説明

イチゴ由来の薬物代謝酵素阻害剤及びその製造法

【課題】 安全性の高い薬物代謝酵素阻害剤を提供する。
【解決手段】 イチゴ由来でシトクロムP−450 3A4阻害活性を示す物質を有効成分として含有する薬物代謝酵素阻害剤;イチゴ由来でシトクロムP−450 3A4阻害活性を示す新規化合物;及びイチゴを抽出し、得られた抽出物を精製することを特徴とする前記化合物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴ由来の薬物代謝酵素阻害剤、薬物代謝酵素阻害活性を示す新規ポリフェノール及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、臨床で用いられている医薬品のうち50%以上のものが、代謝される際に薬物代謝酵素であるシトクロムP−450 3A4(以下「CYP3A4」という。)により代謝されるといわれている。そして、ヒトが日常摂取する機会の多い食品や生薬・ハーブ類の多くにCYP3A4阻害作用があるといわれている。しかし、それらの多くは成分が同定されていない。そして、服薬している際にCYP3A4阻害作用のある食品などを摂取することにより薬物の代謝が阻害され、その結果、薬物の血中濃度が上昇することにより危険な症状や思わぬ副作用を招く可能性がある。そこで、薬物による危険な症状を防止するため、ヒトが日常摂取する食品や生薬・ハーブ類にどのようなCYP3A4阻害物質が含まれているのかを調べることは非常に重要であると考えられる。
【0003】
一方、CYP3A4阻害物質を薬物と同時に摂取することにより、高価な薬物の摂取量を減らし、患者の医療費を削減することにつながることが期待される。薬物の用量が低い場合にも薬効を長時間維持することが可能になるため、安全域(LD50/ED50)が狭く使用しにくい薬物の適用範囲が広がり、更に、特殊な製剤技術を利用せずに長時間持続型製剤と同様の目的を達成することも可能になる。
【0004】
CYP3A4阻害物質としては、特許文献1にヒトCYP3A4に対するモノクローナル抗体が開示されている。
【0005】
一方、イチゴ抽出物については、特許文献2に抗炎症剤としての用途が、特許文献3に抗アレルギー剤としての用途が開示されているが、イチゴ由来の物質がCYP3A4阻害活性を示すことは知られていない。
【特許文献1】特表2003−506084号公報
【特許文献2】特開2003−261454号公報
【特許文献3】特開2003−261455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安全性の高い薬物代謝酵素阻害剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、ヒトが日常摂取することにより安全性が既に確認されている食品からのCYP3A4阻害物質の探索を行った。その結果、イチゴ抽出物がCYP3A4阻害活性を有することを見出すとともに、イチゴ抽出物からCYP3A4阻害活性を有するポリフェノールを単離し、構造決定することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)イチゴ由来でシトクロムP−450 3A4阻害活性を示す物質を有効成分として含有する薬物代謝酵素阻害剤。
(2)イチゴ由来でシトクロムP−450 3A4阻害活性を示す物質がポリフェノールである前記(1)に記載の薬物代謝酵素阻害剤。
(3)ポリフェノールがフラボノイド誘導体である前記(2)に記載の薬物代謝酵素阻害剤。
(4)ポリフェノールが次式(1)もしくは(2):
【0009】
【化1】

で示されるフラボノイド誘導体及び次式(3):
【0010】
【化2】

で示される化合物から選ばれる少なくとも1種である前記(2)に記載の薬物代謝酵素阻害剤。
(5)イチゴの抽出物又はその処理物を有効成分として含有する薬物代謝酵素阻害剤。
(6)薬物活性調節剤として用いられる前記(1)〜(5)のいずれかに記載の薬物代謝酵素阻害剤。
(7)前記(6)に記載の薬物代謝酵素阻害剤を含有する医薬組成物。
(8)次式(2):
【0011】
【化3】

で示される化合物。
(9)次式(3):
【0012】
【化4】

で示される化合物。
(10)イチゴを抽出し、得られた抽出物を精製することを特徴とする、次式(1)もしくは(2):
【0013】
【化5】

又は次式(3):
【0014】
【化6】

で示されるポリフェノールの製造法。
(11)イチゴがトチオトメである前記(10)に記載の製造法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薬物と同時に摂取することにより薬物の摂取量を減らすことのできる薬物代謝酵素阻害剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明においては、イチゴは、抽出物又はその処理物として用いられる。抽出原料となるイチゴの種類としては、特に制限はないが、好ましくはオランダイチゴ(学名:Fragaria ananassa、英名:garden strawberry)が挙げられ、その品種としては、例えばトチオトメ、ダナー、豊の香、宝交早生、福羽、女峰、久留米49号、栃の峰、好ましくはトチオトメが挙げられる。イチゴの部分としては、例えば果実、葉、茎、根、好ましくは果実が挙げられる。
【0017】
本発明において、イチゴ由来でCYP3A4阻害活性を示す物質とは、イチゴから得られるものであって、CYP3A4の活性を阻害するものであれば、特に制限はなく、例えば、イチゴの抽出物、又はこれに分離、精製、単離等の各種処理の少なくとも1つを施したものであってCYP3A4阻害活性を保持しているものをいう。
【0018】
抽出溶媒としては、一般には有機溶媒、好ましくはメタノール、エタノール、アセトン、プロパノールなどの水混和性溶媒が挙げられる。得られた抽出液は、好ましくは、濃縮後、得られた水溶液を酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、エーテルなどの低極性有機溶媒と分配し、有機層を精製することにより目的とする化合物を効率よく得ることができる。
【0019】
精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を適宜組み合わせることにより行うことができる。
【0020】
以上のようにして精製することにより、CYP3A4阻害活性を有する前記式(1)、(2)又は(3)で示される化合物をそれぞれ得ることができる。これらのうち、前記式(2)又は(3)で示される化合物はいずれも新規化合物である。
【0021】
前記のようにして得られる抽出物、その処理物及び化合物は、いずれもCYP3A4阻害活性を有し、薬物と同時に摂取することにより薬物の摂取量を減らすことができる。
【0022】
本発明の薬物代謝酵素阻害剤及び医薬組成物は、イチゴの抽出物もしくはその処理物、又は前記化合物を公知の食品用担体又は医薬用担体と組合せて製剤化することができる。投与形態としては、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤として使用される。また、本発明の薬物代謝酵素阻害剤及び医薬組成物は、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、軟膏剤等の非経口剤として使用してもよい。また、本発明の薬物代謝酵素阻害剤は、食品、チューインガム、飲料等に添加して、いわゆる特定保健用食品とすることにより、薬効成分の含量を低下させたり、薬効を持続させることもできる。
【0023】
本発明の薬物代謝酵素阻害剤及び医薬組成物は、同一製剤中に、摂取量を減らす対象となる薬物を含有してもよく、また、当該薬物を含有した別個の製剤と同時に投与してもよい。また、本発明の薬物代謝酵素阻害剤及び医薬組成物の効果が得られる範囲内で、薬物を含有した別個の製剤の投与時期とずらしてもよい。
【0024】
本発明の薬物代謝酵素阻害剤及び医薬組成物の投与量は、患者の年令、体重、疾患の程度、投与経路により異なるが、経口投与では、前記式(1)、(2)又は(3)で示される化合物として、通常1日10〜50mgであり、投与回数は、通常、経口投与では1日1〜3回である。
【0025】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の賦形剤を用いて常法に従って製造される。
【0026】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0027】
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。
【0028】
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。
【0029】
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが挙げられる。
【0030】
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0031】
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム。
【0032】
また、本発明の薬物代謝酵素阻害剤及び医薬組成物は、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤として投与する場合には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
1.単離操作
トチオトメの果実(2.0kg)をメタノール(3L)で抽出し、濃縮した。その抽出物を酢酸エチルと水で分液した。酢酸エチル可溶部(18.4g)を、更に、ヘキサンと90%メタノール−水で分液し、90%メタノール−水画分を濃縮した。得られた90%メタノール−水画分(3.35g)を逆相カラムクロマトグラフィー(40%メタノール−水、60%メタノール−水、80%メタノール−水、メタノール)で分画後、60%メタノール−水で溶出してきた画分(0.13g)を、更に、逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(50%メタノール−水)で精製した。そして化合物(1)を7.5mg、化合物(2)を1.0mg、化合物(3)を2.6mg単離した。
【0035】
化合物(1): [α]26D -62°(c 0.28, MeOH), FABMS (positive) m/z 595 [M + H]+; 1H NMR (CD3OD): δ 3.31 (1H, m), 3.44 (1H, m), 3.45 (2H, m), 4.18 (1H, dd, J = 11.6, 6.6 Hz), 4.29 (1H, dd, J = 11.6, 2.2 Hz), 5.22 (1H, d, J = 7.1 Hz), 6.06 (1H, d, J = 16.0 Hz), 6.11 (1H, br s), 6.28 (1H, br s), 6.79 (2x1H's, d, J = 8.8 Hz), 6.80 (2x1H's, d, J = 8.8 Hz), 7.30 (2x1H's, d, J = 8.8 Hz), 7.39 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.98 (2x1H's, d, J = 8.8 Hz); 13C NMR (CD3OD): δ 65.1 (t), 72.5 (d), 76.5 (d), 76.6 (d), 78.8 (d), 95.8 (d), 101.1 (d), 104.9 (d), 106.2 (s), 115.6 (d), 116.8 (d x 2), 117.6 (d x 2), 123.6 (s), 127.9 (s), 132.0 (d x 2), 133.0 (d x 2), 136.0 (s), 147.4 (d), 159.3 (s), 160.1 (s), 162.0 (s), 162.3 (s), 163.7 (s), 167.6 (s), 169.6 (s), 180.1 (s).
【0036】
化合物(2): [α]26D -57°(c 0.045, MeOH), FABMS (positive) m/z 595 [M + H]+; 1H NMR (CD3OD) : δ 3.27 (1H, t, J =9.9 Hz), 3.39 (1H, m), 3.41 (1H, dd, J =9.9, 7.1), 3.44 (1H, m), 4.15 (1H, dd, J = 12.5, 6.0 Hz), 4.19 (1H, dd, J = 12.5, 2.2 Hz), 5.14 (1H, d, J = 7.1 Hz), 5.51 (1H, d, J =13.2 Hz), 6.14 (1H, d, J = 2.2 Hz), 6.26 (1H, d, J = 2.2 Hz), 6.67 (2x1H's, d, J = 8.8 Hz), 6.71 (1H, d, J = 13.2 Hz), 6.80 (2x1H's, d, J = 8.8 Hz), 7.50 (2x1H's, d, J = 8.8 Hz), 7.95 (2x1H's, d, J = 8.8 Hz) ; 13C NMR (CD3OD): δ 64.9 (t), 72.4 (d), 76.4 (d), 76.5 (d), 78.9 (d), 96.3 (d), 101.7 (d), 105.1 (d), 105.1 (s), 116.5 (d x 2), 116.8 (d x 2), 117.0 (d), 123.6 (s), 128.4 (s), 133.0 (d x 2), 134.5 (d x 2), 135.9 (s), 146.2 (d), 159.5 (s), 159.9 (s), 160.9 (s), 162.3 (s), 163.7 (s), 166.3 (s), 168.6 (s), 179.9 (s).
【0037】
化合物(3): [α]26D -55°(c 0.14, MeOH); HRFABMS (positive) m/z 373.1508 [M + H]+ (calcd for C17H25O9, Δ +1.0 mmu); UV (MeOH) λmax (log ε) 285.5 (4.2), 225.0 nm (4.0); IR (film) νmax 3400, 1630 cm-1; 1H NMR (CD3OD) : δ 0.92 (1H, d, J =6.8 Hz), 0.96 (1H, d, J =6.8 Hz), 2.24 (1H, heptet, J =6.8 Hz), 2.87 (1H, dd, J =15.6, 6.8 Hz), 3.16 (1H, dd, J =15.6, 6.8 Hz), 3.39 (1H, t, J =9.0 Hz), 3.45 (1H, m), 3.46 (1H, t, J =9.0 Hz), 3.53 (1H, dd, J =9.0, 7.7 Hz), 3.71 (1H, dd, J =12.2, 5.6 Hz), 3.91 (1H, dd, J =12.2, 2.1 Hz), 5.01 (1H, d, J =7.7), 5.93 (1H, d, J =2.1), 6.15 (1H, d, J =2.1 Hz); 13C NMR (CD3OD): δ 23.7 (q), 27.1 (d), 24.2 (q), 54.9 (t), 63.3 (t), 72.0 (d), 75.7 (d), 79.2 (d), 79.4 (d), 96.4 (d), 99.3 (d), 102.7 (d), 107.7 (s), 162.9 (s), 167.3 (s), 168.4 (s), 207.9 (s).
【0038】
2.構造決定
化合物(1)は、NMRスペクトルとFABマススペクトルにより構造決定した結果、既知化合物ケンフェロール−3−β−D−(6−O−p−クマリルグルコピラノシド)(Phytochemisty, 1978, 17, 787-791)であると同定した。この化合物のNMRデータは報告されていないので、今回の帰属が初めてのものである。
【0039】
化合物(2)のスペクトルデータは化合物(1)のものと類似していたが、二重結合がシスになったものであることが明らかとなった。
【0040】
化合物(3)は、NMRスペクトルとFABマススペクトルにより新規物質4,6−ジヒドロキシ−2−O−(β−D−グルコピラノシル)イソバレロフェノンであると構造決定した。
【0041】
3.CYP3A4阻害試験
サンプルはDMSO溶液として用い、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)192μLに加えた。前記緩衝液には、基質であるニフェジピン(50μM)の他、グルコース−6−リン酸(5mM)、β−NADP(0.5mM)、MgCl(0.5mM)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(4.3μg/mL)が含まれている。その反応液を37℃で5分間プレインキュベートした後、CYP3A4を加え37℃で1時間反応させた。100μLのメタノールを添加して反応を終了させ、内部標準物質として6−メトキシカルボニル−5−メチル−7−(2−ニトロフェニル)−4,7−ジヒドロフロ[3,4−b]ピリジン−1−(3H)−オンのDMSO溶液を添加した。その混合物を1mLのエーテルで抽出し、エーテル層を乾固した。そして、残渣を逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより分析し、阻害率を計算した。
【0042】
トチオトメのメタノール抽出物を酢酸エチルと水で分液したものは、0.01w/v%の濃度における阻害率は、それぞれ79%及び48%であった。各化合物のCYP3A4阻害活性はIC50値として、化合物(1)0.7μM、化合物(2)0.7μM、化合物(3)120μMであった。
【0043】
なお、現在までCYP3A4阻害活性が強いといわれているフラボノイドとしては以下のものがあるが、化合物(1)及び(2)は、約15倍ないし約100倍の強い阻害活性を示した。
ケンフェロール:IC50 50μM
クエルセチン:IC50 10μM
ナリンゲニン:IC50 50μM
ナリンギン:IC50 >1000μM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イチゴ由来でシトクロムP−450 3A4阻害活性を示す物質を有効成分として含有する薬物代謝酵素阻害剤。
【請求項2】
イチゴ由来でシトクロムP−450 3A4阻害活性を示す物質がポリフェノールである請求項1記載の薬物代謝酵素阻害剤。
【請求項3】
ポリフェノールがフラボノイド誘導体である請求項2記載の薬物代謝酵素阻害剤。
【請求項4】
ポリフェノールが次式(1)もしくは(2):
【化1】

で示されるフラボノイド誘導体及び次式(3):
【化2】

で示される化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の薬物代謝酵素阻害剤。
【請求項5】
イチゴの抽出物又はその処理物を有効成分として含有する薬物代謝酵素阻害剤。
【請求項6】
薬物活性調節剤として用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物代謝酵素阻害剤。
【請求項7】
請求項6記載の薬物代謝酵素阻害剤を含有する医薬組成物。
【請求項8】
次式(2):
【化3】

で示される化合物。
【請求項9】
次式(3):
【化4】

で示される化合物。
【請求項10】
イチゴを抽出し、得られた抽出物を精製することを特徴とする、次式(1)もしくは(2):
【化5】

又は次式(3):
【化6】

で示されるポリフェノールの製造法。
【請求項11】
イチゴがトチオトメである請求項10記載の製造法。

【公開番号】特開2006−111597(P2006−111597A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302659(P2004−302659)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】