説明

イオン注入システムにおいて引き出されたイオンビームの選択的プレディスパージョンのための方法及び装置

イオン弁(120)と質量分析器(26)との間に配置されるディスパージョンシステム(140)を含むイオン注入システムが設けられる。このディスパージョンシステムは、イオン源から質量分析器に引き出されたイオンビームを選択的に通過させ、または分散されたイオンビームを前記質量分析器に向けて指向させるように作動し、分散されたイオンビームが、引き出されたイオンビームよりも不要な質量範囲のイオンを少なくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、イオン注入システムに関し、特に、イオン注入システムにおいて引き出されたイオンビームの選択的プレディスパージョンのための改良した方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、イオン注入は、半導体ウエハに不純物を添加するのに使用される。イオンビーム注入機またはイオン注入システムは、集積回路の製造中に、ドープされたn型又はp型の半導体材料を製造したり又は集積回路の製造中に不活性層を形成するために、イオンビームで半導体ウエハを処理するのに使用される。半導体に不純物をドーピングするとき、イオン注入システムは、選択されたイオン種を注入して所望の半導体材料を製造する。アンチモンや砒素や燐等のイオン源材料から生成される注入イオンは、結果的にn型の半導体材料のウエハを生じることになり、一方、p型の半導体材料のウエハが必要とされる場合、ボロンやガリウムやインジウム等のイオン源材料から生成されるイオンが注入される。
【0003】
図1は、従来の低エネルギーイオン注入システム10を図示しており、このシステムは、ターミナル12、ビームラインアセンブリ14、及びエンドステーション16を有する。ターミナル12は、高電圧源22によって励起されるイオン源20を含み、このイオン源は、イオンビーム24を発生し、このビームをビームラインアセンブリ14に指向させる。ビームラインアセンブリ14は、ビームガイド32と質量分析器26からなり、この質量分析器の双極子磁界が、エンドステーション16内のウエハ30に対して適切な電荷質量比のイオンのみを通過させるようになっている。イオン源20は、正電荷のイオンを発生し、このイオンは、イオン源20から引き出されかつイオンビーム24内に形成され、ビームラインアセンブリ14内の所定のビーム径路に沿ってエンドステーション16内に向かう。このイオン注入システム10は、イオン源20とエンドステーション16との間に配置されているビーム形成/整形構造体を有している。この構造体は、イオンビーム24を維持し、ビームが注入ステーションへの途中で通過する細長い内部キャビティまたは通路の境界を定めている。この通路を通ってイオンビーム24は、エンドステーション内に支持された1つ以上のウエハまたは加工物に移送される。このイオンビーム移送通路は、一般的に、イオンがエア分子と衝突した結果として、所定のビーム経路から偏向する確率が低下するように一般的に脱気されている。
【0004】
イオンの電荷質量比は、静電界や磁界によって軸方向と横断方向の両方にイオンが加速される度合に影響する。質量分析器26は、イオン源20の下流に位置するビームラインアセンブリ14に配置され、通路内のビーム径路を横断する双極子磁界を作り出す質量分析磁石を含んでいる。この双極子磁界は、ビームライン通路の弓状部分内の磁気偏向を介して、異なる電荷質量比のイオンに効果的に分離させるように、イオンビーム24内の種々のイオンを偏向させるように動作する。所望のイオン及び不要な(たとえば、電荷質量比)のイオンを選択的に分離する工程は、質量分析として知られている。質量分析技術を用いて、望ましくない分子量または原子量を有するイオンがビーム径路から離れた位置に偏向され、そして所望の材料以外の注入は回避されるので、ウエハ30上に分与されるイオンビームは、非常に純度の高いものになる。
【0005】
イオン注入システム(イオン注入機)は、2つの異なるカテゴリーに分離することができる。低エネルギーイオン注入機は、一般的に、数千電子ボルト(1KeV)から80〜100KeVまでのイオンビームを供給するように設計されており、質量分析されたビームが、質量分析器から1つ以上のウエハを注入するためのエンドステーションに供給される。高エネルギーイオン注入機は、一般的に、質量分析器26とエンドステーション16との間にリニア加速器(ライナック)(図示略)を用いて、質量分析されたイオンビーム24をより高いエネルギー、一般的に数100KeVに加速する。高エネルギーイオン注入は、一般的に半導体ウエハ30内により深く注入するために用いられる。逆に、高電流で低エネルギーのイオンビーム24は、一般的に、高ドーズ量で浅い注入に用いられる。この場合、イオンのエネルギーが低いと、一般的にイオンビーム24の集中を維持することが難しい。
【0006】
高/低エネルギーのイオン注入機のための質量分析器26は、一般的に異なる質量及び種を有する所定範囲のイオンビーム24に対して設計されている。たとえば、従来の質量分析器26は、低エネルギー用として、数KeVのボロン(B11)ビームと同様に、80KeVの砒素(As)ビームに対する質量分析を行うことができる。この場合、砒素ビームのエネルギーを80KeV程度とするために、質量分析磁石の湾曲半径を、一般的に30cmとすれば、質量分析器において、より高い双極子磁界を作り出すことができ、さらに実用的ではないが、より高い磁界を必要とする場合には、より小さい湾曲半径とすることが必要となるであろう。1KeVのボロン(B11)ビーム等のより低いエネルギービームの質量分析を行うとき、質量分析磁石は、より低い出力レベルの双極子磁界を生じるように調整される。
【0007】
質量分析器26は、焦点距離に対応した二点間イメージ装置として作動し、質量分析器の入口から所定距離において、第1径路即ち軸線に沿って入来するイオンビームを受け入れる。そして、質量分析の出口から所定距離において、集束点、即ち「くびれ」を有する質量分析された出力ビーム24を第2軸線に沿って供給する。この時点で分析開口34が、所望質量のイオンの通路通過を可能にするように配置され、不要な質量のイオンを阻止、即ちインターセプトする。こうして、注入装置10は、広いエネルギー範囲のイオンビームを受け入れるように設計され、高低両エネルギーのイオンビーム24が、イオン源20と質量分析器26との間に特別な区間と、より大きな質量分析器の湾曲半径を必要とする、質量分析器26と分析開口34との間の区間とを横断できるようにしなければならない。これらの区間は、それぞれ入口ドリフト区間および出口ドリフト区間ともいう。
【0008】
一般的に、イオンビームは、特に、高電流イオンビームは、同様に荷電された(正の)イオンをより強く集中させるように構成され、イオンビーム24が、イオンを互いに反発させてイオンビーム径路、即ち、軸線から離れて発散させる傾向があり、この空間電荷作用は、ビームの発散と呼ばれている。
ビームの発散は、特に高電流で低エネルギーの場合においては厄介な問題であり、ビーム(高電流)内でのイオンの高い集中は、イオンの相互反発を増大させる一方、イオンが低い伝搬速度(低エネルギー)を有する場合、イオンに相互反発力を高エネルギー利用の場合よりも長い時間相互反発力を受けることになる。
【0009】
上述したように、さらに、低いエネルギーのイオンビーム24は、相対的に長いドリフト区間にわたり空間電荷作用を受ける。質量分析される前後で、質量分析器を設けることによって広いエネルギー範囲にわたり動作するように構成されている。さらに、空間電荷作用は、引き出されたイオンビームが、30−50cm程度長い質量分析器26を通過する前に、入口ドリフト区間においてより起こる。これは、初期に引き出されたイオンビーム24が所望の質量のイオンと共に不要な質量のイオンを含むからである。低エネルギーのB11イオンビームの場合において、たとえば、イオン源20は、BF3源ガスからプラズマを作り出し、そこからビームイオンが引き出される。引き出されたイオンビーム24は、所望のB11イオンと、他の不要な構成要素、たとえば、フッ素F+、BF1及びBF2イオンを含む。この例では、B11は、一般的に、初期に引き出される全イオンの約1/4程度である。質量分析器26と分析開口34は、協働して不要な構成要素の輸送を抑制する。これにより、ウエハ30に供給される質量分析されたイオンビーム24は、初期にイオン源20から引き出されたイオンビーム24の不要な構成要素を実質的に除いたB11イオンからなる。
【0010】
しかし、イオンビームの構成要素の初期の混合物の結果として、イオン源20近くの、引き出されたビーム電流は、エンドステーションでのイオン注入のための、所望の(質量分析された後の)ビーム電流の約4倍である。引き出されたビーム電流は、分析後の電流よりも大変大きいので、引き出されたイオンビーム24は、質量分析器26内に入る前より4倍以上の空間電荷に晒される。従って、改良されたイオン注入装置及びイオンビームのエネルギー及び種の範囲をサポートするイオン注入機のための空間電荷中和の影響を少なくするための技術が必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、単純化された要約が以下に示され、本発明のいくつかの構成を理解するために与えられている。この要約は、本発明を拡張して概要するものではなく、本発明のキーとなる、即ち、重要な要素を識別するものでもないし、また、本発明の範囲を正確に概説するものでもない。むしろ、この要約の目的は、序文として、本発明を単純化した形態でいくつかの構成を表わすことであり、その詳細は後述する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、イオン注入システム及びその方法に関し、その中のディスパージョンシステム、即ち、プレ−ディスペンサーが、ビームラインアセンブリの入口にあるイオン源近くに設けられ、イオン源から質量分析器に引き出されたイオンビームを選択的に通過させ、あるいは、不要な質量の構成要素を少なくした分散されたビームを形成し、質量分析器に向けるために引き出されたイオンビームをプレ分散させる。
このディスパージョン装置及び本発明の方法は、イオン注入システムのいずれの形式でも使用することができる。このイオン注入システムは、質量分析後の加速構成要素を有する高エネルギーイオン注入機及び、低エネルギー注入機を含む。本発明の種々の構成は、引き出されたイオンビームから不要な質量のイオンを選択的に取り除くように、イオン源から、広い範囲のイオンビームエネルギー用に設計された一般目的の質量分析器に低エネルギーのイオンビームを輸送に際して、イオン源から低エネルギーのイオンビームを輸送する等に空間電荷作用を緩和するのに用いることができる。これにより、主質量分析器の前のビーム電流を低減し、一方、プレ分配内で主たる質量分析器に直接高エネルギービームを供給できる。
【0013】
本発明の1つの構成によれば、イオン注入システムは、引き出されたイオンビームを生じさせるためのイオン源と、前記イオンビームを受け入れるために前記イオン源の近くに配置されるディスパージョンシステムと、入口及び出口を有し、引き出されたイオンビームまたは前記ディスパージョンシステムから分散されたイオンビームのいずれかを前記入口で受け入れて、所望の質量範囲のイオンを前記出口に向かわせる質量分析器とを含む。
前記ディスパージョンシステムは、前記イオン源から前記質量分析器に引き出されたイオンビームを選択的に通過させ、または分散されたイオンビームを前記質量分析器に向けて指向させるように作動可能であり、前記分散されたイオンビームは、前記引き出されたイオンビームより不要な質量範囲のイオンが少ないことを特徴とする。
【0014】
ディスパージョンシステムは、低エネルギーの引き出されたイオンビームを用いるので、非常に短い距離でディスパージョンを行うように発明することができる。それゆえ、引き出されたイオンビームの全体から生じる空間電荷の広がりの影響を抑制する。この天啓的な実施形態が以下に図示されかつ記載されており、ディスパージョンシステムは、ビームラインアセンブリの入口の近くに双極子磁界を形成する複数の磁石を含み、引き出されたイオンビームを選択的に分解構造体に向けて、不要な質量のイオンをインターセプトし、また所望の質量のイオンを主質量分析器内を通過させる。1つの例のディスパージョンシステムは、引き出されたビームを、分析構造体を含む二重のドッグレッグ径路を通過するように構成される。そして、分散されたイオンビームは、元の引き出されたイオンビーム径路に沿って主質量分析器に向かうように再指向させる。別の実施形態では、ディスパージョンシステムは、単一のドッグレッグ径路に沿って引き出されたビームを選択的に再指向させ、分散したイオンビームは、第2径路に沿って主質量分析器に供給される。
【0015】
本発明の別の実施形態は、イオン注入システムにおいて、イオンをイオン源からエンドステーションに輸送するためのビームラインアセンブリを提供する。ビームラインアセンブリは、イオン源から引き出されたイオンビームを受け入れるディスパージョンシステムと、引き出されたイオンビームまたは分散されたイオンビームのいずれかを前記ディスパージョンシステムから受け入れ、前記エンドステーションに向けて所望の質量範囲のイオンを指向させる質量分析器とを含む。前記ディスパージョンシステムは、前記引き出されたイオンビームをイオン源から質量分析器に選択的に通過させ、または、分散されたイオンビームを前記質量分析器に向かって指向させるように作動可能であり、前記分散されたイオンビームは、前記引き出されたイオンビームよりも不要な質量範囲のイオンが少ないことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の別の構成によれば、イオン注入システムにおいて質量分析されたイオンビームを発生させる方法を提供する。この方法は、所望の質量範囲のイオンと不要な質量範囲のイオンとを有する、引き出されたイオンビームを供給し、前記引き出されたイオンビームを質量分析器内に選択的に通過させ、あるいは前記引き出されたイオンビームから分散されるイオンビームを導き、さらに、分散されたイオンビームを質量分析器に供給し、前記分散されたイオンビームが前記引き出されたイオンビームよりも不要な質量範囲のイオンが少なくなるようにし、質量分析器を用いて、前記分散されたイオンビームまたは前記引き出されたイオンビームから不要な質量範囲の少なくともいくつかを取り除き、質量分析されたイオンビームを発生させる、各工程を有する。
【0017】
以下の記載およびこれに付随する図面によって本発明の例示的構成が記載されている。これらの形態は、例示的なものであり、本発明の原理のために使用する種々の方法のいくつかに過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、図面に関連して以下で説明される。ここで同一の参照符号は、全体を通して同一の部材に対して使用される。また、例示の構造は、必ずしも実寸法に関係して描かれていない。本発明は、ディスパージョンシステムを有するイオン注入システム及びそのビームラインアセンブリを提供しており、このディスパージョンシステムは、ビームを発散させないイオンビーム移動を容易にするため、主質量分析器の前に低エネルギービームを選択的にプレ分散させ、そして、主質量分析器に直接より高いエネルギービームを通過させるためのディスパージョンシステムを有する。低エネルギーの注入システム及びそのビームラインアセンブリは、本発明の種々の構成を説明するために、以下で説明する。本発明は、ここで図示されかつ記載されるものとは別の、加速器要素を有する高エネルギーのイオン注入機を含むイオン注入システムを用いることができることを理解してもらいたい。
【0019】
図2は、例示的なイオン注入システム110を図示しており、このシステムは、本発明に従うディスパージョンシステム140を有する。システム110は、ターミナル112、ビームラインアセンブリ114、及びエンドステーション116からなる。ターミナル112は、高電圧電源122によって励起されるイオン源120を含み、引き出されたイオンビーム124aをビームラインアセンブリ114に指向させる。ビームラインアセンブリ114は、イオン源120からエンドステーション116にイオンを輸送するもので、ビームガイド132とイオン源120の近くのビームライン入口に配置されたディスパージョンシステム140を有する質量分析器126からなる。
【0020】
図3A−図3Hは、ディスパージョンシステム140aを有するビームラインアセンブリ114aの可能な実施形態を示し、また図4A及び図4Bは、本発明に従うイオン注入システム110内にディスパージョンシステム140bを有する別の例示的なビームラインアセンブリ114bを示す。さらに、図3A―3C、図4A及び4Bの例に示すように、イオン源120は、1つ以上の負にバイアスされた引出電極120bを用いてプラズマ室120aから引き出される正に荷電したイオンを発生し、これにより、正のイオンは、引き出されたイオンビーム124aに形成される。このイオンビームは、第1作動モードにおいて、ビームライン114内のビーム径路を通ってエンドステーション116に向かう。
【0021】
本発明によれば、ディスパージョンシステム140は、引き出されたイオンビーム124aを受け入れ、この引き出されたイオンビーム124aを質量分析器126に選択的に通過させ、或いは、分散されたイオンビーム124b、124cを質量分析器126に向けて指向させ、分散されたイオンビーム124b、124cは、引き出されたイオンビーム124aよりも不要な質量範囲を有するイオンが少なくなる。ディスパージョンシステム140は、引き出されたイオンビーム124aから不要な質量範囲を有する少なくともいつくかのイオンを取り除くことにより、引き出されたイオンビーム124aから分散されたイオンビーム124b、124cを選択的に導く一方、ここで、分散されたイオンビーム124b、124cと呼称するイオンビーム124b、124cの形で、所望の質量範囲のいくつかのまたは全てのイオンを質量分析器126内に通過させる。分散されたイオンビーム124b、124cは、引き出されたイオンビーム124aよりも不要な質量範囲を有するイオンが少なくなる。
【0022】
1つの可能な適用において、ディスパージョンシステム140は、第1モードにおいて、より高いエネルギービームを励起することなく、たとえば、数KeVから約80〜100KeVの砒素ビームが、イオン源120から引き出されて、ディスパージョンシステム140によって影響されることなく質量分析器に向かう。第2モードでは、数KeVまたはそれ以下のボロンビーム等の低エネルギービームが、ディスパージョンシステム140においてプレ分散され、この分散されたイオンビーム124b、124c(たとえば、より高いボロンの)が質量分析器126に供給される。
【0023】
初期に引き出されたイオンビームの不要な要素のいくつかをプレ分散させることにより、ディスパージョンシステム140と質量分析器126との間のビームラインアセンブリ114の部分において、ビーム電流を低くする。これにより、この部分の空間電荷作用が相対的に減少する。これは、引き出されたイオン電流を増加させると共に、低エネルギービーム124b、124cをビーム発散させることなく、および/またはディスパージョンシステム140と質量分析器126との間の入口ドリフト距離に沿うビーム発散を従来のイオン注入機よりも低下させて、安全に輸送する。
【0024】
ディスパージョンシステム140のいずれの形式も、本発明の範囲内で使用することができ、イオンビーム124aを質量分析器126へ、あるいは分散されたイオンビーム124b、124cを質量分析器126に向けて指向する。その結果、分散されたイオンビーム124b、124cは、引き出されたイオンビーム124aよりも不要な質量範囲のイオンが少なくなる。
【0025】
以下に図示及び記載される例において、ディスパージョンシステム140は、分散モードにおいて作動する電磁石を含み、異なる定位にある少なくとも2つの双極子磁界を発生させる。励起されたとき、磁界は、引き出されたイオンビーム124aを偏向して、分析構造体を通して不要な質量範囲のいくつかのまたは全てのイオンを取り除き、そして、その結果、分散されたイオンビーム124b、124cを最終の質量分析のために主質量分析器126に向かわせ、質量分析器126からエンドステーション116に、ビームラインアセンブリの出口にある最終の分析開口134を通って、最終の質量分析されたイオンビーム124dを生じさせる。
【0026】
第1作動モードにおいて、ディスパージョンシステム140は、消勢され、これにより、引き出されたイオンビーム124aは、ディスパージョンシステム140を通って質量分析器126にほぼ真直ぐ向かう。この二重モードの作動は、ディスパージョンシステム140上で、低エネルギーのイオンビームのより最適化された輸送を容易にして、より高いエネルギービームをサポートする。本発明のディスパージョンシステム140は、多くの場合において、ほとんど修正無く現在のイオン注入機に設置できるように設計することができる。
【0027】
図3A−3Hは、図2の例示的なイオン注入システム110におけるビームラインアセンブリ114aの1つの実施形態を示す。このビームラインアセンブリ114aは、イオン源120から引き出されたイオンビーム124aを受け取るディスパージョンシステム140aと、第1モードにおいて(図3A及び図3C)、引き出されたイオンビーム124a、または第2モードにおいてディスパージョンシステム140aから分散されたイオンビーム124bのいずれかを受け入れ(図3B)、そして、所望の質量範囲のイオンを有する質量分析さえたビーム124dをエンドステーション116(図2)に向かわせる及び質量分析器126aとからなる。
【0028】
図3Aに図示するように、典型的なディスパージョンシステム140aは、3つの電磁石151,152及び153とともに、ビームラインアセンブリ114aの入口にあるイオン源120の近くに配置されている、1つ以上のブロック表面と開口162を有する分析構造体160を含む。磁界を発生させるいずれの装置も本発明の範囲内で用いることができ、電磁石、永久磁石、および/またはそれらの組み合せであってもよい。図3Aの第1作動モードにおいて、これらの磁石151−153は、オフ状態(たとえば、消勢)にあり、引き出されたイオンビーム124aは、ディスパージョンシステム140aを通過して何ら修正されずに、第1径路を通って質量分析器126aを通過できる。
【0029】
図3B及び図3D−3Hは、ディスパージョンシステム140aの第2作動モードを示し、ここで、磁石151−153は励磁されて、ディスパージョンシステム140a内に双極子磁界を作り出す。図3Bに示すように、磁石151−153の磁界は協働して、引き出されたイオンビーム124aを元の第1径路から離れさせ、二重のドッグ−レッグ(dog-leg)径路を通過して分析構造体160に向かわせる。分析構造体160とその開口162は、分析構造体160のブロック表面によって不要なイオンがほぼインターセプト、即ち、阻止され、そして、所望の質量範囲のイオンが開口162を通過し、分散されたイオンビーム124bを形作るように配置されている。これらの所望のイオンは、ディスパージョンシステムによって第1径路上に指向される。これにより、分散されたイオンビーム124bは、主質量分析器126aの入口に供給される。
【0030】
図3A及び3Bにおいて、分析構造体160は、ほぼ固定され、その結果、第1作動モード(図3A)において、分析構造体160は、イオン源120から引き出されたイオンビーム124aを質量分析器126への輸送を妨げない。図3Cは、1つの可能なディスパージョンシステム140aの実施形態を示し、ここで、分析構造体160は、分析構造体160が第1径路に沿って引き出されたイオンビームの通路を妨げない第1作動モードでの第1位置と、分析構造体160が第1径路に沿って引き出されたイオンビーム124aの通路を少なくとも部分的に妨げる第2作動モードでの第2位置との間を移動可能である。他の実施形態では、本発明の範囲内で可能であり、不要な質量範囲のいくつかのイオンをインターセプトし、また第2モードにおいて、所望の質量範囲の少なくともいくつかのイオンを質量分析器内を通過させるように、分析構造体160が設けられている。
【0031】
図3D−3Hを再び参照すると、図3Dは、更に、ディスパージョンシステム140a内での複数の磁石151−153および分析構造体160を図示し、また、図3E−3Hは、図3Dに対応する切断ライン3E―3E、3F−3F、3G−3G及び3H−3Hに沿って見たディスパージョンシステム140a内の、双極子磁界およびそれにより生じる横方向ビームを示している。図3Dは、第2モードにおける1つの作動例を示し、ここでは、ボロンB11を用いてウエハをイオン注入し、イオン源120は、B11と、図3Aのプラズマ室120a内のBF3源ガスから引き出されるフッ素F+(たとえば、BF1及びBF2)等の不要な質量の1つ以上の構成要素を含む。
【0032】
引き出されたビーム124aは、第1径路に沿ってイオン源120から供給され、そして、第1磁石151内の第1磁界に遭遇する。第1磁石は、上側及び下側の磁極151a及び151bを含み、そこで、図3E(たとえば、図3Dの上側)下側の磁極(たとえば、N極)から上側の磁極(たとえば、S極)に向かう第1の双極子磁界によって、イオンビーム124a内のイオンに左側へ横方向の力を生じさせる。こうして、引き出されたイオンビーム124aは、第2の双極子磁石152に向けて第1方向における第1径路から離れる方向に向かう。図3F及び図3Gは、上側及び下側磁極152a及び152bを有する第2磁石152内のイオンビーム124aを示し、上側磁極152aから下側磁極152bに走る磁力線を有する第2の磁界を作り出す。この第2の磁界は、第1方向から離れる第2方向右側に、引き出されたイオンビーム124aを向かわせる。また、第1径路(例えば、図3Dにおける分析構造体160に向けて戻る)に向けてイオンビーム124aを指向させる。
【0033】
磁石151−153の磁界及び分析構造体160の位置は、不要な質量範囲の少なくともいくつかのフッ素F+、BF1及びBF2イオンが、ブロック表面、即ち、分析構造体160の表面に向けられる一方、少なくともいくつかの所望のB11イオンは、分散されたイオンビーム124bを形成するために、分析構造体160の開口を通るように向けられる。図示する例では、磁石151から磁石153は、対向して形成された巻線を有する単一のサブアセンブリとして構成することができる。第1および第3の双極子磁石151及び153は、二重のドッグ−レッグ径路内で引き出されたイオンビームを本質的に曲げるために、対向する中央または第2の双極子磁石152との間で磁界が形成される。図示された例では、第1及び第後の磁石151及び153を通る磁力線は、中央磁石152を介して戻されるので、戻りヨークを必要としない。
【0034】
所望のイオンが、分析構造体160に設けた開口162を通過すると、その結果の分散されたビーム124bは、図3Hに示すように第3磁石に遭遇する。この磁石153は、上側及び下側磁極153a及び153bを含み、第2磁石152の異なる方向の第2磁界を用いて第3磁界を作り出す。第3磁石153の磁力線は、下側磁極153bから上側磁極153aに延びており、図3D及び3Hに示すように、イオンビーム124b上に力を作用させ、分散されたイオンビーム124bを第1径路に沿って進ませる。こうして、磁石151−153によって形成される磁界は、二重のドッグ−レッグ形状のサブ径路を与え、この径路に沿ってイオンビーム124aが分散されたイオンビーム124bを作動の第2モードにおいて、質量分析器126に輸送するためにいくつかのまたは全ての不要なイオンを取り除く(たとえば、ディスパージョン)。
【0035】
図3Bに示すように、この特殊な実施形態は、第1作動モードにおいて、引き出されたイオンビーム124aのために用いられる同一の径路に沿って、第2の作動モードにおいて、分散されたイオンビーム124bを質量分析器126に導くことを容易にする。これにより、質量分析器126aは、現在のイオン注入機110に変更を加えることなく、ディスパージョンシステム140aを設置することができる。しかし、分散されたイオンビーム124bは、第1モード(図3A)において、引き出されたイオンビーム124aよりも質量分析器の入口からのより短い距離で、第2モード(図3B)において、主質量分析器126aに現れるので、質量分析器126aと最終の分析開口134との間の出口ドリフト距離および/または開口134の寸法は、入口ドリフト長さ(たとえば、シフトされた対象物距離)における差に対して補正するために、個別にまたは質量分析器126aのフォーカシング特性の調整と共に調整する必要がある。
【0036】
この点に関して、イオン源120と質量分析器126aとの間の入口ドリフト距離の小さな初期部分内にディスパージョンシステム140aを配置することが望ましい。図3A−3Hの例において、ディスパージョンシステム140aにおけるこのサブ径路に沿う湾曲半径は、約5cmであり、過度の質量分析(たとえば、ディスパージョン)を与えて、分散されたイオンビーム124bの所望イオンによって見られる空間電作用を緩和する。
ディスパージョンシステム140aの質量分析性能は、全体システムの質量分析性能にとって重要ではなく、初期の質量分析のいくつかの測定のためにのみ必要であることに注目してほしい。たとえば、ボロンビーム124に対して、ディスパージョンシステム140aは、原子量が約19であるフッ素の最も近い主構成要素(図3DにおけるF+)の全部または大部分から、原子量が約11のB11イオンの全部または大部分を効果的に分離するために、比較的低い質量分析または約2/1の分解能力を有するのに必要である。
【0037】
そのため、ディスパージョンシステム140aは、第2作動モードにおいて供給される比較的低いエネルギー(一例では、約500eV〜約3KeV)のイオンビームに関して、かなり強いフォーカシング性能(たとえば、小さい湾曲半径)を有することが望ましい。そこで生じる初期のディスパージョンは、輸送されるビーム電流の量を減少させ、そして、ディスパージョンシステム140aと質量分析器126aとの間の入口ドリフト長さに沿う空間電荷作用の影響を少なくする。
【0038】
図4A及び図4Bは、本発明の別の実施形態を示し、ここでは、より小さいディスパージョンシステム140aがビームラインアセンブリ114b内に設けられる。この例では、2つの磁石151及び152のみがディスパージョンシステム140bに用いられ、引き出されたイオンビームが、1つの開口162を有する分析構造体160とともに、単一のドッグ−レッグ形状の別の径路を通過するように指向され、第2作動モードにおいて分散されたイオンビーム124cを作り出す。図4A及び図4Bのビームラインアセンブリ114bは、イオン源から引き出されたイオンビーム124aを受け取るディスパージョンシステム140bと、ディスパージョンシステム140bから、第1モード(図4A)において第1径路に沿って引き出されたイオンビーム124a、または第2モード(図4B)において第2径路に沿って分散されたイオンビーム124cのいずれかを受け入れる修正された質量分析器126bとを有している。
【0039】
図4Aの第1作動モードにおいて、ディスパージョンシステムの磁石151及び152は、オフ状態であり、引き出されたイオンビーム124aは、イオン源120から質量分析器126bの入口に第1径路に沿って伝搬することができる。この質量分析器126bは、質量分析機能を実行し、ビームラインアセンブリ114bの出口端にある分析開口134を通過して、質量分析されたイオンビーム124dをエンドステーション(図2)116に供給する。第2作動モードにおいて、ディスパージョンシステムの磁石151及び152は、オン状態であり、第1、第2の異なる向きの双極子磁界(たとえば、上述の図3E及び3Fに示されたと同様に)を形成し、これにより、引き出されたイオンビーム124aは、第1径路から離れて第2のほぼ平行な径路に向けられる。このイオンビーム124aは、第2径路に沿う分析構造体160に遭遇し、これにより、所望の質量範囲のイオンは、その開口162を通過(たとえば、不要なイオンの全部または大部分が分析構造体160によって阻止され)し、その結果、分散されたイオンビーム124cを生じる。
【0040】
分析されたイオンビーム124cは、第2径路に沿って質量分析器の入口に向けられ、そして、図4における引き出されたイオンビーム124aとは異なる位置で、この質量分析器126b内に入る。その結果、図4A及び図4Bのアプローチが、質量分析器126bに用いられ、上記図3A−図3Hの実施形態よりも広い磁石の入口を有する質量分析器126bを必要とする。しかし、この構造は、測定距離の補正を可能にし、かつ図3A−図3Hの上記実施形態よりもよりコンパクトになる。
【0041】
多くの異なる実施形態が本発明の範囲内で可能である。この点において、上記実施形態において湾曲する先行のイオンビームは、一般的に、質量分析器126の平面内で起こり、これは、本発明にとって必要ではないが、ディスパージョンシステム140内の磁界及び第2作動モードにおいて生じるイオンビーム124B、124cの別のビーム径路は、質量分析平面に関してある角度を有することになる。それゆえ、たとえば、図3A−図3Hのディスパージョンシステム140bは、引き出されたイオンビーム124aを1つ以上の平面内の種々の方向に湾曲させるように変更することができ、この平面は、主質量分析器126aを通過して曲げられるように、イオンビーム124の平面に関して必ずしも同一平面上である必要はない。
【0042】
さらに、典型的なディスパージョンシステム140a及び140bが、図3A−図3H、図4A及び図4Bの例において、第1モードで用いられた同一の第1径路に沿って第2作動モードにおいて引き出されたイオンビーム124aを受け入れるが、これは、本発明において、厳格に必要とされるものではない。さらに、線形加速器の構成要素は、本発明の範囲内のイオン注入システム110において、主質量分析器126に設けることができる。上述された電磁石151−153は、適当な構造で形成された巻線を有する適当な材料を用いて構成することができ、励磁されるとき、引き出されたイオンビーム124aの選択的なプレ分散のための磁界を作り出す。さらに、適当な磁界発生装置が、引き出されたイオンビームの選択的分散のための磁界を作り出すのに用いることができる。たとえば、永久磁石が、引き出されたイオンビーム124a上に適当な磁界を生じさせるように、所定位置に配置され、第2作動モードにおいて、イオンビームを分析構造体に向かわせ、さらに、分散されたイオンビーム124b、124cを、主質量分析器126に向かわせることもできる。第2作動モードは、引き出されたイオンビーム124aがプレ分散されない第1作動モードとは別の位置に移動することができる。
【0043】
本発明は、1つ以上の実施形態に関して記載してきたが、添付の特許請求の範囲の精神及び技術的範囲から逸脱しない例示の実例に対して修正例及び変更例を作ることができる。特に上述の構成要素または構成(ブロック、ユニット、エンジン、アセンブリ、装置、回路、システム等)によって実行される種々の機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」に対する参照を含めて)は、他に表示されていなければ、たとえ開示された構成に構造的に同等でなくても、本発明のここで図示された例示的実施においてその機能を果たすものであれば、説明された構成要素の特定された機能を実行する(即ち、機能的に同等である)いずれかの構成要素に相当するものと意図されている。
【0044】
更に、本発明の特定の特徴が幾つかの実施の内のただ一つに対して開示され得てきたようであるが、そのような特徴は、いずれかの或る又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上の特徴と組み合わされ得るものである。更に、「含んでいる」、「含む」、「有している」、「有する」、「備える」またはそれらの変形が詳細な説明か特許請求の範囲のいずれかに使用されている限り、このような用語は、用語の「構成されている」と同様に包含されるものであると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】従来例の低エネルギーイオン注入システムを示す概略図である。
【図2】本発明の1つ以上の構成に従うディスパージョンシステムを有する例示的な低エネルギーイオン注入システムを示す概略図である。
【図3A】図2のイオン注入システム内のビームラインアセンブリの1つの実例を示し、第1径路に沿って引き出されたイオンビームを質量分析器に選択的に通過させために、ディスパージョンシステム(オフ)時の第1モードにおける磁石を有するディスパージョンシステムを有する上面図である。
【図3B】第1径路に沿って主質量分析器に向けて指向する分散されたビームを作り出すために、分析構造体を有する二重のドックレッグ径路を通って引き出されたビームを指向させるために、第2モードにおいて、励起されたディスパージョンシステム磁石を有する図3Aのビームラインアセンブリを示す上面図である。
【図3C】ディスパージョンシステムが第1及び第2作動モードにおける第1及び第2位置の間で移動できる、図3A及び図3Bのビームラインアセンブリの変形例を示す上面図である。
【図3D】図3A及び図3Bのビームラインアセンブリにおいて、ディスパージョンシステム磁石と分析構造体のさらなる構成を示す上面図である。
【図3E】図3A−図3Dのディスパージョンシステムにおいて、励起的な双極子磁界と横方向の分析ビームを示す、図3Dの切断ライン3E−3Eに沿って切断した部分側断面図である。
【図3F】図3A−図3Dのディスパージョンシステムにおいて、励起的な双極子磁界と横方向の分析ビームを示す、図3Dの切断ライン3F−3Fに沿って切断した部分側断面図である。
【図3H】図3A−図3Dのディスパージョンシステムにおいて、励起的な双極子磁界と横方向の分析ビームを示す、図3Dの切断ライン3H−3Hに沿って切断した部分側断面図である。
【図4A】図2のイオン注入システム内のビームラインアセンブリの別の実例を示し、第1径路に沿って引き出されたイオンビームを質量分析器に選択的に通過させために、ディスパージョンシステム(オフ)時の第1モードにおけるディスパージョンシステムを有する上面図である。
【図4B】第2径路に沿って主質量分析器に向けて指向する分散されたビームを作り出すために、分析構造体を有する単一のドックレッグ径路を通って引き出されたビームを指向させるために、第2モードにおいて、励起されたディスパージョンシステム磁石を有する図4Aのビームラインアセンブリを示す上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出されたイオンビームを生じさせるためのイオン源と、
前記イオンビームを受け入れるために前記イオン源の近くに配置されるディスパージョンシステムと、
入口及び出口を有し、引き出されたイオンビームまたは前記ディスパージョンシステムから分散されたイオンビームのいずれかを前記入口で受け入れて、所望の質量範囲のイオンを前記出口に向かわせる質量分析器とを含み、
前記ディスパージョンシステムは、前記イオン源から前記質量分析器に引き出されたイオンビームを選択的に通過させ、または分散されたイオンビームを前記質量分析器に向けて指向させるように作動可能であり、前記分散されたイオンビームは、前記引き出されたイオンビームよりも不要な質量範囲のイオンが少ないことを特徴とするイオン注入システム。
【請求項2】
前記ディスパージョンシステムは、第1モードにおいて第1径路に沿って、前記イオン源から質量分析器に向けて前記引き出されたイオンビームを選択的に通過させ、或いは、第2モードにおいて前記第1径路に沿って、前記分散されたイオンビームを前記質量分析器に向かうように作動可能であることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記ディスパージョンシステムは、前記引き出されたイオンビームを前記第1径路から離れた方向に指向させ、さらに、前記第1径路上に所望の質量範囲のイオンを戻して、前記第2モードにおいて、前記分散されたイオンビームを作り出すように作動可能であることを特徴とする請求項2記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記ディスパージョンシステムは、前記第2モードにおいて、前記引き出されたイオンビームからのイオンを前記第1径路から離れた方向に向かうように前記第1径路に沿って第1磁界を形成する第1磁界発生装置と、
第2モードにおいて、前記引き出されたイオンビームを前記第1径路に戻すように指向させる第2磁界を形成する第2磁界発生装置と、
不要な質量範囲の少なくとも幾つかのイオンをインターセプトしかつ所望の質量範囲の少なくともいくつかのイオンが前記第2モードにおいて前記質量分析器を通過するようにする分析構造体と、を含んでいることを特徴とする請求項3記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記分析構造体は、前記第1径路に沿って引き出されたイオンビームの通過を妨害しない第1モードの第1位置と、前記第1径路に沿って引き出されたイオンビームの通過を部分的に妨害する第2モードの第2位置との間を移動可能であり、
不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンをインターセプトし、そして、所望の質量範囲の少なくともいくつかのイオンを前記第2モードにおいて通過させることを特徴とする請求項4記載のイオン注入システム。
【請求項6】
前記ディスパージョンシステムは、所望の質量範囲のイオンが、第2モードにおいて第1径路に沿って前記質量分析器に向けて指向させる第3磁界を形成する第3磁界発生装置を含んでいることを特徴とする請求項4記載のイオン注入システム。
【請求項7】
前記ディスパージョンシステムは、
少なくとも1つのブロック表面と1つの開口を含む分析構造体と、
前記第2モードにおいて前記ディスパージョンシステム内に複数の磁界を形成するように作動可能で、前記複数の磁界は、不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンが、前記引き出されたイオンビームから前記分析構造体の少なくとも1つのブロック表面に向かい、かつ前記分散されたイオンビームを形成するために、前記所望の質量範囲の少なくともいくつかのイオンが、前記分析構造体の開口を通過するように指向させる複数の双極子磁石と、を含むことを特徴とする請求項3記載のイオン注入システム。
【請求項8】
前記ディスパージョンシステムは、
少なくとも1つのブロック表面と1つの開口を含む分析構造体と、
イオン源近くの第1の定位に、前記引き出されたイオンビームのイオンを、前記第2モードにおいて第1方向へ前記第1径路から離れるように指向させる第1双極子磁界を形成する第1磁界発生装置と、
前記第1の定位と異なる第2の定位に、前記分析構造体に向けて前記第1方向から離れる第2の方向にイオンを指向させる第2双極子磁界を形成し、前記第2双極子磁界が、不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンを前記分析構造体の少なくとも1つのブロック表面に向かい、さらに前記第2双極子磁界が前記所望の質量範囲の少なくともいくつかのイオンを前記分散されたイオンビームを形成するために前記分析構造体の開口を通過するように指向するための第2磁界発生装置と、
前記第2の定位と異なる第3の定位に、前記第1径路に沿って前記質量分析器に向けて分散したイオンビームのイオンを指向させる第3双極子磁界を形成する第3磁界発生装置とを含むことを特徴とする請求項3記載のイオン注入システム。
【請求項9】
前記第1、第2、第3磁界発生装置は、双極子電磁石であることを特徴とする請求項8記載のイオン注入システム。
【請求項10】
前記ディスパージョンシステムは、第1モードにおいて第1径路に沿って、前記イオン源から引き出されたイオンビームを選択的に通過させ、または、前記第2モードにおいて第2径路に沿って、前記分散されたイオンビームを前記質量分析器に向けて指向するように作動可能であることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項11】
前記ディスパージョンシステムは、前記引き出されたイオンビームを前記第1径路から離れるように指向させ、かつ前記第2モードにおいて前記第2径路に沿って、所望の質量範囲のイオンを前記質量分析器に向けて再び指向させるように作動可能であることを特徴とする請求項10記載のイオン注入システム。
【請求項12】
前記ディスパージョンシステムは、
前記引き出されたイオンビームからのイオンを前記第2モードにおいて前記第1径路から離れるように指向させる、前記第1径路に沿う第1磁界を形成する第1磁界発生装置と、
前記引き出されたイオンビームからのイオンを前記第2モードにおいて前記第2径路に沿って指向させる第2磁界を形成する第2磁界発生装置と、
前記不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンをインターセプトし、さらに、前記所望の質量範囲のイオンの少なくともいくつかが、前記第2モードにおいて前記第2径路に沿って前記質量分析磁石内を通過するための分析構造体と、含むことを特徴とする請求項11記載のイオン注入システム。
【請求項13】
前記ディスパージョンシステムは、
少なくとも1つのブロック表面と1つの開口を含む分析構造体と、
前記第2モードにおいて前記ディスパージョンシステム内に複数の磁界を形成するように作動可能で、前記複数の磁界は、不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンが、前記引き出されたイオンビームから前記分析構造体の少なくとも1つのブロック表面に向かい、かつ前記分散されたイオンビームを第2径路に沿って形成するために、前記所望の質量範囲の少なくともいくつかのイオンが、前記分析構造体の開口を通過して、前記質量分析器に向かうように指向させる複数の双極子磁石と、を含むことを特徴とする請求項11記載のイオン注入システム。
【請求項14】
前記ディスパージョンシステムは、
少なくとも1つのブロック表面と1つの開口を含む分析構造体と、
イオン源近くの第1の定位に、前記引き出されたイオンビームのイオンを前記第2モードにおいて第1方向へ前記第1径路から離れるように指向させる第1双極子磁界を形成する第1磁界発生装置と、
前記第1の定位と異なる第2の定位に、前記分析構造体に向けて前記第1方向から離れる第2の方向にイオンを指向させる第2双極子磁界を形成し、前記第2双極子磁界が、イオンを前記分析構造体に向かって第2方向に指向させ、かつ不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンを、前記分析構造体の少なくとも1つのブロック表面に指向させ、さらに前記第2双極子磁界は、前記所望の質量範囲の少なくともいくつかのイオンを前記分散されたイオンビームを形成するために前記分析構造体の開口を通過するように指向させ、前記第2双極子磁界が、分散されるイオンビームのイオンを前記第2径路に沿って前記質量分析に向けて指向するようにした第2磁界発生装置と、を含むことを特徴とする請求項11記載のイオン注入システム。
【請求項15】
前記ディスパージョンシステムは、分散されたイオンビームを引き出されたイオンビームから導くことを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項16】
前記ディスパージョンシステムは、分散されたイオンビームを導くために、引き出されたイオンビームから不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンを除去することを特徴とする請求項15記載のイオン注入システム。
【請求項17】
イオン注入システムにおいて、イオンをイオン源からエンドステーションに輸送するためのビームラインアセンブリであって、
イオン源から引き出されたイオンビームを受け入れるディスパージョンシステムと、
引き出されたイオンビームまたは分散されたイオンビームのいずれかを前記ディスパージョンシステムから受け入れ、前記エンドステーションに向けて所望の質量範囲のイオンを指向させる質量分析器と、を含み、
前記ディスパージョンシステムは、前記引き出されたイオンビームをイオン源から質量分析器に選択的に通過させ、または、分散されたイオンビームを前記質量分析器に向かって指向させるように作動可能であり、前記分散されたイオンビームは、前記引き出されたイオンビームよりも不要な質量範囲のイオンが少ないことを特徴とするビームラインアセンブリ。
【請求項18】
前記ディスパージョンシステムは、第1モードにおいて第1径路に沿って、引き出されたイオンビームを前記イオン源から質量分析器に向けて選択的に通過させ、または第2モードにおいて第1径路に沿って、前記分散されたイオンビームを質量分析器に向けて指向させるように作動可能であることを特徴とする請求項17記載のビームラインアセンブリ。
【請求項19】
前記ディスパージョンシステムは、第1モードにおいて第1径路に沿って、前記引き出されたイオンビームを前記イオン源から前記質量分析器に向けて選択的に通過させ、または第2モードにおいて第2径路に沿って、前記分散されたイオンビームを質量分析器に向けて指向させるように作動可能であることを特徴とする請求項17記載のビームラインアセンブリ。
【請求項20】
前記ディスパージョンシステムは、前記引き出されたイオンビームから導くことを特徴とする請求項17記載のビームラインアセンブリ。
【請求項21】
前記ディスパージョンシステムは、分散されたイオンビームを導くために、前記引き出されたイオンビームから不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンを取り除くことを特徴とする請求項20記載のビームラインアセンブリ。
【請求項22】
イオン注入システムにおいて質量分析されたイオンビームを発生させる方法であって、 所望の質量範囲のイオンと不要な質量範囲のイオンとを有する、引き出されたイオンビ ームを供給し、
前記引き出されたイオンビームを質量分析器内に選択的に通過させ、あるいは前記引き
出されたイオンビームから分散されるイオンビームを導き、さらに、分散されたイオンビームを質量分析器に供給し、前記分散されたイオンビームが前記引き出されたイオンビームより不要な質量範囲のイオンが少なくなるようにし、
質量分析器を用いて、前記分散されたイオンビームまたは前記引き出されたイオンビームから不要な質量範囲の少なくともいくつかを取り除き、質量分析されたイオンビームを
発生させる、各工程を有することを特徴とする方法。
【請求項23】
前記分散されたイオンビームを前記引き出されたイオンビームから導く工程は、前記不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンを前記引き出されたイオンビームから取り除くステップを有することを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンを前記引き出されたイオンビームから取り除くステップは、
前記引き出されたイオンビームのイオンを偏向する第1双極子磁界を第1の定位に形成し、
前記不要な質量範囲の少なくともいくつかのイオンを分析構造体のブロック表面に指向させ、さらに前記所望の質量範囲の少なくともいくつかのイオンを前記分散されたイオンビームを形成するために前記分析構造体の開口を通過させて指向させるように、第2の定位にある第2双極子磁界を形成することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記分散されたイオンビームを質量分析器に供給する供給する工程は、前記分散されたイオンビームを前記引き出されたイオンビームの元の径路に沿って、前記質量分析器に向けて指向させる第3双極子磁界を形成することを含んでいる請求項24記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−531968(P2007−531968A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506350(P2007−506350)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011328
【国際公開番号】WO2005/098894
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(500266634)アクセリス テクノロジーズ インコーポレーテッド (101)
【Fターム(参考)】