説明

イブプロフェン含有固形製剤を保存する容器の内壁曇り抑制方法

【課題】イブプロフェン含有固形製剤を密閉系容器中で保存した際の、容器内壁の曇りを抑制する方法を提供すること
【解決手段】イブプロフェン含有固形製剤及び活性炭を、密閉系容器中で保存することを特徴とする容器内壁の曇り抑制方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェンを含有する固形製剤を密閉系容器中で保存する際の容器内壁の曇り抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェン(ibuprofen)は、慢性関節リウマチ、関節痛、関節炎、神経痛、神経炎、脊腰痛等の疾患、症状の消炎、鎮痛、風邪症侯群、急性気管支炎、急性増悪期の慢性気管支炎、発熱等に有効な非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)として広く使用されている薬物である。
しかし、イブプロフェンは昇華性物質のため、ガラスビン等の密閉系容器中に保存した場合、経時的に内壁に曇りを生じることが知られており、様々な曇り抑制方法が検討されている(特許文献1〜4)が、必ずしも満足できる効果が得られているわけではなかった。
【特許文献1】特開平8−193027号公報
【特許文献2】特開2002−179559号公報
【特許文献3】特開2002−241275号公報
【特許文献4】特開2005−162619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明は、イブプロフェン含有固形製剤を密閉系容器中で保存した際の、容器内壁の曇りを抑制する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者らは、イブプロフェン含有固形製剤の容器内壁の曇りを抑制する方法について研究開発を鋭意行ったところ、活性炭をイブプロフェン含有固形製剤とともに密閉系容器中で保存することで、容器の内壁の曇りが抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、イブプロフェン含有固形製剤及び活性炭を、密閉系容器中で保存することを特徴とする容器内壁の曇り抑制方法を提供するものである。
また、本発明は、イブプロフェン含有固形製剤及び活性炭を密閉系容器中に含有することを特徴とする医薬製剤を提供するものである。
また、本発明は、包装体に包装したイブプロフェン含有固形製剤及び活性炭を密閉系容器中に含有することを特徴とする医薬製剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、イブプロフェン含有固形製剤を密閉系容器中で保存した際の容器内壁の曇りが抑制されるので、美観に優れ、商品価値の高い医薬製剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いる活性炭は、原料、形状、細孔構造、粒径等に関わらず、種々のものを用いることができる。本発明に用いる活性炭の原料としては、例えば、木質系活性炭、椰子系活性炭、石炭系活性炭等が挙げられる。活性炭の形状としては、粉末活性炭、粒状活性炭(破砕活性炭;顆粒活性炭(球状活性炭);円柱状、球状、ハニカム状、シート状、板状等の成型活性炭;フェルト状、布状、紙状の繊維状活性炭等)が挙げられる。また、活性炭の賦活化手段としては、水蒸気賦活化法、高温炭化法(800〜950℃)、塩化亜鉛、酸化亜鉛、リン酸等による化学賦活化等が挙げられる。
活性炭の使用量は、特に限定されないが、容器内壁の曇り抑制効果の点から、固形製剤中に含有されるイブプロフェン1質量部に対して0.1〜4質量部が好ましく、0.2〜2質量部がより好ましい。
また、活性炭の使用量は、密閉系容器の内容積により適宜変更することもまた好ましい。より具体的には、密閉系容器の内容積1cm3あたり、0.0001〜1g、さらに0.001〜0.1gが好ましい。

なお、活性炭は、公知の方法により製造することができ、また、市販のものを使用することもできる。
【0008】
本発明の固形製剤に含有されるイブプロフェンとしては、イブプロフェン又はイブプロフェンの薬学上許容される塩を用いることができる。イブプロフェンの薬学上許容される塩としては、例えば、イブプロフェンナトリウム等が挙げられる。
固形製剤中に含有されるイブプロフェンの割合は、特に限定されないが、固形製剤全体に対して1〜70質量%が好ましく、5〜60質量%がさらに好ましく、7〜50質量%が特に好ましい。
なお、イブプロフェンは、公知の方法により製造することができ、市販のものを使用することもできる。
【0009】
本発明における固形製剤とは、錠剤、カプセル剤等の医薬品の剤形のことを言う。イブプロフェン含有固形製剤の剤形としては、特に限定されるものではなく、例えば、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、散剤等が挙げられ、カプセル剤、錠剤が好ましい。
また、イブプロフェン含有固形製剤は公知の方法、例えば日本薬局方製剤総則等に記載の方法に従って製造することができる。例えば、剤形が錠剤の場合、イブプロフェン及び各種薬物や通常用いられる各種製剤添加物を用いて、公知の方法に基づき混合または造粒し、得られた混合物または造粒物を、所望により滑沢剤を混合した後に打錠して、さらに所望により、糖衣液またはフィルムコーティング液を用いて、公知の方法に基づき、糖衣またはフィルムコーティングを施して、イブプロフェン含有固形製剤を製造することができる。
【0010】
イブプロフェン含有固形製剤は、イブプロフェン以外の薬効成分、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等からなる群より選ばれる1種又は2種以上の薬効成分を含有しても良い。
【0011】
解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、サリチル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0012】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、アゼラスチン塩酸塩、イソチペンジル塩酸塩、クレマスチンフマル酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェテロール塩酸塩、トリプロリジン塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、トンジルアミン塩酸塩、フェネタジン塩酸塩、メトジラジン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、アリメマジン酒石酸塩、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、 dl−クロルフェニラミンマレイン酸塩、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩、メキタジン、ジフェテロールリン酸塩等が挙げられる。
【0013】
鎮咳剤としては、例えば、アロクラミド塩酸塩、クロペラスチン塩酸塩、クエン酸カルベタペンタン、クエン酸チペピジン、ジブナートナトリウム、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、チペピジンヒベンズ酸塩、フェンジゾ酸クロペラスチン、コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩等が挙げられる。
【0014】
ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン塩酸塩、ノスカピン等が挙げられる。
【0015】
気管支拡張剤としては、例えば、dl−メチルエフェドリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリンサッカリン塩等が挙げられる。
【0016】
去痰剤としては、例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、ブロムヘキシン塩酸塩、アンブロキソール塩酸塩、カルボシステイン等が挙げられる。
【0017】
催眠鎮静剤としては、例えば、ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素等が挙げられる。
【0018】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ヘスペリジン及びその誘導体、並びにそれらの塩類等が挙げられる。
【0019】
抗炎症剤としては、例えば、トラネキサム酸、塩化リゾチーム、セラプターゼ、グリチルリチン酸、その類縁物質等が挙げられる。
【0020】
胃粘膜保護剤としては、例えば、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩(アルミニウムグリシネート)、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0021】
生薬類としては、例えば、オキソアミヂン、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、石蒜、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタンを含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、地竜、チクセツニンジン、ニンジン等が挙げられる。
【0022】
漢方処方としては、例えば、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等が挙げられる。
【0023】
カフェイン類としては、例えば、無水カフェイン、カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等が挙げられる。
【0024】
イブプロフェン含有固形製剤には、製剤添加物として、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等をさらに含んでいても良い。
賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、蔗糖、マンニトール等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が挙げられる。
【0025】
密閉系容器は、固形製剤の容器として使用できる密閉可能な保存容器であれば特に限定されるものではなく、定型容器、不定型容器のいずれも用いることができる。
定型容器としては、例えば、瓶、缶、箱等が挙げられ、瓶が好ましい。不定型容器としては、例えば、袋(ピロー包装、スティック包装等)、PTP包装、SP包装等が挙げられ、ピロー包装が好ましい。
また、容器は透明、半透明、不透明のいずれでもよいが、容器内部の固形製剤の形状変化が目視でき、目に見えて本発明の効果を把握することが可能である点で、半透明又は透明が好ましい。
なお、容器の材質については、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス、樹脂、金属等のものが挙げられ、これらの材料を複合構造や多層構造としたものを使用することもできる。
【0026】
活性炭の密閉系容器中への含有方法については、特に限定されるものではなく、例えば、容器が瓶であれば蓋の裏側に格納する、容器が袋であればシート状や板状等の成型活性炭を用いる等により、含有せしめればよい。
さらに、包装体にイブプロフェン含有固形製剤を含有させ、当該包装された製剤と活性炭とを袋に封入した形態とすることもできる。より具体的には、PTP又はSP包装したイブプロフェン含有固形製剤と、例えばシート状や板状の成型活性炭等の活性炭とを、ピロー包装する形態が挙げられる。本発明において包装体とは、錠剤、カプセル剤などの固形製剤の一個又は複数個を密閉包装できる容器であればよく、PTP包装、SP包装、袋等が挙げられる。また本発明の医薬製剤には、密閉系容器中にイブプロフェン含有固形製剤を含有する形態の医薬品のすべてが含まれる。
【0027】
本発明にかかるイブプロフェン含有固形製剤は、薬効成分としてイブプロフェンを含むので、本発明の医薬製剤は、消炎・鎮痛剤や風邪薬として用いられる。具体的には、慢性関節リウマチ、関節痛及び関節炎、神経痛及び神経炎、背腰痛、頸腕症候群、子宮付属器炎、月経困難症、紅斑(結節性紅斑、多形滲出性紅斑、遠心性環状紅斑)等の疾患・症状や手術・外傷後の消炎・鎮痛、また急性上気道炎の解熱・鎮痛等が挙げられる。また、風邪薬の効能・効果としては、かぜの諸症状(のどの痛み、発熱、悪寒、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛みなど)の緩和が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
〔製造例〕
イブプロフェン900g(米沢浜理製:商品名 日本薬局方イブプロフェン)、ヒドロキシプロピルセルロース50g、結晶セルロース1673g、カルメロース230gを高速攪拌造粒機(深江工業製:FS−10型)に投入して、混合後、無水エタノール950gを添加して練合した。この造粒物を流動層乾燥機(フロイント産業製:FLO−5型)に投入して、乾燥後、整粒機(岡田精工製:ND−10型)を用いて整粒した。この整粒物2853g及びステアリン酸マグネシウム27gを、混合機(コトブキ製:PM50型)に投入して混合した後、直径8.5mmの杵を取り付けた打錠機(畑鉄工所製:HT−AP18SS型)を用いて打錠し、1錠の質量が240mgの錠剤12000錠を得た。
【0030】
〔実施例1〕
製造例で得た錠剤18錠及び活性炭1g(新越化成工業製:商品名 フレッシュコール)をガラス瓶(2K規格瓶:内容積:約26cm3)に入れ保存した。
【0031】
〔比較例1〕
製造例で得た錠剤18錠をガラス瓶(2K規格瓶:内容積:約26cm3)に入れ保存した。
【0032】
〔瓶の曇りの評価〕
実施例1及び比較例1で得た瓶包装品について、瓶の曇りの有無を評価した。実施例1及び比較例1のガラス瓶を50℃で2週間保存した後、瓶内壁の曇りの有無を目視にて判定した。結果を表1に示す。
【表1】

<考察>
表1から明らかなように、比較例1ではビン内壁に曇りが認められた。一方、活性炭とともに保存した実施例1では、ビン内壁に曇りは全く認められなかった。したがって、イブプロフェンを活性炭とともに密閉系容器中に保存することにより、ビン内壁の曇りを抑制すること、すなわちイブプロフェンの昇華を抑制することがわかった。
【0033】
本発明によれば、保存容器内壁の曇りを抑制したイブプロフェン含有固形製剤を含む包装体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェン含有固形製剤及び活性炭を、密閉系容器中で保存することを特徴とする容器内壁の曇り抑制方法。
【請求項2】
イブプロフェン含有固形製剤及び活性炭を密閉系容器中に含有することを特徴とする医薬製剤。
【請求項3】
密閉系容器が瓶である請求項2記載の医薬製剤。
【請求項4】
包装体に包装したイブプロフェン含有固形製剤及び活性炭を密閉系容器中に含有することを特徴とする医薬製剤。
【請求項5】
密閉系容器が袋である請求項4記載の医薬製剤。

【公開番号】特開2009−34156(P2009−34156A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198762(P2007−198762)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】