説明

イオン飲料飲用器

【課題】飲料に含まれ、ウ蝕、歯周病、あるいはインフルエンザ等の予防に有効とされるイオン物質を、口腔咽頭内組織表面に電気的に誘導して吸着させるための、イオン飲料飲用器の開発を課題とするものである。
【解決手段】絶縁性素材でできた容器において、飲料と接する部分である容器の内側と生体の手と接する部分である容器の外側に、白金電極、あるいはイオン化傾向が小さく耐酸性の高い白金代替電極を設置して、バッテリーと接続することを基本的手段とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウ蝕、歯周病、インフルエンザ等の予防において、鉄イオンを含んだラクトフェリンやカルシュウムイオンを含んだ乳飲料、あるいはフッ素イオンを含んだお茶等の、口腔咽頭内において有益な作用を有するイオン物質を含有した飲料を飲む際に、有益イオン物質を口腔咽頭内組織表面に電気的に誘導し吸着させるための飲用器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔内の二大疾患であるウ蝕と歯周病はそれぞれの病原菌による感染症であるが、予防を目的とする口腔内での殺菌消毒剤の長期連用は、好ましくない副作用の発生が考えられるため、望ましい予防方法とは考えられていなかった。
同様に、風邪ウイルスやインフルエンザウイルス等も、鼻腔粘膜や口腔咽頭粘膜を介して感染することが知られているが、予防を目的とする口腔咽頭内での殺菌消毒剤の長期連用は、好ましいものではなかった。
一方、人や牛の乳や涙等に含まれるラクトフェリンには、細胞外で抗菌作用や抗ウイルス作用等のあることが知られており、ウ蝕の抑制作用、歯周病の抑制作用等のあることも明らかとなってきた。また、従来から、カルシュウムやフッ素等の食品や飲料に含まれる成分が、ウ蝕を予防する作用を有していることが知られていたが、それらは食品あるいは飲料としての摂取様式であったため、口腔咽頭内の組織への移行は受動的拡散以上のメカニズムを有しておらず、能動的な予防効果の発現を期待するに足る口腔咽頭内残留量の確保が可能な摂取方法の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
飲料に含まれ、ウ蝕、歯周病、あるいはインフルエンザ等の予防に有効とされるイオン物質を、口腔咽頭組織表面に電気的に誘導して吸着させるための、イオン飲料飲用器の開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
鉄の陽イオンを含むラクトフェリンやカルシュウムイオン、あるいは陰イオン物質であるフッ素イオン等のイオン物質は、飲料中に在っても電気的な極性を示すことから、電場内で電気的に誘導することが可能である。
10ボルト以下の直流電圧で生体内に数百μアンペア以下の電流を流し、口腔内に電場を発生させても、疼痛を生じることや生命に危険を及ぼすことがない。
本発明はイオン物質と生体が有する上記の性状を利用するもので、導電性を有するラクトフェリンやカルシュウムイオン、あるいはフッ素イオン等の有用イオン物質を含有した飲料の飲用中に口腔咽頭内に電場を発生させ、有用イオン物質を口腔咽頭粘膜表面に電気的に誘導し吸着させるよう飲用器を構成するものであり、絶縁性素材でできた容器において、飲料と接する容器の内側と生体の手と接する容器の外側に、それぞれ電極を設置して、バッテリーと接続することを基本的手段とするものである。
【発明の効果】
【0005】
陽イオン物質を飲用する場合には、飲料と接する容器の内側の電極を陽極に、生体の手と接する容器の外側の電極を陰極に設定することで、陽イオン物質を含んだ飲料の吸飲に際して、口腔咽頭粘膜が陰極側、口腔咽頭内を満たす飲料が陽極側となる電場が発生し、飲料に含まれる陽イオン物質を口腔咽頭粘膜表面に電気的に誘導することが可能である。
また、陰イオン物質を含んだ飲料を吸飲する場合には、電極の極性を陽イオン物質の場合と逆に設定することで、飲料の吸飲に際して陰イオン物質を口腔咽頭粘膜表面に電気的に誘導することが可能である。
以下、陽イオン物質であるラクトフェリン含有飲料を飲用する例を主としながら、カルシュウムイオンやフッ素イオンを含有する飲料の飲用例も交えて説明する。
イ)本発明によれば、導電性を有したラクトフェリン含有飲料が容器に注がれた状態で、容器の外側の陰電極部を手にしてストローで吸飲している間、ラクトフェリン含有飲料と生体内を導電経路とした電気回路が成立して、飲料を満たした口腔咽頭内に電場が発生し、陽イオン物質であるラクトフェリンを陰極側の口腔咽頭粘膜表面に電気的に誘導する機能が自動的に作動する。
これはラクトフェリンとカルシュウムイオンを合わせて含有する飲料の場合でも、カルシュウムイオンだけを含有する飲料の場合でも同様に作動する他、フッ素イオン等の陰イオン物質を含んだ飲料を吸飲する場合にも、電極の極性を逆に設定することで同様なメカニズムで同様な機能を作動することができる。
ロ)口腔咽頭粘膜表面が唾液由来のタンパク質や電解質を含んだ液性皮膜によって被われていることから、口腔咽頭粘膜表面に誘導されたイオン物質が液性皮膜に吸着して、飲料の吸飲後も口腔咽頭内に残留する。
ラクトフェリン飲料を飲用した場合には、口腔咽頭粘膜を被っている唾液由来成分の液性被膜にラクトフェリンが吸着して、口腔咽頭粘膜に付着している細菌の活性を抑制し、タンパク質分解酵素の産生を抑制する。
これによって、口腔咽頭粘膜上の粘膜保護タンパク質が守られて、細菌やウィルスの口腔咽頭粘膜内への侵入を防ぎ、インフルエンザや風邪を予防する効果を期待することができる他、口腔咽頭内の菌体量やエンドトキシン量を抑制して、誤嚥性肺炎を予防する効果を期待することができる。
ハ)歯肉溝内の歯根表面や歯肉溝上皮が、各種タンパク質やタンパク質分解酵素、電解質等を含んだ導電性のある歯肉溝滲出液によって浸漬されていることから、イオン物質の歯肉溝内への電気的な誘導と歯肉溝滲出液への溶解が可能である。
歯肉溝滲出液に溶解したラクトフェリンは、歯肉溝内で抗菌性を発揮する他、各種タンパク質分解酵素によってラクトフェリシンに変換され、より強力な抗菌性を発揮して歯周病を予防する効果を期待することができる。
ニ)舌表面あるいは舌苔表面に吸着したラクトフェリンが雑菌の繁殖を抑制して、口臭を抑制する効果を期待することができる。
ホ)カルシュウムイオンを含む飲料を飲用した場合では、カルシュウムイオンが口腔粘膜上の液性被膜に吸着して残留し、低濃度なカルシュウムイオンが口腔内に持続的に溶出する泉源となる。これによって、歯牙表面の獲得被膜やバイオフィルムに微量なカルシュウムイオンが持続的に供給され、エナメル質の脱灰を抑制して再石灰化を促進することができる。
同様なメカニズムは、電極の極性を変換することによって、陰イオン物質であるフッ素イオンを含む飲料を飲用する場合でも発現することができる。
ヘ)陽イオンであるカルシュウムイオンと陰イオンであるフッ素イオンを共に含んでいるミルクティ−様飲料を飲用する場合には、通電回路に電極の極性を変換できるスイッチを組み込むことが便利であるが、一般的な生活ではティ−カップとミルクカップが区別されていることから、陰イオン用のカップと陽イオン用のカップの、スイッチを持たない二種類の飲用器を備えて使用することでも、ほとんど不便を生じるものではない。
本発明の使用によって、口腔内にフッ素イオンとカルシュウムイオンを持続的に存在させてエナメル質の再石灰化を効果的に促進することができることから、ウ蝕の予防はもとより、表在性の初期ウ蝕を完治させる効果を期待することができる。
ト)化学的な抗菌剤や消毒剤に比べ、食品成分であるラクトフェリンやカルシュウム等は、高齢者や若年者における長期連用でも安全性が高いと考えられる。
チ)要介護者の口腔内、あるいはブラシの清掃作用の及ばない所にも、補助的ではあるがウ蝕や歯周病の予防作用を及ぼすことが可能である。
リ)本発明を用いて、フッ素あるいは薬効のあるイオン物質を含有した洗口剤を口腔内に満たし、通電状態を数十秒間維持することで、単に洗口する以上のフッ素あるいは他のイオン物質を口腔粘膜上に吸着させることができる。これによって、口腔内における各種物質の作用と作用の持続時間を増大することができる。
ヌ)就寝中に唾液の分泌量が減少してリスクが増大することから、ラクトフェリンやカルシュウム、あるいはフッ素等を含有した飲料を就寝前に飲用することで、誤嚥性肺炎やウ蝕、歯周病などを抑制する効果を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、陽イオン物質への適応に電極の極性を設定した上で、ラクトフェリン含有飲料を飲用する例にもとづいて説明する。
図1は、本発明の斜視図である。
容器(1)の外側に付いている取っ手(2)の表面に設置された電極を陰極に設定して、陰電極(3)としたことを示すものである。
図2は、上記の斜視図を透視的に描いた模式図である。
容器(1)の基底側内側面に設置された電極を陽極に設定して陽電極(5)とし、取っ手(2)の内部をバッテリーボックスキャプ(4)で密閉してバッテリーボックスとし、バッテリーボックスにバッテリー(7)を収容して、陰極側導線(6)、陽極側導線(8)で、それぞれの電極(3)、(5)と接続したことを示すものである。
図3は、本発明の取っ手(2)を手(15)に持って、導電性を有したラクトフェリン含有飲料(11)を容れた容器(1)から、ストロー(13)を用いてラクトフェリン含有飲料(11)を吸飲している時の、口腔咽頭粘膜表面(12)へのラクトフェリン(14)の電気的誘導回路が作動している状態を示す模式図である。
図4は、上記の状態での電気回路の模式図である。
電流はバッテリー(7)の陽極側に接続した陽電極(5)から、ラクトフェリン含有飲料(11)が導体となって生じるラクトフェリン含有飲料導電経路(17)を通り、ラクトフェリン含有飲料が満たされた口腔咽頭内から口腔咽頭粘膜表面(12)に通電し、生体内導電経路(16)を経て、手(15)から陰電極(3)、陰電極側導線(6)、バッテリー(7)の陰極側へと流れる電気回路が成立することを示すものである。
これによってラクトフェリン含有飲料の吸飲時に、口腔咽頭内(18)に電場が発生し、鉄イオンを含んだラクトフェリン(14)を口腔咽頭粘膜表面(12)に向かって誘導する電気回路が自動的に作動する。
以上のようにして成る請求項1のイオン飲料飲用器。
【0007】
電極は白金電極が好ましいが、高価なため他の素材で代替することも可能である。
【0008】
その他の実施例として、LEDランプ、あるいはメロディ発生用ICチップ等を回路に接続して、通電を知らせる機能を付けることや、容器基底部にバッテリーを収容し、取っ手を設置しないで容器外側側面に電極を設置することも可能である。さらに、バッテリー部分を着脱式にすることによって、容器の洗浄と消毒を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例の斜視図
【図2】上記斜視図の透視的模式図
【図3】電気的誘導回路が作動する状態の模式図
【図4】電気的誘導回路作動時の電気回路の模式図
【符号の説明】
【0010】
1.電気絶縁性容器
2.取っ手(内部がバッテリーボックス)
3.陰電極
4.バッテリーボックスキャップ
5.陽電極
6.陰極側導線
7.バッテリー
8.陽極側導線
9.上口唇
10.下口唇
11.ラクトフェリン含有飲料
12.口腔咽頭粘膜表面
13.ストロー
14.鉄イオンを含んだラクトフェリン
15.手
16.生体内導電経路
17.ラクトフェリン含有飲料導電経路
18.口腔咽頭内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの電極とバッテリー、飲用容器等を主要構成要素とし、飲用容器の内側と外側にそれぞれ電極を設置して、バッテリーと接続することを特徴とする、イオン飲料飲用器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−172683(P2010−172683A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41422(P2009−41422)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000194413)
【Fターム(参考)】