説明

イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むポリマーコーティング

本発明は、ポリマー基材と、前記ポリマー基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むコーティングと、を含む物品、a)イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体と対イオン剤又はその前駆体の混合物を用意する工程と、b)前記工程a)で調製した前記混合物を基材に塗布する工程と、を含む、ポリマー基材をコーティングする方法、前記物品の、衣類、フィルターエレメント、通気エレメント又は保護筺体の製造における使用、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤とを含む錯体組成物の、ポリマー基材をコーティングするための使用並びにイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤とを含む錯体組成物の、基材の抗菌性又は抗真菌性コーティングとしての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、前記基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤を含むコーティングと、を含む物品に関する。また、本発明は、上記コーティングの製造方法並びにイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤の混合物のコーティングの製造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、様々な技術分野において、衣類、フィルター、膜等の広範な用途に使用されている。そのため、ポリマーに固有ではない特性がますます求められており、そのような特性は、特にポリマーの表面を機能化することによってのみ得ることができる。
【0003】
例えば、ポリマーの表面は、機能化剤の(通常は薄い)層でコーティングすることによって機能化することができる。それにより、防水性、耐薬品性、難燃性等の特性をポリマーに付与することができる。しかしながら、これまでに提案されているコンセプト及びコーティングの多くは特定の特性の向上に着目しており、様々な所望の特性を基材に付与し、それらを微調整並びにバランスさせることはできない。
【0004】
例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)基材の外表面にポリエステル又はポリウレタンコーティングを層状に設けることにより、サンローション、汗、体脂肪、化粧料等に含まれる薬品に対する耐性を向上させることができる(米国特許第4,194,041号及び米国特許第6,074,738号)。しかしながら、これらのコーティングは、難燃性、親水性等のその他の重要な特性を最適化するために通常は使用することができない。また、非イオン性パーフルオロポリエーテル(non−ionic perfluoropolyether)からなるコーティングが微孔性ポリマー基材の撥油性を調節するために使用されている(欧州特許第615 779号)。
【0005】
コーティング剤には、基材を恒久的に機能化するために基材に対する良好な密着性を有し、ポリマーの所望の特性に全く又はほとんど悪影響を与えないことが求められる。例えば、濾過に使用される微孔性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜の場合には、コーティングは容易に洗い流されてはならないと共に細孔内の流体の流れを損なってはならない。
【0006】
また、多くの基材(特にフッ素化ポリマー基材)は不活性であると共に低い表面エネルギーを有するため、イオン性荷電種によってそれらの基材(微孔性ePTFE等)の表面をコーティングすることは非常に困難である。それらの基材はイオン又は荷電種に対する密着性が不十分なため、多くの工業的用途において問題が生じる。すなわち、エッチング、放射線照射、レーザー処理、プラズマ活性化及び/又は超臨界CO前処理等の化学表面処理を行わない場合には、それらの基材を直接かつ恒久的に導電性ポリマー、金属イオン、有機イオン、荷電粒子、塩等のポリイオンによってコーティングすることはできない。しかしながら、特にこれらの化合物は、基材にコーティングした場合に特別な特性を付与すると予想される。
【0007】
また、エッチング、プラズマ又はコロナ処理、X線照射等の表面変性処理は、密着性を向上させるために開発され、基材にダメージを与え、表面を脱フッ素化すると共にフッ素ポリマー基材の機械的強度を低下させる。基材が薄い場合には、基材の機械的強度は、基材が表面変性条件に耐えることができない程度に低い場合がある。
【0008】
米国特許第6,638,622号、米国特許第6,940,692号及び米国特許第6,916,955号は、カルボン酸基を含むパーフルオロポリエーテルのナトリウム塩の合成方法並びに磁気記録ディスク及び磁気録音ヘッドを腐食から保護するコーティングとしてのこれらの塩の使用を開示している。これらのコーティングは、特に、高い表面エネルギーを有する金属及び金属酸化物の表面に対する非常に良好な密着性を付与するように設計されている。コーティングは10nmの最大厚みを有し、緻密なPTFE被覆表面と同様に高い撥水性を表面に付与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ポリマー基材と、様々な特性を基材に付与すると共にそれらの特性の調節を可能とするコーティングと、を含む物品を提供することにある。コーティングは、基材に対する良好な密着性を有し、容易に調製・塗布することができ、基材上に均等かつ均一に設けることができなければならない。
また、本発明の別の目的は、通常はイオン又は荷電種によってコーティングすることが困難な基材に設けられる、イオン又は荷電種を含むコーティングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
予期せぬことに、本願発明者らは、上記目的は、イオン性フルオロポリエーテル(イオン性基を含むフルオロポリエーテル)と、フルオロポリエーテルのイオン性基と反対のイオン電荷を有する対イオン剤(counter ionic agent)と、を錯体として含む組成物によってポリマー基材をコーティングすることによって達成できることを見出した。
【0011】
従って、本発明は、ポリマー基材と、前記ポリマー基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むコーティングと、を含む物品を提供する。
【0012】
イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤という2種類の成分を含む本発明のコーティングは、優れた成膜性と、主としてコーティング内の錯体化イオン性フルオロポリエーテルの特性に基づく、ポリマー基材に対するコーティングの密着性を付与する。一方、錯体形成に様々な種類の対イオン剤を使用することができ、フルオロポリエーテルのイオン性基に対する対イオン剤の割合を変化させることができるため、基材の様々な特性を向上・調節することができる。いずれの場合にも、基材とコーティングに含まれる錯体の相互作用による相乗効果によって本発明の物品をユニークなものとすることができる。
【0013】
本発明に係る物品により、改善された特性を提供することができる。予期せぬことに、本発明を適用することにより、基材の様々な特性を改良し、調整することができることが判明した。
【0014】
改良及び微調整することができるポリマー基材の特性の例としては、耐熱性及び耐火性、帯電防止性、親水性、疎水性、撥油性、抗細菌性が挙げられる。
【0015】
延伸PTFE(ePTFE)等の(微)多孔性ポリマー基材を使用する場合には、通気特性(flow properties)を調整し、油等級(oil rating)と水等の電解質による濡れ性の良好なバランスを得ることができる。
【0016】
また、(微)多孔質基材の細孔内表面のコーティングの場合には、本発明のコーティングは、細孔が閉塞しないように滑らかかつ均等に形成することが有利である。この利点は、基材の特性を変更するために小粒子を使用する従来技術のコンセプトと比較して特に重要である。本発明の利点は、多孔性材料における空気及び液体の高い通過流量によって示される。モノリシックコーティング(基材の外表面に複数の層を形成)の場合には、粒子を使用しないことによって非常に薄いコーティングを形成することができる。
【0017】
また、対イオン剤とイオン性フルオロポリエーテルの組み合わせ並びにこれらの成分による錯体形成により、フッ素ポリマーの表面に不溶性かつ耐久性の高いコーティングを特に薄層として形成することができる。すなわち、本発明により、長期間にわたってフッ素ポリマーの表面にイオン種を結合させることができる。
【0018】
コーティングを形成する前に基材の前処理を行う必要がないため、本発明により、基材を劣化させることなく、基材を機能化することができる。従って、機械的特性を損なうことなく、非常に薄い膜にさらなる機能性を与えることができる。
【0019】
また、本発明の物品には、高い水蒸気透過率(MVTR)、水不透過性、優れた耐薬品性、優れたUV劣化耐性及び機械的安定性を付与することができる。また、物品は、透過性及びMVTR値の改良されたバランスを有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1a】ポリマー多孔性基材(20)と、ポリマー多孔性基材(20)上に形成されたモノリシックコーティング(30)と、を有する物品(10)の概略断面図である。
【図1b】ポリマー多孔性基材(20)と、ポリマー多孔性基材(20)上に形成され、細孔の内表面及び外表面に存在するコーティング(30)(「内部コーティング」)と、を有する物品(10)の概略断面図である。
【図2】実施例1のコーティング前のePTFE膜のSEM画像である(倍率:3500)。
【図3】実施例1のコーティングされたePTFE膜のSEM画像である(倍率:3500)。
【図4】緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に24時間接触させた後の、実施例1のコーティングされたePTFE膜のSEM画像である(倍率:5000)。
【図5】黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に24時間接触させた後の、実施例1のコーティングされたePTFE膜のSEM画像である(倍率:5000)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
本発明に係る物品は、衣類(保護、着心地及び機能性を付与)、織物構造、積層体、フィルターエレメント(液体及び/又は気体の濾過又は精密濾過等)、通気エレメント(容器の通気等)、センサー、診断装置、保護筺体及び分離エレメントに使用することができる。
【0023】
本発明の物品に使用されるポリマー基材は、合成ポリマー、天然ポリマー、及び/又は合成及び/又は天然ポリマーの複合体等の任意のポリマーであることができる。
【0024】
基材は、膜、織物又は積層体であってもよい。基材は、織布、不織布、フェルト又は編物であってもよい。また、基材は、マイクロデニール繊維及び紡績糸を含む、単繊維、多繊維又は紡績糸等の繊維であってもよい。
【0025】
ポリマー基材は、例えば金属又は金属酸化物と比較して低い表面エネルギーを有することが知られている。一実施形態では、本発明の物品のポリマー基材は、100mN/m以下の表面エネルギーを有し、別の実施形態では、40mN/m以下の表面エネルギーを有する。
【0026】
一実施形態では、コーティングが形成された基材は、1〜1000μmの厚みを有し、別の実施形態では、3〜500μmの厚みを有し、さらに別の実施形態では、5〜100μmの厚みを有する。同一又は異なる材料からなる層を、コーティングされた基材に積層することができる。
【0027】
一実施形態では、基材はフッ素ポリマー(フッ素原子を含むポリマー)であり、別の実施形態では、基材はフルオロポリオレフィンである。
【0028】
基材は充填剤を含むことができる。
【0029】
フッ素ポリマーは、部分フッ素化又は完全フッ素化(過フッ素化(perfluorinated))されていてもよい。
【0030】
一実施形態では、基材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性PTFE、熱可塑性フルオロポリマー(fluorothermoplastic)又はフルオロエラストマー又はこれらの材料の組み合わせを含む(又はからなる)。本願明細書において使用する「変性PTFE」という用語は、テトラフルオロエチレンモノマー単位に加えて、過フッ素化、フッ素化又は非フッ素化コモノマー単位が存在するテトラフルオロエチレンコポリマーを意味する。
【0031】
第2の実施形態では、基材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性PTFE、熱可塑性フルオロポリマー(fluorothermoplastic)又はフルオロエラストマー又はこれらの材料の組み合わせからなる。
【0032】
別の実施形態では、基材はPTFEを含み、さらに別の実施形態では、基材はPTFEからなる。
【0033】
また、基材は、多孔性PTFE等の多孔性基材であってもよい。
【0034】
本願明細書において使用する「多孔性」という用語は、1つの表面から他方の表面に相互接続された連続的な空気の流路(経路)を形成する空隙部を内部構造中に有する材料を意味する。
【0035】
基材は、微孔性基材であってもよい。微孔性基材とは、基材の空隙部が非常に小さく、通常は「微視的」と呼ばれる空隙部である基材を意味する。
【0036】
平均細孔径測定によって測定した微孔性基材の空隙部の好適な細孔径は0.01〜15μmの範囲である。
【0037】
一実施形態では、基材は、延伸PTFE(ePTFE又はEPTFE)を含む。
【0038】
別の実施形態では、基材は延伸PTFEからなる。
【0039】
PTFEは、1以上の方向に延伸させてフッ素ポリマーを多孔性にすることができる。多孔性フッ素ポリマーは、テープ、チューブ、繊維、シート又は膜状であることができる。多孔性フッ素ポリマーの微細構造は、ノード(node)及びフィブリル(fibril)、フィブリルのみ、フィブリルのストランド(strand)又は束のみ、又はフィブリルによって相互接続された延伸ノードを含むことができる。
【0040】
好適なフッ素ポリマー膜としては、一軸又は二軸延伸ポリテトラフルオロエチレン膜が挙げられる。
【0041】
好適な延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)材料は、例えば、Bowman(米国特許第4,598,011号)、Branca(国際公開第96/07529号)、Bacino(米国特許第5,476,589号)、Gore(米国特許第4,194,041号)、Gore(米国特許第3,953,566号)に開示されている不織ePTFEフィルムである。これらの文献の開示内容は、この参照によって本願に援用する。これらの文献に開示されているePTFEフィルムは、薄く、強く、化学的に不活性であり、空気又は液体の高い通過流量を有することができる。
【0042】
ePTFEフィルムを製造するために好適なフッ素ポリマーとしては、PTFE並びにテトラフルオロエチレンとFEP、PFA、THV等のコポリマーが挙げられる。
【0043】
膜内の流量は、平均細孔径と厚みの組み合わせによって決まる。精密濾過用途では、良好な粒子保持性能を有するかなりの流量が必要である。ePTFE細孔径が小さい(狭い)場合には、高い水注入圧力が必要となる。ePTFE細孔径が大きくなると、ePTFE膜の水に対する抵抗性が減少する。これらの実際的な理由から、ePTFEの平均細孔径は0.3μm未満がよいと考えられる。
【0044】
「イオン性フルオロポリエーテル」とは、酸素原子によって結合した部分フッ素化又は過フッ素化オレフィンモノマー単位及びイオン性基(電荷を有する基)を有する単位からなるポリマーを意味する。イオン性フルオロポリエーテル分子には、同一又は異なる性質の1以上のイオン性基が存在していてもよい。
【0045】
イオン性フルオロポリエーテルは、通常は熱的に安定であり、水及び最も一般的な溶媒に実質的に不溶であり、コーティング後に溶け出ることがない。
【0046】
また、必要に応じて、多くの装置及び繊維に潤滑性コーティングを設けることもできる。潤滑性コーティングは、粘度と親水性を調節したイオン性フルオロポリエーテル錯体を使用して得ることができる。
【0047】
例えば、フルオロポリエーテルオレフィンモノマー単位は、−O−(CF−CF)−及び/又は−O−(CFH−CF)−及び/又は−O−(CH−CF)−及び/又は−O−(CH−CHF)−及び/又は−O−(CF(CH)−CF)−及び/又は−O−(C(CH−CF)−及び/又は−O−(CH−CH(CH))−及び/又は−O−(CF(CF)−CF)−及び/又は−O−(C(CF−CF)−及び/又は−O−(CF−CH(CF))−を含むことができる。
【0048】
イオン性基は、アニオン性基(−SO、−COO、−OPO2−等)及び/又はアニオン性基とカチオン性基の組み合わせ(例えば、−SO、−COO又は−OPO2−と−NH、−NR又は−NR)であってもよい。
【0049】
一実施形態では、イオン性基はアニオン性基であり、別の実施形態では、イオン性基は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン基及びそれらの組み合わせから選択される。
【0050】
イオン性フルオロポリエーテルの前駆体は、簡単な化学反応によってイオン基を有するフルオロポリエーテルに転化させることができる化合物である。例えば、イオン性基として−CO基を含むイオン性フルオロポリエーテルの前駆体は、非イオン性の−COH基を有する化合物であってもよく、対イオン剤又はその前駆体との反応(例えば、酢酸マグネシウムと反応させ、加熱して酢酸を蒸発させる)によって対応するアニオン性−CO基に転化させることができる。
【0051】
イオン性フルオロポリエーテルでは、フッ素原子はポリマー主鎖又は側鎖(分岐)中で炭素原子に共有結合している。「ポリマー」という用語は、コポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー及び交互コポリマー)、ターポリマー、それらの誘導体並びにそれらの組み合わせ及び混ぜ合わせたもの(blend)ブレンドを含む。また、特記しない限り、「ポリマー」という用語は、直鎖状構造、ブロック構造、グラフト構造、ランダム構造、交互構造及び分岐状構造並びにそれらの組み合わせを含む分子のあらゆる幾何学的形態を含む。
【0052】
一実施形態では、基材、特にPTFE等のフッ素化ポリマー基材との適合性を向上させるために、イオン性フルオロポリエーテルは、非炭素原子に対して高いフッ素含有量(例えば、>50atom%)を有する。
【0053】
基材、特にフッ素化ポリマーとの適合性をさらに向上させ、水溶性を低レベルに保つために、イオン性フルオロポリエーテルのフッ素/水素比(F/H比)は1よりも大きくすることができ、別の実施形態では2よりも大きく、さらに別の実施形態では3よりも大きい。この場合、コーティングの耐久性も向上する。
【0054】
F/H比は、例えば、湿潤又は高湿条件における膨潤度を決定する。F/H比が小さくなると、湿潤条件下における膨潤度が高くなる。
【0055】
特にPTFE又はePTFE基材等のフッ素化基材と共に使用する場合には、イオン性フルオロポリエーテルは過フッ素化されていてもよい。
【0056】
通常、イオン性過フッ素化ポリエーテルは、−CF−O−、−(CFCF)−O−、−(CF(CF))−O−、−(CFCFCF)−O−、−(CFCF(CF))−O−、−(CF(CF)CF)−O−及びそれらの組み合わせから選択されるオレフィンモノマー単位を含む。新しいタイプの過フッ素化ポリエーテルは、他の繰り返し単位(例えば、(C(CF)−O−)又は3つ以上の炭素原子を含む単位(例えば、−(C)−O又は−(C12)−O−)も含む場合がある。
【0057】
一実施形態では、イオン性フルオロポリエーテルは、イオン性パーフルオロポリアルキルエーテル(1以上のイオン性基を分子内に有するパーフルオロポリアルキルエーテル(perfluoropolyalkylether))からなる群から選択される。通常、パーフルオロポリアルキルエーテルは「PFPE」と省略されている。よく使用される他の同義語として、「PFPE油」、「PFPE流体」及び「PFPAE」がある。
【0058】
PFPEは、中性の非イオン性基(特に非イオン性末端基)のみを有することが知られている。
【0059】
過フッ素化ポリエーテルの概説は、「Modern Fluoropolymers」,edited by John Scheirs,Wiley Series in Polymer Science,John Wiley & Sons(Chichester,New York,Wienheim,Brisbane,Singapore,Toronto),1997,Chapter 24:Perfluoropolyethers(Synthesis,Characterization and Applications)に記載されている。上記文献の開示内容は、この参照によって本願に援用する。
【0060】
しかしながら、本発明に使用するイオン性PFPE等のイオン性フルオロポリエーテルは、イオン性基を含む点においてそのような中性PFPEとは異なる。
【0061】
通常、イオン性フルオロポリエーテル分子は、イオン性フルオロポリエーテル構造の骨格の両端に2つの末端基を含む。
【0062】
通常、イオン性フルオロポリエーテル分子に存在するイオン性基は、これらの末端基を構成するか、これらの末端基に結合している。
【0063】
イオン性フルオロポリエーテルは、末端基反応によって非イオン性フルオロポリエーテルを変性することによって得ることができる。そのような化合物は、例えば、Fluorolink(登録商標)(Solvay Solexis社)として市販されている。
【0064】
イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体の実施形態を以下に記載する。
【0065】
(a)以下の基から選択される末端基を含むパーフルオロポリエーテル(PFPE):
−(O)−(CR−X
式中、
=H、F、Cl、Br又はI;
=H、F、Cl、Br又はI;
X=COOH、SOOH又はOPO(OH)
n=0又は1;
m=0〜10。
【0066】
ただし、末端基に隣接して以下の基が存在していてもよい。
−CFH−
−(CH−(n=1〜10)
−(OCH−(n=1〜10)
−(OCHCH−(n=1〜10)
イオン性フルオロポリエーテルが非イオン性末端基を含む場合、非イオン性末端基は通常は−OCF、−OC、−OC等の基である。
【0067】
ただし、非イオン性末端基は、以下の基から選択されてもよい。
−(O)−(CR−CR
式中、
=H、F、Cl、Br又はI;
=H、F、Cl、Br又はI;
=H、F、Cl、Br又はI;
=H、F、Cl、Br又はI;
=H、F、Cl、Br、I、アルキル又はアリール;
n=0又は1;
m=0〜10。
【0068】
また、H、Cl、Br又はIラジカルを含む基等の非過フッ素化末端基が存在していてもよい。
【0069】
非過フッ素化末端基の例としては、以下の構造が挙げられる。
−CF(R=H、Cl、Br又はI)
−CFR−CF(R=H、Cl、Br又はI)
−(O)−(CR−CRで表される末端基は、以下の基の組み合わせから選択されてもよい。
−OCF;−OC;−OC;−OC;−OC11;−OC13;−OC15;−OC17;−OC19;−OC1021
−OCFH;−OCH;−OCH;−OCH;−OC10H;−OC12H;−OC14H;−OC16H;−OC18H;−OC1020H;
−OCFCl;−OCCl;−OCCl;−OCCl;−OC10Cl;−OC12Cl;−OC14Cl;−OC16Cl;−OC18Cl;−OC1020Cl;
−OCFBr;−OCBr;−OCBr;−OCBr;−OC10Br;−OC12Br;−OC14Br;−OC16Br;−OC18Br;−OC1020Br;
−OCFI;−OCI;−OCI;−OCI;−OC10I;−OC12I;−OC14I;−OC16I;−OC18I;−OC1020I;
−OCF;−OC;−OC;−OC;−OC;−OC11;−OC13;−OC15;−OC17;−OC1019
−OCFCl;−OCCl;−OCCl;−OCCl;−OCCl;−OC11Cl;−OC13Cl;−OC15Cl;−OC17Cl;−OC1019Cl
−OCFBr;−OCBr;−OCBr;−OCBr;−OCBr;−OC11Br;−OC13Br;−OC15Br;−OC17Br;−OC1019Br
−OCF;−OC;−OC;−OC;−OC;−OC11;−OC13;−OC15;−OC17;−OC1019
−CF;−C;−C;−C;−C11;−C13;−C15;−C17;−C19;−C1021
−CFH;−CH;−CH;−CH;−C10H;−C12H;−C14H;−C16H;−C18H;−C1020H;
−CFCl;−CCl;−CCl;−CCl;−C10Cl;−C12Cl;−C14Cl;−C16Cl;−C18Cl;−C1020Cl;
−CFBr;−CBr;−CBr;−CBr;−C10Br;−C12Br;−C14Br;−C16Br;−C18Br;−C1020Br;
−CFI;−CI;−CI;−CI;−C10I;−C12I;−C14I;−C16I;−C18I;−C1020I;
−CF;−C;−C;−C;−C;−C11;−C13;−C15;−C17;−C1019
−CFCl;−CCl;−CCl;−CCl;−CCl;−C11Cl;−C13Cl;−C15Cl;−C17Cl;−C1019Cl
−CFBr;−CBr;−CBr;−CBr;−CBr;−C11Br;−C13Br;−C15Br;−C17Br;−C1019Br
−CF;−C;−C;−C;−C;−C11;−C13;−C15;−C17;−C1019
【0070】
本発明に好適なイオン性フルオロポリエーテルの市販品としては、例えば、Fomblin(登録商標)(Solvay Solexis社)、Fluorolink(登録商標)(Solvay Solexis社)、Krytox(登録商標)(DuPont社)、Demnum(登録商標)(ダイキン工業株式会社)が挙げられる。これらの化合物は、実質的に純粋な形態で入手することができ、水の中でマイクロエマルションとして供給されている場合もある(例えば、Fomblin(登録商標)FE 20C又はFomblin(登録商標)FE 20 EG)。
【0071】
市販されている好適なイオン性フルオロポリエーテル構造を以下に記載する。
Fluorolink(登録商標)C及びFluorolink(登録商標)C 10:
HOOC−CF−(OCFCF−(OCF−O−CF−COOH(式中、m+n=8〜45、m/n=20〜1000)
Fluorolink(登録商標)F 10:
PO(OH)3−y(EtO)−CH−CF−(OCFCF−(OCF−O−CF−CH(EtO)PO(OH)3−y(式中、m+n=8〜45、m/n=20〜1000)
Krytox(登録商標)157 FSL:
F−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−COOH(式中、n=〜14(M=2500)
Krytox(登録商標)157 FSM(M=3500〜4000)及びKrytox(登録商標)157 FSH(M=7000〜7500)を含む。
Demnum(登録商標)SH:
CF−CF−CF−O−(CF−CF−CFO)−CF−CFCOOH(分子量:3500)
イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体を含む成分は、60℃において約5mPas〜約1,000,000mPas、約10mPas〜約500,000mPas又は好ましくは約30mPas〜約50,000mPasの粘度を有する粘性の液体であってもよい。
【0072】
イオン性フッ素ポリマーは、非水溶性であってもよい。
【0073】
イオン性フルオロポリエーテルの当量は、イオン性フルオロポリエーテルの分子量を、イオン性フルオロポリエーテル中に存在するイオン性基の数で割った値と定義される。
【0074】
一実施形態では、イオン性フルオロポリエーテルの当量は400〜15,000mol/gであり、別の実施形態では、500〜10,000mol/gであり、さらに別の実施形態では、700〜8,000mol/gである。
【0075】
イオン性フルオロポリエーテルの当量が低過ぎると、水溶性が高くなり過ぎる場合がある。イオン性フルオロポリエーテルの当量が高過ぎると、加工性が悪化する場合がある。
【0076】
「対イオン剤」という用語は、H及びNa以外のフルオロポリエーテルのイオン性基の電荷とは反対のイオン電荷を有する化合物を意味する。
【0077】
対イオン剤とイオン性フルオロポリエーテルを混合すると、以下に詳述するように、フルオロポリエーテルのイオン性基の電荷が対イオン剤の電荷によって少なくとも部分的に平衡を保たれた錯体が形成される。そのような錯体(イオン性フルオロポリエーテルの電荷が対イオン剤によって平衡を保たれた錯体)は、通常は、コーティング全体に及ぶイオン性フルオロポリエーテル分子と対イオン剤種のネットワークであり、コーティングは架橋されているとみなすことができる。
【0078】
ただし、Hの場合には、そのような錯体形成は不可能又は十分ではない。有機カルボン酸は、水素結合した二量体として主に存在することが知られている。同様に、Naの場合には、錯体形成度は不十分であり、ポリマー基材上のコーティングの安定性と耐久性に問題が生じる場合がある。
【0079】
金属又は金属酸化物基材の場合には、Na対イオンによって、パーフルオロポリエーテル部位が外側に自由に延び、Na末端が表面に存在する疎水性の高い表面となる(米国特許第6,638,622号)。この挙動は金属又は金属酸化物表面において安定であり、Naと会合する可能性が高い。しかし、ポリマー基材の場合には、Na末端が露出し、限られた錯体形成は本発明に適していない。
【0080】
対イオン剤は、一価、二価、三価、四価又は多価金属イオン等の金属イオンであってもよく、アンモニウムイオン、有機ポリカチオン又はポリマーイオン(導電性ポリマー等)を含む荷電有機種等の1以上の電荷を有する非金属イオンであってもよく、これらのイオンの2種以上の混合物であってもよい。対イオン剤は、双性イオン性化合物(負電荷及び正電荷を有する化合物)であってもよい。
【0081】
対イオン剤は、有機イオン又は非アルカリ金属イオンの群から選択することができる。
【0082】
一実施形態では、対イオン剤は、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属イオン、ランタノイド金属カチオン等にみられる+1、+2、+3又は+4の電荷を有するNa以外の金属イオンを含む。
【0083】
この実施形態では、対イオン剤は、アルカリ土類金属カチオン、Al3+、遷移金属イオン及びランタノイド金属カチオンから選択される金属イオンを含む。
【0084】
好適な金属イオンの例としては、Ag、Cu、Cu2+、Ca2+、Mg2+、Al3+、Zn2+、Ce3+、Ce4+、Cr3+、Ni2+、Co2+が挙げられる。
【0085】
コーティングされた物品が抗菌性を有していることが望ましい場合には、対イオン剤は、抗菌活性を有するイオンを含むことができる。
【0086】
抗菌性物品の別の実施形態では、対イオン剤は、抗菌活性を有するイオンからなることができる。
【0087】
本願明細書において使用する「抗菌活性」という用語は、バクテリア、真菌類、ウイルス等の微生物を殺す活性を意味する。
【0088】
抗菌活性を有するイオンの例としては、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Cu、Sn、Bi、Znイオンや、荷電有機種、双性イオン性化合物、もしくは有機カチオン種等のポリカチオン(例えば、カチオン性高分子電解質、N−アルキル化四級アンモニウムカチオン及びその誘導体、N−アルキル化4−ビニルピリジン、四級化エチレンイミン、四級化アクリル酸誘導体のポリマー及びそれらのコポリマー等)が挙げられる。
【0089】
荷電有機種、双性イオン性化合物又はポリカチオンに好適なモノマーとしては、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリレート、メタクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピペリジン、4−ビニルピペリジン、ビニルアミン、ジアリルアミンの第四級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーが挙げられる。
【0090】
好ましいポリカチオンは、アルキル化ポリ(4−ビニルピリジン)等のポリ(4−ビニルピリジン)、ポリエチレンミン(PEI)、アルキル置換PEI、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)(PDADMA)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリビニルアミン並びにそれらのコポリマー及び混合物である。
【0091】
別の態様において、ポリカチオンは、少なくとも1つの第4級アミンイオンを含むことができる。
【0092】
対イオン剤としてのポリカチオンの使用は、膜、紙又は織物上のコーティングの抗菌性の向上、透過性を調整する分野並びに表面変性による活性種の結合に適している。
【0093】
一実施形態では、抗菌活性を有するイオンは、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Cu、Sn、Bi及び/又はZnイオンを含み、別の実施形態では、Ag、Cu及び/又はZnイオンを含み、さらに別の実施形態では、Agイオンを含む。
【0094】
抗菌活性を有するイオンがAgイオン(Ag)を含む(又はからなる)実施形態では、コーティングは、酢酸銀、炭酸銀、硝酸銀、乳酸銀、クエン酸銀、それらの酸化物、混合物あるいは誘導体をコーティングを形成するための混合物におけるAgの前駆体として使用して形成することができる。
【0095】
特定の用途においては、上述した抗菌活性を有するイオンの組み合わせ、例えば、銀と銅、銀と亜鉛、銀とカチオン性高分子電解質の組み合わせを使用することが有利な場合がある。
【0096】
抗菌活性を有するイオンがAg、Au、Pt、Pd、Ir、Cu、Sn、Bi及び/又はZnイオンを含む実施形態では、抗菌活性を有するイオンは、カチオン性高分子電解質、N−アルキル化四級アンモニウムカチオン及びその誘導体、N−アルキル化4−ビニルピリジン、四級化エチレンイミン、四級化アクリル酸誘導体のポリマー及びそれらのコポリマー等の荷電有機種、双性イオン性化合物、有機カチオン種等のポリカチオンをさらに含むことができる。
【0097】
機能性コーティングが水又は有機溶媒等の厳しい環境に耐えることが必要な場合には、対イオン剤は、多価金属イオンを含むことができる。すなわち、多価金属イオンは、特に安定していると予想される多次元イオン性ネットワークを形成するためである。
【0098】
本発明の物品の別の実施形態では、対イオン剤は、表面荷電ナノ粒子を含むか、表面荷電ナノ粒子からなる。
【0099】
さらに別の実施形態では、対イオン剤は表面荷電ナノ粒子からなる。
【0100】
表面荷電ナノ粒子の多重荷電により、イオン性フルオロポリエーテルとの複数の相互作用点を有する錯体が形成され、安定したコーティングが得られる。
【0101】
そのようなナノ粒子の例としては、コロイド有機塩、有機コロイドポリマー、ポリスチレンスルホン酸塩、染料、インク及び導電性ポリマー(IPC)のナノ粒子が挙げられる。
【0102】
荷電されていないナノ粒子には、カチオン性高分子電解質(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))等の高分子電解質をコーティングすることによって表面電荷を付与することができる。
【0103】
カルボン酸、硫酸塩、リン酸塩、シラン、ジオール、ポリオール等の有機化合物による処理によってナノ粒子が表面官能基を含む場合には、例えば、カチオン性高分子電解質を使用してナノ粒子をアニオン性荷電フッ素ポリマーに結合させることができる。
【0104】
通常、表面荷電ナノ粒子は、単一分子、コロイド、オリゴマー及び/又はポリマーの非水溶性有機分子である。
【0105】
一実施形態では、液体中に分散した表面荷電ナノ粒子の大きさは5〜500nmであり、別の実施形態では、10〜200nmであり、さらに別の実施形態では、20〜100nmである。
【0106】
水等の液体中に分散した表面荷電ナノ粒子の粒径は、レーザードップラー法によって測定することができる。例えば、Ormecon(商標)(ポリアニリン分散液)は、レーザードップラー法によって測定した10〜100nmの粒径を有する粒子として入手することができる。
【0107】
一実施形態では、表面荷電ナノ粒子は導電性ポリマーを含む。
【0108】
「導電性ポリマー(ICP)」という用語は、二重結合又は三重結合等の多重共役結合系及び電子供与体又は電子受容体ドーパントでドープされた芳香環を含み、4インラインプローブ法(four−inline probe method)による少なくとも約10−6S/cmの導電率を有する電荷移動錯体を形成する有機ポリマーを意味する。
【0109】
ドーパントは、ICPに対する電荷平衡化対イオンとして機能すると共にICPを水中に分散させる。
【0110】
通常、ドーパントは、単イオン、アニオン性界面活性剤、または、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸及びそれらの誘導体又はそれらの組み合わせを含むアニオン高分子電解質、等のアニオン性水溶性材料である。
【0111】
ICPの例としては、ポリアニリン、置換ポリアニリン、ポリピロール、置換ポリピロール、ポリアセチレン、置換ポリアセチレン、ポリチオフェン、置換ポリチオフェン、ポリパラフェニレン及び置換ポリ(パラ)パラフェニレン等のポリフェニレン、ポリアジン、置換ポリアジン、ポリパラフェニレンスルフィド、置換ポリパラフェニレンスルフィド、それらの混合物及び/又はコポリマーが挙げられる。
【0112】
市販の導電性ポリマーの例としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)(H.C.Starck社、Clevios(商標)P又はPH(以前の名称はBaytron(登録商標)、Baytron(登録商標)−P又は−PH))が挙げられる。また、ポリチエノチオフェン等の置換ポリチオフェン、ポリアニリン(Covion Organic Semiconductors社(フランクフルト)及びOrmecon(商標)(Ammersbek))、ポリピロール(Sigma Aldrich社(ミズーリ州セントルイス))、ポリアセチレン及びそれらの組み合わせも例として挙げられる。ドーピング系を含む、ポリアセチレン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(パラフェニレン)、ポリ(フェニレンスルフィド)も導電性ポリマーとして使用することができる。
【0113】
対イオン剤として導電性ポリマーを使用することにより、優れた通気性を有するコーティングが得られ、細孔の外側及び内側表面をコーティングしたり、非常に薄いコーティングを基材(特にフッ素ポリマー基材)に形成するために特に有利である。
【0114】
また、対イオン剤として導電性ポリマーを使用することにより、帯電防止性、難燃性及び通気性のバランスが優れたコーティングを製造することができる。
【0115】
また、導電性ポリマーを使用することにより、非常に優れた密着性を有する帯電防止コーティングを得ることができる。さらに、導電性ポリマーは撥油性コーティングに使用することができる。
【0116】
導電性ポリマーは、水系分散液又は有機組成物内に安定化させた小さなナノ粒子として利用することができる。
【0117】
一実施形態では、ナノ粒子である[ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)]導電性ポリマー(例えば、Clevios(商標)P又はPH(以前の名称はBaytron(登録商標)P又はPH)))の水系分散液を使用する。
【0118】
一実施形態では、膨潤状態にある分散ナノ粒子の大きさは5〜500nmであり、別の実施形態では、10〜200nmであり、さらに別の実施形態では、20〜100nmである。
【0119】
導電性ポリマーの分散ナノ粒子の粒径は、レーザードップラー法によって測定することができる。例えば、Ormecon(商標)(ポリアニリン分散液)は、レーザードップラー法によって測定した10〜50nmの粒径を有する粒子として入手することができる。
【0120】
一実施形態では、分散ナノ粒子の平均粒径は5〜500nmであり、別の実施形態では、10〜200nmであり、さらに別の実施形態では、20〜100nmである。
【0121】
導電性ポリマーの分散ナノ粒子の平均膨潤粒径は超遠心分離法によって測定することができる。例えば、Clevios(商標)P(以前の名称はBaytron(登録商標)P)の平均膨潤粒径は超遠心分離法によって測定されており、S.Kirchmeyer,K.Reuter,J.Mater.Chem.,2005,15,2077−2088に報告されている。
【0122】
最終的なコーティング内には、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤は錯体として存在する。
【0123】
一実施形態では、対イオン剤又はその前駆体の量は、対イオン剤の量が、最終的なコーティング内に存在するイオン性フルオロポリエーテルのイオン性基の量に対して、0.05〜1.0電荷当量(charge equivalent)、別の実施形態では0.1〜0.99電荷当量、別の実施形態では0.15〜0.95電荷当量、別の実施形態では0.2〜0.90電荷当量、さらに別の実施形態では0.5超〜0.90電荷当量となるように選択される。
【0124】
すなわち、これらの実施形態では、最終的なコーティング内のイオン性フルオロポリエーテルのイオン電荷のそれぞれ5〜100%、10〜99%、15〜95%、20〜90%又は50%超〜90%が、導電性ポリマーのイオン電荷によって均衡を保たれており、従って、これらの実施形態では、最終的なコーティング内のイオン性フルオロポリエーテルのそれぞれ5〜100%、10〜99%、15〜95%、20〜90%又は50%超〜90%が導電性ポリマーによって架橋されており、錯体として存在する。
【0125】
対イオン剤の量が少な過ぎると、コーティングの機能性(抗菌性、親水性、導電率又は色等)が比較的低くなる場合がある。対イオン剤の量が多過ぎると、対イオン剤が錯体形成に寄与することなくイオン性フルオロポリエーテルのポリマー鎖によって埋められ、コーティングが溶出性を示す場合がある。
【0126】
導電性ポリマーの量は、電荷平衡が5〜100%、10〜99%、15〜95%、20〜90%又は50%超〜90%となり、帯電防止性、難燃性、通気性、化学的耐性及び機械的特性を含む特性のバランスを有するコーティングを製造することができるように選択する。
【0127】
最終的なコーティング内のイオン性フルオロポリエーテルのイオン電荷の50%超が対イオン剤のイオン電荷によって均衡を保たれ、架橋されていれば、水の取込み及び膨潤を大幅に減少させることができる。
【0128】
例えば、最終的なコーティング内のイオン性フルオロポリエーテルのイオン電荷の50%超が二価金属対イオン剤のイオン電荷によって均衡を保たれ、錯体化されていれば、水濡れ性及び水の流れを大幅に増加させることができる。
【0129】
イオン性フッ素ポリマーと表面荷電ナノ粒子が錯体を形成するため、コーティングは、比較的高い導電率を有すると共に比較的低いプロトン導電性を有する。
【0130】
本発明の物品におけるコーティングは、外部コーティング(実質的に連続する層として存在するコーティング(「モノリシックコーティング」)又は、例えば、基材の外表面上のドット状パターン等の非連続パターンを有するコーティング)及び/又は内部コーティング(多孔性基材の細孔の内面及び外面に存在するが、それらを閉塞しないコーティング)であってもよい。
【0131】
また、コーティングは、多孔性基材の細孔に完全に充填されていてもよい(すなわち、基材に完全に吸収され、細孔を閉塞していてもよい)。
【0132】
外部コーティング(例えば、モノリシックコーティング)は、基材の片面又は両面に設けられていてもよい。
【0133】
モノリシックコーティングは、
a)2つの基材(例えば、2つの微細孔膜又は1つの微細孔膜と1つの織物層)間の中間層、又は
b)基材の多重被覆層の一部(例えば、2つのコーティング間の層又は最外面のトップコーティング)を形成していてもよい。
【0134】
図1は、基材20の外表面上に層として設けられたモノリシックコーティング30の模式図を示す。
【0135】
モノリシックコーティングは気密性を通常有するため、多孔性基材の場合には、コーティングされた物品内の空気の流れはモノリシックコーティングによって妨げられる。「気密層」及び「空気の流れを妨げる」とは、実験部分に記載したガーレー(Gurley)試験によって測定した場合に少なくとも2分間にわたって空気の流れが観察されないことを意味する。
【0136】
一実施形態では、最終的なモノリシックコーティングの厚みは0.05〜25μmである。当業者は、上記範囲内において用途に最も適した厚みを決定することができるだろう。
【0137】
コーティングされた基材の特性(例えば、MVTRと帯電防止性、MVTRと撥油性、MVTRと難燃性)の優れたバランスを得るために、モノリシックコーティングの厚みは0.075〜25μmとすることができる。
【0138】
層が0.05μmよりも薄い場合には、コーティングの耐久性が低下する場合がある。
【0139】
一実施形態では、基材上の最終的なコーティングのレイダウン(laydown)は、基材の外表面に対して0.1〜10g/mである。
【0140】
例えば、ePTFE膜上のモノリシックコーティングの最小レイダウンは通常は0.3g/mである。
【0141】
レイダウンとコーティングの厚みは耐久性と通気性(MVTR)に影響を与えるため、用途に応じて調節しなければならない。
【0142】
モノリシックコーティングが設けられた多孔性基材(ePTFEフィルム等)の通気性又は水蒸気透過率はMVTR値によって特徴付けられる。通常、多孔性膜上にモノリシックコーティングを有する基材、特にePTFE基材のMVTRは25,000g/m/24hを超える。一実施形態では、MVTRは40,000g/m/24hに調節し、別の実施形態では、MVTRは60,000g/m/24hを超える。
【0143】
本発明のコーティングされた物品のMVTRは、低い相対湿度においても高いままである。
【0144】
多孔性基材30の細孔20の内表面及び外表面に存在する内部コーティングの模式図を図1bに示す。
【0145】
そのような内部コーティングは、通気性コーティング(すなわち、コーティングは、細孔を閉塞することなく、基材の細孔の内表面及び外表面に存在する)である。
【0146】
空気の流れを妨げるモノリシックコーティングが基材にさらに設けられていない場合には、内部コーティングにより、コーティング後に通気性多孔性基材が得られる。通気性とは、後述するガーレー試験によって測定した場合の材料の所定領域を通過する空気の体積によって決定される。内部コーティングにより、薄膜等の微孔性基材上に機能性表面を有する通気性骨格を作製することができる。
【0147】
一実施形態では、内部コーティングの厚みは0.05μmよりも大きい。
【0148】
内部コーティングは、500nm未満の厚みを有するように非常に薄い基材に設けることができ、250nm未満の厚みを有するように非常に薄い基材に設けることもできる。
【0149】
また、内部コーティングは、ePTFE等の微細孔膜をコーティングするために設けることができる。内部コーティングの場合には、ePTFEの平均細孔径は0.05〜15μmであってもよく、別の実施形態では0.1〜10μmであってもよい。
【0150】
別の実施形態では、全ての細孔にコーティング材料が完全に充填され(完全に吸収され)、細孔が閉塞されるように、コーティングを多孔性基材上に形成する。
【0151】
完全に吸収されるコーティングは、主として非常に薄い基材に設けられる。従って、完全に吸収されるコーティングは、25μm以下の厚みで基材に設けるか、15μm以下の厚みで基材に設けることができる。これらの完全に吸収された物品を積層することにより、より厚い構造を作製することができる。
【0152】
なお、1以上の外部コーティングと、内部コーティング又は完全に吸収されるコーティングとを、a)同時及び/又はb)段階的に基材に設けることができる。例えば、多孔性基材は、少なくとも1つの外表面にモノリシックコーティングを有し、細孔内に内部コーティングを有することができる。
【0153】
コーティングされたポリマー基材の親水性及び疎水性は、対イオン剤及びイオン性フルオロポリエーテルを選択することによって容易に設定することができる。例えば、表面にコーティングされた導電性ポリマーを使用する従来技術では、水によって容易に湿潤する親水性表面が得られる。一方、本発明では、例えば、対イオン剤として導電性ポリマーを使用することにより、表面の疎水性が高まる。
【0154】
本発明により、向上した油等級を有する撥油性物品を製造することができる。油等級(AATCC試験法118−2000)は、多孔性表面が油をはじく度合いを示す。油等級が高い程、油を強くはじく。通常、撥油性物品は、2以上又は4以上の油等級(すなわち、物品の表面におけるコーティングが、好ましくは30mN/m(油等級2)より高い表面張力又は25mN/m(油等級4)より高い表面張力であらゆる液体をはじく)によって特徴付けられる。
【0155】
本発明により、一実施形態では1011Ω/□未満、別の実施形態では10Ω/□未満、さらに別の実施形態では10Ω/□未満(例えば、10〜10Ω/□)の表面抵抗値を有するコーティングを製造することができる。
【0156】
また、本発明によれば、コーティングされた物品の表面の、20%の相対湿度においてDIN EN 1149−3に準拠して測定した電荷減衰時間(charge decay time(CDT))が5秒未満である帯電防止性物品を提供することができる。そのような短い減衰時間は、導電性ポリマーを対イオン剤として使用することによって達成することができる。ポリチオフェンを使用することによって特に短い減衰時間が得られる。
【0157】
第1の工程において、イオン性フルオロポリエーテルの前駆体で基材をコーティングすることによって、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤の錯体を含むコーティングを有する物品を製造することができる。第2の工程において、コーティング後にイオン交換反応を行うことができる。
【0158】
一実施形態では、基材上にコーティングを形成するための方法は、a)イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体と、対イオン剤又はその前駆体の混合物を調製する工程と、b)前記工程a)で調製した混合物を基材に塗布する工程と、を含む。
【0159】
この方法では、第1の工程(工程a))において、上述した実施形態のいずれかにおける、イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体と、対イオン剤又はその前駆体の混合物を調製する。混合物が均一になる(全ての成分が均等に分散される)まで成分を混合する。
【0160】
第1の工程で成分の混合物を調製し、その後の第2の工程で基材に混合物を塗布することにより、混合物並びに最終的なコーティングにおいて2つの成分が完全に均一かつ均等に分散されるように成分を十分に混合することができる。これは、所望の特性を得るために重要である。また、予備混合工程により、コーティングは基材上で良好な耐久性を有し、成分、特に、対イオン剤は水との接触によって容易に浸出することはない。
【0161】
工程a)における混合物は液体であってもよい。これは、成分の混合物が元々液体であるか、1又は全ての成分を溶媒に溶解、乳化又は分散させることによるものであってもよい。
【0162】
一実施形態では、液体としての成分の混合物は、25℃において50mPasを超える粘度を有し、別の実施形態では60mPasを超える粘度を有し、さらに別の実施形態では70mPasを超える粘度を有する。
【0163】
イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤を含むコーティング混合物は、約35mN/m未満、30mN/m未満又は20mN/m未満の表面張力を有することができる。
【0164】
通常、2成分錯体は約30mN/m未満の表面張力を有することができる。
【0165】
イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤の組成物がそのような低い表面張力を有することは、ポリマー基材、特に、低い表面エネルギーを有するPTFE等のフッ素ポリマーをコーティングする場合に有用である。ほとんどの用途において、コーティング添加剤は必要ではない。
【0166】
イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体は、第2の成分である対イオン剤が50以下の原子質量を有するイオンである場合には、80重量%、90重量%又は95重量%を超える濃度で混合物内に存在していてもよい。
【0167】
イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体は、第2の成分である対イオン剤が150以下の原子質量を有するイオンである場合には、70重量%、80重量%又は85重量%を超える濃度で混合物内に存在していてもよい。
【0168】
イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体は、第2の成分である対イオン剤が800g/mol以下の分子量を有するイオン種である場合には、40重量%、50重量%又は55重量%を超える濃度で混合物内に存在していてもよい。
【0169】
対イオン剤又はその前駆体は、第2の成分である対イオン剤が50以下の原子質量を有するイオンである場合には、2.5〜4.5重量%の濃度で混合物内に存在していてもよい。
【0170】
対イオン剤又はその前駆体は、第2の成分である対イオン剤が150以下の原子質量を有するイオンである場合には、8.0〜14重量%の濃度で混合物内に存在していてもよい。
【0171】
対イオン剤又はその前駆体は、第2の成分である対イオン剤が800g/mol以下の分子量を有するイオン種である場合には、25〜45重量%の濃度で混合物内に存在していてもよい。
【0172】
上述したように、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤の前駆体は、簡単な化学反応によってイオン性フルオロポリエーテル及び対イオン剤にそれぞれ転化させることができる化合物である。
【0173】
通常、前記方法の工程a)では、イオン性フルオロポリエーテル及び/又は対イオン剤の前駆体の混合物を調製する。得られた混合物を、前駆体のイオン性フルオロポリエーテル及び対イオン剤への反応が混合物を基材に塗布する前に生じる条件に暴露する。
【0174】
このようにして、工程b)で基材をコーティングする前に、混合物はイオン性フルオロポリエーテル及び対イオン剤とそれらの前駆体を含むことができる。
【0175】
例えば、−COO基を有するフルオロポリエーテルの前駆体を1つの成分として使用して混合物を調製することができる。この前駆体では、これらの基は−COO基に共有結合する水素原子を有し、電荷を有していない。第2の成分として、対イオン剤Mg2+の前駆体(酢酸マグネシウムであってもよい)を使用することができる。これらの成分は液体として大気温度で混合することができるが、前駆体は混合条件下で反応しない。
【0176】
この例では、前駆体間の反応が生じ、酢酸が混合物から蒸発し、−COO基とMg2+イオンを含むフルオロポリエーテル錯体が形成される温度まで混合物を加熱することができる。
【0177】
ただし、イオン性フルオロポリエーテル及び/又は対イオン剤の前駆体の混合物を基材に塗布することもできる。最終的な錯体を得るためには、前駆体のイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤の錯体への反応が生じる条件に、コーティングされた基材を暴露する。
【0178】
イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤を混合すると(前駆体から生成した場合又はイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤をそのまま混合した場合のいずれか)、イオン性フルオロポリエーテルの電荷が対イオン剤のイオン電荷によって少なくとも部分的に均衡を保たれたイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤の錯体が形成される。これにより、混合物中におけるイオン性フルオロポリエーテル分子(又は少なくともそれらのイオン性基)と対イオン剤種の転位が生じる。この転位により、コーティング全体にネットワークが形成される(混合物中においてイオン性フルオロポリエーテル分子と対イオン剤種の架橋が生じる)。
【0179】
この錯体形成により、例えば、液体混合物の粘度が上昇し、混合物を基材に塗布する前にイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤を混合される。
【0180】
最終的なコーティング内には、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤は錯体として存在する。
【0181】
通常、特にイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤の錯体を含む混合物が溶媒を含んでいる場合には、基材上のイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤の錯体を含む混合物は加熱又は乾燥する。乾燥工程は、減圧、加熱、それらの組み合わせ等の公知の方法によって行うことができる。
【0182】
工程b)で得られたコーティングは、100〜200℃、別の実施形態では150〜190℃、さらに別の実施形態では160〜180℃の温度に加熱することができる。
【0183】
温度が低過ぎると、製造時間が非常に長くなる場合がある。温度が高過ぎると、ポリマーの分解(劣化)が生じ、コーティングが不均一になる場合がある。
【0184】
一実施形態では、外圧力は通常の大気圧力である。
【0185】
以下、本発明の物品の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態も本発明の一部である。特記しない場合には、混合物、成分及びコーティングの上記実施形態も以下の特定の物品の実施形態に当てはまる。
【0186】
第1の実施形態では、高い安定性を有する抗菌性コーティングを含む物品を得る。
【0187】
この実施形態では、コーティングは、イオン性フルオロポリエーテルと抗菌活性を有するイオンを含む対イオン剤との錯体を含む。
【0188】
本願明細書において使用する「抗菌活性」という用語は、バクテリア、真菌類、ウイルス等の微生物を殺す活性を意味する。
【0189】
抗菌活性を有するイオンの例としては、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Cu、Sn、Bi、Znイオンや、荷電有機種、双性イオン性化合物、有機カチオン種等のポリカチオン(例えば、カチオン性高分子電解質、N−アルキル化四級アンモニウムカチオン及びその誘導体、N−アルキル化4−ビニルピリジン、四級化エチレンイミン、四級化アクリル酸誘導体のポリマー及びそれらのコポリマー等)が挙げられる。
【0190】
そのようなコーティングを使用することにより、高い撥油性と共に抗菌性を付与することができる。これらのコーティングは、バイオフィルムの蓄積の防止及び/又はバイオフィルムの除去を可能とする。バイオフィルムは、保護・接着性マトリックスの排泄を特徴とする微生物の複雑な凝集物である。
【0191】
これらの実施形態は、物品の外面及び内面を細菌及び/又はバイオフィルムから保護することができるため、内部コーティングの場合に特に好適である。そのため、通気性等のその他の性能も長期間にわたって維持される。
【0192】
荷電有機種、双性イオン性化合物又はポリカチオンに好適なモノマーとしては、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリレート、メタクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピペリジン、4−ビニルピペリジン、ビニルアミン、ジアリルアミンの第四級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーが挙げられる。
【0193】
ポリカチオンの例としては、アルキル化ポリ(4−ビニルピリジン)等のポリ(4−ビニルピリジン)、ポリエチレンミン(PEI)、アルキル置換PEI、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)(PDADMA)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリビニルアミン並びにそれらのコポリマー及び混合物が挙げられる。
【0194】
別の態様において、ポリカチオンは、少なくとも1つの第4級アミンイオンを含むことができる。
【0195】
対イオン剤としてのポリカチオンの使用は、膜、紙又は織物上のコーティングの抗菌性の向上、透過性を調整する分野並びに表面変性による活性種の結合に適している。
【0196】
一実施形態では、抗菌活性を有するイオンは、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Cu、Sn、Bi及び/又はZnイオンを含み、別の実施形態では、Ag、Cu及び/又はZnイオンを含み、さらに別の実施形態では、Agイオンを含む。
【0197】
抗菌活性を有するイオンがAgイオン(Ag)を含む実施形態では、コーティングは、酢酸銀、炭酸銀、硝酸銀、乳酸銀、クエン酸銀、それらの酸化物、混合物あるいは誘導体をコーティングを形成するための混合物におけるAgの前駆体として使用して形成することができる。
【0198】
特定の用途においては、上述した抗菌活性を有するイオンの組み合わせ、例えば、銀と銅、銀と亜鉛、銀とカチオン性高分子電解質の組み合わせを使用することが有利な場合がある。
【0199】
抗菌活性を有するイオンがAg、Au、Pt、Pd、Ir、Cu、Sn、Bi及び/又はZnイオンを含む実施形態では、抗菌活性を有するイオンは、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Cu、Sn、Bi、Znイオン、カチオン性高分子電解質、N−アルキル化四級アンモニウムカチオン及びその誘導体、N−アルキル化4−ビニルピリジン、四級化エチレンイミン、四級化アクリル酸誘導体のポリマー及びそれらのコポリマー等の荷電有機種、双性イオン性化合物、有機カチオン種等のポリカチオンをさらに含むことができる。
【0200】
コーティングは、無菌包装、衣服、履き物、個人用衛生用品や、カテーテル、インプラント、チューブ、創縫合部材(縫合糸等)、包帯等の医療用品や、エアフィルタ、水・液体フィルタ等に使用することができる。
【0201】
この実施形態では、24時間又は48時間以上の阻害帯試験(Zone of Inhibition test)に合格するコーティングされた物品を製造することができる。
【0202】
コーティングの形態(モノリシック及び/又は内部コーティング)に応じて、通気性も容易に調節することができる。内部コーティングの場合には、表面上及び細孔内におけるバイオフィルムの形成を防止することが特に有利である。
【0203】
この実施形態のコーティングは実施例1〜7に詳細に記載する。
【0204】
本発明の物品の第2の実施形態では、静電防止物品、特に、静電防止織物を含む物品が得られる。そのような静電防止物品(衣類又はフィルタ等)は、静電気によるスパークを最小化するために使用される。
【0205】
この実施形態では、コーティングは、イオン性フルオロポリエーテルと、表面電荷ナノ粒子を有するイオンを含む対イオン剤と、を含む。
【0206】
一実施形態では、表面荷電ナノ粒子は導電性ポリマー(ICP)である。
【0207】
この実施形態では、イオン性フルオロポリエーテルのイオン性基はICPのための不揮発性・非浸出性・溶媒安定性ドーパントとして機能することが有利である。ドーパントが存在しない場合には、ICPは経時的に導電性を失う。
【0208】
これらのコーティングは、非常に優れた基材に対する密着性を示す。
【0209】
例えば、ICPである[ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)](例えば、Clevios(商標)P又はPH(以前の名称はBaytron(登録商標)P又はPH)))の水系分散液を使用することができる。
【0210】
この実施形態の物品は実施例17に記載する。
【0211】
第3の実施形態では、撥油性コーティングを含む物品を得る。この実施形態では、コーティングは、イオン性フルオロポリエーテルと、一価(Naを除く)又は二価/多価対イオン剤及びそれらの組み合わせから選択されるイオンを含む対イオン剤との錯体を含む。
【0212】
第3の実施形態では、非常に高い基材への密着性及び高い撥油性のバランスを有するコーティングを提供することができる。
【0213】
第3の実施形態における基材のモノリシックコーティングが設けられた面の撥液性は、29.6mN/m又は26.4mN/mの表面張力の液体と同等以上である。この効果は、対イオン剤とイオン性フルオロポリエーテルの錯体によるものであると思われる。
【0214】
第3の実施形態では、コーティングが細孔の内表面に存在する場合の多孔性基材の油等級は1以上又は2以上である。
【0215】
この実施形態の物品は実施例8〜15に詳細に記載する。
【0216】
第4の実施形態では、高い水濡れ性を示す物品を提供する。この実施形態では、コーティングは、イオン性フルオロポリエーテルと、Me(Naを除く)、Me2+、Me3+及びそれらの組み合わせから選択されるイオンを含む対イオン剤と、を含む。
【0217】
この実施形態では、対イオン剤は、Me2+から選択されるイオンを含むことができる。
【0218】
濡れ性の高いコーティングは、ePTFE等の多孔性基材に設けることができる。
【0219】
一実施形態では、濡れ性の高いコーティングは内部コーティングとして設ける。
【0220】
上記金属イオンを対イオン剤として選択することにより、基材に対する優れた密着性と安定性を有するコーティングを提供することができる。
【0221】
第5の実施形態では、着色されたコーティングを有する物品を得る。
【0222】
この実施形態では、イオン性フルオロポリエーテルは少なくとも1つのカルボキシル基を含み、対イオン剤はアセテート等のカチオン染料を含むことができる。
【0223】
また、本発明は、上述した実施形態のいずれかに係る物品の、衣類又はフィルターエレメントの製造のための使用並びにイオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤とを含む錯体組成物の、ポリマー基材をコーティングするための使用にも関する。
【実施例】
【0224】
方法及び実施例
a)撥油性
撥油性試験は、AATCC試験法118−2000に準拠して行った。等級は0〜8であり、「0」は最も低い撥油度を示す。基材を湿潤させない最小の数字が油等級である。数字が大きい程、耐油性が優れている。
【0225】
0はNujol(商標)鉱油である(湿潤)。
1はNujol(商標)鉱油(31.2mN/m)である(はじく)。
2は65/35 Nujol/n−ヘキサデカン(容量、29.6mN/m)である。
3はn−ヘキサデカン(27.3mN/m)である。
4はn−テトラデカン(26.4mN/m)である。
5はn−ドデカン(24.7mN/m)である。
6はn−デカン(23.5mN/m)である。
7はn−オクタン(21.4mN/m)である。
8はn−ヘプタン(19.8mN/m)である。
【0226】
b)MVTR
Hohenstein Standard Test Specification BPI 1.4に準拠した膜及び積層体の水蒸気透過性試験
酢酸カリウム1000gと蒸留水300gを撹拌、少なくとも4時間にわたって沈降させることによって酢酸カリウムパルプを製造した。70g±0.1gの酢酸カリウムパルプをビーカーに入れた。ビーカーをePTFE膜で覆い、密閉した。
【0227】
試験対象の膜/積層体から10×10cmのサンプルを採取し、ビーカーとePTFE膜で覆った水浴(23℃±0.2℃)との間に配置した。
【0228】
各ビーカーの重さを試験前(G1)と試験後(G2)に記録した。
ePTFEの試験期間:5分間
モノリシックコーティングePTFE:10分間
織物積層体:15分間
MVTRの算出
ePTFE:MVTR=((G2−G1)×433960)/5
モノリシックコーティングePTFE:MVTR=((G2−G1)×433960)/10
積層体:MVTR=((G2−G1)×433960)/15
【0229】
c)ガーレー数
ガーレー数(秒)は、ASTM D 726−58に準拠してガーレー式デンソメーターを使用して測定した。
【0230】
結果はガーレー数で示した。ガーレー数は、100cmの空気が1.215kN/mの水の圧力低下において6.54cmの試験サンプルを通過するために必要な時間(秒)である。
【0231】
d)フレーザー数(Frazier number)
フレーザー数(cfm)は、ASTM D 737に準拠して通気性試験機III FX3300(TEXTEST社)を使用して測定した。
【0232】
e)平均細孔径(MFP)(μm)
MFPは、Porous Materials Inc.(PMI)社製のキャピラリーフローポロメータ「CFP 1500 AEXLS」を使用して測定した。膜は、Silwick(表面張力:20mN/m)によって完全に湿潤させた。十分に湿潤させたサンプルをサンプル室に入れた。サンプル室を密閉し、最大直径を有する細孔内の流体の毛管作用を克服するために十分な圧力でサンプルの後部でサンプル室にガスを流した。これはバブルポイント圧力である。圧力を徐々に増加させ、細孔内に流体がなくなるまで流れを測定した。圧力範囲は0〜8.5バールとした。平均細孔径に加えて、最大及び最小細孔径も検出した。
【0233】
f)電荷減衰時間(CDT)
電荷減衰時間(charge decay time(CDT))は、DIN EN 1149−3に準拠して測定した。
【0234】
g)表面抵抗値
表面抵抗値は、ASTM D257に準拠して、2つの平行電極間(正方形構成)で測定した。
【0235】
h)抗菌性
使用した細菌は、米国のAmerican Type Culture Collection(メリーランド州ロックビル)から入手した。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(ATCC # 25923))及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa(ATCC # 27853))に対する材料の抗菌性を調べた。試験に使用した微生物は、血液寒天培地中で34〜37℃で24時間培養した。コロニー形態と純度についてグラム染色によって観察した。
材料準備:クリーンベンチ上においてサンプルを約2.5cmのディスクに切断し、阻害帯バイオアッセイ(Zone of Inhibition Bioassay)を使用して抗菌活性の有無を調べた。
阻害帯法:
細菌培養物をTrypticase Soy血液寒天培地で増殖させ、Mueller−Hintonブロスに無菌状態で懸濁させた。培養物をMcFarlandの0.5塩化バリウム標準液で標準化した(standard method for disc diffusion sensitivity testing P:SC:318を参照)。標準化培養物をMueller−Hinton寒天プレートに画線し、細菌を均一にした。試験材料サンプルを、所望の試験表面側を下にして寒天に接触させた無菌状態で配置した。微生物を34〜37℃で24時間培養した。その後、プレートを観察してサンプルを囲む明確な阻害帯の有無及び試験材料の上下における増殖の有無について調べた。阻害帯はミリメートルで測定し、結果を記録した。阻害帯が25mmよりも大きい場合には、サンプルは試験に合格したとみなした。
【0236】
i)生物学的活性試験
エラストマー、プラスチック、他のポリマー材料又は材料の抽出物との接触後の哺乳動物細胞培養物の生物学的反応性を調べた。全ての試験においてL929哺乳動物(マウス)線維芽細胞を使用した。AOL試験(アガロース・オーバーレイ法)及びMEM試験(最小必須培地)では、1mm厚の哺乳動物細胞シート(単層)を使用して材料の毒性を調べた。MEM試験では、所定量の試験材料を食塩液内において37℃で24時間抽出した。その後、液体/抽出物を細胞上に3日間配置した。3日後、赤色染料を細胞に添加し、生細胞と死細胞の量を調べた。生細胞は染料を取り込んで赤くなり、死細胞は染料を取り込まない。アガロース・オーバーレイ試験では、同様な細胞と単層を使用したが、寒天層を細胞層上で注ぎ、寒天を固化させた。試験材料(約1cm)を寒天上に置くと、材料中の毒素は寒天層内に拡散して、細胞を死滅させる。1日後、赤色染料を寒天に添加した(生細胞は赤くなる)。MEM試験の評価尺度は、0、非毒性(1)、毒性(2、3、4)である。AO試験の評価尺度は、非毒性(0、1、2)、毒性(3、4)である。いずれも、0は非毒性で、4は最も毒性が高いことを示す。MEM試験はAO試験よりも感度が高いと思われる。
【0237】
j)4インラインプローブ(four in−line probe)法
導電性ポリマーの導電性を調べるために、「Laboratory Notes on Electrical Galvanometric Measurements」,H.H.Wieder,Elsevier Scientific Publishing Co. New York,New York(1979)に記載された4インラインプローブ法を使用した。
【0238】
k)厚み
基材フィルムの厚みは、Heidenhain厚さ測定器を使用して測定した。
【0239】
コーティングのBET、レイダウン、密度によって決まるコーティングの厚みは、ePTFEの比表面積を使用して算出した。
【0240】
例えば、ePTFEのBET表面積は10m/gである。Fluorolink(登録商標)C10(Solvay Solexis社)の密度は1.8g/mである。平面上の1.8g/mのFluorolink(登録商標)C10の場合には、コーティングの厚みは1μmとなる。ePTFEの全細孔表面(全ての内部細孔及び外部細孔の表面)がコーティングによって覆われていると仮定すると、1.8g/mのFluorolink(登録商標)C10の場合には、コーティングの厚みは多孔性ePTFE膜の重量で割った100nmとなる。同様に、3.6g/mのFluorolink(登録商標)C10の場合には、コーティングの厚みは多孔性ePTFE膜の重量で割った200nmとなる。
【0241】
l)Suter試験
Suter試験は、膜サンプルをホルダに均等に固定するAATCC試験127−1989に準拠して行った。膜は、0.2バールの水圧に2分間耐えなければならない。
【0242】
m)顕微鏡法
SEM画像はLEO 1450 VPを使用して撮影した。サンプルは金でスパッタリングした。
【0243】
n)EDX試験
EDX分析は、エネルギー分散型X線分析の略である。EDAX(登録商標)装置(Ametek社)をSEMと共に使用した。EDX分析は、10kVにおいて標本の元素組成を特定するために使用した。
【0244】
EDX分析時には、走査型電子顕微鏡内において標本に電子ビーム照射した。電子線照射時に標本によって放出されるX線に存在するエネルギーの量を測定することにより、X線を放射した原子を同定することができる。
【0245】
o)水濡れ性試験
水滴を基板表面に置いた。完全なウィッキング(wicking)の時間(秒)を記録した。ePTFEの完全な湿潤は、水でたされた細孔による膜の清澄化によって観察される。
【0246】
p)KOH膜抵抗と濡れ性
膜抵抗は、電解質浴測定装置内において炭素電極を使用してアルカリ電池セパレータのイオン抵抗率(ER)を測定するためのASTM D7148−07標準試験方法に準拠して測定した。
【0247】
セパレータのER及び電解質との相互作用(濡れ又は流れ抵抗)は電池の内部抵抗値に寄与し、電池の電気的出力を潜在的に制限する。ER測定は、電池メーカーが設計、材料選定及び性能仕様のために使用するツールである。
【0248】
セパレータによる浴電気抵抗値(bath electrical resistance)の変化は、セパレータの細孔構造の気孔率、厚み及びねじれ、電解質に対するセパレータの濡れ性並びに電解質の温度と濃度によって影響を受ける。
【0249】
細孔構造の不完全な濡れ又は飽和はセパレータ構造から得られる最低ER値を制限する。試験対象の標本が十分に湿潤するようにセパレータを前処理する。十分に湿潤(飽和)していないセパレータは高いER値を示す。電解質は5n KOHとした。
【0250】
また、5n KOHの液滴がePTFEにウィッキングし、膜を清澄化させるために必要な時間(秒)を測定した。
【0251】
q)水接触角
蒸留水の液滴(4μl)を25℃で基材に置いた。5及び30秒後に、DSA 10装置(Kruess社)を使用して接触角を測定した。
【0252】
r)粘度
参考液体の粘度を、Haakeレオメーター(型式RheoStress1)を使用して測定した。プレート/コーン配置(コーン:C35/2Ti)を全ての測定に使用した。全ての粘度データは、25℃又は60℃の温度及び50秒−1の剪断速度におけるものである。
【0253】
s)表面張力
表面張力は、Wilhelmyプレート法を使用して、プロセッサ張力計K12(Kruess社、ハンブルク)によって測定した。正確に既知の形状を有するプレートを液体に接触させた。液体がプレートの濡れ線に沿って移動する際の力を測定した。この力は液体の表面張力に正比例する。
【0254】
実施例1
1.0gの酢酸銀(純度:98%、Merck社)を99.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸銀が完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90℃で加熱した。銀イオンによるプロトン交換は6%だった。25℃における粘度は124mPasだった。
【0255】
ePTFE膜(平均細孔径:0.178μm、ガーレー:12秒、厚み:34μm、秤量:20.6g/m)を上記混合物によって溶媒を使用せずにコーティングした。130℃での加熱均質化後のFluorolink(登録商標)C−Agのレイダウンは4.0g/mだった。
【0256】
コーティングされた膜はわずかに黄色く見え、0.164μmの平均細孔径を有していた。図3に示すコーティングされた膜のSEM画像は、内部細孔及び外部細孔の表面における均一のコーティング層を示している。表1に結果を示す。
【0257】
比較例1
比較例1では、実施例1において使用したePTFE膜(平均細孔径:0.178μm、ガーレー:12秒、厚み:34μm、秤量:20.6g/m)を使用した。
【0258】
実施例2
1.0gの酢酸銀(純度:98%、Merck社)を90.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸銀が完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90℃で加熱した。銀イオンによるプロトン交換は67%であり、25℃における粘度は3015mPasだった。
【0259】
本実施例は、高いイオン交換度を容易に得ることができることを実証するために行った。
【0260】
実施例3
3.0gの粉砕酢酸銀(純度:98%、Merck社)を297.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸銀が完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90〜95℃で加熱した。銀イオンによるプロトン交換は6%だった。
【0261】
2種類の膜を得られた錯体でコーティングした。
【0262】
実施例3aでは、138°の水接触角を有するePTFE膜(平均細孔径:0.180μm、ガーレー:20秒、厚み:16μm、秤量:19.3g/m)を、転写ロール法により、上記混合物によって溶媒を使用せずにコーティングした。ロールは60℃まで加熱した。
【0263】
120℃での加熱均質化後のFluorolink(登録商標)C−Ag錯体のレイダウンは3.0±0.5g/mだった。コーティングされた膜はわずかに黄色く見え、表面で測定したAg濃度は0.7重量%だった。SEM画像は、内部細孔及び外部細孔の表面における均一のコーティング層を示している。水接触角は139°だった。表1に実施例3aの結果を示す。
【0264】
実施例3bでは、ePTFE膜(平均細孔径:0.195μm、ガーレー:12秒、厚み:34μm、秤量:21.1g/m)を、転写ロール法により、上記混合物によって溶媒を使用せずにコーティングした。ロールは60℃まで加熱した。120℃での加熱均質化後のePTFE上のFluorolink(登録商標)C−Agのレイダウンは4.5±0.5g/mだった。表面における銀濃度は1.0重量%だった。表1に実施例3bの結果を示す。
【0265】
【表1】

【0266】
実施例1は、コーティングされた基材がアガロース・オーバーレイ試験及びMEM溶出試験において生細胞と相互作用したことを示しており、比較例1のコーティングされていない基材は生細胞と相互作用しなかった。
【0267】
実施例3a及び3bは、コーティングされた膜の高い通気性(空気透過性)、向上した耐汚染性及び優れた通気性といったコーティングされた物品の特性の組み合わせを示している。
【0268】
実施例4及び5
実施例3a及び3bのコーティングされた膜を、グラビアロール及び接着剤を使用してポリエステル織物(フランネルライナー)に積層した。グラビア及びニップ(marriage nip)に加えた圧力は340kPaである。これらの2つの積層体が実施例4及び5の積層体である。比較例2では、比較例1の未処理の膜を使用して積層体を同様に形成した。
【0269】
これらの積層体に対して試験を行った。試験結果を表2及び表3に示す。
【0270】
【表2】

【0271】
低湿度における電荷減衰時間測定結果は、イオン性フルオロポリエーテルと銀イオンの錯体を含む抗菌性コーティングされた物品の帯電防止積層特性を示している。
【0272】
また、実施例4及び5の物品の油等級は向上した撥油性を示し、抗菌性コーティングは洗浄しても効果を維持することが分かった(洗浄処理後のMVTR低下の減少を参照)。
【0273】
表3の試験結果は、実施例4及び5の物品の抗菌効果を示している。
【0274】
実施例6
典型的な耐候性積層体を作製した。実施例4及び5の積層方法を使用し、モノリシックポリウレタン層(PUR)でコーティングされたePTFE(比較例1と同じ)で形成されたバリアフィルムにポリアミド織物を積層した。
【0275】
315gのFluorolink(登録商標)Cと35gの酢酸銀(プロトン交換:67%)の反応生成物を6650gのGalden(登録商標)HT 110(Solvay Solexis社)に溶解し、耐候性積層体の織物側(ポリアミド)にディップコーティングによって塗布(22m/分)し、160℃で乾燥した。
【0276】
抗菌性コーティングされたナイロン積層体はSuter試験に合格し、以下の特性を示した。
織物側の油等級:4
MVTR:16,800g/m2/24h
電荷減衰時間:4秒
織物側の表面銀濃度:1.3重量%(EDXによって測定)
実施例6の積層体を60℃で5回洗浄した。洗浄後のMVTRは15,500g/m/24hだった。洗浄後に通気性に対する影響は観察されなかった。
【0277】
洗浄処理を648時間行った後の織物側の銀濃度は0.31%であり、膜側の銀濃度は0.13%だった。従って、648時間にわたって洗浄条件に曝すことにより、銀濃度は1.3重量%から0.31重量%に低下した。これは、長時間にわたる銀イオンの放出が非常に遅いことを示している。
【0278】
【表3】

【0279】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び緑膿菌(P.aeruginosa)を培養した阻害帯バイオアッセイプレートの写真を撮影した。実施例1、4、5及び6では明確な阻害帯が見られた。SEM画像(図4及び5)では、フッ素ポリマー−Agでコーティングされた材料のいずれにおいても細菌バイオフィルムは観察されなかった。
【0280】
ISO 6330に住居下60℃における5回の家庭洗浄サイクル後には、実施例4、5及び6の積層体はZOI試験において活性を示した(表4を参照)。材料を細菌培養物に24時間暴露した後には、コーティングされたePTFE側(実施例4と5)及びPUR側(実施例6)における細菌増殖は観察されなかった。
【0281】
【表4】

【0282】
試験結果は、長期間にわたって洗浄サイクルを繰り返してもフッ素ポリマー、ポリウレタン及びポリアミド上での各種細菌の成長を阻害する本発明の組成物の能力を示している。
【0283】
実施例7
1.0gの酢酸銀(純度:>98%、Merck社)を90.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸銀が完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90℃で加熱した。Agイオンによるプロトン交換は67%だった。ePTFE膜(平均細孔径:0.178μm、ガーレー:12秒、厚み:34μm、秤量:20.6g/m)を上記混合物によって溶媒を使用せずにコーティングした。150℃での加熱均質化後のFluorolink(登録商標)C−Agのレイダウンは5.4g/mだった。コーティングされた膜はわずかに黄色く見えた。両面の油等級は4であり、ガーレー数は20秒だった。
【0284】
実施例7は、通気性ePTFE上に形成した撥油性・抗菌性コーティングを示すものである。
【0285】
実施例8
10.0gの酢酸マグネシウム四水和物(Merck社)を90.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸マグネシウムが完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90℃で加熱した。50gの水を混合物に添加した後、90℃でさらに撹拌し、余分な酢酸マグネシウムを含む水相を除去した。PFPE相を115℃で30分間加熱した。Mg2+イオンによるFluorolink(登録商標)Cのプロトン交換はほぼ100%であり、表面張力は17.6mN/mであり、25℃における粘度は15,100mPasだった。
【0286】
ePTFE膜(実施例1と同じ)を、PF5070(3M社)とイオン性フルオロポリエーテル/Mg2+錯体の1:1混合物でディップコーティングした。膜上のレイダウンは18.2g/mであり、ガーレー試験では空気の流れは見られなかった(ガーレー>>10,000秒)。150℃での加熱均質化後の膜のコーティングされた面の油等級は6であり、コーティングされていない面の油等級は3〜4だった。
【0287】
実施例9
10.0gの酢酸マグネシウム四水和物(Merck社)を90.0gのFluorolink(登録商標)C 10(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸マグネシウムが完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90℃で加熱した。Mg2+イオンによるFluorolink(登録商標)C 10のプロトン交換は86%であり、表面張力は19.3mN/mであり、25℃における粘度は5500mPasだった。
【0288】
PTFE膜(実施例1と同じ)を、Fluorolink(登録商標)C 10/Mg2+錯体とGalden HT 110の5重量%混合物でディップコーティングした。コーティングされた膜上のレイダウンは5.6g/mであり、ガーレー試験における通気性は15秒だった。膜の油等級は2だった。
原料膜の水湿潤時間:湿潤前に水滴が蒸発
実施例9のコーティングされた膜の水湿潤時間:<1秒
実施例9のコーティングされた膜の5n KOH水溶液湿潤時間:<1秒
本実施例は、水及び/又は電解質湿潤機能をePTFE膜に与えることができることを示すものである。
【0289】
実施例10
5.0gの酢酸マグネシウム四水和物(Merck社)を95.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸マグネシウムが完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90℃で加熱した。Mg2+イオンによるFluorolink(登録商標)Cのプロトン交換は50%だった。
【0290】
ePTFE膜(実施例1と同じ)を、PF5070(3M社)とイオン性フルオロポリエーテル/Mg2+錯体の1:1混合物でディップコーティングした。膜上のレイダウンは8g/mであり、ガーレー数は17秒だった。膜のコーティングされた面の油等級は2だった。この膜は、水及び5n KOHによって即座に湿潤した。
【0291】
KOH中の膜抵抗は50Ω/cm□だった。
【0292】
本実施例は、水及び/又は電解質湿潤機能を、電池用途のためのセパレータとして有用なePTFE膜に与えることができることを示すものである。
【0293】
実施例11
5.0gの酢酸カルシウム(純度:94.3%、VWR社)を95.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸カルシウムが完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90℃で加熱した。Ca2+イオンによるFluorolink(登録商標)Cのプロトン交換は約65%であり、粘度は11,200mPasであり、表面張力は19.6mN/mだった。
【0294】
混合物を60℃に加熱すると、粘度は1260mPasに変化し、混合物はePTFE膜に浸み込んだ。
【0295】
ePTFE膜(実施例1と同じ)を、PF5070(3M社)とイオン性フルオロポリエーテル/Ca2+錯体の1:1混合物でディップコーティングした。膜上のレイダウンは8g/mであり、ガーレー数は24秒だった。膜のコーティングされた面の油等級は3だった。この膜は、水によって即座に湿潤した。
【0296】
実施例12
10.0gの酢酸カルシウム(純度:94.3%、VWR社)を90.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸カルシウムが完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において90℃で加熱した。50gの水を混合物に添加した後、90℃でさらに撹拌し、余分な酢酸カルシウムを含む水相を除去した。PFPE相を115℃で30分間加熱した。Ca2+イオンによるFluorolink(登録商標)Cのプロトン交換は約100%だった。
【0297】
ePTFE膜(実施例1と同じ)を、PF5070(3M社)とイオン性フルオロポリエーテル/Ca2+錯体の1:1混合物でディップコーティングした。膜上のレイダウンは8g/mであり、ガーレー数は34秒だった。膜のコーティングされた面の油等級は4だった。この膜は、水及び5n KOHによって即座に湿潤した。KOH中の膜抵抗は3Ω/cm□だった。
【0298】
実施例13
実施例11と同様にして95.9gのFluorolink(登録商標)C 10を5gの酢酸カルシウムと反応させてFluorolink(登録商標)C 10とCa2+の錯体を得た(実施例13a)。
【0299】
また、実施例11と同様にして90.0gのFluorolink(登録商標)C 10を10gの酢酸カルシウムと反応させてFluorolink(登録商標)C 10とCa2+の錯体を得た(実施例13b)。
【0300】
表5に結果を示す。
【0301】
実施例14
実施例11と同様にして90.0gのFluorolink(登録商標)C 10を10gの酢酸カリウム(>99.0%、Merck)と反応させてFluorolink(登録商標)C 10とKの錯体を得た。表5に結果を示す。
【0302】
実施例15
実施例11と同様にして90.0gのFluorolink(登録商標)C 10を10gの酢酸亜鉛二水和物(>99.0%、Merck)と反応させてFluorolink(登録商標)C 10とZn2+の錯体を得た。表5に結果を示す。
【0303】
【表5】

【0304】
13bをGolden(登録商標)HT110(Solvay Solexis社)に溶解して調製した5重量%溶液でコーティングしたePTFE膜(平均細孔径:0.180μm、ガーレー:13秒、厚み:34μm、秤量:18g/m)は以下の特性を示した。
レイダウン:6.2g/m、ガーレー:15秒、油等級:5〜6、水濡れ性:<1秒、5n KOH濡れ性<1秒。
【0305】
実施例11〜15は、様々なePTFE構造のための異なる対イオン剤及びイオン性フルオロポリエーテル組成を使用して、水及び/又は電解質湿潤機能をePTFE膜に与えることができることを示すものである。これらの材料は、精密濾過用途で有用であると予想される。
【0306】
実施例16
10.0gの酢酸銅(>98.0%、Fluka社)を90.0gのFluorolink(登録商標)C(Solvay Solexis社)に添加し、酢酸銅が完全に反応し、酢酸がそれ以上生成しなくなるまで、撹拌下において110℃で加熱した。濃緑色の高粘度液体が得られた。プロトン交換は98%だった。
【0307】
ePTFE膜(実施例1と同じ)を、Fluorolink(登録商標)C 10/銅錯体をイソプロピルアルコールに溶解した5重量%混合物(50℃)でディップコーティングした。膜上のレイダウンは7g/mであり、ガーレー数は11秒だった。膜のコーティングされた面の油等級は3だった。この膜は、水によって即座に湿潤した。
【0308】
実施例15及び16は、抗菌活性を有するZn2+及びCu2+イオンの、ePTFE表面のフルオロポリエーテル錯体への導入を示すものである。
【0309】
実施例17
ePTFE膜(平均細孔径:0.343μm、ガーレー:19秒、厚み:86μm、秤量:55.6g/m)を、転写法により、Fluorolink(登録商標)Cによって溶媒を使用せずに65℃でコーティングした。コーティングされたウェブ(web)を、オーブン内において165℃で加熱均質化した。膜上のレイダウンは3〜4g/mであり、ガーレー数は12.0秒だった。
【0310】
99.1gのClevios(商標)PH(以前の名称はBaytron(登録商標)PH、固形分:1.3重量%(水に分散した導電性ポリマーPEDT/PSS([ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)]))、平均膨潤粒径d50:約30nm、製品情報小冊子、H.C.Starck社)を99.1gのエタノールと30分間混合した。Fluorolink(登録商標)Cでコーティングされた膜を上記溶液で30秒間ディップコーティングし、170℃で5分間乾燥した。青色の膜の両面の表面抵抗値は、室温で1.3×10Ω/□だった。レイダウンは0.5g/mだった。 膜は通気性を有し、ガーレー数は12.4秒だった。
【0311】
実施例17は、ePTFE上の帯電防止コーティングを示すものである。実施例16のコーティングのように、実施例17のコーティングは着色されている。
【0312】
実施例18
2.5gのクレシルバイオレットアセテート(Fluka)を撹拌下において97.5gのFluorolink(登録商標)C 10(Solvay Solexis社)に110℃で添加した(30分間)。液体はすぐにすみれ色に変化した。
【0313】
ePTFE膜(実施例1と同じ)を、混合物をイソプロピルアルコールに溶解した5重量%混合物(50℃)でディップコーティングした。膜上のレイダウンは4g/mであり、ガーレー数は11秒だった。膜は着色され、生物活性物質を含んでいた。
【0314】
実施例19
実施例9のコーティング組成物(Fluorolink(登録商標)C 10及びMgイオン)を、Galden(登録商標)HT 110(Solvay Solexis社)の5重量%溶液として、超高分子量(UHMW)PE膜(平均細孔径:0.470μm、ガーレー:47秒、厚み:52μm、秤量:16g/m)に塗布した。90℃で乾燥した後のレイダウンは8g/mであり、コーティングされた膜は水で即座に湿潤した。
【0315】
実施例19は、水湿潤機能を微孔性ポリエチレン膜に与えることができることを示すものである。
【0316】
比較例3
ePTFE膜(平均細孔径:0.490μm、ガーレー:8秒、厚み:75μm、秤量:36.8g/m)を、キスロール(kiss roll)法により、Fluorolink(登録商標)Cによってコーティングした。ロール温度は60℃に維持した。130℃での加熱均質化後のレイダウンは3g/mだった。
【0317】
コーティングされた表面の油等級を表6に示す。
【0318】
【表6】

【0319】
比較例3は、対イオン剤を使用せずにイオン性フルオロポリエーテルを使用した場合の不十分な油等級と水濡れ性を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基材と、前記ポリマー基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むコーティングと、を含む物品。
【請求項2】
請求項1において、前記基材がフッ素ポリマーである物品。
【請求項3】
請求項2において、前記基材が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性PTFE、熱可塑性フルオロポリマー(fluorothermoplastic)、フルオロエラストマー又はこれらの材料の組み合わせである物品。
【請求項4】
請求項3において、前記基材がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である物品。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項において、前記基材が多孔性である物品。
【請求項6】
請求項5において、前記基材が延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である物品。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項において、前記錯体中の前記イオン性フルオロポリエーテルのイオン電荷の5〜100%が前記対イオン剤のイオン電荷によって平衡を保たれている物品。
【請求項8】
前記請求項のいずれか1項において、前記イオン性フルオロポリエーテルの当量が400〜15,000mol/gである物品。
【請求項9】
前記請求項のいずれか1項において、前記対イオン剤が、有機イオン又は非アルカリ金属イオンの群から選択される物品。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1項において、前記イオン性フルオロポリエーテルのイオン性基がアニオン性基である物品。
【請求項11】
請求項10において、前記イオン性フルオロポリエーテルのイオン性基が、カルボキシル基、リン酸基、スルホン基及びそれらの組み合わせから選択される物品。
【請求項12】
前記請求項のいずれか1項において、前記イオン性フルオロポリエーテルのF/H比が1以上である物品。
【請求項13】
請求項12において、前記イオン性フルオロポリエーテルがイオン性パーフルオロポリエーテルである物品。
【請求項14】
前記請求項のいずれか1項において、前記コーティングが液体として基材に塗布される物品。
【請求項15】
請求項14において、前記基材をコーティングするために使用される液体が35mN/m未満の表面張力を有する物品。
【請求項16】
前記請求項のいずれか1項において、前記コーティングが、モノリシック層として前記基材の表面に存在する物品。
【請求項17】
請求項16において、モノリシック層として前記基材の表面に存在する前記コーティングの厚みが0.05〜25μmである物品。
【請求項18】
請求項4〜17のいずれか1項において、前記コーティングが、細孔の内表面及び外表面に存在する物品。
【請求項19】
請求項18において、前記細孔の内表面及び外表面に存在する前記コーティングの厚みが10nmよりも大きい物品。
【請求項20】
請求項18又は19において、前記基材の細孔が前記コーティングによって完全には満たされていない物品。
【請求項21】
前記請求項のいずれか1項において、20%の相対湿度において2秒未満の電荷減衰時間を有する物品。
【請求項22】
ポリマー基材と、前記ポリマー基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むコーティングと、を含み、前記対イオン剤は抗菌活性を有するイオンを含む物品。
【請求項23】
ポリマー基材と、前記ポリマー基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むコーティングと、を含み、前記対イオン剤は表面荷電ナノ粒子を含む物品。
【請求項24】
請求項23において、前記表面荷電ナノ粒子が導電性ポリマーを含む物品。
【請求項25】
ポリマー基材と、前記ポリマー基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルと一価(Naを除く)又は二価/多価対イオン剤及びそれらの組み合わせから選択されるイオンを含む対イオン剤との錯体を含むコーティングと、を含む物品。
【請求項26】
ポリマー基材と、前記ポリマー基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルとMe(Naを除く)、Me2+、Me3+及びそれらの組み合わせから選択されるイオンを含む対イオン剤との錯体を含むコーティングと、を含む物品。
【請求項27】
ポリマー基材と、前記ポリマー基材上に形成され、イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むコーティングと、を含み、前記イオン性フルオロポリエーテルは少なくとも1つのカルボキシル基を含み、前記対イオン剤はカチオン染料を含む物品。
【請求項28】
ポリマー基材上にコーティングを形成する方法であって、
a)イオン性フルオロポリエーテル又はその前駆体と対イオン剤又はその前駆体の混合物を調製する工程と、
b)前記工程a)で調製した前記混合物を前記基材に塗布する工程と、
を含む方法。
【請求項29】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の物品の、衣類、織物構造、積層体、フィルターエレメント、通気エレメント、センサー、診断装置、保護筺体又は分離エレメントの製造のための使用。
【請求項30】
イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むコーティング組成物の、ポリマー基材をコーティングするための使用。
【請求項31】
イオン性フルオロポリエーテルと対イオン剤との錯体を含むコーティング組成物の、基材の抗菌性コーティングとしての使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−528047(P2011−528047A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517811(P2011−517811)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005148
【国際公開番号】WO2010/006783
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511012905)ダブリュ エル ゴア アンド アソシエイツ ゲーエムベーハー (3)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES GMBH
【住所又は居所原語表記】Hermann−Oberth Str. 22,85640 Putzbrunn, Germany
【Fターム(参考)】