説明

イソプレゴールの製造におけるフェノールリガンドの回収

本発明は、錯化合物の存在下でのシトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造中に得られるアルミニウムを含む反応生成物を処理する方法に関し、上記生成物は少なくとも1種の式(I)のリガンド:
【化1】


[式中、R1、R2、R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、C1-C8-アルキル、C1-C8-アルコキシ、ジ(C1-C4-アルキル)アミノおよびアリールから選択され;R4、R5は、ハロゲン、ニトロ、C1-C8-アルキル、C1-C8-アルコキシ、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ、アリールまたはヘテロアリールから選択される]
を含む。
上記方法によると、a)反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得、b)式(I)のリガンドを底部生成物から単離する。
さらに、本発明はイソプレゴールの製造方法に関し、またメントールの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の式(I)のリガンド:
【化1】

【0002】
を含む錯化合物の存在下でシトロネラールを環化することによるイソプレゴールの製造からのアルミニウムを含む反応生成物を処理する方法に関する。
【0003】
さらに、本発明はイソプレゴールの製造方法、およびメントールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
メントールは、量の点から世界中で最も重要な芳香物質である。メントールの需要は今でもなお、その大部分が天然源からの単離により賄われている。しかしながら、さらにメントールへの合成ルートも存在し、時にはラセミ体の形態で、時には天然のエナンチオマーであるL-メントールの形態で得られる。
【0005】
光学活性メントールなどのラセミ体を製造するための重要な中間体はイソプレゴールであり、これは通常ルイス酸触媒の存在下でのシトロネラールの環化オキソ−エン反応により製造され、通常4つのジアステレオマー、イソプレゴール、イソ-イソプレゴール、ネオ-イソプレゴールおよびネオイソ-イソプレゴールの混合物の形態で得られる。
【0006】
上記したシトロネラールのイソプレゴールへの環化を行うのに好適な触媒としては、SiO2、Al2O3/SiO2、SiO2/ZrO2、SiO2/TiO2混合触媒、モルデナイト、フォージャサイト、モンモリロナイトおよびゼオライトなどの不均一系触媒と、例えばスルホン酸またはルイス酸(例えば、SnCl4、ZnCl2またはZnBr2)などの均一系触媒の両方がこれまでに記載されている。
【0007】
EP-A 1 225 163には、トリス(2,6-ジフェニルフェノール)アルミニウム触媒存在下でのシトロネラールのイソプレゴールへの環化が記載されている。このシトロネラールをイソプレゴールに環化する方法では触媒錯体を使用するが、この触媒錯体は高価であり、また複雑な方法でしか製造することができない。均一相で行われる上記方法の後、反応完了時に触媒錯体は加水分解される。この工程で遊離したリガンドの回収および再利用の可能性については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP-A 1 225 163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、シトロネラールのイソプレゴールへの環化を行った後に使用したフェノールリガンドを高純度かつ高収率で回収することができる方法を提供することである。さらに、本方法は連続法として特に好適であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、反応生成物を蒸留分離してイソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得、次に底部生成物から式(I)のリガンドを分離することにより、シトロネラールを環化した後に使用したフェノールリガンドを高純度かつ高収率で回収できることが今回見出された。さらに、イソプレゴールが枯渇した底部生成物を塩基性水溶液に接触させてアルミニウムを含む水相および式(I)のリガンドの大部分を含む有機相を得ることにより、分離から得られる式(I)のリガンドの純度を向上させることができることが見出された。特に、シトロネラールの環化からの反応生成物は予め加水分解することなく蒸留分離に移すことができることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、本発明は、
i)イソプレゴール、
ii)遊離したおよび/または錯体結合した形態の少なくとも1種の式(I)のリガンド:
【化2】

【0012】
[式中、
R1、R2、R3は、各々相互に独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、C1-C8-アルキル、C1-C8-アルコキシ、ジ(C1-C4-アルキル)アミノおよび置換または非置換のアリールから選択され、
R4、R5は、各々相互に独立して、ハロゲン、ニトロ、C1-C8-アルキル、C1-C8-アルコキシ、ジ(C1-C4-アルキル)アミノおよび置換または非置換のアリールまたはヘテロアリールから選択される]
を含む、シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からのアルミニウムを含む反応生成物を処理する方法を提供し、本方法においては、
a)反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得、
b)式(I)のリガンドを底部生成物から分離する。
【0013】
本発明による方法の一つの好ましい実施形態において、式(I)のリガンドは結晶化により底部生成物から分離する。
【0014】
本発明の一つの特定の実施形態は、ステップa)における蒸留分離の後であってステップb)における分離の前に、イソプレゴールが枯渇した底部生成物を塩基性水溶液に密に接触させて、アルミニウムを含む水相および式(I)のリガンドの大部分を含む有機相を得る(以下これをステップa.2と呼ぶ)、上記方法に関する。
【0015】
本発明による方法により得られる式(I)のフェノールリガンドは、通常、下記に定義する対応する式(II)または(III)のアルミニウム化合物と共に、さらなる精製ステップなしに反応性の触媒錯体に変換して戻すことができる。このようにして再生された触媒錯体は、一般に、反応性の低下がないか、または無視できるものとなる。
【0016】
本発明の範囲内で、特定の置換基は例として以下に挙げた意味を有することができる:
C1-C8-アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、シクロペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、シクロヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、ヘプチル、オクチルなど;
C1-C8-アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシおよび1,1-ジメチルエトキシ、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メトキシルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ、1-エチル-2-メチルプロポキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなど。
【0017】
本発明の範囲内で、用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくはフッ素および塩素である。
【0018】
基R1、R2およびR3は、例えば、相互に独立して、以下の意味を有する:水素;ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素など;C1-C8-アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル);C1-C8-アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ);例えば、C1-C4-アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、C1-C4-アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ)、ハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素)などにより置換されたフェニル;1〜7個の置換基、例えば、C1-C4-アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、C1-C4-アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ)、ハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素)などにより置換されたナフチル;ジ(C1-C4-アルキル)アミノ(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ);およびニトロ。
【0019】
基R4およびR5は、相互に独立して、水素を除き、R1、R2およびR3について記載した意味を有することができる。さらに、R4およびR5は、相互に独立して、ヘテロアリール、特にフリル、チエニル、ピラニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、ピリジル、キノリル、イソキノリルまたはピラジルであることができる。ヘテロアリールは各々1以上のフェニルについて記載した置換基を有していることができる。
【0020】
本発明の範囲内で、用語「遊離した形態のリガンド」には、リガンドの遊離した形態と処理条件下で遊離した形態に変換され得る考えられるすべての形態の両方が含まれる。この例としてはリガンドのアルコキシドが挙げられ、塩基性加水分解によりリガンドの遊離した形態に変換され得る。
【0021】
本発明の範囲内で、表現「塩基性水溶液」は、一般に、pHが7より大きい水溶液からなる。特に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、特にKOHおよびNaOHの水溶液がある。
【0022】
本発明の範囲内で、表現「アルミニウムを含む反応生成物」は、イオン結合、共有結合または錯体結合した形態でアルミニウムを含む少なくとも1種の化合物を含む反応生成物である。これらは、本発明による方法の条件下で、シトロネラールの環化に使用した以下で定義する式(R14)3-pAlHp(II)またはMAlH4(III)の化合物から生じるアルミニウムの化合物である。
【0023】
本発明の範囲内で、表現「大部分」は、存在する化合物の全量に対する割合(percentage fraction)が50%より大きく、好ましくは80%より大きく、特に好ましくは90%より大きいことを意味すると理解されたい。
【0024】
驚くべきことに、各々の場合に触媒として使用したフェノキシ-アルミニウム化合物を予め加水分解することなく(適切な場合、使用した溶媒および/または追加で使用した助剤を蒸留除去した後)、シトロネラールの環化のアルミニウムを含む反応生成物からイソプレゴールを高純度で留去することができることが見出された。一般に、本工程中、蒸留底部において、認識し得る望ましくないまたは面倒な副生成物は生じない。一つの特定の実施形態において、好適な不活性で高沸点の溶媒は、ステップa)における蒸留分離の前または間に加える。これにより、蒸留底部において、各々の場合に使用した加熱した高沸点溶媒中の式(I)のリガンドの溶液が得られる。
【0025】
したがって、本発明の一つの好ましい実施形態は、イソプレゴールの環化反応からのアルミニウムを含む反応生成物を処理する方法に関し、本方法において、反応生成物は予め加水分解することなくステップa)において蒸留分離される。
【0026】
ステップa)
本発明による方法のステップa)においては、シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得る。
【0027】
特定の実施形態において、ステップa)はイソプレゴールよりも高い沸点を有する溶媒を使用する。このようにして、底部内容物の望ましくない熱的なストレスを回避することができる。特に、イソプレゴールの分離中、その中に存在する式(I)のリガンドは溶媒から遊離した形態ではない。高沸点溶媒は、蒸留分離の前および/または間(すなわち、蒸留分離中)に反応生成物に加えることができる。蒸留の条件下での沸点がイソプレゴールの沸点より高い高沸点溶媒を使用することが好ましい。蒸留の条件下での導入する溶媒の沸点は、イソプレゴールの沸点よりも少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、特には少なくとも20℃高いことが好ましい。
【0028】
このような沸点を有する好ましい高沸点溶媒としては、例えば、炭化水素(例えばフェニルシクロヘキサン、フェニルトルエン、ジベンジルトルエン、1-メチルナフタレンおよびトリデカン)、1-デカノール、1,2-プロピレンカーボネート、エーテル(例えばジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびジベンジルエーテル)、ならびにこれらの溶媒の工業等級の混合物が挙げられる。フェニルシクロヘキサンを主成分として含む混合物が特に好ましい。
【0029】
少なくとも1種の高沸点溶媒を使用する場合、得られるステップa)のイソプレゴールが枯渇した底部生成物は、高沸点溶媒、式(I)のリガンドの大部分および、適切な場合少なくとも1種のアルミニウムを含む化合物を含む有機相である。
【0030】
ステップa)におけるイソプレゴールの蒸留分離は、最高250℃、好ましくは最高150℃、特に好ましくは最高100℃の底部温度で行うことが好ましい。これらの最高温度を維持するために、蒸留は、所望により好適な真空下で行うことができる。底部温度の下限は、通常重要ではなく、一般に少なくとも0℃、好ましくは少なくとも20℃である。
【0031】
本発明による方法のステップa)の圧力は、特定の実施形態に関係なく、一般に0.1〜1500 mbarの範囲、好ましくは1〜500 mbarの範囲、特に好ましくは5〜100 mbarの範囲である。
【0032】
シトロネラールの環化からの反応生成物の組成および高沸点溶媒の使用に関係なく、イソプレゴールの蒸留分離は、連続的にまたはバッチ式で、好ましくは連続的に行うことができる。一つの好適な手順において、高沸点溶媒は、蒸留分離の前にステップα)からの反応生成物に加え、蒸留の間、底部に存在する高沸点溶媒の量を引き続き一定に保つ。
【0033】
ステップa)における蒸留分離について、当業者に公知の慣用の装置を使用することができる(例えばSattler, Thermische Trennverfahren [Thermal separation methods], 2nd Edition 1995, Weinheim, p. 135ff; Perry’s Chemical Engineers Handbook, 7th Edition 1997, New York, Section 13を参照のこと)。これらには充填物、内部構造物などを備える蒸留カラムが含まれる。使用する蒸留カラムは、分離トレイ(例えば多孔トレイ、バブルキャップトレイまたはバルブトレイ)などの分離に効果的な内部構造物、規則的な充填物(例えばシートメタルパッキングまたはファブリックパッキング)、あるいは不規則な充填床を備えることもできる。使用する1または複数のカラム中に必要なプレートの数は、純度の要件、およびシトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物中の構成成分と高沸点溶媒の相対的な沸騰位置(relative boiling position)により実質的に決定され、当業者は公知の方法によりこの特定の設定および運転データを確認することができる。蒸留分離は、例えば互いに連結した1または複数の蒸留カラム中で行うこともできる。
【0034】
ステップa)における蒸留分離には、慣用の蒸発器、好ましくは強制循環式蒸発器、特に好ましくは流下薄膜式蒸発器が同様に好適である。
【0035】
シトロネラールの環化からの反応生成物中に適切な場合存在する追加の成分に応じて、蒸留分離中に得られる上部生成物の組成により、この上部生成物を適切な場合さらなる処理ステップに付す必要があり得る。
【0036】
シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物を処理する本発明による方法の特定の実施形態において、反応生成物は低沸点溶媒(iii)をさらに含む。
【0037】
本発明の範囲内で、表現「低沸点溶媒(iii)」は、イソプレゴールの沸点に関する。蒸留分離の条件下で、各条件下でのイソプレゴールの沸点よりも、少なくとも5℃、好ましくは10℃、特には20℃低い沸点を有する溶媒または溶媒混合物がここでは特に好適である。
【0038】
本発明の範囲内で、このような沸点を有する好ましい溶媒は、例えば、芳香族溶媒(例えばトルエン、エチルベンゼンまたはキシレン)、ハロゲン化溶媒(例えばジクロロメタン、ジクロロエタンまたはクロロベンゼン)、脂肪族溶媒(例えばペンタン、ヘキサンまたはシクロヘキサン)、エーテル(例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル)、エステル(例えば酢酸エチル)、あるいはジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの不活性有機溶媒またはこれらの混合物である。トルエンが特に好ましい。
【0039】
処理するべき反応生成物がこのような低沸点溶媒を含む場合、イソプレゴールの蒸留分離の前に、好適な実施形態において、反応生成物から少なくとも部分的にこれを除去する。低沸点溶媒は蒸留により分離することが同様に好ましい。低沸点溶媒の沸点に応じて、慣用の上記の蒸留装置を使用することもできる。
【0040】
さらに好適な実施形態において、ステップa)において反応生成物を蒸留分離して、少なくとも一部、好ましくは大部分の低沸点溶媒を同時に含むイソプレゴールが濃縮した上部生成物を得る。この場合、上部生成物を、好ましくは同様に蒸留により、さらに分離することもできる。
【0041】
分離された低沸点溶媒は、それを溶媒として使用することによりシトロネラールの環化反応に戻すことが有利である。このように、本発明による方法では、避けられない損失の結果必要となる追加は別として、一定量の低沸点溶媒を1回だけ提供すればよい。
【0042】
シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物を処理する本発明による方法の特定の実施形態において、反応生成物は助剤(iv)をさらに含む。
【0043】
本発明の範囲内で、用語「助剤(iv)」は、望ましくない二次反応を抑制するためにシトロネラールの環化中に加える化合物を意味する。好ましくは、助剤(iv)は、有機酸、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトンおよびビニルエーテルから選択される。
【0044】
特に、助剤(iv)は、酸、好ましくは有機酸から選択される。有機酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、好ましくは酢酸が挙げられる。
【0045】
本発明のさらなる特定の実施形態において、助剤(iv)は、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトンおよびビニルエーテルから選択される。
【0046】
上記物質クラスの助剤(iv)は、各々、処理するべき反応生成物中に個別にまたは混合物の形態で存在することができる。好ましい混合物は、1つの物質クラスの化合物からなる混合物である。反応生成物は、単一の助剤を含むことが特に好ましい。
【0047】
シトロネラールの環化からの反応生成物中に存在する助剤(iv)は、同様に、少なくとも部分的に除去し、できる限りシトロネラールの環化反応に戻すことが好ましい。
【0048】
助剤(iv)が、蒸留の条件下で、イソプレゴールの沸点よりも低いか、またはわずかに、すなわち30℃未満だけ高い沸点を有する場合、蒸留により、適切な場合それ自体が反応しない程度に、完全に反応した混合物からこれらの大部分を回収することができる。助剤の沸点に応じて、慣用の上記の蒸留装置を使用することもできる。
【0049】
助剤(iv)が、蒸留の条件下で、イソプレゴールの沸点よりも顕著に高い、すなわち少なくとも30℃高い沸点を有する場合、これらは底部生成物中に残存し、適切な場合、それらの物理的特性により可能な場合に本発明による方法のステップb)において除去する。
【0050】
さらに好適な実施形態において、ステップa)において反応生成物を蒸留分離して、少なくとも一部、好ましくは大部分の助剤(iv)を同時に含むイソプレゴールが濃縮した上部生成物を得る。適切な場合、この主生成物は上に説明したように低沸点溶媒を含む。この場合、上部生成物は、好ましくは同様に蒸留によりさらに分離することができる。分離した助剤(iv)は、例えば望ましくない二次反応を抑制するために、適切な場合低沸点溶媒と共に、それを使用したシトロネラールの環化反応に戻すことが有利である。このように、本発明による方法では、避けられない損失の結果必要となる追加は別として、一定量の助剤(iv)を1回だけ提供すればよい。
【0051】
イソプレゴールの分離、高沸点溶媒の導入、ならびに適切な場合低沸点成分の分離、すなわちシトロネラールの環化からのいずれかの存在する溶媒および揮発性助剤の分離は、様々に組み合わせることができる。
【0052】
一つの好適な実施形態において、いわゆる隔壁カラムを蒸留に使用する。すなわち供給点と側方取り出し口は、カラムの縦方向の断面に沿って伸長する隔壁の反対側に位置する。このような隔壁を備えている蒸留カラムは、それ自体が当業者に公知である。側方取り出し口と供給口が隔壁の領域にある場合、BrugmaまたはPetlyuk型の連結に類似の連結が生じる。このような隔壁カラムを使用する蒸留はDE-A-33 02 525およびEP-A-0 804 951に記載されている(本明細書においてその全体を参照する)。この場合、低沸点成分が濃縮した留分は上部生成物として取り出すことができ、大部分のイソプレゴールを含む流れは例えば側方取り出し分として取り出すことができる。高沸点溶媒は、供給点より下に、好ましくはカラムの底部にまたは底部のすぐ上に導入する。高沸点溶媒中の式(I)のリガンドの大部分の溶液は底部生成物として生成する。
【0053】
別の実施形態において、連結カラムを蒸留に使用する。この実施形態は、以下にさらに詳しく説明するように、シトロネラールの環化の反応生成物が溶媒および/または揮発性助剤を含む場合に有利であり得る。
【0054】
この場合、イソプレゴールと低沸点のもしくはわずかに高い沸点の溶媒および/または助剤(iv)の混合物は、第1のカラムの上部生成物を形成し得、第2のカラムにおいて分離されて、少なくとも大部分のイソプレゴールを含む流れならびに環化反応の低沸点溶媒および/または助剤を含むイソプレゴールが枯渇した流れを生成する。
【0055】
環化反応の低沸点溶媒(iii)および助剤(iv)を含み得る流れは、通常さらに分離することなく環化反応に戻すことができる。
【0056】
式(I)のリガンドは、適切な場合その錯体または他の誘導体の形態で、第1のカラムの底部生成物として得られる。
【0057】
本発明の一つの好ましい実施形態において、ステップa)において得られるイソプレゴールが枯渇した底部生成物は、ステップb)において式(I)のリガンドを分離する前に、塩基性水溶液に接触させる。
【0058】
ステップa.2)
本発明による方法のステップa.2)においては、イソプレゴールが枯渇した底部生成物を塩基性水溶液に密に接触させて、アルミニウムを含む水相および式(I)のリガンドの大部分を含む有機相を得る。好ましい塩基性水溶液は上に記載されている。
【0059】
ステップa)において得られたイソプレゴールが枯渇した底部生成物は、遊離したまたは錯体結合した形態の式(I)のリガンドの他に、少なくとも1種のさらに揮発しにくい成分を含み得る。これらには、例えば、ステップa)において加えた高沸点溶媒、シトロネラールのイソプレゴールへの環化に使用したアルミニウムを含む化合物の反応生成物、および適切な場合ステップa)において分離されなかった助剤(iv)が含まれる。アルミニウムを含む成分および/または助剤(iv)は特に連続法の場合に蓄積し、特に分離ステップb)の収率および純度に悪影響を与えるため、できる限り完全にこれらの化合物を除去することが有利である。これは特にアルミニウムを含む化合物に当てはまる。
【0060】
ステップa.2)における接触は抽出により行うことが好ましい。抽出段数は1〜20段の範囲が好ましい。
【0061】
使用する抽出剤は上記の塩基性水溶液である。したがって、本発明の範囲内でこれらの表現は同義に使用される。
【0062】
抽出の場合、ステップa)からのイソプレゴールが枯渇した底部生成物を、塩基性水溶液に密に接触させる。相分離により、式(I)のリガンドの大部分を含む相、およびアルミニウムを含む化合物が濃縮した水相が得られる。続いて、その水相を取り出す。接触は、連続的に行うことも、またはバッチ式で行うこともできる。
【0063】
バッチ式手順の場合、ステップa)からのイソプレゴールが枯渇した底部生成物および水性抽出剤を、例えば好適な容器中で攪拌することにより機械的に攪拌し、その混合物を放置して相分離させ、より高い密度を有する相を容器の底部において適切に排出することにより相の1つを取り出す。
【0064】
複数のバッチ式分離操作は、段階的に行うことができ、この場合、水相から分離された、式(I)のリガンドの大部分を含む相を水性抽出剤の新しい部分に各々接触させる、および/または水性抽出剤を向流的に通過させる。
【0065】
連続的抽出手順の場合、水性抽出剤およびステップa)からのイソプレゴールが枯渇した底部生成物の流れを、バッチ式と類似の方法で好適な装置に連続的に導入する。同時に、式(I)のリガンドの大部分を含む相の排出物およびアルミニウムを含む化合物が濃縮した水相の排出物を、相分離を行った装置から連続的に取り出す。
【0066】
抽出は、少なくとも1段階、例えば1つの混合機-分離機の組み合わせで行う。好適な混合機は、動的混合機または静的混合機である。複数段階の抽出は、例えば複数の混合機-分離機または抽出カラム中で行う。
【0067】
一つの好適な実施形態においては、相分離を改善するために少なくとも1つの凝集装置を使用する。これは、凝集フィルター、電気凝集装置(electrocoalescer)およびそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。抽出に混合機-分離機装置を使用する場合、キャンドルフィルターまたはサンドフィルターなどの凝集フィルターの使用が相分離を改善するのに有利であることが分かっている。ここで、フィルターは、混合機(攪拌容器)の後および/または分離機からの有機流出部(organic run-off)に直接設置することができる。相分離を改善するために、電気凝集装置を使用することも好ましい。これらが、5質量%以下の混入している水相を分離するのに有用であることが分かっている。凝集装置の使用は、本発明による方法において、式(I)のリガンドの大部分を含む抽出カラムの有機排出物から微細に分散した水相を分離するのにも有利に好適である。
【0068】
一つの好適な実施形態において、ステップa)からのイソプレゴールが枯渇した底部生成物からのアルミニウムを含む成分の抽出は、少なくとも1つの混合機-分離機の組み合わせにおいて行う。混合機-分離機の組み合わせをさらに使用することは引き続き再抽出を行い、このようにして式(I)のリガンドまたは、適切な場合、適宜分離するべきアルミニウムを含む化合物と共に部分的に抽出剤中に移る高沸点溶媒の工程留分に戻すのに特に有利である。
【0069】
一定の条件下では、ステップb)における分離前にまたは分離後に、式(I)のリガンドの大部分を含む有機相を乾燥ステップに付すことも有利であり得る。好適な乾燥方法は、当業者に慣用の方法、特に、例えばゼオライトモレキュラーシーブを用いた脱水剤への吸着である。
【0070】
本発明による方法の別の実施形態において、イソプレゴールが枯渇した底部生成物を塩基性水溶液に接触させた後、蒸留により水を除去する。
【0071】
析出または結晶化により式(I)のリガンドの分離が不十分にならないためには、ステップa.2)中のいずれの時点においても有機相中のリガンドの溶解度積を超えてはならない。適切な場合、温度ならびに/または加える溶媒の量および種類を適切に選択することによりこれを行うことができる。
【0072】
したがって、本発明による方法の好ましい実施形態においては、ステップa)からの加熱した底部生成物の排出物を加熱した塩基性水溶液に密に接触させる。
【0073】
本発明の範囲内で、表現「加熱した」は、室温より高く、かつ対象とする反応条件下での水溶液または有機溶液のそれぞれの沸点温度より低い温度を意味する。特に、加熱は25〜150℃の範囲、特には70℃〜100℃の範囲の温度を意味する。
【0074】
適切な場合シトロネラールの環化において使用した助剤に応じて、イソプレゴールが枯渇した底部生成物は、ステップa)において分離されなかった追加の成分を適宜含み得る。これらはステップa.2)において分離することが好ましい。この場合、例えば助剤(iv)を回収するために、得られた水相を好適な分離工程に付すこともできる。
【0075】
本発明による方法のさらに好ましい実施形態において、式(I)のリガンドは、ステップa.2)で述べたように、ステップa)で得られたイソプレゴールが枯渇した底部生成物から直接、すなわち予め精製することなしに、塩基性水溶液に接触させることにより、ステップb)において分離する。ステップa)で得られる底部生成物からリガンドを直接分離するには、ステップa.2)で得られる有機相からの分離について以下に示したものと同じ好適な、好ましい実施形態を適用する。
【0076】
ステップb)
本発明による方法のステップb)においては、式(I)のリガンドを、ステップa.2)で得られたリガンドの大部分を含む有機相から分離する。このステップb)は連続的にまたはバッチ式で行うことができる。このステップの好適な実施形態は、例えば、結晶化または蒸発可能な構成成分の蒸留除去である。
【0077】
一つの特定の実施形態においては、式(I)のリガンドを結晶化により分離する。
【0078】
式(I)のリガンドの結晶化のためには、まず第一に、ステップa.2)からの有機相中の式(I)のリガンドの溶解度積を超えなければならない。これは、例えば有機相の冷却工程または溶媒の(部分的な)蒸留分離により起こり得る。この目的のための方法は当業者に公知である。本発明による方法の実験機器について、例えば、慣用の冷却晶析装置、蒸発晶析装置、真空晶析装置、晶析トラフ(crystallizing trough)またはスプレー晶析装置(spray crystallizer)が好適である。
【0079】
本発明による方法の一つの好ましい実施形態において、結晶化は、本方法のステップa.2)からの有機相を冷却することにより行う。一般に、結晶化は-50℃〜100℃の範囲、好ましくは-20℃〜50℃の範囲、特には10℃〜40℃の範囲の温度で行う。
【0080】
この工程は種結晶を添加することにより加速することができる。
【0081】
結晶性の式(I)のリガンドは、例えば濾過、浮選(flotation)、遠心分離またはふるい分けにより、溶液から単離することができる。
【0082】
このようにして得られた式(I)のリガンドは、適切な場合、好適な乾燥方法により乾燥することができる。このための方法は当業者に公知である。例えば本方法の、実験機器には、慣用のローラー乾燥機、ディスク乾燥機、箱形乾燥機、流動床乾燥機または赤外線乾燥機が好適である。
【0083】
式(I)のリガンドが枯渇した有機相は、ステップa)の前または間に本工程に再度加えることができる。
【0084】
本発明による方法の一つの好適な実施形態において、結晶化は、室温に冷却しながらステップa.2)において得られた加熱した飽和有機相または対応するステップa)において得られた加熱した底部生成物から行う。
【0085】
イソプレゴールの製造からの反応生成物を処理する方法の好ましい実施形態において、式(I)のリガンドは、式(I.a)の2,6-ジアリールフェノールリガンド:
【化3】

【0086】
[式中、
Ar1およびAr2は、各々相互に独立して、置換または非置換のアリールまたはヘテロアリールから選択され、
R1’、R2’、R3’は、各々相互に独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、C1-C8-アルキル、C1-C8-アルコキシ、置換または非置換のアリールあるいはジ(C1-C4)アルキルアミノから選択される]
から選択される。
【0087】
一つの特に好ましい実施形態において、式(I)のリガンドは2,6-ジフェニルフェノールである。
【0088】
本発明は、式(IV)のイソプレゴール:
【化4】

【0089】
の製造方法をさらに提供し、この方法は、
α)式(V)のシトロネラール:
【化5】

【0090】
を、上に定義した式(I)のリガンドを式(II)のアルミニウム化合物:
(R14)3-pAlHp (II)
[式中、
Alはアルミニウムであり、
R14は1〜5個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状のアルキル基であり、
pは0または1〜3の整数である]
および/または式(III)のアルミニウム化合物:
MAlH4 (III)
[式中、
Alはアルミニウムであり、
Mはリチウム、ナトリウムまたはカリウムである]
と反応させることにより得られるトリス(フェノキシ)アルミニウム触媒、好ましくは式(I.a)のリガンドを式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物と反応させることにより得られるトリス(ビアリールフェノキシ)アルミニウム触媒の存在下で環化すること、
β) 反応後、
a)ステップα)で得られた反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得ること、
b)式(I)のリガンドを底部生成物から分離すること
により、式(I)のリガンドを回収すること
を含んでなる。
【0091】
イソプレゴールを製造する本発明による方法の特定の実施形態において、式(I)のリガンドは結晶化により分離する。
【0092】
本発明による方法で使用する触媒およびその調製は例えばEP-A 1 225 163に記載されている(この関連で本明細書においてこれを参照する)。通常、このような触媒は、対応する2,6-二置換フェノールリガンドを好適なアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムまたは水素化ジイソブチルアルミニウムと反応させることにより得られる。
【0093】
上記の式(IV)のイソプレゴールを製造する本発明による方法の好ましい実施形態は、
ステップβ)において、
a)ステップα)で得られた反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得ること、さらに
a.2)イソプレゴールが枯渇した底部生成物を塩基性水溶液に密に接触させて、アルミニウムを含む水相および式(I)のリガンドの大部分を含む有機相を得ること、最後に
b)式(I)のリガンドを有機相から分離すること
により、式(I)のリガンドを回収することを含む。
【0094】
シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物を処理する本発明による方法の好ましい実施形態、および好ましい式(I)のリガンドについては、上記の好ましい実施形態の全体を参照されたい。
【0095】
触媒として本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物は、例えば、上記の式(I)または(I.a)のリガンドを式(II)のアルミニウム化合物:
(R14)3-pAlHp (II)
と反応させることにより得られる。
【0096】
ここで、R14は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチルまたはネオペンチルなどの1〜5個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状のアルキル基である。指数pは、0または1〜3の整数である。好ましくは、指数pは、1または0、特に好ましくは0である。好ましい式(II)の化合物は、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、特に好ましくはトリメチルアルミニウムおよびトリエチルアルミニウムである。
【0097】
あるいは、本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物は、式(I)、好ましくは式(I.a)のリガンドを式(III)のアルミニウム化合物:
MAlH4 (III)
[式中、Mはリチウム、ナトリウムまたはカリウムである]と反応させることによっても得ることができる。したがって、上記の式(I)または(I.a)のリガンドを反応させることにより本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物を製造するのに、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムナトリウムおよび水素化アルミニウムカリウム、およびそれらの混合物も好適である。さらに、特定の式(II)および(III)の化合物の混合物も、上記の式(I)または(I.a)のリガンドと反応させることにより本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物を製造するのに好適である。
【0098】
反応は、上記の式(I)または(I.a)のリガンドの1つを式(II)または(III)の化合物に接触させるように行うことが有利である。反応は、例えばトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、ペンタン、ヘキサン、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの不活性有機溶媒中で行うことが有利であり、予め乾燥した溶媒または無水溶媒を使用することが特に有利であると考えられる。反応は、通常約-100℃〜約100℃、好ましくは約-50℃〜約50℃、特に好ましくは約-30℃〜約30℃の範囲の温度で行う。
【0099】
本発明によるフェノキシ-アルミニウム化合物を製造する間、使用する式(I)または(I.a)のリガンドのフェノール性ヒドロキシ基は、1または複数の式(II)および(III)の化合物と反応する。理論的に、各アルミニウム原子は1〜3個のフェノール性ヒドロキシ基と反応し得る。この結果、使用する式(I)または(I.a)のリガンドの立体的特性または立体的要件により、直線構造または網目構造などのより高い高分子量構造が形成される。
【0100】
ここで、使用する式(I)または(I.a)のリガンドと使用する式(II)および/または(III)の化合物のモル比は、未反応の式(II)および/または(III)の化合物の量ができるだけ少ないように選択することが有利である。特定の比は、式(I)または(I.a)のリガンドを1または複数の式(II)および(III)の化合物に接触させた後、未反応の式(II)および/または(III)の化合物がもはや存在しないように選択することが好ましい。コスト面を考慮すると、使用する式(I)または(I.a)のリガンドの過剰を低く維持することが望ましい。式(I)または(I.a)のリガンドと式(II)および/または(III)の化合物は、特に好ましくは約4:1〜約1:1のモル比、非常に特に好ましくは約3:1〜約1.5:1、最も好ましくは約1.5:1のモル比で使用する。
【0101】
本発明の好ましい実施形態の範囲内で、本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物の製造は、溶解度に応じて、選択した式(I)または(I.a)のリガンドの約0.001〜約1モル濃度の溶液を、好適な有機溶媒(例えばトルエン)に約-10〜約30℃の温度で初めに導入すること、ならびに式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物を、好ましくは溶液(例えばトルエン中のトリメチル-またはリエチルアルミニウムの溶液)の形態で加えることを含む。
【0102】
使用する式(I)または(I.a)のリガンドと式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物の反応は、通常速やかに起こり、選択した反応条件に応じて約10分〜約2時間後、多くの場合約1時間後にほとんど完了する。より非反応性の反応物を使用する場合、反応混合物の温度を一時的に上昇させることも有利であり得る。
【0103】
選択した反応条件に応じて、特に選択した溶媒中での反応させるべき式(I)または(I.a)のリガンドおよび式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物の溶解度、濃度ならびに反応温度に関連して、本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物は、使用した溶媒または溶媒混合物中に、固体、懸濁液または溶液の形態で得られる。このようにして得られた本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物は、各々の場合に得られた形態でさらに使用することも、または分離して使用した溶媒から取り出すこともできる。
【0104】
ここで、単離は、有利と思われる当業者に公知の方法により行うことができる。好ましくは、本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物の単離、保存およびさらなる処理は、酸素および湿気を十分に排除しながら行う。
【0105】
イソプレゴールを製造する本発明による方法を行うために、反応手順は、上記したように、好適な溶媒中の本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物の溶液を最初に調製することを含むことが有利である。次に、環化するラセミまたは非ラセミのシトロネラールを、本発明により、この溶液に加える。ここで、シトロネラールは、それ自体または、溶液の形態、有利には上記の好適な溶媒の1つ中の溶液の形態で加えることもできる。本発明による方法の好ましい実施形態の範囲内で、トルエン中の選択した式(I)または(I.a)のリガンドの溶液を最初に調製し、次に、有利には攪拌しながら、トルエン溶液中の選択した式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物、好ましくはトリメチルアルミニウムまたはトリエチルアルミニウムを加える。
【0106】
本発明の環化方法を行うのに好適な原料は、シトロネラールであり、いずれの方法によっても製造することができる。約90〜約99.9重量%、特に好ましくは約95〜約99.9重量%の純度を有するシトロネラールを使用することが好ましい。
【0107】
環化するシトロネラールの添加は、約-40℃〜約40℃の範囲、好ましくは約-20℃〜約20℃の範囲の温度で行うことが有利である。この目的で、本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物の調製溶液は、この範囲の温度、例えば-10℃〜10℃の範囲の温度に冷却し、予備冷却したシトロネラールまたは予備冷却したシトロネラールの溶液を加えることが有利である。
【0108】
シトロネラールまたはその溶液の添加は、全量が調製触媒溶液に一度に加えられるか、あるいは分割して、または連続的に加えられるように行うことができる。好適な溶媒はここでも上記の溶媒、特にトルエンである。環化するシトロネラールは、それ自体として、すなわち溶媒をさらに加えることなく使用することが好ましい。溶媒を使用する場合、(触媒調製および環化反応の実施のための)溶媒の総量は、反応させるシトロネラールと溶媒の体積比が約2:1〜約1:20、好ましくは約1.5:1〜約1:10であるように選択することが有利である。
【0109】
反応させるシトロネラールの量と本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物の量の量比は、その製造に使用する式(I)または(I.a)の化合物ならびに式(II)および/または(III)の化合物の量、すなわち使用するリガンドと使用する式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物の量比により決定される。
【0110】
本発明によると、反応させるシトロネラールの量は使用する式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物の量に対して、モル比が約5:1〜約1000:1、好ましくは約10:1〜約500:1、特に好ましくは約50:1〜約200:1であるように選択する。
【0111】
これに関係なく、使用する式(I)または(I.a)のリガンドと使用する式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物の比は、本発明のフェノキシ-アルミニウム化合物の製造について上に特定した範囲内で変化し得る。
【0112】
シトロネラールのイソプレゴールへの環化は、一般に速やかに起こり、反応物および反応条件の選択に応じて、通常約0.5〜約10時間後、多くの場合約5時間後にほぼ完了する。反応の進行は、それ自体当業者に公知の方法により、例えばクロマトグラフィー法、特にガスクロマトグラフィー法またはHPLC法によりモニターすることができる。
【0113】
本発明による方法の好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラールのイソプレゴールへの環化は、助剤(iv)、例えば酸、好ましくは有機酸の存在下で行う。有利に使用することができる有機酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、好ましくは酢酸が挙げられる。特定の酸は、反応させるシトロネラールの量に基づいて約0.5〜約10重量%の量で使用することが有利である。それらは反応混合物にシトロネラールと共に、例えば混合物の形態で加えることが有利である。
【0114】
特に好ましい実施形態において、シトロネラールを環化することによりイソプレゴールを製造する本発明による方法は、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトンおよびビニルエーテルから選択される少なくとも1種の助剤(iv)の存在下で行う。
【0115】
特定の物質クラスの助剤(iv)は、各々個別にまたは相互の混合物の形態で使用することができる。混合物の場合、1つの物質クラスの化合物からなる混合物を使用することが好ましい。個別の化合物を使用することが特に好ましい。下記のような特定の化合物を使用することにより、一般に望ましくない副生成物の形成をかなり抑制することができる。
【0116】
好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラールの環化は、式(VI)のカルボン酸無水物:
【化6】

【0117】
[式中、基R20およびR20’は、同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一であり、分岐状または非分岐状のC1-C12-アルキルまたはC7-C12-アラルキルまたはC6-C10-アリールから選択され、これら特定の基は各々1個以上、一般に1〜約3個のOR10、SR10 NR8R9およびハロゲンから選択される同一または異なる置換基を有していてもよく;R20およびR20’は、一緒になって、1個以上のエチレン性二重結合ならびにO、SおよびNR11bの群から選択される1以上の同一または異なるヘテロ原子を有していてもよい5〜8員環を形成していてもよく;R8、R9、R10、およびR11は、各々相互に独立して、C1-C6-アルキル、C7-C12-アラルキルおよび置換または非置換のC6-C10-アリールから選択される]
の存在下で行う。
【0118】
別の好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラールの環化は、式(VII)のアルデヒド:
【化7】

【0119】
[式中、基R21は、分岐状または非分岐状のC1-C12-アルキルまたはC7-C12-アラルキルまたはC6-C10-アリールから選択され、これら特定の基は各々1個以上、好ましくは1〜3個のOR10、SR10NR8R9およびハロゲンから選択される同一または異なる置換基を有していてもよく;R8、R9およびR10は、各々相互に独立して、C1-C6-アルキル、C7-C12-アラルキルあるいは置換または非置換のC6-C10-アリールから選択される]
の存在下で行う。
【0120】
別の好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラールの環化は、式(VIII)のケトン:
【化8】

【0121】
[式中、基R22およびR23は、各々同一でも異なっていてもよく、分岐状または非分岐状のC1-C12-アルキル、C7-C12-アラルキル、C6-C10-アリールまたはC1-C6-アルコキシカルボニルから選択され、これら特定の基は各々1個以上、好ましくは1〜3個のOR10、SR10 NR8R9およびハロゲンから選択される同一または異なる置換基を有していてもよく;R22およびR23は、一緒になって、1個以上のエチレン性二重結合ならびにO、S、NR11から選択される1以上の同一または異なるヘテロ原子を有していてもよい5〜8員環を形成していてもよく;R8、R9、R10およびR11は、各々相互に独立して、C1-C6-アルキル、C7-C12-アラルキルあるいは置換または非置換のC6-C10-アリールから選択される]
の存在下で行う。
【0122】
本発明による方法の範囲内で、上記のカルボニル化合物の代わりとして、一般式(IX)のビニルエーテル:
【化9】

【0123】
[式中、基R24、R25、R26およびR27は、相互に独立して、各々同一でも異なっていてもよく、分岐状または非分岐状のC1-C12-アルキル、C7-C12-アラルキルまたはC6-C10-アリールから選択され、これら特定の基は各々1個以上、好ましくは1〜3個のオキソ、OR10、SR10 NR8R9およびハロゲンから選択される同一または異なる置換基を有していてもよく;R25およびR26は、一緒になって、1個以上のエチレン性二重結合ならびにO、S、NR11 から選択される1個以上、通常1または2個の、同一または異なるヘテロ原子を有していてもよい5〜8員環を形成していてもよく;R8、R9、R10およびR11は、各々相互に独立して、C1-C6-アルキル、C7-C12-アラルキルあるいは置換または非置換のC6-C10-アリールから選択される]
を使用することもできる。
【0124】
ここで、これら特定の基R7〜R11の例としては、次の意味が挙げられる:C1-C6-アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピルおよび1-エチル-2-メチルプロピルなど);C7-C12-アラルキル(例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチルなど);C6-C10-アリール(フェニルまたはナフチルなど)。
【0125】
本発明による方法の好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラールの環化は、式(VI)のカルボン酸無水物[ここで、基R20およびR20’は同一であり、分岐状または非分岐状のC1-C12-アルキル、C7-C12-アラルキルまたはC6-C10-アリールから選択され、R20およびR20’は、一緒になって、1個以上のエチレン性二重結合ならびにO、S、NR11(ここで、R11は、上記した意味の1つを有していてもよい)から選択される1以上の同一または異なるヘテロ原子を有していてもよい5〜8員環を形成していてもよい]の存在下で行う。
【0126】
基R20およびR20’が同一であり、分岐状または非分岐状のC1-C12-アルキルまたはC6-C10-アリールから選択されるカルボン酸無水物を使用することが特に好ましい。本発明で特に好ましく使用するカルボン酸無水物の例としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、ピバリン酸無水物および安息香酸無水物が挙げられる。
【0127】
同様に本発明で好ましく使用することができる式(VII)のアルデヒドの例としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよびクロラール(トリクロロアセトアルデヒド)が挙げられる。
【0128】
別の好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラールの環化を式(VIII)のケトンの存在下で行う場合、活性化されたすなわち電子不足のカルボニル基を有するケトンを使用することが有利である。本発明による方法の範囲内で使用するのに特に好適なケトンの例としては、1,1,1-トリフルオロアセトン、1,1,1-トリフルオロアセトフェノン、ヘキサフルオロアセトン、ピルビン酸メチルおよびピルビン酸エチルが挙げられる。
【0129】
同様に本発明で好ましく使用することができる式(IX)のビニルエーテルの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルおよび3,4-ジヒドロ-2H-ピランが挙げられる。
【0130】
本発明による方法のこの好ましい実施形態の範囲内で、特定のクラスの化合物が良好な結果で同様に使用することができる。例えばより大きい反応速度などの実際的な側面に関して、アルデヒドおよび/または電子不足なケトンの使用が有利であることがわかった。
【0131】
本発明で使用するカルボン酸無水物、アルデヒド、ケトンおよび/またはビニルエーテルの量は広い範囲内で変化し得、使用する物質のタイプおよび純度の程度または未だあまり正確には同定されていない不純物の存在により決まる。通常、上記の化合物およびその混合物は、使用するシトロネラールの量に基づいて約0.01 mol%〜約5 mol%、好ましくは約0.1 mol%〜約2 mol%の量で使用する。
【0132】
反応手順のタイプおよび方法、例えば反応器の構造または個々の反応物を加える順番は、酸素および水の十分な排除を伴う反応手順が確保されるのであれば、特定の条件は課されない。
【0133】
この好ましい実施形態の範囲内で本発明による方法を行うために、反応手順は、本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物の溶液を上記した好適な溶媒中に最初に用意することを含むことが有利である。次に、本発明によれば、環化するラセミまたは非ラセミのシトロネラールと選択したカルボン酸無水物、アルデヒド、活性化ケトンおよび/またはビニルエーテルとの混合物を、この溶液に加えることが好ましい。この代わりに、例えば、本発明で使用するフェノキシ-アルミニウム化合物の溶液を、各々適切に選択したカルボン酸無水物、アルデヒド、ケトンおよび/またはビニルエーテルと最初に混合し、その後環化するシトロネラールを加えることもできる。
【0134】
シトロネラールまたはシトロネラールと選択した化合物の混合物を、触媒溶液または反応混合物に約30分〜約6時間、好ましくは約2時間〜約4時間以内で計量投入することが有利であることがわかった。ここで、シトロネラールは、それ自体、または溶液の形態、有利には上記の好適な溶媒の1つの溶液の形態で加えることができる。本発明による方法のさらに好ましい実施形態の範囲内で、トルエン中の選択した式(I)または(I.a)のリガンドの溶液を最初に調製し、次に、選択した式(II)および/または(III)のアルミニウム化合物、好ましくはトリメチルアルミニウムまたはトリエチルアルミニウムのトルエン溶液を適宜攪拌しながら加える。
【0135】
環化するシトロネラールまたはシトロネラールと選択したカルボン酸無水物、アルデヒド、活性化ケトンおよび/またはビニルエーテルの混合物の添加は、この実施形態の範囲内で、約-40℃〜約40℃の範囲、好ましくは約-20℃〜約20℃の範囲の温度で行うことが有利である。この目的で、本発明のフェノキシ-アルミニウム化合物の調製溶液または懸濁液は、この範囲の温度、例えば-10℃〜10℃の範囲の温度に冷却し、他の反応物は予備冷却された形態で加えることが有利である。
【0136】
シトロネラールと選択した追加の化合物の混合物の添加は、シトロネラールの全量が一度に加えられるか、あるいは分割してまたは連続的に調製触媒溶液に加えられるように行うことができる。好適な溶媒は、ここでも、好ましくは上記の溶媒、特にトルエンである。環化するシトロネラールは、選択したカルボン酸無水物、アルデヒド、活性化ケトンおよび/またはビニルエーテルとの混合物の形態で溶媒をさらに加えずに使用することが好ましい。溶媒を使用する場合、溶媒の全量は、反応させるべきシトロネラールと溶媒の体積比が約1:1〜約1:20、好ましくは約1:1〜約1:10であるように選択することが有利である。
【0137】
触媒錯体の幾つかは、通常、反応中に不活性化されることがわかっている。これは、とりわけ、各々の場合に使用するフェノキシ-アルミニウム化合物に使用する式(I)のリガンドと環化反応の結果生じるイソプレゴールとの間のリガンド交換過程に起因するものである。不活性化された形態の触媒は、使用する溶媒の選択に応じて通常反応混合物に可溶である。
【0138】
あるいは、使用する触媒の量は、使用する触媒錯体の全てが、本発明の環化反応の過程でまたは最後の時点で不活性化されるように選択することができる。ここで、この場合、上記のリガンド交換過程のために、各々の場合に使用する式(I)のリガンドが別の加水分解を行うことなく遊離することに注目されたい。
【0139】
既に述べたように、本発明による方法は、ラセミおよび非ラセミの、すなわち光学活性のシトロネラールを環化して、ラセミおよび非ラセミのイソプレゴールを得るのに同様に好適である。
【0140】
したがって、好ましい実施形態において、本発明による方法は、式(IV.a)の光学活性イソプレゴール:
【化10】

【0141】
を、式(V.a)の光学活性シトロネラール:
【化11】

【0142】
[式中、(*)は各々不斉炭素原子を指す]
を環化することにより製造するのに使用される。
【0143】
本発明による方法は、特にL-(-)-イソプレゴールをD-(+)-シトロネラールを環化することにより製造するのに使用される。
【0144】
このようにして製造されるラセミまたは非ラセミのイソプレゴールは、世界中で最も重要な香料または芳香物質の1つであるラセミまたは非ラセミのメントールを製造するための重要な中間体である。メントールは、それ自体当業者に公知である水素化の方法により、特に、例えばPickard et al., J. Chem. Soc. 1920, 1253; Ohloff et al., Chem. Ber. 1962, 95, 1400; Pavia et al., Bull. Soc. Chim. Fr. 1981, 24, Otsuka et al., Synthesis 1991, 665またはEP 1 053 974 Aに記載されている好適な遷移金属触媒上での接触水素化によりイソプレゴールから得ることができる。ここで、選択した反応条件が好適である場合、使用したイソプレゴールの相対配置または絶対配置は、ほぼ保持され、多くの場合完全に保持される。
【0145】
このように、本発明は、以下のステップ:
A)本発明による方法により式(IV)のイソプレゴールを製造するステップ
B)このようにして得たイソプレゴールのエチレン性二重結合を水素化するステップ
を含んでなる、メントールの製造方法をさらに提供する。
【0146】
好ましい実施形態において、この方法は光学活性メントール、特に光学活性L-(-)-イソプレゴールからのL-(-)-メントールの製造に使用される。
【0147】
イソプレゴールを製造する本発明による方法の好ましい実施形態については、上記の好ましい実施形態の全体を参照されたい。
【実施例】
【0148】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、決して限定を加えるものではない。
【0149】
ガスクロマトグラフィー分析は以下の方法で行った:
50 m DB-WAX、ID.:0.32 mm、FD.:1.2 ym;80℃、36-230℃、15℃/分で250℃まで;tR (フェニルシクロヘキサン):16.5;tR (イソプレゴール):13.7;tR (シトロネラール):10.2。
【0150】
以下のHPLC法を用いた:CC250/4 Nucleodur C18 Gravity、5 ym;C:水 - 0.05% H3PO4;D:アセトニトリル 20:80;出口:93 bar、25℃;tR (フェニルシクロヘキサン):10.6;tR (イソプレゴール):3.3;tR (ジフェニルフェノール):4.8。得られた反応生成物の濃度をGCおよびHPLCにより分析的に決定した。
【0151】
実施例12,6-ジフェニルフェノールの処理方法
最初に、無水トルエン(731 ml)中の2,6-ジフェニルフェノール(25 g、101.5 mmol)を加熱乾燥したフラスコに導入した。室温で、トルエン中のトリエチルアルミニウムの溶液(0.66 M、18.2 ml、33.8 mmol)をその透明溶液に加えた。その溶液を1時間25℃で攪拌した。得られた触媒溶液を0℃に冷却し、3時間にわたって、シトロネラール(258.7 g、1.68 mol)とピルビン酸メチル(2.07 g、0.02 mol)の混合物と混合した。添加終了後、引き続き反応混合物を、3時間0℃で、さらに12時間室温で攪拌した。溶媒トルエンを、カラム(直径:30 mm、充填物280 mm、充填物5 mm金属リング、100 mbar、上部温度43-46℃、底部温度48-85℃)を通して蒸留により除去し、蒸留残渣として得られたイソプレゴールを減圧下で留去した(6 mbar、上部温度55℃、底部温度75℃)。第1留分はイソプレゴール(38.6 g)を98.4%の純度で含んでいた。蒸留底部に残存するイソプレゴールを、フェニルシクロヘキサン(52 g)を加えて減圧下で留去した(6 mbar、上部温度53-54℃、底部温度77-88℃)。第2留分からイソプレゴール(224 g)を90.1%の純度で得た。単離したイソプレゴールの全収率は93%であった。反応中にリガンドとして用いた2,6-ジフェニルフェノールは、12時間にわたり25℃に冷却した後に油状底部生成物から結晶化した。懸濁液をガラス吸引フィルターを用いて濾過し、次に、フィルターケーキを95℃の温度にて3 mbarで乾燥した。2,6-ジフェニルフェノールを結晶性固体(16.7 g)として67%の収率で得た。この固体、結晶化の母液および蒸留分離からの底部生成物を液体クロマトグラフィーを用いて分析した。結果を表1に示す。
【表1】

【0152】
実施例22,6-ジフェニルフェノールの処理方法(底部生成物の加水分解を含む)
最初に、無水トルエン(731 ml)中の2,6-ジフェニルフェノール(25 g、101.5 mmol)を加熱乾燥したフラスコに導入した。室温で、トルエン中のトリエチルアルミニウムの溶液(0.66 M、18.2 ml、33.8 mmol)をその透明溶液に加えた。その溶液を1時間25℃で攪拌した。得られた触媒溶液を0℃に冷却し、3時間にわたって、シトロネラール(375 g、2.43 mol)とピルビン酸メチル(3.75 g、0.04 mol)の混合物と混合した。添加終了後、引き続き反応混合物を、3時間0℃で、さらに12時間室温で攪拌した。溶媒トルエンを、カラム(直径:30 mm、充填物280 mm、充填物5 mm金属リング、100 mbar、上部温度43-46℃、底部温度48-85℃)を通して蒸留により除去し、蒸留残渣として得られたイソプレゴールを減圧下で留去した(6 mbar、上部温度55-62℃、底部温度75-115℃)。第1留分はイソプレゴール(341.9 g)を98.4%の純度で含んでいた。蒸留底部に残存するイソプレゴールをフェニルシクロヘキサン(40.5 g)を加えて減圧下で留去した(6 mbar、上部温度72℃、底部温度95-104℃)。第2留分から56.9%のイソプレゴール(26.7 g)および39.9%のフェニルシクロヘキサンを含む混合物を得た。単離したイソプレゴールの全収率は95%であった。
【0153】
蒸留分離の底部生成物の一部(26 g)をフェニルシクロヘキサン(653 g)で希釈し、2%強度のNaOH水溶液(104 ml)で加水分解した。懸濁液を20分間室温で攪拌した。この間に、底部生成物中に存在したアルミニウムが水酸化物として析出した。相分離後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し濾過した。フェニルシクロヘキサンを蒸留により除去した(95℃、3 mbar)。2,6-ジフェニルフェノールを白色固体として12.1 gの収率で得た。
【0154】
この固体および蒸留分離の底部生成物を液体クロマトグラフィーを用いて分析した。結果を表2に示す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)イソプレゴール、
ii)遊離したおよび/または錯体結合した形態の少なくとも1種の式(I)のリガンド:
【化1】

[式中、
R1、R2、R3は、各々相互に独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、C1-C8-アルキル、C1-C8-アルコキシ、ジ(C1-C4-アルキル)アミノおよび置換または非置換のアリールから選択され、
R4、R5は、各々相互に独立して、ハロゲン、ニトロ、C1-C8-アルキル、C1-C8-アルコキシ、ジ(C1-C4-アルキル)アミノおよび置換または非置換のアリールまたはヘテロアリールから選択される]
を含む、シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からのアルミニウムを含む反応生成物を処理する方法であって、
a)反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得、
b)式(I)のリガンドを底部生成物から分離する、
上記方法。
【請求項2】
ステップb)において結晶化により底部生成物から式(I)のリガンドを分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得、
a.2)イソプレゴールが枯渇した底部生成物を塩基性水溶液に密に接触させて、アルミニウムを含む水相および式(I)のリガンドの大部分を含む有機相を得、
b)式(I)のリガンドを有機相から分離する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物が低沸点溶媒(iii)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物が助剤(iv)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
助剤が、有機酸、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトンおよびビニルエーテルから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
シトロネラールの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物を予め加水分解することなく使用する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)における蒸留分離の前に、環化に由来して存在する溶媒および/または助剤を反応生成物から最初に分離する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)における蒸留分離の前および/または間に、反応生成物を、蒸留条件下で沸点がイソプレゴールの沸点よりも少なくとも10℃高い溶媒と混合する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの工程ステップを連続的に行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
高沸点溶媒をステップa)の間に加える、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)からの底部生成物の加熱した排出物を加熱した塩基性水溶液に密に接触させ、次に、リガンドの大部分を結晶化により有機相から分離する、請求項3〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式(I)のリガンドが式(I.a)のジアリールフェノールリガンド:
【化2】

[式中、
Ar1およびAr2は、各々相互に独立して、置換または非置換のアリールまたはヘテロアリールから選択され、
R1’、R2’、R3'は、各々相互に独立して、R1、R2またはR3について記載した意味の1つを有する]
から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
式(IV)のイソプレゴール:
【化3】

の製造方法であって、
α)式(V)のシトロネラール:
【化4】

を、
請求項1および/または13に記載した式(I)のリガンドを、式(II)のアルミニウム化合物:
(R14)3-pAlHp (II)
[式中、
Alはアルミニウムであり、
R14は1〜5個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状のアルキル基であり、
pは0または1〜3の整数である]
および/または式(III)のアルミニウム化合物:
MAlH4 (III)
[式中、
Alはアルミニウムであり、
Mはリチウム、ナトリウムまたはカリウムである]
と反応させることにより得られるトリス(フェニルオキシ)アルミニウム触媒の存在下で環化すること、
β) 反応後、
a)ステップα)で得られた反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得ること、
b)式(I)のリガンドを底部生成物から分離すること
により、式(I)のリガンドを回収すること
を含んでなる、上記方法。
【請求項15】
ステップb)において結晶化により式(I)のリガンドを底部生成物から分離する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応後、ステップβ)において、
a)ステップα)で得られた反応生成物を蒸留分離して、イソプレゴールが濃縮した上部生成物およびイソプレゴールが枯渇した底部生成物を得ること、
a.2)イソプレゴールが枯渇した底部生成物を塩基性水溶液に密に接触させて、アルミニウムを含む水相および式(I)のリガンドの大部分を含む有機相を得ること、および
b)式(I)のリガンドを有機相から分離すること
により、式(I)のリガンドを回収することを含んでなる、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
式(II)のアルミニウム化合物がトリメチルアルミニウムまたはトリエチルアルミニウムから選択される、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
式(IV.a)の光学活性イソプレゴール:
【化5】

を製造する請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法であって、
式(V.a)の光学活性シトロネラール:
【化6】

[式中、(*)は各々不斉炭素原子を指す]
を環化することを含んでなる、上記方法。
【請求項19】
D-(+)-シトロネラールを環化することを含んでなる、L-(-)-イソプレゴールを製造する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
A)請求項14〜19のいずれか1項に記載の式(IV)のイソプレゴールを製造するステップ、および
B)このようにして得たイソプレゴールのエチレン性二重結合を水素化するステップ
を含んでなる、メントールの製造方法。
【請求項21】
A)請求項18に記載の式(IV.a)の光学活性イソプレゴールを製造するステップ、および
B)このようにして得た光学活性イソプレゴールのエチレン性二重結合を水素化するステップ
を含んでなる、光学活性メントールを製造する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
A)請求項19に記載のL-(-)-イソプレゴールを製造するステップ、および
B)このようにして得た光学活性L-(-)-イソプレゴールのエチレン性二重結合を水素化するステップ
を含んでなる、L-(-)-メントールを製造する請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−501636(P2010−501636A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526121(P2009−526121)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059148
【国際公開番号】WO2008/025851
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】