説明

イオンビーム検査装置、イオンビーム検査方法、半導体製造装置、及びイオン源装置

【課題】イオン源装置のセンタリング調整を容易に効率よく行うこと。
【解決手段】本実施の形態では、ソースヘッドと引出電極の中心軸が一直線となり、イオンビーム軸と同軸になっているか否かをレーザビームによって確認する。このため、イオンビーム軸上にレーザビームを発射する発光部55をソースヘッドの代わりにハウジング5に取り付け、一方、引出電極3には、このレーザビームを反射する反射部56を取り付ける。発光装置22は、レーザビームを発光する機能のほかに、レーザビームを検出する機能も備えており、反射部56で反射したレーザビームを検出してその強度を制御装置41に出力する。イオン源6は、ハウジング5の端面で位置決めされるため、レーザビームの強度が最大となるように引出電極3を位置調整することにより、イオンビーム軸をイオン源6と引出電極3の中心軸と一致させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビーム検査装置、イオンビーム検査方法、半導体製造装置、及びイオン源装置に関し、例えば、半導体に注入するイオンをイオン源から引き出す引出電極の位置調節を支援するものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、半導体ウエハにイオンを注入してP型領域やN型領域を形成して製造される。
これらイオンの注入には、例えば、ガスを高温化することによるイオンの生成、引出電極による生成したイオンの引き出し、質量分析器による引き出したイオンの選別、選別したイオンの収束及びウエハへの照射、といった一連の処理を行う半導体製造装置が用いられている。
【0003】
半導体製造装置を稼働させるためには各種の調整を行う必要があるが、その1つに引き出し電極の位置の調節がある。
図8(a)は、イオン源素装置の概略を示した概念図である。
イオン源装置1は、円筒形状を有するハウジング5の内部に、イオン源6とイオン源6からイオンを引き出す引出電極3を備えている。
イオン源6は、円盤状の取付フランジ4と、取付フランジ4の中心軸上に配置された円筒部材7と、更に円筒部材の先端に配置されたソースヘッド2を用いて構成されている。
【0004】
イオン源6は、ソースヘッド2をハウジング5に挿入し、取付フランジ4をハウジング5の一端面で固定することによりハウジング5に取り付けられる。
なお、取付フランジ4とハウジング5の端面の間にはオーリング(図示せず)が装着され、ハウジング5内部の気密性を保てるようになっている。
取付フランジ4の端面には図示しないガス取入口が形成されており、ここから取り入れたガスをソースヘッド2内のフィラメントで高温に熱することによりイオンを生成するようになっている。
【0005】
引出電極3は、ソースヘッド2の端面からある距離を隔てて配置されており、高電圧が印可される。引出電極3は、ソースヘッド2で生成されるイオンがプラスイオンの場合は、マイナス電位に設定され、一方、マイナスイオンが生成される場合は、プラス電位に設定されてソースヘッド2からイオンを引き出して加速し、矢線のようにイオンビームを形成する。
引出電極3には、略長方形断面を有したアパチャーと呼ばれる開口部16が形成されており、イオンビーム15は、この形状に成形されて半導体製造装置内に入射される。
【0006】
引出電極3の側面には、紙面垂直方向にアーム18が取り付けてあり、このアーム18をアーム18の中心軸の周りに回転させたり、アーム18の中心軸方向に水平移動させたりすることにより、引出電極3の位置を調節できるようになっている。
イオン源装置1において、イオンビーム15の生成効率を高めるためには、イオン源6の中心軸と開口部16の中心軸を揃えるセンタリング調整が重要である。
例えば、図8(b)のように、イオン源6の中心軸に対して、引出電極3が傾くなどすると、開口部16にイオンビーム15が偏って当たり、そのイオンが無駄になるほか、開口部16の摩耗、引出電極3に付着する堆積物の増大を招くことになる。
【0007】
イオン源装置1の清掃、ソースヘッド2のフィラメントの交換、引出電極3の交換などのメンテナンス作業を行うたびにセンタリング調整が必要であるが、従来は、このセンタリング調整を次のように行っていた。
即ち、半導体製造装置を全停止させてイオン源装置1を取り外し、フィラメントなどの部品を交換する。その後、ノギスやスケールなどの機械的手段を用いて引出電極3の位置を計測して粗調性をした後、イオン源装置1を半導体製造装置に取り付ける。
【0008】
次いで、半導体製造装置の全体を数時間かけて高真空に真空引きした後、実際にイオン源装置1からイオンビーム15を照射し、引出電極3に生じる電流値(サプレッション電流)が最小となるように引出電極3の位置を微調節する。
ここで、イオンビーム15が引出電極3に当たると、ソースヘッド2から引出電極3に電流が流れたことになるので、この電流値の大小が引出電極3に当たるイオンの大小に対応している。
【0009】
以上の方法では、半導体製造装置を高真空に真空引きしなくてはならないほか、実際にイオンビーム15を照射しなくてはならないため、次の特許文献1のようにレーザビームを用いたセンタリング調整が提案されている。
【特許文献1】特開昭64−14855号公報
【0010】
この技術は、ソースヘッド2の端面に光源を設けると共に、引出電極に光源からの光を透過させるスリットを設け、更に、スリットの引出電極に対向する側に透過光の検出器を備えるものである。
そして、透過光の強度が最大となるように引出電極の位置を調節することによりセンタリング調整が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、ソースヘッド2や引出電極3は、稼働時には1000[℃]を越える高温となるため、このような光源や検出器をイオン源装置1に設置することは極めて困難であり、実現性は低いと考えられる。
ところで、本願発明者は、図8(c)に示したように、取付フランジ4の取り付け不均一により、イオン源6の中心軸が引出電極3の中心軸に対して傾くこともイオンビーム15の生成効率を低下させる原因の1つであることを見出した。
【0012】
そこで、本発明の目的は、イオン源装置のセンタリング調整を容易に効率よく行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、半導体に注入する半導体製造装置においてイオン源からイオンビームを引き出す引出電極の位置を調節する際に用いるイオンビーム検査装置であって、イオン源側から引出電極に向けてイオンビーム軸上にレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、前記照射したレーザビームが、前記引出電極を通過する通過位置を検出する通過位置検出手段と、を具備したことを特徴とするイオンビーム検査装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記通過位置検出手段は、前記引出電極においてイオンビームが位置すべき箇所に設けられた反射鏡と、前記反射鏡で反射されたレーザビームの強度を計測する計測手段と、を備え、前記計測したレーザビームの強度によって前記照射したレーザビームの通過位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム検査装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記通過位置検出手段は、前記引出電極においてイオンビームが位置すべき箇所に設けられた受光手段と、前記受光手段が受光したレーザビームの強度を計測する計測手段と、を備え、前記計測したレーザビームの強度によって前記照射したレーザビームの通過位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム検査装置を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記計測したレーザビームの強度が最大となるように前記引出電極の位置を調節する位置調節手段を具備したことを特徴とする請求項2、又は請求項3に記載のイオンビーム検査装置を提供する。
請求項5に記載の発明では、半導体に注入する半導体製造装置においてイオン源からイオンビームを引き出す引出電極の位置を調節する際に行うイオンビーム検査方法であって、レーザビーム照射手段によって、イオン源側から引出電極に向けてイオンビーム軸上にレーザビームを照射するレーザビーム照射ステップと、通過位置検出手段によって、前記照射したレーザビームが、前記引出電極を通過する通過位置を検出する通過位置検出ステップと、から構成されたことを特徴とするイオンビーム検査方法を提供する。
請求項6に記載の発明では、イオン源と、前記イオン源からイオンビームを引き出す引出電極と、を備え、前記引き出されたイオンビームを半導体に照射することにより前記半導体にイオンを注入する半導体製造装置であって、イオン源側から引出電極に向けてイオンビーム軸上にレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、前記照射したレーザビームが、前記引出電極を通過する通過位置を検出する通過位置検出手段と、前記検出した通過位置が、イオンビームの通過位置となるように前記引出電極の位置を調節する調節手段と、を具備したことを特徴とする半導体製造装置を提供する。
請求項7に記載の発明では、筐体と、前記筐体の一端面で固定され、前記筐体の内部に挿入されたイオン源と、前記筐体の内部に設けられ、前記イオン源から前記筐体の他端面側にイオンビームを引き出す引出電極と、を用いて構成されたイオン源装置であって、前記イオン源は、前記筐体の一端面において、一直線上にない少なくとも3点によって固定されていることを特徴とするイオン源装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、イオンビームの軸上にレーザビームを照射する治具を用いることにより、イオン源装置のセンタリング調整を容易に効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)実施の形態の概要
本実施の形態では、ソースヘッドと引出電極の中心軸が一直線となり、イオンビーム軸と同軸になっているか否かをレーザビームによって確認する。
このため、図2(a)に示したように、イオンビーム軸上にレーザビームを照射する発光部55をソースヘッドの代わりにハウジング5に取り付け、一方、引出電極3には、このレーザビームを反射する反射部56を取り付ける。
発光装置22は、レーザビームを発光する機能のほかに、レーザビームを検出する機能も備えており、反射部56で反射したレーザビームを検出してその強度を制御装置41に出力する。
イオン源は、発光部55と同じようにハウジング5の端面で位置決めされるため、レーザビームの強度が最大となるように引出電極3を位置調整することにより、イオンビーム軸をイオン源と引出電極3の中心軸と一致させることができる。
【0016】
(2)実施の形態の詳細
図1は、本実施の形態に係る半導体製造装置の全体を模式的に示した図である。
半導体製造装置100は、半導体のウエハ80にイオンを注入するイオン注入装置である。
半導体製造装置100は、イオン源装置1、質量分析部67、加速部68、Qレンズ(四重極レンズ)69、スキャナ70、真空ポンプ12などの装置を用いて構成されている。
【0017】
イオン源装置1は、ガスボンベ63からイオン生成の原料となるガスの供給を受け、これをソースヘッド2でイオン化して引出電極3により引き出し、イオンビーム15を形成して半導体製造装置100の内部に照射する。
なお、図示しないが、ソースヘッド2の上下部には、ソースヘッド2の外部にてマグネットが設置されており、イオンビーム15を絞る機能を果たしている。
【0018】
質量分析部67は、イオンビーム15に含まれる複数種類のイオンのうち、所望のもの(例えば、リン、ボロンなど)を選別するのに用いられている。
質量分析部67は、磁界によってイオンビーム15の軌道を曲げるが、その曲率半径がイオンの質量によって異なるため、所望のイオンが加速部68の設置されたビームラインに進行するように磁界をイオンビーム15に印可する。
【0019】
加速部68は、例えば、高周波電界などによって、イオンを加速する加速管である。
Qレンズ69は、磁界によってイオンビーム15を収束するレンズである。
スキャナ70は、例えば、水平方向、及び垂直方向に設置された2対の電極で構成され、イオンビーム15の軌道を電界によって振り、イオンビーム15でウエハ80の表面を走査したりする。
真空ポンプ12は、例えば、クライオポンプなど、高真空に真空引きできるポンプであり、半導体製造装置100内部を排気して高真空に保つ。
【0020】
次に、図2の各図を用いて、本実施の形態の検査装置を用いて引出電極のセンタリング調整(アラインメント)を行う方法の基本概念について説明する。
図2(a)に示したように、本実施の形態の検査装置(イオンビーム検査装置)は、発光部55、反射部56、及び制御装置41を用いて構成されている。
発光部55は、レーザビームを発光する発光装置22と、発光装置22をハウジング5に対して保持するプレート21と、から構成されており、反射部56は、レーザビームを反射する鏡26(反射鏡)と、鏡26を保持する円柱部材25と、から構成されている。鏡26としては、例えば、反射シールを用いることができる。
【0021】
なお、本検査装置による引出電極3のセンタリング調整は、イオン源装置1を半導体製造装置100(図1)から取り外して大気中にて行う。
そのため、予備のイオン源装置1を用意しておけば、イオン源装置1の清掃、メンテナンス作業、センタリング調整などの作業中でも予備のイオン源装置1を用いて半導体製造装置100の稼動を持続することができる。
【0022】
プレート21は、例えば、金属や樹脂などによる円板部材であって、イオン源6の取付フランジ4と同じ基準孔や取り付け孔を有している。
そして、プレート21は、ハウジング5からイオン源6(図1)を取り外し、ハウジング5のイオン源6取付面に取り付けられる。
【0023】
発光装置22は、プレート21上に、レーザビームの光軸がイオンビームの軸と一致するように固定されている。
発光装置22は、所定のビーム径のレーザビームを照射する機能と、鏡26で反射したレーザビームを受光し、その強度を検出する機能を備えている。
【0024】
このように、発光部55は、発光装置22からイオンビーム軸上にレーザビームを照射することができ、イオン源側から引出電極に向けてイオンビーム軸上にレーザビームを照射するレーザビーム照射手段として機能している。
また、発光装置22は、引出電極3においてイオンビームが位置すべき箇所に設けられた反射鏡である鏡26で反射されたレーザビームの強度を計測する計測手段としても機能している。
このように、発光部55は、前記照射したレーザビームが、前記引出電極を通過する通過位置を検出する通過位置検出手段を備え、レーザビームの強度によって前記照射したレーザビームの通過位置を検出している。
【0025】
制御装置41は、発光装置22にレーザビームを発光するための電力を供給すると共に、発光装置22が出力した反射光の強度を発光装置22から受信し、これを所定の出力先に電圧値(リターン電圧)により出力する。
例えば、出力先としては、反射光の強度を表示する表示装置があり、担当者は、この表示により、発光装置22がどの程度反射光を受光しているのかを確認することができる。
また、引出電極3の位置を自動補正する機構が設けられている場合は、その機構の制御装置を出力先とすることもできる。
【0026】
ところで、引出電極3においては、イオンビームを通過させる開口部の背後(イオンビームの出口側とする)にイオンビーム軸を中心とする円柱面を有する凹部が形成されている。
なお、開口部は、当該開口部が形成された円柱状の開口部材をこの凹部に挿入して形成されている。開口部材は摩耗品であるため、このように、引出電極3から着脱可能に構成されている。即ち、この凹部は、引出電極3に開口部材を取り付けるための取付孔となっている。
【0027】
一方、反射部56の円柱部材25は、開口部材と同じ外径の円柱部材を用いて構成されており、凹部において、開口部材の背後に装着できるようになっている。
図2(b)に示したように、円柱部材25の中心軸上には、中心軸にレーザビーム径と同じ、又は略レーザビーム径の貫通孔27が形成されており、引出電極3に装着された状態でこの貫通孔27の中心軸がイオンビーム軸と一致するようになっている。
円柱部材25の貫通孔27のイオンビーム進行側端面には平面状の鏡面を有する鏡26が、鏡面が円柱部材25の中心軸と垂直となるように、鏡面を発光装置22に向けて固着されている。
【0028】
以上のように構成された検査装置において、引出電極3の開口部の中心軸がイオンビーム軸と一致するように引出電極3が位置している場合、発光装置22からレーザビームを発光すると、図2(a)に示したように、照射ビーム30は鏡26にて反射し、その反射ビーム31は、照射ビーム30と同じ光路を通って発光装置22に到達する。
なお、本実施の形態では、位置とは、3次元的な姿勢を意味するものとし、単に水平方向、垂直方向の位置のみならず、配置角度も含む概念とする。
【0029】
より詳細に述べると次のようになる。引出電極3が傾いていた場合、まず、貫通孔27と照射ビーム30のビーム径が同程度であるため、貫通孔27に入射した照射ビーム30は、貫通孔27の内壁に遮られるなどして、鏡26に到達する照射ビーム30の光量が減少する。なお、このため、貫通孔27の内壁は、例えば、黒色など、レーザビームが反射しにくい色で着色しておくと、更に効果が高まると考えられる。
更に、鏡26で反射した反射ビーム31は、光路が照射ビーム30の光路に対して傾くため、発光装置22の受光部に到達する反射ビーム31の強度が著しく低下する。
【0030】
また、引出電極3に傾きがなくても、引出電極3の開口部の位置が、イオンビーム軸上にない場合も、発光装置22が受光する反射ビーム31の強度が著しく低下する。
このため、照射ビーム30の中心軸と円柱部材25の中心軸が一致する場合、即ち、イオンビーム軸が開口部の中心軸と一致する位置に引出電極3が位置する場合、発光装置22が検出する反射ビーム31の強度が最大となる。
このようにして、作業者は、反射ビーム31の強度が最大となるように、引出電極3の位置を調節することにより、引出電極3のセンタリング調整を容易に、かつ、正確に行うことができる。
【0031】
図3(a)は、引出電極3をイオンビームの出口側から見たところを示した正面図である。
図に示したように、引出電極3の中心には、円筒形の凹部が形成されており、開口部材17が装着されている。開口部材17の中心には、両端部がR形状となった、略矩形の貫通孔である開口部16が、引出電極3の中心軸と中心軸が一致するように形成されている。
引出電極3の側面部には、アーム18が取り付けてあり、図示しない駆動機構により、軸線を中心として回転したり、水平方向に移動したりすることができる。
更に、引出電極3には、高圧線19が取り付けられており、引出電極3や開口部材17に電位を付与できるようになっている。
【0032】
図3(b)は、引出電極3に反射部56を取り付けるところを示した側面図である。
矢線のように、引出電極3の凹部23から、開口部材17(図示せず)の背後(イオンビームの出口側)に反射部56を装着することにより反射部56を引出電極3に取り付ける。
【0033】
図3(c)は、引出電極3に反射部56を取り付けたところをイオンビームの出口側から見たところを示した正面図である。
図に示したように、引出電極3の凹部23には、開口部材17の背後に円柱部材25が取り付けられ、開口部16が位置している場所には鏡26が配置される。
【0034】
図4は、イオン源装置1に発光部55を取り付けるところを示した側面図である。
この図は、イオン源装置1(図1)を半導体製造装置100から取り外したところを示しており、ハウジング5の上部には、イオンビームを収束させるためのマグネット77が装着されている。このマグネット77は、着脱式であり、ハウジング5から取り外すことができる。
【0035】
ハウジング5の開口端には、イオン源取付フランジ74が形成されており、イオン源取付フランジ74の端面には、図示しないが、イオン源6の取付フランジ4(図1)を取り付けるための基準穴(ガイド穴)と、取り付け用ねじ穴が設けられている。
発光部55を取り付ける場合は、イオン源取付フランジ74からイオン源6を取り外し、発光部55をイオン源取付フランジ74に取り付ける。
【0036】
プレート21には、イオン源6の取付フランジ4と互換性のある基準穴とねじ穴が形成されており、イオン源取付フランジ74に取り付けられる。
そして、制御装置41は、電源42の電力により駆動し、発光装置22は、制御装置41の制御によって、レーザビームをイオンビーム軸上に照射すると共に、図示しない反射部56からの反射光を検出する。
【0037】
一方、ハウジング5のイオンビーム出口側の端部には、ハウジング5を半導体製造装置100の本体に接続するフランジ部75が形成されている。
フランジ部75の側面で、アーム18が気密性を保ちながら挿通し、回転自在に保持されている。
アーム18のフランジ部75内部側の先端には図示しない引出電極3が保持され、引出電極3には反射部56が取り付けられている。
【0038】
また、ハウジング5の外部には、水平調整モータ71と、角度調整モータ72が取り付けられている。
水平調整モータ71は、例えば、ベルトやチェーンなどの駆動力伝達部材78により、アーム18の水平移動機構に回転力を伝達するようになっている。
水平移動機構は、螺旋(ねじ)が形成してあり、駆動力伝達部材78によって回転すると、アーム18をイオンビームに垂直でかつ水平な方向(紙面に垂直な方向)に移動する。これによって、引出電極3は、水平方向に移動する。
【0039】
一方、角度調整モータ72は、リンク機構73を用いてアーム18に接続されており、リンク機構73を駆動してアーム18を回転軸の周りに回転させる。これによって、引出電極3が、イオンビーム軸に垂直でかつ水平な方向(紙面に垂直な方向)の軸の周りに回転する。
【0040】
以上のように、イオン源装置1では、水平調整モータ71により引出電極3を水平方向に移動し、角度調整モータ72により引出電極3をイオンビームに垂直な軸の周りに回転できるようになっている。
水平調整モータ71と角度調整モータ72は、例えば、ステッピングモータなどで構成されており、図示しないモータ制御装置によって所定角度だけロータを回転できるようになっている。
そして、作業者は、制御装置41に表示されるレーザビームの反射光の強度が最大となるように、水平調整モータ71と角度調整モータ72を駆動して引出電極3の位置(角度も含む)を調節する。
【0041】
このように、本実施の形態では、作業者が手動で水平調整モータ71、角度調整モータ72を操作するが、これを自動とすることも可能である。
この場合、モータ制御装置と制御装置41を接続して、制御装置41からモータ制御装置に反射光の強度が入力されるようにし、モータ制御装置には、反射光の強度が最大となるように水平調整モータ71と角度調整モータ72を制御させるようにする。
この場合、モータ制御装置は、計測したレーザビームの強度が最大となるように引出電極3の位置を調節する位置調節手段として機能している。
【0042】
また、このようなイオン源装置1を装着した半導体製造装置100は、イオン源側から引出電極に向けてイオンビーム軸上にレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、このレーザビームが、引出電極を通過する通過位置を検出する通過位置検出手段と、この検出した通過位置が、イオンビームの通過位置となるように引出電極の位置を調節する調節手段と、を備えた半導体製造装置となる。
【0043】
また、本実施の形態では、引出電極3をイオンビーム軸に垂直な水平方向に移動させ、また、イオンビーム軸に垂直な水平方向の軸の周りに回転させるが、更に多くの自由度を持つ位置制御を引出電極3に対して行うように構成することもできる。
例えば、アーム18をイオンビーム軸方向に移動する機構と、引出電極3を鉛直な軸の周りに回転する機構を備えれば、引出電極3の位置を自在に設定することができる。
【0044】
図5は、引出電極3のセンタリング調整を終えた後の、引出電極3と開口部材17を示した正面図である。
図に示したように、開口部16の中心にイオンビーム軸19が位置している。このため、ソースヘッド2で生成されたイオンが最も効率よくイオンビームとなる。
【0045】
図6は、本実施の形態の変形例を説明するための図である。
この例では、円柱部材25に鏡26の代わりにレーザビームの受光部28を設置し、発光装置22が発光した照射ビーム30を受光部28で検出する。
受光部28が受光したレーザビームの強度は、制御装置41に伝達される。
この方法によっても、引出電極3の位置をセンタリング調整することができる。
【0046】
このように、本変形例では、受光部28は、引出電極3においてイオンビームが位置すべき箇所に設けられた受光手段として機能しており、制御装置41は、受光部28が受光したレーザビームの強度を計測する計測手段として機能しており、検査装置は、この強度によって照射したレーザビームの通過位置を検出している。
【0047】
次に、イオン源6の位置調整について説明する。
図7(a)は、イオン源6の従来の取付方法を示した図である。
ハウジング5には、イオン源6の取付フランジ4を取り付けるために、水平方向に2つの基準穴と、垂直方向に2つのねじ穴が形成されており、基準ピン32、32で取付フランジ4の位置合わせを行い、ねじ31、31で取付フランジ4を取り付けていた。
ハウジング5の内部は真空に引かれるため、取付フランジ4が大気圧でハウジング5に押しつけられ、取付フランジ4とハウジング5の間をシールするためのオーリングが均等に変形してイオン源6の位置精度が出るようになっている。
【0048】
この方法では、基準ピン32、32でのオーリングの変形が均一でないらしく、イオン源6がねじ31、31を結ぶ線を中心線として僅かに傾いているようである。
これは、開口部16(図3(a))の一方の側の辺の摩耗が他方の辺の摩耗よりも著しく大きいことから推察された。
【0049】
そこで、本実施の形態では、基準ピン32もねじ加工し、図7(b)に示したように、4点をねじ31〜31でねじ止めすることとした。
この結果、開口部16の両辺の摩耗量が均等となり、また、摩耗量も減少した。これにより、ソースヘッド2で生成したイオンを効率よくイオンビームとすることができる。
【0050】
この方式によるねじ止めは、一直線上にない少なくとも3点で取付フランジ4をねじ止めすればよく、イオン源装置1は、筐体(ハウジング5)と、前記筐体の一端面で固定され、前記筐体の内部に挿入されたイオン源(ソースヘッド2)と、前記筐体の内部に設けられ、前記イオン源から前記筐体の他端面側にイオンビームを引き出す引出電極と、を用いて構成されたイオン源装置であって、前記イオン源は、前記筐体の一端面において、一直線上にない少なくとも3点によって固定されていることを特徴とするイオン源装置を構成している。
【0051】
以上のように、引出電極3、及びイオン源6のセンタリング調整を高精度で行った結果、具体的には、次のような性能の改善がなされた。
従来は、ソースヘッド2へフィラメントを取り付けた直後は140[A]程度の電流を流すことができるが、80[A]程度までフィラメントが消耗すると、イオンビームが不安定となり、引出電極3と加速減速電極(実施の形態の説明では省略したが引出電極3の近傍には加速減速電極が存在する)との絶縁性が低下した。
しかし、本実施の形態によるセンタリング調整後では、フィラメントが80[A]程度まで摩耗した場合でも、絶縁が良好であり、イオンビームも安定している。
【0052】
従来は、ソースヘッド2を2〜5日ごとに交換していたが、本実施の形態によるセンタリング調整後は、最長14日程度まで使用することができ、ソースヘッド2の交換頻度が3分の1程度になった。
その結果、ソースヘッド2の寿命が延びたことにより、ソースヘッド2の1本当たりのウエハ80(図1)の処理枚数は、約4倍に増加することができるようになった。
【0053】
以上に説明した本実施の形態により、次のような効果が得られる。
(1)実際のイオンビーム軸上にレーザビームを照射することができる。
(2)センタリング調整の精度が向上したため、開口部16の摩耗や引出電極3に堆積する堆積物の生成が著しく抑制され、イオン源装置1のメンテナンス頻度を大幅に減らすことができる。即ち、半導体製造装置100の連続稼動時間を大幅に伸ばすことができる。
(3)引出電極3のセンタリング調整が大気中で行えるため、半導体製造装置100を数時間かけて真空引きする必要がない。また、予備のイオン源装置1を用意して交互に半導体製造装置100で使用すると、一方のイオン源装置1を調整している間に他方のイオン源装置1で半導体製造装置100を稼動することができる。
(4)センタリング調整機構をイオン源装置1に組み込む場合は、高温に耐えうる構造とする必要があるが、発光部55、反射部56はイオン源装置1に着脱することができるため、その必要がない。
(5)センタリング調整の操作が容易であり、熟練しない作業者であっても容易にハウジング5の組み立て及び、センタリング調整を行うことができる。また、作業者によるセンタリング調整のばらつきも解消される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施の形態に係る半導体製造装置の全体を模式的に示した図である。
【図2】本実施の形態に係る検査装置を説明するための図である。
【図3】引出電極の正面図などを示した図である。
【図4】イオン源装置の側面図などを示した図である。
【図5】センタリング調整終了後の引出電極などを示した図である。
【図6】変形例を説明するための図である。
【図7】イオン源の位置調整について説明するための図である。
【図8】従来例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
1 イオン源装置
2 ソースヘッド
3 引出電極
4 取付フランジ
5 ハウジング
6 イオン源
16 開口部
17 開口部材
18 イオン源装置
41 制御装置
55 発光部
56 反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体に注入する半導体製造装置においてイオン源からイオンビームを引き出す引出電極の位置を調節する際に用いるイオンビーム検査装置であって、
イオン源側から引出電極に向けてイオンビーム軸上にレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、
前記照射したレーザビームが、前記引出電極を通過する通過位置を検出する通過位置検出手段と、
を具備したことを特徴とするイオンビーム検査装置。
【請求項2】
前記通過位置検出手段は、
前記引出電極においてイオンビームが位置すべき箇所に設けられた反射鏡と、
前記反射鏡で反射されたレーザビームの強度を計測する計測手段と、
を備え、
前記計測したレーザビームの強度によって前記照射したレーザビームの通過位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム検査装置。
【請求項3】
前記通過位置検出手段は、
前記引出電極においてイオンビームが位置すべき箇所に設けられた受光手段と、
前記受光手段が受光したレーザビームの強度を計測する計測手段と、
を備え、
前記計測したレーザビームの強度によって前記照射したレーザビームの通過位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム検査装置。
【請求項4】
前記計測したレーザビームの強度が最大となるように前記引出電極の位置を調節する位置調節手段を具備したことを特徴とする請求項2、又は請求項3に記載のイオンビーム検査装置。
【請求項5】
半導体に注入する半導体製造装置においてイオン源からイオンビームを引き出す引出電極の位置を調節する際に行うイオンビーム検査方法であって、
レーザビーム照射手段によって、イオン源側から引出電極に向けてイオンビーム軸上にレーザビームを照射するレーザビーム照射ステップと、
通過位置検出手段によって、前記照射したレーザビームが、前記引出電極を通過する通過位置を検出する通過位置検出ステップと、
から構成されたことを特徴とするイオンビーム検査方法。
【請求項6】
イオン源と、前記イオン源からイオンビームを引き出す引出電極と、を備え、前記引き出されたイオンビームを半導体に照射することにより前記半導体にイオンを注入する半導体製造装置であって、
イオン源側から引出電極に向けてイオンビーム軸上にレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、
前記照射したレーザビームが、前記引出電極を通過する通過位置を検出する通過位置検出手段と、
前記検出した通過位置が、イオンビームの通過位置となるように前記引出電極の位置を調節する調節手段と、
を具備したことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項7】
筐体と、前記筐体の一端面で固定され、前記筐体の内部に挿入されたイオン源と、前記筐体の内部に設けられ、前記イオン源から前記筐体の他端面側にイオンビームを引き出す引出電極と、を用いて構成されたイオン源装置であって、
前記イオン源は、前記筐体の一端面において、一直線上にない少なくとも3点によって固定されていることを特徴とするイオン源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−258084(P2008−258084A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101321(P2007−101321)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】