説明

インクジェットインク及び導電性パターン作製方法

【課題】有機半導体化合物が溶解したインクジェットインクに、イオン性液体を加えることにより、帯電量を調節し、サテライト耐性に優れたインクジェットインクとそれを用いた導電性パターン作製方法を提供する。
【解決手段】圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置により吐出してパターン像を形成するのに用いるインクジェットインクであって、有機半導体化合物、比誘電率が10以下の有機溶媒、特定の5種のイオン性液体から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするインクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体化合物を溶解したインクジェットインクとそれを用いた導電性パターン作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料を使った有機電子デバイス研究が盛んである。有機材料を薄膜化し、デバイスに応用することによって、低温、低コストプロセスで製造でき、携帯性に優れ、安価な有機電子デバイスの実現が期待されている。
【0003】
このような有機電子デバイスの一種である有機トランジスタは、チャネルに用いられる半導体材料が有機分子の集合体(有機半導体材料)であり、分子内でのみ共有結合している。したがって、全体としては結晶系シリコンに対しては比較的弱い結合体である。そのため、製造プロセス(特に、結晶化工程)の低温化が期待できる。また、有機半導体材料はフレキシブル性に富み、軽量化が可能である。したがって、有機トランジスタを用いることにより、携帯性に優れた装置の提供が可能性がある。具体的には、有機トランジスタは、ペーパーライクディスプレイや液晶ディスプレイの構成要素として好適である可能性がある。低温製造プロセスを実現する1つの有力な方法として、インクジェット方式を利用した有機トランジスタの製造方法が挙げられる。
【0004】
このインクジェット方式としては、ピエゾ方式、サーマル方式など種々の吐出方式が知られているが、特に微小なインク液滴を吐出する際、吐出時の初速を高くすると、適用する条件によっては吐出時に液滴が引き伸ばされて後端部が分裂することがある。分裂した微小な液滴は、いわゆる「サテライト」と呼ばれ、主滴よりも遅れて、しかも所望の着弾位置から外れた位置に付着する、あるいは付着することなく印字空間を漂うという問題を引き起こす。従って、この様なサテライトを生じると、形成画像の劣化を招くこととなり、サテライトの発生を防止するための方法の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、インクジェットインクとして、イオン性液体を含有したインクジェットインクが提案されている。例えば、記録媒体上に電荷がかかっていても、インク液滴の帯電がイオン性液体の添加により中和されるため、記録媒体とインク液滴間の反発が解消され、着弾精度を向上した記録方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)
特許文献2では、インク液滴の極性と基体との極性の関係を反対極性とすることにより、位置精度が向上することが開示されているが、この方法では、例えば、過度に基体が一方の極性に帯電した場合、インクの帯電もその反対極性に過度に併せることになり、確かに位置精度は向上するが、ヘッド内のノズル付近の帯電バランスが劣化し、ヘッドノズルからのインク液滴の射出安定性が十分ではないという課題があることが判明した。すなわち、正もしくは負電荷を極端に帯電しているインクは、ノズル近傍に電荷を残留させるため、射出に不具合が出たり、サテライトが発生したりするという問題が発生する。
【0006】
また、特許文献3では、イオン性液体をインクに添加することにより、導電性粒子間の隙間をイオン性液体が埋めて、形成された導電性膜の導電性が向上するということが報告されているが、特許文献3においては、インクジェットインクの射出安定性に関しては、一切の記載がなされていない。
【特許文献1】特開2004−216887号公報
【特許文献2】特開2006−206686号公報
【特許文献3】特開2006−335995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、有機半導体化合物が溶解したインクジェットインクに、イオン性液体を加えることにより、帯電量を調節し、サテライト耐性に優れたインクジェットインクとそれを用いた導電性パターン作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置により吐出してパターン像を形成するのに用いるインクジェットインクであって、有機半導体化合物、比誘電率が10以下の有機溶媒、及び下記一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするインクジェットインク。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、Q1は窒素原子と共に5または6員環の芳香族カチオンを形成する原子団を表す。R1は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。X-はアニオンを表す。〕
【0012】
【化2】

【0013】
〔式中、A1は窒素原子またはリン原子を表す。R2〜R5は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。X-はアニオンを表す。〕
【0014】
【化3】

【0015】
〔式中、R6〜R11は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。X-はアニオンを表す。〕
一般式(4)
+12131415・X-
〔式中、R12〜R15は、各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、複素環基またはアラルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。X-はアニオンを表す。〕
【0016】
【化4】

【0017】
〔式中、X及びYは、各々炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。k及びiは、各々0または1〜4の正整数を、n及びmは、各々3〜7の正整数を表し、Aは酸成分を表す。〕
2.前記一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体が、炭素数が10以上、20以下であることを特徴とする前記1に記載のインクジェットインク。
【0018】
3.前記有機半導体化合物が、6,13−ビストリイソプロピルシリルエチニルペンタセン、または、1,3,6−N−スルフィニルアセトアミドペンタセンであることを特徴とする前記1または2に記載のインクジェットインク。
【0019】
4.前記比誘電率が10以下の有機溶媒の沸点が、150℃以上、250℃以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0020】
5.1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインクをインクジェット記録装置より吐出して導電性パターンを作製する導電性パターン作製方法であって、該インクジェット記録装置は、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、圧力発生素子に電圧を印加する電圧印加手段、及び静電力を用いた電界印加手段を有することを特徴とする導電性パターン作製方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、有機半導体化合物が溶解したインクジェットインクに、イオン性液体を加えることにより、帯電量を調節し、サテライト耐性に優れたインクジェットインクとそれを用いた導電性パターン作製方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明のインクジェットインクは、有機半導体化合物、比誘電率が10以下の有機溶媒及び前記一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体を含有することを特徴とする。
【0024】
微小インク液滴を安定に吐出するインクジェット方式として、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、圧力発生素子に電圧を印加する電圧印加手段と、静電力を用いた電界印加手段とを有するインクジェット記録装置が知られている。この様な電圧印加手段と電界印加手段とを用いた吐出方式のインクジェット記録装置においては、有機半導体化合物及び比誘電率が10以下を満たす有機溶媒を含有するインクジェットインクでは、極性や電気伝導度が低くなる傾向があるため、特に、静電力を利用する電界印加手段を適用した吐出方式では、液滴の帯電量をうまくコントロールすることができず、サテライトや着弾位置のずれなどが発生するという問題がある。
【0025】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を進めた結果、有機半導体化合物及び比誘電率が10以下である有機溶媒を含有するインクジェットインクに、本発明に係る前記一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体から選ばれる少なくとも1種を共存させることにより、インクジェットインクの帯電量をコントロールすることができ、その結果、静電力を利用する電界印加手段を適用した吐出方式を有するインクジェット記録装置より印字を行っても、サテライトの発生を低減させることができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0026】
以下、本発明の詳細について、更に説明する。
【0027】
《インクジェットインク》
本発明のインクジェットインクは、少なくとも、有機半導体化合物、比誘電率が10以下の有機溶媒及び前記一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体を含有する。
【0028】
〔有機半導体化合物〕
本発明に係る有機半導体化合物とは、半導体性を示す有機材料をいう。
【0029】
本発明のインクジェットインクに適用可能な有機半導体化合物としては、半導体として機能するものであれば、どのような有機化合物を選択してもよい。有機半導体化合物としては、例えば、特開平5−55568号公報等にて開示されているペンタセンやテトラセンといったアセン類、特開平4−167561号公報等に開示されている鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、特開2004−319982号公報等に開示されているベンゾポルフィリン等のポルフィリン類、その他、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体、テトラチアフルバレン類等といった低分子量化合物や、特開平8−264805号公報等に開示されているα−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー、またポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など(これらの多くは「アドバンスド・マテリアル」(Advanced Material)誌2002年、第2号99頁に記載されている)が一般的に知られている。その中でも、有機半導体材料として低分子量化合物を用いた場合に本発明の効果がより発揮され、特に、重量平均分子量が5000以下の低分子量有機半導体材料を用いると、高移動度で駆動する有機薄膜トランジスタを得る上でより好ましい。
【0030】
前述した有機半導体化合物の中でも、低分子量化合物として、例えば、ピレン、コロネン、オバレン等やその誘導体、アントラセン、ペンタセン等やその誘導体(アセン類)、ルブレンやその誘導体等に代表される縮合多環式炭化水素類、ベンゾジチオフェン、アントラジチオフェン等やその誘導体等に代表されるヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族化合物類、チオフェンオリゴマー等が好ましい例として挙げられる。ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載のアセン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0031】
本発明では、半導体特性の観点から、特に、6,13−ビストリイソプロピルシリルエチニルペンタセン、1,3,6−N−スルフィニルアセトアミドペンタセンを用いることが好ましい。
【0032】
〔有機溶媒〕
本発明のインクジェットインクにおいては、有機半導体化合物、一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体と共に、比誘電率が10以下の有機溶媒を含有することを特徴とする。
【0033】
本発明に係る比誘電率が10以下の有機溶媒としては、比誘電率が10以下であれば特に制限はなく、例えば、炭化水素系、アルコール系、エーテル系、エステル系、ケトン系、グリコールエーテル系などの高範囲の有機溶媒から、有機半導体化合物に応じて適宜選択される。本発明に係る有機溶媒としては、特に、有機半導体化合物の溶解性の観点から、トルエン、キシレン、ナフタレン、テトラリン、アニソールなどの芳香族炭化水素化合物を用いることがより好ましい。比誘電率の下限は、特にないが、0.1以上であることが好ましい。
【0034】
本発明でいう比誘電率とは、真空に対する比誘電率であり、ASTM−150に準処して、市販の測定装置、例えば、誘電率測定装置 HP E5050A HEWLETT PACKARD等で測定可能である。また、「化学便覧 改訂4版(II)」丸善株式会社、「溶剤ハンドブック 第I版」(講談社サイエンティフィク)等にその値が記載されており、それらを参考にすることができる。
【0035】
また、本発明に係る比誘電率が10以下の有機溶媒においては、沸点が150℃以上、250℃以下であることが好ましい。
【0036】
本発明に係る比誘電率が10以下で、かつ沸点が150℃以上、250℃以下の有機溶媒としては、例えば、
炭化水素系有機溶媒としては、デカン(ε:2.0、BP:174℃)、テトラリン(ε:2.7、BP:208℃)、ドデカン(ε:2.0、BP:216℃)、ノナン(ε:2.0、BP:150℃)、メチチレン(ε:0.1、BP:165℃)、p−クロロトルエン(ε:6.2、BP:162℃)、ジクロロブタン(ε:8.9、BP:155℃)、
アルコール系有機溶媒としては、2−エチルヘキサノール(ε:3.4、BP:185℃)、2−ヘプタノール(ε:9.2、BP:160℃)等、
エーテル系有機溶媒としては、アニソール(ε:4.3、BP:154℃)、エチルベンジルエーテル(ε:3.9、BP:186℃)、ジイソアミルエーテル(ε:2.8、BP:173℃)、1,8−シネオール(ε:4.5、BP:176℃)等、
エステル系有機溶媒としては、安息香酸エチル(ε:6.0、BP:213℃)、安息香酸メチル(ε:6.6、BP:199℃)、イソ吉草酸イソアミル(ε:3.6、BP:194℃)、酢酸ベンジル(ε:5.1、BP:215℃)、シュウ酸ジエチル(ε:8.3、BP:189℃)、ステアリン酸エチル(ε:3.0、BP:200℃)、プロピオン酸イソアミル(ε:4.7、BP:161℃)、マロン酸ジエチル(ε:7.9、BP:199℃)、マロン酸ジメチル(ε:9.9、BP:183℃)、酪酸イソアミル(ε:4.2、BP:185℃)、
を挙げることができる。なお、括弧内に記載のεは比誘電率を、BPは沸点を表す。
【0037】
また、グリコールエーテル系有機溶媒としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、等を挙げることができるが、本発明ではこれらにのみ限定されるものではない。
【0038】
本発明のインクジェットインクにおいては、有機溶媒の沸点が150℃以上であれば、ノズル近傍(メニスカス部)での有機溶媒の乾燥が起こりにくくなり、ノズル内のインク物性の変化や吐出休止直後のインク液滴の吐出速度に遅れによるデキャップが発生しにくくなる。また、有機溶媒の沸点が250℃以下であれば、描画後における有機溶媒の適度な蒸発速度を得ることができる。
【0039】
〔一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体〕
本発明のインクジェットインクにおいては、上記説明した有機半導体化合物及び比誘電率が10以下の有機溶媒と共に、前記一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体を少なくとも1種含有することを特徴とする。
【0040】
以下、一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体について、その詳細を順次説明する。
【0041】
はじめに、前記一般式(1)〜(3)で表されるイオン性液体について説明する。
【0042】
前記一般式(1)において、Q1は窒素原子と共に5または6員環の芳香族カチオンを形成する原子団を表す。Q1は炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる原子により構成されるのが好ましい。Q1が形成する5員環はオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、インドール環またはピロール環であるのが好ましく、オキサゾール環、チアゾール環またはイミダゾール環であるのがより好ましく、オキサゾール環またはイミダゾール環であるのが特に好ましい。Q1が形成する6員環はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環またはトリアジン環であるのが好ましく、ピリジン環であるのが特に好ましい。
【0043】
前記一般式(2)において、A1は窒素原子またはリン原子を表す。
【0044】
一般式(1)、(2)及び(3)において、R1〜R11はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜24であり、直鎖状であっても分岐状であっても、また環式であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、あるいは置換または無置換のアルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜24であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、ビニル基、アリル基等)を表す。R1〜R11はそれぞれ独立に、より好ましくは炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数2〜18のアルケニル基であり、特に好ましくは炭素原子数2〜6のアルキル基である。
【0045】
一般式(2)におけるR2〜R5のうち、2つ以上が互いに連結してA1を含む非芳香族環を形成してもよく、一般式(3)におけるR6〜R11のうち2つ以上が互いに連結して環を形成してもよい。
【0046】
上記Q1及びR1〜R11はそれぞれ置換基を有していてもよい。この置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等)、アリーロキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基等)、炭酸エステル基(例えば、エトキシカルボニルオキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等)、ホスホニル基(例えば、ジエチルホスホニル基等)、アミド基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイル基等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2−カルボキシエチル基、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トルイル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、イミダゾリル基、フラニル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基等)、シリル基、シリルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
前記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物は、Q1及びR1〜R11のいずれかを介して多量体を形成してもよい。
【0048】
一般式(1)、(2)及び(3)において、X-はアニオンを表す。X-の好ましい例としては、例えば、ハロゲン化物イオン(例えば、I-、Cl-、Br-等)、SCN-、BF4-、PF6-、ClO4-、(CF3SO22-、(CF3CF2SO22-、CH3SO3-、CF3SO3-、CF3COO-、Ph4-、(CF3SO23-等が挙げられる。X-はI-、SCN-、CF3SO3-、CF3COO-、(CF3SO22-またはBF4-であるのがより好ましい。
【0049】
以下、本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
上記で列挙した例示化合物のうち、好ましく用いられる化合物は、例示化合物6−3、18−3、21−3、30−3、31−3、33−3である。
【0056】
本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される化合物は、単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。
【0057】
次いで、前記一般式(4)で表されるイオン性液体について説明する。
【0058】
前記一般式(4)において、R12〜R15は、互いに独立して水素原子、飽和または不飽和の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基、R16−X−(R17−Y−)n−(式中、R16は炭素数4以下のアルキル基、R17は炭素数4以下のアルキレン基、X及びYは酸素原子または硫黄原子、nは0〜10の整数を示す)を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0059】
上述の中でR12〜R15の具体的な例はとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの直鎖または分枝を有するアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどのシクロアルキル基、無置換あるいはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、水酸基、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、カルボキシル基、アセチル基、プロパノイル基、チオール基、低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ)、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基などの置換基を1〜3個有するフェニル、ナフチル、トルイル、キシリル等のアリール基、ベンジルなどのアラルキル基などを挙げることができる。
【0060】
また、R16の具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルなどのアルキル基などが挙げられ、R17としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基などを挙げることができる。
【0061】
-で表されるアニオン種としてはアニオンであれば如何なる化合物でもよい。具体例としては、(FSO22-、(CF3SO22-、CH3SO4-、Br-、Cl-、OH-、NO3-、PF6-、BF4-、CH3−Ph−SO3-、CF3SO3-、C817SO3-、C49SO3-、CH3OSO3-、C817SO3-、(CF3SO23-、HSCN-、CH3COO-、C817COO-、(CN)2-が挙げられる。
【0062】
次いで、前記一般式(5)で表されるイオン性液体について説明する。
【0063】
前記一般式(5)において、X及びYは、各々炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよく、k及びiは、各々0または1〜4の正整数を、n及びmは、各々3〜7の正整数を表す。
【0064】
前記一般式(5)において、X及びYの炭素数が5以上、k及びiが5以上、または、n及びmが8以上の場合には、スピロアンモニウム化合物塩のイオン導電性が低下し好ましくない。
【0065】
一般式(5)において、スピロアンモニウム化合物塩のカチオンとしては、例えば、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロブチルイオン、アザシクロペンタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロヘキサン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロペンチルイオン、アザシクロヘキサン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロヘキシルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘキシルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘキシルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロヘプチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘプチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロオクチルイオンが挙げられる。
【0066】
一般式(5)において、Aは酸成分を表し、例えば、過塩素酸イオン(ClO4-)、フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6-)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3-)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3CO2-)、ビストリフルオロメタンスルフォニルイミドイオン((CF3SO22-)、ペルフルオロブタンスルホン酸イオン(C49SO3-)、トリストリフルオロメタンスルフォニルメチドイオン((CF3SO23-)、ジシアナミドイオン((CN)2-)等が挙げられる。
【0067】
本発明に係る一般式(5)で表されるスピロアンモニウム化合物塩は、以下の製造方法により得られる。
【0068】
まず、イソプロピルアルコール溶媒中、炭酸カリウム存在下でアザシクロアルカンに両末端を臭素化させたジブロモアルカンを作用させてスピロアンモニウムブロマイドを得、次に該ブロマイドを水またはアルコール中で電気透析により脱塩させて水酸化スピロアンモニウム溶液を得る。次いで、得られた水酸化スピロアンモニウム溶液に、一般式(5)中のAに対応する酸成分を、等モル量添加して、中和反応させた後、減圧下で脱水させて、目的とするスピロアンモニウム化合物塩を得ることができる。
【0069】
本発明に係る一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体が、総炭素数10以上、20以下であることが好ましい。総炭素数が10以上のイオン性液体であれば、有機半導体化合物を溶解するのに用いる疎水性有機溶媒に対する溶解性を付与することができ、20以下であれば、適度な融点で、室温で液体状態を保つことができ、取り扱い容易性の観点から好ましい。
【0070】
また、本発明のインクジェットインクを用いて導電性パターンを形成して、例えば、有機TFT等を作製する場合、その信頼性も考慮すると、アニオン種として、トリフルオロメチルスルホニル基、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド基、p−トルエンスルホネート基を用いることがより好ましい。
【0071】
本発明に係るイオン性液体の添加量は、射出性やパターン描画後の半導体特性の観点から、インクジェットインクが含有する有機半導体化合物の総質量に対し、1質量%以上、10質量%以下が好ましい。
【0072】
〔インクジェットインクの物性〕
本発明のインクジェットインクは、粘度は0.9mPa・s以上、20mPa・s以下が好ましい。さらには2mPa・s以上、10mPa・s以下が射出安定性の観点から好ましく、3mPa・s以上、7mPa・s以下が最も好ましい。本発明で言うインクの粘度(mPa・s)は、25℃で測定した粘度値であり、従来公知の粘度計を用いて求めることができる。
【0073】
本発明のインクジェットインクにおいては、表面張力は20mN/m以上、60mN/m以下が好ましい。さらには射出安定性の観点から30mN/m以上、50mN/m以下が好ましい。本発明で言うインクの表面張力(mN/m)は、25℃で測定した表面張力値であり、その測定方法は一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等において述べられているが、例えば新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P.68〜117を参照することが出来る。
【0074】
本発明のインクジェットインクの電気伝導度は、25℃において0.1μS/cm以上、1000μS/cm以下が好ましいが、描画性の観点から、1μS/cm以上、500μS/cm以下がさらには好ましい。インクの電気伝導度の測定は、JIS K 0130(1995)に記載の方法に示されるような方法に従って容易に行うことができる。
【0075】
《導電性パターンの作製方法》
本発明においては、上記説明した有機半導体化合物、比誘電率が10以下の有機溶媒、及び本発明に係るイオン性液体を含有する本発明のインクジェットインクを用いて、圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置により吐出してパターン像を形成することを特徴の一つとする。
【0076】
本発明に係る圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置について、詳細を説明する。
【0077】
一般に、電子回路等で要求されている微細な線幅のパターンを高精細に描画するには、インクジェット記録装置から射出するインク液滴をより微細化する必要がある。
【0078】
しかしながら、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)や電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)のみの出力手段を用いて、極微小インク液滴を吐出した場合、ノズルから吐出したインク液滴に付与される運動エネルギーは、インク液滴の半径の3乗に比例して小さくなるため、微小液滴は空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気対流などによる擾乱を受け、正確な着弾が困難となる。さらに、インク液滴が微細になるほど、表面張力の効果が増すために、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる。このため微細液滴は、飛翔中の著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという問題があった。このように着弾位置の高精度化は、インク液滴の微細化と相反する課題であり、これら2つを同時に実現することに対し、障害を抱えていた。
【0079】
本発明においては、上記課題を解決する方法として、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた射出方法を適用することを特徴とする。
【0080】
この射出方法は、0.1〜100μmの内径の吐出口を有するノズルを用い、本発明のインクジェットインク(以下、導電性インクともいう)に任意波形の電圧を印加して、この導電性インクを帯電させることにより、そのインク液滴を吐出口から、樹脂層を有するインク受容基材に吐出する方法である。
【0081】
すなわち、この射出方法は、ノズルの吐出口の内径が0.1〜100μmであり、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内に供給された導電性インクに任意波形の電圧を印加することにより電界を集中させることができる。その結果、形成されるインク液滴を微小で、かつ形状の安定化したものとすることができる。従って、従来よりも微細な、例えば1pl(ピコリットル)未満の複数のインク液滴からなるインク液滴パターンを樹脂層表面に形成することができる。また、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内の導電性インクに印加する総印加電圧を低減することができる。また、インク液滴は、ノズルから吐出された直後、電界と電荷の間に働く静電力により加速されるが、ノズルから離れると電界は急激に低下するので、その後は、空気抵抗により減速する。しかしながら、微小液滴でかつ電界が集中したインク液滴は、樹脂層に近づくにつれ、鏡像力により加速される。この空気抵抗による減速と鏡像力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることが可能となる。
【0082】
図1は、本発明に好ましく適用できる圧力印加手段と電界印加手段とを用い導電性インク吐出装置の一例を示した概略断面図である。
【0083】
図1において、導電性インク吐出装置120は、帯電可能な導電性インクの液滴を先端部から樹脂層を有するインク受容基材Kに向かって吐出する超微細径のノズル121と、ノズル121の先端部に対向する面側には位置され、その対向面でインク受容基材Kを支持する対向電極123と、ノズル121内の流路122に導電性インクを供給する導電性インク供給手段と、ノズル121内の導電性インクに任意波形の吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段(電圧印加手段)125とを備えている。なお、上記ノズル121と導電性インク供給手段の一部の構成と吐出電圧印加手段125の一部の構成とは、ノズルプレート126と一体的に形成されている。
【0084】
ノズル121は、ノズルプレート126の下面層126cから垂設され、この下面層126cと一体的に形成されている。ノズル121の先端部は、対向電極123に指向している。ノズル121の内部には、その先端部からその中心線に沿って貫通するノズル内流路122が形成されている。
【0085】
ノズル121は、例えば、ガラスなどの電気絶縁体により、超微細径で形成されている。ノズル121の各部の寸法の具体例を挙げると、ノズル内流路122の内部直径は1μm、ノズル121の先端部における外部直径は2μm、ノズル121の根元、すなわち、上端部の直径は5μm、ノズル121の高さは100μmに設定されている。また、ノズル121の形状は限りなく円錐形に近い円錐台形に形成されている。このようなノズル121はその全体がノズルプレート126の下面層126cと共に絶縁性の樹脂材により形成されている。
【0086】
なお、ノズル121の各寸法は上記一例に限定されるものではない。特に吐出口の内径については、電界集中の効果により液滴の吐出を可能とする吐出電圧が1000V未満を実現する範囲であって、例えば、100μm以下であり、より望ましくは、20μm以下であって、現行のノズル形成技術により溶液を通す貫通穴を形成することが実現可能な範囲である内径、例えば0.1μmをその下限値とする。
【0087】
導電性インク供給手段は、ノズルプレート126の内部であってノズル121の根元となる位置に設けられると共にノズル内流路122に連通する溶液室124と、図示しない外部の導電性インクタンクからインク室124に導電性インクを導く供給路127と、インク室124への溶液の供給圧力を付与する図示しない供給ポンプとを備えている。
【0088】
上記供給ポンプは、ノズル21の先端部まで導電性インクを供給し、当該先端部からこぼれ出さない範囲の供給圧力を維持して導電性インクの供給を行う。
【0089】
吐出電圧印加手段125は、ノズル121内の導電性インクに吐出電圧を印加してこの導電性インクを帯電させることにより、この導電性インクの液滴をノズル121の吐出口からインク受容基材Kに向かって吐出させるものである。この吐出電圧印加手段125は、ノズルプレート126の内部であってインク室124とノズル内流路122との境界位置に設けられた吐出電圧印加用の吐出電極128と、この吐出電極128に常時,直流のバイアス電圧を印加するバイアス電源130と、吐出電極128にバイアス電圧に重畳して吐出に要する電位とするパルス電圧を印加する吐出電圧電源129とを備えている。
【0090】
吐出電極128は、インク室124内部において導電性インクに直接接触し、導電性インクを帯電させると共に吐出電圧を印加する。
【0091】
バイアス電源130によるバイアス電圧は、導電性インクの吐出が行われない範囲で常時電圧印加を行うことにより、吐出時に印加すべき電圧の幅を予め低減し、これによる吐出時の反応性の向上を図っている。
【0092】
一例を挙げると、バイアス電圧はDC300Vで印加され、パルス電圧は100Vで印される。従って、吐出の際の重畳電圧は400Vとなる。
【0093】
ノズルプレート126は、最も上層に位置する上面層126aと、その下に位置する導電性インクの供給路を形成する流路層126bと、この流路層126bのさらに下に形成される下面層126cとを備え、流路層126bと下面層126cとの間には、吐出電極128が介挿されている。
【0094】
対向電極123は、ノズル121に垂直な対向面を備えており、かかる対向面に沿うようにインク受容基材Kの支持を行う。ノズル121の先端部から対向電極123の対向面までの距離は、例えば100μm等、一定に保持されている。
【0095】
また、対向電極123は接地されているため、常時、接地電位を維持している。従って、パルス電圧の印加時にはノズル121の先端部と対向面との間に生じる電界による静電力により吐出された液滴を対向電極123側に誘導する。
【0096】
なお、導電性インク吐出装置120は、ノズル121の超微細化による当該ノズル121の先端部での電界集中により電界強度を高めることで液滴の吐出を行うことから、対向電極123による誘導がなくとも液滴の吐出を行うことは可能ではあるが、ノズル121と対向電極123との間での静電力による誘導が行われた方が望ましい。この場合、ノズル121から吐出され空気抵抗により減速する液滴を、鏡像力により加速することができる。従って、これら空気抵抗による減速と鏡像力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることができる。またなお、帯電した液滴の電荷を、対向電極123の接地により逃がすことも可能である。
【0097】
以上のような導電性インク吐出装置120は、図示しない駆動機構により、インク受容基材Kの搬送方向に対して直交する方向に走査自在とされた走査型の導電性インク吐出装置としてもよい。この場合において、導電性インク吐出装置120に複数のノズル121を配列するようにしてもよい。また、導電性インク吐出装置120は、インク受容基材Kの搬送方向に対して直交する方向に多数のノズル121を配列してなるライン型の導電性インク吐出装置としてもよい。
【0098】
更に、本発明に適用可能なインクジェット記録装置の詳細構成について、図を用いて説明する。
【0099】
本発明の導電性パターンの作製方法においては、本発明のインクジェットインクを、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、圧力発生素子に電圧を印加する電圧印加手段、及び静電力を用いた電界印加手段を有するインクジェット記録装置を用いて導電性パターンの作製することを特徴とする。
【0100】
(液滴吐出ヘッド)
本発明で好ましく用いられる液滴吐出ヘッドの一例を図2及び図3に従って説明する。
【0101】
図2は液滴吐出ヘッドの例であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドと称する。)Aを構成している、ノズルプレート1、ボディプレート2、圧力発生手段3を模式的に示している。
【0102】
ここでは、はじめに、吐出手段の一つである圧力発生手段として圧電素子を用いた場合について説明する。
【0103】
ノズルプレート1には、インク吐出のための吐出孔11を複数配列してある。また、ボディプレート2には、ノズルプレート1を貼り合わせることで、圧力室となる圧力室溝24、インク供給路となるインク供給路溝23及び共通インク室となる共通インク室溝22、並びにインク供給口21が形成されている。
【0104】
そして、ノズルプレート1の吐出孔11とボディプレート2の圧力室溝24とが一対一で対応するようにノズルプレート1とボディプレート2とを貼り合わせることで流路ユニットMを形成する。ここで、以後、上記で説明に使用した圧力室溝、供給路溝、共通インク室溝の各符号はそれぞれ圧力室、供給路、共通インク室にも使用する。
【0105】
ここで、図3は、この記録ヘッドAにおいて、ノズルプレート1、ボディプレート2、圧電素子3を組み立てた後、ノズルプレート1のY−Y、及びボディプレート2のX−Xの位置での断面を模式的に示している。図3が示しているように、流路ユニットMに圧電素子3をインク吐出用アクチュエータとしてボディプレート2のノズルプレート1を接着する面と反対の各圧力室24の底部25の面に接着することで、記録ヘッドAが完成する。この記録ヘッドAの各圧電素子3に駆動電圧が印加され、圧電素子3から発生する振動が圧力室24の底部25に伝えられ、この底部25の振動により圧力室24内の圧力を変動させることで吐出孔11からインク滴を吐出させる。
【0106】
(駆動電圧)
本発明に係るインクジェット記録装置における圧電素子の駆動電圧と、吐出孔における液体の挙動との関連について説明する。
【0107】
本発明で用いる液滴吐出ヘッドは、吐出孔を有するノズルプレートと、前記吐出孔に連通する圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子を有しており、圧力発生素子に所定の駆動電圧を印加することにより圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることにより前記吐出孔から液体が吐出するものである。この液体吐出の状態は、圧力変動の程度、換言すると圧力発生素子への駆動電圧に応じて変化する。一般に、液体吐出の状態は、実際には駆動電圧だけではなく、他のさまざまな要因によって影響を受けるものであるのだが、ここでは駆動電圧による影響について説明する。
【0108】
液滴を吐出する際に圧力発生手段に印加する駆動電圧Veの波形の例として、図4及び図5に記載の波形を挙げることができる。但し、これらの波形に限られない。
【0109】
(静電力を利用した液滴吐出法)
静電力を利用した液滴吐出法に用いられる電界印加手段については、前述の図1を用いて説明したが、更に、図6に示す液滴吐出装置の一例に従って説明する。
【0110】
図6は、液滴吐出ヘッドBを用いて構成した液体吐出装置60の全体構成を示す模式的である。液滴吐出ヘッドBに利用するノズルプレート1の、例えば、大径部15の内周面に、例えばNiP、Pt、Au等の導電素材よりなるノズル内の液体を帯電させるための静電電圧印加手段である帯電用電極50を設ける。帯電用電極50を設けることで、帯電用電極50がノズルプレート1の大径部15内の液体に接触する。静電電圧電源51から帯電用電極50と吐出される液滴が着弾する基材53を備えた対向電極54との間に静電電圧が印加されると、大径部15内の液体が同時に帯電される。この帯電により、液滴吐出ヘッドのノズル孔11と対向する位置に設けてある対向電極54との間、特に液体と吐出される液滴が着弾する基材53との間に静電吸引力が発生されるようにすることができる。
【0111】
各圧力室24に対応する背面部分には、圧力発生手段としての圧電素子3がそれぞれ設けられている。圧電素子3には、圧電素子3に駆動電圧を印加して圧電素子3を変形させるための駆動電圧電源52が接続されている。圧電素子3は、駆動電圧電源52からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体に圧力を生じさせてノズル11の吐出孔13に液体のメニスカスを形成させるようになっている。ここで、上記で述べたように吐出孔13の存在する吐出面12に撥液層45が設けてあることで、ノズルの吐出孔13部分に形成される液体のメニスカスが吐出孔13の周囲の吐出面12に広がることによるメニスカス先端部への電界集中の低下を効果的に防止することができる。尚、55は駆動電圧電源52や静電電圧電源51等の液体吐出装置60を制御する制御部である。
【0112】
従って、圧電素子3による液体への圧力付与と帯電用電極50による液体への静電吸引力との相乗効果により効率的に液滴が吐出できる液滴吐出ヘッドとすることができる。換言すると、静電吸引力が働かない場合には飛翔中に空気抵抗の影響により飛翔速度が低下して正規の着弾位置まで到達しないような微小な液滴を吐出する場合においても、静電吸引力の作用により正規の着弾位置に高い精度で着弾させることができ、良好なインクパターンを形成することができる。
【0113】
《インク受容基材》
本発明のインクジェットインクを用いて導電性パターンを形成するのに用いるインク受容基材は、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0114】
本発明で用いられる樹脂フィルムの材質としては、特に限定はないが、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリレート系フィルム、ポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。これらの素材を主成分とする異なる材質のフィルムを積層したフィルムであってもよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0116】
《有機半導体化合物》
有機半導体化合物1(6,13−ビスイソプロピルシリルエチニルペンタセン)は、J.Am.Chem.Soc.,vol.123(2001),p9482,supporting informationに記載の方法に従って合成した。また、有機半導体化合物2〔ポリ(3−ヘキシルチオフェン)〕はAldrich社から購入したものを使用した。
【0117】
《イオン性液体》
イオン性液体1:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、(炭素原子数:6、分子量:198、融点:6℃、メルク社製)
イオン性液体2:1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(炭素原子数:24、分子量:616、融点:25℃以下、メルク社製)
イオン性液体3:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(炭素原子数:10、融点:−5℃、関東化学社製)
《インクジェットインクの調製》
〔インク1の調製:本発明〕
下記に示す添加比率で、有機溶媒1(テトラリン、比誘電率:2.7、沸点:208℃)に、有機半導体化合物1(6,13−ビスイソプロピルシリルエチニルペンタセン)、イオン性液体1(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート)を混合、溶解した。次いで、得られた溶液を0.45μmフィルターで濾過して、インク1を調製した。
【0118】
有機半導体化合物1(6,13−ビスイソプロピルシリルエチニルペンタセン)
1.00質量%
有機溶媒1(テトラリン) 98.99質量%
イオン性液体1(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート)
0.01質量%
〔インク2の調製:本発明〕
上記インク1の調製において、イオン性液体1に代えて、イオン性液体2(1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を用いた以外は同様にして、インク2を調製した。
【0119】
〔インク3の調製:本発明〕
上記インク1の調製において、イオン性液体1に代えて、イオン性液体3(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を用いた以外は同様にして、インク3を調製した。
【0120】
〔インク4の調製:本発明〕
上記インク3の調製において、有機溶媒1(テトラリン)に代えて、有機溶媒2(トルエン、比誘電率:2.2、沸点:111℃)を用いた以外は同様にして、インク4を調製した。
【0121】
〔インク5の調製:実施例〕
上記インク3の調製において、有機半導体化合物1に代えて、有機半導体化合物2〔ポリ(3−ヘキシルチオフェン)〕を用いたこと以外は同様にして、インク5を調製した。
【0122】
〔インク6の調製:比較例〕
上記インク1の調製において、イオン性液体1を削除し、有機溶媒1(テトラリン)の添加量を99.00質量%に変更した以外は同様にして、インク5を調製した。
【0123】
〔インク7の調製:比較例〕
下記の各添加剤を混合、溶解して、インク7を調製した。
【0124】
顔料:C.I.Pigment Red−122 4.00質量%
スチレン−ステアリルメタアクリレート共重合体 4.00質量%
イオン性液体2:1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 12.00質量%
アイソパーH(非水溶性有機溶媒、エクソン社製) 80.00質量%
《インクの評価》
上記調製した各インクについて、下記に示す方法に従って評価を行った。
【0125】
〔サテライト耐性の評価〕
各インクを、ノズル口径が5μm、吐出インク液滴量が0.1plの図6に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置に装填、吐出させ、ノズル穴から吐出されるインク液滴の飛翔状態を、CCDカメラを用いてサテライト発生数を計測し、下記に示す基準に従って、サテライト耐性を評価した。液滴吐出ヘッド内に設けられた圧電素子の駆動電圧は、吐出孔からインクは隆起するが、液滴が形成されること無く吐出孔内に戻る最大電圧の1.1倍に、静電力は1kVにそれぞれ設定した。
【0126】
◎:ノズルから吐出されたインク液滴数に対し、サテライト発生が5%未満
○:ノズルから吐出されたインク液滴数に対し、サテライト発生が5%以上、10%未満
△:ノズルから吐出されたインク液滴数に対し、サテライト発生が10%以上、20%未満
×:ノズルから吐出されたインク液滴数に対し、サテライト発生が20%以上
〔デキャップ耐性の評価〕
ノズル口径が5μm、吐出インク液滴量が0.1plの図6に記載のインクジェット記録ヘッドを用いて、上記調製各インクについて、23℃、60%RHの環境下で初期状態として、出射間隔1ミリ秒時、インク液滴速度が8m/secとなるように、液滴吐出ヘッド内に設けられた圧電素子の駆動電圧及び静電力を決定した。
【0127】
次いで、出射間隔時間を変化し、下式に従って液滴速度の相対比率を測定し、下記の基準に従ってデキャップ耐性の評価を行った。
【0128】
例えば、出射間隔1ミリ秒でインク液滴を100滴出射させ、最初の出射から間隔時間t秒後に、再び出射間隔1ミリ秒で100滴出射させ、間隔時間t秒後の最初のインク液滴の速度を測定して、これを間隔時間t後の液滴速度とする。
【0129】
液滴速度の相対比率(%)=(出射間隔t秒後の液滴速度)/(出射間隔1ミリ秒の液滴速度=8m/sec)×100
◎:液滴速度の相対比率が70%以下となる間隔時間tが、10秒以上である
○:液滴速度の相対比率が70%以下となる間隔時間tが、1秒以上、10秒未満である
△:液滴速度の相対比率が70%以下となる間隔時間tが、0.3秒以上、1秒未満である
×:液滴速度の相対比率が70%以下となる間隔時間tが、0.3秒未満である
〔線幅再現性の評価〕
各インクを、図6に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置に装填し、アルカリ性水溶液で洗浄したガラス板上に、線幅10μmの直線を、線間隔50μmで複数本を形成した。液滴吐出ヘッド内に設けられた圧電素子の駆動電圧は、吐出孔から液体が隆起するが、液滴は形成されること無く吐出孔内に戻る最大電圧の1.1倍に、静電力は1kVにそれぞれ設定した。
【0130】
形成したパターンを室温で乾燥させ、光学顕微鏡で観察し、以下の評価を行った。
【0131】
形成されたパターンの任意の50箇所における線幅を測定し、下式にしたがって平均泉幅Waveと線幅ばらつき度を算出し、下記基準に従って、細線再現性を評価した。
【0132】
平均線幅Wave=(W1+W2+・・・+W50)/50×100
(W1、W2、・・・、はそれぞれ1箇所目の測定位置の線幅、2箇所目の測定位置の線幅、・・・、を表す。)
線幅ばらつき度=(|W1−Wave|+|W2−Wave|+・・・+|W50−Wave|)/50×100
(線幅ばらつき度が小さいほど、線幅が均一であり、好ましい。)
〈評価基準〉
○:線幅ばらつき度が、1%未満である
△:線幅ばらつき度が、1%以上、5%未満である
×:線幅ばらつき度が、5%以上である
〔半導体特性の評価〕
(半導体素子の作製)
ゲート電極としての比抵抗0.01Ω・cmのSiウェハーに、厚さ200nmの熱酸化膜を形成してゲート絶縁層とした後、オクタデシルトリクロロシランによる表面処理を行った。
【0133】
このような表面処理を行ったSiウェハー上に、マスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。ソースおよびドレイン電極は幅100μm、厚さ200nmで、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmになるように作製した。
【0134】
図6に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置に装填し、上記で作製したインク1〜6を用いて、ソースおよびドレイン電極間に、着弾させた。滴吐出ヘッド内に設けられた圧電素子の駆動電圧は、吐出孔から液体が隆起するが液滴が形成されること無く吐出孔内に戻る最大電圧の1.1倍に、静電力は1kVにそれぞれ設定した。自然乾燥させ、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。
【0135】
(キャリア移動度及びON/OFF値の評価)
得られた有機薄膜トランジスタについて、各素子のキャリア移動度とON/OFF値を、素子作製直後に測定した。尚、本発明では、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求め、さらに、ドレインバイアス−50Vとし、ゲートバイアス−50V及び0Vにしたときのドレイン電流値の比率からON/OFF比を求め、下記の基準に従って半導体特性の評価を行った。
【0136】
〈評価基準〉
○:キャリア移動度が0.01cm2/Vsec以上で、かつ、ON/OFF比が106以上である
△:キャリア移動度が0.01cm2/Vsec以上、または、ON/OFF比が106以上のどちらか一方を満たす
×:キャリア移動度が0.01cm2/Vsec未満で、かつ、ON/OFF比が106未満である
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
表1に記載の結果より、圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置と本発明のインクを用いた水準は、比較例に対し、サテライト耐性、デキャップ耐性及び細線再現性に優れ、かつ形成した導電性パターンが優れた半導体特性を備えていることが分かる。
【0139】
また、図6で示す圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置に代えて、圧力印加手段のみを有するセイコーエプソン社製のインクジェットプリンターPXG−900を用いて、上記の各評価で用いたのと同様のインク吐出条件になる様改造を行って、上記インク1〜5について同様の評価を行った結果、サテライト耐性、デキャップ耐性及び細線再現性に十分な結果を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明に好ましく適用できる圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置の一例を示した概略断面図である。
【図2】本発明に好ましく適用できるインクジェット記録装置の液滴吐出ヘッドの一例を示す模式図である。
【図3】本発明に好ましく適用できるインクジェット記録装置の液滴吐出ヘッドの一例の断面を示す模式図である。
【図4】液滴吐出の際の駆動電圧Veの波形の一例を示す模式図である。
【図5】液滴吐出の際の駆動電圧Veの波形の他の一例を示す模式図である。
【図6】本発明に好ましく適用できるインクジェット記録装置の全体構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0141】
A インクジェット式記録ヘッド
1 ノズルプレート
2 ボディプレート
3 圧力発生手段
11 インク吐出のための吐出孔
21 インク供給口
22 共通インク室溝
23 インク供給路溝
24 圧力室となる圧力室溝
60 液体吐出装置
120 導電性インク吐出装置
121 ノズル
122 ノズル内流路
123 対向電極
124 インク室
125 吐出電圧印加手段
126 ノズルプレート
127 供給路
128 吐出電極
130 バイアス電源
K インク受容基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置により吐出してパターン像を形成するのに用いるインクジェットインクであって、有機半導体化合物、比誘電率が10以下の有機溶媒、及び下記一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするインクジェットインク。
【化1】

〔式中、Q1は窒素原子と共に5または6員環の芳香族カチオンを形成する原子団を表す。R1は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。X-はアニオンを表す。〕
【化2】

〔式中、A1は窒素原子またはリン原子を表す。R2〜R5は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。X-はアニオンを表す。〕
【化3】

〔式中、R6〜R11は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。X-はアニオンを表す。〕
一般式(4)
+12131415・X-
〔式中、R12〜R15は、各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、複素環基またはアラルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。X-はアニオンを表す。〕
【化4】

〔式中、X及びYは、各々炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。k及びiは、各々0または1〜4の正整数を、n及びmは、各々3〜7の正整数を表し、Aは酸成分を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)〜(5)で表されるイオン性液体が、炭素数が10以上、20以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記有機半導体化合物が、6,13−ビストリイソプロピルシリルエチニルペンタセン、または、1,3,6−N−スルフィニルアセトアミドペンタセンであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記比誘電率が10以下の有機溶媒の沸点が、150℃以上、250℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインクをインクジェット記録装置より吐出して導電性パターンを作製する導電性パターン作製方法であって、該インクジェット記録装置は、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、圧力発生素子に電圧を印加する電圧印加手段、及び静電力を用いた電界印加手段を有することを特徴とする導電性パターン作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−120631(P2009−120631A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293021(P2007−293021)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】