説明

インクカートリッジ及び印刷システム

【課題】回動部材の回動位置によって貯留部内のインク量を表示する場合に、貯留部内のインクが多い場合も少ない場合もインク量の表示を正確に行う。
【解決手段】インクカートリッジ1は、筐体2と、厚さ方向の一方側の端部が筐体2に接するように配置され、内部にインクを貯留する貯留部71と、下端部が筐体2に対し回動可能に支持され、貯留部71の厚さ方向における他方側に当接しつつ貯留部71内のインク量に応じ回動することにより、その回動位置によって当該インク量に応じた表示を実行可能な検出板50と、厚さ方向一方側の端部80aと筐体2の左側壁部30との間に所定の間隙82を介在させつつ、検出板50の上方に延設され、前記間隙82に貯留部71の上部を挿通させて当該貯留部71の厚さ方向の他方側への変位を抑制する倒れ防止リブ80と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインクカートリッジ及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なインクカートリッジとして、内部にインクを収容する略袋状の貯留部(インク袋)と、収容されたインクを貯留部から取り出すための口栓と、貯留部を収容する直方体形状の筐体(プラスチック製ケース)とを備えたインクカートリッジが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のインクカートリッジにおいては、筐体に、口栓のゴム栓に突き刺されて貯留部内のインクを導出するニードルを通す開口が設けられている。この開口からは口栓が視認できるものの、貯留部内のインクの量を視認し確認することは難しい。
【0005】
そこで、例えば袋状の貯留部の厚さ方向の側面に対して、回動可能な回動部材を当接させ、当該回動部材の動きによって貯留部内のインクの量を表示させる手法が考えられる。すなわち、貯留部は、内部のインクが多いほど厚さ方向に膨らんだ形状となることから、上記のように貯留部に当接した回動部材が貯留部内のインク量に応じて回動する。この結果、この回動部材の回動位置によってインク量の変化を表示することができる。
【0006】
しかしながらこの場合、例えば上記貯留部内のインクが少なくなって液面が低下してきた場合に、内部が空となった貯留部の上部が、袋の弾性によって下方に倒れたり垂れ下がるおそれがある。その場合、そのままでは、当該倒れた上部が上記回動部材に接触する等により、回動部材の上記インク量に応じた回動位置によるインク量の表示が不正確となるおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、回動部材の回動位置によって貯留部内のインク量を表示する場合に、貯留部内のインクが多い場合も少ない場合もインク量の表示を正確に行うことができるインクカートリッジ、及び、これを用いた印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、長手方向、前記長手方向と直交する短手方向、及び、前記長手方向及び前記短手方向にそれぞれ直交する厚さ方向、を備えた筐体と、前記厚さ方向の一方側の端部が前記筐体に接するように当該筐体内に配置され、内部にインクを貯留する略袋状の貯留部と、を有し、前記長手方向及び前記厚さ方向を略水平方向とするとともに前記短手方向を略上下方向とした姿勢で用いられる、前記インクを供給するためのインクカートリッジであって、下端部が前記筐体に対し回動可能に支持され、前記貯留部の前記厚さ方向における他方側に当接しつつ前記貯留部内のインク量に応じ回動することにより、その回動位置によって当該インク量に応じた表示を実行可能な回動部材と、前記厚さ方向一方側の端部と前記筐体の前記厚さ方向一方側の側面との間に所定の間隙を介在させつつ、前記回動部材の上方に延設され、前記間隙に前記貯留部の上部を挿通させて当該貯留部の前記厚さ方向の他方側への変位を抑制する変位抑制部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本願第1発明のインクカートリッジは、筐体の長手方向及び厚さ方向を略水平方向としつつ、短手方向を略上下方向として用いられる。筐体内には袋状の貯留部が備えられ、その貯留部にインクが貯留される。貯留部は袋状であり、厚さ方向の一方側の端部が筐体に接するようにして配置されている。この貯留部の厚さ方向他方側に対し、下端部が回動可能に支持された回動部材が当接する。貯留部は、内部のインクが多いほど上記厚さ方向他方側に膨らんだ形状となることから、上記当接によって、回動部材は貯留部内のインク量に応じて回動する。この結果、この回動部材の回動位置によってインク量の変化が表示される。
【0010】
ここで、上記袋状の貯留部内のインクが少なくなって液面が低下してきた場合に、内部が空となった貯留部の上部が、袋の弾性によって上記厚さ方向他方側かつ下方に倒れたり垂れ下がる可能性がある。この場合、そのままでは、当該倒れた上部が回動部材に接触する等により、回動部材の上記インク量に応じた回動位置によるインク量の表示が不正確となるおそれがある。
【0011】
そこで本願第1発明においては、回動部材の上方に、変位抑制部を設ける。この変位抑制部の厚さ方向一方側の端部は、筐体の厚さ方向一方側の側面との間に所定の間隙を形成し、この間隙に対し上記貯留部の上部が挿通される。これにより、上記のようにして貯留部の上部が厚さ方向他方側かつ下方に倒れようとした場合であっても、当該貯留部の厚さ方向の他方側への変位を抑制することができる。このとき、変位抑制部と筐体との間で貯留部を挟み込んで固定するのではなく、間隙に対し貯留部を挿通させることにより、貯留部内に比較的多い量のインクが存在し液面が高い場合における、貯留部の上記厚さ方向他方側への膨らみ挙動を阻害せず、円滑な膨らみを確保することができる。
【0012】
以上の結果、貯留部内のインク量が多い場合も少ない場合も、回動部材は、インク量に応じた回動位置によってインク量の表示を正確に行うことができる。
【0013】
第2発明は、上記第1発明において、前記筐体は、その前記長手方向の一方側の側面に開口部を備えており、前記回動部材は、前記開口部に挿通して配置され、前記回動により前記貯留部内のインク量に応じて略水平方向に変位する表示部を、前記長手方向一方側の端部に備えることを特徴とする。
【0014】
本願第2発明では、インクの多少に応じて略水平方向に膨らんだり縮んだりする貯留部に対応して、回動部材の長手方向一方側端部に、上記貯留部の動きと同様に略水平方向に変位する表示部を設けている。これにより、操作者にとって感覚的にわかりやすいインク量の表示を行うことができる。また変位抑制部は、上記のようにして略水平方向に膨らんだり縮んだりする貯留部に沿うように略水平方向に延設されていることから、当該貯留部の挙動を阻害しないようにすることができる。
【0015】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記貯留部は、前記筐体のうち前記回動部材が配置されていない前記長手方向の範囲に設けた粘着部により、当該筐体に接触固定されていることを特徴とする。
【0016】
これにより、回動部材は、貯留部のうち粘着部で筐体に固定されていない部分、すなわち筐体によって制約されることなく自由に膨らんだり縮んだりできる領域において、貯留部に当接することとなる。この結果、回動部材の回動位置は、より正確に貯留部の膨らみ状態を反映することとなるので、回動部材がより正確にインク量の変化を表示することができる。
【0017】
第4発明は、上記第3発明において、前記回動部材は、前記筐体の内部において、前記粘着部の前記長手方向一方側の端部よりもさらに前記長手方向一方側に配置されており、前記変位抑制部は、前記粘着部の前記長手方向一方側の端部よりもさらに前記長手方向一方側に位置していることを特徴とする。
【0018】
筐体の制約がなく貯留部が自由に膨らんだり縮んだりできる領域において、回動部材が貯留部に当接し、より正確にインク量の変化を表示する。但しこの領域では、貯留部が筐体に固定されていないことから、インク量が少なくなったときの上記倒れや垂れ下がり等が特に起こりやすい。そこで本願第4発明では、当該領域に変位抑制部を設けることにより、上記倒れを防止することができる。
【0019】
第5発明は、上記第3又は第4発明において、前記変位抑制部は、その上下方向位置が、前記粘着部の上端部の上下方向位置よりも上方となるように、配置されていることを特徴とする。
【0020】
貯留部のうち、粘着部の上端部よりも上方は、筐体に固定されておらず制約がない。したがって、貯留部のうち、その高さ方向位置が粘着部の上端部の上方位置にある領域では、それ以外の領域に比べれば、比較的自由に変位しやすく、インク量が少なくなったときの上記倒れや垂れ下がり等が起こりやすい傾向となる。そこで本願第5発明では、当該領域の高さ方向位置に合わせて変位抑制部を設けることにより、上記倒れ防止効果をさらに向上することができる。
【0021】
第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記筐体は、前記長手方向、前記短手方向及び前記厚さ方向を備えた略直方体形状に形成されており、前記変位抑制部は、前記筐体の前記厚さ方向他方側の側面から前記厚さ方向一方側に向けて略水平方向に延設されることを特徴とする。
【0022】
本願第6発明においては、略水平方向に膨らんだり縮んだりする貯留部に沿うように、変位抑制部が略水平方向に延設されていることにより、貯留部の挙動を阻害しないようにすることができる。
【0023】
第7発明は、上記第6発明において、略水平方向に延設された前記変位抑制部の当該略水平方向における少なくとも1箇所において当該変位抑制部と交差するように略鉛直方向に延設され、前記変位抑制部と前記筐体の前記厚さ方向他方側の側面とを連結する強度補強部を有することを特徴とする。
【0024】
これにより、変位抑制部自体の剛性や変位抑制部の筐体への取り付け構造の剛性を向上することができる。
【0025】
第8発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記筐体は、前記長手方向、前記短手方向及び前記厚さ方向を備えた略直方体形状における少なくとも前記回動部材の配置領域の形状が、前記筐体の前記厚さ方向一方側の側面との間に前記所定の間隙を介在させた前記短手方向と同方向の側面を有するL字状の切り欠き状に形成されており、前記筐体の前記短手方向と同方向の前記側面を前記変位抑制部としたことを特徴とする。
【0026】
これにより、本願第8発明においては、変位抑制部自体の強度を確保することができる。
【0027】
上記目的を達成するために、第9の発明は、長手方向、前記長手方向と直交する短手方向、及び、前記長手方向及び前記短手方向にそれぞれ直交する厚さ方向、を備えた筐体を有し、前記長手方向及び前記厚さ方向を略水平方向とするとともに前記短手方向を略上下方向とした姿勢で用いられる、インクを供給するインクカートリッジと、前記インクカートリッジから供給されるインクを、被記録媒体に対して吐出する印刷ヘッドを備えたプリンタと、を有する印刷システムであって、前記インクカートリッジは、前記厚さ方向の一方側の端部が前記筐体に接するように当該筐体内に配置され、内部にインクを貯留する略袋状の貯留部と、下端部が前記筐体に対し回動可能に支持され、前記貯留部の前記厚さ方向における他方側に当接しつつ前記貯留部内のインク量に応じ回動する被検出部材と、前記厚さ方向一方側の端部と前記筐体の前記厚さ方向一方側の側面との間に所定の間隙を介在させつつ、前記被検出部材の上方に延設され、前記間隙に前記貯留部の上部を挿通させて当該貯留部の前記厚さ方向の他方側への変位を抑制する変位抑制部と、を有し、前記プリンタは、前記被検出部材の回動位置を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき、前記貯留部内のインク量を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に対応した態様で報知または印刷禁止の少なくとも一方に関する制御を行う制御手段と、を有することを特徴とする。
【0028】
本願第9発明の印刷システムに備えられるインクカートリッジは、筐体の長手方向及び厚さ方向を略水平方向としつつ、短手方向を略上下方向として用いられる。筐体内には袋状の貯留部が備えられ、その貯留部にインクが貯留される。貯留部は袋状であり、厚さ方向の一方側の端部が筐体に接するようにして配置されている。この貯留部の厚さ方向他方側に対し、下端部が回動可能に支持された回動部材が当接する。貯留部は、内部のインクが多いほど上記厚さ方向(言い換えれば略水平方向)他方側に膨らんだ形状となることから、上記当接によって、回動部材は貯留部内のインク量に応じて回動する。この回動部材の回動位置をプリンタの検出手段が検出することにより、プリンタの判定手段が貯留部内のインク量の変化を判定し、制御手段の制御によって当該インク量に対応した報知や印刷禁止等を実行することができる。
【0029】
ここで、上記袋状の貯留部内のインクが少なくなって液面が低下してきた場合に、内部が空となった貯留部の上部が、袋の弾性によって上記厚さ方向他方側かつ下方に倒れたり垂れ下がる可能性がある。この場合、そのままでは、当該倒れた上部が回動部材に接触する等により、貯留部内の上記インク量と上記回動部材の回動位置との体温関係が不正確となるおそれがある。
【0030】
そこで本願第9発明においては、回動部材の上方に、変位抑制部を設ける。この変位抑制部の厚さ方向一方側の端部は、筐体の厚さ方向一方側の側面との間に所定の間隙を形成し、この間隙に対し上記貯留部の上部が挿通される。これにより、上記のようにして貯留部の上部が厚さ方向他方側かつ下方に倒れようとした場合であっても、当該貯留部の厚さ方向の他方側への変位を抑制することができる。このとき、変位抑制部と筐体との間で貯留部を挟み込んで固定するのではなく、間隙に対し貯留部を挿通させることにより、貯留部内に比較的多い量のインクが存在し液面が高い場合における、貯留部の上記厚さ方向他方側への膨らみ挙動を阻害せず、円滑な膨らみを確保することができる。
【0031】
以上により、貯留部内のインク量が多い場合も少ない場合も、回動部材は、インク量に正確に対応した回動位置を実現することができる。この結果、プリンタ側において、インク量に応じた上記報知や印刷禁止等の制御を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、回動部材の回動位置によって貯留部内のインク量を表示する場合に、貯留部内のインクが多い場合も少ない場合もインク量の表示を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態のインクカートリッジが適用されるプリンタの概略構成を示す正面側からの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態のインクカートリッジの外観を示す後側からの斜視図である。
【図3】インクカートリッジの筺体の分解斜視図である。
【図4】インクカートリッジの背面図である。
【図5】インクカートリッジの正面図である。
【図6】インクカートリッジの後側からの斜視図である。
【図7】インクパック及び検出板を設置した筐体本体を示す側面図である。
【図8】インクカートリッジの水平断面図である。
【図9】プリンタの筺体におけるカートリッジ装着部の後部を示す要部縦断面図である。
【図10】インクカートリッジの筺体本体の後部側からの斜視図である。
【図11】筺体本体に取り付けられる検出板を示す斜視図である。
【図12】筺体本体に取り付けられる検出板を示す斜視図、上面図、及び側面図である。
【図13】検出板が取り付けられた筺体本体を示す後部側左上方からの斜視図である。
【図14】検出板が取り付けられた筺体本体を示す側面図である。
【図15】プリンタの筺体のカートリッジ装着部の後端側にインク量検出手段の光学センサが設置されていることを示す説明図である。
【図16】光学センサによるインク量検出法及び判定法を示す図である。
【図17】インクカートリッジの筺体における蓋の後側からの斜視図である。
【図18】図8中のXVIII−XVIII′断面における断面構造を、インクパックを除いた状態で表す横断面図である。
【図19】筺体に設置した倒れ防止リブの作用を示す説明図である。
【図20】筺体内における、検出板の設置に不適当な位置をそれぞれ示す説明図である。
【図21】検出板の軸部を支持手段の凹部に取り付ける際の軸部における取り付け法を説明する説明図、及び、軸部を内側に突出させる変形例における軸部の取り付け法を説明する説明図である。
【図22】L字状に切り欠いた切り欠き部の側面を変位抑制部とする変形例における、筺体を一部破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0035】
<プリンタの概要>
本実施形態で用いられるプリンタを図1により説明する。なお、以下の説明において、上下方向、前後方向、左右方向は、各図中に適宜示す矢印方向に対応している。図1に示すように、本実施形態に用いられるプリンタ100は、インクカートリッジ1から供給されるインクを用いて、印刷ヘッド114により例えばTシャツ等の布帛(被記録媒体)に印刷を行うインクジェットプリンタである。
【0036】
このプリンタ100は、箱状の筐体101内に、布帛(図示せず)をセットして水平方向に支持するプラテン104と、インクカートリッジ1から供給されるインクを、プラテン104に支持された布帛に対し吐出し、布帛に文字、画像等を印刷する上記印刷ヘッド114と、印刷ヘッド114を搭載して、印刷ヘッド114を、図1中の左側(走査方向一方側)及び図1中の右側(走査方向他方側)に往復移動させるキャリッジ113と、キャリッジ113を左右方向にガイドする1対のガイドバー112と、キャリッジ113をガイドバー112に沿って駆動する図示しないキャリッジ駆動モータを含むキャリッジ駆動機構と、プラテン104を支持して図1中の左手前側(上記左右方向と直交する直交方向一方側)と図1中の右奥側(上記直交方向他方側)の前後方向に往復移動させるプラテン支持台103と、プラテン支持台103を前後方向にガイドする1対のガイドバー102と、プラテン支持台103をガイドバー102に沿って駆動する図示しないプラテン駆動モータを含むプラテン駆動機構等とを備えている。
【0037】
筐体101の正面側右寄りの下部位置には、前後方向に延びる8つのカートリッジ装着部108が設けられており、各カートリッジ装着部108のカートリッジ挿入口120が筐体101の正面に開口している(図1では、図示の煩雑を避けるために1つのカートリッジ装着部108及び1つのカートリッジ挿入口120のみを示す)。カートリッジ装着部108の長さは、インクカートリッジ1の長さの例えば3分の1程度である。インクカートリッジ1は、カートリッジ装着部108に装着されることで、プリンタ100内でインク供給が可能な状態にセットされ、インクカートリッジ1からプリンタ100内のチューブを介して印刷ヘッド114にインクが供給される。8個のインクカートリッジ1は、例えば白インクのインクカートリッジが4個、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色インクのインクカートリッジ1が各1個である。
【0038】
<インクカートリッジ>
図2〜図6を用いてインクカートリッジ1の全体構成について説明する。図2〜図4に示すように、本実施形態において、インクカートリッジ1は、筐体2と、この筐体2内に収容されたインクパック7(後述の図7参照)と、筺体2内に設置された上記インクパック7のインク量を検出する検出板50(回動部材、移動部材、被検出部材)とを備えている。筐体2は、長手方向(前後方向)と、その長手方向と直交する短手方向(上下方向)と、これら長手方向及び短手方向と直交する厚さ方向(左右方向、幅方向)とを備え、幅が狭く、前後方向に長い立型薄幅の細長い略直方体形状に設けられている。インクカートリッジ1は、この例では、筐体2の長手方向及び厚さ方向を略水平方向としつつ、短手方向を略上下方向として用いられる(図1参照)。ここでいう略直方体では、全体的にみた大まかな外観形状が直方体に近いことであり、局所的に上記長手方向、上記短手方向、上記厚さ方向に対し傾斜した面があったり、段付き形状等の異形部分があってもよい。この実施形態では、筐体3は、後述のように、左側壁部30と接続する傾斜方向の下後壁部332を含んだ、略直方体形状となっている。
【0039】
上記筺体2は、図3に示すように、右側(厚さ方向他方側)の側面の全面が開口した薄幅の細長い略直方体状の筐体本体3と、その開口部を塞ぐ細長い板状の蓋4とを備えている。筺体2は、筐体本体3と蓋4とに係合フックと係合孔とを設け、若しくは係合ピンと係合孔とを設けて、これらを互いに挿入して筐体本体3と蓋4とを接合したり、筐体本体3と蓋部4とを溶着により接合することで組み立てられる。
【0040】
筐体本体3は、左側壁部30と、底壁部31と、上壁部32と、後部壁33と、前壁部34と、を備えている。後部壁33は、図2に示すように、上壁部32及び左側壁部30と接続する上下方向の上後壁部331と、筐体本体3の底壁部31及び左側壁部30と接続する傾斜方向の下後壁部332とからなっている。底壁部31は上壁部32よりもやや短く、底壁部31の後端は筐体本体3の前方側へ後退して位置しており、下後壁部332は上後壁部331から底壁部31に向けて内側に傾斜している。上後壁部331と下後壁部332には、それぞれ、インクパック7のインク量検出用開口部336(開口部)と口栓用開口部335とが設けられている。図4に示すように、インク量検出用開口部336には、上記検出板50の上端に設けられた表示部58が臨んでいる。口栓用開口部335には、インクパック7の後端に設けられた口栓72が臨んでいる。
【0041】
図3に示すように、左側壁部30には、その内面を外面側に向けて凹ませることによって、第1後突起部301、第2後突起部302、第1中間突起部303、第2中間突起部304、前突起部305の5つの突出部が設けられている。
【0042】
第1後突起部301は、左側壁部30と平行な凸状平面部316を有する、下後壁部332と連設した突出部として形成されている。上記下後壁部332の口栓用開口部335は、U字の突出方向先端部が第1後突起部301の下後壁部332との連設部に掛かるように、下後壁部332に横方向のU字状に形成されている。なお、口栓用開口335の左壁30側の端部の近傍は、連結壁部337となっている。また、第1後突起部301は、矩形状の係合孔307を備えている。
【0043】
第2後突起部302は、左側壁部30と平行な凸状平面部317を有し、上後壁部331と連設した突出部として形成されている。上記上後壁部331のインク量検出用開口部336は、上後壁部331から第2突起部302に掛かるように横方向の矩形状に形成されている。第1中間突起部303、第2中間突起部304は、左側壁部30の後部寄りの位置に上下方向に離間して設けられ、前突起部305は、左側壁部30の前部に近接した位置に設けられている。これら第1及び第2中間突起部303,304及び前突起部305は、それぞれ、左側壁部30と平行な凸状平面部342,347,352を有し、それらの後部側には、後部方向への緩い傾斜部341,346,351が形成されている。
【0044】
これら突起部301,302,303,304,305の凸状平面部316,317,342,347,352は同一高さを有している。これにより、作業者は筐体本体3内へのインクパック7の収容や蓋4の取り付けなどの作業を行う際に、図3に示すように、作業台等の水平な平面上に筐体本体3を寝かせた状態に載置し、突起部301〜305により筐体本体3を平面上に安定に支持して、効率的に作業を行うことができる。
【0045】
なお、第1及び第2の中間壁部303,304は、第2中間壁部304が短く(第1中間壁部303は長い)、第2中間壁部304が、上下の後部壁331と332との境界位置と第2後突起部302の下端位置とで挟まれる幅の筺体2の前後方向の帯状領域と交差していなければ、筺体2内に収容されたインクパック7のインク色は白であり、第2中間壁部304が長く(第1中間壁部303は短い)、第2中間壁部304が、上記帯状領域と交差していれば、筺体2内に収容されたインクパック7のインク色はイエロー、マゼンタ、シアンであると、ユーザに色判別をさせる標識機能を有している。
【0046】
蓋4の上部前方角部には、図3に示すように、筐体2の把持部40が設けられている。把持部40は、蓋4の上部前方角部を外面側から内面側に向けて凹ませた挟角90°の扇形の面部411及びその周壁412を有する扇状の凹部41と、凹部41の扇の要の位置近傍に凹み方向とは逆方向に突出させた凹部41の深さより短い長さの突起42とからなっている。筐体本体3の上部前方角部は、図3及び図5に示すように、凹部41の底面の扇形の両側2辺を受けるように、上壁部32及び前壁部34を切り欠いて凹部41を受容している。このような把手部40が筐体2に設けてあれば、プリンタ100のカートリッジ装着部108に複数のカートリッジ1が僅かな隙間を空けて装着してあっても、筐体2の両側をつまむ指の一方を把手部40に掛けることによって、カートリッジ1をしっかりと掴んで容易に抜き出すことができる。
【0047】
また、蓋4の後部寄りの位置には、蓋4を貫通した前後方向に長い目視穴45が設けられており、図6に示すように、筺体2内のインクパック7と検出板50の一部が目視穴45を通して目視可能となっている。
【0048】
<インクパック>
次に、図7〜図9を用いてインクパック7及びその周囲部の構造について説明する。図7に示すように、インクパック7は、インクを貯留する細長い袋状の貯留部71と、この貯留部71の後端部に取り付けられた上記口栓72とを備えている。貯留部71は、蓋4の把持部40に対応させて前方角部を扇形に切り欠いた2枚の細長い矩形状の透明樹脂製の可撓性シートを重ね合わせて、その4辺の周囲部716(図9参照)を熱溶着して形成されている。インクパック7は、貯留部71の左側(厚さ方向一方側)を筺体本体3の左側壁部30に接するようにして筺体2内に配置されている。
【0049】
口栓72は、後部側が比較的大きい矩形のブロック状に形成された樹脂製の円筒状本体部721と、この本体部721の前部に一体に設けられ、上下方向に長い細幅の角筒状の連結部722とを備えている。
【0050】
本体部721は、図8に示すように、内側に中空部700を有し、この中空部700は連結部722を貫通する細孔に連通している。本体部721の後部には中空部700の後端部を塞ぐゴム栓723が嵌め込まれている。口栓72の連結部722は、貯留部71の後端部において貯留部71を構成する2枚のシートの間に差し挟んでシートごと熱溶着され、これにより、口栓72は、その軸方向X(図7参照)を貯留部71の長手方向(前後方向)に一致させた姿勢で、貯留部71の後端部に液密に固定されている。本体部721の矩形ブロック状の部分の外周面には、口栓72を筺体2(具体的には筐体本体3の側壁部30)に対し位置決めする角柱状の係合突起725が設けられている。
【0051】
なお、蓋4には、貯留部71の上部の倒れを防止する倒れ防止リブ80が検出板50の上方に延びるように設けられ、さらに倒れ防止リブ80を補強する補強リブ81が設けられている。倒れ防止リブ80及び補強リブ81については後述する。
【0052】
一方、図9に示すように、プリンタ100の筐体101のカートリッジ装着部108には、インクカートリッジ1が載置される水平な載置台130と、カートリッジ装着部108の後部において上記載置台130から上方に略垂直に立ち上がる当接板109とが設けられている。また、カートリッジ装着部108の後端部には、当接板109の前方に口栓72と同心となるようにカートリッジ装着部108内に固定設置された接続部180が設けられている。接続部180は、後端にインクチューブ182が接続された筒状の固定部181と、固定部181の前部中央から前方に突出した先端側に孔を有する中空状の導出針183とを備えている。
【0053】
インクカートリッジ1は、後部を先頭にしてカートリッジ装着部108に差し込まれ、筐体2の後部が当接板109に当接した状態で、カートリッジ装着部108にセットされるようになっている。接続部180は、カートリッジ1が差し込まれるのに伴い、固定部181の一部が口栓用開口部335から筐体2内に進入し、固定部181の前部の導出針183が口栓72の本体部721のゴム栓723の先端部724からさらにゴム栓723の中心部を貫通して、導出針183の先端部が本体部721の中空部700内に位置した状態となる。これにより、インクパック7の貯留部71とプリンタ100側のインクチューブ182とが口栓72及び接続部108を介して接続し、貯留部71内のインクが口栓72の中空部700、接続部108の導出針183及び固定部181を通ってインクチューブ182に吐出され、インクチューブ182から印刷ヘッド114に供給される。
【0054】
<検出板>
次に、本実施形態の特徴の1つである、検出板50の詳細構造及びその取り付け状態を、図10〜図14により説明する。図10に示すように、筐体本体3の左側壁部30には、その内面の上下方向中央部に、筺体2内に収容されるインクパック7の貯留部71の左側を接触固定するための粘着部65(例えば両面テープ)が、長手方向に帯状に設けられている。粘着部65の配置領域は、前突起部305と第1及び第2中間突起部303,304との間の左側壁部30の内面領域に設定され、筐体2内に設置される検出板50の配置領域の範囲外(詳細には検出板50の配置領域よりも前側)に位置している。筐体本体3の粘着部65の設置領域よりも後方側の底壁部31の内面位置には、筐体2の左側に寄せて、検出板50を回動可能に支持する支持機構60(支持手段)が設けられている。支持機構60は、筺体2の長手方向(前後方向)に間隔を空けて設けられた前後2つの装着板部61,61を備え、各装着板部61には、検出板50に設けられた軸部54a,54b(凸部)がそれぞれ係合する凹部62,62が設けられている。言い換えれば、凹部62,62は、上記口栓72の軸方向に所定の間隔を開けて配置されている。この例では、凹部62は貫通孔としたが、検出板50の軸部54a,54bの突出方向と対向する方向に開口した盲孔であってもよく、盲孔は少なくとも軸部54a,54bより長い深さとする。
【0055】
検出板50は、図11及び図12(a)〜図12(c)に示すように、弾性を有する材料、この例では樹脂で形成された略逆L字状のフレームから構成されている。検出板50は、左側の面51aがインクパック7の右側と当接する逆L字状に屈曲した当接板部51と、当接板部51の前側、詳細には屈曲方向一方側(下側)の端部(下端部)に設けられ、筐体2の長手方向(前後方向)に所定間隔を空けて配置された前後2つの腕部52,52と、腕部52のそれぞれに備えられた支持板部53に対し腕部52の伸長方向(左右方向)と交差する方向(前後方向)に外側に突出するように設けられ、間隔を空けて直線状に配置された上記軸部54a,54bと、当接板部51の後側、すなわち屈曲方向他方側(上側)の端部(上端部)に設けられた平板状の表示部58と、2つの支持板部53同士を接続し支持板部53を堅固に支持するための接続板部55と、を備えている。当接板部51の屈曲方向一方側(下側)の端部を除く周囲には、当接板部51の左側に突出するとともに、当接板部51の屈曲方向他方側(上側)に行くにつれて次第に細くなる縁フレーム56が設けられ、当接板部51は縁フレーム56によって補強されている。
【0056】
支持板部53は、腕部52により高い弾性を付与するために、腕部52に一方側(左側)の端部領域から他方側(右側)の領域へ向かって拡開する略三角形状(若しくは略台形状)に形成されている。腕部52は、支持板部53の他方側(右側)の領域で当接板部51と接続し、軸部54は、支持板部53の一方側(左側)の端部領域に設けられている。そして、腕部52の弾性変形時における強度確保のために、腕部52は当接板部51の他方側(右側)端部よりもさらに当該他方側(右側)に張り出すように設けられている。
【0057】
検出板50を筐体本体3に取り付けるには、図13及び図14に示すように、まず、検出板50を筐体本体3に対し、左側の面51aが筐体本体3の左側壁部30に向く態様で配置する。そして、2つの腕部52,52のうち少なくとも一方に対し軸部54の突出方向とは反対方向の内方向への外力を手で加えて(後述の図21(a)も参照)、支持機構60の装着板61の上記凹部62と軸部54とが係合しない範囲にまで当該一方の腕部52に設けられた軸部54の位置が変更するように弾性変形させる。この状態で、当該一方の腕部52から外力を除去することで、外力の除去で発生する弾性力により2つの腕部52が変形前の間隔に近づき、凹部61と軸部54とが係合する。これにより、検出板50は筺体2内に回転可能に設置され、軸部54が腕部52の回転中心を含む位置にセットされる。
【0058】
2つの腕部52,52の支持板53,53に設けられた軸部54a,54bの突出方向(前後方向)の長さは、この例では、上記図12に示すように、支持機構60の前後一方の例えば前側の装着板61の凹部62に係合する一方の上記軸部54aを、前後他方の後側の装着板61の凹部62に係合する他方の上記軸部54bよりも長く設定している。なお、軸部54の突出方向の長さは、上記とは逆に、前側の凹部62に入れる軸部54aを短く、後側の凹部62に入れる軸部54bを長く設定してもよい。
【0059】
また、検出板50の2つの軸部54a,54bのうちの長い方の軸部54aには、図14中の拡大図に示すように、検出板50の当接板部51と筐体本体3の底壁部31とに両端を係止するねじりバネ57が取り付けられ、当接板部51が筐体本体3の厚さ方向一方側、つまり左側壁部30の方向へ向けて付勢される。これにより、検出板50は、筐体本体3の左側壁部30の粘着部65に固定して筺体2内に収容されるインクパック7の貯留部71に当接板部51の一方側(左側)が接触し、インク量に応じた貯留部71の膨らみに対応して、軸部54の回りに筺体2の幅方向(厚さ方向)に回動する。
【0060】
上記表示部58は、検出板50を筺体2内に設置した状態で、筺体2の後部における筐体本体3の上後壁部331のインク量検出用開口部336に挿通される。この表示部58は、検出板50の屈曲方向の他方側、すなわち腕部52とは反対側の端部(上端)からインク量検出用開口部336に突出し、検出用開口部336内で筐体2の前後方向及び幅方向(厚さ方向)に展長する平板形状となっている。この結果、表示部58は、インクパック7の検出板50が回動するにしたがい検出用開口部336内で筺体2の幅方向に略水平方向に変位する(図4、図8等参照)。
【0061】
<表示部の検出>
このとき、上記表示部58の略水平方向の変位は、プリンタ100側において検出される。この変位の検出について、図15及び図16を用いて説明する。図15に示すように、プリンタ100の筺体101のカートリッジ装着部108の後端側に、検出板50の表示部58に対応した上下方向位置にインク量検出手段として光学式の第1及び第2センサ90a,90bが設けられ、筺体2の幅方向に並置されている。第1センサ90a及び第2センサ90bは、表示部58を挟んだ上下の位置に発光器91a、受光器91bを備えた光透過型センサである。白矢印で示すように、表示部58が筺体2の幅方向(左右方向)に位置変位し発光器91aから受光器91bに向けて発射した光を遮断すると、第1センサ90a及び第2センサ90bは、それぞれ受光器91bが光を受光したオン状態からオフ状態になる。第1センサ90a及び第2センサ90bにおけるこのオン状態又はオフ状態に対応した検出信号は、プリンタ100の図示しないCPUへ入力される。CPUは、第1センサ90a及び第2センサ90bからの当該検出信号に応じて、インクパック7の貯留部71内のインク量を4段階に判定することができる(判定手段としての機能)。
【0062】
すなわち、貯留部71内のインク量がかなり多い場合には貯留部71は幅方向(左右方向)に十分な厚さを持っており、検出板50の表示部58は左側に寄った位置となる。この場合、上方から視認した表示部58と第1センサ90aと第2センサ90bの関係を簡略化して示した図16において、図16(a)に示すように、第1センサ90a及び第2センサ90bのうち左側に位置する第1センサ90aのみがオフとなる。この結果、図16(e)に示すように、貯留部71のインク量は満杯であると判定される。
【0063】
上記の状態から、貯留部71内のインク量が少し減ると検出板50の表示部58が少し右側に寄る。この場合、図16(b)に示すように、第1センサ90a及び第2センサ90bの両方がオフとなる。この結果、図16(e)に示すように、貯留部71のインク量は(満杯ではないものの)まだ十分にある状態と判定される。
【0064】
その後、さらに貯留部71内のインク量が減ると検出板50の表示部58がさらに右側に寄る。この場合、図16(c)に示すように、第1センサ90aはオンとなり、第2センサ90bはオフとなる。この結果、図16(e)に示すように、貯留部71のインク量が空に近づいている状態と判定される。
【0065】
その後、さらに貯留部71内のインク量が減って空に近くなると検出板50の表示部58がさらに右側に寄る。この場合、図16(d)に示すように、第1センサ90aも第2センサ90bもオンとなる。この結果、図16(e)に示すように、貯留部71のインク量は空であると判定される。
【0066】
プリンタ100の上記CPUは、上記の判定結果に基づき、当該インク量に対応した報知や印刷禁止等を実行する(制御手段としての機能)。
【0067】
<倒れ防止リブ>
次に、本実施形態のもう1つの特徴である、上記倒れ防止リブ80について、図17〜図19により説明する。
【0068】
図17〜図19に示すように、蓋4の後部の上部内面には、インクパック7の貯留部71の倒れを防ぐ上記倒れ防止リブ80(変位抑制部)と、倒れ防止リブ80の補強をする上記補強リブ81(強度補強部)とが設けられている。倒れ防止リブ80は、蓋4の後部の上部内面に立設され、その左側の端部80aと筐体2の左側の側面、すなわち筺体本体3の左側壁部30との間に所定の間隙82を介在させつつ、検出板50の上方に略水平方向に延設されている。この倒れ防止リブ80は、前述の粘着部65の後側の端部よりもさらに後側に位置している(図3及び図10も参照)。また、倒れ防止リブ80上下方向位置は、左側壁部30の粘着部65の上端部の上下方向位置よりも上方となるように、配置されている(図18参照)。補強リブ81は、略水平方向に延設された倒れ防止リブ80の略水平方向における少なくとも1箇所(この例では4箇所)において倒れ防止リブ80と交差するように略鉛直方向に延設され、倒れ防止リブ80と筐体2の右側の側面、すなわち蓋4とを連結している。
【0069】
インクパック7の貯留部71は、左側壁部30の粘着部65に接触固定され、図19(a)に示すように、間隙82に対し貯留部71の上部71aが挿通される。貯留部71は、インクの使用により内部のインク量が少なくなって液面が低下してきた場合に、上記図19(a)に示すように、上部71aの内部が空となる。この場合、内部が空になった上部71aが、図19(b)の破線の状態から実線の状態のように、貯留部71の袋の弾性によって右側に向けて下方に倒れたり垂れ下がる可能性がある。この場合、そのままでは、倒れた上部71aが検出板50に接触する等により、検出板50のインク量に応じた回動位置によるインク量の表示が不正確となるおそれがある。
【0070】
本実施形態では、上記に対応するために、倒れ防止リブ80を設けると共に、その倒れ防止リブ80と筐体2の左側の側面(筺体本体3の左側壁部30)との間に形成した間隙82に対し、貯留部71の上部71aを挿通している。これにより、貯留部71の上部71aが右側へ向けて下方に倒れようとした場合であっても、図19(b)に示すように、倒れ防止リブ80が上部71aを受け止め、それ以上貯留部71が右側へ変位するのを抑制することができる。また、図19(c)に示すように、貯留部71の上方が膨らんで変形して、検出板50に接触するのを抑制することもできる。
【0071】
なお、このとき、筺体2内を側方から見た図20(a)に示すように、当接板部51が後部寄りの上部位置A(筺体本体3の後部寄りの上壁部32に近接した位置)において貯留部71に接触するように検出板50を設けた場合には、貯留部71のインク量を正しく検出できない。また、図20(a)におけるインクパック7の口栓72の近くの位置Bで貯留部71に当接板部51を接触させた場合も、同様にインク残量を正確に検出できない。これは、筺体2を下側から見た図20(b)に示すように、口栓72を筺体2に固定する上記本体部721や貯留部71のシートに熱溶着する連結部722の構造、さらには貯留部72との位置関係のために、貯留部71内のインク残量に拘わらず、貯留部72の右側面71bが一定の位置関係にあるからである。したがって、検出板50は、当接板部51が上記位置A,Bで貯留部71に当接するのを避けた形態に設けることが好ましい。
【0072】
以上説明したように、本実施形態のインクカートリッジ1においては、検出板50の上方に倒れ防止リブ80を設けるとともに、間隙82に貯留部71の上部71aを挿通する。これにより、前述のようにして貯留部71の上部71aが右側かつ下方に倒れようとした場合であっても、当該貯留部71の右側への変位を抑制することができる(図19(b)参照)。このとき、倒れ防止リブ80と筐体2との間で貯留部71を挟み込んで固定するのではなく、間隙82に対し貯留部71を挿通させることにより、貯留部71内に比較的多い量のインクが存在し液面が高い場合における、貯留部71の上記右側の膨らみ挙動を阻害せず(図19(a)参照)、円滑な膨らみを確保することができる。以上の結果、貯留部71内のインク量が多い場合も少ない場合も、検出板50は、インク量に応じた回動位置によってインク量の表示を正確に行うことができる。
【0073】
また、本実施形態では特に、筐体2は、後側の側面(筺体本体3の上後部壁331)にインク量検出用開口部336を備えている。また、インクの多少に応じて略水平方向に膨らんだり縮んだりする貯留部71に対応して、検出板50の後側の端部に、貯留部71の動きと同様に略水平方向に変位する表示部58を設け、検出用開口部336に挿通して配置している。これにより、操作者にとって感覚的にわかりやすいインク量の表示を行うことができる。また倒れ防止リブ80は、上記のようにして略水平方向に膨らんだり縮んだりする貯留部71に沿うように略水平方向に延設されていることから、当該貯留部71の挙動を阻害しないようにすることができる。
【0074】
また、本実施形態では特に、貯留部71は、筐体2のうち検出板50が配置されていない前後方向範囲に設けた粘着部65により、当該筐体に接触固定されている。これにより、検出板50は、貯留部71のうち粘着部65で筐体2に固定されていない部分、すなわち筐体2によって制約されることなく自由に膨らんだり縮んだりできる領域において、貯留部71に当接することとなる。この結果、検出板50の回動位置は、より正確に貯留部の膨らみ状態を反映することとなるので、検出板50がより正確にインク量の変化を表示することができる。
【0075】
また本実施形態では特に、倒れ防止リブ80は、粘着部65の後側の端部よりもさらに後側に位置している。これには以下の意義がある。すなわち、本実施形態では、粘着部65の後側の端部よりもさらに後側に位置し、筐体2の制約がなく貯留部71が自由に膨らんだり縮んだりできる領域において、検出板50が貯留部71に当接し、より正確にインク量の変化を表示する。但しこの領域では、貯留部71が筐体2に固定されていないことから、インク量が少なくなったときの上記倒れや垂れ下がり等が特に起こりやすい。そこで本実施形態では、当該領域に倒れ防止リブ80を設けることで、上記倒れを防止することができる。
【0076】
また、本実施形態では特に、倒れ防止リブ80の上下方向位置は、上記粘着部65の上端部の上下方向位置よりも上方となるように設定されている。これには以下のような意義がある。すなわち、貯留部71のうち、粘着部65の上端部よりも上方は、筐体2に固定されておらず制約がない。したがって、貯留部71のうち、その高さ方向位置が粘着部65の上端部の上方位置にある領域では、それ以外の領域に比べれば、比較的自由に変位しやすく、インク量が少なくなったときの上記倒れや垂れ下がり等が起こりやすい傾向となる。そこで、本実施形態では、当該領域の高さ方向位置に合わせて倒れ防止リブ80を設けることにより、上記の倒れ防止効果をさらに向上することができる。
【0077】
また、本実施形態では特に、強度補強リブ81を、倒れ防止リブ80の略水平方向における少なくとも1箇所において当該倒れ防止リブ80と交差するように略鉛直方向に延設し、倒れ防止リブ80と筐体2の右側の側面とを連結している。これにより、倒れ防止リブ80自体の剛性や倒れ防止リブ80の筐体2への取り付け構造の剛性を向上することができる。
【0078】
なお、上記実施形態では、検出板50の腕部52の軸部54a,54bは、図21(a)に模式的に示すように、腕部52の伸長方向に交差する方向に外側に突出させていたが、これに,限られない。すなわち、図21(b)に示すように、軸部54a,54bを腕部52の伸長方向に交差する方向に内側に突出させてもよい。この場合は、少なくとも一方の腕部52に軸部54a,54bの突出方向とは反対方向の外方向への外力を加えて、支持機構60の装着板部61の凹部62に係合させればよい。
【0079】
また、上記実施形態では、筺体2内にインクパック7の変位抑制部としての倒れ防止リブ80を設けたが、これに限られない。すなわち、図22に示すように、筺体2Aを、長手方向、短手方向、及び厚さ方向を備えた略直方体形状の少なくとも後部側の上部をL字状に切り欠いた形状としてもよい。この場合、筺体2Aの少なくとも検出板50が配置される配置領域に、筐体2Aの左側の側面2aとの間に前記所定の間隙82を介在させた上記短手方向と同方向の側面20をインクパック7の変位抑制部とすることができる。
【0080】
なお、上記実施形態では、倒れ防止リブ80は、上記のようにして略水平方向に延設されているが、上方に傾斜していたり、下方に傾斜などして設けられていてもよい。
【0081】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0082】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 インクカートリッジ
2,2A 筺体
3 筺体本体
4 蓋
7 インクパック
20 側面(変位抑制部)
50 検出板(回動部材、移動部材、被検出部材)
51 当接板部
52 腕部
53 支持板部
54a,54b 軸部(凸部)
55 接続板部
57 ねじりバネ
58 表示部
60 支持機構(支持手段)
61 装着板部
62 凹部
65 粘着部
71 貯留部
72 口栓
80 倒れ防止リブ(変位抑制部)
81 補強用リブ(強度補強部)
90a 第1センサ(検出手段)
90b 第2センサ(検出手段)
100 プリンタ
335 口栓用開口部
336 インク量検出用開口部(開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向、前記長手方向と直交する短手方向、及び、前記長手方向及び前記短手方向にそれぞれ直交する厚さ方向、を備えた筐体と、
前記厚さ方向の一方側の端部が前記筐体に接するように当該筐体内に配置され、内部にインクを貯留する略袋状の貯留部と、
を有し、
前記長手方向及び前記厚さ方向を略水平方向とするとともに前記短手方向を略上下方向とした姿勢で用いられる、前記インクを供給するためのインクカートリッジであって、
下端部が前記筐体に対し回動可能に支持され、前記貯留部の前記厚さ方向における他方側に当接しつつ前記貯留部内のインク量に応じ回動することにより、その回動位置によって当該インク量に応じた表示を実行可能な回動部材と、
前記厚さ方向一方側の端部と前記筐体の前記厚さ方向一方側の側面との間に所定の間隙を介在させつつ、前記回動部材の上方に延設され、前記間隙に前記貯留部の上部を挿通させて当該貯留部の前記厚さ方向の他方側への変位を抑制する変位抑制部と、
を有することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
請求項1記載のインクカートリッジにおいて、
前記筐体は、
その前記長手方向の一方側の側面に開口部を備えており、
前記回動部材は、
前記開口部に挿通して配置され、前記回動により前記貯留部内のインク量に応じて略水平方向に変位する表示部を、前記長手方向一方側の端部に備える
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のインクカートリッジにおいて、
前記貯留部は、
前記筐体のうち前記回動部材が配置されていない前記長手方向の範囲に設けた粘着部により、当該筐体に接触固定されている
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
請求項3記載のインクカートリッジにおいて、
前記回動部材は、
前記筐体の内部において、前記粘着部の前記長手方向一方側の端部よりもさらに前記長手方向一方側に配置されており、
前記変位抑制部は、
前記粘着部の前記長手方向一方側の端部よりもさらに前記長手方向一方側に位置している
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載のインクカートリッジにおいて、
前記変位抑制部は、
その上下方向位置が、前記粘着部の上端部の上下方向位置よりも上方となるように、配置されている
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のインクカートリッジにおいて、
前記筐体は、前記長手方向、前記短手方向及び前記厚さ方向を備えた略直方体形状に形成されており、
前記変位抑制部は、前記筐体の前記厚さ方向他方側の側面から前記厚さ方向一方側に向けて略水平方向に延設される
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項6記載のインクカートリッジにおいて、
略水平方向に延設された前記変位抑制部の当該略水平方向における少なくとも1箇所において当該変位抑制部と交差するように略鉛直方向に延設され、前記変位抑制部と前記筐体の前記厚さ方向他方側の側面とを連結する強度補強部を有する
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のインクカートリッジにおいて、
前記筐体は、前記長手方向、前記短手方向及び前記厚さ方向を備えた略直方体形状における少なくとも前記回動部材の配置領域の形状が、前記筐体の前記厚さ方向一方側の側面との間に前記所定の間隙を介在させた前記短手方向と同方向の側面を有するL字状の切り欠き状に形成されており、
前記筐体の前記短手方向と同方向の前記側面を前記変位抑制部とした
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項9】
長手方向、前記長手方向と直交する短手方向、及び、前記長手方向及び前記短手方向にそれぞれ直交する厚さ方向、を備えた筐体を有し、前記長手方向及び前記厚さ方向を略水平方向とするとともに前記短手方向を略上下方向とした姿勢で用いられる、インクを供給するインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクを、被記録媒体に対して吐出する印刷ヘッドを備えたプリンタと、
を有する印刷システムであって
前記インクカートリッジは、
前記厚さ方向の一方側の端部が前記筐体に接するように当該筐体内に配置され、内部にインクを貯留する略袋状の貯留部と、
下端部が前記筐体に対し回動可能に支持され、前記貯留部の前記厚さ方向における他方側に当接しつつ前記貯留部内のインク量に応じ回動する被検出部材と、
前記厚さ方向一方側の端部と前記筐体の前記厚さ方向一方側の側面との間に所定の間隙を介在させつつ、前記被検出部材の上方に延設され、前記間隙に前記貯留部の上部を挿通させて当該貯留部の前記厚さ方向の他方側への変位を抑制する変位抑制部と、
を有し、
前記プリンタは、
前記被検出部材の回動位置を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき、前記貯留部内のインク量を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に対応した態様で報知または印刷禁止の少なくとも一方に関する制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−6348(P2013−6348A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140604(P2011−140604)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】