イオンミリング装置
【課題】効率的にイオンミリング加工を行えるイオンミリング装置を提供する。
【解決手段】プラズマを生成するプラズマ生成室10と、プラズマ生成室10に連通する処理室40と、プラズマ生成室10から処理室40へイオンビームを引き出す複数の引き出し電極20,21,22と、複数の引き出し電極20,21,22から選択された一つの引き出し電極をプラズマ生成室10の開口部18に移動させるスライドテーブル30と、を備える。
【解決手段】プラズマを生成するプラズマ生成室10と、プラズマ生成室10に連通する処理室40と、プラズマ生成室10から処理室40へイオンビームを引き出す複数の引き出し電極20,21,22と、複数の引き出し電極20,21,22から選択された一つの引き出し電極をプラズマ生成室10の開口部18に移動させるスライドテーブル30と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にイオンビームを照射して被加工物をエッチング加工するイオンミリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンミリング加工として、基板などの被加工物にイオンビームを照射して表面をミリング加工する技術が知られ、この加工にはイオンミリング装置が用いられている。
イオンミリング装置は、プラズマ生成室でプラズマを生成し、プラズマ生成室から引き出し電極を用いてイオンビームを被加工物が配置される処理室に引き出す構造を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−118290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のイオンミリング装置では、被加工物の材質、加工後の表面状態などに対応してイオンビーム強度を適正に制御して加工が行われる。一般に、イオンビーム強度の設定には引き出し電極のイオンビームを引き出す引き出し穴の開口率の調整などで行われている。
このように、イオンミリング加工では被加工物の加工に適した引き出し電極を採用する必要があり、加工状態に応じた引き出し電極に交換する必要がある。この場合、引き出し電極の交換に時間がかかり、装置の稼働率を低下させている。
また、複数種類のイオンミリング加工が1台の装置で連続して行えないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるイオンミリング装置は、プラズマを生成するプラズマ生成手段を有するプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室に連通する処理室と、前記プラズマ生成室から前記処理室へイオンビームを引き出す複数の引き出し電極と、前記複数の引き出し電極から選択された一つの引き出し電極を前記プラズマ生成室の開口部に移動させる引き出し電極移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、プラズマ生成室から処理室へイオンビームを引き出す引き出し電極が複数備えられ、そのうちの一つの引き出し電極を選択してプラズマ生成室の開口部に移動させる引き出し電極移動手段を有している。
このため、引き出し電極移動手段により引き出し電極を切り替えることで、被加工物に応じた加工ができ、連続して効率的にイオンミリング装置を稼動することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記複数の引き出し電極はイオンビームを引き出す引き出し穴が開口され、前記複数の引き出し電極のなかに、前記引き出し穴の開口率が異なる前記引き出し電極を有することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、複数の引き出し電極のなかにイオンビームが引き出される引き出し穴の開口率が異なる引き出し電極を有する。
ここで、開口率とは引き出し電極の面積に対する引き出し穴の開口面積の割合をいう。例えば、引き出し電極の開口率が大きいと、引き出し穴から放出されるイオンビーム量が多くなり、被加工物に照射されるエネルギーが大きく、イオンミリングレートは向上する。
このように、複数の引き出し電極のなかに開口率の異なる引き出し電極を有することから、開口率の異なる引き出し電極を切り替えてイオンミリング加工を行うことで、1台のイオンミリング装置を用い、連続して数種類のイオンミリング加工をすることが可能となる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記引き出し電極移動手段はスライド機構を有し、前記スライド機構のスライド動作に連動して前記複数の引き出し電極が移動することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、引き出し電極移動手段としてスライド機構を有している。
このように、スライド機構は簡単な構造であり、大きなスペースを必要とせずに複数の引き出し電極を移動させることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記引き出し電極移動手段は回転機構を有し、前記回転機構の回転動作に連動して前記複数の引き出し電極が移動することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、引き出し電極移動手段として回転機構を有している。
このように、回転機構は簡単な構造であり、回転機構の円周上に多数の引き出し電極を配置でき、多数の引き出し電極を移動させるのに有利な構成である。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記プラズマ生成手段として高周波放電を利用した高周波イオン源を有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、プラズマ生成手段が高周波放電を利用した高周波イオン源である。
このため、大きな直径のプラズマを得ることができ、口径の大きいイオンビームを利用することができる。また、安定したプラズマを発生させることができ、加工精度の高いイオンミリング装置を提供できる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記プラズマ生成手段としてフィラメントを用い直流放電を利用したイオン源を有することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、プラズマ生成手段がフィラメントを用い直流放電を利用したイオン源である。
このため、簡単な構成で容易にプラズマを発生させることができるため、装置の構成を簡略化でき、低コストのイオンミリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のイオンミリング装置の構成を示す模式図。
【図2】第1実施形態における永久磁石の配置状態を示す断面図。
【図3】第1実施形態にかかるスライド機構と複数の引き出し電極の配置を示す平面図。
【図4】第2実施形態のイオンミリング装置の構成を示す模式図。
【図5】第2実施形態にかかる回転機構と複数の引き出し電極の配置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
(第1実施形態)
【0020】
<イオンミリング装置の構成>
図1は本実施形態のイオンミリング装置の構成を示す模式図である。図2は図1のA−A断線に沿う断面図であり、永久磁石の配置状態を示す。図3は図1のB矢視でのスライド機構と複数の引き出し電極の配置を示す平面図である。
なお、以下の説明では直交座標を用い、装置の平面の一方向をX軸方向とし、X軸に直交する平面方向をZ軸方向、X軸およびZ軸に直交する装置の高さ方向をY軸方向と呼び、位置関係を説明する。
イオンミリング装置1は、図1に示すように、プラズマを生成するプラズマ生成手段を有するプラズマ生成室10と、プラズマ生成室10からイオンビームを引き出す引き出し電極20と、引き出されたイオンビームが導入される処理室40と、を備えている。
【0021】
プラズマ生成室10は、X軸方向に、高周波プラズマ室11と、これに連通するプラズマ拡張室14とが並んで構成され、プラズマ生成室10の開口部18が処理室40に向けて開放されるように配置されている。
高周波プラズマ室11は石英円筒管12の外周に高周波コイル13が巻かれて形成され、ガス導入口17からArなどの放電ガスが供給できる構成となっている。
高周波コイル13には高周波電源16が接続され、高周波コイル13に高周波電力が供給される。
【0022】
そして、高周波プラズマ室11に連結されたプラズマ拡張室14は、高周波プラズマ室11よりも大きな径を持って形成され、外周に多極の永久磁石15a,15bが配置されている。
永久磁石15aは、図2に示すように、プラズマ拡張室14の外周を取り巻くように配置され、隣り合う永久磁石は反対の極となるように配置されている。永久磁石15bも同様に、隣り合う永久磁石は反対の極となるように配置されている(図示せず)。
【0023】
この永久磁石15a,15bは、磁力線によりプラズマをプラズマ拡張室14に閉じ込めるとともに、放電領域に磁界をかけてイオンの飛程距離を長くしてイオン化率を増大させる機能を有する。
このように、本実施形態におけるイオンミリング装置1のプラズマ生成手段は高周波放電を利用した高周波イオン源が用いられている。
【0024】
プラズマ拡張室14に並びX軸方向に引き出し電極20が配置されている。この引き出し電極20はプラズマ生成室10の開口部18に面して覆うように配置される。引き出し電極20は、加速電極20a、減速電極20b、接地電極20cの3枚の電極から構成されている。各電極は円板状に形成され、各電極の間の距離を保持し、また各電極間の絶縁を果たすために絶縁材料で形成された支柱23により支持されている。これらの電極の材料としてはモリブデン(Mo)、タングステン(W)などの高融点材料が用いられている。そして、各電極の円板内にイオンビームが通過するように同位置に穿孔された多数の引き出し穴が設けられている。
【0025】
ここで、本実施形態のイオンミリング装置1では、引き出し電極として3つの引き出し電極20,21,22が用意されている(図3参照)。
3つの引き出し電極20,21,22は引き出し電極移動手段としてのスライドテーブル30に配置されている。
具体的には、引き出し電極20,21,22は、スライド機構を有するスライドテーブル30に固定された電極取り付け板34a,34b,34cに配置されている。
スライドテーブル30は、イオンミリング装置1の処理室40内に配置され、接続されたモーター(図示せず)によりZ軸方向に移動できるように配置されている。
この、スライドテーブル30には、Y軸方向に延出する電極取り付け板34a,34b,34cが等間隔に固定されている。そして、Y軸方向に延出する電極取り付け板34a,34b,34cの先端部に引き出し電極20,21,22がそれぞれ配置されている。
このようにして、スライドテーブル30のZ軸方向の移動に連動して引き出し電極20,21,22がZ軸方向に移動できるように構成されている。
【0026】
なお、図示しないが、引き出し電極21,22には、引き出し電極20と同様に、加速電極、減速電極、接地電極の3枚の電極を備え、各電極は支柱により支持されている。
そして、引き出し電極20,21,22にはイオンビームが直進して通過する引き出し穴24,25,26がそれぞれ設けられている。
それぞれの引き出し穴24,25,26の配置は同じであるが異なる穴径で形成され、引き出し電極の面積に対して引き出し穴の開口された面積の占める割合である開口率が異なるように構成されている。
【0027】
本実施形態では、引き出し電極における開口率は、引き出し電極20が一番大きく、次に引き出し電極21、そして次に引き出し電極22となり、引き出し電極22が一番小さい開口率を有している。
一般に、引き出し電極の開口率が大きいと、引き出し穴から放出されるイオンビーム量が多くなり、被加工物に照射されるエネルギーが大きく、イオンミリングレートは向上する。また、加工された表面状態(表面粗さ)は粗くなる傾向にある。このような引き出し電極では粗加工に適している電極と言える。
これに対して、引き出し電極の開口率が小さいと、引き出し穴から放出されるイオンビーム量は小さく、被加工物に照射されるエネルギーは小さく、イオンミリングレートは低下する。また、加工された表面状態(表面粗さ)は細かくなる傾向にある。このような引き出し電極では仕上げ加工(精密加工)に適している電極と言える。
【0028】
また、スライドテーブル30は基台32に固定され、基台32はシリンダー31と接続されている。シリンダー31はX軸方向に往復運動が可能であり、シリンダー31の作動によりスライドテーブル30および引き出し電極20,21,22をX軸方向に移動させることができる。
なお、引き出し電極20,21,22が処理室40内で移動できる構造であれば、スライドテーブル30などのスライド機構およびシリンダー31は処理室40の外に配置してもよい。
【0029】
また、プラズマ生成室10の開口部18に配置される引き出し電極20のY軸方向には各電極20a,20b,20cと接触可能なプローブ35a,35b,35cが配置されている。
プローブ35a,35b,35cは絶縁材料で形成されたプローブ取り付け板36に固定され、プローブ取り付け板36はシリンダー37に接続されている。シリンダー37は、Y軸方向に往復運動が可能であり、シリンダー37の作動によりプローブ35a,35b,35cをY軸方向に移動させることができる。
【0030】
プローブ35aには加速電源が接続され、プローブ35bには減速電源が接続される。
加速電源からは500Vから2000Vの間の電圧が供給され、プローブ35aを介して加速電極20aに印加される。
減速電源からは−100Vから−500Vの間の電圧が供給され、プローブ35bを介して減速電極20bに印加される。
プローブ35cは接地、または接地に対して−100V未満の電圧が印加され、プローブ35cを介して接地電極20cに接続される。
これらの加速電極20aおよび減速電極20bに印加する電圧を調整することによって、引き出し電極20から引き出されるイオンビームのエネルギーを調整することができる。
なお、引き出し電極20として、接地電極20cを設けなくても、イオンビームの引き出しは可能である。また、引き出し電極と接触するプローブ35a,35b,35cに変えて板バネを用いても良い。
【0031】
処理室40には、排気装置(図示せず)が接続され、処理室40およびそれに連結されるプラズマ拡張室14、高周波プラズマ室11を減圧状態に保つことが可能である。
そして、処理室40には被加工物の基板などの被加工物45を保持する基板ホルダー41が設置されている。基板ホルダー41は円板状に形成され、基板ホルダー41の中心部に軸が設けられて軸を中心に回転可能に形成されている。また、基板ホルダー41は、被処理物の材質により、最適なミリリング加工速度にするためにイオンビームの照射方向(X軸方向)に対して傾いて配置されている。
【0032】
さらに、引き出し電極20と基板ホルダー41との間に、シャッター(図示せず)を設けても良い。
シャッターの開閉により、基板ホルダー41に保持された被加工物45に対してイオンビームの照射を制御することができる。
なお、処理室40はイオンビームの導入の安定性を確保するために電気的に接地された状態となっている。
【0033】
<イオンミリング装置の動作>
次に、上記のイオンミリング装置1における動作の一例について説明する。
排気装置により、処理室40、プラズマ生成室10、が排気され、その後、一定流量の放電ガスが高周波プラズマ室11に供給される。そして、高周波コイル13に高周波電力を印加すると、放電ガスが放電しプラズマが高周波プラズマ室11に発生する。生成されたプラズマはプラズマ拡張室14に拡張する。プラズマ拡張室14からイオンが引き出し電極20を用いてイオンビームとして処理室40に引き出される。
処理室40に導入されたイオンビームは、回転する基板ホルダー41に保持された被加工物45に照射してイオンミリング加工が行われ、所定時間の経過後、プラズマの発生を停止して加工が終了する。
【0034】
続いて、シリンダー37が作動してプローブ35a,35b,35cをY軸方向に引き上げ、引き出し電極20との接触を解除する。
次に、シリンダー31が作動して、引き出し電極20とプラズマ生成室10の開口部18との間に隙間が開く位置までX軸方向に移動する。
そして、スライドテーブル30がZ軸方向に移動し、引き出し電極21がプラズマ生成室10の開口部18と並ぶ位置に停止する。
次に、シリンダー31が作動してプラズマ生成室10の開口部18と引き出し電極21とが接触する位置に位置決めされる。
続いて、シリンダー37が作動してプローブ35a,35b,35cがY軸方向に引き下げられ、引き出し電極21と接触する。
【0035】
この状態で、再度プラズマ生成室10でプラズマを生成して、引き出し電極21を用いて被加工物45のイオンミリング加工が行われる。所定の加工が終了すると、次に引き出し電極22が選択されて同様の動作が行われ、引き出し電極22によるイオンミリング加工が行われる。
このように、イオンミリング装置1では引き出し穴の開口率の異なる引き出し電極を切り替えて利用することで、連続して被加工物45をイオンミリング加工することができる。
【0036】
本実施形態の例では、引き出し穴の開口率の大きい引き出し電極20を用いて被加工物45を粗加工を行い、次に引き出し穴の開口率が中間の引き出し電極21を用いて被加工物45を中間加工する。そして最後に引き出し穴の開口率の小さい引き出し電極22を用いて仕上げ加工を行う。
このように、スライドテーブル30により引き出し電極を容易に切り替えることができ、効率的にイオンミリング装置1を稼動することができる。
そして、開口率の異なる引き出し電極20,21,22を有することから、開口率の異なる引き出し電極を切り替えてイオンミリング加工を行うことで、1台のイオンミリング装置1を用い、連続して数種類のイオンミリング加工をすることが可能となる。
(第2実施形態)
【0037】
次に、第2実施形態のイオンミリング装置について説明する。
<イオンミリング装置の構成>
図4は第2実施形態のイオンミリング装置の構成を示す模式図である。図5は図4のC矢視での回転機構と複数の引き出し電極の配置を示す平面図である。
イオンミリング装置2は、図4に示すように、プラズマを生成するプラズマ生成室としてのアークチャンバー50と、アークチャンバー50からイオンビームを引き出す引き出し電極60と、引き出されたイオンビームが導入される処理室40と、を備えている。
アークチャンバー50は、処理室40と連通し、アークチャンバー50の開口部55が処理室40に向けて開放されるように配置されている。
アークチャンバー50の内部には、イオン源としてフィラメント51が設けられている。フィラメント51は、例えばタングステン(W)などからなり、アークチャンバー50内に熱電子を放出する。
【0038】
そして、アークチャンバー50の外周に多極の永久磁石52a,52bが配置されている。この永久磁石52a,52bは、磁力線によりプラズマをアークチャンバー50に閉じ込めるとともに、放電領域に磁界をかけてイオンの飛程距離を長くしてイオン化率を増大させる機能を有する。
このように、本実施形態のプラズマ生成手段はフィラメント51を用い直流放電を利用したイオン源である。このため、容易にプラズマを発生させることができ、また装置の構成を簡略化でき、低コストのイオンミリング装置2を提供することができる。
【0039】
フィラメント51はフィラメント電源(図示せず)に接続され、このフィラメント電源から所定の電圧が印加される。またアークチャンバー50にはアーク電源の正極側が接続され、負極側はフィラメント電源の正極側に接続されて、アーク電圧が印加される。
また、アークチャンバー50は、ガス導入口56よりArなどの放電ガスが供給できる構成となっている。
このことから、フィラメント51のマイナス端子とアークチャンバー50のアノードとなる内壁との間の放電によって、供給されたArなどの放電ガスがイオン化されるように構成されている。
このように、本実施形態のプラズマ生成手段はフィラメント51を用い直流放電を利用したイオン源である。このため、容易にプラズマを発生させることができ、また装置の構成を簡略化でき、低コストのイオンミリング装置2を提供することができる。
【0040】
アークチャンバー50に並びX軸方向に引き出し電極60が配置されている。この引き出し電極60はアークチャンバー50の開口部55に面して覆うように配置される。引き出し電極60は、加速電極60a、減速電極60b、接地電極60cの3枚の電極から構成されている。各電極は円板状に形成され、各電極の間の距離を保持し、また各電極間の絶縁を果たすために絶縁材料で形成された支柱64により支持されている。これらの電極の材料としてはモリブデン(Mo)、タングステン(W)などの高融点材料が用いられている。そして、各電極の円板内にイオンビームが通過するように穿孔された多数の引き出し穴が設けられている。
【0041】
ここで、本実施形態のイオンミリング装置2では、引き出し電極として4つの引き出し電極60,61,62,63が用意されている(図5参照)。
4つの引き出し電極60,61,62,63は引き出し電極移動手段としての回転テーブル70に配置されている。
具体的には、引き出し電極60,61,62,63は、回転機構を有する回転テーブル70に固定された電極取り付け板75a,75b,75c,75dに配置されている。
回転テーブル70は、回転軸73にテーブル部74が取り付けられ、位置決めモーターまたはカム機構(図示せず)などにより、回転軸73を駆動してテーブル部74が回転する。回転軸73はX軸方向に延出し、軸心を中心に回転する。そして、回転テーブル70はイオンミリング装置2の処理室40内に配置されている。
【0042】
図5に示すように、回転テーブル70のテーブル部74には、回転軸73の中心から90度間隔で延出する電極取り付け板75a,75b,75c,75dが固定されている。そして、電極取り付け板75a,75b,75c,75dの先端部に引き出し電極60,61,62,63がそれぞれ配置されている。つまりY軸とZ軸で構成される平面上に引き出し電極60,61,62,63がそれぞれ配置される。
このようにして、回転テーブル70の回転に連動して引き出し電極60,61,62,63がY軸とZ軸で構成される平面上で移動できるように構成されている。
【0043】
なお、引き出し電極61,62,63には、引き出し電極60と同様に、加速電極、減速電極、接地電極の3枚の電極を備え、各電極は支柱64により支持されている。
そして、引き出し電極60,61,62,63にはイオンビームが直進して通過する引き出し穴65,66,67,68がそれぞれ設けられている。
それぞれの引き出し穴65,66,67,68は異なる穴径または異なる配置で形成され、引き出し電極の面積に対して引き出し穴の開口された面積の占める割合である開口率が異なるように構成されている。
本実施形態では、引き出し電極における開口率は、引き出し電極60が一番大きく、引き出し電極61、引き出し電極62、引き出し電極63の順に開口率は小さくなるように設定されている。
【0044】
また、回転テーブル70は基台72に固定され、基台72はシリンダー71と接続されている。シリンダー71はX軸方向に往復運動が可能であり、シリンダー71の作動により回転テーブル70および引き出し電極60,61,62,63をX軸方向に移動させることができる。
なお、引き出し電極60,61,62,63が処理室40内で移動できる構造であれば、回転テーブル70の一部やシリンダー71は処理室40の外に配置してもよい。
【0045】
また、アークチャンバー50の開口部55に配置される引き出し電極60のY軸方向には各電極60a,60b,60cと接触可能なプローブ35a,35b,35cが配置されている。
プローブ35a,35b,35cは絶縁材料で形成されたプローブ取り付け板36に固定され、プローブ取り付け板36はシリンダー37に接続されている。シリンダー37は、Y軸方向に往復運動が可能であり、シリンダー37の作動によりプローブ35a,35b,35cをY軸方向に移動させることができる。
【0046】
プローブ35aには加速電源が接続され、プローブ35bには減速電源が接続される。
加速電源からは500Vから2000Vの間の電圧が供給され、プローブ35aを介して加速電極60aに印加される。
減速電源からは−100Vから−500Vの間の電圧が供給され、プローブ35bを介して減速電極60bに印加される。
プローブ35cは接地、または接地に対して−100V未満の電圧が印加され、プローブ35cを介して接地電極60cに接続される。
これらの加速電極60aおよび減速電極60bに印加する電圧を調整することによって、引き出し電極60から引き出されるイオンビームのエネルギーを調整することができる。
なお、引き出し電極60として、接地電極60cを設けなくても、イオンビームの引き出しは可能である。また、引き出し電極と接触するプローブ35a,35b,35cに変えて板バネを用いても良い。
【0047】
処理室40には、排気装置(図示せず)が接続され、処理室40およびそれに連結されるアークチャンバー50を減圧状態に保つことが可能である。
そして、処理室40には被加工物の基板などの被加工物45を保持する基板ホルダー41が設置されている。基板ホルダー41は円板状に形成され、基板ホルダー41の中心部に軸が設けられて軸を中心に回転可能に形成されている。また、基板ホルダー41は、被処理物の材質により、最適なミリリング加工速度にするためにイオンビームの照射方向(X軸方向)に対して傾いて配置されている。
【0048】
さらに、引き出し電極60と基板ホルダー41との間に、シャッター(図示せず)を設けても良い。
シャッターの開閉により、基板ホルダー41に保持された被加工物45に対してイオンビームの照射を制御することができる。
なお、処理室40はイオンビームの導入の安定性を確保するために電気的に接地された状態となっている。
【0049】
<イオンミリング装置の動作>
次に、上記のイオンミリング装置2における動作について説明する。
排気装置により、処理室40、アークチャンバー50、が排気され、その後、一定流量の放電ガスがアークチャンバー50に供給される。フィラメント51のマイナス端子とアークチャンバー50のアノードとなる内壁との間の放電によって、プラズマが発生する。生成されたプラズマのイオンは、引き出し電極60により、アークチャンバー50から処理室40に引き出される。
処理室40に導入されたイオンビームは、回転する基板ホルダー41に保持された被加工物45に照射してイオンミリング加工が行われ、所定時間の経過後、プラズマの発生を停止して加工が終了する。
【0050】
続いて、シリンダー37が作動してプローブ35a,35b,35cをY軸方向に引き上げ、引き出し電極60との接触を解除する。
次に、シリンダー71が作動して、引き出し電極60とアークチャンバー50の開口部55との間に隙間があく位置までX軸方向に移動する。
そして、回転テーブル70が回転し、引き出し電極61がアークチャンバー50の開口部55と並ぶ位置に停止する。
次に、シリンダー71が作動してアークチャンバー50の開口部55と引き出し電極61とが接触する位置に位置決めされる。
続いて、シリンダー37が作動してプローブ35a,35b,35cがY軸方向に引き下げられ、引き出し電極61と接触する。
【0051】
この状態で、再度アークチャンバー50でプラズマを生成して、引き出し電極61を用いて被加工物45のイオンミリング加工が行われる。所定の加工が終了すると、次に引き出し電極62が選択されて同様の動作が行われ、引き出し電極62によるイオンミリング加工が行われる。そして、最後に引き出し電極63が選択されてイオンミリング加工が行われる。
このように、イオンミリング装置2では引き出し穴の開口率の異なる引き出し電極を切り替えて利用することで、連続して被加工物45をイオンミリング加工することができる。
【0052】
本実施形態の例では、引き出し穴の開口率の大きい引き出し電極60を用いて被加工物45を粗加工を行い、次に引き出し穴の開口率が中間の引き出し電極61および引き出し電極62を用いて被加工物45を中間加工する。そして最後に引き出し穴の開口率の小さい引き出し電極63を用いて仕上げ加工を行う。
このように、1台のイオンミリング装置2で効率的に被加工物45のイオンミリング加工を行うことができる。
【0053】
なお、上記イオンミリングの加工例では、設置された4つの引き出し電極をそれぞれ用いたが、この4つの引き出し電極のすべてを用いて加工する必要はなく、要求される加工に対して任意の引き出し電極を選択して利用すればよい。
また、本実施形態では回転テーブルに4つの引き出し電極を配置したが、さらに多数の引き出し電極を配置してもよい。
さらに、本実施形態ではプラズマ生成手段はフィラメント51を用い直流放電を利用したイオン源であるが、第1実施形態で説明したプラズマ生成手段が高周波放電を利用した高周波イオン源であってもよい。同様に、第1実施形態のプラズマ生成手段はフィラメント51を用い直流放電を利用したイオン源でもよい。
【0054】
このように、回転テーブル70により引き出し電極を容易に切り替えることができ、効率的にイオンミリング装置2を稼動することができる。
そして、開口率の異なる引き出し電極60,61,62,63を有することから、開口率の異なる引き出し電極を切り替えてイオンミリング加工を行うことで、1台のイオンミリング装置2を用い、連続して数種類のイオンミリング加工をすることが可能となる。
【0055】
なお、第1、第2実施形態ではイオンミリング加工を行う実施形態を説明したが、このイオンミリング装置1,2を用いて基板表面の親水処理や撥水処理などの表面処理を行うことも可能である。このことから、イオンミリング加工と表面処理とを組み合わせた一連のプロセスを本実施形態のイオンミリング装置1,2を用いて実施することもできる。
このように、第1、第2実施形態で説明したイオンミリング装置1,2は、具体的には基板をミリングして基板を平坦化する装置、表面処理装置、圧電素子の周波数調整装置などとして利用することができる。
【0056】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,2…イオンミリング装置、10…プラズマ生成室、11…高周波プラズマ室、12…石英円筒管、13…高周波コイル、14…プラズマ拡張室、15a,15b…永久磁石、16…高周波電源、17…ガス導入口、18…プラズマ生成室の開口部、20…引き出し電極、20a…加速電極、20b…減速電極、20c…接地電極、21…引き出し電極、22…引き出し電極、23…支柱、24,25,26…引き出し穴、30…スライドテーブル、31…シリンダー、32…基台、34a,34b,34c…電極取り付け板、35a,35b,35c…プローブ、36…プローブ取り付け板、37…シリンダー、40…処理室、41…基板ホルダー、45…被加工物、50…プラズマ生成室としてのアークチャンバー、51…フィラメント、52a,52b…永久磁石、55…開口部、56…ガス導入口、60…引き出し電極、60a…加速電極、60b…減速電極、60c…接地電極、61…引き出し電極、62…引き出し電極、63…引き出し電極、64…支柱、65,66,67,68…引き出し穴、70…回転機構としての回転テーブル、71…シリンダー、72…基台、73…回転軸、74…テーブル部、75a,75b,75c,75d…電極取り付け板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にイオンビームを照射して被加工物をエッチング加工するイオンミリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンミリング加工として、基板などの被加工物にイオンビームを照射して表面をミリング加工する技術が知られ、この加工にはイオンミリング装置が用いられている。
イオンミリング装置は、プラズマ生成室でプラズマを生成し、プラズマ生成室から引き出し電極を用いてイオンビームを被加工物が配置される処理室に引き出す構造を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−118290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のイオンミリング装置では、被加工物の材質、加工後の表面状態などに対応してイオンビーム強度を適正に制御して加工が行われる。一般に、イオンビーム強度の設定には引き出し電極のイオンビームを引き出す引き出し穴の開口率の調整などで行われている。
このように、イオンミリング加工では被加工物の加工に適した引き出し電極を採用する必要があり、加工状態に応じた引き出し電極に交換する必要がある。この場合、引き出し電極の交換に時間がかかり、装置の稼働率を低下させている。
また、複数種類のイオンミリング加工が1台の装置で連続して行えないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるイオンミリング装置は、プラズマを生成するプラズマ生成手段を有するプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室に連通する処理室と、前記プラズマ生成室から前記処理室へイオンビームを引き出す複数の引き出し電極と、前記複数の引き出し電極から選択された一つの引き出し電極を前記プラズマ生成室の開口部に移動させる引き出し電極移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、プラズマ生成室から処理室へイオンビームを引き出す引き出し電極が複数備えられ、そのうちの一つの引き出し電極を選択してプラズマ生成室の開口部に移動させる引き出し電極移動手段を有している。
このため、引き出し電極移動手段により引き出し電極を切り替えることで、被加工物に応じた加工ができ、連続して効率的にイオンミリング装置を稼動することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記複数の引き出し電極はイオンビームを引き出す引き出し穴が開口され、前記複数の引き出し電極のなかに、前記引き出し穴の開口率が異なる前記引き出し電極を有することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、複数の引き出し電極のなかにイオンビームが引き出される引き出し穴の開口率が異なる引き出し電極を有する。
ここで、開口率とは引き出し電極の面積に対する引き出し穴の開口面積の割合をいう。例えば、引き出し電極の開口率が大きいと、引き出し穴から放出されるイオンビーム量が多くなり、被加工物に照射されるエネルギーが大きく、イオンミリングレートは向上する。
このように、複数の引き出し電極のなかに開口率の異なる引き出し電極を有することから、開口率の異なる引き出し電極を切り替えてイオンミリング加工を行うことで、1台のイオンミリング装置を用い、連続して数種類のイオンミリング加工をすることが可能となる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記引き出し電極移動手段はスライド機構を有し、前記スライド機構のスライド動作に連動して前記複数の引き出し電極が移動することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、引き出し電極移動手段としてスライド機構を有している。
このように、スライド機構は簡単な構造であり、大きなスペースを必要とせずに複数の引き出し電極を移動させることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記引き出し電極移動手段は回転機構を有し、前記回転機構の回転動作に連動して前記複数の引き出し電極が移動することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、引き出し電極移動手段として回転機構を有している。
このように、回転機構は簡単な構造であり、回転機構の円周上に多数の引き出し電極を配置でき、多数の引き出し電極を移動させるのに有利な構成である。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記プラズマ生成手段として高周波放電を利用した高周波イオン源を有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、プラズマ生成手段が高周波放電を利用した高周波イオン源である。
このため、大きな直径のプラズマを得ることができ、口径の大きいイオンビームを利用することができる。また、安定したプラズマを発生させることができ、加工精度の高いイオンミリング装置を提供できる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかるイオンミリング装置において、前記プラズマ生成手段としてフィラメントを用い直流放電を利用したイオン源を有することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、プラズマ生成手段がフィラメントを用い直流放電を利用したイオン源である。
このため、簡単な構成で容易にプラズマを発生させることができるため、装置の構成を簡略化でき、低コストのイオンミリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のイオンミリング装置の構成を示す模式図。
【図2】第1実施形態における永久磁石の配置状態を示す断面図。
【図3】第1実施形態にかかるスライド機構と複数の引き出し電極の配置を示す平面図。
【図4】第2実施形態のイオンミリング装置の構成を示す模式図。
【図5】第2実施形態にかかる回転機構と複数の引き出し電極の配置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
(第1実施形態)
【0020】
<イオンミリング装置の構成>
図1は本実施形態のイオンミリング装置の構成を示す模式図である。図2は図1のA−A断線に沿う断面図であり、永久磁石の配置状態を示す。図3は図1のB矢視でのスライド機構と複数の引き出し電極の配置を示す平面図である。
なお、以下の説明では直交座標を用い、装置の平面の一方向をX軸方向とし、X軸に直交する平面方向をZ軸方向、X軸およびZ軸に直交する装置の高さ方向をY軸方向と呼び、位置関係を説明する。
イオンミリング装置1は、図1に示すように、プラズマを生成するプラズマ生成手段を有するプラズマ生成室10と、プラズマ生成室10からイオンビームを引き出す引き出し電極20と、引き出されたイオンビームが導入される処理室40と、を備えている。
【0021】
プラズマ生成室10は、X軸方向に、高周波プラズマ室11と、これに連通するプラズマ拡張室14とが並んで構成され、プラズマ生成室10の開口部18が処理室40に向けて開放されるように配置されている。
高周波プラズマ室11は石英円筒管12の外周に高周波コイル13が巻かれて形成され、ガス導入口17からArなどの放電ガスが供給できる構成となっている。
高周波コイル13には高周波電源16が接続され、高周波コイル13に高周波電力が供給される。
【0022】
そして、高周波プラズマ室11に連結されたプラズマ拡張室14は、高周波プラズマ室11よりも大きな径を持って形成され、外周に多極の永久磁石15a,15bが配置されている。
永久磁石15aは、図2に示すように、プラズマ拡張室14の外周を取り巻くように配置され、隣り合う永久磁石は反対の極となるように配置されている。永久磁石15bも同様に、隣り合う永久磁石は反対の極となるように配置されている(図示せず)。
【0023】
この永久磁石15a,15bは、磁力線によりプラズマをプラズマ拡張室14に閉じ込めるとともに、放電領域に磁界をかけてイオンの飛程距離を長くしてイオン化率を増大させる機能を有する。
このように、本実施形態におけるイオンミリング装置1のプラズマ生成手段は高周波放電を利用した高周波イオン源が用いられている。
【0024】
プラズマ拡張室14に並びX軸方向に引き出し電極20が配置されている。この引き出し電極20はプラズマ生成室10の開口部18に面して覆うように配置される。引き出し電極20は、加速電極20a、減速電極20b、接地電極20cの3枚の電極から構成されている。各電極は円板状に形成され、各電極の間の距離を保持し、また各電極間の絶縁を果たすために絶縁材料で形成された支柱23により支持されている。これらの電極の材料としてはモリブデン(Mo)、タングステン(W)などの高融点材料が用いられている。そして、各電極の円板内にイオンビームが通過するように同位置に穿孔された多数の引き出し穴が設けられている。
【0025】
ここで、本実施形態のイオンミリング装置1では、引き出し電極として3つの引き出し電極20,21,22が用意されている(図3参照)。
3つの引き出し電極20,21,22は引き出し電極移動手段としてのスライドテーブル30に配置されている。
具体的には、引き出し電極20,21,22は、スライド機構を有するスライドテーブル30に固定された電極取り付け板34a,34b,34cに配置されている。
スライドテーブル30は、イオンミリング装置1の処理室40内に配置され、接続されたモーター(図示せず)によりZ軸方向に移動できるように配置されている。
この、スライドテーブル30には、Y軸方向に延出する電極取り付け板34a,34b,34cが等間隔に固定されている。そして、Y軸方向に延出する電極取り付け板34a,34b,34cの先端部に引き出し電極20,21,22がそれぞれ配置されている。
このようにして、スライドテーブル30のZ軸方向の移動に連動して引き出し電極20,21,22がZ軸方向に移動できるように構成されている。
【0026】
なお、図示しないが、引き出し電極21,22には、引き出し電極20と同様に、加速電極、減速電極、接地電極の3枚の電極を備え、各電極は支柱により支持されている。
そして、引き出し電極20,21,22にはイオンビームが直進して通過する引き出し穴24,25,26がそれぞれ設けられている。
それぞれの引き出し穴24,25,26の配置は同じであるが異なる穴径で形成され、引き出し電極の面積に対して引き出し穴の開口された面積の占める割合である開口率が異なるように構成されている。
【0027】
本実施形態では、引き出し電極における開口率は、引き出し電極20が一番大きく、次に引き出し電極21、そして次に引き出し電極22となり、引き出し電極22が一番小さい開口率を有している。
一般に、引き出し電極の開口率が大きいと、引き出し穴から放出されるイオンビーム量が多くなり、被加工物に照射されるエネルギーが大きく、イオンミリングレートは向上する。また、加工された表面状態(表面粗さ)は粗くなる傾向にある。このような引き出し電極では粗加工に適している電極と言える。
これに対して、引き出し電極の開口率が小さいと、引き出し穴から放出されるイオンビーム量は小さく、被加工物に照射されるエネルギーは小さく、イオンミリングレートは低下する。また、加工された表面状態(表面粗さ)は細かくなる傾向にある。このような引き出し電極では仕上げ加工(精密加工)に適している電極と言える。
【0028】
また、スライドテーブル30は基台32に固定され、基台32はシリンダー31と接続されている。シリンダー31はX軸方向に往復運動が可能であり、シリンダー31の作動によりスライドテーブル30および引き出し電極20,21,22をX軸方向に移動させることができる。
なお、引き出し電極20,21,22が処理室40内で移動できる構造であれば、スライドテーブル30などのスライド機構およびシリンダー31は処理室40の外に配置してもよい。
【0029】
また、プラズマ生成室10の開口部18に配置される引き出し電極20のY軸方向には各電極20a,20b,20cと接触可能なプローブ35a,35b,35cが配置されている。
プローブ35a,35b,35cは絶縁材料で形成されたプローブ取り付け板36に固定され、プローブ取り付け板36はシリンダー37に接続されている。シリンダー37は、Y軸方向に往復運動が可能であり、シリンダー37の作動によりプローブ35a,35b,35cをY軸方向に移動させることができる。
【0030】
プローブ35aには加速電源が接続され、プローブ35bには減速電源が接続される。
加速電源からは500Vから2000Vの間の電圧が供給され、プローブ35aを介して加速電極20aに印加される。
減速電源からは−100Vから−500Vの間の電圧が供給され、プローブ35bを介して減速電極20bに印加される。
プローブ35cは接地、または接地に対して−100V未満の電圧が印加され、プローブ35cを介して接地電極20cに接続される。
これらの加速電極20aおよび減速電極20bに印加する電圧を調整することによって、引き出し電極20から引き出されるイオンビームのエネルギーを調整することができる。
なお、引き出し電極20として、接地電極20cを設けなくても、イオンビームの引き出しは可能である。また、引き出し電極と接触するプローブ35a,35b,35cに変えて板バネを用いても良い。
【0031】
処理室40には、排気装置(図示せず)が接続され、処理室40およびそれに連結されるプラズマ拡張室14、高周波プラズマ室11を減圧状態に保つことが可能である。
そして、処理室40には被加工物の基板などの被加工物45を保持する基板ホルダー41が設置されている。基板ホルダー41は円板状に形成され、基板ホルダー41の中心部に軸が設けられて軸を中心に回転可能に形成されている。また、基板ホルダー41は、被処理物の材質により、最適なミリリング加工速度にするためにイオンビームの照射方向(X軸方向)に対して傾いて配置されている。
【0032】
さらに、引き出し電極20と基板ホルダー41との間に、シャッター(図示せず)を設けても良い。
シャッターの開閉により、基板ホルダー41に保持された被加工物45に対してイオンビームの照射を制御することができる。
なお、処理室40はイオンビームの導入の安定性を確保するために電気的に接地された状態となっている。
【0033】
<イオンミリング装置の動作>
次に、上記のイオンミリング装置1における動作の一例について説明する。
排気装置により、処理室40、プラズマ生成室10、が排気され、その後、一定流量の放電ガスが高周波プラズマ室11に供給される。そして、高周波コイル13に高周波電力を印加すると、放電ガスが放電しプラズマが高周波プラズマ室11に発生する。生成されたプラズマはプラズマ拡張室14に拡張する。プラズマ拡張室14からイオンが引き出し電極20を用いてイオンビームとして処理室40に引き出される。
処理室40に導入されたイオンビームは、回転する基板ホルダー41に保持された被加工物45に照射してイオンミリング加工が行われ、所定時間の経過後、プラズマの発生を停止して加工が終了する。
【0034】
続いて、シリンダー37が作動してプローブ35a,35b,35cをY軸方向に引き上げ、引き出し電極20との接触を解除する。
次に、シリンダー31が作動して、引き出し電極20とプラズマ生成室10の開口部18との間に隙間が開く位置までX軸方向に移動する。
そして、スライドテーブル30がZ軸方向に移動し、引き出し電極21がプラズマ生成室10の開口部18と並ぶ位置に停止する。
次に、シリンダー31が作動してプラズマ生成室10の開口部18と引き出し電極21とが接触する位置に位置決めされる。
続いて、シリンダー37が作動してプローブ35a,35b,35cがY軸方向に引き下げられ、引き出し電極21と接触する。
【0035】
この状態で、再度プラズマ生成室10でプラズマを生成して、引き出し電極21を用いて被加工物45のイオンミリング加工が行われる。所定の加工が終了すると、次に引き出し電極22が選択されて同様の動作が行われ、引き出し電極22によるイオンミリング加工が行われる。
このように、イオンミリング装置1では引き出し穴の開口率の異なる引き出し電極を切り替えて利用することで、連続して被加工物45をイオンミリング加工することができる。
【0036】
本実施形態の例では、引き出し穴の開口率の大きい引き出し電極20を用いて被加工物45を粗加工を行い、次に引き出し穴の開口率が中間の引き出し電極21を用いて被加工物45を中間加工する。そして最後に引き出し穴の開口率の小さい引き出し電極22を用いて仕上げ加工を行う。
このように、スライドテーブル30により引き出し電極を容易に切り替えることができ、効率的にイオンミリング装置1を稼動することができる。
そして、開口率の異なる引き出し電極20,21,22を有することから、開口率の異なる引き出し電極を切り替えてイオンミリング加工を行うことで、1台のイオンミリング装置1を用い、連続して数種類のイオンミリング加工をすることが可能となる。
(第2実施形態)
【0037】
次に、第2実施形態のイオンミリング装置について説明する。
<イオンミリング装置の構成>
図4は第2実施形態のイオンミリング装置の構成を示す模式図である。図5は図4のC矢視での回転機構と複数の引き出し電極の配置を示す平面図である。
イオンミリング装置2は、図4に示すように、プラズマを生成するプラズマ生成室としてのアークチャンバー50と、アークチャンバー50からイオンビームを引き出す引き出し電極60と、引き出されたイオンビームが導入される処理室40と、を備えている。
アークチャンバー50は、処理室40と連通し、アークチャンバー50の開口部55が処理室40に向けて開放されるように配置されている。
アークチャンバー50の内部には、イオン源としてフィラメント51が設けられている。フィラメント51は、例えばタングステン(W)などからなり、アークチャンバー50内に熱電子を放出する。
【0038】
そして、アークチャンバー50の外周に多極の永久磁石52a,52bが配置されている。この永久磁石52a,52bは、磁力線によりプラズマをアークチャンバー50に閉じ込めるとともに、放電領域に磁界をかけてイオンの飛程距離を長くしてイオン化率を増大させる機能を有する。
このように、本実施形態のプラズマ生成手段はフィラメント51を用い直流放電を利用したイオン源である。このため、容易にプラズマを発生させることができ、また装置の構成を簡略化でき、低コストのイオンミリング装置2を提供することができる。
【0039】
フィラメント51はフィラメント電源(図示せず)に接続され、このフィラメント電源から所定の電圧が印加される。またアークチャンバー50にはアーク電源の正極側が接続され、負極側はフィラメント電源の正極側に接続されて、アーク電圧が印加される。
また、アークチャンバー50は、ガス導入口56よりArなどの放電ガスが供給できる構成となっている。
このことから、フィラメント51のマイナス端子とアークチャンバー50のアノードとなる内壁との間の放電によって、供給されたArなどの放電ガスがイオン化されるように構成されている。
このように、本実施形態のプラズマ生成手段はフィラメント51を用い直流放電を利用したイオン源である。このため、容易にプラズマを発生させることができ、また装置の構成を簡略化でき、低コストのイオンミリング装置2を提供することができる。
【0040】
アークチャンバー50に並びX軸方向に引き出し電極60が配置されている。この引き出し電極60はアークチャンバー50の開口部55に面して覆うように配置される。引き出し電極60は、加速電極60a、減速電極60b、接地電極60cの3枚の電極から構成されている。各電極は円板状に形成され、各電極の間の距離を保持し、また各電極間の絶縁を果たすために絶縁材料で形成された支柱64により支持されている。これらの電極の材料としてはモリブデン(Mo)、タングステン(W)などの高融点材料が用いられている。そして、各電極の円板内にイオンビームが通過するように穿孔された多数の引き出し穴が設けられている。
【0041】
ここで、本実施形態のイオンミリング装置2では、引き出し電極として4つの引き出し電極60,61,62,63が用意されている(図5参照)。
4つの引き出し電極60,61,62,63は引き出し電極移動手段としての回転テーブル70に配置されている。
具体的には、引き出し電極60,61,62,63は、回転機構を有する回転テーブル70に固定された電極取り付け板75a,75b,75c,75dに配置されている。
回転テーブル70は、回転軸73にテーブル部74が取り付けられ、位置決めモーターまたはカム機構(図示せず)などにより、回転軸73を駆動してテーブル部74が回転する。回転軸73はX軸方向に延出し、軸心を中心に回転する。そして、回転テーブル70はイオンミリング装置2の処理室40内に配置されている。
【0042】
図5に示すように、回転テーブル70のテーブル部74には、回転軸73の中心から90度間隔で延出する電極取り付け板75a,75b,75c,75dが固定されている。そして、電極取り付け板75a,75b,75c,75dの先端部に引き出し電極60,61,62,63がそれぞれ配置されている。つまりY軸とZ軸で構成される平面上に引き出し電極60,61,62,63がそれぞれ配置される。
このようにして、回転テーブル70の回転に連動して引き出し電極60,61,62,63がY軸とZ軸で構成される平面上で移動できるように構成されている。
【0043】
なお、引き出し電極61,62,63には、引き出し電極60と同様に、加速電極、減速電極、接地電極の3枚の電極を備え、各電極は支柱64により支持されている。
そして、引き出し電極60,61,62,63にはイオンビームが直進して通過する引き出し穴65,66,67,68がそれぞれ設けられている。
それぞれの引き出し穴65,66,67,68は異なる穴径または異なる配置で形成され、引き出し電極の面積に対して引き出し穴の開口された面積の占める割合である開口率が異なるように構成されている。
本実施形態では、引き出し電極における開口率は、引き出し電極60が一番大きく、引き出し電極61、引き出し電極62、引き出し電極63の順に開口率は小さくなるように設定されている。
【0044】
また、回転テーブル70は基台72に固定され、基台72はシリンダー71と接続されている。シリンダー71はX軸方向に往復運動が可能であり、シリンダー71の作動により回転テーブル70および引き出し電極60,61,62,63をX軸方向に移動させることができる。
なお、引き出し電極60,61,62,63が処理室40内で移動できる構造であれば、回転テーブル70の一部やシリンダー71は処理室40の外に配置してもよい。
【0045】
また、アークチャンバー50の開口部55に配置される引き出し電極60のY軸方向には各電極60a,60b,60cと接触可能なプローブ35a,35b,35cが配置されている。
プローブ35a,35b,35cは絶縁材料で形成されたプローブ取り付け板36に固定され、プローブ取り付け板36はシリンダー37に接続されている。シリンダー37は、Y軸方向に往復運動が可能であり、シリンダー37の作動によりプローブ35a,35b,35cをY軸方向に移動させることができる。
【0046】
プローブ35aには加速電源が接続され、プローブ35bには減速電源が接続される。
加速電源からは500Vから2000Vの間の電圧が供給され、プローブ35aを介して加速電極60aに印加される。
減速電源からは−100Vから−500Vの間の電圧が供給され、プローブ35bを介して減速電極60bに印加される。
プローブ35cは接地、または接地に対して−100V未満の電圧が印加され、プローブ35cを介して接地電極60cに接続される。
これらの加速電極60aおよび減速電極60bに印加する電圧を調整することによって、引き出し電極60から引き出されるイオンビームのエネルギーを調整することができる。
なお、引き出し電極60として、接地電極60cを設けなくても、イオンビームの引き出しは可能である。また、引き出し電極と接触するプローブ35a,35b,35cに変えて板バネを用いても良い。
【0047】
処理室40には、排気装置(図示せず)が接続され、処理室40およびそれに連結されるアークチャンバー50を減圧状態に保つことが可能である。
そして、処理室40には被加工物の基板などの被加工物45を保持する基板ホルダー41が設置されている。基板ホルダー41は円板状に形成され、基板ホルダー41の中心部に軸が設けられて軸を中心に回転可能に形成されている。また、基板ホルダー41は、被処理物の材質により、最適なミリリング加工速度にするためにイオンビームの照射方向(X軸方向)に対して傾いて配置されている。
【0048】
さらに、引き出し電極60と基板ホルダー41との間に、シャッター(図示せず)を設けても良い。
シャッターの開閉により、基板ホルダー41に保持された被加工物45に対してイオンビームの照射を制御することができる。
なお、処理室40はイオンビームの導入の安定性を確保するために電気的に接地された状態となっている。
【0049】
<イオンミリング装置の動作>
次に、上記のイオンミリング装置2における動作について説明する。
排気装置により、処理室40、アークチャンバー50、が排気され、その後、一定流量の放電ガスがアークチャンバー50に供給される。フィラメント51のマイナス端子とアークチャンバー50のアノードとなる内壁との間の放電によって、プラズマが発生する。生成されたプラズマのイオンは、引き出し電極60により、アークチャンバー50から処理室40に引き出される。
処理室40に導入されたイオンビームは、回転する基板ホルダー41に保持された被加工物45に照射してイオンミリング加工が行われ、所定時間の経過後、プラズマの発生を停止して加工が終了する。
【0050】
続いて、シリンダー37が作動してプローブ35a,35b,35cをY軸方向に引き上げ、引き出し電極60との接触を解除する。
次に、シリンダー71が作動して、引き出し電極60とアークチャンバー50の開口部55との間に隙間があく位置までX軸方向に移動する。
そして、回転テーブル70が回転し、引き出し電極61がアークチャンバー50の開口部55と並ぶ位置に停止する。
次に、シリンダー71が作動してアークチャンバー50の開口部55と引き出し電極61とが接触する位置に位置決めされる。
続いて、シリンダー37が作動してプローブ35a,35b,35cがY軸方向に引き下げられ、引き出し電極61と接触する。
【0051】
この状態で、再度アークチャンバー50でプラズマを生成して、引き出し電極61を用いて被加工物45のイオンミリング加工が行われる。所定の加工が終了すると、次に引き出し電極62が選択されて同様の動作が行われ、引き出し電極62によるイオンミリング加工が行われる。そして、最後に引き出し電極63が選択されてイオンミリング加工が行われる。
このように、イオンミリング装置2では引き出し穴の開口率の異なる引き出し電極を切り替えて利用することで、連続して被加工物45をイオンミリング加工することができる。
【0052】
本実施形態の例では、引き出し穴の開口率の大きい引き出し電極60を用いて被加工物45を粗加工を行い、次に引き出し穴の開口率が中間の引き出し電極61および引き出し電極62を用いて被加工物45を中間加工する。そして最後に引き出し穴の開口率の小さい引き出し電極63を用いて仕上げ加工を行う。
このように、1台のイオンミリング装置2で効率的に被加工物45のイオンミリング加工を行うことができる。
【0053】
なお、上記イオンミリングの加工例では、設置された4つの引き出し電極をそれぞれ用いたが、この4つの引き出し電極のすべてを用いて加工する必要はなく、要求される加工に対して任意の引き出し電極を選択して利用すればよい。
また、本実施形態では回転テーブルに4つの引き出し電極を配置したが、さらに多数の引き出し電極を配置してもよい。
さらに、本実施形態ではプラズマ生成手段はフィラメント51を用い直流放電を利用したイオン源であるが、第1実施形態で説明したプラズマ生成手段が高周波放電を利用した高周波イオン源であってもよい。同様に、第1実施形態のプラズマ生成手段はフィラメント51を用い直流放電を利用したイオン源でもよい。
【0054】
このように、回転テーブル70により引き出し電極を容易に切り替えることができ、効率的にイオンミリング装置2を稼動することができる。
そして、開口率の異なる引き出し電極60,61,62,63を有することから、開口率の異なる引き出し電極を切り替えてイオンミリング加工を行うことで、1台のイオンミリング装置2を用い、連続して数種類のイオンミリング加工をすることが可能となる。
【0055】
なお、第1、第2実施形態ではイオンミリング加工を行う実施形態を説明したが、このイオンミリング装置1,2を用いて基板表面の親水処理や撥水処理などの表面処理を行うことも可能である。このことから、イオンミリング加工と表面処理とを組み合わせた一連のプロセスを本実施形態のイオンミリング装置1,2を用いて実施することもできる。
このように、第1、第2実施形態で説明したイオンミリング装置1,2は、具体的には基板をミリングして基板を平坦化する装置、表面処理装置、圧電素子の周波数調整装置などとして利用することができる。
【0056】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,2…イオンミリング装置、10…プラズマ生成室、11…高周波プラズマ室、12…石英円筒管、13…高周波コイル、14…プラズマ拡張室、15a,15b…永久磁石、16…高周波電源、17…ガス導入口、18…プラズマ生成室の開口部、20…引き出し電極、20a…加速電極、20b…減速電極、20c…接地電極、21…引き出し電極、22…引き出し電極、23…支柱、24,25,26…引き出し穴、30…スライドテーブル、31…シリンダー、32…基台、34a,34b,34c…電極取り付け板、35a,35b,35c…プローブ、36…プローブ取り付け板、37…シリンダー、40…処理室、41…基板ホルダー、45…被加工物、50…プラズマ生成室としてのアークチャンバー、51…フィラメント、52a,52b…永久磁石、55…開口部、56…ガス導入口、60…引き出し電極、60a…加速電極、60b…減速電極、60c…接地電極、61…引き出し電極、62…引き出し電極、63…引き出し電極、64…支柱、65,66,67,68…引き出し穴、70…回転機構としての回転テーブル、71…シリンダー、72…基台、73…回転軸、74…テーブル部、75a,75b,75c,75d…電極取り付け板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを生成するプラズマ生成手段を有するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室に連通する処理室と、
前記プラズマ生成室から前記処理室へイオンビームを引き出す複数の引き出し電極と、
前記複数の引き出し電極から選択された一つの引き出し電極を前記プラズマ生成室の開口部に移動させる引き出し電極移動手段と、
を備えたことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイオンミリング装置において、
前記複数の引き出し電極はイオンビームを引き出す引き出し穴が開口され、
前記複数の引き出し電極のなかに、前記引き出し穴の開口率が異なる前記引き出し電極を有することを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイオンミリング装置において、
前記引き出し電極移動手段はスライド機構を有し、
前記スライド機構のスライド動作に連動して前記複数の引き出し電極が移動する
ことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のイオンミリング装置において、
前記引き出し電極移動手段は回転機構を有し、
前記回転機構の回転動作に連動して前記複数の引き出し電極が移動する
ことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のイオンミリング装置において、
前記プラズマ生成手段として高周波放電を利用した高周波イオン源を有する
ことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のイオンミリング装置において、
前記プラズマ生成手段としてフィラメントを用い直流放電を利用したイオン源を有する
ことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項1】
プラズマを生成するプラズマ生成手段を有するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室に連通する処理室と、
前記プラズマ生成室から前記処理室へイオンビームを引き出す複数の引き出し電極と、
前記複数の引き出し電極から選択された一つの引き出し電極を前記プラズマ生成室の開口部に移動させる引き出し電極移動手段と、
を備えたことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイオンミリング装置において、
前記複数の引き出し電極はイオンビームを引き出す引き出し穴が開口され、
前記複数の引き出し電極のなかに、前記引き出し穴の開口率が異なる前記引き出し電極を有することを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイオンミリング装置において、
前記引き出し電極移動手段はスライド機構を有し、
前記スライド機構のスライド動作に連動して前記複数の引き出し電極が移動する
ことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のイオンミリング装置において、
前記引き出し電極移動手段は回転機構を有し、
前記回転機構の回転動作に連動して前記複数の引き出し電極が移動する
ことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のイオンミリング装置において、
前記プラズマ生成手段として高周波放電を利用した高周波イオン源を有する
ことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のイオンミリング装置において、
前記プラズマ生成手段としてフィラメントを用い直流放電を利用したイオン源を有する
ことを特徴とするイオンミリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−114895(P2013−114895A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259920(P2011−259920)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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