イオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置
【課題】ビーム幅よりも幅の大きい基板を、ビーム連ね部に悪影響が生じないように処理する。
【解決手段】面内に行形成分割帯22および列形成分割帯を挟んでm行n列(mは3以上、nは2以上の整数)に配列された複数のセル20が形成されている基板10に対して、Y方向のビ−ム幅がm行の半数以上の行のセル20を含むイオンビーム4を用いて、基板10をX方向に移動させながらイオンビーム4を照射してビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつビーム照射工程の合間に基板10をその面内で180度回転させかつY方向に移動させてイオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施して、両ビーム照射領域を連ねて全てのセル20にイオンビーム4を照射する。しかも二つのビーム照射領域の連ね部を行形成分割帯22に位置させ、かつイオンビーム4のY方向の端部をマスクでX方向に平行に整形する。
【解決手段】面内に行形成分割帯22および列形成分割帯を挟んでm行n列(mは3以上、nは2以上の整数)に配列された複数のセル20が形成されている基板10に対して、Y方向のビ−ム幅がm行の半数以上の行のセル20を含むイオンビーム4を用いて、基板10をX方向に移動させながらイオンビーム4を照射してビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつビーム照射工程の合間に基板10をその面内で180度回転させかつY方向に移動させてイオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施して、両ビーム照射領域を連ねて全てのセル20にイオンビーム4を照射する。しかも二つのビーム照射領域の連ね部を行形成分割帯22に位置させ、かつイオンビーム4のY方向の端部をマスクでX方向に平行に整形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板にイオンビームを照射して、基板に例えばイオン注入、イオンビーム配向処理等の処理を施して、例えばフラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等)を製造すること等に用いられるイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等の生産性を高める等のために、基板は大型化する傾向にある。
【0003】
基板が大型化すると、それに応じて、当該基板にイオンビームを照射して処理を施すためにビーム幅の大きいイオンビームが必要になり、それに応えるためには、イオン源等のイオンビーム発生装置が大型化する。質量分離マグネットを有している場合は、それも大型化する。これらが大型化すると、その製作、輸送、コスト、収納建物等に関して様々な問題を惹き起こす。
【0004】
このようなイオン源等の大型化を抑制する技術の一つとして、特許文献1には、1枚の基板を複数の領域に分割して処理するという分割処理を行う技術が記載されている。具体的には、基板面内の薄膜トランジスタ形成領域をイオンビームの長手方向に分割した分割領域を、各領域ごとに順次位置を変えながらイオンビームで照射する方法であって、イオンビームが長手方向両側部分に断面積減少部分を有していて、隣り合う分割領域にそれぞれイオンビーム照射する際に、断面積減少部分の一方で照射された照射減少領域を、次の断面積減少部分の他方を用いて重ねて照射する技術(方法および装置)が記載されている。
【0005】
この技術によれば、照射減少領域は、2回のイオンビーム照射によるイオン量が合成された形となり、他の領域とほぼ等しいイオン注入量となるので、基板の幅よりも小さいビーム幅のイオンビームを用いて1枚の基板を分割処理しても、基板の全面に亘ってイオン注入量がほぼ均一なイオン注入を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−163640号公報(段落0008、0022、0025、図2−図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の技術では、マスクの長手方向両端の斜めになった開口量減少部分の形状を精巧に調整して、そこを通過するイオンビーム量を目標量で減少させて、当該開口量減少部分を通過したイオンビームの照射を2回重ねたときに、他の部分を1回通過したイオンビームの照射量とほぼ等しくなるように制御しなければならない。
【0008】
しかしそのためには、マスクの開口量減少部分の形状の調整が難しい上に、2回目のイオンビーム照射時にビーム量や減少量が変動する場合があるので、イオンビーム照射を2回重ねたときに、重ねた部分において、イオンビーム照射量が他の部分の照射量よりも多くなったり少なくなったりして照射量が不均一になり、これが基板内の所要の処理領域(特許文献1の場合は薄膜トランジスタ形成領域)の処理に悪影響を及ぼすという課題がある。
【0009】
そこでこの発明は、1枚の基板を分割処理するものであって、分割処理しても基板内の所要の処理領域の処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板の処理を可能にしたイオンビーム照射方法および装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板には、1枚の基板(これはマザー基板と呼ばれることがある)を複数の小基板に分断する多面取りを行う等のために、基板の面内に、後工程で基板を分断する等のための隙間である行形成分割帯および列形成分割帯を挟んでマトリックス状に配列された複数のセル(即ち、所定の処理パターンの繰り返しの単位)が形成されている基板がある。この行形成分割帯や列形成分割帯には、イオンビームを照射しなくても良い。この発明は、そのような基板に着目して、行形成分割帯をうまく利用するものである。
【0011】
即ち、この発明に係るイオンビーム照射方法の一つは、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射方法であって、Y方向のビ−ム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを用いて、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記イオンビームを照射して、前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ前記ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその面内で180度回転させかつY方向に移動させて、前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板位置変更工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する方法であり、しかも前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記行形成分割帯に位置させ、かつ前記イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも前記連ね部側に位置する端部を、マスクでX方向に実質的に平行に整形する、ことを特徴としている。
【0012】
このイオンビーム照射方法によれば、複数のビーム照射領域を連ねて、全てのセルにイオンビームを照射することができる。しかも、複数のビーム照射領域を連ねる連ね部を行形成分割帯に位置させるので、連ね部の存在が、セルに対する均一なイオンビーム照射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。更に、イオンビームのY方向の両端部をマスクでX方向に実質的に平行に整形するので、そのように整形しない場合に比べて、連ね部の幅を小さくすることが可能になり、従って行形成分割帯の幅が小さい場合にも、連ね部を行形成分割帯に位置させることが容易になる。
【0013】
その結果、1枚の基板を分割処理しても、基板内の所要の処理領域であるセルの処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板の処理が可能になる。
【0014】
この発明に係るイオンビーム照射方法の他のものは、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板であってそのY方向の中央部に前記行形成分割帯の内の一つを有する基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射方法であって、Y方向のビ−ム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを用いて、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記イオンビームを照射して、前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ前記ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその中心部を中心にして基板面内で180度回転させて、前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板回転工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する方法であり、しかも前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させ、かつ前記イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも前記連ね部側に位置する端部を、マスクでX方向に実質的に平行に整形する、ことを特徴としている。
【0015】
この発明に係るイオンビーム照射装置の一つは、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射装置であって、Y方向のビーム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置と、前記イオンビーム発生装置からのイオンビームを、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも後述する連ね部側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に、当該イオンビームのY方向のビーム幅を前記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅に保って通過させるマスクと、前記基板を、X方向およびY方向に移動させる機能ならびに基板面内で回転させる機能を有する基板駆動装置と、前記基板のY方向の位置を表す情報、当該基板上の前記行形成分割帯のY方向の位置を表す情報および前記マスクを通過したイオンビームの後述する連ね部側の端部の位置を表す情報が与えられこれらの情報を用いて前記基板駆動装置を制御して、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記マスクを通過したイオンビームを照射して前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ当該ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板を180度回転させかつY方向に移動させて前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板位置変更工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する制御を行う機能と、前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記行形成分割帯に位置させる制御を行う機能とを有している制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0016】
この発明に係るイオンビーム照射装置の他のものは、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板であってそのY方向の中央部に前記行形成分割帯の内の一つを有する基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射装置であって、Y方向のビーム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置と、前記イオンビーム発生装置からのイオンビームを、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも後述する連ね部側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に当該連ね部側の端部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させ、かつ当該イオンビームのY方向のビーム幅を前記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅に保って通過させるマスクと、前記基板をX方向に移動させる機能および前記基板をその中心部を中心にして基板面内で回転させる機能を有する基板駆動装置と、前記基板駆動装置を制御して、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記マスクを通過したイオンビームを照射して前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ当該ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその中心部を中心にして180度回転させて前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板回転工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する制御を行う機能と、前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させる制御を行う機能とを有している制御装置とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜4に記載の発明によれば、二つのビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全てのセルにイオンビームを照射することができる。しかも、二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を行形成分割帯に位置させるので、連ね部の存在が、セルに対する均一なイオンビーム照射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。更に、イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも連ね部側に位置する端部をマスクでX方向に実質的に平行に整形するので、そのように整形しない場合に比べて、連ね部の幅を小さくすることが可能になり、従って行形成分割帯の幅が小さい場合にも、連ね部を行形成分割帯に位置させることが容易になる。
【0018】
その結果、1枚の基板を分割処理しても、基板内の所要の処理領域であるセルの処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板の処理が可能になる。ひいては、イオン源等のイオンビーム発生装置、質量分離マグネット等の大型化を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係るイオンビーム照射方法を実施するイオンビーム照射装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1中のマスクおよびイオンビームを矢印P方向に見て示す平面図である。
【図3】イオンビームのY方向のビーム電流密度分布の一例を示す図である。
【図4】基板駆動装置の一例を示す平面図である。
【図5】面内にマトリックス状に配列されたセルが形成されている基板の一例を示す平面図である。
【図6】基板、セル、イオンビーム等の位置関係の一例を示す図である。
【図7】第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図8に続く。
【図8】第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図9に続く。
【図9】第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図10に続く。
【図10】第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、イオンビーム照射が完了した状態を示す。
【図11】隣り合うイオンビーム照射領域の連ね部の他の例を示す図である。
【図12】隣り合うイオンビーム照射領域の連ね部の更に他の例を示す図である。
【図13】連ね部付近のビーム電流密度分布の概略例を示す図である。
【図14】第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図15に続く。
【図15】第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図16に続く。
【図16】第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図17に続く。
【図17】第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、イオンビーム照射が完了した状態を示す。
【図18】第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図19に続く。
【図19】第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図20に続く。
【図20】第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図21に続く。
【図21】第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、イオンビーム照射が完了した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、この発明に係るイオンビーム照射方法を実施するイオンビーム照射装置の一例を示す概略図である。なお、図1〜図3と、図4以降とでは、図示の方向が90度異なる(図中のX、Y参照)。
【0021】
(1)第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置
第1の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置は、簡単に言えば、Y方向の両端部が、1行以上のセルを含む二つの行形成分割帯にそれぞれ位置するビーム幅のイオンビームを用い、ビーム照射工程を複数回行うものである。
【0022】
なお、この第1および後述する第2、第3の実施形態は、大まかな分け方であって、細かく見れば、各実施形態の中に幾つかの実施形態が含まれている場合がある。
【0023】
この実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置は、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、図5に示す例のように面内に、X方向に伸びている行形成分割帯22およびY方向に伸びている列形成分割帯24を挟んでm行n列(mは3以上、nは2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセル20が形成されている基板10に、図2、図6等に示す例のようにX方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビーム4を照射するものである。
【0024】
なお、行列の取り方は、必ずしも図示例のように図面の左右方向が行、上下方向が列である必要はなく、この明細書では、イオンビーム4の長手方向(Y方向)に沿う方向を列、その直角方向を行としている。
【0025】
図5を参照して、基板10は、例えば、四角形(例えば長方形)のガラス基板であり、その表面に、例えばフラットパネルディスプレイ形成用の複数のセル20が形成されている。各行形成分割帯22および各列形成分割帯24は、より具体的には、直線状に伸びている。各セル20は、それぞれ四角形をしていて実質的に同一寸法である。セル形成領域の外側には通常は、余り部26、28等の余り部(余白)がある。
【0026】
図5に示す基板10の一部分を拡大してイオンビーム4と共に図6に示す。各要素の寸法を例示すると、基板10のY方向の寸法W3 は例えば1000mm〜2000mm程度、各セル20の対角寸法は例えば50mm〜500mm程度、各行形成分割帯22のY方向の幅は例えば4mm〜20mm程度、後述するマスク6を通過したイオンビーム4のY方向のビーム幅W2 は例えば500mm〜800mm程度である。
【0027】
セル20の行列数は、図5に示す例では5行6列(即ちm=5、n=6)であるが、それに限られるものではない。例えば図18の例(4行6列)参照。これらよりも遥かに多い行列数でも良い。
【0028】
例えばX方向は実質的に水平方向、Y方向は実質的に垂直方向、あるいは逆にX方向は実質的に垂直方向、Y方向は実質的に水平方向、即ちXY平面は実質的に垂直面であるが、それに限られるものではなく、XY平面は、実質的に水平面でも良いし、水平面と垂直面との間で傾いた面でも良い。
【0029】
図1に示すイオンビーム照射装置は、この実施形態では、Y方向のビーム幅W1 が以下に述べる所定寸法のイオンビーム4を発生させるイオンビーム発生装置の一例として、イオン源2を備えている(後述する他の実施形態においても同様)。図1に示すイオンビーム照射装置は、更に、マスク6、マスク駆動装置8、ホルダ12、基板駆動装置14、ビームモニタ16および制御装置18を備えている。
【0030】
イオン源2は、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きく、Y方向のビーム幅W1 が、q行(qは1≦q≦mの整数)の前記セル20を含む寸法のイオンビーム4を発生させるものである。1≦qとするのは、そうでないと少なくとも1行分のセル20を処理できないからである。
【0031】
このイオン源2から発生させるイオンビーム4およびマスク6で整形されて基板10に照射されるイオンビーム4の断面形状は、Y方向に細長い長方形状または概ね長方形状をしている。このようなイオンビーム4は、リボン状のイオンビーム4と呼ばれることもある。
【0032】
マスク6は、この実施形態では、図2も参照して、イオン源2からのイオンビーム4を、そのY方向の両端部をX方向に実質的に平行にカットして当該両端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に、当該イオンビーム4のY方向の両端部が、p行(pは1≦p≦qかつp≦(m−2)の整数)の前記セル20を挟む二つの行形成分割帯22にそれぞれ位置するビーム幅W2 に整形して通過させるものである。そのために、マスク6の内側端6aをX方向に実質的に平行にしている。
【0033】
1≦pとするのは、そうでないと少なくとも1行分のセル20を処理できないからである。イオンビーム4をマスク6でカットするからpの最大はq、即ちp≦qとなる。p≦(m−2)とするのは、mが最小(即ちm=3)のときでも、セル20を挟む二つの行形成分割帯22が存在する条件を満たすためである。m=3のときはp=1となる。
【0034】
マスク6は、この実施形態では、イオンビーム4のY方向の両側に設けられている。そして両マスク6は、この実施形態ではそれぞれ、矢印F、Gに示すようにY方向に可動のもの(可動式)であり、マスク駆動装置8によってそれぞれ往復直線駆動される。
【0035】
各マスク駆動装置8は、制御装置18によって制御される。各マスク駆動装置8内にエンコーダ等の位置検出器を設けておいて、各マスク駆動装置8から制御装置18に、両マスク6のY方向内側端6aの位置情報をそれぞれ供給するようにしておいても良く、この実施形態ではそのようにしている。
【0036】
マスク6は、ある決まったセル20の配列を有する基板10を処理する等の場合は固定式のものでも良いけれども、この実施形態のように可動式にしておくと、様々なセル20の配列を有する複数種類の基板10にも柔軟に対応することができる。
【0037】
但し、後で図14〜図21を参照して説明する第2および第3の実施形態のように、イオンビーム4のY方向の二つの端部の内の連ね部32側に位置する端部をマスク6でX方向に実質的に整形する場合は、当該整形する側だけにマスク6を設けておいても良い。
【0038】
マスク6を両側、片側のいずれに設けるにせよ、マスク6を通過させてセル20に照射するのに用いるイオンビーム4は、図3に示す例のように、ビーム電流密度分布の均一な範囲ARにするのが好ましい。そのようにすれば、各セル20に均一性の良いイオンビーム照射処理(例えばイオン注入)を施すことができる。
【0039】
マスク6は、イオン源2とホルダ12上の基板10との間に配置しておけば上記ビーム整形の作用を奏することができるけれども、できるだけ基板10に近づけて配置するのが好ましい。そのようにすれば、イオンビーム4の空間電荷効果による発散の影響を非常に小さくして、シャープなイオンビーム4を基板10に照射することができる。
【0040】
ホルダ12は、基板10を保持するものである。ホルダ12の形状、構造は、必ずしも図示例のような平板状のものである必要はなく、特定のものに限定されない。
【0041】
基板駆動装置14は、ホルダ12と共に基板10を、X方向およびY方向に往復直線移動させる機能を有している。それに加えて、ホルダ12と共に基板10を、基板10の中心部10a(例えば図4参照)を中心にして回転させる機能を有していても良い。
【0042】
基板駆動装置14の構造の一例を図4に示す。この基板駆動装置14は、ホルダ12と共に基板10を、X方向に往復直線移動させるX方向直進機構40、Y方向に往復直線移動させるY方向直進機構46および基板10の中心部10aを中心にして回転させる回転装置52を備えている。X方向直進機構40は、ガイド42と駆動部44とを有している。Y方向直進機構46は、ガイド48と駆動部50とを有している。回転装置52は、基板10を180度回転させる実施形態に用いるものであり、例えば矢印R方向(またはその逆方向)に一方向に回転させるものでも良いし、可逆転式のものでも良い。後述するビーム照射工程、基板位置変更工程、基板回転工程における基板10の移動、回転には、この基板駆動装置14を用いる。
【0043】
基板駆動装置14は、制御装置18によって制御される。基板駆動装置14はこの実施形態ではエンコーダ等の位置検出器を有しており、この基板駆動装置14から制御装置18に、基板10のX方向およびY方向の位置情報が供給される。基板10を回転させる場合は、基板10の回転方向の位置情報も供給される。
【0044】
ビームモニタ16は、マスク6を通過したイオンビーム4のY方向の両端部の位置を測定する機能を有している。但し、前述したようにマスク6でイオンビーム4の片端部を整形する実施形態の場合は、当該端部の位置を測定する機能を有していれば良い。このビームモニタ16は、基板10に近づけて配置して、基板10に近い位置でイオンビーム4を測定するのが好ましい。
【0045】
ビームモニタ16は、例えばY方向に並設された複数のビーム検出器(例えばファラデーカップ)を有している多点ビームモニタでも良いし、1個のビーム検出器がY方向に移動する構造のものでも良い。あるいは、複数のビーム電流検出電極等でも良い。ビームモニタ16でイオンビーム4を測定するときには、その測定の邪魔にならない位置にホルダ12および基板10を移動(退避)させておけば良い。
【0046】
前述したようにマスク6を基板10に近づけて配置する場合は、マスク6のY方向内側端6aの位置と、マスク6を通過したイオンビーム4のY方向端部の位置とは、実質的に同じと考えても良いので、マスク6のY方向内側端6aの位置情報を、イオンビーム4のY方向端部の位置を表す情報として用いても良い。
【0047】
ビームモニタ16は、更に、マスク6を通過したイオンビーム4のY方向におけるビーム電流密度分布を測定する機能を有していても良い。そのような機能を有するビームモニタ16と、Y方向に複数のフィラメントを有するイオン源2とを用いて、例えば特許第3736196号公報に記載の技術に従って、ビームモニタ16で測定したビーム電流密度分布によって各フィラメントに流すフィラメント電流をフィードバック制御することによって、イオン源2から発生させるイオンビーム4のY方向におけるビーム電流密度分布を均一化する制御を行うようにしても良い。そのようにすれば、ビーム電流密度分布の均一な範囲AR(図3参照)がより長く、かつその均一性がより高いイオンビーム4をイオン源2から発生させることができる。上記均一化制御機能を上記制御装置18が有していても良いし、当該機能を有する他の制御装置を設けておいても良い。
【0048】
なお、イオン源2と基板10との間に、より具体的にはイオン源2とマスク6との間に、イオンビーム4の質量分離を行う質量分離マグネットが設けられていても良い。
【0049】
次に、上記のようなイオンビーム照射装置を用いたイオンビーム照射方法の第1の実施形態を説明する。
【0050】
この実施形態のイオンビーム照射方法では、図6、図7も参照して、上記のようなY方向の両端がマスク6でX方向に実質的に平行に整形された、かつY方向の両端部4a、4bがp行(pは1≦p≦(m−2)の整数)のセル20を挟む二つの行形成分割帯22にそれぞれ位置するビーム幅W2 のイオンビーム4を用いる。図6はp=3の例であり、図7はp=2の例であるが、これらに限られるものではない。
【0051】
そして、図7〜図10を参照して、基板10をX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上にビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を複数回実施して、かつビーム照射工程の合間であってイオンビーム4が基板10に当たっていない間に、基板10の位置を変えてイオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施して、複数のビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビーム4を照射する。しかも、複数のビーム照射領域30を連ねる連ね部32を行形成分割帯22に位置させる。
【0052】
なお、ビーム照射領域30は、図中にハッチングを付して示している。このハッチングは断面を表すものではない。また、図7〜図9において、イオンビーム4の位置が変わっているように見えるかも知れないけれども、そうではなく、イオンビーム4の位置は固定されていて、基板10のX方向およびY方向の位置が変わっているのである。後述する図14〜図16においても同様である。図18〜図20においても、基板10のX方向の位置が変わっているのである。
【0053】
図7〜図10に示すイオンビーム照射方法をより詳しく説明すると、まず図7に示すように、必要に応じて基板10をY方向に移動させてイオンビーム4の一方の端部4bを所望の行形成分割帯22に位置させた状態で(このときイオンビーム4のY方向の他方の端部4aは例えば余り部26に位置している)、基板10を矢印Aで示すようにX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図8に示すビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を実施する。
【0054】
次に、図8中に矢印Bで示すように、基板10をY方向にイオンビーム4のビーム幅W2 に等しいまたはほぼ等しい距離移動させて、イオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施する。このとき、イオンビーム4の一方の端部4aを、先のビーム照射工程で形成したビーム照射領域30のY方向の端部が位置する行形成分割帯22に位置させる。そのようにすると基板4の他方の端部4bは、イオンビーム4のビーム幅W2 が前述したものであるので、p行の行形成分割帯22を挟んだ行形成分割帯22に位置することになる。
【0055】
なお、基板4に対するイオンビーム10の上記または後記のような位置合わせは、例えば、人が行っても良いし、後述する制御装置18を用いて行っても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0056】
次に、図8中に矢印Cで示すように、基板10をX方向(但し図7とは逆方向)に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図9に示す二つ目のビーム照射領域30を形成する2回目のビーム照射工程を実施する。これによって、二つのビーム照射領域30を連ねることができる。しかもその連ね部32を行形成分割帯22に位置させることができる。
【0057】
次に、図9中に矢印Dで示すように、基板10をY方向にイオンビーム4のビーム幅W2 に等しいまたはほぼ等しい距離移動させて、イオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施する。このとき、イオンビーム4の一方の端部4aを、直前のビーム照射工程で形成したビーム照射領域30のY方向の端部が位置する行形成分割帯22に位置させる。そのようにすると基板4の他方の端部4bは、イオンビーム4のビーム幅W2 が前述したものであるので、基板10のY方向の幅が大きければp行の行形成分割帯22を挟んだ行形成分割帯22に位置することになる。基板10のY方向の幅が小さければ、図9に示すように、基板10外に位置することになる。
【0058】
次に、図9中に矢印Eで示すように、基板10をX方向(但し図8とは逆方向)に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図9に示す三つ目のビーム照射領域30を形成する3回目のビーム照射工程を実施する。これによって、図10に示すように三つのビーム照射領域30を連ねることができる。しかもその各連ね部32を行形成分割帯22にそれぞれ位置させることができる。これによって、この実施形態の場合は、基板10上の全てのセル20にイオンビームを照射することができたので、イオンビーム照射が完了したことになる。
【0059】
基板10のY方向の幅が大きくてイオンビーム照射が終了していないセル20の行が未だある場合は、上記のような動作を更に繰り返せば良い。
【0060】
上記各連ね部32において、隣り合う二つのビーム照射領域30は、(a)図9、図10に示す例のように隙間なく継ぎ合わされていても良いし、(b)図11に示す例のように隙間があっても良いし、(c)図12に示す例のように幾分重なっていても良い。但しいずれの場合も、連ね部32は行形成分割帯22に位置させる。その場合、連ね部32は行形成分割帯22のY方向の中央付近に位置させるのが好ましい。その方がセル20への影響を避けやすいからである。以上のことは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0061】
この明細書では、上記(a)〜(c)の3状態を包含する意味で、「連ねる」、「連ね部」という表現を使用しているが、上記3状態を含む意味の下で、「継ぎ合わせる」、「つなぐ」、「継目」、「つなぎ目」、「合わせ目」等と言い換えても良い。
【0062】
上記(a)の場合の連ね部32付近のビーム電流密度分布の概略例を図13に示す。連ね部32が行形成分割帯22に位置しているために、その両側のセル20においてビーム電流密度に乱れが生じるのを防止することができることが分かる。
【0063】
なお、上記各ビーム照射工程においては、上記実施形態のように基板10をX方向に1回移動させる代わりに、必要とするイオンビーム照射量(例えばイオン注入量)を得る等のために、往復を含めて複数回移動させても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0064】
このイオンビーム照射方法によれば、複数のビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビーム4を照射してイオン注入等の処理を施すことができる。しかも、複数のビーム照射領域30を連ねる連ね部32を行形成分割帯22に位置させるので、連ね部32の存在が、セル20に対する均一なイオンビーム照射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。
【0065】
更に、イオンビーム4のY方向の両端部4a、4bをマスク6でX方向に実質的に平行に整形するので、そのように整形しない場合に比べて、連ね部32の幅を小さくすることが可能になり、従って行形成分割帯22の幅が小さい場合にも、連ね部32を行形成分割帯22に位置させることが容易になる。
【0066】
その結果、1枚の基板10を分割処理しても、基板10内の所要の処理領域であるセル20の処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板10の処理が可能になる。
【0067】
ひいては、イオン源2等の大型化を抑制することが可能になる。イオンビーム発生装置が後述するような構成のものである場合には、それの大型化を抑制することが可能になる(後述する他の実施形態においても同様)。質量分離マグネットを有している場合は、それの大型化を抑制することも可能になる。
【0068】
なお、上記基板位置変更工程において、基板10をY方向に移動させることによって、連ね部32を行形成分割帯22に位置させることができるので通常はそれで十分であるが、必要に応じて、基板10をその面内で180度回転させることと、基板10をY方向に移動させることとを行って、連ね部32を行形成分割帯22に位置させても良い。
【0069】
また、上記ビーム照射工程の合間であってイオンビーム4が基板10に当たっていない間に、必要に応じて、ビームモニタ16を用いてイオンビーム4のY方向におけるビーム電流密度分布の測定を行ってその均一性を確認し、均一性が許容範囲内でなければ、イオン源2から発生させるイオンビーム4のY方向におけるビーム電流密度分布を均一化する前述した均一化制御を行うようにしても良い。そのようにすれば、基板10上の全てのセル20により均一なイオンビーム照射を行うことができる。後述する他の実施形態においても同様である。
【0070】
第1の実施形態のイオンビーム照射装置を構成する場合の上記制御装置18は、基板10のY方向の位置を表す情報、基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報およびマスク6を通過したイオンビーム4のY方向両端部4a、4bの位置を表す情報が与えられこれらの情報を用いて基板駆動装置14を制御して、上記ビーム照射工程を複数回実施して、かつ上記基板位置変更工程を実施して、複数のビーム照射領域30を連ねて全てのセル20にイオンビーム4を照射する制御を行う機能と、上記連ね部32を行形成分割帯22に位置させる制御を行う機能とを有している。
【0071】
制御装置18に与えられる情報のより具体例を、図1、図6を参照して説明する。
【0072】
基板10のY方向の位置を表す情報は、基板駆動装置14から与えられる。例えば、基板10のY方向一端のY座標y1 が与えられる。
【0073】
マスク6を通過したイオンビーム4のY方向両端部4a、4bの位置を表す情報は、ビームモニタ16から与えられる。例えば、当該両端部4a、4bのY座標Y1 、Y2 が与えられる。また、前述したように、マスク6の内側端6aのY座標で代用しても良い。
【0074】
基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報は、基板情報の一部として制御装置18に与えられる。それには、例えば次の二つがある。次の(a)、(b)のいずれの情報も、基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報であると言うことができる。
【0075】
(a)基板10上での各行のセル20のY方向両端のY座標y2 、y3 、y4 、y5 、y6 ・・・が与えられる。
【0076】
このY座標y3 、y4 、y5 、y6 ・・・は、各行形成分割帯22のY方向両端のY座標をも表しているので、これらで各行形成分割帯22のY方向の位置が分かる。各行形成分割帯22の中央のY座標e1 、e2 ・・・が必要であれば、制御装置18内において例えば次式の演算を行って求めても良い。
【0077】
[数1]
e1 =(y3 −y4 )/2
e2 =(y5 −y6 )/2
・・・・
【0078】
(b)基板10上の行形成分割帯22の行数m、各セル20のY方向の幅b、各行形成分割帯22のY方向の幅a、Y方向の余り部26の幅cが与えられる。上記Y座標y1 とは反対側の余り部28の幅dは必ずしも必要ではない。
【0079】
これらの情報と上記基板10のY方向一端のY座標y1 とから、基板10上での各行のセル20のY方向両端の上記Y座標y2 、y3 、y4 、y5 、y6 ・・・を、例えば次式に従って算出することができるので、その演算を制御装置18内で行うようにしても良い。その他は上記(a)の場合と同様である。
【0080】
[数2]
y2 =y1 −c
y3 =y2 −b=y1 −c−b
y4 =y3 −a=y1 −c−b−a
・・・・
【0081】
上記(a)または(b)の情報は、例えば、制御装置18に数値情報で入力しても良いし、上記情報を有するバーコード等を基板10または基板収納カセット等に付けておいてその情報をリーダーで読み取って制御装置18に与えても良い。また、必要な行形成分割帯22の位置をカメラで読み取ってその位置情報を制御装置18に与えても良い。
【0082】
なお、制御装置18には、必ずしも基板10上の全ての行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報が与えられる必要はなく、少なくとも上記連ね部32が位置する行形成分割帯22の位置を表す情報が与えられれば良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0083】
上記のようなイオン源2、マスク6、基板駆動装置14、制御装置18等を備えている第1の実施形態のイオンビーム照射装置によれば、上記第1の実施形態のイオンビーム照射方法が奏する上記効果と同様の効果を奏する。
【0084】
(2)第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置
第2の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置は、簡単に言えば、Y方向のビーム幅が、半数以上の行のセルを含む寸法のイオンビームを用い、ビーム照射工程を2回行うものである。
【0085】
図14〜図17は、第2の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置を説明するための図である。以下においては、上記第1の実施形態と同一または相当する部分には同一符号を付し、上記第1の実施形態との相違点を主体に説明する。
【0086】
この実施形態では、上記第1の実施形態と違って、mが最小のときでもセル20を挟む二つの行形成分割帯22が存在するという条件を満たす必要はないので、m、nは共に2以上の整数で良い。後述する第3の実施形態においても同様である。
【0087】
この実施形態では、例えば図14に示す例のように、Y方向のビーム幅W2 が、上記m行の半数以上の行のセル20を含む寸法のイオンビーム4を用いる。図14は、m=5、ビーム幅W2 が3行のセル20を含む場合の例であるが、これに限られるものではない。
【0088】
そして、基板10をX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上にビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつビーム照射工程の合間であってイオンビーム4が基板10に当たっていない間に、基板10の位置を変えてイオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施して、二つのビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビーム4を照射する。しかも二つのビーム照射領域30を連ねる連ね部32を行形成分割帯22に位置させ、かつイオンビーム4のY方向の二つの端部4a、4bの内の少なくとも連ね部32側に位置する端部4bを、前記マスク6(図1、図2参照)でX方向に実質的に平行に整形する。
【0089】
この場合、イオンビーム4の、上記端部4bとは反対側の端部4aは、マスク6で整形しても良いし、整形しなくても良い。連ね部32側に位置しないからである。また、当該端部4aのY方向の位置は、上記ビーム幅W2 の条件を満たしていさえすれば、特定の位置に限定されない。例えば、図14に示す例のように基板10外に位置しても良いし、基板10の端部に位置しても良いし、余り部26に位置しても良い。端部4aの位置情報を制御装置18に与える必要もない。後述する第3の実施形態においても同様である。
【0090】
図14〜図17に示すイオンビーム照射方法をより詳しく説明すると、まず図14に示すように、必要に応じて基板10をY方向に移動させてイオンビーム4の上記端部4bを所望の行形成分割帯22に位置させた状態で、基板10を矢印Aで示すようにX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図15に示すビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を実施する。
【0091】
次に、図15中に矢印Rで示すように(またはその逆方向に)、基板10を例えばその中心部10aを中心にして基板面内で180度回転させ、次いで図16中に矢印Bで示すように基板10をY方向に移動させることによって、イオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施する。このとき、イオンビーム4の上記端部4bを、先のビーム照射工程で形成したビーム照射領域30のY方向の端部が位置する行形成分割帯22に位置させる。この場合、基板10を矢印Rで示すように回転させることと、矢印Bで示すように移動させることとは、同時に行っても良い。
【0092】
次に、図16中に矢印Cで示すように、基板10をX方向(但し図14とは逆方向)に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図17に示す二つ目のビーム照射領域30を形成する2回目のビーム照射工程を実施する。これによって、二つのビーム照射領域30を連ねることができる。しかもその連ね部32を行形成分割帯22に位置させることができる。これによって、この実施形態の場合は、基板10上の全てのセル20にイオンビームを照射することができたので、イオンビーム照射が完了したことになる。
【0093】
このイオンビーム照射方法によれば、二つのビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビームを照射してイオン注入等の処理を施すことができる。しかも、二つのビーム照射領域30を連ねる連ね部32を行形成分割帯22に位置させるので、連ね部32の存在が、セル20に対する均一なイオンビーム照射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。
【0094】
更に、イオンビーム4のY方向の二つの端部の内の少なくとも連ね部32側に位置する端部4bをマスク6でX方向に実質的に平行に整形するので、そのように整形しない場合に比べて、連ね部32の幅を小さくすることが可能になり、従って行形成分割帯22の幅が小さい場合にも、連ね部32を行形成分割帯22に位置させることが容易になる。
【0095】
その結果、1枚の基板10を分割処理しても、基板10内の所要の処理領域であるセル20の処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板10の処理が可能になる。
【0096】
ひいては、イオン源2等の大型化を抑制することが可能になる。質量分離マグネットを有している場合は、その大型化を抑制することも可能になる。
【0097】
また、上記第1の実施形態と比べれば、マスク6(およびマスク駆動装置8を設けている場合はそれも)が、片側でも良いという利点がある。
【0098】
第2の実施形態のイオンビーム照射装置においては、上記イオン源2は、上記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅W1 のイオンビームを発生させるものとする。
【0099】
上記マスク6は、イオン源2からのイオンビーム4を、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも上記連ね部32側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に、当該イオンビーム4のY方向のビーム幅を上記m行の半数以上の行のセル20を含むビーム幅W2 に保って通過させるものとする。従って、マスク6は(マスク駆動装置8を設けている場合はそれも)、片側だけに設けておいても良い。
【0100】
上記基板駆動装置14は、この実施形態の場合は、基板10を、X方向およびY方向に移動させる機能ならびに基板面内で回転させる機能を有するものとする。
【0101】
上記制御装置18は、基板10のY方向の位置を表す情報、当該基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報およびマスク6を通過したイオンビーム4の連ね部32側の端部4bの位置を表す情報が与えられこれらの情報を用いて基板駆動装置14を制御して、上記ビーム照射工程を2回実施して、かつ上記基板位置変更工程を実施して、二つのビーム照射領域30を連ねて全てのセル20にイオンビーム4を照射する制御を行う機能と、上記連ね部32を行形成分割帯22に位置させる制御を行う機能とを有している。この制御装置18に与えられる情報のより具体例は、第1の実施形態の所で説明したものとほぼ同様であるので、ここでは重複説明を省略する。
【0102】
上記のようなイオン源2、マスク6、基板駆動装置14、制御装置18等を備えている第2の実施形態のイオンビーム照射装置によれば、上記第2の実施形態のイオンビーム照射方法が奏する上記効果と同様の効果を奏する。
【0103】
なお、イオンビーム4のY方向の両端部4a、4bを、マスク6でX方向に実質的に平行に整形しても良い。その場合は、上記基板位置変更工程において、基板10を回転させずに、基板10をY方向に移動させることによって、連ね部32が行形成分割帯22に位置するように基板10の位置を変えても良い。これは、基板10のY方向の両端部4a、4bを整形しているので、上記第1の実施形態の場合と同様に、基板10を回転させなくても、イオンビーム4の両端部4a、4bを用いて二つのビーム照射領域30を連ねることができるからである。この場合は、基板駆動装置14において、基板10を回転させる機能(例えば回転装置52)を省略することが可能になる。
【0104】
(3)第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置
第3の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置は、簡単に言えば、基板がY方向の中央部に行形成分割帯の一つを有しており、Y方向のビーム幅が、半数以上の行のセルを含む寸法のイオンビームを用い、ビーム照射工程を2回行うものである。
【0105】
図18〜図21は、第3の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置を説明するための図である。第3の実施形態は第2の実施形態に似ているので、以下においては、上記第2の実施形態との相違点を主体に説明する。
【0106】
この実施形態は、例えば図18に示す例のように、Y方向の中央部に行形成分割帯22の内の一つを有する基板10にイオンビーム4を照射するものである。
【0107】
イオンビーム4としては、第2の実施形態の場合と同様に、Y方向のビーム幅W2 が、上記m行の半数以上の行のセル20を含む寸法のイオンビーム4を用いる。図18は、m=4、ビーム幅W2 が2行のセル20を含む場合の例であるが、これに限られるものではない。
【0108】
そして、基板10をX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上にビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつビーム照射工程の合間であってイオンビーム4が基板10に当たっていない間に、基板10をその中心部10aを中心にして基板面内で180度回転させて、イオンビームを照射するセル20の行を変更する基板回転工程を実施して、二つのビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビーム4を照射する。しかも二つのビーム照射領域30を連ねる連ね部32を基板中央部の行形成分割帯22に位置させ、かつイオンビーム4のY方向の二つの端部4a、4bの内の少なくとも連ね部32側に位置する端部4bを、前記マスク6(図1、図2参照)でX方向に実質的に平行に整形する。
【0109】
図18〜図21に示すイオンビーム照射方法をより詳しく説明すると、まず図18に示すように、イオンビーム4の上記端部4bを基板中央の行形成分割帯22に位置させた状態で、基板10を矢印Aで示すようにX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図19に示すビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を実施する。イオンビーム4の端部4bを基板中央の行形成分割帯22に位置させることは、例えば、上記マスク6の位置調整によって行うことができる。基板10をY方向に移動させることによって行うこともできるけれども、その場合は基板10のY方向移動手段が必要になるので、マスク6によって行う方が簡単である。
【0110】
次に、図19中に矢印Rで示すように(またはその逆方向に)、基板10をその中心部10aを中心にして基板面内で180度回転させることによって、イオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板回転工程を実施する。これによって、次のビーム照射工程で照射するイオンビーム4の上記端部4bは、先のビーム照射工程で形成したビーム照射領域30のY方向の端部が位置する行形成分割帯22に位置することになる。
【0111】
次に、図20中に矢印Cで示すように、基板10をX方向(但し図18とは逆方向)に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図21に示す二つ目のビーム照射領域30を形成する2回目のビーム照射工程を実施する。これによって、二つのビーム照射領域30を連ねることができる。しかもその連ね部32を中央の行形成分割帯22に位置させることができる。これによって、この実施形態の場合は、基板10上の全てのセル20にイオンビームを照射することができたので、イオンビーム照射が完了したことになる。
【0112】
このイオンビーム照射方法によれば、上記第2の実施形態のイオンビーム照射方法が奏する効果と同様の効果を奏する。また、上記第2の実施形態と比べれば、基板10をY方向に移動させなくて済むという利点がある。従って、上記基板駆動装置14において、基板10をY方向に移動させる機能(例えばY方向直進機構46)を省略することが可能になる。
【0113】
第3の実施形態のイオンビーム照射装置においては、上記マスク6は、イオン源2からのイオンビーム4を、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも上記連ね部32側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に当該連ね部32側の端部を基板中央部の行形成分割帯22に位置させ、かつ当該イオンビーム4のY方向のビーム幅を上記m行の半数以上の行のセル20を含むビーム幅W2 に保って通過させるものとする。
【0114】
上記基板駆動装置14は、基板10をY方向に移動させる機能(例えばY方向直進機構46)は有していなくても良く、基板10をX方向に移動させる機能および基板10をその中心部10aを中心にして基板面内で回転させる機能を有していれば良い。
【0115】
上記制御装置18は、この実施形態の場合は、基板駆動装置14を制御して、上記ビーム照射工程を2回実施して、かつ上記基板回転工程を実施して、二つのビーム照射領域30を連ねて全てのセル20にイオンビーム4を照射する制御を行う機能と、上記連ね部32を基板中央部の行形成分割帯22に位置させる制御を行う機能とを有していれば良い。
【0116】
この制御装置18は、基板10のY方向移動を制御しなくても良いので、Y方向位置制御に必要な情報、例えば前述した基板10のY方向の位置を表す情報、基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報およびマスク6を通過したイオンビーム4の端部の位置を表す情報は与えられなくても良い。
【0117】
上記のようなイオン源2、マスク6、基板駆動装置14、制御装置18等を備えている第3の実施形態のイオンビーム照射装置によれば、上記第3の実施形態のイオンビーム照射方法が奏する上記効果と同様の効果を奏する。
【0118】
(4)イオンビーム発生装置の例
Y方向のビーム幅W1 が前述したような所定寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置は、例えば、(a)上記各実施形態のイオン源2のように、その出口から既に所定のビーム幅W1 のイオンビーム4を発生させるイオン源でも良いし、(b)例えば特開2006−139996号公報に記載されているように、扇状(具体的にはY方向に沿って扇状)に広がるイオンビームを発生させるイオン源と、このイオン源からのイオンビームを電界または磁界によって偏向させることによって当該イオンビームの広がりを抑制して、上記ビーム幅W1 のイオンビームを導出するビーム偏向手段とを備える構成のものでも良いし、(c)例えば特許第3358336号公報に記載されているように、イオンビームを発生させるイオン源と、このイオン源からのイオンビームを電界または磁界によって走査(具体的にはY方向に沿って走査)して、上記ビーム幅W1 のイオンビームを導出するビーム走査手段とを備える構成のものでも良い。
【0119】
上記(b)の場合、上記ビーム偏向手段は、イオンビームを平行ビーム化する機能を更に備えているのが好ましい。あるいは、上記ビーム偏向手段とは別に、その下流側に、イオンビームを平行ビーム化するビーム平行化手段を更に備えていても良い。上記(c)の場合、上記ビーム走査手段の下流側に、イオンビームを平行ビーム化するビーム平行化手段を更に備えているのが好ましい。いずれも、イオンビームを平行ビーム化する方が、上記複数のビーム照射領域30を連ねることや、その連ね部32を行形成分割帯22に位置させることが容易になるからである。
【0120】
イオンビーム発生装置が上記(b)、(c)の場合も、この発明によれば、上記(a)のイオン源の場合と同様の理由によって、その大型化を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0121】
2 イオン源
4 イオンビーム
4a、4b 端部
6 マスク
8 マスク駆動装置
10 基板
10a 中心部
12 ホルダ
14 基板駆動装置
16 ビームモニタ
18 制御装置
20 セル
22 行形成分割帯
24 列形成分割帯
30 ビーム照射領域
32 連ね部
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板にイオンビームを照射して、基板に例えばイオン注入、イオンビーム配向処理等の処理を施して、例えばフラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等)を製造すること等に用いられるイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等の生産性を高める等のために、基板は大型化する傾向にある。
【0003】
基板が大型化すると、それに応じて、当該基板にイオンビームを照射して処理を施すためにビーム幅の大きいイオンビームが必要になり、それに応えるためには、イオン源等のイオンビーム発生装置が大型化する。質量分離マグネットを有している場合は、それも大型化する。これらが大型化すると、その製作、輸送、コスト、収納建物等に関して様々な問題を惹き起こす。
【0004】
このようなイオン源等の大型化を抑制する技術の一つとして、特許文献1には、1枚の基板を複数の領域に分割して処理するという分割処理を行う技術が記載されている。具体的には、基板面内の薄膜トランジスタ形成領域をイオンビームの長手方向に分割した分割領域を、各領域ごとに順次位置を変えながらイオンビームで照射する方法であって、イオンビームが長手方向両側部分に断面積減少部分を有していて、隣り合う分割領域にそれぞれイオンビーム照射する際に、断面積減少部分の一方で照射された照射減少領域を、次の断面積減少部分の他方を用いて重ねて照射する技術(方法および装置)が記載されている。
【0005】
この技術によれば、照射減少領域は、2回のイオンビーム照射によるイオン量が合成された形となり、他の領域とほぼ等しいイオン注入量となるので、基板の幅よりも小さいビーム幅のイオンビームを用いて1枚の基板を分割処理しても、基板の全面に亘ってイオン注入量がほぼ均一なイオン注入を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−163640号公報(段落0008、0022、0025、図2−図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の技術では、マスクの長手方向両端の斜めになった開口量減少部分の形状を精巧に調整して、そこを通過するイオンビーム量を目標量で減少させて、当該開口量減少部分を通過したイオンビームの照射を2回重ねたときに、他の部分を1回通過したイオンビームの照射量とほぼ等しくなるように制御しなければならない。
【0008】
しかしそのためには、マスクの開口量減少部分の形状の調整が難しい上に、2回目のイオンビーム照射時にビーム量や減少量が変動する場合があるので、イオンビーム照射を2回重ねたときに、重ねた部分において、イオンビーム照射量が他の部分の照射量よりも多くなったり少なくなったりして照射量が不均一になり、これが基板内の所要の処理領域(特許文献1の場合は薄膜トランジスタ形成領域)の処理に悪影響を及ぼすという課題がある。
【0009】
そこでこの発明は、1枚の基板を分割処理するものであって、分割処理しても基板内の所要の処理領域の処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板の処理を可能にしたイオンビーム照射方法および装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板には、1枚の基板(これはマザー基板と呼ばれることがある)を複数の小基板に分断する多面取りを行う等のために、基板の面内に、後工程で基板を分断する等のための隙間である行形成分割帯および列形成分割帯を挟んでマトリックス状に配列された複数のセル(即ち、所定の処理パターンの繰り返しの単位)が形成されている基板がある。この行形成分割帯や列形成分割帯には、イオンビームを照射しなくても良い。この発明は、そのような基板に着目して、行形成分割帯をうまく利用するものである。
【0011】
即ち、この発明に係るイオンビーム照射方法の一つは、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射方法であって、Y方向のビ−ム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを用いて、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記イオンビームを照射して、前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ前記ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその面内で180度回転させかつY方向に移動させて、前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板位置変更工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する方法であり、しかも前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記行形成分割帯に位置させ、かつ前記イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも前記連ね部側に位置する端部を、マスクでX方向に実質的に平行に整形する、ことを特徴としている。
【0012】
このイオンビーム照射方法によれば、複数のビーム照射領域を連ねて、全てのセルにイオンビームを照射することができる。しかも、複数のビーム照射領域を連ねる連ね部を行形成分割帯に位置させるので、連ね部の存在が、セルに対する均一なイオンビーム照射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。更に、イオンビームのY方向の両端部をマスクでX方向に実質的に平行に整形するので、そのように整形しない場合に比べて、連ね部の幅を小さくすることが可能になり、従って行形成分割帯の幅が小さい場合にも、連ね部を行形成分割帯に位置させることが容易になる。
【0013】
その結果、1枚の基板を分割処理しても、基板内の所要の処理領域であるセルの処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板の処理が可能になる。
【0014】
この発明に係るイオンビーム照射方法の他のものは、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板であってそのY方向の中央部に前記行形成分割帯の内の一つを有する基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射方法であって、Y方向のビ−ム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを用いて、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記イオンビームを照射して、前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ前記ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその中心部を中心にして基板面内で180度回転させて、前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板回転工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する方法であり、しかも前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させ、かつ前記イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも前記連ね部側に位置する端部を、マスクでX方向に実質的に平行に整形する、ことを特徴としている。
【0015】
この発明に係るイオンビーム照射装置の一つは、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射装置であって、Y方向のビーム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置と、前記イオンビーム発生装置からのイオンビームを、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも後述する連ね部側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に、当該イオンビームのY方向のビーム幅を前記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅に保って通過させるマスクと、前記基板を、X方向およびY方向に移動させる機能ならびに基板面内で回転させる機能を有する基板駆動装置と、前記基板のY方向の位置を表す情報、当該基板上の前記行形成分割帯のY方向の位置を表す情報および前記マスクを通過したイオンビームの後述する連ね部側の端部の位置を表す情報が与えられこれらの情報を用いて前記基板駆動装置を制御して、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記マスクを通過したイオンビームを照射して前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ当該ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板を180度回転させかつY方向に移動させて前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板位置変更工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する制御を行う機能と、前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記行形成分割帯に位置させる制御を行う機能とを有している制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0016】
この発明に係るイオンビーム照射装置の他のものは、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板であってそのY方向の中央部に前記行形成分割帯の内の一つを有する基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射装置であって、Y方向のビーム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置と、前記イオンビーム発生装置からのイオンビームを、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも後述する連ね部側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に当該連ね部側の端部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させ、かつ当該イオンビームのY方向のビーム幅を前記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅に保って通過させるマスクと、前記基板をX方向に移動させる機能および前記基板をその中心部を中心にして基板面内で回転させる機能を有する基板駆動装置と、前記基板駆動装置を制御して、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記マスクを通過したイオンビームを照射して前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ当該ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその中心部を中心にして180度回転させて前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板回転工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する制御を行う機能と、前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させる制御を行う機能とを有している制御装置とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜4に記載の発明によれば、二つのビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全てのセルにイオンビームを照射することができる。しかも、二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を行形成分割帯に位置させるので、連ね部の存在が、セルに対する均一なイオンビーム照射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。更に、イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも連ね部側に位置する端部をマスクでX方向に実質的に平行に整形するので、そのように整形しない場合に比べて、連ね部の幅を小さくすることが可能になり、従って行形成分割帯の幅が小さい場合にも、連ね部を行形成分割帯に位置させることが容易になる。
【0018】
その結果、1枚の基板を分割処理しても、基板内の所要の処理領域であるセルの処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板の処理が可能になる。ひいては、イオン源等のイオンビーム発生装置、質量分離マグネット等の大型化を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係るイオンビーム照射方法を実施するイオンビーム照射装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1中のマスクおよびイオンビームを矢印P方向に見て示す平面図である。
【図3】イオンビームのY方向のビーム電流密度分布の一例を示す図である。
【図4】基板駆動装置の一例を示す平面図である。
【図5】面内にマトリックス状に配列されたセルが形成されている基板の一例を示す平面図である。
【図6】基板、セル、イオンビーム等の位置関係の一例を示す図である。
【図7】第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図8に続く。
【図8】第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図9に続く。
【図9】第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図10に続く。
【図10】第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、イオンビーム照射が完了した状態を示す。
【図11】隣り合うイオンビーム照射領域の連ね部の他の例を示す図である。
【図12】隣り合うイオンビーム照射領域の連ね部の更に他の例を示す図である。
【図13】連ね部付近のビーム電流密度分布の概略例を示す図である。
【図14】第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図15に続く。
【図15】第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図16に続く。
【図16】第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図17に続く。
【図17】第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、イオンビーム照射が完了した状態を示す。
【図18】第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図19に続く。
【図19】第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図20に続く。
【図20】第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、図21に続く。
【図21】第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置を説明するための図であり、イオンビーム照射が完了した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、この発明に係るイオンビーム照射方法を実施するイオンビーム照射装置の一例を示す概略図である。なお、図1〜図3と、図4以降とでは、図示の方向が90度異なる(図中のX、Y参照)。
【0021】
(1)第1の実施形態のイオンビーム照射方法および装置
第1の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置は、簡単に言えば、Y方向の両端部が、1行以上のセルを含む二つの行形成分割帯にそれぞれ位置するビーム幅のイオンビームを用い、ビーム照射工程を複数回行うものである。
【0022】
なお、この第1および後述する第2、第3の実施形態は、大まかな分け方であって、細かく見れば、各実施形態の中に幾つかの実施形態が含まれている場合がある。
【0023】
この実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置は、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、図5に示す例のように面内に、X方向に伸びている行形成分割帯22およびY方向に伸びている列形成分割帯24を挟んでm行n列(mは3以上、nは2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセル20が形成されている基板10に、図2、図6等に示す例のようにX方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビーム4を照射するものである。
【0024】
なお、行列の取り方は、必ずしも図示例のように図面の左右方向が行、上下方向が列である必要はなく、この明細書では、イオンビーム4の長手方向(Y方向)に沿う方向を列、その直角方向を行としている。
【0025】
図5を参照して、基板10は、例えば、四角形(例えば長方形)のガラス基板であり、その表面に、例えばフラットパネルディスプレイ形成用の複数のセル20が形成されている。各行形成分割帯22および各列形成分割帯24は、より具体的には、直線状に伸びている。各セル20は、それぞれ四角形をしていて実質的に同一寸法である。セル形成領域の外側には通常は、余り部26、28等の余り部(余白)がある。
【0026】
図5に示す基板10の一部分を拡大してイオンビーム4と共に図6に示す。各要素の寸法を例示すると、基板10のY方向の寸法W3 は例えば1000mm〜2000mm程度、各セル20の対角寸法は例えば50mm〜500mm程度、各行形成分割帯22のY方向の幅は例えば4mm〜20mm程度、後述するマスク6を通過したイオンビーム4のY方向のビーム幅W2 は例えば500mm〜800mm程度である。
【0027】
セル20の行列数は、図5に示す例では5行6列(即ちm=5、n=6)であるが、それに限られるものではない。例えば図18の例(4行6列)参照。これらよりも遥かに多い行列数でも良い。
【0028】
例えばX方向は実質的に水平方向、Y方向は実質的に垂直方向、あるいは逆にX方向は実質的に垂直方向、Y方向は実質的に水平方向、即ちXY平面は実質的に垂直面であるが、それに限られるものではなく、XY平面は、実質的に水平面でも良いし、水平面と垂直面との間で傾いた面でも良い。
【0029】
図1に示すイオンビーム照射装置は、この実施形態では、Y方向のビーム幅W1 が以下に述べる所定寸法のイオンビーム4を発生させるイオンビーム発生装置の一例として、イオン源2を備えている(後述する他の実施形態においても同様)。図1に示すイオンビーム照射装置は、更に、マスク6、マスク駆動装置8、ホルダ12、基板駆動装置14、ビームモニタ16および制御装置18を備えている。
【0030】
イオン源2は、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きく、Y方向のビーム幅W1 が、q行(qは1≦q≦mの整数)の前記セル20を含む寸法のイオンビーム4を発生させるものである。1≦qとするのは、そうでないと少なくとも1行分のセル20を処理できないからである。
【0031】
このイオン源2から発生させるイオンビーム4およびマスク6で整形されて基板10に照射されるイオンビーム4の断面形状は、Y方向に細長い長方形状または概ね長方形状をしている。このようなイオンビーム4は、リボン状のイオンビーム4と呼ばれることもある。
【0032】
マスク6は、この実施形態では、図2も参照して、イオン源2からのイオンビーム4を、そのY方向の両端部をX方向に実質的に平行にカットして当該両端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に、当該イオンビーム4のY方向の両端部が、p行(pは1≦p≦qかつp≦(m−2)の整数)の前記セル20を挟む二つの行形成分割帯22にそれぞれ位置するビーム幅W2 に整形して通過させるものである。そのために、マスク6の内側端6aをX方向に実質的に平行にしている。
【0033】
1≦pとするのは、そうでないと少なくとも1行分のセル20を処理できないからである。イオンビーム4をマスク6でカットするからpの最大はq、即ちp≦qとなる。p≦(m−2)とするのは、mが最小(即ちm=3)のときでも、セル20を挟む二つの行形成分割帯22が存在する条件を満たすためである。m=3のときはp=1となる。
【0034】
マスク6は、この実施形態では、イオンビーム4のY方向の両側に設けられている。そして両マスク6は、この実施形態ではそれぞれ、矢印F、Gに示すようにY方向に可動のもの(可動式)であり、マスク駆動装置8によってそれぞれ往復直線駆動される。
【0035】
各マスク駆動装置8は、制御装置18によって制御される。各マスク駆動装置8内にエンコーダ等の位置検出器を設けておいて、各マスク駆動装置8から制御装置18に、両マスク6のY方向内側端6aの位置情報をそれぞれ供給するようにしておいても良く、この実施形態ではそのようにしている。
【0036】
マスク6は、ある決まったセル20の配列を有する基板10を処理する等の場合は固定式のものでも良いけれども、この実施形態のように可動式にしておくと、様々なセル20の配列を有する複数種類の基板10にも柔軟に対応することができる。
【0037】
但し、後で図14〜図21を参照して説明する第2および第3の実施形態のように、イオンビーム4のY方向の二つの端部の内の連ね部32側に位置する端部をマスク6でX方向に実質的に整形する場合は、当該整形する側だけにマスク6を設けておいても良い。
【0038】
マスク6を両側、片側のいずれに設けるにせよ、マスク6を通過させてセル20に照射するのに用いるイオンビーム4は、図3に示す例のように、ビーム電流密度分布の均一な範囲ARにするのが好ましい。そのようにすれば、各セル20に均一性の良いイオンビーム照射処理(例えばイオン注入)を施すことができる。
【0039】
マスク6は、イオン源2とホルダ12上の基板10との間に配置しておけば上記ビーム整形の作用を奏することができるけれども、できるだけ基板10に近づけて配置するのが好ましい。そのようにすれば、イオンビーム4の空間電荷効果による発散の影響を非常に小さくして、シャープなイオンビーム4を基板10に照射することができる。
【0040】
ホルダ12は、基板10を保持するものである。ホルダ12の形状、構造は、必ずしも図示例のような平板状のものである必要はなく、特定のものに限定されない。
【0041】
基板駆動装置14は、ホルダ12と共に基板10を、X方向およびY方向に往復直線移動させる機能を有している。それに加えて、ホルダ12と共に基板10を、基板10の中心部10a(例えば図4参照)を中心にして回転させる機能を有していても良い。
【0042】
基板駆動装置14の構造の一例を図4に示す。この基板駆動装置14は、ホルダ12と共に基板10を、X方向に往復直線移動させるX方向直進機構40、Y方向に往復直線移動させるY方向直進機構46および基板10の中心部10aを中心にして回転させる回転装置52を備えている。X方向直進機構40は、ガイド42と駆動部44とを有している。Y方向直進機構46は、ガイド48と駆動部50とを有している。回転装置52は、基板10を180度回転させる実施形態に用いるものであり、例えば矢印R方向(またはその逆方向)に一方向に回転させるものでも良いし、可逆転式のものでも良い。後述するビーム照射工程、基板位置変更工程、基板回転工程における基板10の移動、回転には、この基板駆動装置14を用いる。
【0043】
基板駆動装置14は、制御装置18によって制御される。基板駆動装置14はこの実施形態ではエンコーダ等の位置検出器を有しており、この基板駆動装置14から制御装置18に、基板10のX方向およびY方向の位置情報が供給される。基板10を回転させる場合は、基板10の回転方向の位置情報も供給される。
【0044】
ビームモニタ16は、マスク6を通過したイオンビーム4のY方向の両端部の位置を測定する機能を有している。但し、前述したようにマスク6でイオンビーム4の片端部を整形する実施形態の場合は、当該端部の位置を測定する機能を有していれば良い。このビームモニタ16は、基板10に近づけて配置して、基板10に近い位置でイオンビーム4を測定するのが好ましい。
【0045】
ビームモニタ16は、例えばY方向に並設された複数のビーム検出器(例えばファラデーカップ)を有している多点ビームモニタでも良いし、1個のビーム検出器がY方向に移動する構造のものでも良い。あるいは、複数のビーム電流検出電極等でも良い。ビームモニタ16でイオンビーム4を測定するときには、その測定の邪魔にならない位置にホルダ12および基板10を移動(退避)させておけば良い。
【0046】
前述したようにマスク6を基板10に近づけて配置する場合は、マスク6のY方向内側端6aの位置と、マスク6を通過したイオンビーム4のY方向端部の位置とは、実質的に同じと考えても良いので、マスク6のY方向内側端6aの位置情報を、イオンビーム4のY方向端部の位置を表す情報として用いても良い。
【0047】
ビームモニタ16は、更に、マスク6を通過したイオンビーム4のY方向におけるビーム電流密度分布を測定する機能を有していても良い。そのような機能を有するビームモニタ16と、Y方向に複数のフィラメントを有するイオン源2とを用いて、例えば特許第3736196号公報に記載の技術に従って、ビームモニタ16で測定したビーム電流密度分布によって各フィラメントに流すフィラメント電流をフィードバック制御することによって、イオン源2から発生させるイオンビーム4のY方向におけるビーム電流密度分布を均一化する制御を行うようにしても良い。そのようにすれば、ビーム電流密度分布の均一な範囲AR(図3参照)がより長く、かつその均一性がより高いイオンビーム4をイオン源2から発生させることができる。上記均一化制御機能を上記制御装置18が有していても良いし、当該機能を有する他の制御装置を設けておいても良い。
【0048】
なお、イオン源2と基板10との間に、より具体的にはイオン源2とマスク6との間に、イオンビーム4の質量分離を行う質量分離マグネットが設けられていても良い。
【0049】
次に、上記のようなイオンビーム照射装置を用いたイオンビーム照射方法の第1の実施形態を説明する。
【0050】
この実施形態のイオンビーム照射方法では、図6、図7も参照して、上記のようなY方向の両端がマスク6でX方向に実質的に平行に整形された、かつY方向の両端部4a、4bがp行(pは1≦p≦(m−2)の整数)のセル20を挟む二つの行形成分割帯22にそれぞれ位置するビーム幅W2 のイオンビーム4を用いる。図6はp=3の例であり、図7はp=2の例であるが、これらに限られるものではない。
【0051】
そして、図7〜図10を参照して、基板10をX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上にビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を複数回実施して、かつビーム照射工程の合間であってイオンビーム4が基板10に当たっていない間に、基板10の位置を変えてイオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施して、複数のビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビーム4を照射する。しかも、複数のビーム照射領域30を連ねる連ね部32を行形成分割帯22に位置させる。
【0052】
なお、ビーム照射領域30は、図中にハッチングを付して示している。このハッチングは断面を表すものではない。また、図7〜図9において、イオンビーム4の位置が変わっているように見えるかも知れないけれども、そうではなく、イオンビーム4の位置は固定されていて、基板10のX方向およびY方向の位置が変わっているのである。後述する図14〜図16においても同様である。図18〜図20においても、基板10のX方向の位置が変わっているのである。
【0053】
図7〜図10に示すイオンビーム照射方法をより詳しく説明すると、まず図7に示すように、必要に応じて基板10をY方向に移動させてイオンビーム4の一方の端部4bを所望の行形成分割帯22に位置させた状態で(このときイオンビーム4のY方向の他方の端部4aは例えば余り部26に位置している)、基板10を矢印Aで示すようにX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図8に示すビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を実施する。
【0054】
次に、図8中に矢印Bで示すように、基板10をY方向にイオンビーム4のビーム幅W2 に等しいまたはほぼ等しい距離移動させて、イオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施する。このとき、イオンビーム4の一方の端部4aを、先のビーム照射工程で形成したビーム照射領域30のY方向の端部が位置する行形成分割帯22に位置させる。そのようにすると基板4の他方の端部4bは、イオンビーム4のビーム幅W2 が前述したものであるので、p行の行形成分割帯22を挟んだ行形成分割帯22に位置することになる。
【0055】
なお、基板4に対するイオンビーム10の上記または後記のような位置合わせは、例えば、人が行っても良いし、後述する制御装置18を用いて行っても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0056】
次に、図8中に矢印Cで示すように、基板10をX方向(但し図7とは逆方向)に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図9に示す二つ目のビーム照射領域30を形成する2回目のビーム照射工程を実施する。これによって、二つのビーム照射領域30を連ねることができる。しかもその連ね部32を行形成分割帯22に位置させることができる。
【0057】
次に、図9中に矢印Dで示すように、基板10をY方向にイオンビーム4のビーム幅W2 に等しいまたはほぼ等しい距離移動させて、イオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施する。このとき、イオンビーム4の一方の端部4aを、直前のビーム照射工程で形成したビーム照射領域30のY方向の端部が位置する行形成分割帯22に位置させる。そのようにすると基板4の他方の端部4bは、イオンビーム4のビーム幅W2 が前述したものであるので、基板10のY方向の幅が大きければp行の行形成分割帯22を挟んだ行形成分割帯22に位置することになる。基板10のY方向の幅が小さければ、図9に示すように、基板10外に位置することになる。
【0058】
次に、図9中に矢印Eで示すように、基板10をX方向(但し図8とは逆方向)に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図9に示す三つ目のビーム照射領域30を形成する3回目のビーム照射工程を実施する。これによって、図10に示すように三つのビーム照射領域30を連ねることができる。しかもその各連ね部32を行形成分割帯22にそれぞれ位置させることができる。これによって、この実施形態の場合は、基板10上の全てのセル20にイオンビームを照射することができたので、イオンビーム照射が完了したことになる。
【0059】
基板10のY方向の幅が大きくてイオンビーム照射が終了していないセル20の行が未だある場合は、上記のような動作を更に繰り返せば良い。
【0060】
上記各連ね部32において、隣り合う二つのビーム照射領域30は、(a)図9、図10に示す例のように隙間なく継ぎ合わされていても良いし、(b)図11に示す例のように隙間があっても良いし、(c)図12に示す例のように幾分重なっていても良い。但しいずれの場合も、連ね部32は行形成分割帯22に位置させる。その場合、連ね部32は行形成分割帯22のY方向の中央付近に位置させるのが好ましい。その方がセル20への影響を避けやすいからである。以上のことは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0061】
この明細書では、上記(a)〜(c)の3状態を包含する意味で、「連ねる」、「連ね部」という表現を使用しているが、上記3状態を含む意味の下で、「継ぎ合わせる」、「つなぐ」、「継目」、「つなぎ目」、「合わせ目」等と言い換えても良い。
【0062】
上記(a)の場合の連ね部32付近のビーム電流密度分布の概略例を図13に示す。連ね部32が行形成分割帯22に位置しているために、その両側のセル20においてビーム電流密度に乱れが生じるのを防止することができることが分かる。
【0063】
なお、上記各ビーム照射工程においては、上記実施形態のように基板10をX方向に1回移動させる代わりに、必要とするイオンビーム照射量(例えばイオン注入量)を得る等のために、往復を含めて複数回移動させても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0064】
このイオンビーム照射方法によれば、複数のビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビーム4を照射してイオン注入等の処理を施すことができる。しかも、複数のビーム照射領域30を連ねる連ね部32を行形成分割帯22に位置させるので、連ね部32の存在が、セル20に対する均一なイオンビーム照射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。
【0065】
更に、イオンビーム4のY方向の両端部4a、4bをマスク6でX方向に実質的に平行に整形するので、そのように整形しない場合に比べて、連ね部32の幅を小さくすることが可能になり、従って行形成分割帯22の幅が小さい場合にも、連ね部32を行形成分割帯22に位置させることが容易になる。
【0066】
その結果、1枚の基板10を分割処理しても、基板10内の所要の処理領域であるセル20の処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板10の処理が可能になる。
【0067】
ひいては、イオン源2等の大型化を抑制することが可能になる。イオンビーム発生装置が後述するような構成のものである場合には、それの大型化を抑制することが可能になる(後述する他の実施形態においても同様)。質量分離マグネットを有している場合は、それの大型化を抑制することも可能になる。
【0068】
なお、上記基板位置変更工程において、基板10をY方向に移動させることによって、連ね部32を行形成分割帯22に位置させることができるので通常はそれで十分であるが、必要に応じて、基板10をその面内で180度回転させることと、基板10をY方向に移動させることとを行って、連ね部32を行形成分割帯22に位置させても良い。
【0069】
また、上記ビーム照射工程の合間であってイオンビーム4が基板10に当たっていない間に、必要に応じて、ビームモニタ16を用いてイオンビーム4のY方向におけるビーム電流密度分布の測定を行ってその均一性を確認し、均一性が許容範囲内でなければ、イオン源2から発生させるイオンビーム4のY方向におけるビーム電流密度分布を均一化する前述した均一化制御を行うようにしても良い。そのようにすれば、基板10上の全てのセル20により均一なイオンビーム照射を行うことができる。後述する他の実施形態においても同様である。
【0070】
第1の実施形態のイオンビーム照射装置を構成する場合の上記制御装置18は、基板10のY方向の位置を表す情報、基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報およびマスク6を通過したイオンビーム4のY方向両端部4a、4bの位置を表す情報が与えられこれらの情報を用いて基板駆動装置14を制御して、上記ビーム照射工程を複数回実施して、かつ上記基板位置変更工程を実施して、複数のビーム照射領域30を連ねて全てのセル20にイオンビーム4を照射する制御を行う機能と、上記連ね部32を行形成分割帯22に位置させる制御を行う機能とを有している。
【0071】
制御装置18に与えられる情報のより具体例を、図1、図6を参照して説明する。
【0072】
基板10のY方向の位置を表す情報は、基板駆動装置14から与えられる。例えば、基板10のY方向一端のY座標y1 が与えられる。
【0073】
マスク6を通過したイオンビーム4のY方向両端部4a、4bの位置を表す情報は、ビームモニタ16から与えられる。例えば、当該両端部4a、4bのY座標Y1 、Y2 が与えられる。また、前述したように、マスク6の内側端6aのY座標で代用しても良い。
【0074】
基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報は、基板情報の一部として制御装置18に与えられる。それには、例えば次の二つがある。次の(a)、(b)のいずれの情報も、基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報であると言うことができる。
【0075】
(a)基板10上での各行のセル20のY方向両端のY座標y2 、y3 、y4 、y5 、y6 ・・・が与えられる。
【0076】
このY座標y3 、y4 、y5 、y6 ・・・は、各行形成分割帯22のY方向両端のY座標をも表しているので、これらで各行形成分割帯22のY方向の位置が分かる。各行形成分割帯22の中央のY座標e1 、e2 ・・・が必要であれば、制御装置18内において例えば次式の演算を行って求めても良い。
【0077】
[数1]
e1 =(y3 −y4 )/2
e2 =(y5 −y6 )/2
・・・・
【0078】
(b)基板10上の行形成分割帯22の行数m、各セル20のY方向の幅b、各行形成分割帯22のY方向の幅a、Y方向の余り部26の幅cが与えられる。上記Y座標y1 とは反対側の余り部28の幅dは必ずしも必要ではない。
【0079】
これらの情報と上記基板10のY方向一端のY座標y1 とから、基板10上での各行のセル20のY方向両端の上記Y座標y2 、y3 、y4 、y5 、y6 ・・・を、例えば次式に従って算出することができるので、その演算を制御装置18内で行うようにしても良い。その他は上記(a)の場合と同様である。
【0080】
[数2]
y2 =y1 −c
y3 =y2 −b=y1 −c−b
y4 =y3 −a=y1 −c−b−a
・・・・
【0081】
上記(a)または(b)の情報は、例えば、制御装置18に数値情報で入力しても良いし、上記情報を有するバーコード等を基板10または基板収納カセット等に付けておいてその情報をリーダーで読み取って制御装置18に与えても良い。また、必要な行形成分割帯22の位置をカメラで読み取ってその位置情報を制御装置18に与えても良い。
【0082】
なお、制御装置18には、必ずしも基板10上の全ての行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報が与えられる必要はなく、少なくとも上記連ね部32が位置する行形成分割帯22の位置を表す情報が与えられれば良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0083】
上記のようなイオン源2、マスク6、基板駆動装置14、制御装置18等を備えている第1の実施形態のイオンビーム照射装置によれば、上記第1の実施形態のイオンビーム照射方法が奏する上記効果と同様の効果を奏する。
【0084】
(2)第2の実施形態のイオンビーム照射方法および装置
第2の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置は、簡単に言えば、Y方向のビーム幅が、半数以上の行のセルを含む寸法のイオンビームを用い、ビーム照射工程を2回行うものである。
【0085】
図14〜図17は、第2の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置を説明するための図である。以下においては、上記第1の実施形態と同一または相当する部分には同一符号を付し、上記第1の実施形態との相違点を主体に説明する。
【0086】
この実施形態では、上記第1の実施形態と違って、mが最小のときでもセル20を挟む二つの行形成分割帯22が存在するという条件を満たす必要はないので、m、nは共に2以上の整数で良い。後述する第3の実施形態においても同様である。
【0087】
この実施形態では、例えば図14に示す例のように、Y方向のビーム幅W2 が、上記m行の半数以上の行のセル20を含む寸法のイオンビーム4を用いる。図14は、m=5、ビーム幅W2 が3行のセル20を含む場合の例であるが、これに限られるものではない。
【0088】
そして、基板10をX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上にビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつビーム照射工程の合間であってイオンビーム4が基板10に当たっていない間に、基板10の位置を変えてイオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施して、二つのビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビーム4を照射する。しかも二つのビーム照射領域30を連ねる連ね部32を行形成分割帯22に位置させ、かつイオンビーム4のY方向の二つの端部4a、4bの内の少なくとも連ね部32側に位置する端部4bを、前記マスク6(図1、図2参照)でX方向に実質的に平行に整形する。
【0089】
この場合、イオンビーム4の、上記端部4bとは反対側の端部4aは、マスク6で整形しても良いし、整形しなくても良い。連ね部32側に位置しないからである。また、当該端部4aのY方向の位置は、上記ビーム幅W2 の条件を満たしていさえすれば、特定の位置に限定されない。例えば、図14に示す例のように基板10外に位置しても良いし、基板10の端部に位置しても良いし、余り部26に位置しても良い。端部4aの位置情報を制御装置18に与える必要もない。後述する第3の実施形態においても同様である。
【0090】
図14〜図17に示すイオンビーム照射方法をより詳しく説明すると、まず図14に示すように、必要に応じて基板10をY方向に移動させてイオンビーム4の上記端部4bを所望の行形成分割帯22に位置させた状態で、基板10を矢印Aで示すようにX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図15に示すビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を実施する。
【0091】
次に、図15中に矢印Rで示すように(またはその逆方向に)、基板10を例えばその中心部10aを中心にして基板面内で180度回転させ、次いで図16中に矢印Bで示すように基板10をY方向に移動させることによって、イオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板位置変更工程を実施する。このとき、イオンビーム4の上記端部4bを、先のビーム照射工程で形成したビーム照射領域30のY方向の端部が位置する行形成分割帯22に位置させる。この場合、基板10を矢印Rで示すように回転させることと、矢印Bで示すように移動させることとは、同時に行っても良い。
【0092】
次に、図16中に矢印Cで示すように、基板10をX方向(但し図14とは逆方向)に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図17に示す二つ目のビーム照射領域30を形成する2回目のビーム照射工程を実施する。これによって、二つのビーム照射領域30を連ねることができる。しかもその連ね部32を行形成分割帯22に位置させることができる。これによって、この実施形態の場合は、基板10上の全てのセル20にイオンビームを照射することができたので、イオンビーム照射が完了したことになる。
【0093】
このイオンビーム照射方法によれば、二つのビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビームを照射してイオン注入等の処理を施すことができる。しかも、二つのビーム照射領域30を連ねる連ね部32を行形成分割帯22に位置させるので、連ね部32の存在が、セル20に対する均一なイオンビーム照射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。
【0094】
更に、イオンビーム4のY方向の二つの端部の内の少なくとも連ね部32側に位置する端部4bをマスク6でX方向に実質的に平行に整形するので、そのように整形しない場合に比べて、連ね部32の幅を小さくすることが可能になり、従って行形成分割帯22の幅が小さい場合にも、連ね部32を行形成分割帯22に位置させることが容易になる。
【0095】
その結果、1枚の基板10を分割処理しても、基板10内の所要の処理領域であるセル20の処理に悪影響が及ぶのを防止することができ、それによってビーム幅よりも幅の大きい基板10の処理が可能になる。
【0096】
ひいては、イオン源2等の大型化を抑制することが可能になる。質量分離マグネットを有している場合は、その大型化を抑制することも可能になる。
【0097】
また、上記第1の実施形態と比べれば、マスク6(およびマスク駆動装置8を設けている場合はそれも)が、片側でも良いという利点がある。
【0098】
第2の実施形態のイオンビーム照射装置においては、上記イオン源2は、上記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅W1 のイオンビームを発生させるものとする。
【0099】
上記マスク6は、イオン源2からのイオンビーム4を、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも上記連ね部32側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に、当該イオンビーム4のY方向のビーム幅を上記m行の半数以上の行のセル20を含むビーム幅W2 に保って通過させるものとする。従って、マスク6は(マスク駆動装置8を設けている場合はそれも)、片側だけに設けておいても良い。
【0100】
上記基板駆動装置14は、この実施形態の場合は、基板10を、X方向およびY方向に移動させる機能ならびに基板面内で回転させる機能を有するものとする。
【0101】
上記制御装置18は、基板10のY方向の位置を表す情報、当該基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報およびマスク6を通過したイオンビーム4の連ね部32側の端部4bの位置を表す情報が与えられこれらの情報を用いて基板駆動装置14を制御して、上記ビーム照射工程を2回実施して、かつ上記基板位置変更工程を実施して、二つのビーム照射領域30を連ねて全てのセル20にイオンビーム4を照射する制御を行う機能と、上記連ね部32を行形成分割帯22に位置させる制御を行う機能とを有している。この制御装置18に与えられる情報のより具体例は、第1の実施形態の所で説明したものとほぼ同様であるので、ここでは重複説明を省略する。
【0102】
上記のようなイオン源2、マスク6、基板駆動装置14、制御装置18等を備えている第2の実施形態のイオンビーム照射装置によれば、上記第2の実施形態のイオンビーム照射方法が奏する上記効果と同様の効果を奏する。
【0103】
なお、イオンビーム4のY方向の両端部4a、4bを、マスク6でX方向に実質的に平行に整形しても良い。その場合は、上記基板位置変更工程において、基板10を回転させずに、基板10をY方向に移動させることによって、連ね部32が行形成分割帯22に位置するように基板10の位置を変えても良い。これは、基板10のY方向の両端部4a、4bを整形しているので、上記第1の実施形態の場合と同様に、基板10を回転させなくても、イオンビーム4の両端部4a、4bを用いて二つのビーム照射領域30を連ねることができるからである。この場合は、基板駆動装置14において、基板10を回転させる機能(例えば回転装置52)を省略することが可能になる。
【0104】
(3)第3の実施形態のイオンビーム照射方法および装置
第3の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置は、簡単に言えば、基板がY方向の中央部に行形成分割帯の一つを有しており、Y方向のビーム幅が、半数以上の行のセルを含む寸法のイオンビームを用い、ビーム照射工程を2回行うものである。
【0105】
図18〜図21は、第3の実施形態のイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置を説明するための図である。第3の実施形態は第2の実施形態に似ているので、以下においては、上記第2の実施形態との相違点を主体に説明する。
【0106】
この実施形態は、例えば図18に示す例のように、Y方向の中央部に行形成分割帯22の内の一つを有する基板10にイオンビーム4を照射するものである。
【0107】
イオンビーム4としては、第2の実施形態の場合と同様に、Y方向のビーム幅W2 が、上記m行の半数以上の行のセル20を含む寸法のイオンビーム4を用いる。図18は、m=4、ビーム幅W2 が2行のセル20を含む場合の例であるが、これに限られるものではない。
【0108】
そして、基板10をX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上にビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつビーム照射工程の合間であってイオンビーム4が基板10に当たっていない間に、基板10をその中心部10aを中心にして基板面内で180度回転させて、イオンビームを照射するセル20の行を変更する基板回転工程を実施して、二つのビーム照射領域30を連ねて、全てのセル20にイオンビーム4を照射する。しかも二つのビーム照射領域30を連ねる連ね部32を基板中央部の行形成分割帯22に位置させ、かつイオンビーム4のY方向の二つの端部4a、4bの内の少なくとも連ね部32側に位置する端部4bを、前記マスク6(図1、図2参照)でX方向に実質的に平行に整形する。
【0109】
図18〜図21に示すイオンビーム照射方法をより詳しく説明すると、まず図18に示すように、イオンビーム4の上記端部4bを基板中央の行形成分割帯22に位置させた状態で、基板10を矢印Aで示すようにX方向に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図19に示すビーム照射領域30を形成するビーム照射工程を実施する。イオンビーム4の端部4bを基板中央の行形成分割帯22に位置させることは、例えば、上記マスク6の位置調整によって行うことができる。基板10をY方向に移動させることによって行うこともできるけれども、その場合は基板10のY方向移動手段が必要になるので、マスク6によって行う方が簡単である。
【0110】
次に、図19中に矢印Rで示すように(またはその逆方向に)、基板10をその中心部10aを中心にして基板面内で180度回転させることによって、イオンビーム4を照射するセル20の行を変更する基板回転工程を実施する。これによって、次のビーム照射工程で照射するイオンビーム4の上記端部4bは、先のビーム照射工程で形成したビーム照射領域30のY方向の端部が位置する行形成分割帯22に位置することになる。
【0111】
次に、図20中に矢印Cで示すように、基板10をX方向(但し図18とは逆方向)に移動させながら基板10にイオンビーム4を照射して基板10上に図21に示す二つ目のビーム照射領域30を形成する2回目のビーム照射工程を実施する。これによって、二つのビーム照射領域30を連ねることができる。しかもその連ね部32を中央の行形成分割帯22に位置させることができる。これによって、この実施形態の場合は、基板10上の全てのセル20にイオンビームを照射することができたので、イオンビーム照射が完了したことになる。
【0112】
このイオンビーム照射方法によれば、上記第2の実施形態のイオンビーム照射方法が奏する効果と同様の効果を奏する。また、上記第2の実施形態と比べれば、基板10をY方向に移動させなくて済むという利点がある。従って、上記基板駆動装置14において、基板10をY方向に移動させる機能(例えばY方向直進機構46)を省略することが可能になる。
【0113】
第3の実施形態のイオンビーム照射装置においては、上記マスク6は、イオン源2からのイオンビーム4を、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも上記連ね部32側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に当該連ね部32側の端部を基板中央部の行形成分割帯22に位置させ、かつ当該イオンビーム4のY方向のビーム幅を上記m行の半数以上の行のセル20を含むビーム幅W2 に保って通過させるものとする。
【0114】
上記基板駆動装置14は、基板10をY方向に移動させる機能(例えばY方向直進機構46)は有していなくても良く、基板10をX方向に移動させる機能および基板10をその中心部10aを中心にして基板面内で回転させる機能を有していれば良い。
【0115】
上記制御装置18は、この実施形態の場合は、基板駆動装置14を制御して、上記ビーム照射工程を2回実施して、かつ上記基板回転工程を実施して、二つのビーム照射領域30を連ねて全てのセル20にイオンビーム4を照射する制御を行う機能と、上記連ね部32を基板中央部の行形成分割帯22に位置させる制御を行う機能とを有していれば良い。
【0116】
この制御装置18は、基板10のY方向移動を制御しなくても良いので、Y方向位置制御に必要な情報、例えば前述した基板10のY方向の位置を表す情報、基板10上の行形成分割帯22のY方向の位置を表す情報およびマスク6を通過したイオンビーム4の端部の位置を表す情報は与えられなくても良い。
【0117】
上記のようなイオン源2、マスク6、基板駆動装置14、制御装置18等を備えている第3の実施形態のイオンビーム照射装置によれば、上記第3の実施形態のイオンビーム照射方法が奏する上記効果と同様の効果を奏する。
【0118】
(4)イオンビーム発生装置の例
Y方向のビーム幅W1 が前述したような所定寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置は、例えば、(a)上記各実施形態のイオン源2のように、その出口から既に所定のビーム幅W1 のイオンビーム4を発生させるイオン源でも良いし、(b)例えば特開2006−139996号公報に記載されているように、扇状(具体的にはY方向に沿って扇状)に広がるイオンビームを発生させるイオン源と、このイオン源からのイオンビームを電界または磁界によって偏向させることによって当該イオンビームの広がりを抑制して、上記ビーム幅W1 のイオンビームを導出するビーム偏向手段とを備える構成のものでも良いし、(c)例えば特許第3358336号公報に記載されているように、イオンビームを発生させるイオン源と、このイオン源からのイオンビームを電界または磁界によって走査(具体的にはY方向に沿って走査)して、上記ビーム幅W1 のイオンビームを導出するビーム走査手段とを備える構成のものでも良い。
【0119】
上記(b)の場合、上記ビーム偏向手段は、イオンビームを平行ビーム化する機能を更に備えているのが好ましい。あるいは、上記ビーム偏向手段とは別に、その下流側に、イオンビームを平行ビーム化するビーム平行化手段を更に備えていても良い。上記(c)の場合、上記ビーム走査手段の下流側に、イオンビームを平行ビーム化するビーム平行化手段を更に備えているのが好ましい。いずれも、イオンビームを平行ビーム化する方が、上記複数のビーム照射領域30を連ねることや、その連ね部32を行形成分割帯22に位置させることが容易になるからである。
【0120】
イオンビーム発生装置が上記(b)、(c)の場合も、この発明によれば、上記(a)のイオン源の場合と同様の理由によって、その大型化を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0121】
2 イオン源
4 イオンビーム
4a、4b 端部
6 マスク
8 マスク駆動装置
10 基板
10a 中心部
12 ホルダ
14 基板駆動装置
16 ビームモニタ
18 制御装置
20 セル
22 行形成分割帯
24 列形成分割帯
30 ビーム照射領域
32 連ね部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射方法であって、
Y方向のビ−ム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを用いて、
前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記イオンビームを照射して、前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、
かつ前記ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその面内で180度回転させかつY方向に移動させて、前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板位置変更工程を実施して、
二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する方法であり、
しかも前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記行形成分割帯に位置させ、
かつ前記イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも前記連ね部側に位置する端部を、マスクでX方向に実質的に平行に整形する、ことを特徴とするイオンビーム照射方法。
【請求項2】
互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板であってそのY方向の中央部に前記行形成分割帯の内の一つを有する基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射方法であって、
Y方向のビ−ム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを用いて、
前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記イオンビームを照射して、前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、
かつ前記ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその中心部を中心にして基板面内で180度回転させて、前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板回転工程を実施して、
二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する方法であり、
しかも前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させ、
かつ前記イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも前記連ね部側に位置する端部を、マスクでX方向に実質的に平行に整形する、ことを特徴とするイオンビーム照射方法。
【請求項3】
互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射装置であって、
Y方向のビーム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置と、
前記イオンビーム発生装置からのイオンビームを、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも後述する連ね部側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に、当該イオンビームのY方向のビーム幅を前記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅に保って通過させるマスクと、
前記基板を、X方向およびY方向に移動させる機能ならびに基板面内で回転させる機能を有する基板駆動装置と、
前記基板のY方向の位置を表す情報、当該基板上の前記行形成分割帯のY方向の位置を表す情報および前記マスクを通過したイオンビームの後述する連ね部側の端部の位置を表す情報が与えられこれらの情報を用いて前記基板駆動装置を制御して、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記マスクを通過したイオンビームを照射して前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ当該ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板を180度回転させかつY方向に移動させて前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板位置変更工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する制御を行う機能と、前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記行形成分割帯に位置させる制御を行う機能とを有している制御装置とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項4】
互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板であってそのY方向の中央部に前記行形成分割帯の内の一つを有する基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射装置であって、
Y方向のビーム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置と、
前記イオンビーム発生装置からのイオンビームを、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも後述する連ね部側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に当該連ね部側の端部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させ、かつ当該イオンビームのY方向のビーム幅を前記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅に保って通過させるマスクと、
前記基板をX方向に移動させる機能および前記基板をその中心部を中心にして基板面内で回転させる機能を有する基板駆動装置と、
前記基板駆動装置を制御して、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記マスクを通過したイオンビームを照射して前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ当該ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその中心部を中心にして180度回転させて前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板回転工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する制御を行う機能と、前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させる制御を行う機能とを有している制御装置とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項1】
互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射方法であって、
Y方向のビ−ム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを用いて、
前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記イオンビームを照射して、前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、
かつ前記ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその面内で180度回転させかつY方向に移動させて、前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板位置変更工程を実施して、
二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する方法であり、
しかも前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記行形成分割帯に位置させ、
かつ前記イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも前記連ね部側に位置する端部を、マスクでX方向に実質的に平行に整形する、ことを特徴とするイオンビーム照射方法。
【請求項2】
互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板であってそのY方向の中央部に前記行形成分割帯の内の一つを有する基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射方法であって、
Y方向のビ−ム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを用いて、
前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記イオンビームを照射して、前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、
かつ前記ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその中心部を中心にして基板面内で180度回転させて、前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板回転工程を実施して、
二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する方法であり、
しかも前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させ、
かつ前記イオンビームのY方向の二つの端部の内の少なくとも前記連ね部側に位置する端部を、マスクでX方向に実質的に平行に整形する、ことを特徴とするイオンビーム照射方法。
【請求項3】
互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射装置であって、
Y方向のビーム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置と、
前記イオンビーム発生装置からのイオンビームを、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも後述する連ね部側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に、当該イオンビームのY方向のビーム幅を前記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅に保って通過させるマスクと、
前記基板を、X方向およびY方向に移動させる機能ならびに基板面内で回転させる機能を有する基板駆動装置と、
前記基板のY方向の位置を表す情報、当該基板上の前記行形成分割帯のY方向の位置を表す情報および前記マスクを通過したイオンビームの後述する連ね部側の端部の位置を表す情報が与えられこれらの情報を用いて前記基板駆動装置を制御して、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記マスクを通過したイオンビームを照射して前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ当該ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板を180度回転させかつY方向に移動させて前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板位置変更工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する制御を行う機能と、前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記行形成分割帯に位置させる制御を行う機能とを有している制御装置とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項4】
互いに直交する2方向をX方向およびY方向とすると、面内に、所定の処理パターンの繰り返しの単位であるセルであって、X方向に伸びている行形成分割帯およびY方向に伸びている列形成分割帯を挟んでm行n列(m、nは共に2以上の整数)のマトリックス状に配列された複数のセルが形成されている基板であってそのY方向の中央部に前記行形成分割帯の内の一つを有する基板に、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいイオンビームを照射するイオンビーム照射装置であって、
Y方向のビーム幅が、前記m行の半数以上の行の前記セルを含む寸法のイオンビームを発生させるイオンビーム発生装置と、
前記イオンビーム発生装置からのイオンビームを、そのY方向の二つの端部の内の少なくとも後述する連ね部側の端部がX方向に実質的に平行になるように整形すると共に当該連ね部側の端部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させ、かつ当該イオンビームのY方向のビーム幅を前記m行の半数以上の行の前記セルを含むビーム幅に保って通過させるマスクと、
前記基板をX方向に移動させる機能および前記基板をその中心部を中心にして基板面内で回転させる機能を有する基板駆動装置と、
前記基板駆動装置を制御して、前記基板をX方向に移動させながら当該基板に前記マスクを通過したイオンビームを照射して前記基板上にビーム照射領域を形成するビーム照射工程を2回実施して、かつ当該ビーム照射工程の合間であって前記イオンビームが前記基板に当たっていない間に、前記基板をその中心部を中心にして180度回転させて前記イオンビームを照射する前記セルの行を変更する基板回転工程を実施して、二つの前記ビーム照射領域を互いに場所が異なるものにすると共に両ビーム照射領域を連ねて、全ての前記セルに前記イオンビームを照射する制御を行う機能と、前記二つのビーム照射領域を連ねる連ね部を前記基板中央部の行形成分割帯に位置させる制御を行う機能とを有している制御装置とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−199073(P2010−199073A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58732(P2010−58732)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【分割の表示】特願2007−308624(P2007−308624)の分割
【原出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【分割の表示】特願2007−308624(P2007−308624)の分割
【原出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
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