説明

インクカートリッジ及び記録装置

【課題】インク収容部から漏れたインクを確実に視認できるようにする。
【解決手段】インク収容部12を覆うケース15の外表面に、その面を底面としてケース15を置いた際に安定して置くことができる安定面21である側面10a、上面、及び下面と、底面としてケース15を置いた際に安定面21に比べて不安定な不安定面22である前面10b及び背面10cとを形成する。また、外壁16における不安定面22である前面10bが形成されている部分の内表面近傍に、インク収容部12からインクが漏れ出した場合に漏れ出したインクが溜まるインク溜め部23を設ける。さらに、外壁16の前面10b側部分に、外側からインク溜め部23を目視できる光透過部16bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジ及びこれを含む記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録装置の本体部に着脱可能に装着され、記録装置の記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジであって、インクを収容するインク収容部とインク収容部を覆うケースとからなるものが知られている。このようなインクカートリッジにおいて、インクを収容するインク収容部からインクが漏れ出した場合に、そのインクがさらにケースの外に漏れ出す虞がある。
【0003】
特許文献1には、インク収容部を覆うケースの一部に、ケースの内部を外側から目視できる光透過部が形成されているインクカートリッジが開示されている。これにより、インク収容部から漏れたインクをケースの外側から視認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−15644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなインクカートリッジでは、その置き方によって、インク収容部から漏れたインクが、光透過部からは視認できない箇所に溜まる虞がある。また、光透過部を底面としてケースが置かれている場合には、光透過部からケース内を目視することはできない。したがって、インク収容部から漏れたインクを視認できない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、インク収容部から漏れたインクを確実に視認できるインクカートリッジ及びそれを含む記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明にかかるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部を覆うケースとを備えたインクカートリッジであって、前記ケースは、第1の面を含む複数面体からなり、前記インク収容部に連通しており前記第1の面から突出するインク排出部が設けられていると共に、前記第1の面が形成された部分の内表面近傍に前記インク収容部からインクが漏れ出た場合に漏れたインクが溜まるインク溜め部が設けられており、且つ前記インク溜め部の近傍における前記第1の面が形成された壁に、外側から前記インク溜め部を目視できる光透過部が形成されている。
【0008】
また、別の観点から、第6の発明にかかるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部を覆うケースとを備えたインクカートリッジであって、前記ケースは、その外表面に、底面として前記ケースを置いた際に安定して置くことができる安定面、及び底面として前記ケースを置いた際に前記安定面に比べて不安定な不安定面が形成されていると共に、前記不安定面が形成された部分の内表面近傍に、前記インク収容部からインクが漏れ出た場合に漏れ出たインクが溜まるインク溜め部が設けられており、且つ前記インク溜め部の近傍の前記不安定面が形成された壁に、外側から前記インク溜め部を目視できる光透過部が形成されている。
【0009】
これらの構成によると、光透過部を底面にしてインクカートリッジが置かれるのを避けることができる。よって、インクカートリッジが置かれている際でも、確実にインク溜め部を目視できる。したがって、インク収容部から漏れたインクを確実に視認できる。
【0010】
第2及び第7の発明にかかるインクカートリッジは、第1、6の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記インク溜め部に配置されたインク吸収体をさらに備えている。この構成によると、インク溜め部に溜まったインクがインク吸収体に吸収される。したがって、持ち上げられ角度が変えられても、外側から目視できる位置にインクを溜めることができる。よって、インク収容部から漏れたインクを確実に視認できる。
【0011】
第3の発明にかかるインクカートリッジは、第1又は第2の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記ケースにおける前記第1の面に隣接する第2の面が形成された部分の内表面に、第1の部分と、前記第2の面を底面として前記ケースを置いた際に載置面からの高さが前記第1の部分に比べて低い第2の部分とが形成されており、前記インク溜め部は、前記第2の部分の近傍に位置している。
【0012】
また、第8の発明にかかるインクカートリッジは、第6又は第7の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記ケースの前記安定面が形成された部分の内表面に、第1の部分と、この安定面を底面として前記ケースを置いた際に載置面からの高さが前記第1の部分に比べて低い第2の部分とが形成されており、前記インク溜め部は、前記第2の部分の近傍に位置している。
【0013】
これらの構成によると、第1の部分に比べて漏れたインクが集まり易い第2の部分の近傍にインク溜め部が形成されているので、インク収容部から漏れたインクが少量であっても確実に視認できる。
【0014】
第4の発明にかかるインクカートリッジは、第3の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記第2の面が形成された部分の内表面に、前記第2の面を底面として前記ケースを置いた際に前記第1の部分から前記第2の部分に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、前記インク溜め部は、前記第2の面を底面として前記ケースを置いた際に、前記傾斜面の最下部に位置している。
【0015】
また、第9の発明にかかるインクカートリッジは、第8の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記安定面が形成された部分の内表面に、この安定面を底面として前記ケースを置いた際に前記第1の部分から前記第2の部分に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、前記インク溜め部は、前記安定面を底面として前記ケースを置いた際に、前記傾斜面の最下部に位置している。
【0016】
これらの構成によると、漏れたインクの多くをインク溜め部に集めることができるので、インク収容部から漏れたインクが少量であってもさらに確実に視認できる。
【0017】
第5の発明にかかるインクカートリッジは、第1〜4の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記ケースにおける前記第1の面と対向する第3の面は、外側に湾曲した湾曲面である。
【0018】
第10の発明にかかるインクカートリッジは、第6〜9の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記不安定面が少なくとも前記ケースの互いに対向する2面の対向外表面に形成されており、前記インク溜め部が2面の前記対向外表面に形成された2面の前記不安定面のうちの一方が形成された部分の近傍に形成されている。
【0019】
これらの構成によると、インク溜め部がケースの上部に位置するような置き方を防ぐことができる。したがって、インク溜め部に確実にインクを集めることができる。
【0020】
第11の発明にかかるインクカートリッジは、第6〜10の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記不安定面は、その面を底面として前記ケースを置いた際に床と接触する接触面を包含する支持基底面の面積が、前記安定面よりも少ない。
【0021】
なお、「接触面を包含する支持基底面」とは、例えば、接触面が環状である場合には、その接触面及び接触面で囲まれる領域からなる1つの面を意味し、複数箇所で床と接触している場合は、各接触箇所にそれぞれ外接しつつ各接触箇所同士を線分で結ぶことによって形成された1つの面を意味する。
【0022】
第12の発明にかかるインクカートリッジは、第6〜11の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記光透過部の近傍の壁に、前記インク収容部に連通するインク排出部が貫通している。この構成によると、インク収容部とインク排出部との連結部から漏れたインクを、インク溜め部に集めやすくすることができる。
【0023】
第13の発明にかかる記録装置は、第1〜12のいずれかの発明にかかるインクカートリッジと、前記インクカートリッジが装着され、前記インクカートリッジから供給されたインクにより画像の記録を行う本体部とを備えた記録装置であって、前記本体部が、前記インク溜め部のインクを検出するセンサと、前記センサによる検出結果に基づいて前記インク収容部からのインク漏れを報知する報知手段とを備えている。
【0024】
この構成によると、インク漏れしているインクカートリッジを誤って本体部に装着した場合や、本体部に装着している状態でインク漏れが発生した場合に、インク漏れを使用者に知らせることができる。
【0025】
また、別の観点では、第14の発明にかかるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部を覆うケースとを備えたインクカートリッジであって、前記インク収容部と前記ケースとの間に配置されたインク吸収体をさらに備えており、前記ケースの一部に、外側から前記インク吸収体を目視できる光透過部が形成されている。
【0026】
この構成によると、インク収容部から漏れてインク吸収体に吸収されたインクは、その後インクカートリッジの置き方が変更されたり、持ち上げられて角度が変更されたりしても、外側から目視できる位置に溜まる。したがって、インク収容部から漏れたインクを確実に視認できる
【0027】
第15の発明にかかるインクカートリッジは、第14の発明にかかるインクカートリッジにおいて、前記光透過部の近傍のケースに、前記インク収容部に連通するインク排出部が貫通している。この構成によると、インク収容部とインク排出部との連結部から漏れたインクを、インク吸収体に集めやすくすることができる。
【0028】
第16の発明にかかる記録装置は、第14又は15の発明にかかるインクカートリッジと、前記インクカートリッジが装着され、前記インクカートリッジから供給されたインクにより画像の記録を行う本体部とを備えた記録装置であって、前記インク吸収体のインクを検出するセンサと、前記センサによる検出結果に基づいて前記インク収容部からのインク漏れを報知する報知手段とを備えている。
【0029】
この構成によると、インク漏れしているインクカートリッジを誤って本体部に装着した場合や、本体部に装着している状態でインク漏れが発生した場合に、インク漏れを使用者に知らせることができる。
【0030】
第17の発明にかかる記録装置は、第16の発明にかかる記録装置において、前記インクカートリッジが、前記本体部への装着方向の下流側が上流側よりも下方となるように前記本体部に装着され、前記インク吸収体が、前記インクカートリッジの前記本体部への装着方向前側に位置している。この構成によると、インク収容部から漏れたインクを確実にインク吸収体に吸収させることができる。
【発明の効果】
【0031】
上述のように、インクカートリッジ及びこれを含む記録装置は、インク収容部から漏れたインクを確実に視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】図1に示すインクカートリッジの斜視図である。
【図3】図2に示すインクカートリッジのケースを部分的に切り取った状態を示す図である。
【図4】図3に示すインクカートリッジであり、(a)は下面側から見た図であり、(b)は側面側から見た図であり、(c)は後面側から見た図である。
【図5】図2に示すインクカートリッジのV−V線に沿う断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかるインクカートリッジを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
<第1の実施形態>
まず、図1〜図5を参照しつつ、本発明の第1の実施形態にかかるインクカートリッジを備えたインクジェットプリンタについて説明する。図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、インクカートリッジ10と、インクカートリッジ10から供給されたインクにより用紙Pに画像を形成する本体部30と、インクジェットプリンタ1全体の動作を制御する制御装置60とからなる。
【0035】
本体部30は、用紙Pに向けてインクを吐出する複数のノズル(図示せず)が配置されたインク吐出面2aを有するインクジェットヘッド2と、インクジェットヘッド2を一方向に往復移動させるキャリッジ3と、用紙Pをインクジェットヘッド2のインク吐出面2aと対向させつつ搬送する搬送機構4と、インクカートリッジ10が着脱可能に装着される装着部5と、インクジェットヘッド2と装着部5に装着されたインクカートリッジ10とを連通させるチューブ8と、インクジェットプリンタ1に関する情報を表示するディスプレイ9とを備えている。
【0036】
装着部5は、右方に向かって開口した凹部5aが形成されている。この凹部5a内の空間にインクカートリッジ10が収容される。また、凹部5aの開口部と対向する側壁には、貫通孔6が形成されている。貫通孔6には、チューブ8の先端に設けられた中空針(図示せず)が凹部5a内の空間に配置されるように、チューブ8が挿通されている。凹部5aの開口部分は、上端部近傍を支点として回動可能なカバー5bによって覆われている。
【0037】
さらに、凹部5aの開口部と対向する側壁の壁面には、装着部5に装着されたインクカートリッジ10の後述するインク収容部12からのインク漏れの有無を検出するセンサ7が設けられている。センサ7は、光線を出射する発光素子及び発光素子から出射された光線の反射光を受光する受光素子(いずれも図示せず)からなる。センサ7の発光素子は、インクカートリッジ10の後述する前面10bに向けて光線を出射する。
【0038】
なお、図1においては、1つのインクジェットヘッド2のみを描いているが、インクジェットプリンタ1には、4色のインク(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)に対応する4つのインクジェットヘッド2が設けられている。さらに、本体部30には、各インクジェットヘッド2にインクを供給するインクカートリッジ10がそれぞれ装着される4つの装着部5が設けられている。
【0039】
用紙Pに対する印刷が行われる際には、インクジェットプリンタ1の4つのインクジェットヘッド2がキャリッジ3により図1の紙面垂直方向に往復移動され、用紙Pが搬送機構4により図1の紙面左右方向に搬送される。各インクジェットヘッド2は用紙Pに対して所定間隔を隔てて対向配置されている。インクジェットヘッド2の往復移動と用紙Pの搬送移動とは、制御装置60により同期して行われ、インクジェットヘッド2が用紙Pを横切るごとにノズルからインクが吐出されて印刷が行われる。インクは、装着部5に装着されたインクカートリッジ10からチューブ8を介してインクジェットヘッド2に供給される。
【0040】
次に、インクカートリッジ10の構成について詳細に説明する。インクカートリッジ10は、図2に示すように、略六面体として構成されている。より詳細には、最大面積となる対向する一対の側面10aと、この一対の側面10aを連結する4つの面との6つの面で構成されている。側面10aは、互いに平行な一対の長辺と、これら一対の長辺と直交する一つの短辺と、短辺と対向しており且つ外側に湾曲した1つの曲辺との4つの辺で囲まれている。そして、図1に示すように、側面10aが垂直となると共にその長辺が略水平となるような姿勢で装着部5に装着される。
【0041】
インクカートリッジ10は、その六面体の一対の側面10aの短辺同士を連結する面と曲辺同士を連結する面との対向方向(図1中左右方向)が、装着部5への装着方向と略一致している。より詳細には、インクカートリッジ10は、図1中右方から左方に向かって装着される。以下の説明において、インクカートリッジ10の装着部5への装着方向下流側端部(図1中左方端部)の面を前面10b、装着方向上流側端部(図1中右方端部)の面を背面10cとする。さらに、一対の側面10aの長辺同士を連結する一対の平面、すなわち装着部5に装着された状態で上面及び下面となる面をそれぞれ上面10d、下面10eとする。また、一対の側面10aを連結する方向(図1中紙面に垂直な方向)を幅方向と称する。
【0042】
なお、インクカートリッジ10の背面10cには、インクカートリッジ10に関する情報、すなわち、例えば収容されているインクの色や使用期限など、やインクカートリッジ10の取り外し方法などの、使用者への説明が記載されている。したがって、使用者は、装着部5のカバー5bを開けると、装着されたインクカートリッジ10の背面10cに記載された説明を読むことができる。
【0043】
図5に示すように、インクカートリッジ10は、インクを収容するインクパック11と、インクパック11を覆うケース15とを有している。インクパック11は、脱気された状態でインクを収容するインク収容部12と、インク収容部12に連通するインク排出部13とからなる。
【0044】
インク排出部13は、ケース15に形成された後述する貫通孔16a及び貫通孔18aに挿通されており、その先端が前面10bにおいてケース15の外に露出している。そして、インクカートリッジ10が装着部5に装着されると、チューブ8の先端に設けられており凹部5a内の空間に配置された中空針(図示せず)がインク排出部13に接続される。インク排出部13は、インクカートリッジ10が装着部5に装着されていない状態、すなわち中空針がインク排出部13に接続されていない状態では、インク収容部12を閉鎖状態とし、装着部5に装着されて中空針が接続されるとインク収容部12がチューブ8を介してインクジェットヘッド2と連通する状態とする。したがって、インク排出部13は、インクカートリッジ10がインクジェットプリンタ1に装着されている際に、インク収容部12内のインクを排出し、インクジェットヘッド2に供給することができる。
【0045】
なお、図1に示すように、インクカートリッジ10は、インク排出部13が設けられた前面10b側が、前面10bと対向する背面10c側に比べて下方となるように傾斜した姿勢で装着部5に装着される。これにより、インクパック11内のインクはインク排出部13側に集まるので、インクパック11内にインクが残留するのを防ぎ、インクを使い切ることができる。
【0046】
ケース15は、その外表面が前面10b、背面10c、上面10d、及び下面10eとなる外壁16と、その外表面が側面10aとなる側壁17とを有している。外壁16には、前面10bの中央から突出する筒状の突出部18が形成されている。突出部18の先端面には上述のインク排出部13が挿通される貫通孔18aが形成されている。すなわち、突出部18の先端からインクパック11のインク排出部13の先端が露出している。また、外壁16におけるインクカートリッジ10の幅方向に沿う長さは均一になっている。側壁17は、図2に示すように、外壁16の内面に繋がるように形成されている。
【0047】
ここで、側面10a、前面10b、背面10c、上面10d、又は下面10eを底面をとしてケース15を置いた際の支持基底面について考える。支持基底面とは、物体を置いた際に床と接触する接触面を包含する面である。すなわち、例えば、接触面が環状である場合には、その接触面及び接触面で囲まれる領域からなる1つの面が支持基底面となる。また、例えば、3点で床と接触している場合は、その3点を繋ぐ三角形の面が支持基底面となる。床に置かれた物体は、その重心が支持基底面の鉛直上方から外れた場合に転倒する。したがって、支持基底面の面積が広いほど、物体を安定して床に置くことができる。
【0048】
まず、側面10aを底面としてケース15を置いた際には、外壁16の縁が全周に亘って床と接触する。このとき、支持基底面は、外壁16の縁で囲まれた1つの面、すなわち、床における側面10aと対向する領域となる。また、上面10d又は下面10eを底面としてケース15を置いた際には、上面10d又は下面10eの全体が床と接触する。よって、このとき、支持基底面は、上面10d又は下面10e全体となる。
【0049】
前面10bを底面としてケース15を置いた際には、突出部18から露出するインク排出部13の先端が、床と接触する。このとき、支持基底面は、インク排出部13の先端のみである。また、背面10cは湾曲した面であるので、背面10cを底面としてケース15を置いた際には、背面10cと床とは線接触となる。よって、このとき、支持基底面は、背面10cにおける床と接する線状部分となる。すなわち、前面10b又は背面10cを底面として置いた場合には、他の面を底面とする場合に比べて、支持基底面の面積が著しく少なくなる。
【0050】
よって、本実施形態においては、上面10d、下面10e、及び側面10aは、底面としてケース15を置いた際に安定して置くことができる安定面21となる。中でも、側面10aを底面とする場合には、支持基底面の面積が最大となる。すなわち、側面10aは最も安定な面である。また、前面10b及び背面10cは、底面としてケース15を置いた際に安定面21に比べて不安定な不安定面22となる。
【0051】
また、図4(b)に示すように、外壁16によって囲まれた領域の内側には、略挿入方向に沿っており、挿入方向上流側(図中右側)が挿入方向下流側(図中左側)よりも内側となるように外壁16の上面10d側部分及び下面10e側部分に対してそれぞれ傾斜した2つの内壁19が形成されている。外壁16の前面10b側部分及び背面10c側部分と、両側壁17と、2つの内壁19とによって囲まれた空間は、インクパック11のインク収容部12が格納される格納空間20となっている。図5に示すように、外壁16の前面10b側部分には、格納空間20と突出部18の内部空間とを連通する貫通孔16aが形成されている。上述のように、貫通孔16aには、インクパック11のインク排出部13が挿通される。
【0052】
さらに、図5に示すように、側壁17は、側面10aが底面となるようにインクカートリッジ10を置いた際に、挿入方向上流側(図中右方)が挿入方向下流側(図中左方)よりも内側となるように水平面に対して傾斜している。
【0053】
したがって、安定面21である上面10d、下面10e、又は側面10aが底面となるようにインクカートリッジ10を置いた際には、インク収容部12から漏れ出したインクは、格納空間20内で傾斜した内壁19又は側壁17の内表面を伝って、その最下部に位置する前面10b側に集まる。よって、格納空間20の前面10b側の端部近傍は、インクが溜まるインク溜め部23となる。ここで、外壁16における前面10b側部分は、光透過部16bとなっている。光透過部16bは、例えば、透明なアクリル、ガラス板、半透明なシボ付きフィルム等で形成されている。よって、光透過部16bを介して前面10bからケース15内のインク溜め部23を目視できる。
【0054】
さらに、インク溜め部23である格納空間20の前面10b側に端部近傍は、挿入方向と直交する方向に広がった拡張部となっており、この拡張部にインクを吸収するインク吸収体14が差し込まれている。したがって、装着部5に設けられたセンサ7の発光素子からインクカートリッジ10の前面10bに向けて出射された光線は、光透過部16bを透過してインク吸収体14に当たる。そして、インク吸収体14で反射された反射光をセンサ7の受光素子が受光する。よって、インク収容部12からインクが漏れ、インク吸収体14がインクを吸収することで、インク吸収体14での光線の反射率が変化すると、受光素子での受光量が変動する。これにより、センサ7は、インク吸収体14に吸収されたインクを検出し、インク収容部12からのインク漏れを検出できる。
【0055】
制御装置60は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)とを備えており、これらを一体として各機能部として機能させることによりインクジェットプリンタ1の制御を行うものである。
【0056】
制御装置60は、インクジェットヘッド2、キャリッジ3、及び搬送機構4を駆動するための図示しないモータ等の駆動を制御する。また、制御装置60は、センサ7によるインク漏れの検出結果に基づいて、ディスプレイ9の表示を制御する。具体的には、センサ7によって、インク収容部12のインク漏れが検出されると、ディスプレイ9にその旨を表示する。
【0057】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1に備えられるインクカートリッジ10では、インクパック11を覆うケース15の外表面に、その面を底面としてケース15を置いた際に安定して置くことができる安定面21である側面10a、上面10d、及び下面10eと、底面としてケース15を置いた際に安定面に比べて不安定な不安定面22である前面10b及び背面10cが形成されている。また、外壁16における不安定面22である前面10bが形成されている部分の内表面近傍に、インク収容部12からインクが漏れ出した場合に漏れ出したインクが溜まるインク溜め部23が設けられている。さらに、外壁16の前面10b側部分は、外側からインク溜め部23を目視できる光透過部16bとなっている。したがって、光透過部16bを底面にしてインクカートリッジ10が置かれるのを避けることができる。よって、インクカートリッジ10が置かれている際でも、確実にインク溜め部23を目視できる。その結果、インク収容部12から漏れたインクを確実に視認できる。
【0058】
また、本実施形態のインクカートリッジ10では、インク溜め部23にインク吸収体14が配置されている。したがって、インク溜め部23に溜まったインクがインク吸収体14に吸収される。よって、インクカートリッジ10が持ち上げられて角度が変えられても、外側から目視できる位置にインクを溜めることができる。その結果、インク収容部12から漏れたインクを確実に視認できる。
【0059】
さらに、本実施形態のインクカートリッジ10では、ケース15における安定面21である側面10a、上面10d、及び下面10eが形成された部分の内表面、すなわち側壁17及び内壁19の内表面が、これらの安定面21を底面としてケース15を置いた際に水平面に対して傾斜する傾斜面である。そして、インク溜め部23は、安定面21を底面としてケース15を置いた際に、上述の傾斜面の最下部に位置する。したがって、漏れたインクの多くをインク溜め部23に集めることができ、インク収容部12から漏れたインクが少量であっても確実に視認できる。
【0060】
加えて、本実施形態のインクカートリッジ10では、不安定面22である前面10b及び背面10cが、ケース15の互いに対向する2面の対向外表面に形成されている。そして、外壁16の前面10b側部分近傍にインク溜め部23が形成されている。したがって、インク溜め部23がケース15の上部に位置するような置き方を防ぐことができる。よって、インク溜め部23に確実にインクを集めることができる。
【0061】
また、本実施形態のインクカートリッジ10では、インクパック11のインク排出部13が、ケース15における外壁16の光透過部16bが形成された部分を貫通している。したがって、インク収容部12とインク排出部13との連結部から漏れたインクを、インク溜め部に集めやすくすることができる。
【0062】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、インク溜め部23に配置されたインク吸収体14のインクを検出するセンサ7を備えている。そして、制御装置60が、センサ7による検出結果に基づいて、インク収容部12からインクが漏れた旨をディスプレイ9に表示する。したがって、インク漏れしているインクカートリッジ10を誤って本体部30に装着した場合や、本体部30に装着している状態でインク漏れが発生した場合に、インク漏れを知らせることができる。
【0063】
さらに、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、インクカートリッジ10は、インク吸収体14が配置された前面10b側が、背面10c側に比べて下方となるように傾斜した姿勢で装着部5に装着される。したがって、インク収容部12から漏れたインクを確実にインク吸収体に吸収させることができる。
【0064】
次に、図6を参照しつつ、本発明の第2の実施形態にかかるインクカートリッジについて説明する。本実施形態のインクカートリッジ110は、第1の実施形態のインクカートリッジ10と同様に、インク収容部112及びインク排出部113からなるインクパック111と、インクパック111を覆うケース115とを備えている。そして、インク排出部113の先端は、ケース115の前面110bに形成された突出部118の先端から露出している。
【0065】
図6(a)に示すように、インクカートリッジ110は、いずれも矩形形状の6つの平面からなる略六面体である。そして、図6(b)に示すように、ケース115の一方の側面110a(図中上方の面)が形成されている部分と、インク収容部112との間にインク吸収体114が配置されている。また、ケース115のインク吸収体114と対向する部分に外側からインク吸収体114を目視できる光透過部116bが形成されている。
【0066】
したがって、本実施形態のインクカートリッジ110では、インク収容部112から漏れてインク吸収体114に吸収されたインクは、その後インクカートリッジ110の置き方が変更されたり、持ち上げられて角度が変更されたりしても、外側から目視できる位置に溜まる。したがって、第1の実施形態と同様に、インク収容部112から漏れたインクを確実に視認できる
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0068】
例えば、上述の第1の実施形態では、ケース15における不安定面22である前面10bが形成されている部分の内表面近傍に、インク収容部12からインクが漏れ出した場合に漏れ出したインクが溜まるインク溜め部23が設けられており、またケース15の前面10bが形成された部分が、外側からインク溜め部23に配置されたインク吸収体14を目視できる光透過部16bとなっている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、ケース15に外側からインク吸収体14を目視できる光透過部16bが形成されている場合には、インク溜め部23はなくてもよい。また、インク溜め部23が形成されている場合には、インク吸収体14はなくてもよい。
【0069】
また、上述の第1の実施形態では、ケース15における安定面21である側面10a、上面10d、及び下面10eが形成された部分の内表面が、これらの安定面21を底面としてケース15を置いた際に、インク溜め部に向かって傾斜する傾斜面である場合について説明したが、これには限定されない。これら内表面は、ケース15の載置面からの高さが低い部分にインク溜め部が位置するようになっていればよく、例えば、インク溜め部に向かって次第に低くなる階段状に形成されていてもよい。
【0070】
さらに、上述の第1の実施形態では、不安定面22である前面10b及び背面10cが、ケース15の互いに対向する2面の対向外表面に形成されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、例えば、曲面である背面10cを平面とし、安定面21としてもよい。
【0071】
加えて、上述の第1の実施形態では、インクパック11のインク排出部13が、ケース15における外壁16の光透過部16bが形成された部分を貫通している場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、インク排出部13は、ケース15の光透過部16b以外の部分を貫通していてもよい。
【0072】
また、上述の第1の実施形態では、インク収容部12からインクが漏れた旨を表示するディスプレイ9を備えている場合について説明したが、これには限定されない。音声やランプ等でインク漏れを報知するようにしてもよいし、インク漏れを報知する手段を備えていなくてもよい。
【0073】
また、上述の第1の実施形態では、インクカートリッジ10が、インク吸収体14が配置された前面10b側が、背面10c側に比べて下方となるように傾斜した姿勢で装着部5に装着される場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、例えば、インクカートリッジ10は、下面10eが水平となるような姿勢で装着部5に装着されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェットプリンタ(記録装置)
7 センサ
9 ディスプレイ(報知手段)
10、110 インクカートリッジ
10a 側面(第2の面)
10b 前面(第1の面)
10c 背面(第3の面)
10d 上面(第2の面)
10e 下面(第2の面)
12、112 インク収容部
13、113 インク排出部
14、114 インク吸収体
15、115 ケース
16b、116b 光透過部
21 安定面
22 不安定面
23 インク溜め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部を覆うケースとを備えたインクカートリッジであって、
前記ケースは、第1の面を含む複数面体からなり、前記インク収容部に連通しており前記第1の面から突出するインク排出部が設けられていると共に、前記第1の面が形成された部分の内表面近傍に前記インク収容部からインクが漏れ出た場合に漏れたインクが溜まるインク溜め部が設けられており、且つ前記インク溜め部の近傍における前記第1の面が形成された壁に、外側から前記インク溜め部を目視できる光透過部が形成されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記インク溜め部に配置されたインク吸収体をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記ケースにおける前記第1の面に隣接する第2の面が形成された部分の内表面に、第1の部分と、前記第2の面を底面として前記ケースを置いた際に載置面からの高さが前記第1の部分に比べて低い第2の部分とが形成されており、
前記インク溜め部は、前記第2の部分の近傍に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記第2の面が形成された部分の内表面に、前記第2の面を底面として前記ケースを置いた際に前記第1の部分から前記第2の部分に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、
前記インク溜め部は、前記第2の面を底面として前記ケースを置いた際に、前記傾斜面の最下部に位置していることを特徴とする請求項3に記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記ケースにおける前記第1の面と対向する第3の面は、外側に湾曲した湾曲面であることと特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部を覆うケースとを備えたインクカートリッジであって、
前記ケースは、その外表面に、底面として前記ケースを置いた際に安定して置くことができる安定面、及び底面として前記ケースを置いた際に前記安定面に比べて不安定な不安定面が形成されていると共に、前記不安定面が形成された部分の内表面近傍に、前記インク収容部からインクが漏れ出た場合に漏れ出たインクが溜まるインク溜め部が設けられており、且つ前記インク溜め部の近傍の前記不安定面が形成された壁に、外側から前記インク溜め部を目視できる光透過部が形成されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項7】
前記インク溜め部に配置されたインク吸収体をさらに備えていることを特徴とする請求項6に記載のインクカートリッジ。
【請求項8】
前記ケースの前記安定面が形成された部分の内表面に、第1の部分と、この安定面を底面として前記ケースを置いた際に載置面からの高さが前記第1の部分に比べて低い第2の部分とが形成されており、
前記インク溜め部は、前記第2の部分の近傍に位置していることを特徴とする請求項6又は7に記載のインクカートリッジ。
【請求項9】
前記安定面が形成された部分の内表面に、この安定面を底面として前記ケースを置いた際に前記第1の部分から前記第2の部分に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、
前記インク溜め部は、前記安定面を底面として前記ケースを置いた際に、前記傾斜面の最下部に位置していることを特徴とする請求項8に記載のインクカートリッジ。
【請求項10】
前記不安定面が少なくとも前記ケースの互いに対向する2面の対向外表面に形成されており、前記インク溜め部が2面の前記対向外表面に形成された2面の前記不安定面のうちの一方が形成された部分の近傍に形成されていることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項11】
前記不安定面は、その面を底面として前記ケースを置いた際に床と接触する接触面を包含する支持基底面の面積が、前記安定面よりも少ないことを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項12】
前記光透過部の近傍の壁に、前記インク収容部に連通するインク排出部が貫通していることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクカートリッジと、前記インクカートリッジが装着され、前記インクカートリッジから供給されたインクにより画像の記録を行う本体部とを備えた記録装置であって、
前記本体部が、
前記インク溜め部のインクを検出するセンサと、
前記センサによる検出結果に基づいて前記インク収容部からのインク漏れを報知する報知手段とを備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項14】
インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部を覆うケースとを備えたインクカートリッジであって、
前記インク収容部と前記ケースとの間に配置されたインク吸収体をさらに備えており、
前記ケースの一部に、外側から前記インク吸収体を目視できる光透過部が形成されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項15】
前記光透過部の近傍のケースに、前記インク収容部に連通するインク排出部が貫通していることを特徴とする請求項14に記載のインクカートリッジ。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のインクカートリッジと、前記インクカートリッジが装着され、前記インクカートリッジから供給されたインクにより画像の記録を行う本体部とを備えた記録装置であって、
前記インク吸収体のインクを検出するセンサと、
前記センサによる検出結果に基づいて前記インク収容部からのインク漏れを報知する報知手段とを備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項17】
前記インクカートリッジが、前記本体部への装着方向の下流側が上流側よりも下方となるように前記本体部に装着され、
前記インク吸収体が、前記インクカートリッジの前記本体部への装着方向前側に位置していることを特徴とする請求項16に記載の記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−240979(P2010−240979A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92094(P2009−92094)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】