説明

インクカートリッジ

【課題】従来のインクカートリッジは、急激な温度変化に起因するインクカートリッジ内の熱膨張した空気圧を即開放することができなくインク吐出口からインクが漏れるという問題があった。
【解決手段】大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、前記インク収容室内に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室を前記インク収容室の内部に備える構成とした。これにより急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力を圧力規制室に瞬時に開放しインク吐出口からのインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に装着されるインクカートリッジに関する。さらに詳しくは、インクカートリッジに備える大気開放口とインク吐出口との間に圧力を規制する圧力規制室を備えることにより、インクカートリッジに振動などの機械的衝撃や温度変化などの熱的衝撃が付与された場合でも、吐出口や大気開放口からインクが漏れ出すことがなく良好な印刷ができるインクカートリッに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一例として挙げられるインクジェット式プリンタは、通常、装置内のカートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジに貯留されているインクを記録ヘッドへ送り込み、この記録ヘッドが用紙等の被記録媒体にインク滴を噴射・塗布することで、画像や文字の記録を行う。
【0003】
インクジェット式プリンタにおける記録ヘッドは、熱や振動を利用してインク滴の噴射を制御するもので、印刷中の機械的振動や温度変化によりインクカートリッジ内のインクがインク吐出口から漏れ出し記録ヘッドに過剰のインクを流出して良好な印刷ができなくなり、ひいては記録ヘッドの故障を招くという問題がある。また、インクカートリッジの輸送中や保管中の衝撃が起因して、あるいは温度変化によるインクカートリッジ内の体積膨張が起因してインク吐出口や大気開口からインクが漏れ出すという問題がある。
【0004】
そこで、上記の問題点を解決するために、インクカートリッジ内を複数のリブで区画した複数のインク室(4室)を構成し、インク吐出口にもっとも隣接したインク室の一つにインク吸収体を充填し、この吸収体の毛管力によりインク吐出口からのインク漏れを解消する試みのインクカートリッジが提案されている。また、複数のインク室(4室)のうち、インク吐出口にもっとも隣接したインク室の一つにインク吸収体を充填し、かつ吐出口からもっとも離れ側壁に接合したインク吸収体を充填したインク室をバッファー室としてインク吐出口からのインク漏れを解消する試みのインクカートリッジが提案されている。(例えば特許文献1〜3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−40044号公報
【特許文献2】特開平6−40041号公報
【特許文献3】特開平7−195706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3に提案されているインクカートリッジは、温度変化の程度が緩やかで且つその変化幅が少ない場合に適用されるものであり、急激な温度変化やその変化幅が大きい場合においてはインク吐出口や大気開口からインクが漏れるという問題がある。上記特許文献1〜3に提案されているインクカートリッジは、例えば、インクカートリッジ内を複数のリブで区画して横に複数並んだインク室(4室)とインクカートリッジの側面に配置した吐出口とインク吐出口にもっとも隣接したインク室の一つにインク吸収体を充填した構成としている。そしてインクが消費されていくとインク吸収体が充填されていない中央部のインク室には空気が存在する空間部が形成される。温度変化によりこの空気が存在するインク室内に圧力変化が生じるとこのインク室には大気開口がないからインク室内のインクは、圧力開放がされずインク吐出口に移動しインク吐出口側でのインク漏れにつながる。ましてインク吐出口がインクカートリッジの底部に設けられたケースにおいてはインク吐出口からインク漏れすることは明らかである。結局、インク室内の圧力変化によって移動するインクは他のインク室に圧力を分散するだけで、圧力開放ができていないから、インク吐出口からインクが漏れ出す事が見られた。
【0007】
また、上記特許文献1〜3に提案されているインクカートリッジのうち、インクカートリッジ内を複数のリブで区画した複数のインク室(4室)を構成し、インク吐出口にもっとも隣接したインク室の一つにインク吸収体を充填し、かつ吐出口からもっとも離れた側壁に接合したインク室にインク吸収体を充填してバッファー室とした場合であっても、インクが消費されインク吸収体が充填されていない中央部のインク室に空気が存在する空間部が形成されてしまい、温度変化によりインク室内に圧力変化が生じるとこのインク室には大気開口がないからインク室内のインクは、圧力開放がされずインク吐出口とバッファー室に移動し、このバッファー室内にはインク吸収体が空隙なく充填されているので、このインク吸収体が逆に抵抗となってインク吐出口側でのインク漏れにつながる。結局、バッファー室内を設けた場合であってもインク室内の圧力変化によって移動するインクは他のインク室に圧力を分散するだけで圧力開放ができていないから、インク吐出口からインクが漏れ出す事が見られた。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み鋭意研究した結果、インク室内で発生する比較的大きな圧力変化をそのインク室外に大きな影響を与える前に確実に解消することを主たる目的とし、そのためにはそのインク室内で発生した圧力変化を最初に吸収する機構をそのインク収容室内部に持たせるという新たな解決法に至り、インク移動を最小限に食い止め、バッファー機能に必要な空間をも最小限化できるという画期的な発想から生まれたものである。そして、インク室内の急激に発生した圧力変化に伴う移動インクを即吸収するとともに圧力を即開放する空間部が一体的に必要であるという知見に至り完成されたものである。
【0009】
また、インク吸収体をインク吐出口側とそこから離れた2室を介した端部室とに夫々に充填した場合には、その間にあるインク室のインクが少なくなるとお互いに綱引きをし始めて、結果的にインクが途切れインク供給できなくなるという問題も見出した。
【0010】
即ち、従来のインクカートリッジは、急激な温度変化によるインクカートリッジ内の熱膨張した空気圧を即開放することができないという欠陥がある。本発明は上記の見出した知見により、急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力をインク吐出口に影響する前に即開放しインク吐出口からのインク漏れを防止しすることを第1の課題とし、インク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することを目的とする。
【0011】
さらに、第1の課題に加えて、同一機種のインクカートリッジに対して、インク充填量を増量することを第2の課題とし、インク容量が増大したインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することを目的とする。
さらに、付随して輸送中の衝撃や急激な温度変化に対してもインク漏れを起こさないインクカートリッジを提供することを目的とする。
【0012】
この目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。特に、本発明は、インクの圧力変化によって移動するインク量が、空気の温度変化による計算上の体積変化分よりも多くのインクが実際には漏れているという現状を認識したうえで、この原因がインクの移動後の慣性力によって増大せしめられているという実態を根本的に解決することが原点にある。そして、本発明は、圧力変化を最初に吸収する機構をインク収容室内部に持たせるという新たな解決法に至り、インク移動を最小限に食い止め、バッファー機能に必要な空間をも最小限化できるという画期的な発想から生まれたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明の第1の発明は、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室を前記インク収容室の内部に備えたことを特徴とするインクカートリッジである。
【0014】
本発明の第2の発明は、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、前記インク収容室内に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室と気液分離室とを前記インク収容室の内部に備えたことを特徴とするインクカートリッジである。
【0015】
本発明の第3の発明は、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、大気開放口とインク吐出口との間に一端が大気開放口と連通し他端がインク収容室と連通する連通口を有する大気連通路を備え、前記大気連通路の途中に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室を前記インク収容室の内部に備えたことを特徴とするインクカートリッジである。
【0016】
本発明の第4の発明は、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、大気開放口とインク吐出口との間に一端が大気開放口と連通し他端がインク収容室と連通する連通口を有する大気連通路を備え、前記大気連通路の途中に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室と気液分離室とを前記インク収容室の内部に備えたことを特徴とするインクカートリッジである。
ある。
【0017】
本発明の第5の発明は、第1の発明または第2の発明のいずれかに記載の前記圧力規制室がインク吐出口から離間して設けられていることを特徴とするインクカートリッジである。
【0018】
本発明の第6の発明は、第3の発明ないし第5の発明のいずれかに記載の前記連通口が前記インク収容室のインク中に配置されるように底部側に設けられていることを特徴とするインクカートリッジである。
【0019】
本発明の第7の発明は、第1の発明ないし第6の発明のいずれかに記載の前記インク収容室が複数の小開口を介してインク吐出口と連通して複数備えることを特徴とするインクカートリッジである。
【0020】
本発明の第8の発明は第7の発明に記載の前記インク収容室が一方向に通過するインク通過弁を備えていることを特徴とするインクカートリッジである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の発明であるインクカートリッジは、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室を前記インク収容室の内部に備えた構成としているので、急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力によるインクをインク吸収材が吸収するとともに、前記空間がインカートリッジ内の上昇圧力を即開放することができインク吐出口からのインク漏れを防止することができるという効果を奏する。したがってインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができるという効果を奏する。
【0022】
本発明の第2の発明であるインクカートリッジは、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室と気液分離室とを前記インク収容室の内部に備えた構成としているので、第1の発明に加えて、気液分離室が急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力によるインクをインク吸収材が吸収するとともに前記空間がインカートリッジ内の上昇圧力を即開放するに際し気液分離室が相乗してさらにインカートリッジ内の上昇圧力を即開放することができインク吐出口からのインク漏れを防止することができる。また、気液分離室まで前記上昇圧力がおよんだ場合であっても気液分離室でインクと空気を分離できるので大気開放口からインクが流出することがないという効果をそうする。したがってインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができるという効果を奏する。
【0023】
本発明の第3の発明であるインクカートリッジは、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、大気開放口とインク吐出口との間に一端が大気開放口と連通し他端がインク収容室と連通する連通口を有する大気連通路を備え、前記大気連通路の途中に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室を前記インク収容室の内部に備えた構成としているので、急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力によるインクをインク吸収材が吸収するとともに、前記空間がインカートリッジ内の上昇圧力を即開放することができインク吐出口からのインク漏れを防止することができるという効果を奏する。さらに、大気連通路がインク室及び圧力規制室の負圧力を高めることができるので急激な温度変化に起因する、インク吐出口からのインク漏れをさらに防止することができる。したがってインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明の第4の発明であるインクカートリッジは、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、大気開放口とインク吐出口との間に一端が大気開放口と連通し他端がインク収容室と連通する連通口を有する大気連通路を備え、前記大気連通路の途中に空間を形成してンク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室と気液分離室とを前記インク収容室の内部に備えた構成としているので、第3の発明に加えて、気液分離室が急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力によるインクをインク吸収材が吸収するとともに前記空間がインカートリッジ内の上昇圧力を即開放するに際し気液分離室が相乗してさらにインカートリッジ内の上昇圧力を即開放することができインク吐出口からのインク漏れを防止することができる。また、気液分離室まで前記上昇圧力がおよんだ場合であっても気液分離室でインクと空気を分離できるので大気開放口からインクが流出することがないという効果を奏する。したがってインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明の第3なし第4の発明であるインクカートリッジは、前記圧力規制室がインク吐出口から離間して設けられている構成であること、前記連通口が前記インク収容室のインク中に配置されるように底部側に設けられている構成であることから、第1の発明及び第2の発明の効果に加えて、前記圧力規制室がインク吐出口から離間した構成であるため急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力がインク吐出口に及ばなく前記圧力規制室が即反応しインカートリッジ内の上昇圧力を即開放することできる。また、前記連通口がインク室と圧力規制室の負圧力を高めることができるので急激な温度変化に起因する、インク吐出口からのインク漏れをさらに防止することができる。したがって、よりインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明の第5なし第6の発明であるインクカートリッジは、前記インク収容室が複数の小開口を介してインク吐出口と連通して複数備える構成であること、さらにインク収容室が一方向に通過するインク通過弁を備えた構成であることから、第1の発明及び第4の発明の効果に加えて、インク収容室に設けた前記複数の小開口がインク収容室の負圧力をさらに向上させることができるので、また、前記インク収容室に備えた一方向に通過するインク通過弁がさらにインク収容室の負圧力を向上させることができ急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力がインク吐出口にさらに及ばなく前記圧力規制室が即反応しインカートリッジ内の上昇圧力を即開放することできる。したがって、さらにインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】

【図1】本発明の第1の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の第4の実施形態を示す模式図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す模式図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す模式図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す模式図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す模式図である。
【図10A】本発明の他の実施形態を示す模式図である。
【図10B】本発明の他の実施形態を示す模式図である。
【図10C】本発明の他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(本発明の第1の実施の形態)
以下に、本発明の第1の実施の形態を図1〜図2に基づいて説明する。図1及び図2は本発明の第1の実施の形態を示す模式図である。
【0029】
本発明の第1の実施の形態であるインクカートリッジ1は、大気開放口2とインク吐出口3とインクを収容するインク収容室4を備えるインクカートリッジにおいて、空間7を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室8を前記インク収容室4の内部に備えた構成となっている。
【0030】
さらに詳しくは、本発明のインクカートリッジ1は、インクカートリッジ1の上部に大気開放口2と底部にインク吐出口3とインクを収容するインク収容室4を備え、大気開放口2は圧力規制室8内の開口部9(例えば1〜3mmφ)と連通している。さらに圧力規制室8は、インク吸収材6が充填されているとともにインク収容室4に通じる連通口11aとインク吸収材の中央部に仕切壁23を形成して設けられた空間7を備えている。また、圧力規制室8の底部に設けられた連通口11a(例えば1mm×3〜10mmの長方形開口)の複数は、インク室内にある規制としての流抵抗部分よりも抵抗が小さいので、インクの消費に伴って大気開放口2から前記開口部9を介して導入される空気が気液交換される機能と前記圧力規制室8に充填されたインク吸収材6が保持するインクを流出する流出口としての機能と温度変化に起因してインク収容室4内に圧力変化が生じた場合にインク収容室4内のインクが前記圧力規制室8に即流入するための流入口としての機能を有している。ここで、連通口11aは、インク室内にある他の規制としての流路抵抗部分よりも抵抗が小さい。
【0031】
さらに前記圧力規制室8は、前記吐出口3から離れ大気開放口2の近傍であって前記圧力規制室8の上部は、前記インク収容室4内の上部と当接密閉され前記圧力規制室8の下部は、インク収容室の4内のインクと連通する連通口11aを有し、インク収容室4の底部との間にインクが流通する隙間15を形成した構成となっている。また前記圧力規制室8に充填されたインク吸収材6は仕切り壁23と前記圧力規制室を構成する側壁との間によって形成されるメニスカス形成部27を備えている。また、インク貯留室13はインク流入口14を備え、インク流入口14を介してインク収容室4のインク吸引口12から流入したインクがインク貯留室13に流入されインク吐出口3から印刷装置の記録ヘッド(不示せず)に供給される。前記インク貯留室13は前記インク吐出口3の上部に接して設けられている。このようにしてインクカートリッジ1内のインクが連続的に消費され印刷が行われる。
【0032】
上述した本発明のインクカートリッジ1のインク収容室4に設けられた圧力規制室8は、急激な温度変化がなくインクカートリッジ1内の圧力が上昇しない通常の状態においては、前記メニスカス形成部27を備えるインク吸収材6によってインクが吸収保持されている。本発明の第1の実施の形態においては、インクカートリッジ1内に初期充填された状態では、前記メニスカス形成部27で負圧が形成されて前記空間7にもインクが貯留された状態であるが、印刷が開始されるとまず前記圧力規制室8内の空間7に貯留されているインクが消費され次に前記圧力規制室8内の吸収材6に保持されているインクが消費される。そうすると、インク収容室4b内及び4a内のインクが圧力規制室8とインクカートリッジ1の底部とに設けた隙間15を通じてインクカートリッジ内のインクレベルのバランスを維持しながら圧力規制室8にインクが流入してくる。インクの消費はこの状態を繰り返しながらインクレベルのバランスが維持される。上記の状態について図2に図示する。図2に示すようにaからb、c、dの順にインクレベル28が変化しながらインクの消費とインクカートリッジ1全体のインクレベルバランスと負圧が維持される構成となっている。
【0033】
そして、インクの消費に伴って大気開放口2から流入した空気は、前記開口部9を介して圧力規制室8の底部に設けた連通口11aからインク収容室4に流入して気液交換が行われインクカートリッジ1内の負圧を良好に維持する構成となっている。
【0034】
本発明のインクカートリッジ1において、圧力規制室8とインク収容室4の底部との間に設ける隙間15の間隙は、インクの流路が確保される範囲であれば特に限定されないが、前記隙間15の間隙をインクカートリッジ1内の負圧を形成する機能として付与させることができる。その場合前記隙間15の間隙は3mmないし5mm程度に形成することが望ましい。また、前記メニスカス形成部27の間隙は3ミリ程度に形成することが望ましい。さらに本実施の形態では、前記空間7を前記インク吸収材の中央部に形成した実施例を例示して説明したが、前記圧力規制室8内の空間7の形成は、図3に例示するように前記圧力規制室8の上部に形成するようにしてもよい。この場合の空間7の容積は、圧力変化によって前記圧力開放分離室8に移動するインク量は圧力変化に見合うインク量だけでなくインクの移動に伴う慣性が働くため、インク収納容室4内のインク充填量が10mlの場合は1.0ml〜1.5mlとすることが好ましい。またインク吸収材6中央部に設けて両サイドに空間7を形成してもよく、さら片側のみに空間7を形成してもよい。要するに、インクカートリッジ1全体の負圧バランスを勘案して形成すればよくこのような構成も本発明に包含される。
【0035】
上述した本発明のインクカートリッジ1において、急激な温度変化に起因して生じたインカートリッジ1内の上昇圧力は、インク収容室4内のインクと共に前記圧力規制室8に即移動し、圧力規制室8の下部に設けた開口部11aを通じて前記メニスカス形成部24の負圧により瞬時時にインクが吸収され前記空間7に瞬時に開放されて前記上昇圧力が定常時の負圧状態に即回復される構成となっている。即ち、前記インカートリッジ1内の上昇圧力は、前記空間7に即開放されるのでインク吐出口3や大気開放口2からのインク漏れを防止することができるという効果を奏する。そして上述のようにして定常時の負圧状態に即回復された前記圧力規制室8の空間7には、前記インク収容室4のインクが流入し貯留された状態となるが、印刷が開始されるとインクの消費に伴って上述したインクの初期充填状態と同様に空間7に貯留されたインクが消費される構成になっている。
【0036】
また本発明のインクカートリッジ1は、大気開放口2からインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるように構成されており、本実施形態の圧力規制室8の下部に設けられた開口や隙間15、インク吸収材6が有する負圧の大きさはそのように設計されている。またさらに、本発明の開口部9、連通口11a、インク吸引口12、インク流入口14は、前記したインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるような負圧を形成している。また、インク貯留室13、インク吐出口3に充填されるインク吸収材も前記したようにインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるような負圧を形成している。
【0037】
したがって、圧力規制室8全体の流路抵抗はインク吐出口より低い構成となっているが、圧力規制室8内に充填しているインク吸収材6は、上述したインクカートリッジ1内の上昇圧力を即開放するための構成として、圧力規制室8の底部から空間7に向かって負圧力が大きくなるようにインク吸収材の圧縮率や充填形態を後述するような構成とすることができる。このような負圧構成とすることによりインク収容室4内の圧力が上昇した場合であっても、連通口11aの流路抵抗がインク吸引口12に対する流路抵抗より小さいのでインク吐出口3に影響することなく、圧力規制室8底部に設けた連通口11aを介してインク吸収材6に即インクが吸収移動し、瞬時に空間7に圧力開放されインク吐出口3からのインク漏れを防止することができる。
【0038】
(本発明の第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施形態について図3を参照して以下に説明する。本発明のインクカートリッジ1は、大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室と気液分離室とを前記インク収容室の内部に備えた構成となっている。
【0039】
本発明の第2実施形態例については、前述した第1の実施形態例で詳述したので、第1実施形態と異なる構成部を中心に説明する。本発明の第2実施形態例では、大気開放口2が気液分離室16と連通して圧力規制室8内の上記開口部9と連通し、前記圧力規制室8内の上部即ちインク吸収材6の上部に空間7を形成した構成となっている。インク収容室4内に設けた圧力規制室8により、急激な温度変化に起因して生じたインカートリッジ1内の上昇圧力を、インク収容室4内のインクと共に圧力規制室8に即移動し、圧力規制室8の底部に設けた上記連通口11aを通じてインク吸収材6に吸収され、さらに前記インク吸収材6上部の空間7に瞬時に開放されて前記上昇圧力が定常時の負圧状態に即回復される構成となっているが、前記気液分離室16は、予測し得ないようなあまりにも急激な温度変化が起きる地域を勘案して設けたものであって、仮に前記インカートリッジ1内の上昇圧力があまりにも大きく圧力規制室8の空間7に開放された空気がインクを含んで大気開放口2へ流出する場合があっても前記気液分離室16内でインクと空気を分離し空気のみを大気開放口2に逃がすことができる構成となっているものである。
【0040】
上述したように、図3に例示する前記圧力規制室8の上部に形成された空間7の容積は、圧力変化によって前記圧力開放分離室8に移動するインク量は圧力変化に見合うインク量だけでなくインクの移動に伴う慣性が働くため、インク収納容室4内のインク充填量が10mlの場合は1.0ml〜1.5mlとすることが好ましい。
【0041】
したがって、本発明のインクカートリッジ1は、前記インカートリッジ1内の前記上昇圧力に対して即反応して前記上昇圧力を開放し、インク吐出口3や大気開放口2からのインク漏れを防止することができるという効果を奏する。さらに、図3に図示するように、本実施形態例では、第1の実施の形態例で説明した構成に加えて、前記気液分離室16の他にインク収容室4が複数の小開口(図示せず)を介してインク吐出口3と連通する複数のインク収容室4c、4d、4eを備え、さらに、一方向に通過するインク通過弁19が前記複数のインク収容室の一つであるインク収容室4cに備えられ、インク収容室4dが上部で開口された例示している。この場合のインク吐出口3へのインクの流入順位は、インク室4内のインクがインク吸引口17及びインク流入口18を通じてインク収容室4cに設けたインク通過弁19からインク収容室4eに流出される。そして上部が開口されたインク収容室4d内のインクはインク戻り流路25によりインク収容室4aのインクレベルがインク収容室4dの底部より減少するとインク戻り流路25を通じてインク収容室4aに流入されてインク吐出口3から印刷装置の記録ヘッド(不示せず)に供給される構成となっている。
【0042】
上記インク通過弁19が設けられたインク収容室4cはインク収容室4aに比べて容積は小さい構成としている。次にインク通過弁19の内部構成について説明する。(図示せず)」インク収容室4aに設けたインク通過弁19は、弁を構成する台座表面に微細凹凸が形成されており、弁膜を弁座に当接密着固定することにより前記微細凹凸と弁膜との間で形成される微細孔が一方向に通過するインクの流路抵抗を構成した微細口形成部を有している。前記台座表面の微細凹凸は75ミクロン〜100ミクロンの範囲で形成することができる。また、前記弁膜は、弾性部材で形成された円状の膜であって中央に止めピン挿入用の穴が形成されている。前記弁膜の固定は、弁を構成する前記台座の内側に構成された樹脂製の止めピンに前記弁膜の穴を通して、前記止めピンの先端を溶着し前記台座に当接密着固定して前記インク通過弁19が構成されている。したがって、インク収容室4aは、インク収容室4aに対して区分され、インクをインク収容室に初期充填する際には、インク収容室4c内に最終的に充填するためには加圧充填しないと充填できないほどの規制力を前記微細孔形成部が発揮する。本実施形態ではこのような構成を適宜構成することができる。
【0043】
上記のインクカートリッジ1のインクの流路抵抗は前記したようにインク吐出口3に向かって高くなるように負圧が構成されている。そしてインク吐出口3へのインクの流入順位は、インク室4内のインクがインク吸引口17及びインク流入口18を通じてインク収容室4cに設けたインク通過弁19からインク収容室4dに流入され、さらにインク収容室4eに流出されてインク吐出口3から印刷装置の記録ヘッド(不示せず)に供給される。このようにしてインクカートリッジ1内のインク収容室4に貯留されているインクが連続的に消費され印刷が行われる。
【0044】
前記した複数のインク収容室4は複数の小開口(図示せず)を介してインク吐出口3と連通する構成となっており、また、この小開口はインク吐出口3へ向かってインクの流路抵抗が高くなるように負圧が構成されている。このような構成とすることにより、インク吐出口3の負圧がさらに形成されるので、インク吐出口3からのインクが漏れることがない。また上述したように、上記のような負圧構成とすることにより急激な温度変化に起因してインク収容室4内の圧力が上昇した場合であっても、連通口11aの流路抵抗がインク吸引口12に対する流路抵抗より小さいのでインク吐出口3に影響することなく、圧力規制室8底部に設けた連通口11aを介してインク吸収材6に即インクが吸収移動し、瞬時に空間7に圧力開放されインク吐出口3からのインク漏れを防止することができる。また、前記したように前記空間7に瞬時に開放されるとともに気液分離室16にも開放されて前記上昇圧力が定常時の負圧状態に即回復される構成となっている。したがって、第1の実施の形態に加えてさらにインク吐出口3や大気開放口2からのインク漏れを防止することができるという効果を奏する。
【0045】
上述した本発明のインクカートリッジ1は上記の構成となるように製造されインクが充填されるが、以下にインク充填方法の一例を示す。本実施形態ではインク充填口(図示せず)は、インクカートリッジ1のインク吐出口3が構成された底部に設けられている。本発明のインクカートリッジ1は常圧下でも減圧下でも充填可能であるが以下のようにしてインクを充填することができる。
【0046】
インクカートリッジ1のインク吐出口3の側面を垂直にして、大気開放口2は密栓しインク吐出口3を形成した面に配置したインク充填口(図示せず)から注射器やポンプにより、常圧下でインクカートリッジ内のインク収容室4b、圧力規制室8、インク収容室4a、インク収容室4dにインクを充填する。インク充填に際しインク収容室4b内の空気が隙間15を通じてインクと置換されにくい場合は、インク収容室4b内の空気がインクと置換されるようにインクカートリッジ1のインク吐出口3の側面をさらに略45度傾斜して充填することができる。このようにしてインクがインク収容室4b、圧力規制室8、インク収容室4a、インク収容室4dに充填されると、次にインク充填口から加圧下でインク収容室4c、インク通過弁19、インク収容室4eにインクを充填する。インク収容室4e内へのインク充填量が不足する場合(空気が残っている場合)は、インク吐出口3を上方にして常圧下でインクを注入すればインク収容室4eへインクが満たされる。
【0047】
このようにしてインクが充填されたインクカートリジ1は大気開放口2とインク吐出口3をシール材または栓部材で密封し輸送されることになる。本発明のインクカートリジ1は、上述したようにインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるように負圧が形成されているのでシールや栓部材による密封が開封されることがない。また機械的な衝撃や振動があってもインクが漏れることがない。さらに、上述した本発明のインクカートリッジ1の構成は、インクカートリッジ1内のインク未充填部が少ない構造となっているため、同一機種のインクカートリッジ1に対してインク充填量を増量することができる。また本発明のインクカートリジは、使用済みのインクカートリッジであってもインクカートリッジの構成が複雑でないので、再充填口を設けることに再充填を行うことができる。
【0048】
(本発明の第3の実施の形態)
次に本発明の第3の実施形態について図4を参照して以下に説明する。
本発明の第3の実施の形態であるインクカートリッジ1は、大気開放口2とインク吐出口3とインクを収容するインク収容室4を備え、大気開放口2とインク吐出口3との間に一端が大気開放口2と連通し他端がインク収容室4と連通する連通口を有する大気連通路5を備え、前記大気連通路5の途中に空間7を形成してインク吸収材6が充填された圧力を規制する圧力規制室8を前記インク収容室4内に備えた構成となっている。
【0049】
さらに詳しくは、本発明のインクカートリッジ1は、大気開放口2とインク吐出口3とインクを収容するインク収容室4を備え、大気開放口2は圧力規制室8内の上記開口部9と連通して大気連通路5aを形成し、さらに圧力規制室8は、インク収容室4内と連通する上記開口部10をさらに備え大気開放口2とインク吐出口3との間に一端が大気開放口2と連通し他端がインク収容室4と連通する連通口11bを有する大気連通路5bを備え、前記大気連通路5の途中に空間を7形成してインク吸収材6が充填された圧力を規制する圧力規制室8を前記インク収容室4内に備えている。また、圧力規制室8の下部には開口(図示せず)が設けられている。そして、インク収容室4内のインクは、インク吸引口12からインク吐出口3に隣接するインク収容室4内に設けたインク貯留室13に流入する構成となっている。インク貯留室13はインク流入口14を備え、インク流入口14を介してインク収容室4から流入したインクはインク貯留室13に流入されインク吐出口3から印刷装置の記録ヘッド(不示せず)に供給される。このようにしてインクカートリッジ1内のインク収容室4に貯留されているインクが連続的に消費され印刷が行われる。
【0050】
また、圧力規制室8の底部に設けられた開口部10は、インクの消費に伴って大気開放口2から前記開口部9を介して導入される空気が気液交換される機能と前記圧力規制室8に充填されたインク吸収材6が保持するインクを流出する流出口としての機能と温度変化に起因してインク収容室4内に圧力変化が生じた場合にインク収容室4内のインクが前記圧力規制室8に即流入するための流入口としての機能を有している。また、前記圧力規制室8は、前記吐出口3から離れ大気開放口2の近傍であって前記圧力規制室8の上部は、前記インク収容室4内の上部と当接密閉され前記圧力規制室8の下部は、インク収容室の4内のインクと連通する開口(図示せず)を有し、インク収容室4の底部との間にインクが流通する隙間15を形成した構成となっている。さらに前記インク貯留室13は前記インク吐出口3の上部に接して設けられている。
【0051】
また、前記圧力規制室8内の空間7の形成は、本実施の形態では前記圧力規制室8の上部に形成されている。この場合の空間7の容積は、圧力変化によって前記圧力開放分離室8に移動するインク量は圧力変化に見合うインク量だけでなくインクの移動に伴う慣性が働くため、インク収納容室4内のインク充填量が10mlの場合は1.0ml〜1.5mlとすることが好ましい。またインク吸収材6中央部に設けて両サイドに空間7を形成してもよく、さら片側のみに空間7を形成してもよい。要するに、インクカートリッジ1全体の負圧バランスを勘案して形成すればよくこのような構成も本発明に包含される。また、圧力規制室8とインク収容室4の底部との間に設ける隙間15の間隙は、インクの流路が確保される範囲であれば特に限定されないが、前記隙間15の間隙をインクカートリッジ1内の負圧を形成する機能として付与させることができる。その場合前記隙間15の間隙は3ミリないし5ミリ程度に形成することが望ましい。
【0052】
上述した本発明のインクカートリッジ1のインク収容室4に設けられた圧力規制室8は、急激な温度変化がなくインクカートリッジ1内の圧力が上昇しない通常の状態においてはインクを収容する機能を有している。そのため、本発明の第1の実施の形態においては、インクカートリッジ1内に初期充填されたインクは、印刷が開始されるとまず圧力規制室8内のインクが消費され次にインク収容室4b内のインクが消費される。そしてインク収容室4b内のインクが消費されインク収容室4b内のインクレベルが下がってくるとインク収容室4a内のインクが、圧力規制室8とインクカートリッジ1の底部とに設けた隙間15を通じてインク収容室4bに流入しインクカートリッジ内のインクレベルのバランスを維持しながらインクが消費される構成となっている。この場合、各インクが消費されると大気開放口2から流入した空気は、大気連通路5a及び圧力規制室8の上部に設けた開口部9、10を通じて大気連通路5bの延出端である連通口11bからインク収容室4に流入してインクカートリッジ1内の負圧を良好に維持する構成となっている。
【0053】
上述した本発明のインクカートリッジ1において、急激な温度変化に起因して生じたインカートリッジ1内の上昇圧力は、インク収容室4内のインクと共に圧力規制室8に即移動し、圧力規制室8の下部に設けた開口(図示せず)を通じてインク吸収材6に吸収され、さらに前記インク吸収材6上部の空間7に瞬時に開放されて前記上昇圧力が定常時の負圧状態に即回復される構成となっている。即ち、前記インカートリッジ1内の上昇圧力は、前記空間7に即開放されるのでインク吐出口3や大気開放口2からのインク漏れを防止することができるという効果を奏する。
【0054】
また本発明のインクカートリッジ1は、大気開放口2からインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるように構成されており、本実施形態の圧力規制室8の下部に設けられた開口や隙間15、インク吸収材6が有する負圧の大きさはそのように設計されている。またさらに、本発明の大気連通路5、開口部9、10、連通口11b、インク吸引口12、インク流入口14は、前記したインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるような負圧を形成している。また、インク貯留室13、インク吐出口3に充填されるインク吸収材も前記したようにインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるような負圧を形成している。このような負圧構成とすることによりインク収容室4内の圧力が上昇した場合であっても、開口(図示せず)の流路抵抗がインク吸引口12に対する流路抵抗より小さいのでインク吐出口3に影響することなく、圧力規制室8底部に設けた開口(図示せず)を介してインク吸収材6に即インクが吸収移動し、瞬時に空間7に圧力開放されインク吐出口3からのインク漏れを防止することができる。
【0055】
したがって、圧力規制室8全体の流路抵抗はインク吐出口より低い構成となっているが、圧力規制室8内に充填しているインク吸収材6は、上述したインクカートリッジ1内の上昇圧力を即開放するための構成として、圧力規制室8の底部から空間7に向かって負圧力が大きくなるようにインク吸収材の圧縮率や充填形態を後述するような構成とすることができる。
【0056】
上述した本発明のインクカートリッジ1は上記の構成となるように製造されインクが充填されるが、以下にインク充填方法の一例を示す。本実施形態ではインク充填口(図示せず)は、インクカートリッジ1のインク吐出口3が構成された底部に設けられている。本発明のインクカートリッジ1は常圧下でも減圧下でも充填可能であるが、常圧下でインク充填する方法を例示する。
【0057】
インクカートリッジ1のインク吐出口3を上方にして、大気開放口2は密栓しインク吐出口3を形成した面に配置したインク充填口(図示せず)から注射器やポンプによりインクカートリッジ内のインク収容室4aにインクを充填する。次いで隙間15を通じてインク収容室4bと圧力規制室8にインクを充填する。インク充填に際しインク収容室4b内の空気が隙間15を通じてインクと置換されにくい場合は、インク収容室4b内の空気がインクと置換されるようにインクカートリッジ1を傾斜して充填することができる。このようにしてインクが充填されると、インク充填口を密栓してインクカートリッジ1のインク吐出口1を下側にして大気開放口を開栓してインク吐出口3を介してインクカートリッジ1内を減圧してインク貯留室13及びインク吐出口3から充填インクの一部を抜き出しインク流路全体をインクで満たし、大気開放口2を密封する。インク吐出口3からインクを多く抜き出しインクカートリッジ1内のインクが不足する場合は再度インク充填口から不足分のインクを充填すればよい。この場合は、インク吐出口3からのインク抜き出し操作は必要ない。
【0058】
このようにしてインクが充填されたインクカートリジ1は大気開放口2とインク吐出口3をシール材または栓部材で密封し輸送されることになる。本発明のインクカートリジ1は、上述したようにインク吐出口に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるように負圧が形成されているのでシールや栓部材による密封が開封されることがない。また機械的な衝撃や振動があってもインクが漏れることがない。さらに、上述した本発明のインクカートリッジ1の構成は、インクカートリッジ1内のインク未充填部が少ない構造となっているため、同一機種のインクカートリッジ1に対してインク充填量を増量することができる。また本発明のインクカートリジは、使用済みのインクカートリッジであってもインクカートリッジの構成が複雑でないので、再充填口を設けることに再充填を行うことができる。
【0059】
次に、圧力規制室8に充填されるインク吸収材6の構成について図9及び図10を参照して以下に説明する。圧力規制室8内に充填するインク吸収材6は、上述したようにインクカートリッジ1内の上昇圧力を即開放するための構成として、圧力規制室8の底部から空間7に向かって負圧力が大きくなるようにインク吸収材の圧縮率や充填形態を構成することができる。図9は圧力規制室8内に充填されるインク吸収材6の充填状態を示したものである。図9の左図が圧縮されて充填された状態を示し右図が充填される前のインク吸収材6の形態を示したものである。
【0060】
本発明の実施形態では、インク吸収材6の充填形態は、図示されるように圧力規制室8の底部から空間7に向かって負圧力が大きくなるようにインク吸収材が圧縮されて充填されるが、その圧縮率はA>B>Cの順になっており、充填前のインク吸収材6の形状は、B<BB<A、A=Aの形状にしたものをA>B>Cの間隔にした充填構造を圧力規制室8の下部に充填部として形成しておくことにより行うことができる。この場合、充填前のインク吸収材6が上下方向に影響されないようにインク吸収材の上下の距離はA=Aとしており、また、前記圧力規制室8の下部の充填部に設けたリブ20及びリブ21が収まるようにインク吸収材6にスリット22または穴22が設けてられている。
【0061】
またインク吸収材の形状は、図10のA〜Cに示すように圧力規制室8が即反応して前記上昇圧力を開放することができる構造とすることができる。図10のAはコの字状に形成した場合を図示しており、図10Bは、インク吸収材の中央部が空洞を形成する場合を図示している。また、図10Cは、図10Bの構成に仕切り壁23を設けた場合を図示している。このような構成にした前記インク吸収材の充填部にできた空間部はインク収容室として使用することができるのでインクカートリッジ1内へのインク充填量をより多くすることができる。
【0062】
(本発明の第4の実施の形態)
次に、本発明の第4実施形態例について図5を参照して以下に説明する。本発明のインクカートリッジ1は、大気開放口2とインク吐出口3とインクを収容するインク収容室4を備え、大気開放口2とインク吐出口3との間に一端が大気開放口2と連通し他端がインク収容室4と連通する連通口11bを有する大気連通路5を備え、前記大気連通路5の途中に空間7を形成してインク吸収材6が充填された圧力を規制する圧力規制室8と気液分離室16とを前記インク収容室4内に備えた構成となっている。
【0063】
本発明の第4実施形態例については、前述した第3の実施形態例で詳述したので、第3実施形態と異なる構成部について説明する。本発明の第4実施形態例では、大気連通路5aを通じて圧力規制室8と連通する大気開放口2がインク収容室4内に設けられた気液分離室16に配置された構成となっている。上述したように、インク収容室4内に設けた圧力規制室8により、急激な温度変化に起因して生じたインカートリッジ1内の上昇圧力を、インク収容室4内のインクと共に圧力規制室8に即移動し、圧力規制室8の下部に設けた開口を通じてインク吸収材6に吸収され、さらに前記インク吸収材6上部の空間7に瞬時に開放されて前記上昇圧力が定常時の負圧状態に即回復される構成となっているが、前記気液分離室16は、予測し得ないようなあまりにも急激な温度変化が起きる地域を勘案して設けたものであって、仮に前記インカートリッジ1内の上昇圧力があまりにも大きく圧力規制室8の空間7に開放された空気がインクを含んで大気開放口2へ流出する場合があっても前記気液分離室16内でインクと空気を分離し空気のみを大気開放口2に逃がすことができる構成となっているものである。
【0064】
したがって、本発明のインクカートリッジ1は、前記インカートリッジ1内の前記上昇圧力に対して即反応して前記上昇圧力を開放し、インク吐出口3や大気開放口2からのインク漏れを防止することができるという効果を奏する。さらに、図5に図示するように、本実施形態例では、第3の実施の形態例で説明した構成に加えて、前記気液分離室16の他にインク収容室4が複数の小開口(図示せず)を介してインク吐出口3と連通する複数のインク収容室4c、4d、4eを備え、さらに一方向に通過するインク通過弁19が前記複数のインク収容室の一つであるインク収容室4cに備えられた構成となっている。
【0065】
上記のインクカートリッジ1のインクの流路抵抗は前記したようにインク吐出口3に向かって高くなるように負圧が構成されている。そしてインク吐出口3へのインクの流入順位は、インク室4内のインクがインク吸引口17及びインク流入口18を通じてインク収容室4cに設けたインク通過弁19からインク収容室4dに流入され、さらにインク収容室4eに流出されてインク吐出口3から印刷装置の記録ヘッド(不示せず)に供給される。このようにしてインクカートリッジ1内のインク収容室4に貯留されているインクが連続的に消費され印刷が行われる。
【0066】
前記した複数のインク収容室4は複数の小開口(図示せず)を介してインク吐出口3と連通する構成となっており、また、この小開口はインク吐出口3へ向かってインクの流路抵抗が高くなるように負圧が構成されている。このような構成とすることにより、インク吐出口3の負圧がさらに形成されるので、インク吐出口3からのインクが漏れることがない。また、前記したように、急激な温度変化に起因して生じたインカートリッジ1内の上昇圧力は、インク収容室4内のインクと共に圧力規制室8に即移動し、圧力規制室8の下部に設けた開口を通じてインク吸収材6に吸収され、さらに前記インク吸収材6上部の空間7に瞬時に開放されるので、インク吐出口3や大気開放口2からのインク漏れを防止することができるという効果を奏する。また、本実施形態における圧力規制室8内に充填されるインク吸収材6の構成は、詳述は割愛するが前記したような構成とすることができる。
【0067】
(本発明の他の実施の形態)
次に本発明の他の実施の形態例について図6〜図7を参照して下記に説明に説明する。図6〜図7に図示した例は、前記した圧力規制室8内の構造やインク吸収材6の構成の変形例を示したものであり、このような構成を適宜構成することができる。また、図7に例示した本インクカートリッジ1は、インク残量検知用のプリズムをインク収容室4の底部にもうけられたている。また、本インクカートリッジを構成する種々の構成については前述しているので詳細な説明は割愛する。
【0068】
次に前記実施の形態例で説明した気液分離室16、複数のインク収容室4c〜4e及びインク通過弁19を備えた本発明のインクカートリッジのインク充填方法について図5を参照して以下に説明する。本実施形態ではインク充填口(図示せず)は、インクカートリッジ1のインク吐出口3が構成された底部とは対向する上部に設けることができる。この場合、インク吐出口3からインクカートリッジ1内を減圧にして、インク充填口からまずインク収容室4aにインクを充填し、次いで連続してインク吸引口17からインクを吸引し、インク収容室4c、インク通過弁17、インク収容室4d,インク収容室4eを経由してインク貯留室24、インク吐出口3までインクを充填する。次いで、常圧下で前記第1の実施形態で説明したようにしてインクカートリッジ1内にインクを充填することができる。
【0069】
次に図8参照して本発明のインクカートリッジの他の実施形態例を以下に説明する。図8に示した実施形態例は、前記した実施形態例で説明した図5から図7に図示したインク収容室4dが上部で開口された変形例を示したものである。この場合のインク吐出口3へのインクの流入順位は、インク室4内のインクがインク吸引口17及びインク流入口18を通じてインク収容室4cに設けたインク通過弁19からインク収容室4eに流出される。そして上部が開口されたインク収容室4d内のインクはインク戻り流路25によりインク収容室4aのインクレベルがインク収容室4dの底部より減少するとインク戻り流路25を通じてインク収容室4aに流入されてインク吐出口3から印刷装置の記録ヘッド(不示せず)に供給される構成となっている。本実施形態ではこのような構成を適宜構成することができる。また、本インクカートリッジを構成する種々の構成については前述しているので詳細な説明は割愛する。
【0070】
上述のとおり、本発明のインクカートリッジ1は、急激な温度変化に起因するインカートリッジ内の上昇圧力を即開放しインク吐出口からのインク漏れを防止しするという第1の課題を解決しインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができるという優れた効果を奏する。
【0071】
さらに、第1の課題の解決に加えて、同一機種のインクカートリッジに対して、インク充填量を増量するという第2の課題を解決しインク容量が増大したインク漏れがない良好な印刷ができるインクカートリッジを提供することができるという優れた効果を奏する。
【0072】
さらに、付随して本発明のインクカートリッジ1は、大気開放口2からインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるように構成されており、本実施形態の圧力規制室8の下部に設けられた開口や隙間15、インク吸収材6が有する負圧の大きさはそのように設計されている。またさらに、本発明の大気連通路5、開口部9、10、連通口11a、インク吸引口12、インク流入口14は、前記したインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるような負圧を形成している。また、インク貯留室13、インク吐出口3に充填されるインク吸収材も前記したようにインク吐出口3に向かって順次インクの流路抵抗が大きくなるような負圧を形成している。またさらに前記した複数のインク収容室4は複数の小開口(図示せず)を介してインク吐出口3と連通する構成となっており、また、この小開口はインク吐出口3へ向かってインクの流路抵抗が高くなるように負圧が構成されている。
【0073】
上述したように、インクカートリッジ1内のいたるところでインク吐出口3へ向かってインク流路抵抗が高くなるように構成してインクカートリッジ1内の負圧を形成しているので、インク吐出口3からのインクが漏れることがないという効果を奏する。
【0074】
また、圧力規制室8全体の流路抵抗はインク吐出口より低い構成となっているが、圧力規制室8内に充填しているインク吸収材6は、上述したインクカートリッジ1内の上昇圧力を即開放するための構成として、圧力規制室8の底部から空間7に向かって負圧力が大きくなるようにインク吸収材の圧縮率や充填形態の構成をしているので、圧力規制室8が即反応して前記上昇圧力を開放することができるという効果をより向上させることができる。
【0075】
本発明は、上述したような実施の形態例に限定されることなく、上述した実施の形態例を適宜組み合わせるなど、本発明の構成を逸脱しない範囲で設計される事項は本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のインクカートリッジは、液体インクを消費する印刷装置に使用されるものであれば、インクの種類に関係なく種々のインクカートリッジに適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 インクカートリッジ
2 大気開放口
3 インク吐出口
4 インク収容室(4a〜4e)
5 大気連通路(5a、5b)
6 インク吸収材
7 空間
8 圧力規制室
9 開口部
10 開口部
11a 連通口
11b 連通口
12 インク吸引口
13 インク貯留室
14 インク流入口
15 隙間
16 気液分離室
17 インク吸引口
18 インク流入口
19 インク通過弁
20 リブ
21 リブ
22 スリット(穴)
23 仕切り壁
24 インク貯留室
25 インク戻り流路
26 プリズム
27 メニスカス形成部
28 インクレベル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、前記インク収容室内に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室を前記インク収容室の内部に備えたことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室と気液分離室とを前記インク収容室の内部に備えたことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項3】
大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、大気開放口とインク吐出口との間に一端が大気開放口と連通し他端がインク収容室と連通する連通口を有する大気連通路を備え、前記大気連通路の途中に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室を前記インク収容室の内部に備えたことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
大気開放口とインク吐出口とインクを収容するインク収容室を備えるインクカートリッジにおいて、大気開放口とインク吐出口との間に一端が大気開放口と連通し他端がインク収容室と連通する連通口を有する大気連通路を備え、前記大気連通路の途中に空間を形成してインク吸収材が充填された圧力を規制する圧力規制室と気液分離室とを前記インク収容室の内部に備えたことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項5】
前記圧力規制室がインク吐出口から離間して設けられていることを特徴とする請求項1または5に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記連通口が前記インク収容室のインク中に配置されるように底部側に設けられていることを特徴とする請求項3ないし5に記載のいずれかのインクカートリッジ。
【請求項7】
前記インク収容室が複数の小開口を介してインク吐出口と連通して複数備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項8】
前記インク収容室が一方向に通過するインク通過弁を備えていることを特徴とする請求項7に記載のインクカートリッジ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公開番号】特開2011−245692(P2011−245692A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119681(P2010−119681)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(397025587)エステー産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】