説明

イカ又はサンマ類輸送用断熱容器及びその使用方法

【課題】イカ又はサンマ類を傷めることなく、長時間にわたり鮮度を保持できる、取扱い容易なイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を提供する。
【解決手段】底部2及び周壁部3を備えた上端開放の断熱容器であって、断熱容器の内部空間4が、上部に保冷材5を収納するスペース6を残して、直交する1乃至複数の縦板と横板とから成る所定高さの区画板7,7…により上端開放の複数の区画室8,8…に区画され、複数の区画室8,8…に夫々一匹のイカ又はサンマ類23を収納し、スペース6に保冷材5を収納するように構成したイカ又はサンマ類輸送用断熱容器1を提供する。区画板7,7…は、底部2及び周壁部3と一体成型により一体に形成されている。又、周壁部3の上端内側部には上方に所定幅で所定高さ突出する内側周壁部21が形成され、底部2下面外周部近傍には、内側周壁部21を挿入できる所定幅で所定深さの溝22が全周に及んで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イカ又はサンマ類を傷めることなく、長時間にわたり鮮度を保持できる、取扱い容易なイカ又はサンマ類輸送用断熱容器及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のイカ又はサンマ類の輸送に於いては、その輸送用容器として、例えば図6(a)に示すような一端開放の発泡スチロールの容器41が用いられており、発泡スチロールの容器41の内部空間に氷を敷き詰め、その上に、例えばイカ42,42…を収納して蓋をし、輸送していた。
然しながら、この輸送用容器の場合、収納されたイカ42,42…どうしが接触するため、イカ42,42…どうしの互いの接触により、時間の経過と共に、図6(b)に示すようにイカ42,42…の色が白く変色し、鮮度が低下したり、腐ったりする問題があった。又、サンマ類に於いても、同様にサンマ類どうしの互いの接触により、鮮度が低下したり、腐ったりする問題があった。
【0003】
此種技術の先行文献としては、例えば、特許文献1があり、特許文献1には、収容する被保冷物を互いに接触しない状態で多段に配置することができ、被保冷物どうしが接触することによる鮮度低下を招くことなく、長時間にわたり鮮度を維持することが可能であるという保冷運搬用容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−100069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、従来技術の輸送用容器はイカ又はサンマ類が互いの接触により、色が白く変色したり、鮮度が低下したり、腐ったりする問題があった。また、氷や、氷が解けた水は取扱いが煩雑であり、氷が解けた水が漏水する虞があった。
【0006】
特許文献1は、被保冷物を互いに接触しない状態で多段に配置するが、同段に置かれた被保冷物は互いに接触する可能性があり、それによって、鮮度の低下の虞がある。また、氷を用いるため、前述したように、取扱いが煩雑であったり、氷が解けた水が漏水する虞がある。
【0007】
以上の現状に鑑み、本発明は、イカ又はサンマ類を傷めることなく、長時間にわたり鮮度を保持できる、取扱い容易なイカ又はサンマ類輸送用断熱容器及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、底部及び周壁部を備えた上端開放の断熱容器に於いて、前記断熱容器の内部空間が、上部に保冷材を収納するスペースを残して、所定高さの区画板により上端開放の複数の区画室に区画され、前記複数の区画室に夫々一匹のイカ又はサンマ類を収納し、前記スペースに保冷材を収納するように構成したことを特徴とするイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を提供するものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記底部は平面視略方形状に形成され、前記内部空間は直交する1乃至複数の縦板と1乃至複数の横板とで区画されることを特徴とする請求項1記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を提供するものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記区画板は、前記底部及び周壁部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を提供するものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記周壁部の上端内側部には上方に所定幅で所定高さ突出する内側周壁部が形成され、前記底部下面外周部近傍には、前記内側周壁部を挿入できる所定幅で所定深さの溝が全周に及んで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一に記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を提供するものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記周壁部上端に蓋をするための蓋体を備え、前記蓋体は、下面外周部近傍に、前記内側周壁部を挿入する所定幅で所定深さの溝が全周に及んで形成されていることを特徴とする請求項4記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を提供するものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のうちいずれか一に記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器に於ける前記複数の区画室の少なくとも一室に一室当たり一匹のイカ又はサンマ類を収納し、前記スペースに保冷材を収納することを特徴とするイカ又はサンマ類輸送用断熱容器の使用方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の発明によれば、イカ又はサンマ類を傷めたり、白く変色させたり、腐らせたりすることなく、長時間にわたり鮮度を保持できる、取扱い容易なイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を提供することができる。
又、保冷材を用いることにより、長時間の保冷が可能になると共に、イカ又はサンマ類を上から冷却できるために冷却効率が良く、更に、保冷材は、氷に較べてコンパクトであるため、イカ又はサンマ類輸送用断熱容器の内部空間のスペース効率を高めることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、前記底部は平面視略方形状に形成され、前記内部空間は直交する1乃至複数の縦板と1乃至複数の横板とで区画されるので、区画室を縦横に整然と効率良く形成することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、前記区画板は、前記底部及び周壁部と一体に形成されているので、容器本体との一体成型で区画板を成型することができ、区画板の成型が容易であると共に、区画板の容器本体との接合強度を高めることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、前記周壁部の上端内側部には上方に所定幅で所定高さ突出する内側周壁部が形成され、前記底部下面外周部近傍には、前記内側周壁部を挿入できる所定幅で所定深さの溝が全周に及んで形成されているので、内側周壁部を溝に挿入することにより、複数のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を安定性良く上下に積重ねることができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加え、前記周壁部上端に蓋をするための蓋体を備え、前記蓋体は、下面外周部近傍に、前記内側周壁部を挿入する所定幅で所定深さの溝が全周に及んで形成されているので、蓋体で断熱効率良く蓋をすることができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、一室当たり一匹のイカ又はサンマ類を収納するので、従来例の如くイカ又はサンマ類が互いの接触により、色が白く変色したり、鮮度が低下するというトラブルの発生がなくなると共に、スペースに保冷材を収納することにより、氷を用いる煩雑さや、解けた氷の漏水の問題がなくなり、且つ、保冷材でイカ又はサンマ類を上から冷やすことができるので冷却効率を高めることができ、長時間にわたりイカ又はサンマ類の鮮度を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)本発明のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器の平面図である。(b)本発明のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器の正面縦断面図である。(c)本発明のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器の側面縦断面図である。
【図2】本発明のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器にイカ及び保冷材を収納した状態を示す正面縦断面図である。
【図3】(a)本発明の変形例のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器の平面図である。(b)本発明の変形例のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器の正面縦断面図である。(c)本発明の変形例のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器の側面縦断面図である。
【図4】本発明のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器と変形例のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器とを組み合わせた使用例を示す正面縦断面図である。
【図5】(a)本発明の試作品のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器にイカを収納した状態を示す写真図である。(b)本発明の試作品のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器にイカを収納し、所定時間経過後の状態を示す写真図である。
【図6】(a)従来例の輸送用断熱容器にイカを収納した状態を示す写真図である。(b)従来例の輸送用断熱容器にイカを収納し、所定時間経過後の状態を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1に於いて、1は、本発明のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器であり、イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1は、底部2及び周壁部3を備えた上端開放の、例えば発泡スチロール等の発泡合成樹脂で形成される断熱容器であって、断熱容器の内部空間4が、上部に保冷材5を収納するスペース6(保冷材5を収納できる大きさに形成された空間)を残して、所定高さの区画板7,7…により上端開放の複数の区画室8,8…に区画され、複数の区画室8,8…に夫々一匹のイカ又はサンマ類(一室当たり一匹のイカ又はサンマ類)を収納し、スペース6に保冷材5を収納できるように構成したものである。
尚、サンマ類とは、サンマ科に属する魚をさす。但し、本発明に於いては、刺身用等に用いることができる鮮度の高い高級魚としてのサンマ類を主な対象としている。
【0022】
そして、前記底部2は平面視略方形状に形成され、前記内部空間4は直交する1乃至複数の縦板と1乃至複数の横板とから成る区画板7,7…で区画されている。
前記区画板7,7…は、底部2及び周壁部3と一体成型により一体に形成されている。
【0023】
又、前記周壁部3の上端内側部には上方に所定幅で所定高さ突出する内側周壁部21が平面視略方形状に形成され、前記底部2下面外周部近傍には、内側周壁部21を挿入できる所定幅で所定深さの溝22が全周に及んで平面視略方形状に形成されている。
【0024】
次に、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1の使用方法について説明する。
図2及び図5(a)に示すように、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1に於ける複数の区画室8,8…の少なくとも一室に一室当たり一匹のイカ又はサンマ類(図はイカを示す)23を収納し、スペース6に例えば2個の保冷材5,5を収納する。この時、内部空間4は上端が密閉されていないが、保冷材5,5の冷気は下降してイカ又はサンマ類23,23…を冷却するため、イカ又はサンマ類23,23…は冷却される。
又、イカ又はサンマ類23は、区画室8の一室当たり一匹収納されるので、従来例の如く、イカ又はサンマ類23,23の互いの接触により、色が白く変色したり、鮮度が低下したり、腐ったりするという問題は発生しない。
図5(b)は前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1の区画室8に収納されたイカ(23)が時間が経過しても、白く変色していないことを示している。
このように、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1によれば、長時間にわたりイカ又はサンマ類23の鮮度を保持できる。
【0025】
図3に於いて、31は、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器(図1に於いて1)の変形例のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器を示し、イカ又はサンマ類輸送用断熱容器31は、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1の周壁部3上端に蓋をするための蓋体32を備えたものであり、蓋体32は、下面外周部近傍に、内側周壁部21を挿入するための所定幅で所定深さの溝33が全周に及んで平面視略方形状に形成されている。
【0026】
従って、図3に示すように、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器31に於いて、複数の区画室8,8…の少なくとも一室に一室当たり一匹のイカ又はサンマ類(図はイカを示す)23を収納し、スペース6に例えば2個の保冷材5,5を収納し、溝33に内側周壁部21を挿入することにより、周壁部3上端に蓋体32で蓋をすれば、内部空間4内を略密閉して断熱することができる。
この時、保冷材5,5の冷気は下降してイカ又はサンマ類23を冷却するが、蓋体32により、冷気が外方に漏れることもなくなるため、イカ又はサンマ類23は効率良く冷却される。又、一室当たり一匹のイカ又はサンマ類23を収納するので、イカ又はサンマ類23どうしが接触することなく、長時間にわたりイカ又はサンマ類23の鮮度を保持できる。
【0027】
図4は、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1及び31の組み合わせによる使用例を示したものである。
図4に示すように、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1は、内側周壁部21及び溝22を備えているので、イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1の内側周壁部21を他のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器1の溝22に挿入することにより、複数のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器1,1…を複数段に積重ねることができ、前記イカ又はサンマ類輸送用断熱容器31は、溝22を備えているので、複数のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器1,1…の最上段のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器1の内側周壁部21をイカ又はサンマ類輸送用断熱容器31の溝22に挿入することにより、複数のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器1,1…の最上段にイカ又はサンマ類輸送用断熱容器31を重ねることができる。
図4では、イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1が2段積重ねられ、その上にイカ又はサンマ類輸送用断熱容器31が積重ねられているが、イカ又はサンマ類輸送用断熱容器1は、イカ又はサンマ類輸送用断熱容器自体の強度の許容範囲内で何段でも積み重ねが可能である。
又、図4に示したようなイカ又はサンマ類輸送用断熱容器1及び31の組み合わせを1ユニットとして、複数ユニット積重ねることも可能である。
尚、本発明のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器は、イカ又はサンマ類のために発明されたものであるが、これらに限定されるものではなく、その他の鮮魚や、その他の水産物、肉類、及びその他の食品類等、互いに接触させない方が良いもの、又は、効率の良い冷却や、長時間の冷却を必要とするもの等に対して好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1,31 イカ又はサンマ類輸送用断熱容器
2 底部
3 周壁部
4 内部空間
5 保冷材
6 スペース
7 区画板
8 区画室
21 内側周壁部
22,33 溝
23 イカ又はサンマ類
32 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び周壁部を備えた上端開放の断熱容器に於いて、前記断熱容器の内部空間が、上部に保冷材を収納するスペースを残して、所定高さの区画板により上端開放の複数の区画室に区画され、前記複数の区画室に夫々一匹のイカ又はサンマ類を収納し、前記スペースに保冷材を収納するように構成したことを特徴とするイカ又はサンマ類輸送用断熱容器。
【請求項2】
前記底部は平面視略方形状に形成され、前記内部空間は直交する1乃至複数の縦板と1乃至複数の横板とで区画されることを特徴とする請求項1記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器。
【請求項3】
前記区画板は、前記底部及び周壁部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器。
【請求項4】
前記周壁部の上端内側部には上方に所定幅で所定高さ突出する内側周壁部が形成され、前記底部下面外周部近傍には、前記内側周壁部を挿入できる所定幅で所定深さの溝が全周に及んで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一に記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器。
【請求項5】
前記周壁部上端に蓋をするための蓋体を備え、前記蓋体は、下面外周部近傍に、前記内側周壁部を挿入する所定幅で所定深さの溝が全周に及んで形成されていることを特徴とする請求項4記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか一に記載のイカ又はサンマ類輸送用断熱容器に於ける前記複数の区画室の少なくとも一室に一室当たり一匹のイカ又はサンマ類を収納し、前記スペースに保冷材を収納することを特徴とするイカ又はサンマ類輸送用断熱容器の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−6612(P2012−6612A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142485(P2010−142485)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(510175481)株式会社北海道開発振興公社 (1)
【Fターム(参考)】