでは、RF信号Y212(a)は、プラスマイナス100ボルトの間で変化するが、RF信号X212(b)に対して位相が180度ずれている。従って、RF信号X212(b)の振幅は、RF信号Y212(a)の振幅とは一致してはいないが、X電極とY電極の間隔が異なるため、中心線近くの電位は逆向きではあるがかなり等しくなる。これらの2つの平衡な電位の結果として、図8Cのグラフに示す中心線電位214はゼロボルトに近くなる。本発明の1つの態様では、平衡な中心線電位を実現できるだけでなく、適当な補正特性と組み合わせることにより、四重極イオントラップ内に存在する四重極電位の成分が最大化され、通常、(8重極及びそれよりも高次の多重極である)非線形の電界成分が最小化される。
【0031】
ここで図8Dを参照すると、図6のイオントラップ112の1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す図5と同様の略図が示されている。図6及び図7の場合と同様に、図8Dの実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は一致する同じ電圧レベルではない。図8Dの実施形態では、RF信号X212(b)の振幅は、中心線214からX電極120(a)及び120(b)が配置された長い方の距離を補正するために、RF信号Y212(a)の振幅よりも大きくなるように選択される。例示のために、図8Dは、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をマイナス145ボルトに等しいものとして示している。しかしながら、他の任意の効果的かつ適当な一致しない電圧レベルを選択し、利用することもできる。
【0032】
図8Dの略図で示すように、X軸方向及びY軸方向において上述の一致しないRF信号を利用することにより、中心線214に約ゼロボルトの平衡な中心線電位がもたらされるという利点が得られる。イオントラップ112の非平衡な中心線電位を補正する別の実施形態について、図9〜図11と併せて以下さらに説明する。
【0033】
ここで図9を参照すると、図1のイオントラップ112の別の実施形態に関する断面図が示されている。図9の実施形態は、Z軸(図1を参照)に沿ってイオントラップ112の片側から見た形のイオントラップ112の断面を示したものである。図9の実施形態では、イオントラップ112は、以下に限定されるわけではないが、Y電極116(a)、Y電極116(b)、X電極120(a)及びX電極120(b)を含み、これらの各々は、Z軸に沿ってイオントラップ112の捕捉容積部を長手方向に貫通する中心線214の周りに配置されている。図9の実施形態では、X電極120(a)は、イオントラップ112からイオンをスキャンアウトするための放出スロット124(a)を含み、X電極120(b)も同様に放出スロット124(b)を含む。
【0034】
図9の実施形態では、Y軸は線分216(a)及び線分216(b)から形成されている。線分216(a)は中心線214からY電極116(a)までの距離であり、線分216(b)は中心線214からY電極116(b)までの距離である。図9の実施形態では、線分216(a)及び線分216(b)はほぼ同じ長さである。同様に、X軸は線分220(a)及び線分220(b)から形成されている。線分220(a)は中心線214からX電極120(a)までの距離であり、線分220(b)は中心線214からX電極120(b)までの距離である。図9の実施形態では、線分220(a)及び線分220(b)はほぼ同じ長さである。
【0035】
図9の実施形態では、イオントラップ112内に注入されたイオンを捕捉するために、Y電極116(a)及び116(b)に高周波(RF)信号Y212(a)が印加される。同様に、イオントラップ112内に注入されたイオンを捕捉するために、X電極120(a)及び120(b)に高周波(RF)信号X212(b)が印加される。図9の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常ほぼ同じ周波数であり、互いに位相が約180度ずれている。
【0036】
また、図9の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常ほぼ同じ電圧レベルである。例示のために、図9は、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をRF信号Y212(a)に一致するが、位相が180度ずれたもの(マイナス100ボルト)として示している。他の任意の効果的かつ適当な一致する電圧レベルを利用することもできる。また、いくつかの実施形態では、図6と併せて示し、説明したように、図9の実施形態は、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)に一致しない電圧レベルを利用することもできる。
【0037】
図9の実施形態では、効率的に補正を行うために、すなわち四重極の電位成分を最大化し、及び/又は放出スロット124(a)及び124(b)(図3A及び図3Bを参照)によって生み出された非線形の電界成分を最小化するために、両X電極120(a)及び120(b)の曲率半径を示すX電極の内部表面の幾何学的表面形状が、両Y電極116(a)及び116(b)の曲率半径を示すY電極の内部表面の幾何学的表面形状よりも小さくなるようにX電極120(a)及び120(b)を選択する。例えば、図9の図面では、Y電極116(a)及び116(b)の曲率半径に一致する曲率半径を、X電極120(a)及び120(b)の上に重ね合わせて破線120(c)及び120(d)で示している。図9に示すように、X電極120(a)及び120(b)の寸法全体は、対応する曲率半径120(c)及び120(d)よりもY軸方向に短く、この結果X電極120(a)及び120(b)の曲率半径はより小さなものとなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、各々が中心線214に面した双曲線の電極表面でY電極116(a)、Y電極116(b)、X電極120(a)及びX電極120(b)が実現される。しかしながら、他の任意の効果的な電極表面形状を代替として利用することもできる。例えば、より複雑に湾曲した、区分的に線形な、或いは非曲線形状を利用することができる。表面形状には、(V形形状、断面形状、部分的円形状などの)1又はそれ以上の切り目、溝、凹部、突起、堀、又は同様に本発明の範囲内にあるようなその他の構成が含まれる。これらの表面形状は、通常、電極の全長に沿ってZ軸方向に均一に伸びる。いくつかの単純な実施形態では、対応するX電極120(a)及び120(b)の有効半径を小さくすることにより、イオントラップ112の電極表面を、前述の一致しない電極形成手順を施した半円の形で実現することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、Y電極116(a)及びY電極116(b)の半径は約4ミリメートルであり、一方X電極120(a)及びX電極120(b)の半径は約3.35ミリメートルまで小さくなっている。別の実施形態では、他の任意の適当な寸法を選択して、中心線214に平衡なゼロボルト電位を生み出すことができる。また、いくつかの実施形態では、X電極120(a)及びX電極120(b)の半径を小さくする代わりに、Y電極116(a)及びY電極116(b)の半径を大きくして同様の結果を得ることができる。電極を不一致なものにした結果、図9のイオントラップ112は、著しく改善された線形の電界特性を示すようになる。双曲線の電極表面に一致しない電極形成手順を施すための1つの技術について、図10と併せて以下さらに説明する。
【0040】
ここで図10を参照すると、本発明による双曲線の曲率半径を定めるための技術を示す略図が示されている。
【0041】
図10の略図では、垂直なY軸1020と水平なX軸1016との交点に位置する(xc,yc)1032に面するX電極120(a)及び120(b)の双曲線の電極表面を示している。第1の対角線軸1024と第2の対角線軸1028とは、オフセット1032で交差する。対角線軸1024及び対角線軸1028はまた、多角形1044の4つの頂点の位置も決定する。図10の実施形態によれば、水平軸1016に沿ったY軸1020からX電極120(b)までの距離としてx半径(rx)値1036を示している。また、水平軸から多角形1044のY頂点1048までの距離としてy半径値(ry)1040を示している。
【0042】
同様の電極形成手順を利用することにより、イオントラップ112のその他の双曲線の電極表面の形状を定めることができる。例えば、約0.25ミリメートルの高さに放出スロット124(a)及び124(b)(図2)を有するいくつかの実施形態では、ほぼゼロに等しい変数xc及びycと、ほぼ4ミリメートルに等しい変数rx及びryとを用いて、Y電極116(a)及び116(b)を定めることができる。上述の実施例では、0.8ミリメートルにほぼ等しい変数xcと、ほぼゼロに等しい変数ycと、ほぼ3.2ミリメートルに等しい変数rx及びryとを用いて、X電極120(a)及び120(b)を定めることができる。上述の電極形成手順の1つの効果について、図11と併せて以下さらに説明する。
【0043】
ここで図11を参照すると、図9のイオントラップ112の1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図が示されている。図11の略図は、Z軸(図1を参照)に沿ってイオントラップ112の片側から見た形の図9のイオントラップ112の断面を示している。図11の実施形態では、RF信号Y212(a)及びRF信号X212(b)は、通常ほぼ同じ周波数であり、互いに位相が約180度ずれている。例示のために、図11は、RF信号Y212(a)を100ボルトに等しいものとして示し、RF信号X212(b)をマイナス100ボルトに等しいものとして示している。しかしながら、他の任意の効果的かつ適当な電圧レベルを選択し、利用することもできる。図9の実施形態と併せて上述したように、X電極120(a)及び120(b)の形状は、Y電極116(a)及び116(b)の曲率半径に対してX電極120(a)及び120(b)の曲率半径が小さくなるように選択されている。このようにして、図11の実施形態は、イオントラップ112に優れた比較的線形の電界特性を与える。従って、上述の全ての理由から、本発明は、イオントラップ112に平衡なRF電界を効果的に実現するための改善されたシステム及び方法を提供することになる。
【0044】
以上、いくつかの実施形態に関して本発明について説明してきた。当業者であれば、本開示に照らして他の実施形態が明らかとなるであろう。例えば、上記実施形態において説明した構成及び技術のうちのいくつかとは別の構成及び技術を使用して本発明を実施することができる。さらに、上記説明したシステム以外のシステムと組み合わせて、本発明を効果的に使用することができる。従って、説明した実施形態に関するこれらの及びその他の変更も本発明によって保護されることが意図されており、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の1つの実施形態によるイオントラップの立面図である。
【図2】図1のイオントラップの1つの基本的な実施形態に関する断面図である。
【図3A】イオントラップの線形電界の強度特性を示すグラフである。
【図3B】イオントラップの非線形電界の強度特性を示すグラフである。
【図4】図1のイオントラップの1つの実施形態に関する断面図である。
【図5】図4のイオントラップの1つの実施形態の非平衡な中心線電位を示す略図である。
【図6】本発明による図1のイオントラップの1つの実施形態に関する断面図である。
【図7A】図4のイオントラップの1つの実施形態の非平衡な中心線電位を示す波形である。
【図7B】図4のイオントラップの1つの実施形態の非平衡な中心線電位を示す波形である。
【図7C】図4のイオントラップの1つの実施形態の非平衡な中心線電位を示す波形である。
【図8A】図6のイオントラップの1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図である。
【図8B】図6のイオントラップの1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図である。
【図8C】図6のイオントラップの1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図である。
【図8D】図6のイオントラップの1つの実施形態の平衡な中心線電位を示す略図である。
【図9】本発明による図1のイオントラップの1つの実施形態に関する断面図である。
【図10】本発明による双曲線の曲率半径を形成するための技術を示す略図である。
【図11】本発明の1つの実施形態による、図9のイオントラップの平衡な中心線電位を示す略図である。
【符号の説明】
【0046】
116(a) Y電極
116(b) Y電極
120(a) X電極
120(b) X電極
212(a) 高周波(RF)信号Y
212(b) 高周波(RF)信号X
214 中心線
216(a) 線分
216(b) 線分
220(a) 線分
220(b) 線分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四重極イオントラップ内の電界の歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を補正するためのシステムであって、該補正は、四重極イオントラップ内で非線形の電界成分を減少させ、最小の中心線高周波電位を生み出す幾何学的表面形状によって行われ、前記システムは、
実質的にZ軸に平行な中心線を有する捕捉容積部を形成するように配置された複数の電極を含む四重極イオントラップと、
1対のY電極と1対のX電極とを含む複数の電極と、
Y軸に位置合わせされ、前記Z軸と直交し、Y幾何学的形状を有する内部Y電極表面を有するY電極と、
前記Z軸と直交する、前記Y軸から約90度回転したX軸に位置合わせされ、X幾何学的形状を有する内部X電極表面を有するX電極と、
前記Y軸に沿う前記内部Y電極表面間のY電極分離距離、及び該Y電極分離距離とほぼ同じ距離である、前記X軸に沿う前記内部X電極表面間のX電極分離距離と、
前記イオントラップ内に、より線形でない、或いはよりマイナスの非線形の電界特性をもたらす、前記電極の少なくとも1つにおける1又はそれ以上の電界の歪み特性と、
前記電界の歪み特性がもたらす影響を補正するように選択された前記歪み特性を含む電極の幾何学的表面形状と、
を含み、前記中心線に、平衡な又はゼロに近い中心線高周波電位を生み出す、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記電界の歪み特性は、イオントラップ内に非線形の電界特性を生み出す1又はそれ以上の放出スロットを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1又はそれ以上の放出スロットを含む電極の幾何学的表面形状により、四重極イオントラップ内に存在する四重極の電位成分が最大化されるように補正が行われる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記四重極イオントラップ内に存在する非線形の電界成分の合計が最小化される、
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記X電極及びY電極は異なる幾何学的表面形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1対のX電極の各々は異なる幾何学的表面形状の電極を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1対のY電極の各々は異なる幾何学的表面形状の電極を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記幾何学的表面形状は曲率半径を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
Y信号及びX信号をさらに含み、前記Y信号は、前記Y電極に結合されて前記イオントラップ内にイオンを捕捉すると共にY信号振幅を有し、前記X信号は前記X電極に結合されて前記イオントラップ内に前記イオンを捕捉すると共に、前記Y信号振幅とほぼ等しいX信号振幅を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記中心線における前記平衡な又はゼロに近い中心線高周波電位はほぼゼロボルトに等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記X幾何学的形状が前記Y幾何学的形状に一致する場合、前記中心線は非平衡な中心線電位を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記非平衡な中心線電位により、いくつかの高周波振幅における捕捉された注入イオンの質量識別が行われる、
ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記X電極及び前記Y電極は双曲線の外形を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記内部Y電極表面及び前記内部X電極表面は、各々半円の湾曲した表面又は区分的に線形な表面で代替的に実現される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
四重極イオントラップ内の電界の歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を補正する方法であって、該補正は、四重極イオントラップ内で非線形の電界成分を減少させ、最小の中心線高周波電位を生み出す幾何学的表面形状によって行われ、前記方法は、
前記イオントラップ内部の捕捉容積部を長手方向に貫通し、実質的にZ軸に平行な中心線を定めるステップと、
前記イオントラップを貫く第1の長手方向平面において前記Z軸と直交するY軸に位置合わせされると共に、前記中心線にほぼ平行でありかつY幾何学的形状を有する内部Y電極表面を含むY電極を設けるステップと、
前記イオントラップを貫く第2の長手方向平面において前記Z軸と直交し、前記Y軸から約90度回転したX軸に位置合わせされると共に、前記中心線にほぼ平行でありかつX幾何学的形状を有する内部X電極表面を含むX電極を設けるステップと、
前記Y軸に沿う前記内部Y電極表面間のY電極分離距離と、前記Y電極分離距離とほぼ同じ距離である、前記X軸に沿う前記内部X電極表面間のX電極分離距離とを設けるステップと、
前記電極の少なくとも1つの中に電界の歪み特性を挿入し、該電界の歪み特性を含む前記電極の幾何学的形状を、前記電界の歪み特性により生み出される非線形の電界成分を補正するように選択するステップと、
前記中心線に、平衡な又はゼロに近い中心線高周波電位を生み出すステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
四重極イオントラップ内の電界の歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を補正するためのシステムであって、該補正は、四重極イオントラップ内で非線形の電界成分を減少させ、最小の中心線高周波電位を生み出す幾何学的表面形状によって行われ、前記システムは、
前記イオントラップ内部の捕捉容積部を貫通する中心線と、
前記中心線にほぼ平行でありかつY幾何学的形状を有する内部Y電極表面を含む1対のY電極と、
前記中心線にほぼ平行でありかつX幾何学的形状を有する内部X電極表面を含む1対のX電極と、
X電極分離距離とほぼ等しいY電極分離距離と、
前記イオントラップ内に、より線形でない、或いはよりマイナスの非線形の電界特性をもたらす、前記X電極の少なくとも1つにおける1又はそれ以上の電界の歪み特性と、
前記1又はそれ以上の電界の歪み特徴部によって生み出される非線形の電界成分を補正するために、前記Y幾何学的形状とは異なるように選択される前記X幾何学的形状と、
を含み、前記中心線に、平衡な又はゼロに近い中心線高周波電位を生み出す、
ことを特徴とするシステム。
【請求項1】
四重極イオントラップ内の電界の歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を補正するためのシステムであって、該補正は、四重極イオントラップ内で非線形の電界成分を減少させ、最小の中心線高周波電位を生み出す幾何学的表面形状によって行われ、前記システムは、
実質的にZ軸に平行な中心線を有する捕捉容積部を形成するように配置された複数の電極を含む四重極イオントラップと、
1対のY電極と1対のX電極とを含む複数の電極と、
Y軸に位置合わせされ、前記Z軸と直交し、Y幾何学的形状を有する内部Y電極表面を有するY電極と、
前記Z軸と直交する、前記Y軸から約90度回転したX軸に位置合わせされ、X幾何学的形状を有する内部X電極表面を有するX電極と、
前記Y軸に沿う前記内部Y電極表面間のY電極分離距離、及び該Y電極分離距離とほぼ同じ距離である、前記X軸に沿う前記内部X電極表面間のX電極分離距離と、
前記イオントラップ内に、より線形でない、或いはよりマイナスの非線形の電界特性をもたらす、前記電極の少なくとも1つにおける1又はそれ以上の電界の歪み特性と、
前記電界の歪み特性がもたらす影響を補正するように選択された前記歪み特性を含む電極の幾何学的表面形状と、
を含み、前記中心線に、平衡な又はゼロに近い中心線高周波電位を生み出す、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記電界の歪み特性は、イオントラップ内に非線形の電界特性を生み出す1又はそれ以上の放出スロットを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1又はそれ以上の放出スロットを含む電極の幾何学的表面形状により、四重極イオントラップ内に存在する四重極の電位成分が最大化されるように補正が行われる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記四重極イオントラップ内に存在する非線形の電界成分の合計が最小化される、
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記X電極及びY電極は異なる幾何学的表面形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1対のX電極の各々は異なる幾何学的表面形状の電極を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1対のY電極の各々は異なる幾何学的表面形状の電極を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記幾何学的表面形状は曲率半径を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
Y信号及びX信号をさらに含み、前記Y信号は、前記Y電極に結合されて前記イオントラップ内にイオンを捕捉すると共にY信号振幅を有し、前記X信号は前記X電極に結合されて前記イオントラップ内に前記イオンを捕捉すると共に、前記Y信号振幅とほぼ等しいX信号振幅を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記中心線における前記平衡な又はゼロに近い中心線高周波電位はほぼゼロボルトに等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記X幾何学的形状が前記Y幾何学的形状に一致する場合、前記中心線は非平衡な中心線電位を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記非平衡な中心線電位により、いくつかの高周波振幅における捕捉された注入イオンの質量識別が行われる、
ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記X電極及び前記Y電極は双曲線の外形を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記内部Y電極表面及び前記内部X電極表面は、各々半円の湾曲した表面又は区分的に線形な表面で代替的に実現される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
四重極イオントラップ内の電界の歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を補正する方法であって、該補正は、四重極イオントラップ内で非線形の電界成分を減少させ、最小の中心線高周波電位を生み出す幾何学的表面形状によって行われ、前記方法は、
前記イオントラップ内部の捕捉容積部を長手方向に貫通し、実質的にZ軸に平行な中心線を定めるステップと、
前記イオントラップを貫く第1の長手方向平面において前記Z軸と直交するY軸に位置合わせされると共に、前記中心線にほぼ平行でありかつY幾何学的形状を有する内部Y電極表面を含むY電極を設けるステップと、
前記イオントラップを貫く第2の長手方向平面において前記Z軸と直交し、前記Y軸から約90度回転したX軸に位置合わせされると共に、前記中心線にほぼ平行でありかつX幾何学的形状を有する内部X電極表面を含むX電極を設けるステップと、
前記Y軸に沿う前記内部Y電極表面間のY電極分離距離と、前記Y電極分離距離とほぼ同じ距離である、前記X軸に沿う前記内部X電極表面間のX電極分離距離とを設けるステップと、
前記電極の少なくとも1つの中に電界の歪み特性を挿入し、該電界の歪み特性を含む前記電極の幾何学的形状を、前記電界の歪み特性により生み出される非線形の電界成分を補正するように選択するステップと、
前記中心線に、平衡な又はゼロに近い中心線高周波電位を生み出すステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
四重極イオントラップ内の電界の歪み特性によって生み出される非線形の電界成分を補正するためのシステムであって、該補正は、四重極イオントラップ内で非線形の電界成分を減少させ、最小の中心線高周波電位を生み出す幾何学的表面形状によって行われ、前記システムは、
前記イオントラップ内部の捕捉容積部を貫通する中心線と、
前記中心線にほぼ平行でありかつY幾何学的形状を有する内部Y電極表面を含む1対のY電極と、
前記中心線にほぼ平行でありかつX幾何学的形状を有する内部X電極表面を含む1対のX電極と、
X電極分離距離とほぼ等しいY電極分離距離と、
前記イオントラップ内に、より線形でない、或いはよりマイナスの非線形の電界特性をもたらす、前記X電極の少なくとも1つにおける1又はそれ以上の電界の歪み特性と、
前記1又はそれ以上の電界の歪み特徴部によって生み出される非線形の電界成分を補正するために、前記Y幾何学的形状とは異なるように選択される前記X幾何学的形状と、
を含み、前記中心線に、平衡な又はゼロに近い中心線高周波電位を生み出す、
ことを特徴とするシステム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−537952(P2009−537952A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511100(P2009−511100)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/012003
【国際公開番号】WO2008/091271
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/012003
【国際公開番号】WO2008/091271
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】
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