説明

イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器

本発明は、イオンビーム(150)による放射線治療のための粒子加速器に関する。この粒子加速器は、6つの直線的なビーム区域(1〜6)および6つの湾曲したビーム区域(7〜12)を有する、6つの部分を有するシンクロトロン環(100)を含む。直線的に加速されたイオンビームをシンクロトロン環(100)中に導入するための注入手段(43)は、6つの直線的なビーム区域(1〜6)の第1の直線的なビーム区域(1)上に配置されている。イオンビームのための少なくとも1つの加速要素(44)は、第2の直線的なビーム区域(5)の経路に沿って配置されている。数回の周期の間に迅速に加速された内部ビームを抽出するための抽出手段(45)は、第3の直線的なビーム区域(4)上に配置されている。各々の湾曲したビーム区域(7〜12)は、一対の双極子磁石(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)を含む。水平に焦点をぼかす四重極磁石(31〜36)は、双極子磁石の各々の対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)の間に配置されており、水平に焦点を合わせる四重極磁石(25〜30)は、各々の双極子磁石対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)の上流に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器に関する。このような粒子加速器は、刊行物DE 100 10 523 C2から知られており、粒子加速器の要素として、種々の物質をイオン化する種々のイオン供給源、イオンを選択するための質量分析計、イオンを直線的に予備加速するための加速器、およびイオンを6つの部分を有する(sixfold)シンクロトロン環中に導入するための注入手段を含む。6つの部分を有するシンクロトロン環を、イオンをさらに高度に加速するために用いる。さらに、既知の粒子加速器は、高度に加速されたイオンを、シンクロトロン環から、患者の対応する照射部位への偏向磁石を有するビーム誘導区域中に分離するための抽出手段を含む。
【背景技術】
【0002】
イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器におけるイオンビームの高度な加速における主な項目は、シンクロトロン環であり、ここで、加速サイクルによるシンクロトロン環中の複数の制御された循環により、イオンに、罹患した組織の容積要素を所定の深さにおいて、この上の健康な覆っている組織を損傷せずに破壊するのに正確に十分なエネルギーが供給される。従って、シンクロトロンにおいて、サイクロトロンとは対照的に、サイクルごとに異なる照射線量が発生し、各々は、種々の予め設定された深さに到達するのに必要な程度に大きい照射エネルギーのみを有する。
【0003】
サイクロトロンにおいて、最大の所定の照射エネルギーは、サイクルごとに常に、所要の必要性とは無関係に発生し、これにより、環境に対する照射負担が増大する。その理由は、任意の1つの時点において必要な照射エネルギーが、好適な厚さを有する吸収体における減速度による加速の後に調整されるからである。このプロセスにおいて、小さい部分のみの加速された粒子ビームを、治療的照射のために用いることができ、これは、環境保護ガイドラインに違反している。
【0004】
6つの直線的なビーム区域および6つの湾曲したビーム区域を有する、上記の刊行物から知られている6つの部分を有するシンクロトロン環は、第1の直線的なビーム区域上に、直線的に加速されたイオンビームをシンクロトロン環中に導入するための注入手段を含み、かつ第2の直線的なビーム区域の途中に、イオンビームのための少なくとも1つの加速手段を有し、第3の直線的なビーム区域において、いくつかの循環の後に、サイクルの終端において、抽出手段を用いて、線量が調整された高度に加速されたイオンビームをビーム誘導区域中に分離する。これに加えて、既知のシンクロトロン環において、3つのバンパー磁石は、直線状のビーム区域上に配置されており、これは、イオンをシンクロトロン環中に注入した後に、複数の循環においてイオンビームを集中させ、バンパー磁石の1つは、注入手段もまた配置されている直線的なビーム区域中に配置されている。
【0005】
当該目的のために、既知の6つの部分を有するシンクロトロン環において、湾曲したビーム区域の各々において、コイルおよびポール片のH型形状を有する細長い、固体の、メートルトンレベルの重量を有する双極子磁石が、配置されており、60°によるイオンビームの水平の偏向のために、およびイオンビームの水平の安定化のために、水平に焦点を合わせる四重極磁石および水平に焦点をぼかす四重極磁石が、連続的に、双極子磁石の開口部中へのイオンビームの入口の上流に配置されている。
【0006】
シンクロトロン環を有する既知の粒子加速器の1つの欠点は、イオンビームが、次の直線的なビーム区域に到達するまで双極子磁石を貫通して覆わなければならない長距離である。これには、広く開放されている開口部が必要である。これは、電気的パルス電力の大きい必要性を有する材料の点で複雑であり、磁石および磁石電力供給のための投資費用並びに操業費を増大する双極子磁石の使用と、不利に関連している。これに加えて、建設および投資費用に対する重圧を加える、細長い、固体の、およびメートルトンレベルの重量を有する双極子磁石を固定して配置するべき基礎の、切迫した技術的な要求がある。
【0007】
最後に、また、保守および修理に伴う問題がある。その理由は、移動させるべき物体に相応の重い持ち上げおよび輸送装置が必要であり、これにより運営経費が増大するからである。さらに、大きい寸法の双極子磁石は、少なくとも2つの隔壁磁石の、直線的なビーム区域において、抽出の間に双極子磁石を通過してシンクロトロン環の外側にビームを誘導することができる抽出手段としての不利な使用を必然的に伴う。
【0008】
パルスごとに調整可能なイオンビームのエネルギーを伴う能動的なラスター走査方法の概念は、イオンビームにより放射線治療について成功であることが明らかになった。照射技術のこの形態についての最良の加速器のタイプは、シンクロトロンである。GSI Darmstadtにおいて、重イオンシンクロトロンSISが、イオンビームによる放射線治療の開発のために長年成功に用いられている。University Hospital in Heidelbergにおいて、小さいシンクロトロンを有する新たな加速器システムが、現在、イオンビームによる放射線治療の臨床的な適用のために建設されており、これは、刊行物:The Proposed Dedicated Ion Beam Facility for Cancer Therapy at the Clinic in Heidelberg, EPAC 2000から知られている通りである。
【0009】
重イオンシンクロトロンSISは、種々の技術的な概念によって設計された、はるかに一層大きい加速器システムである。しかし、Heidelbergにおける加速器システムは、前述の6つの部分を有するシンクロトロンを備えており、これは、双極子磁石および関連する要素、例えば四重極磁石、バンパー磁石および隔壁磁石の大きさおよび重量に関連する、並びに投資、建設および操業費に関連する述べられた欠点に関連する。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、当該分野における欠点を克服し、完全な電子的制御の下で、イオンビームによる放射線治療のための精密イオンビームを信頼可能に提供する、イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器を提供する、イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器を生産する技術的な問題に基づいている。
当該問題は、独立請求項1の主題を用いて、解決される。本発明の有利な開発は、従属請求項から明らかである。
【0011】
従って、本発明において、イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器を提供し、ここで、該粒子加速器は、直線的なビーム区域(1〜6)、湾曲したビーム区域(7〜12)、注入手段(43)、抽出手段(45)および少なくとも1つの加速手段(44)を有するシンクロトロン環(100)を含み、ここで、
−少なくとも1つの湾曲したビーム区域(7〜12)は、一対の双極子磁石(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)を含み、
−水平に焦点をぼかす四重極磁石(31〜36)は、該双極子磁石の対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)の間に配置されており、
−水平に焦点を合わせる四重極磁石(25〜30)は、該双極子磁石の対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)の上流に設けられている。
【0012】
さらに、本発明において、イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器を提供し、ここで、該粒子加速器は、直線的なビーム区域および湾曲したビーム区域を有するシンクロトロン環を含む。直線的に加速されたイオンビームをシンクロトロン環中に導入するための注入手段は、直線的なビーム区域(2つ以上)の1つの直線的なビーム区域上に配置されている。他の直線的なビーム区域の経路に沿って、イオンビームのための少なくとも1つの加速手段がある。いくつかの循環の後に高度に加速されたイオンビームを抽出するための抽出手段は、他の直線的なビーム区域上に設けられている。湾曲したビーム区域の少なくとも1つは、一対の双極子磁石を含み、水平に焦点をぼかす四重極磁石は、該双極子磁石の対の間に配置されており、焦点を合わせる四重極磁石は、該双極子磁石の対の上流に配置されている。
【0013】
この粒子加速器の利点は、コイルおよびポール片のH型配置を有する細長い、固体の、およびメートルトンレベルの重量を有する双極子磁石により前に形成した、長い、湾曲したビーム区域が、2個の双極子磁石を含む一対の双極子磁石の間に共有されていることである。双極子対のそれぞれの双極子内のイオンビームの一層短い経路の長さのために、口径を、感知可能な程度に、かつ相当する程度に減少させて、双極子の重量を一層軽量にし、これらに、改善されたコイルおよびポール片の配置を付与することが、有利に可能である。さらに、本発明の双極子対の配置により、水平に焦点をぼかす四重極磁石を、双極子対の間に位置させる有利な機会が得られ、これによりさらに、口径および四重極強度に関する要件が最小になる。双極子磁石対の双極子は、好ましくは、湾曲したビーム区域において、一方が他方の後方に近接して配置され、従って正確に1個の焦点をぼかす四重極を、双極子磁石対の双極子磁石の間に配置することができる。
【0014】
双極子磁石対は、好ましくは、窓枠磁石タイプとH磁石タイプとの組み合わせを含むコイル配置を有し、これをまた、WF/Hタイプと呼ぶことができる。この有利な磁石のタイプは、短縮された軌道の長さおよび減少した口径のために可能であり、これにより、顕著に一層小さい断面および相当する程度に一層低い重量を有する双極子磁石を用いること、並びに電気的パルス電力についてのはるかに低下した要件が可能になる。
【0015】
さらに、本発明の好ましい態様において、バンパー磁石は、直線的なビーム区域の外側に、6つの直線的なビーム区域の他の3つ中の注入手段について、1個のバンパー磁石が、注入手段の下流に配置され、少なくとも1個のバンパー磁石が、注入手段の上流に配置されるように配置されている。この態様は、注入手段についての直線状ビーム区域が過負荷にならず、従って常に6つの短い直線的なビーム区域が可能であり、これが、シンクロトロン環の全体の大きさに対して好ましい効果を有するという利点を有する。
【0016】
さらに、イオンの注入の後のイオンビームが、2個のバンパー磁石のみにより集中し、従って投資費用をさらに低下させることが可能であることを、意図する。
【0017】
限定された数の循環内にイオンビームを注入するために、バンパー磁石は、好ましくは、コンセント使用のアダプター(mains adapter)および制御ユニットを有し、これは、減少する励起電流の制御のために、傾斜の末端部において平坦化されて離れている経過を有する非線形傾斜を提供する。従って、有利な方式で、シンクロトロンのための注入手段は、バンパー磁石の磁界のための非線形の、例えば放物線状の傾斜に急峻な降下を傾斜の開始において、および平坦になる経過を傾斜の終了において提供することにより、並びに軌道の変位を、4個のバンパー磁石を有する既知の配置の代わりに、多くとも3個のバンパー磁石を用いて信頼可能に、かつ精密に達成し、バンパー磁石を、極めて厳密にまとまった注入区域において必要としないことにより、マルチターン(multi-turn)注入と呼ばれているように、一層高度に信頼可能に配置されている。
【0018】
さらに、他の好ましい態様において、最適な配置は、静電気注入隔壁について達成され、ビーム入口が開口部の中心部にあり、ビーム出口が隔壁の内部電極にあり、精密なビーム設定が、静電気注入隔壁における2つのパラメーターの偏向電圧の調整および注入隔壁中への進入における注入されたイオンビームの入射角についての自動的な調整によるものであり、これは、注入手段が、静電気注入隔壁を含み、この湾曲した静電気偏向板が、予備加速された、注入された、かつ偏向されたイオンビームの軌道半径よりも大きい曲率半径を有するという事実によるものである。
【0019】
本発明の他の好ましい態様において、区分線および従って抽出されたビームの射出角の精密な調整のための、非線形の共鳴を励起するための抽出手段は、電気的に正確に制御可能な抽出手段として、各々の湾曲したビーム区域の上流に、6個の個別に調整可能な六極磁石および双極子磁石対を含む。さらに、共鳴抽出のための個別の六極磁石の励起電流は、調整可能であり、六極磁石は、固定された静電気抽出隔壁と、イオンビームを抽出するための抽出手段の1つとして動作可能に接続されている。さらに、2個の隔壁磁石の代わりの静電気抽出隔壁および、ビーム偏向のための1個のみの隔壁磁石並びにまた、最適化された湾曲の技術的設計およびシンクロトロン中の四重極磁石により、抽出角に関して大きい信頼性が確実になる。
【0020】
粒子加速器は、好ましくは、イオン供給源の1つとして、炭素イオンのビームパルスの発生のための少なくとも1つのレーザーイオン供給源を含む。このようなイオン供給源を用いて、好ましくは、電荷状態q=4を有する炭素イオン(C4+イオン)を含むイオンビームを発生することが、可能である。このレーザーイオン供給源は、他のイオン供給源にまさる以下の利点を有する:
(a)20〜30μsの持続時間の短いビームパルスにおいて、1・10104+イオンを超える、高いビーム強度、
(b)供用外における数週間の長い寿命、
(c)長年の動作にわたる高い信頼性、並びに
(d)好ましい投資費用および操業費。
【0021】
本発明の他の好ましい態様において、粒子加速器は、注入器直線状加速器として、IH区域モジュールおよび、IH区域モジュールの真空システムの外側に四重極レンズモジュールを有する直線状加速器を含む。このような直線状加速器は、直線状の予備加速のための既知の加速チャンバにまさる、以下の利点を有する:
(a)IH区域と呼ばれる、長さ1.5〜2mの3つの短い加速器区域を有する直線状加速器のモジュラー構造、
(b)高くとも180kWのHF出力のHF発生器を有し、1−2MWないし2MWの従来の慣用の性能の分類におけるシステムと比較して相当する程度の簡略化を有する、高周波システムのモジュラー構造、
(c)例えば対称の平面における四重極支配の機械的な分離による、真空システムの外側の加速器区域の間の四重極レンズの技術的に一層単純な、かつ供用のために一層有利な設置、
(d)長年の動作にわたる高い信頼性、並びに
(e)好ましい投資費用および操業費。
【0022】
さらに、照射部位と6つの部分を有するシンクロトロンとの間に、ビーム誘導システムが提供されており、これは、シンクロトロン環の直後に、および異なる照射部位上への垂直な偏向による分布のために、水平な分散を補償する特徴を有する。従って、照射部位におけるビーム位置の高度な安定性は、有利に達成され、ここで、専ら垂直な偏向により、複数の照射部位に、0≦α≦90°を有する異なる入射角αを供給することができ、0°は、水平の入射角であり、90°は、上方から垂直に衝突する入射角αである。
【0023】
本発明を、ここで添付した図面を参照して、一層詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の1つの態様における粒子加速器の6つの部分を有するシンクロトロン環100の平面図を図式的に示す。6つの部分を有するシンクロトロン環100は、この目的のために、6つの直線的なビーム区域1〜6および6つの湾曲したビーム区域7〜12を有する。直線的に加速されたイオンビーム150をシンクロトロン環100中に導入するための注入手段43は、6つの直線的なビーム区域1〜6の第1の直線的なビーム区域1上に配置されている。第2の直線的なビーム区域5の経路に沿って、イオンビーム150のための少なくとも1つの加速手段44がある。いくつかの循環の後にビーム方向151において迅速に加速されるイオンビームを抽出するための抽出手段45は、第3の直線的なビーム区域4上に設けられている。
【0025】
さらに、各々の湾曲したビーム区域7〜12は、一対の双極子磁石13/14、15/16、17/18、19/20、21/22および23/24を含む。水平に焦点をぼかす四重極磁石31〜36は、それぞれ一対の双極子磁石13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24の2個の双極子磁石の間に配置されている。さらに、水平に焦点を合わせる四重極磁石25〜30は、双極子磁石の各々の対13/14、15/16、17/18、19/20、21/22および23/24の上流に配置されている。従って、シンクロトロンは、湾曲磁石46としての双極子磁石13〜24および四重極磁石25〜36の最適な配置を有する。この配置において、湾曲したビーム区域7〜12としての6つの超周期(super-period)における湾曲磁石としての双極子磁石の対13/14、15/16、17/18、19/20、21/22および23/24並びに構造F(焦点を合わせる磁石47)、BM(湾曲磁石46)、D(焦点をぼかす磁石48)およびBM(湾曲磁石46)における四重極磁石は、6つの自由な直線的なビーム区域1〜6と交互にある。
【0026】
従って、窓枠型およびH型磁石の組み合わせとして設計された、12個の軽量の双極子磁石13〜24についての最適化された磁石系を、シンクロトロンのために用いる。この磁石系は、他の設計にまさる以下の利点を有する:
(a)注入された、および抽出されたイオンビームエネルギーのためのシステムの相応の側面拘束を有する、従来技術における210tを超える重量と比較して、例えば合計で100tより軽量への、全部の磁石の合計の重量の減少、
【0027】
(b)多くとも5tおよび、湾曲磁石対について多くとも10tの、個別の磁石の最大の磁石の重量、並びに従ってシステムの相応の側面拘束を有する、従来技術における個別の湾曲磁石対についての、25tを超える重量と比較しての、簡単な載置および取り外し、これに伴う重量および費用の明確な低減、
(c)個別の湾曲磁石と比較しての、ここで可能な湾曲磁石対の一層小さい口径による、磁石電力供給のために必要なパルス電力の実質的な低減、並びに従って、粒子加速器の構造および動作のための一層低い費用。
【0028】
これらの利点は、以下の図面に例示するように、双極子磁石13〜24および四重極磁石25〜36についての改変された磁石設計を用いることにより、並びに図1に示すように、12個の双極子磁石13〜24および12個の四重極磁石25〜36を有する異なる磁石配置を選択することにより、達成される。
【0029】
図2は、図1による6つの部分を有するシンクロトロン環100の一対の双極子磁石13/14、即ち湾曲磁石対の1個の双極子磁石13の部分的断面を図式的に示し、双極子磁石13の1個のみの側方に反転させた半分の部分50を示す。寸法は、例により、ミリメートルで特定する。ポール片および磁石コイル配置49により包囲された楕円形の開口部プロフィール54は、窓枠型およびH磁石型のこの組み合わせに特有であり、これを、本発明のシンクロトロン環の双極子磁石あたり短縮された湾曲したビーム区域のみに基づいて、作成することができる。シンクロトロンにおける水平方向における所要の磁石開口部aおよび垂直方向におけるaに関する、双極子磁石13の最適な構造は、湾曲および四重極磁石の本発明の最適化された技術的設計により、達成される。
【0030】
図3は、図1による6つの部分を有するシンクロトロン環100の四重極磁石25の部分的断面を図式的に示す。ここで、図3は、単に四重極磁石の象限56を断面で示す。寸法は、例により、ミリメートルで特定する。この図式的な断面図は、長方形のプロフィールおよび相当する程度に小さい全体の幅を有する四重極磁石25の構造を例示する。磁石コイル配置49およびポール片配置55は、図2における双極子磁石13のものとは異なり、重量に関して、並びにまた蓄積されたエネルギーおよびシンクロトロンの動作中のエネルギー消費に関して最適化されている。
【0031】
図4は、曲線Aでのx方向の水平のビーム半径、および曲線Bでのy方向の垂直なビーム半径の図表を図式的に示し、この各々を、当該図表の縦座標上にミリメートルでプロットする。前の図面におけるのと同一の機能を有する成分を、同一の参照符号でマークし、別個には討議しない。シンクロトロン環中のミリメートルでの軌道の長さbを、図表の横座標に沿って表す。ミリメートルでのxおよびy方向におけるビーム偏向は、既知のシンクロトロン環に関して相応する側面拘束と共に、明確に一層小さく、従って、図2に示すように、有利に一層小さい口径寸法aおよびaを、本発明を用いて達成することができる。
【0032】
図5は、静電気注入隔壁157の図式平面図を示し、これは、シンクロトロンについての本発明の注入システムに属する。鎖線158は、直線的なビーム区域の軌道中心の部分を示し、この中に、図1に示す注入手段43により、イオンビーム150を、マルチターン注入方法において注入する。本発明の注入隔壁157を、最小のビーム損失を伴う再現可能な動作を自動的に設定することができるように、設計する。当該目的のために、静電気注入隔壁157は、入射するイオンビーム152のための静電気注入隔壁157の開口部の中心におけるビーム入口154および、進出するイオンビーム153のための注入隔壁157の内部電極156におけるビーム出口155を有する最適な形状を有し、ビーム出口155におけるビーム位置およびビーム角度の精密な設定は、2つのパラメーター、即ち静電気注入隔壁157における偏向電圧およびビーム入口154における注入隔壁157中への注入されたイオンビーム150の入射角を調整することにより、達成される。当該目的のために、静電気注入隔壁157は、湾曲した静電気偏向板159、予備加速された、注入された、かつ偏向されたイオンビーム150の軌道半径rよりも大きい曲率半径Rを含む。
【0033】
図6は、ビーム経路における3個のバンパー磁石51、52および53の影響の下での、図1によるシンクロトロン環100におけるイオンビーム150の軌道の変位の図表を図式的に示す。ビーム中心Aの周囲のビームエンベロープA、Aでのこの軌道の変位は、注入区域1中の3個のバンパー磁石の1個を有する、当該分野において知られている配置の代わりに、3個の固定されたフェライト磁石により行うことができ、シンクロトロンにおける注入区域1の外側の局所的な軌道の中断を生じる。この例において、直線状区域5および6中の2個のバンパー磁石52および53は、注入隔壁157を有する注入区域1の前のビーム方向151において挿入されており、1個のバンパー磁石51は、直線的な注入区域1の後に挿入されており、従って図5に示す注入隔壁157、六極磁石37および水平に焦点を合わせる四重極磁石25で厳密にまとまった注入区域1は、有利にはバンパー磁石を含まないままである。他の最適化段階において、随意に2個の第1のバンパー磁石52および53を、単一のバンパー磁石により置換することができる。
【0034】
図7は、図7aにおいて、イオンビームの循環(N4〜N15)ごとに改良された、半径のアクセプタンス(acceptance)の相空間160の図表を図式的に示し、相空間160の角座標を、縦座標においてmradで示し、位置座標xを、横座標においてmmで示す。楕円161は、注入されたイオンビームのビーム発生の達成可能な最適な調整およびマルチターン注入のための循環N4〜N15ごとのアクセプタンス変数を示す。
【0035】
この半径のアクセプタンスを、図6に示すように、3個のバンパー磁石51、52および53により、図7bに示すように、バンパー磁石の磁界についての放物線状傾斜Cにより、開始する。7bにおける図表は、縦座標上のバンパー磁石51、52および53のバンパー磁界の相対的強度および横座標上の循環N1〜N35の数を示す。バンパー磁石の磁界のための放物線状傾斜Cは、最初は急峻な降下および傾斜Cの終了において平坦になる経路を有する。
【0036】
本発明の粒子加速器について、図5、6および7に記載した注入システムは、以下の利点を有する:
(a)最小の費用において最適な構造、
(b)約85%のマルチターン注入についての高い効率、即ち注入中の最小のビーム損失および従って最小の放射活性負担、従って、サイクロトロン加速器とは異なり、本発明のこのシンクロトロン環100は、放射線保護規制の要件を満たす、
(c)大部分が自動化される、安全かつ再現可能な調整方法。
【0037】
さらに、マルチターン注入と呼ばれる本発明の注入手段43は、以下のように改良されている:
(a)傾斜Cの開始において急峻な降下および傾斜Cの終了において平坦になる経路を有する、バンパー磁界のための非線形の、例えば放物線状の傾斜C;
(b)3個の最適に配置されたいわゆるバンパー磁石51、52および53を有し、注入区域1の前の2つの直線的な区域5および6中の、これらの磁石の2個52および53が、イオンビーム150を外側に偏向させ、注入区域1の後の直線的な区域2中の、第3のバンパー磁石51が、イオンビーム150を内側に戻して偏向させる、マルチターン注入システムによる軌道の変位;
【0038】
(c)1個が注入区域1中に配置されている、3個のバンパー磁石を有する既知の配置の代わりに、2個のみ、または多くとも3個のバンパー磁石を用い、バンパー磁石51、52および53のいずれも、注入手段43を有する極めて厳密にまとまった直線的なビーム区域1において用いられない、
(d)注入隔壁157の開口部の中心におけるビーム入口154および内部電極156におけるビーム出口155、並びに2つのパラメーター、即ち静電気注入隔壁157における偏向電圧および、可能な限り自動的に調整された、注入隔壁157中への入口における注入されたイオンビーム150の入射角の調整による精密なビーム設定を有する、静電気的注入隔壁157についての最適な配置。
【0039】
図8は、直線的なビーム区域4または抽出区域4から外側に分岐する抽出分岐60を有する、6つの部分を有するシンクロトロン環100の区域の平面図を図式的に示す。抽出区域4中のビーム偏向は、1個のみの単一の抽出隔壁磁石62を含む。その理由は、少なくとも2個の隔壁磁石が、一層大きい偏向角度で、従来技術において用いられるその後の一層大きい寸法の双極子磁石を通り抜けるために必要である、従来技術において知られているシンクロトロン環における状況とは異なり、イオンビーム150の抽出が一層浅い角度で行われるように、双極子磁石対19/20の双極子磁石19の寸法が、本発明のシンクロトロン環100により減少しているからである。
【0040】
電磁抽出隔壁62を、これが抽出したイオンビーム150を水平に偏向させる双極子磁石63中に結合させ、これがイオンビーム150を、抽出分岐60上の下流に配置され、高エネルギーイオンビーム誘導システムに属する2個の四重極磁石64および65に送達するように、配置することができる。抽出隔壁磁石62に加えて、抽出システムは、静電気抽出隔壁を含み、これは、抽出区域4の上流の直線的なビーム区域3中に配置されている。さらに、抽出のための非線形共鳴の励起のために、六極磁石37〜42は、各々の直線的なビーム区域1〜6中に配置されている。
【0041】
図9は、抽出されたイオンビームの個別の発生する光線71の図表を図式的に示し、この方向Dを、相空間において、図1に示す6個の六極磁石37〜42により達成される非線形共鳴の励起により調整することができる。当該目的のために、図9は、相空間170の表示を示し、角座標x’を、図表の縦座標上に示し、位置座標xは、例示の横座標上で明らかである。
【0042】
共鳴抽出の間、イオンは、不安定になり、該例示において、水平な平面における移動のための相空間170において、各々の循環について、3つのアーム71、72、73の1つから次へと1段階移動する。位置座標xにおいて視認して、これらは、直線状の下方のアーム71上の最後の段階において、これらが、図11に示す静電気抽出隔壁61中に進入するまで、中心の所望の軌道74の周囲で振動する。区分線の精密な調整により、抽出されたイオンビームについての出口方向Dを、6個の個別に調整可能な六極磁石により相当する程度に調整することができ、共鳴抽出についての最適な効率を、設定することができる。このようにして、図11に示す静電気抽出隔壁61の複雑であり、労力を要する機械的および幾何学的な調整は、回避される。
【0043】
図10は、6個の個別に調整可能な六極磁石により調整可能である、相空間170における抽出されたイオンビームの複数の出口方向D〜Mの図表を図式的に示す。
【0044】
図11は、抽出手段45の領域におけるシンクロトロン環中のビーム偏向の図表を図式的に示す。以下の図12〜15において、前の図面におけるものと同一の機能を有する成分を、同一の参照符号でマークし、別個には討議しない。軌道の長さbを、再び横座標においてミリメートルでプロットするが、専らx方向における偏向を、縦座標においてミリメートルでプロットする。抽出のために、シンクロトロン環の六極磁石39および40をここで確認することができる、6個の六極磁石により、非線形の抽出共鳴が、発生する。静電気抽出隔壁61は、直線的なビーム区域3中の電磁抽出隔壁62の上流に配置されている。抽出共鳴の励起は、すでに上記で記載しており、電気的に、および従って自動的に調整可能な六極磁石37〜42により、イオンビーム150の出口方向Dが、精密に確定されるのが可能になる。
【0045】
図12は、本発明の1つの態様の、イオン供給源80、注入器直線状加速器90、6つの部分を有するシンクロトロン環100、注入分岐75および抽出分岐60を有する粒子加速器200の全体図を図式的に示す。
【0046】
図13は、イオン供給源80の基本的な概略を図式的に示す。用いるイオン供給源は、レーザーイオン供給源であり、これは、HeNeレーザー81を含み、これは、この一部において、COレーザーを励起する。次に、レーザービームを、炭素標的の表面88または標的86上に、物体83を介して向け、これにより、炭素標的の表面88を、電気的に帯電したプラズマ87に原子化する。このプラズマ87を、予備加速器85中で加速する。
【0047】
このレーザーイオン供給源80は、30μsより短いか、またはこれに等しい炭素イオンの極めて短いビームパルス79を高いビーム強度で発生するのに特に適する。イオンビーム、好ましくは電荷状態q=4を有する炭素イオン(C4+イオン)を発生するために、レーザーイオン供給源80は、他のイオン供給源にまさる重要な利点を提供する:
(a)好ましくは20μs〜30μsの持続時間の短いビームパルス79において、1×10104+イオンを超える、高いビーム強度;
(b)供用外における数週間の長い動作寿命;
(c)長年の動作にわたる高い信頼性、並びに
(d)好ましい投資および操業費。
【0048】
図14は、注入器直線状加速器90の基本的な概略を図式的に示す。直線状加速器90は、IH区域91〜93と呼ばれるモジュラー構造を有する。さらに、四重極レンズ94〜96としての3つの四重極の3つ組は、IH区域91、92および93の間に部分的に配置されている。IH区域91〜93を含む高周波数システムのモジュラー構造は、高くとも180kWのHF出力を有する高周波発生器で達成される。IH区域91、92および93の形態での3つの加速器区域間の真空システムの外側の、四重極レンズ95および96の配置により、直線状加速器の単純であり、供用が容易なアセンブリが可能になる。
【0049】
従って、本発明の好ましい態様のこの直線状加速器90は、以下の利点を有する:
(a)各々のいわゆるIH区域91、92および93についての、長さ1.5m〜2mの3つの短い加速区域を有する直線状加速器90のモジュラー構造、
(b)高くとも180kWのHF出力のHF発生器を有し、1MW〜2MWの従来の慣用の性能の分類におけるシステムと比較して相当する程度の簡略化を有する、高周波システムのモジュラー構造、
(c)少なくとも四重極3つ組95および96についての、真空システムの外側の加速器区域の間の四重極レンズの技術的に一層単純な、かつ供用のために一層有利な設置。
【0050】
図15は、照射部位67〜70を有する複数の放射線療室に対する垂直に偏向したビーム誘導システム66の側面図を図式的に示す。ビーム誘導システム66は、シンクロトロンと照射部位67〜70との間でシンクロトロンの直後での水平の偏向を伴って動作するかまたは、イオンビーム150の照射部位67〜70への分布のための別個の垂直な偏向を有することができる。当該目的のために、療法のための、シンクロトロンと照射部位67〜70との間のビーム誘導システム66は、シンクロトロンの直後の水平の分散の補償または、異なる照射部位67〜70への分布のために、垂直の分散の別個の独立した補償のための垂直な偏向のいずれかを備えている。照射部位67〜70におけるビーム位置の高度な安定性は、これとともに有利に達成される。図15において、この配置を、4つの照射部位67〜70についてのビーム誘導システム66の例を用いて例証し、ビーム誘導システム66は、0°における入射角αを有する3つの照射部位67〜69および、上方からの45°における入射角αを有する1つの照射部位70について、設計されている。
【0051】
要約すると、本発明は、イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器に関し、ここで、すべての重要な加速器要素、例えばイオン供給源、注入器直線状加速器、シンクロトロン環およびビーム誘導システムの最適化を組み合わせることにより、投資費用および操業費の低減並びに操業的な信頼性における改善が、達成される。当該目的のために、述べた改善のいくつかおよびすべてを、組み合わせることができる。このようにして改善された粒子加速器は、以下の利点を有する:
(a)大きいビームのアクセプタンスを有する小さい磁石開口部;
(b)低い磁石重量;
(c)シンクロトロン磁石の動作のための、小さいパルス電力および低いエネルギー消費;並びに
(d)イオンビームのための注入および抽出システムの設計および動作のための最適化されたパラメーター。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の1つの態様における粒子加速器の6つの部分を有するシンクロトロン環の図式的平面図である。
【図2】図1による6つの部分を有するシンクロトロン環の一対の双極子磁石の1個の双極子磁石の図式的部分的断面図である。
【図3】図1による6つの部分を有するシンクロトロン環の四重極磁石の図式的部分的断面図である。
【図4】図1によるシンクロトロン環における水平の、および垂直なビーム半径(ビームエンベロープ)の図式図である。
【図5】静電気注入隔壁の図式平面図である。
【図6】ビーム経路における3個のバンパー磁石の影響の下での、図1によるシンクロトロン環におけるイオンビームの軌道の変位の図式図である。
【図7】イオンビームの循環ごとにバンパー磁石により誘発された、半径のアクセプタンスおよび、バンパー磁石の磁界についての放物線状傾斜の図式図である。
【図8】抽出分岐を有する6つの部分を有するシンクロトロン環の区域の図式的平面図である。
【図9】6個の個別に調整可能な六極磁石による、抽出されたイオンビームの出口方向に伴う図式図である。
【図10】6個の個別に調整可能な六極磁石による、抽出されたイオンビームの複数の異なる出口方向に伴う図式図である。
【図11】抽出手段の領域におけるシンクロトロン環中のビーム偏向の図式図である。
【図12】本発明の1つの態様における、イオン供給源、注入器直線状加速器、6つの部分を有するシンクロトロン環および抽出分岐を有する粒子加速器の図式的平面図である。
【図13】イオン供給源の基本的な概略の図式図である。
【図14】注入器直線状加速器の基本的な概略の図式図である。
【図15】複数の照射部位についてのビーム誘導システムの図式的側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1〜6 直線的なビーム区域
7〜12 湾曲したビーム区域
13〜24 双極子磁石
13/14 双極子対
15/16 双極子対
17/18 双極子対
19/20 双極子対
21/22 双極子対
23/24 双極子対
25〜30 水平に焦点を合わせる四重極磁石
31〜36 水平に焦点をぼかす四重極磁石
37〜42 六極磁石
【0054】
43 注入手段
44 ビーム加速手段
45 抽出手段
46 湾曲磁石
47 焦点を合わせる磁石
48 焦点をぼかす磁石
49 磁石コイル配置
50 側方に反転された半分の部分
51 バンパー
52 バンパー
53 バンパー
54 楕円プロフィール
55 ポール片配置
56 象限
【0055】
60 抽出分岐
61 静電気抽出隔壁
62 電磁抽出隔壁
63 双極子磁石
64 四重極磁石
65 四重極磁石
66 ビーム誘導システム
67 照射部位
68 照射部位
69 照射部位
70 照射部位
71 相空間中のアーム
72 相空間中のアーム
73 相空間中のアーム
74 中心ビーム軌道
75 注入経路
【0056】
79 ビームパルス
80 イオン供給源
81 HeNeレーザー
82 COレーザー
83 物体
84 イオン光学レンズ
85 予備加速器
86 標的
87 プラズマ
88 標的の表面
90 直線状加速器
91 IH区域
92 IH区域
93 IH区域
94 四重極3つ組
95 四重極3つ組
96 四重極3つ組
【0057】
100 6つの部分を有するシンクロトロン環
150 イオンビーム
151 シンクロトロン環中でのビーム方向
152 静電気抽出隔壁中に入射するイオンビーム
153 注入隔壁からの進出ビーム
154 ビーム入口
155 ビーム出口
156 内部電極
157 注入隔壁
158 鎖線
159 偏向板
160 相空間
161 楕円
170 相空間
200 粒子加速器
【0058】
α 照射角
水平方向における磁石口径
垂直方向における磁石口径
A、A、A、A x方向における水平の偏向を有する軌道経路
B y方向における垂直の偏向を有する軌道経路
b シンクロトロン中での軌道の長さ
C 傾斜
D〜M 出口方向
N1〜N35 イオンビームの循環
r 注入されたイオンビームの軌道半径
R 静電気偏向板の半径
x’ 角座標
x 位置座標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームによる放射線治療のための粒子加速器であって、該粒子加速器が、直線的なビーム区域(1〜6)、湾曲したビーム区域(7〜12)、注入手段(43)、抽出手段(45)および少なくとも1つの加速手段(44)を有するシンクロトロン環(100)を含み、ここで、
−少なくとも1つの湾曲したビーム区域(7〜12)が、一対の双極子磁石(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)を含み、
−水平に焦点をぼかす四重極磁石(31〜36)が、該双極子磁石の対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)の間に配置されており、
−水平に焦点を合わせる四重極磁石(25〜30)が、該双極子磁石の対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)の上流に設けられている、
前記粒子加速器。
【請求項2】
粒子加速器が、6つの直線的なビーム区域(1〜6)および6つの湾曲したビーム区域(7〜12)を有する、6つの部分を有するシンクロトロン環(100)を含み、ここで、6つの直線的なビーム区域(1〜6)の:
−直線的に加速されたイオンビームをシンクロトロン環(100)中に導入するための注入手段(43)が、直線的なビーム区域(1)上に配置されており、
−イオンビームのための少なくとも1つの加速手段(44)が、他の直線的なビーム区域(5)の経路に沿って存在しており、
−数回の循環の後に高度に加速されたイオンビームを抽出するための抽出手段(45)が、他の直線的なビーム区域(4)上に設けられており、
−湾曲したビーム区域が各々、少なくとも1つの双極子磁石(46)を含み、かつここで、
−各々の湾曲したビーム区域(7〜12)が、一対の双極子磁石(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)を含み、
−水平に焦点をぼかす四重極磁石(31〜36)が、双極子磁石の各々の対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)の間に配置されており、
−水平に焦点を合わせる四重極磁石(25〜30)が、直線状ビーム区域(1〜6)中の双極子磁石の各々の対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)の上流に配置されている、
特に請求項1に記載のイオンビームによる放射線治療のための粒子加速器。
【請求項3】
双極子磁石の各々の対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)が、窓枠磁石タイプとH磁石タイプとの組み合わせを含む磁石コイル配置(49)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の粒子加速器。
【請求項4】
バンパー磁石(51、52、53)が、直線状ビーム区域(1)の外側に、6つの直線的なビーム区域(2〜6)の他のものの中の注入手段(43)について、1個のバンパー磁石(51)が、注入手段(43)の下流に配置され、少なくとも1個のバンパー磁石(53)が、注入手段(43)の上流に配置されるように配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の粒子加速器。
【請求項5】
限定された数の循環(N1〜N35)内にイオンビーム(150)を注入するために、バンパー磁石(51、52、53)が、コンセント使用のアダプターおよび制御ユニットを有し、これが、減少する励磁機電流の制御のために、傾斜(C)の末端部において平坦化されている経過を有する非線形傾斜(C)を提供することを特徴とする、請求項4に記載の粒子加速器。
【請求項6】
注入手段(63)が、静電気注入隔壁(157)を含み、この湾曲した静電気偏向板(159)が、予備加速され、注入され、かつ偏向されたイオンビーム(150)の軌道半径(r)よりも大きい曲率半径(R)を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の粒子加速器。
【請求項7】
六極磁石(37〜42)が、双極子磁石対(13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24)および四重極(25〜36)を有する各々の湾曲したビーム区域(7〜12)の上流に設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の粒子加速器。
【請求項8】
共鳴抽出のための個別の六極磁石(37〜42)の励起電流が、調整可能であり、六極磁石(37〜42)が、イオンビーム(150)を抽出するための抽出手段(45)の1つとしての固定された静電気抽出隔壁(61)と動作可能に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の粒子加速器。
【請求項9】
抽出手段(45)が、電磁抽出手段(45)として単一の抽出隔壁磁石(62)を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の粒子加速器。
【請求項10】
粒子加速器(200)が、6つの部分を有するシンクロトロン環(100)の上流に、少なくとも1つのイオン供給源(80)および粒子加速器要素としての注入器直線状加速器(90)を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の粒子加速器。
【請求項11】
粒子加速器(200)が、イオン供給源(80)として、炭素イオンのビームパルス(79)の発生のための少なくとも1つのレーザーイオン供給源を含むことを特徴とする、請求項10に記載の粒子加速器。
【請求項12】
粒子加速器(200)が、注入器直線状加速器(90)として、IH区域モジュール(91、92、93)および、IH区域モジュール(91、92、93)の間の真空システムの外側に四重極レンズモジュール(95、96)を有する直線状加速器(90)を含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の粒子加速器。
【請求項13】
照射部位(67〜70)と6つの部分を有するシンクロトロン環(100)との間に、ビーム誘導システム(66)が配置されており、これが、シンクロトロン環(100)の直後に、水平な分散の補償を含むかまたは、これが、垂直な偏向による分布のために、種々の照射部位(67〜70)のための別個の垂直な補償を提供することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の粒子加速器。
【請求項14】
複数の照射部位(67〜70)のためのビーム誘導システム(66)を、0≦α≦90°を有する異なる入射角αで設けることができ、0°が、水平の入射角αであり、90°が、上方から垂直に衝突する入射角αであることを特徴とする、請求項13に記載の粒子加速器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−503037(P2008−503037A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515885(P2007−515885)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006491
【国際公開番号】WO2005/125289
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(504343177)ゲゼルシャフト フュア シュヴェリオーネンフォルシュング ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】Gesellschaft fuer Schwerionenforschung mbH
【住所又は居所原語表記】Planckstr. 1, D−64291 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】