インクジェットプリンタ、及びそのインク循環方法
【課題】印字を行いながらインク循環させるモードと印字を行わずにインク循環させるモードの2つの循環モードを有するインクジェットプリンタにおいて、ポンプの寿命を延命し、効率的にインク循環を行うことが可能なインクジェットプリンタ、及びその循環方法を提供する。
【解決手段】第1のタンクと第2のタンク間をインク循環させるインク循環経路上のインク供給側に設けたインクヘッドと、前記2タンクから第1タンクにインクを揚送するインク回収側に設けたポンプと、各第1、第2のタンク内のインク量を示すインク液面の高さをそれぞれに検出する液面検出部とを備え、インク吐出時にインク循環を行う第1のモードと、非インク吐出時にインク循環を行う第2のモードを有し、第2のモード時における第1、第2のタンク内の液面の高さを示す検出信号を取り込む時間間隔を第1のモード時よりも時間間隔を長く設定し、ポンプの駆動・停止を制御する。
【解決手段】第1のタンクと第2のタンク間をインク循環させるインク循環経路上のインク供給側に設けたインクヘッドと、前記2タンクから第1タンクにインクを揚送するインク回収側に設けたポンプと、各第1、第2のタンク内のインク量を示すインク液面の高さをそれぞれに検出する液面検出部とを備え、インク吐出時にインク循環を行う第1のモードと、非インク吐出時にインク循環を行う第2のモードを有し、第2のモード時における第1、第2のタンク内の液面の高さを示す検出信号を取り込む時間間隔を第1のモード時よりも時間間隔を長く設定し、ポンプの駆動・停止を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク循環機構を備えるインクジェットプリンタ、及びそのインク循環方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、サーマルヘッド方式或いは電気機械変換素子(ピエゾ)方式等のインクヘッドを搭載し、このインクヘッドにより記録媒体上にインクを吐出して画像の記録を行うインクジェットプリンタがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクを循環させながら印字を行うインクジェットプリンタが提案されている。このインクジェットプリンタは、インクを吐出するヘッドユニットと、ヘッドユニットにインクを供給する上部タンクと、ヘッドユニットで吐出されなかったインクを回収する下部タンクと、下部タンクから上部タンクにインクを戻すためのポンプが配置され、これらの間をチューブ等のインク流路で接続してインクを循環させるインク経路を構築している。
【0004】
このような特許文献1のインクジェットプリンタは、例えば、インクの温度が印字保証範囲外にある場合、印字を行わずにインクを循環させ、インクの冷却、又は加熱を行っている。そして、インクの温度が印字保証範囲内になると印字を開始している。つまり、特許文献1では、印字を行いながらインクを循環させるモードと、印字を行わずにインクを循環させるモードとの、2つの循環モードを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−137164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、インク経路内でインクを循環させる場合、ヘッドユニット(インクヘッド)からインクが垂れ落ちないようにする必要がある。そのため、特許文献1では、上部タンク及び下部タンク内のインク量(インク液面)を監視し、このインク液面の状態に基づいてポンプの駆動を制御することで、2つのタンク内のインク液面を略一定に保ち、ヘッドユニットに負圧を掛けている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、前述した2つの循環モードで同じようにポンプの駆動制御を行っているため、ポンプの駆動・停止の回数が必要以上に多くなり、例えば、ポンプの寿命を縮める一因となる。
【0008】
そこで本発明は、印字を行いながらインクを循環させるモードと印字を行わずにインクを循環させるモードとの2つの循環モードを有するインクジェットプリンタにおいて、ポンプの寿命を延命し、効率的にインク循環を行うことが可能なインクジェットプリンタ、及びその循環方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態のインクジェットプリンタは、記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、前記インクヘッドにインクを供給する第1のタンクと、前記インクヘッドから吐出されず排出されたインクを回収する第2のタンクと、前記第2のタンクに貯留されたインクを揚送して前記第1のタンクに復帰させるポンプと、前記第1のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第1の液面検出部と、前記第2のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第2の液面検出部と、前記第1のタンクから前記インクヘッドを経て、前記第2のタンクへのインク流路となる第1のインク経路及び、前記第2のタンクから前記ポンプを経て、前記第1のタンクへのインク流路となる第2のインク経路からなるインク循環経路と、画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時における前記第1の液面検出部及び前記第2の液面検出部からの各検出信号の取り込む時間間隔を前記第1のモード時における検出信号の取り込み時間間隔よりも長く設定し、取り込み時間間隔で得られた検出信号に基づき、前記ポンプの駆動・停止を制御するインク循環制御部と、を具備する。
【0010】
更に、本発明に従う実施形態のインクジェットプリンタのインク循環方法は、インクを循環させるインク循環経路上に、インク供給を行う第1のタンクと、供給されたインクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドから回収されたインクを貯留する第2のタンクと、前記第2のタンクに貯留されたインクを前記第1のタンクに揚送して帰還させるポンプとを配置するインクジェットプリンタの駆動方法であって、画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時における前記第1のタンク及び前記第2のタンクに貯留されるインクの液面の高さを検出する時間間隔を、前記第1のモード時における前記インクの液面の高さを検出する時間間隔よりも長く設定し、異なる時間間隔で得られた検出信号に基づき、前記ポンプの駆動・停止を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印字を行いながらインクを循環させるモードと印字を行わずにインクを循環させるモードとの2つの循環モードを有するインクジェットプリンタにおいて、ポンプの寿命を延命し、効率的にインク循環を行うことが可能なインクジェットプリンタ、及びその循環方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェットプリンタのインク経路及び、大気経路を示す概略図である。
【図2】図2は、図1におけるインク循環経路のみを示す図である。
【図3】図3は、第1の実施形態の制御部の構成例を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態におけるインク循環に関わる状態遷移図を示している。
【図5】図5は、第1の実施形態におけるインク循環制御部によるポンプ駆動について説明するためのタイミングチャートである。
【図6】図6(a),(b),(c),(d)は、タンク内の液面状態を示す図である。
【図7】図7は、第2の実施形態の制御部の構成例を示す図である。
【図8】図8は、第2の実施形態におけるインク循環制御部によるポンプ駆動(駆動開始遅延)について説明するためのタイミングチャートである。
【図9】図9(a),(b)は、タンク内の液面状態を示す図である。
【図10】図10は、第2の実施形態におけるインク循環制御部によるポンプ駆動(駆動停止遅延)について説明するためのタイミングチャートである。
【図11】図11(a),(b)は、タンク内の液面状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェットプリンタのインク経路及び、大気経路を示す概略図である。図2は、図1におけるインク循環経路のみを示す図である。図1において、記録媒体を供給する供給部、供給された記録媒体を搬送する搬送機構、画像形成された記録媒体を搬出する排出部、及びインクヘッドのクリーニングを行うクリーニング部等、通常のインクジェットプリンタが備えている構成部は、図示を省略している。
【0014】
図1に示すインクジェットプリンタ1は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用いて記録媒体に画像を記録する。図1には、代表的な1色のインクに関わるインク経路のみが示されているが、このプリンタは、インク色毎に同様のインク経路を備えている。
【0015】
インクジェットプリンタ1は、大別すると、画像記録部3と、画像記録部3にインクを循環させるインク循環経路(インク循環部)4と、インク循環部4にインクを補充するインク補充部6と、不要となったインクやオーバーフローしたインクを収容する廃液部7と、インク循環部4内の圧力を調整する圧力調整部10と、インク循環部4における第1のタンク31内部を大気と連通、又は遮断可能とする第1の大気開放部300と、インク循環部4における第2のタンク32内部を大気と連通、又は遮断可能とする第2の大気開放部301と、プリンタ全体を制御する制御部200と、を有している。
【0016】
尚、上述したように、インク循環路に4色のインクを用いるインクジェットプリンタ1は、独立した4系統のインク循環部4、及びインク補充部6を備えている。ただし、本実施形態では、廃液部7、圧力調整部10、第1の大気開放部300の一部、及び第2の大気開放部301の一部は全色で共用されている。
【0017】
まず、図1を参照してインク補充部6について説明する。
インク補充部6は、インクカートリッジトレイ15と、ジョイント部13と、カートリッジ装着判断部14と、補給弁63と、により構成されている。インクカートリッジトレイ15には、インクが充填されたインクカートリッジ5を着脱可能に保持するジョイント部13が設けられている。ジョイント部13は、インクカートリッジ5がインクカートリッジトレイ15における所定の位置に保持された際に、インクカートリッジ5のインク供給口と接続される。また、図1に示すように、ジョイント部13は、インク補給経路としてのチューブを介して第1のタンク31に接続されている。尚、ジョイント部13の接続先は、第1のタンク31に限定されるものではなく、第2のタンク32に接続してもよい。
【0018】
カートリッジ判断部24は、インクカートリッジ5の誤装着を防止し、且つインク残量を検出する。
補給弁63は、ジョイント部13と第1のタンク31とを接続している補給経路上に設けられている。補給弁63の開閉は、詳細は後述するが、第1のタンク31に設けられた液面検出部42(第1の液面検出部)、及び第2のタンク32に設けられた液面検出部45(第2の液面検出部)の検出結果に応じて制御される。
【0019】
次に、図1を参照して廃液部7について説明する。
廃液部7は、廃液タンク22と、この廃液タンク22を置く廃液タンクトレイ21と、廃インク量検知部23と、廃液タンク装着検知部24と、オーバーフロータンク44と、により構成される。
【0020】
廃液タンクトレイ21は、インク循環部4の最下部よりも低い位置に設けられており、この上に廃液タンク22が配置されている。廃インク量検知部23は、廃液タンク22の重量や、廃液タンク22内のインク液面の高さの違いを読み取ることによって、廃液タンク22内に収容されたインク量を検知する。廃液タンク装着検知部24は、光学的な検知により廃液タンク22の装着の有無を検知する。
【0021】
オーバーフロータンク44は、インク循環部4から溢れたインクを回収して、廃液タンク22に流し込む。そのため、廃液タンク22とオーバーフロータンク44とは、廃液経路としてのチューブにより接続されている。このオーバーフロータンク44は、上面が開口したトレイ形状を有しており、大気と連通した状態となっている。そして、このオーバーフロータンク44は、後述するポンプ33が破損してインクが漏れても、そのインクを全て受けるようにポンプ33の下方に設けられている。
【0022】
更に、このオーバーフロータンク44には、第1の大気開放部300、及び第2の大気開放部301が接続されている。第1の大気開放部300は、図1に示すように、大気経路302と、第1のタンク共通気室8と、大気開放弁46と、を有している。
【0023】
大気経路302は、一端側が第1のタンク31内における空気部分と接続され、他端側がオーバーフロータンク44と接続されている。この大気経路302中に、第1のタンク共通気室8及び大気開放弁46が設けられている。より具体的には、大気経路302中において、第1のタンク共通気室8が大気開放弁46よりも第1のタンク31側となるように配置されている。尚、第1のタンク共通気室8は、他色の第1のタンクとも接続されており、第1のタンク共通気室8と大気開放弁46とは、全色で共用されている。
【0024】
このように構成された第1の大気開放部300は、オーバーフロータンク44が大気と連通しているため、大気開放弁46を開閉(開放/遮断)することによって第1のタンク共通気室8の内部を大気と連通、又は遮断させることができる。つまり、全色の第1のタンク31は、第1のタンク共通気室8に接続されているため、大気開放弁46の開閉によって同時に大気と連通、又は遮断されることができる。そして、大気開放弁46は、インク循環部4内でインクを循環させる時は、開放され、インク循環部4内でインクを循環させない時は、閉じられている。
【0025】
また、第1の大気開放部300は、プリンタに異常が発生した際に第1のタンク31からインクが溢れ出したとしても、溢れ出たインクをオーバーフロータンク44に流すことができる。尚、本実施形態では、第1のタンク共通気室8を設けたが、第1のタンク共通気室8は必須構成ではない。つまり、第1の大気開放部300は、第1のタンク31内を大気と連通した状態(大気開放状態)、又は大気から遮断した状態(密閉状態)にさせることができればよい。
【0026】
第2の大気開放部301は、図1に示すように、大気経路303と、第2のタンク共通気室9と、大気開放弁54と、を有している。
大気経路303は、一端側が第2のタンク32内における空気部分と接続され、他端側がオーバーフロータンク44と接続されている。この大気経路303中に、第2のタンク共通気室9及び大気開放弁54が設けられている。より具体的には、大気経路303中において、第2のタンク共通気室9が大気開放弁54よりも第2のタンク32側となるように配置されている。尚、第2のタンク共通気室9は、他色の第2のタンクとも接続されており、第2のタンク共通気室9と大気開放弁54とは、全色で共用されている。
【0027】
このように構成された第2の大気開放部301は、オーバーフロータンク44が大気と連通しているため、大気開放弁54を開閉(開放/遮断)することによって第2のタンク共通気室9の内部を大気と連通、又は遮断させることができる。つまり、全色の第2のタンク32は、第2のタンク共通気室9に接続されているため、大気開放弁54の開閉によって同時に大気と連通、又は遮断されることができる。そして、大気開放弁54は、インク循環部4内でインクを循環させる時は、閉じられ、インク循環部4内でインクを循環させない時は、開放されている。
【0028】
また、第2の大気開放部301は、プリンタに異常が発生した際に第2のタンク32からインクが溢れ出したとしても、溢れ出たインクをオーバーフロータンク44に流すことができる。尚、本実施形態では、第2のタンク共通気室9を設けたが、第2のタンク共通気室9は必須構成ではない。つまり、第2の大気開放部301は、第2のタンク32内を大気と連通した状態(大気開放状態)、又は大気から遮断した状態(密閉状態)にさせることができればよい。
【0029】
次に、図1並びに図2を参照して画像記録部3について説明する。
画像記録部3は、複数のインクヘッド2と、複数のインクヘッド2にインクを分配するためのインク分配器11と、複数のインクヘッド2からインクを回収するインク回収器12と、を備えている。
【0030】
インク分配器11は、第1のタンク31及び複数のインクヘッド2と接続されており、インク回収器12は、第2のタンク32及び複数のインクヘッド2と接続されている。尚、インクヘッド2に流入するインク量は、インクヘッド2のノズルから吐出されるインク量を上回るように設定されている。
【0031】
このため、ノズルから吐出されなかったインクは、インク回収器12で一旦、回収され、チューブを経由して第2のタンク32に流入する。
インクヘッド2内は、インク循環時に、印字動作に適した負圧(本実施形態では、ゲージ圧で約−1kPa)に保たれている。これによって、ノズルには、内側に球面状に凹むメニスカスが形成され、正常な印字動作が可能となっている。そして、インクヘッド2は、外部装置から入力された画像信号に基づいてインクを吐出し、搬送部によって搬送される記録媒体上に画像を記録する。
【0032】
尚、本実施形態では、インク分配器11及びインク回収器12を設けたが、これらは必須ではなく、第1のタンク31及び第2のタンク32から直接インクヘッド2に接続してもよい。また、本実施形態の画像記録部3は、記録媒体の幅(搬送方向に直交する方向)に満たない短尺なインクヘッド2を用いて、これらインクヘッド2を記録媒体の幅方向に、例えば千鳥状に配列してフレーム等に固定し、ラインヘッドを構成している。もちろん、画像記録部3は、ラインタイプ(ラインヘッド)に限らず、記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアルタイプ(シリアルヘッド)であってもよい。
【0033】
次に、図1及び図2を参照して、インク循環部4について説明する。
このインク循環部4は、第1のタンク31、第2のタンク32、ポンプ33、インク温度調整部34、ポンプ33とインク温度調整部34との間に配置された一方向弁64(後述の図2参照)、及びフィルタ35とで構成される。
【0034】
これらの構成部位の内、インクヘッド2のノズルプレート面60、第1のタンク31のインク液面61、及び第2のタンク32のインク液面62のそれぞれの位置関係は、鉛直方向(重力方向)に低い位置から高い位置へ順に、インク液面62、ノズルプレート面60、インク液面61となるように配置されている。
【0035】
インク循環部4は、インク循環時において、第1のタンク31から、インク分配器11、インクヘッド2、インク回収器12、第2のタンク32、ポンプ33、一方向弁64、インク温度調整部34及び、フィルタ35の順にインクが流れ、第1のタンク31へ帰還するよう、チューブにより各々が接続されている。
【0036】
本実施形態におけるインク循環は、画像記録部3が画像記録を行う画像記録時にインク循環経路でインクを循環する第1のモードと、第1のモード以外の時、つまりインクの温度調整(加熱、又は冷却)やフィルタによる異物除去等のインクを吐出しない時にインク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有している。これらのモード選択は、後述するインク循環制御部210(図4)によって制御されている。
【0037】
ここで、インク循環部4の構成について更に詳しく説明する。
図2は、インク循環部4の構成を模式的に且つ、図1よりも拡大して示した図である。尚、図2内の細線上の矢印は、インク循環時において、インク循環部内をインクが循環する時のインクの流れる方向を示している。尚、図1と図2でやや異なるが、図1と図2ともに同一機能部分には同一の番号を付与して示している。
【0038】
以下、図1及び図2を用いて、インク循環部4の詳細について説明する。本実施形態のインク循環部4は、第1の経路40と第2の経路41の2つに大きく分けることができる。第1の経路40は、第1のタンク31からインク分配器11を介して、インクヘッド2にインクを供給する経路をインク供給経路と、インクヘッド2からインク回収器12を介して第2のタンク32へ、吐出されず排出されたインクを回収する経路をインク回収経路とから構成される。第2の経路41は、第2のタンク32のインク出口ポート32bから、一方向弁64、インク温度調整部34(図1参照)、フィルタ35(図1参照)を経由して、第1のタンク31まで、ポンプ33によってインクを揚送して帰還させるインク帰還経路である。
【0039】
まず、第1の経路40の個々の構成について詳細に説明する。
第1のタンク31は、インクヘッド2より重力方向上方に配置されている。この第1のタンク31には、インク入口ポート31aと、インク出口ポート31bと、大気ポート31cと、インクカートリッジ5からの補給インクが流入する補給ポート31dが設けられている。
【0040】
インク入口ポート31aは、チューブを介して後述する第2の経路41側のフィルタ35(図1参照)に接続され、フィルタ35を通過したインクを第1のタンク31内に流入する。
インク出口ポート31bは、チューブを介してインク分配器11に接続され、第1のタンク31内のインクを流出し、インク分配器11に送る。
【0041】
インク分配器11に流入したインクは、それぞれ略均等に各インクヘッド2に分配される。インクヘッド2に流入したインクは、インクヘッド2のノズルプレート面60に形成されたノズルから吐出される。これにより、図示しない搬送機構によって搬送される記録媒体に画像が記録される。
【0042】
ここで、インクヘッド2に流入するインク量は、前述したように、ノズルから吐出されるインク量を上回るよう設定されている。そのため、インクヘッド2内で吐出されなかったインクは、インク回収器12で一旦回収し、チューブを経由して、第2のタンク32に流出する。
【0043】
大気ポート31cは、大気経路302を介して第1のタンク共通気室8に接続されている。補給ポート31dは、補給弁63を介してインクカートリッジ5に接続されている。第1のタンク31には、補給弁63を開くことでインクが補充されるよう構成されている。そのため、インクカートリッジ5は、第1のタンク31より重力方向上方に配置されている。
【0044】
尚、本実施形態では、補給弁63を開くことにより、第1のタンク31へインクの補充を行っているが、インクカートリッジ5から第1のタンク31へインクを送液できれば良く、補給弁63の代わりにポンプ等を用いてインクの送液を行っても構わない。
【0045】
また、第1のタンク31内には、インク液面の位置を所定の高さに保つために、液面検出部42が設けられている。
この液面検出部42は、第1のタンク31内でインクの液面の高さに応じて回動するように支持軸42dにより軸支されたフロート部材42aと、フロート部材42aに取り付けられた磁石42cと、例えば磁気センサからなる液面位置センサ42bとにより構成される。
【0046】
この液面位置センサ42bは、フロート部材42aに取り付けられた磁石42cの磁力を検出することによって、フロート部材42aの位置即ち、第1のタンク31のインク液面61の高さが検出される。このように液面検出部42は、第1のタンク31内に貯留されているインク量を所定の量に維持するために設けられている。尚、本実施形態では、液面検出部42を前述のような構成としたが、これに限らず、第1のタンク31内に貯留されているインクの液面を検出することができればよく、光学センサ等を用いてもよい。
【0047】
第2のタンク32は、インクヘッド2より重力方向下方に配置されている。この第2のタンク32には、インク回収器12からチューブを介してインクを回収するインク入口ポート32aと、ポンプ33にインクを送り出すインク出口ポート32bと、第2のタンク共通気室9に接続されている大気ポート32cとが設けられている。また、第2のタンク32内には、インク液面の位置を所定の高さに保つために、第1のタンク31と同様、液面検出部45が設けられている。
【0048】
この液面検出部45は、第2のタンク32内でインクの液面の高さに応じて回動するように支持軸45dにより軸支されたフロート部材45aと、フロート部材45aに取り付けられた磁石45cと、例えば磁気センサからなる液面位置センサ45bとにより構成される。
【0049】
液面位置センサ45bは、フロート部材45aに取り付けられた磁石45cを検出することによって、フロート部材45aの位置即ち、第2のタンク32のインク液面62の高さが検出される。このように液面検出部45は、第2のタンク32内に貯留されているインク量を所定の量に維持するために設けられている。尚、本実施形態では、液面検出部45を前述のような構成としたが、これに限らず、第2のタンク32内に貯留されているインクの液面を検出することができればよく、光学センサ等を用いてもよい。また、本実施形態では、フロート部材42a,45aは、軸支されて液面の高さに応じて回動するように構成されているが、フロート部材が液面と直交する方向に立設された軸に嵌合して昇降する構成であっても良い。
【0050】
次に、第2の経路41の個々の構成について詳細に説明する。
ポンプ33は、第2のタンク32で回収したインクを第1のタンク31に送る。このポンプ33の駆動又は停止は、インク液面61、及びインク液面62の高さを所望の範囲に維持するように、液面検出部42、及び液面検出部45の検出結果に応じて行われる。
【0051】
本実施形態では、ポンプ33の送液能力は、第2のタンク32に流入してくるインク量よりも、多くのインクを第1のタンク31へと送液可能に設計されている。これは、第2のタンク32のオーバーフローを防止するためである。
【0052】
ポンプ33のインク排出側(第1のタンク31への送液側の径路)には、一方向弁64が接続され、第1のタンク31のインク液面61と、第2のタンク32のインク液面62との高低差によるインクの逆流(第1のタンク31から第2のタンク32への逆流)を防止している。
【0053】
すなわち、前述したようにポンプ33の送液能力は、第1のタンク31からインクヘッド2を経由し、第2のタンク32に流れ落ちる量よりも高く設定されているため、インク循環動作が行われた際、後述するように、ポンプ33の動作は、間欠動作を行うことになる。ポンプ33が停止した際には、第1のタンク31から第2のタンク32へインクが逆流するため、この流れを一方向弁64は防止している。
【0054】
インク温度調整部34は、インク循環部4内を流れるインクを加温、及び/又は、冷却する。すなわち、インク温度調整部34は、インク循環部4内を流れるインクの温度を画像記録可能な所望の温度に制御する。尚、各インクヘッド2、又はその近傍のインク流路には、インク温度調整部34を制御するために温度センサ40が配置されている。
フィルタ35は、インクヘッド2に供給されるインクに含まれる異物を除去し、インクヘッド2に形成されたノズル孔の目詰まりなどに起因する記録不良をなくすために設けられている。
【0055】
次に、図1を参照して圧力調整部10について説明する。
圧力調整部10は、ベローズ51、錘52及びベローズ昇降機構53で構成される。ベローズ51は、第2のタンク共通気室9にチューブを介して接続されている。また、ベローズ51には、錘52が取り付けられている。この錘52は、ベローズ昇降機構53によって昇降する。つまり、ベローズ昇降機構53が上昇すると、ベローズ51は縮み、ベローズ昇降機構53が下降すると、ベローズ51は伸長する。尚、ベローズ51を縮めさせた状態のベローズ昇降機構53の位置を待機位置とする。また、ベローズ51を伸長させた状態のベローズ昇降機構53の位置を負圧生成位置とする。
【0056】
ここで、大気開放弁54を閉じると、第2のタンク32の空気部分、第2のタンク共通気室9、及びベローズ51の内部は連通しつつ、外部とは閉じられた空間となる。この状態でベローズ51を伸縮させると、この閉じられた空間の体積が増減する。これによって、全色の第2のタンク32内の圧力は、同時に変化する。
【0057】
即ち、大気開放弁54を閉じた状態でベローズ昇降機構53を待機位置から負圧生成位置に移動させると、ベローズ51が錘52の重さによって下方に引っ張られ、閉じられた空間の体積が増加する。これにより、第2のタンク共通気室9内には、錘52に加わる重力と釣り合う大きさの負圧がかかる。
【0058】
第2のタンク共通気室9は、第2のタンク32と連通している。そのため、第2のタンク32には、第2のタンク共通気室9と同じ負圧がかかる。更に、第2のタンク32は、チューブを介してインクヘッド2と連通しているため、インクヘッド2にも同じ負圧がかかる。この負圧は、インクヘッド2内部に、記録に適した圧(例えば、インク吐出時で、ノズル圧が約−1kPa)が加わるように設定されている。そして、この圧により、ノズル孔にメニスカスが形成される。
【0059】
尚、本実施形態では、圧力調整部10を設けているが、この圧力調整部10は、必須構成ではない。圧力調整部10を設けない場合、例えば、インク循環時に大気開放弁46及び大気開放弁54を開放し、第1のタンク31の液面とインクヘッド2のノズル面60との高低差、及び第2のタンク32の液面とインクヘッド2のノズル面60との高低差によってインクヘッド2に所定の負圧をかけてもよい。要は、2つのタンク(第1のタンク31、第2のタンク32)の間でインクを循環させ、画像記録を行えればよい。
【0060】
制御部200は、図1に示すように、少なくともインク循環を制御するためのインク循環制御部210を有している。このインク循環制御部210は、図3に示すように、圧力制御部220と、状態判断部230と、監視部240と、駆動判断部250と、を有している。
【0061】
圧力制御部220は、インク循環を開始させる際、大気開放弁46を開放し、第1のタンク31内を大気開放状態にすると共に、大気開放弁54を閉じ、圧力調整部10により第2のタンク32内の圧力を所定の負圧状態にする。これにより、インクヘッド2には、所定の負圧がかかると共に、第1のタンク31のインクが高低差によって第2のタンク32へと流れ落ちる。尚、圧力制御部220は、インク循環を停止する時に大気開放弁46を閉じると共に、大気開放弁54を開放する。これによって、インクヘッド2には、第2のタンク32内のインク液面との高低差によって所定の負圧がかかる。
【0062】
監視部240は、液面検出部42及び液面検出部45がON状態かOFF状態かの検出信号を予め設定した時間間隔(又は、周期)で取り込んで監視する。詳細には、液面検出部42及び液面検出部45は、常にON状態かOFF状態かの検出信号を出力し続けている。そして、監視部240は、上記検出信号を予め設定した時間間隔(又は、周期)で取り込み、第1のタンク31及び第2のタンク32のインク液面の状態を監視している。なお、ON状態とは、インクの液面が所望の位置に達している状態をいい、OFF状態とは、インクの液面が所望の位置に達していない状態をいう。
【0063】
この状態判断部230は、インク循環を開始させる際、記録命令の有無によって、監視部240が液面検出部42及び液面検出部45をどの程度の頻度で監視を行うべきかを設定する。詳細には、状態判断部230は、印字を行いながらインクを循環させる第1のモードかインクの温度調整やフィルタによる異物除去等を行うために印字を行わずにインクを循環させる第2のモードかを判断する。そして、状態判断部230は、監視部240に対して、モードに応じて監視部240が液面検出部42及び液面検出部45の検出信号を監視する時間間隔(又は、周期)を設定する。つまり、状態判断部230は、第1のモードの場合、監視部240が第1の時間間隔(又は、第1の周期)で液面検出部42及び液面検出部45を監視するように設定し、第2のモードの場合、監視部240が上記第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔(又は、第2の周期)で液面検出部42及び液面検出部45を監視するように設定する。なお、第1の時間間隔と第2の時間間隔は、不図示の記憶部に記憶されている。
【0064】
駆動判断部250は、監視部240の液面検知に応じてポンプ33及び補給弁63を駆動すべきかどうかの判断を行う。詳細には、駆動判断部250は、監視部240によって液面検出部42及び液面検出部45のいずれか一方、又は両方がON状態であると検出した時にポンプ33を停止し、液面検出部42及び液面検出部45の両方がOFF状態であると検出した時にポンプ33を駆動する、又は、監視部240によって液面検出部42及び液面検出部45のいずれか一方、又は両方がOFF状態であると検出した時にポンプ33を駆動し、液面検出部42及び液面検出部45の両方がON状態であると検出した時にポンプ33を停止する。
【0065】
また、駆動判断部250は、監視部240によって液面検出部42及び液面検出部45のいずれか一方、又は両方がON状態であると検出した時に補給弁63を閉鎖し、液面検出部42及び液面検出部45の両方がOFF状態であると検出した時に補給弁63を開放する、又は、監視部240によって液面検出部42及び液面検出部45のいずれか一方、又は両方がOFF状態であると検出した時に補給弁63を開放し、液面検出部42及び液面検出部45の両方がON状態であると検出した時に補給弁63を閉鎖する。
【0066】
次に、本実施形態におけるインクの循環動作、及びインク補給動作に関わるポンプ33と補給弁63の動作の詳細について、図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態におけるインク循環に関わる状態遷移図を示している。この状態遷移図は、上述したインク循環動作中に、第1のタンク31及び第2のタンク32の両液面検出部42及び45で検知される条件(ON又は、OFF)別に制御されるポンプ33の動作、及び補給弁63の動作を示している。
【0067】
そして、図4に示す状態遷移図の液面検出部42がONとは、第1のタンク31内のインク液面が所望の位置に達している(所望量のインクが貯留されている)状態、つまりインク液面61以上の状態を示している。一方、液面検出部42がOFFとは、第1のタンク31内のインク液面が所望の位置に達してない(所望量のインクが貯留されていない)状態、つまりインク液面61未満の状態を示している。
【0068】
また、図4に示す状態遷移図の液面検出部45がONとは、第2のタンク32内のインク液面が所望の位置に達している(所望量のインクが貯留されている)状態、つまりインク液面62以上の状態を示している。一方、液面検出部45がOFFとは、第2のタンク32内のインク液面が所望の位置に達してない(所望量のインクが貯留されていない)状態、つまりインク液面62未満の状態を示している。
【0069】
また、ポンプ33がOFFとは、ポンプ33が停止した状態、つまり第2のタンク32から第1のタンク31にインクを送液しない状態を示している。また、ポンプ33がONとは、ポンプ33が駆動された状態、つまり第2のタンク32から第1のタンク31にインクが送液する状態を示している。
【0070】
更に、補給弁63がOFFとは、補給弁63が閉じており、第1のタンク31内にインクが供給されない状態を示している。また、補給弁63がONとは、補給弁63が開いており、第1のタンク31内にインクが供給される状態を示している。
【0071】
図4に示す状態遷移図の状態遷移について更に説明する。
図4に示す状態遷移図において、監視部240が第1の液面検出部42がON状態である検出信号を検出している時は、監視部240が第2の液面検出部45がON状態である検出信号を検出している時(第1の状態66)、又はOFF状態である検出信号を検出している時(第2の状態67)に関わらず、駆動判断部250は、ポンプ33をOFF、且つ補給弁63をOFFの状態となるように制御される。
【0072】
また、監視部240が第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を検出している時、且つ、監視部240が第2の液面検出部45がON状態である検出信号を検出している時(第3の状態68)は、駆動判断部250がポンプ33をON、且つ補給弁63をOFFの状態となるように制御される。一方、監視部240が第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を検出している時、且つ、監視部240が第2の液面検出部45がOFF状態である検出信号を検出している時(第4の状態69)は、駆動判断部250がポンプ33をOFF、且つ補給弁63をONの状態となるように制御される。
【0073】
次に、状態判断部230、監視部240、駆動判断部250の動作について図5に示すタイミングチャートを用いて詳細に説明する。以下、記録命令(又は、印字命令)がある場合を<記録時又は、インク吐出時>とし、記録命令が無い場合を<非記録時又は、非インク吐出時>とする。なお、図5では、第1の液面検出部42の検出信号、第1の液面検出部42の検出信号を監視する時間間隔、ポンプ33の駆動状態(駆動、又は停止)のみを示し、第2の液面検出部45の検出信号、補給弁63の駆動状態(開放、又は閉鎖)については省略している。また、初期状態として第1の液面検出部42及び第2の液面検出部45がON状態からインク循環がスタートするもとする。
【0074】
状態判断部230によって印字を行いながらインクを循環させる第1のモードと判断された場合、第1の液面検出部42の検出信号、第1の液面検出部42の検出信号を監視する時間間隔、及びポンプ33の駆動状態のそれぞれは、図5a、図5c、図5eに示すようになる。一方、状態判断部230によってインクの温度調整やフィルタによる異物除去等を行うために印字を行わずにインクを循環させる第2のモードと判断された場合、第1の液面検出部42の検出信号、第1の液面検出部42の検出信号を監視する時間間隔、及びポンプ33の駆動状態のそれぞれは、図5b、図5d、図5fに示すようになる。
【0075】
まず、状態判断部230によって第1のモードと判断された時について説明する。
第1のモード時は、インクを循環しながらインクヘッド2からインクを吐出させるが、液面61と液面62が安定していなければ、インクヘッド2にかかる圧力が安定せず、吐出ムラが生じてしまう。換言すれば、第1のタンク31のインク液面及び第2のタンク32のインク液面の変動量が大きいと、インクヘッド2にかかる圧力が変化し、高画質な画像を記録することができない。
【0076】
そこで、状態判断部230は、第1のモード時は、液面61と液面62を安定させるために、図5cに示すように、監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を第1の時間間隔で監視するように設定する。本実施形態では、この第1の時間間隔を、例えば、50msに設定している。
【0077】
これにより、監視部240は、頻繁に液面状態(第1の液面検出部42の検出信号)を監視し、液面61の低下を即座に検知することができる。つまり、液面61がOFF状態になると、監視部240によって即座に液面61がOFF状態である検出信号を検出し、駆動判断部250によって即座にポンプ33を駆動させることができる(状態100)。
【0078】
また、ポンプ33が駆動したことにより、上昇した液面61を即座に検知して、ポンプ33を停止させることができる(状態101)。このような検出と駆動を繰り返すことで、図6(a),(b)に示す状態100,101のように、液面検出部42の近傍の狭い変動範囲で液面61を安定させることができる。
【0079】
次に、状態判断部230によって第2のモードと判断された時について説明する。
第2のモードは、インク温度調整部34によるインクの加温・冷却や、フィルタ35による異物除去を目的とした循環であり、インク吐出を行うことはない。このため、特に、正常なメニスカスを維持しなくとも、インクが垂れ落ちない状態を維持できれば、頻繁に液面状態を監視させる必要は無い。そこで、状態判断部230は、第2のモード時は、図5dに示すように、監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を第2の時間間隔で監視するように設定する。この第2の時間間隔は、第1の時間間隔より長くなっている。本実施形態では、この第2の時間間隔を、例えば、250msに設定している。
【0080】
このため、第2のモード時では、図5bに示すように、第1の液面検出部42がOFF状態の検出信号を出力していても、監視部240が図5dに示すタイミングで第1の液面検出部42の検出信号を取り込みに行くため、すぐにポンプ33は駆動されず、停止したままである。換言すれば、第1のモード時では、監視部240が頻繁に液面状態を監視しているため、状態100の時点で第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を読み取ることができるが、第2のモード時では、監視部240が第1のモード時よりも第1の液面検出部42を監視する時間間隔が長いため、状態102の時点で第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を読み取り、ポンプ33が駆動される。そのため、第1のタンク31の液面61は、図6(c)に示すように、第1のモード時(図6(a))より液面が低下する。
【0081】
また、ポンプ33が駆動したことにより液面が上昇するが、第2のモード時では、図5bに示すように、第1の液面検出部42がON状態の検出信号を出力したとしても、監視部240が図5dに示すタイミングで第1の液面検出部42の検出信号を取り込みに行くため、すぐにポンプ33は停止されず、駆動したままである。換言すれば、第1のモード時では、監視部240が頻繁に液面状態を監視しているため、状態101の時点で第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を読み取ることができるが、第2のモード時では、監視部240が第1のモード時よりも第1の液面検出部42を監視する時間間隔が長いため、状態103の時点で第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を読み取り、ポンプ33が停止される。そのため、第1のタンク31の液面61は、図6(d)に示すように、第1のモード時(図6(b))より液面が上昇する。
【0082】
このように、第2のモード時では、図6(c),(d)の状態102,状態103に示すように、液面の高さが大きく変動するが、ポンプ33のON/OFF回数を必要以上に多くせずにインク循環を行うことができる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、印字を行いながらインクを循環させるモードと印字を行わずにインクを循環させるモードとで、液面検出部の検出信号を取り込む時間間隔を変えることにより、タンク内の液面変動量を異ならせる。これによって、総計的なポンプの駆動・停止の回数を減少させることができ、ポンプ駆動の寿命を延命させることができると共に、効率的にインクを循環させることができる。
【0084】
<第2に実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図7において、本実施形態は、前述した第1の実施形態の構成(図1)のインク循環制御部210に遅延部260を更に設けることにより、ポンプの駆動・停止を遅延させる例である。本実施形態における遅延部以外の構成は、前述した第1の実施形態の構成(図1)と同等であり、同じ構成部位には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0085】
前述した第1の実施形態では、第1のモード時と第2のモード時とで、監視部240が液面検出部の検出信号を取り込む時間間隔を切り替え、ポンプの駆動・停止の回数を減少させている。これに対して、本実施形態では、第1のモード時と第2のモード時とで、監視部240が液面検出部の検出信号を取り込む時間間隔は同じにするが、第2のモード時では、監視部240が検出信号を取り込んだ後、予め設定した時間を遅延した後、ポンプ33の駆動、又は停止を行う。
【0086】
通常、インク温度調整部34によるインクの加温・冷却や、フィルタ35による異物除去を目的としたインク循環においては、特にインク吐出は行わないため、頻繁に液面状態を監視させる必要は無い。
【0087】
そこで本実施形態では、状態判断部230によって第2のモードと判断された場合、監視部240の出力信号(液面検出部42及び液面検出部45がON/OFF状態を示唆する信号)を遅延部260に入力する。遅延部260は、予め設定した時間T(ms)を経過した後、駆動判断部250に監視部240の検出信号を出力する。駆動判断部250は、入力された監視部240の検出信号が示唆する液面状態に応じてポンプ33を駆動すべきか否か又は駆動を停止するか否か判断を行う。
【0088】
図8及び図10に示すタイミングチャートと、図9(a),(b)及び図11(a),(b)に示す液面状態を参照して、ポンプ33の駆動について説明する。図8は、監視部240がOFF状態である検出信号を取り込んでから、所定の時間だけ遅延させてからポンプ33の駆動を開始する例であり、図10は、監視部240がON状態である検出信号を取り込んでから、所定の時間だけ遅延させてからポンプ33の駆動を停止させる例である。
【0089】
まず、図8及び図9について説明する。
状態判断部230が第1のモードと判断した場合は、前述した第1の実施形態と同様である。つまり、監視部240は、図8cに示すように、第1の液面検出部42の検出信号を、例えば、50msの時間間隔で取り込んでおり、図8a及び図8dに示すように第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を駆動させる。また、図8a及び図8dに示すように第1の液面検出部42がON状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を停止させる。これにより、液面を安定させることができる。
【0090】
一方、状態判断部230が第2のモードと判断した場合、本実施形態では、前述した第1の実施形態と異なり、図8cに示すように、監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を50msの時間間隔で取り込んでいる。つまり、本実施形態では、第1のモード時でも第2のモード時でも監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を取り込む時間間隔は同じとなる。そして、第2のモード時は、図8b及び図8eに示すように第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を監視部240が検出すると、遅延部260によって予め設定された遅延時間Tmsを遅延させた後、駆動判断部250がポンプ33を駆動させる(状態104)。そのため、状態104の時のタンク内の液面は、図9(a)に示すようになる。また、図8b及び図8eに示すように第1の液面検出部42がON状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を停止させる(状態105)。そのため、状態105の時のタンク内の液面は、図9(b)に示すようになる。
【0091】
尚、遅延時間Tmsの設定は、循環する時間当たりのインク量とタンクの容量により決定される。少なくとも最大量のインクが第1のタンク31及び第2のタンク32から流出した場合でも、共に、設定時間内でタンク内のインクが枯渇しないように設定されている。
このように、監視部240が第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を検出した後、遅延部260によって予め設定された遅延時間Tmsを遅延させてから駆動判断部250がポンプ33を駆動させることで、タンク内の液面は、図9(a),(b)に示すように変動する。これによって、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0092】
次に、図10及び図11について説明する。
状態判断部230が第1のモードと判断した場合は、前述した第1の実施形態と同様である。つまり、監視部240は、図10cに示すように、第1の液面検出部42の検出信号を、例えば、50msの時間間隔で取り込んでおり、図10a及び図10dに示すように第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を駆動させる。また、図10a及び図10dに示すように第1の液面検出部42がON状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を停止させる。これにより、液面を安定させることができる。
【0093】
一方、状態判断部230が第2のモードと判断した場合、本実施形態では、前述した第1の実施形態と異なり、図10cに示すように、監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を50msの時間間隔で取り込んでいる。つまり、本実施形態では、第1のモード時でも第2のモード時でも監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を取り込む時間間隔は同じとなる。
【0094】
そして、第2のモード時は、図8b及び図8eに示すように第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を駆動させる(状態106)。そのため、状態106の時のタンク内の液面は、図11(a)に示すようになる。
【0095】
また、図10b及び図10eに示すように第1の液面検出部42がON状態である検出信号を監視部240が検出すると、遅延部260によって予め設定された遅延時間Tmsを遅延させた後、駆動判断部250がポンプ33を停止させる(状態107)。そのため、状態107の時のタンク内の液面は、図10(b)に示すようになる。
【0096】
尚、ポンプ停止に際する遅延時間Tmsの設定は、循環する時間当たりのインク量とタンクの容量により決定される。少なくとも最大量のインクが第1のタンク31及び第2のタンク32に流れ込んだ場合でも、設定時間内でオーバーフローしないように設定されている。
【0097】
このように、監視部240が第1の液面検出部42がON状態である検出信号を検出した後、遅延部260によって予め設定された遅延時間Tmsを遅延させてから駆動判断部250がポンプ33を停止させることで、タンク内の液面は、図11(a),(b)に示すように変動する。これによって、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、図8と図10とを組み合わせて実施してもよい。
【0098】
以上のことから本実施形態でも、印字を行いながらインクを循環させるモードと印字を行わずにインクを循環させるモードとで、ポンプの駆動開始と駆動停止の少なくとも一方を遅延させることによりタンク内の液面変動量を異ならせる。これによって、総計的なポンプの駆動・停止の回数を減少させることができ、ポンプ駆動の寿命を延命させることができると共に、効率的にインクを循環させることができる。
【符号の説明】
【0099】
1…インクジェットプリンタ、2…インクヘッド、3…画像記録部、4…インク循環経路(インク循環部)、5…インクカートリッジ、6…インク補充部、7…廃液部、8…第1のタンク共通気室、9…第2のタンク共通気室、10…圧力調整部、11…インク分配器、12…インク回収器、13…ジョイント部、14…カートリッジ装着判断部、15…インクカートリッジトレイ、21…廃液タンクトレイ、22…廃液タンク、23…廃インク量検知部、24…廃液タンク装着検知部、31…第1のタンク、31a…インク入口ポート、31b…インク出口ポート、31c…大気ポート、31d…補給ポート、32…第2のタンク、32b…インク出口ポート、33…ポンプ、34…インク温度調整部、35…フィルタ、40…第1の経路、41…第2の経路、42,45…液面検出部、42a,45a…フロート部材、42b,45b…液面位置センサ、42c,45c…磁石、42d,45d…支持軸、44…オーバーフロータンク、46…大気開放弁、54…大気開放弁、60…ノズルプレート面、62…インク液面、63…補給弁、64…一方向弁、200…制御部、210…インク循環制御部、220…圧力制御部、230…状態判断部、240…監視部、250…駆動判断部、300…第1の大気開放部、301…第2の大気開放部、303…大気経路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク循環機構を備えるインクジェットプリンタ、及びそのインク循環方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、サーマルヘッド方式或いは電気機械変換素子(ピエゾ)方式等のインクヘッドを搭載し、このインクヘッドにより記録媒体上にインクを吐出して画像の記録を行うインクジェットプリンタがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクを循環させながら印字を行うインクジェットプリンタが提案されている。このインクジェットプリンタは、インクを吐出するヘッドユニットと、ヘッドユニットにインクを供給する上部タンクと、ヘッドユニットで吐出されなかったインクを回収する下部タンクと、下部タンクから上部タンクにインクを戻すためのポンプが配置され、これらの間をチューブ等のインク流路で接続してインクを循環させるインク経路を構築している。
【0004】
このような特許文献1のインクジェットプリンタは、例えば、インクの温度が印字保証範囲外にある場合、印字を行わずにインクを循環させ、インクの冷却、又は加熱を行っている。そして、インクの温度が印字保証範囲内になると印字を開始している。つまり、特許文献1では、印字を行いながらインクを循環させるモードと、印字を行わずにインクを循環させるモードとの、2つの循環モードを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−137164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、インク経路内でインクを循環させる場合、ヘッドユニット(インクヘッド)からインクが垂れ落ちないようにする必要がある。そのため、特許文献1では、上部タンク及び下部タンク内のインク量(インク液面)を監視し、このインク液面の状態に基づいてポンプの駆動を制御することで、2つのタンク内のインク液面を略一定に保ち、ヘッドユニットに負圧を掛けている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、前述した2つの循環モードで同じようにポンプの駆動制御を行っているため、ポンプの駆動・停止の回数が必要以上に多くなり、例えば、ポンプの寿命を縮める一因となる。
【0008】
そこで本発明は、印字を行いながらインクを循環させるモードと印字を行わずにインクを循環させるモードとの2つの循環モードを有するインクジェットプリンタにおいて、ポンプの寿命を延命し、効率的にインク循環を行うことが可能なインクジェットプリンタ、及びその循環方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態のインクジェットプリンタは、記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、前記インクヘッドにインクを供給する第1のタンクと、前記インクヘッドから吐出されず排出されたインクを回収する第2のタンクと、前記第2のタンクに貯留されたインクを揚送して前記第1のタンクに復帰させるポンプと、前記第1のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第1の液面検出部と、前記第2のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第2の液面検出部と、前記第1のタンクから前記インクヘッドを経て、前記第2のタンクへのインク流路となる第1のインク経路及び、前記第2のタンクから前記ポンプを経て、前記第1のタンクへのインク流路となる第2のインク経路からなるインク循環経路と、画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時における前記第1の液面検出部及び前記第2の液面検出部からの各検出信号の取り込む時間間隔を前記第1のモード時における検出信号の取り込み時間間隔よりも長く設定し、取り込み時間間隔で得られた検出信号に基づき、前記ポンプの駆動・停止を制御するインク循環制御部と、を具備する。
【0010】
更に、本発明に従う実施形態のインクジェットプリンタのインク循環方法は、インクを循環させるインク循環経路上に、インク供給を行う第1のタンクと、供給されたインクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドから回収されたインクを貯留する第2のタンクと、前記第2のタンクに貯留されたインクを前記第1のタンクに揚送して帰還させるポンプとを配置するインクジェットプリンタの駆動方法であって、画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時における前記第1のタンク及び前記第2のタンクに貯留されるインクの液面の高さを検出する時間間隔を、前記第1のモード時における前記インクの液面の高さを検出する時間間隔よりも長く設定し、異なる時間間隔で得られた検出信号に基づき、前記ポンプの駆動・停止を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印字を行いながらインクを循環させるモードと印字を行わずにインクを循環させるモードとの2つの循環モードを有するインクジェットプリンタにおいて、ポンプの寿命を延命し、効率的にインク循環を行うことが可能なインクジェットプリンタ、及びその循環方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェットプリンタのインク経路及び、大気経路を示す概略図である。
【図2】図2は、図1におけるインク循環経路のみを示す図である。
【図3】図3は、第1の実施形態の制御部の構成例を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態におけるインク循環に関わる状態遷移図を示している。
【図5】図5は、第1の実施形態におけるインク循環制御部によるポンプ駆動について説明するためのタイミングチャートである。
【図6】図6(a),(b),(c),(d)は、タンク内の液面状態を示す図である。
【図7】図7は、第2の実施形態の制御部の構成例を示す図である。
【図8】図8は、第2の実施形態におけるインク循環制御部によるポンプ駆動(駆動開始遅延)について説明するためのタイミングチャートである。
【図9】図9(a),(b)は、タンク内の液面状態を示す図である。
【図10】図10は、第2の実施形態におけるインク循環制御部によるポンプ駆動(駆動停止遅延)について説明するためのタイミングチャートである。
【図11】図11(a),(b)は、タンク内の液面状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェットプリンタのインク経路及び、大気経路を示す概略図である。図2は、図1におけるインク循環経路のみを示す図である。図1において、記録媒体を供給する供給部、供給された記録媒体を搬送する搬送機構、画像形成された記録媒体を搬出する排出部、及びインクヘッドのクリーニングを行うクリーニング部等、通常のインクジェットプリンタが備えている構成部は、図示を省略している。
【0014】
図1に示すインクジェットプリンタ1は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用いて記録媒体に画像を記録する。図1には、代表的な1色のインクに関わるインク経路のみが示されているが、このプリンタは、インク色毎に同様のインク経路を備えている。
【0015】
インクジェットプリンタ1は、大別すると、画像記録部3と、画像記録部3にインクを循環させるインク循環経路(インク循環部)4と、インク循環部4にインクを補充するインク補充部6と、不要となったインクやオーバーフローしたインクを収容する廃液部7と、インク循環部4内の圧力を調整する圧力調整部10と、インク循環部4における第1のタンク31内部を大気と連通、又は遮断可能とする第1の大気開放部300と、インク循環部4における第2のタンク32内部を大気と連通、又は遮断可能とする第2の大気開放部301と、プリンタ全体を制御する制御部200と、を有している。
【0016】
尚、上述したように、インク循環路に4色のインクを用いるインクジェットプリンタ1は、独立した4系統のインク循環部4、及びインク補充部6を備えている。ただし、本実施形態では、廃液部7、圧力調整部10、第1の大気開放部300の一部、及び第2の大気開放部301の一部は全色で共用されている。
【0017】
まず、図1を参照してインク補充部6について説明する。
インク補充部6は、インクカートリッジトレイ15と、ジョイント部13と、カートリッジ装着判断部14と、補給弁63と、により構成されている。インクカートリッジトレイ15には、インクが充填されたインクカートリッジ5を着脱可能に保持するジョイント部13が設けられている。ジョイント部13は、インクカートリッジ5がインクカートリッジトレイ15における所定の位置に保持された際に、インクカートリッジ5のインク供給口と接続される。また、図1に示すように、ジョイント部13は、インク補給経路としてのチューブを介して第1のタンク31に接続されている。尚、ジョイント部13の接続先は、第1のタンク31に限定されるものではなく、第2のタンク32に接続してもよい。
【0018】
カートリッジ判断部24は、インクカートリッジ5の誤装着を防止し、且つインク残量を検出する。
補給弁63は、ジョイント部13と第1のタンク31とを接続している補給経路上に設けられている。補給弁63の開閉は、詳細は後述するが、第1のタンク31に設けられた液面検出部42(第1の液面検出部)、及び第2のタンク32に設けられた液面検出部45(第2の液面検出部)の検出結果に応じて制御される。
【0019】
次に、図1を参照して廃液部7について説明する。
廃液部7は、廃液タンク22と、この廃液タンク22を置く廃液タンクトレイ21と、廃インク量検知部23と、廃液タンク装着検知部24と、オーバーフロータンク44と、により構成される。
【0020】
廃液タンクトレイ21は、インク循環部4の最下部よりも低い位置に設けられており、この上に廃液タンク22が配置されている。廃インク量検知部23は、廃液タンク22の重量や、廃液タンク22内のインク液面の高さの違いを読み取ることによって、廃液タンク22内に収容されたインク量を検知する。廃液タンク装着検知部24は、光学的な検知により廃液タンク22の装着の有無を検知する。
【0021】
オーバーフロータンク44は、インク循環部4から溢れたインクを回収して、廃液タンク22に流し込む。そのため、廃液タンク22とオーバーフロータンク44とは、廃液経路としてのチューブにより接続されている。このオーバーフロータンク44は、上面が開口したトレイ形状を有しており、大気と連通した状態となっている。そして、このオーバーフロータンク44は、後述するポンプ33が破損してインクが漏れても、そのインクを全て受けるようにポンプ33の下方に設けられている。
【0022】
更に、このオーバーフロータンク44には、第1の大気開放部300、及び第2の大気開放部301が接続されている。第1の大気開放部300は、図1に示すように、大気経路302と、第1のタンク共通気室8と、大気開放弁46と、を有している。
【0023】
大気経路302は、一端側が第1のタンク31内における空気部分と接続され、他端側がオーバーフロータンク44と接続されている。この大気経路302中に、第1のタンク共通気室8及び大気開放弁46が設けられている。より具体的には、大気経路302中において、第1のタンク共通気室8が大気開放弁46よりも第1のタンク31側となるように配置されている。尚、第1のタンク共通気室8は、他色の第1のタンクとも接続されており、第1のタンク共通気室8と大気開放弁46とは、全色で共用されている。
【0024】
このように構成された第1の大気開放部300は、オーバーフロータンク44が大気と連通しているため、大気開放弁46を開閉(開放/遮断)することによって第1のタンク共通気室8の内部を大気と連通、又は遮断させることができる。つまり、全色の第1のタンク31は、第1のタンク共通気室8に接続されているため、大気開放弁46の開閉によって同時に大気と連通、又は遮断されることができる。そして、大気開放弁46は、インク循環部4内でインクを循環させる時は、開放され、インク循環部4内でインクを循環させない時は、閉じられている。
【0025】
また、第1の大気開放部300は、プリンタに異常が発生した際に第1のタンク31からインクが溢れ出したとしても、溢れ出たインクをオーバーフロータンク44に流すことができる。尚、本実施形態では、第1のタンク共通気室8を設けたが、第1のタンク共通気室8は必須構成ではない。つまり、第1の大気開放部300は、第1のタンク31内を大気と連通した状態(大気開放状態)、又は大気から遮断した状態(密閉状態)にさせることができればよい。
【0026】
第2の大気開放部301は、図1に示すように、大気経路303と、第2のタンク共通気室9と、大気開放弁54と、を有している。
大気経路303は、一端側が第2のタンク32内における空気部分と接続され、他端側がオーバーフロータンク44と接続されている。この大気経路303中に、第2のタンク共通気室9及び大気開放弁54が設けられている。より具体的には、大気経路303中において、第2のタンク共通気室9が大気開放弁54よりも第2のタンク32側となるように配置されている。尚、第2のタンク共通気室9は、他色の第2のタンクとも接続されており、第2のタンク共通気室9と大気開放弁54とは、全色で共用されている。
【0027】
このように構成された第2の大気開放部301は、オーバーフロータンク44が大気と連通しているため、大気開放弁54を開閉(開放/遮断)することによって第2のタンク共通気室9の内部を大気と連通、又は遮断させることができる。つまり、全色の第2のタンク32は、第2のタンク共通気室9に接続されているため、大気開放弁54の開閉によって同時に大気と連通、又は遮断されることができる。そして、大気開放弁54は、インク循環部4内でインクを循環させる時は、閉じられ、インク循環部4内でインクを循環させない時は、開放されている。
【0028】
また、第2の大気開放部301は、プリンタに異常が発生した際に第2のタンク32からインクが溢れ出したとしても、溢れ出たインクをオーバーフロータンク44に流すことができる。尚、本実施形態では、第2のタンク共通気室9を設けたが、第2のタンク共通気室9は必須構成ではない。つまり、第2の大気開放部301は、第2のタンク32内を大気と連通した状態(大気開放状態)、又は大気から遮断した状態(密閉状態)にさせることができればよい。
【0029】
次に、図1並びに図2を参照して画像記録部3について説明する。
画像記録部3は、複数のインクヘッド2と、複数のインクヘッド2にインクを分配するためのインク分配器11と、複数のインクヘッド2からインクを回収するインク回収器12と、を備えている。
【0030】
インク分配器11は、第1のタンク31及び複数のインクヘッド2と接続されており、インク回収器12は、第2のタンク32及び複数のインクヘッド2と接続されている。尚、インクヘッド2に流入するインク量は、インクヘッド2のノズルから吐出されるインク量を上回るように設定されている。
【0031】
このため、ノズルから吐出されなかったインクは、インク回収器12で一旦、回収され、チューブを経由して第2のタンク32に流入する。
インクヘッド2内は、インク循環時に、印字動作に適した負圧(本実施形態では、ゲージ圧で約−1kPa)に保たれている。これによって、ノズルには、内側に球面状に凹むメニスカスが形成され、正常な印字動作が可能となっている。そして、インクヘッド2は、外部装置から入力された画像信号に基づいてインクを吐出し、搬送部によって搬送される記録媒体上に画像を記録する。
【0032】
尚、本実施形態では、インク分配器11及びインク回収器12を設けたが、これらは必須ではなく、第1のタンク31及び第2のタンク32から直接インクヘッド2に接続してもよい。また、本実施形態の画像記録部3は、記録媒体の幅(搬送方向に直交する方向)に満たない短尺なインクヘッド2を用いて、これらインクヘッド2を記録媒体の幅方向に、例えば千鳥状に配列してフレーム等に固定し、ラインヘッドを構成している。もちろん、画像記録部3は、ラインタイプ(ラインヘッド)に限らず、記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアルタイプ(シリアルヘッド)であってもよい。
【0033】
次に、図1及び図2を参照して、インク循環部4について説明する。
このインク循環部4は、第1のタンク31、第2のタンク32、ポンプ33、インク温度調整部34、ポンプ33とインク温度調整部34との間に配置された一方向弁64(後述の図2参照)、及びフィルタ35とで構成される。
【0034】
これらの構成部位の内、インクヘッド2のノズルプレート面60、第1のタンク31のインク液面61、及び第2のタンク32のインク液面62のそれぞれの位置関係は、鉛直方向(重力方向)に低い位置から高い位置へ順に、インク液面62、ノズルプレート面60、インク液面61となるように配置されている。
【0035】
インク循環部4は、インク循環時において、第1のタンク31から、インク分配器11、インクヘッド2、インク回収器12、第2のタンク32、ポンプ33、一方向弁64、インク温度調整部34及び、フィルタ35の順にインクが流れ、第1のタンク31へ帰還するよう、チューブにより各々が接続されている。
【0036】
本実施形態におけるインク循環は、画像記録部3が画像記録を行う画像記録時にインク循環経路でインクを循環する第1のモードと、第1のモード以外の時、つまりインクの温度調整(加熱、又は冷却)やフィルタによる異物除去等のインクを吐出しない時にインク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有している。これらのモード選択は、後述するインク循環制御部210(図4)によって制御されている。
【0037】
ここで、インク循環部4の構成について更に詳しく説明する。
図2は、インク循環部4の構成を模式的に且つ、図1よりも拡大して示した図である。尚、図2内の細線上の矢印は、インク循環時において、インク循環部内をインクが循環する時のインクの流れる方向を示している。尚、図1と図2でやや異なるが、図1と図2ともに同一機能部分には同一の番号を付与して示している。
【0038】
以下、図1及び図2を用いて、インク循環部4の詳細について説明する。本実施形態のインク循環部4は、第1の経路40と第2の経路41の2つに大きく分けることができる。第1の経路40は、第1のタンク31からインク分配器11を介して、インクヘッド2にインクを供給する経路をインク供給経路と、インクヘッド2からインク回収器12を介して第2のタンク32へ、吐出されず排出されたインクを回収する経路をインク回収経路とから構成される。第2の経路41は、第2のタンク32のインク出口ポート32bから、一方向弁64、インク温度調整部34(図1参照)、フィルタ35(図1参照)を経由して、第1のタンク31まで、ポンプ33によってインクを揚送して帰還させるインク帰還経路である。
【0039】
まず、第1の経路40の個々の構成について詳細に説明する。
第1のタンク31は、インクヘッド2より重力方向上方に配置されている。この第1のタンク31には、インク入口ポート31aと、インク出口ポート31bと、大気ポート31cと、インクカートリッジ5からの補給インクが流入する補給ポート31dが設けられている。
【0040】
インク入口ポート31aは、チューブを介して後述する第2の経路41側のフィルタ35(図1参照)に接続され、フィルタ35を通過したインクを第1のタンク31内に流入する。
インク出口ポート31bは、チューブを介してインク分配器11に接続され、第1のタンク31内のインクを流出し、インク分配器11に送る。
【0041】
インク分配器11に流入したインクは、それぞれ略均等に各インクヘッド2に分配される。インクヘッド2に流入したインクは、インクヘッド2のノズルプレート面60に形成されたノズルから吐出される。これにより、図示しない搬送機構によって搬送される記録媒体に画像が記録される。
【0042】
ここで、インクヘッド2に流入するインク量は、前述したように、ノズルから吐出されるインク量を上回るよう設定されている。そのため、インクヘッド2内で吐出されなかったインクは、インク回収器12で一旦回収し、チューブを経由して、第2のタンク32に流出する。
【0043】
大気ポート31cは、大気経路302を介して第1のタンク共通気室8に接続されている。補給ポート31dは、補給弁63を介してインクカートリッジ5に接続されている。第1のタンク31には、補給弁63を開くことでインクが補充されるよう構成されている。そのため、インクカートリッジ5は、第1のタンク31より重力方向上方に配置されている。
【0044】
尚、本実施形態では、補給弁63を開くことにより、第1のタンク31へインクの補充を行っているが、インクカートリッジ5から第1のタンク31へインクを送液できれば良く、補給弁63の代わりにポンプ等を用いてインクの送液を行っても構わない。
【0045】
また、第1のタンク31内には、インク液面の位置を所定の高さに保つために、液面検出部42が設けられている。
この液面検出部42は、第1のタンク31内でインクの液面の高さに応じて回動するように支持軸42dにより軸支されたフロート部材42aと、フロート部材42aに取り付けられた磁石42cと、例えば磁気センサからなる液面位置センサ42bとにより構成される。
【0046】
この液面位置センサ42bは、フロート部材42aに取り付けられた磁石42cの磁力を検出することによって、フロート部材42aの位置即ち、第1のタンク31のインク液面61の高さが検出される。このように液面検出部42は、第1のタンク31内に貯留されているインク量を所定の量に維持するために設けられている。尚、本実施形態では、液面検出部42を前述のような構成としたが、これに限らず、第1のタンク31内に貯留されているインクの液面を検出することができればよく、光学センサ等を用いてもよい。
【0047】
第2のタンク32は、インクヘッド2より重力方向下方に配置されている。この第2のタンク32には、インク回収器12からチューブを介してインクを回収するインク入口ポート32aと、ポンプ33にインクを送り出すインク出口ポート32bと、第2のタンク共通気室9に接続されている大気ポート32cとが設けられている。また、第2のタンク32内には、インク液面の位置を所定の高さに保つために、第1のタンク31と同様、液面検出部45が設けられている。
【0048】
この液面検出部45は、第2のタンク32内でインクの液面の高さに応じて回動するように支持軸45dにより軸支されたフロート部材45aと、フロート部材45aに取り付けられた磁石45cと、例えば磁気センサからなる液面位置センサ45bとにより構成される。
【0049】
液面位置センサ45bは、フロート部材45aに取り付けられた磁石45cを検出することによって、フロート部材45aの位置即ち、第2のタンク32のインク液面62の高さが検出される。このように液面検出部45は、第2のタンク32内に貯留されているインク量を所定の量に維持するために設けられている。尚、本実施形態では、液面検出部45を前述のような構成としたが、これに限らず、第2のタンク32内に貯留されているインクの液面を検出することができればよく、光学センサ等を用いてもよい。また、本実施形態では、フロート部材42a,45aは、軸支されて液面の高さに応じて回動するように構成されているが、フロート部材が液面と直交する方向に立設された軸に嵌合して昇降する構成であっても良い。
【0050】
次に、第2の経路41の個々の構成について詳細に説明する。
ポンプ33は、第2のタンク32で回収したインクを第1のタンク31に送る。このポンプ33の駆動又は停止は、インク液面61、及びインク液面62の高さを所望の範囲に維持するように、液面検出部42、及び液面検出部45の検出結果に応じて行われる。
【0051】
本実施形態では、ポンプ33の送液能力は、第2のタンク32に流入してくるインク量よりも、多くのインクを第1のタンク31へと送液可能に設計されている。これは、第2のタンク32のオーバーフローを防止するためである。
【0052】
ポンプ33のインク排出側(第1のタンク31への送液側の径路)には、一方向弁64が接続され、第1のタンク31のインク液面61と、第2のタンク32のインク液面62との高低差によるインクの逆流(第1のタンク31から第2のタンク32への逆流)を防止している。
【0053】
すなわち、前述したようにポンプ33の送液能力は、第1のタンク31からインクヘッド2を経由し、第2のタンク32に流れ落ちる量よりも高く設定されているため、インク循環動作が行われた際、後述するように、ポンプ33の動作は、間欠動作を行うことになる。ポンプ33が停止した際には、第1のタンク31から第2のタンク32へインクが逆流するため、この流れを一方向弁64は防止している。
【0054】
インク温度調整部34は、インク循環部4内を流れるインクを加温、及び/又は、冷却する。すなわち、インク温度調整部34は、インク循環部4内を流れるインクの温度を画像記録可能な所望の温度に制御する。尚、各インクヘッド2、又はその近傍のインク流路には、インク温度調整部34を制御するために温度センサ40が配置されている。
フィルタ35は、インクヘッド2に供給されるインクに含まれる異物を除去し、インクヘッド2に形成されたノズル孔の目詰まりなどに起因する記録不良をなくすために設けられている。
【0055】
次に、図1を参照して圧力調整部10について説明する。
圧力調整部10は、ベローズ51、錘52及びベローズ昇降機構53で構成される。ベローズ51は、第2のタンク共通気室9にチューブを介して接続されている。また、ベローズ51には、錘52が取り付けられている。この錘52は、ベローズ昇降機構53によって昇降する。つまり、ベローズ昇降機構53が上昇すると、ベローズ51は縮み、ベローズ昇降機構53が下降すると、ベローズ51は伸長する。尚、ベローズ51を縮めさせた状態のベローズ昇降機構53の位置を待機位置とする。また、ベローズ51を伸長させた状態のベローズ昇降機構53の位置を負圧生成位置とする。
【0056】
ここで、大気開放弁54を閉じると、第2のタンク32の空気部分、第2のタンク共通気室9、及びベローズ51の内部は連通しつつ、外部とは閉じられた空間となる。この状態でベローズ51を伸縮させると、この閉じられた空間の体積が増減する。これによって、全色の第2のタンク32内の圧力は、同時に変化する。
【0057】
即ち、大気開放弁54を閉じた状態でベローズ昇降機構53を待機位置から負圧生成位置に移動させると、ベローズ51が錘52の重さによって下方に引っ張られ、閉じられた空間の体積が増加する。これにより、第2のタンク共通気室9内には、錘52に加わる重力と釣り合う大きさの負圧がかかる。
【0058】
第2のタンク共通気室9は、第2のタンク32と連通している。そのため、第2のタンク32には、第2のタンク共通気室9と同じ負圧がかかる。更に、第2のタンク32は、チューブを介してインクヘッド2と連通しているため、インクヘッド2にも同じ負圧がかかる。この負圧は、インクヘッド2内部に、記録に適した圧(例えば、インク吐出時で、ノズル圧が約−1kPa)が加わるように設定されている。そして、この圧により、ノズル孔にメニスカスが形成される。
【0059】
尚、本実施形態では、圧力調整部10を設けているが、この圧力調整部10は、必須構成ではない。圧力調整部10を設けない場合、例えば、インク循環時に大気開放弁46及び大気開放弁54を開放し、第1のタンク31の液面とインクヘッド2のノズル面60との高低差、及び第2のタンク32の液面とインクヘッド2のノズル面60との高低差によってインクヘッド2に所定の負圧をかけてもよい。要は、2つのタンク(第1のタンク31、第2のタンク32)の間でインクを循環させ、画像記録を行えればよい。
【0060】
制御部200は、図1に示すように、少なくともインク循環を制御するためのインク循環制御部210を有している。このインク循環制御部210は、図3に示すように、圧力制御部220と、状態判断部230と、監視部240と、駆動判断部250と、を有している。
【0061】
圧力制御部220は、インク循環を開始させる際、大気開放弁46を開放し、第1のタンク31内を大気開放状態にすると共に、大気開放弁54を閉じ、圧力調整部10により第2のタンク32内の圧力を所定の負圧状態にする。これにより、インクヘッド2には、所定の負圧がかかると共に、第1のタンク31のインクが高低差によって第2のタンク32へと流れ落ちる。尚、圧力制御部220は、インク循環を停止する時に大気開放弁46を閉じると共に、大気開放弁54を開放する。これによって、インクヘッド2には、第2のタンク32内のインク液面との高低差によって所定の負圧がかかる。
【0062】
監視部240は、液面検出部42及び液面検出部45がON状態かOFF状態かの検出信号を予め設定した時間間隔(又は、周期)で取り込んで監視する。詳細には、液面検出部42及び液面検出部45は、常にON状態かOFF状態かの検出信号を出力し続けている。そして、監視部240は、上記検出信号を予め設定した時間間隔(又は、周期)で取り込み、第1のタンク31及び第2のタンク32のインク液面の状態を監視している。なお、ON状態とは、インクの液面が所望の位置に達している状態をいい、OFF状態とは、インクの液面が所望の位置に達していない状態をいう。
【0063】
この状態判断部230は、インク循環を開始させる際、記録命令の有無によって、監視部240が液面検出部42及び液面検出部45をどの程度の頻度で監視を行うべきかを設定する。詳細には、状態判断部230は、印字を行いながらインクを循環させる第1のモードかインクの温度調整やフィルタによる異物除去等を行うために印字を行わずにインクを循環させる第2のモードかを判断する。そして、状態判断部230は、監視部240に対して、モードに応じて監視部240が液面検出部42及び液面検出部45の検出信号を監視する時間間隔(又は、周期)を設定する。つまり、状態判断部230は、第1のモードの場合、監視部240が第1の時間間隔(又は、第1の周期)で液面検出部42及び液面検出部45を監視するように設定し、第2のモードの場合、監視部240が上記第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔(又は、第2の周期)で液面検出部42及び液面検出部45を監視するように設定する。なお、第1の時間間隔と第2の時間間隔は、不図示の記憶部に記憶されている。
【0064】
駆動判断部250は、監視部240の液面検知に応じてポンプ33及び補給弁63を駆動すべきかどうかの判断を行う。詳細には、駆動判断部250は、監視部240によって液面検出部42及び液面検出部45のいずれか一方、又は両方がON状態であると検出した時にポンプ33を停止し、液面検出部42及び液面検出部45の両方がOFF状態であると検出した時にポンプ33を駆動する、又は、監視部240によって液面検出部42及び液面検出部45のいずれか一方、又は両方がOFF状態であると検出した時にポンプ33を駆動し、液面検出部42及び液面検出部45の両方がON状態であると検出した時にポンプ33を停止する。
【0065】
また、駆動判断部250は、監視部240によって液面検出部42及び液面検出部45のいずれか一方、又は両方がON状態であると検出した時に補給弁63を閉鎖し、液面検出部42及び液面検出部45の両方がOFF状態であると検出した時に補給弁63を開放する、又は、監視部240によって液面検出部42及び液面検出部45のいずれか一方、又は両方がOFF状態であると検出した時に補給弁63を開放し、液面検出部42及び液面検出部45の両方がON状態であると検出した時に補給弁63を閉鎖する。
【0066】
次に、本実施形態におけるインクの循環動作、及びインク補給動作に関わるポンプ33と補給弁63の動作の詳細について、図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態におけるインク循環に関わる状態遷移図を示している。この状態遷移図は、上述したインク循環動作中に、第1のタンク31及び第2のタンク32の両液面検出部42及び45で検知される条件(ON又は、OFF)別に制御されるポンプ33の動作、及び補給弁63の動作を示している。
【0067】
そして、図4に示す状態遷移図の液面検出部42がONとは、第1のタンク31内のインク液面が所望の位置に達している(所望量のインクが貯留されている)状態、つまりインク液面61以上の状態を示している。一方、液面検出部42がOFFとは、第1のタンク31内のインク液面が所望の位置に達してない(所望量のインクが貯留されていない)状態、つまりインク液面61未満の状態を示している。
【0068】
また、図4に示す状態遷移図の液面検出部45がONとは、第2のタンク32内のインク液面が所望の位置に達している(所望量のインクが貯留されている)状態、つまりインク液面62以上の状態を示している。一方、液面検出部45がOFFとは、第2のタンク32内のインク液面が所望の位置に達してない(所望量のインクが貯留されていない)状態、つまりインク液面62未満の状態を示している。
【0069】
また、ポンプ33がOFFとは、ポンプ33が停止した状態、つまり第2のタンク32から第1のタンク31にインクを送液しない状態を示している。また、ポンプ33がONとは、ポンプ33が駆動された状態、つまり第2のタンク32から第1のタンク31にインクが送液する状態を示している。
【0070】
更に、補給弁63がOFFとは、補給弁63が閉じており、第1のタンク31内にインクが供給されない状態を示している。また、補給弁63がONとは、補給弁63が開いており、第1のタンク31内にインクが供給される状態を示している。
【0071】
図4に示す状態遷移図の状態遷移について更に説明する。
図4に示す状態遷移図において、監視部240が第1の液面検出部42がON状態である検出信号を検出している時は、監視部240が第2の液面検出部45がON状態である検出信号を検出している時(第1の状態66)、又はOFF状態である検出信号を検出している時(第2の状態67)に関わらず、駆動判断部250は、ポンプ33をOFF、且つ補給弁63をOFFの状態となるように制御される。
【0072】
また、監視部240が第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を検出している時、且つ、監視部240が第2の液面検出部45がON状態である検出信号を検出している時(第3の状態68)は、駆動判断部250がポンプ33をON、且つ補給弁63をOFFの状態となるように制御される。一方、監視部240が第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を検出している時、且つ、監視部240が第2の液面検出部45がOFF状態である検出信号を検出している時(第4の状態69)は、駆動判断部250がポンプ33をOFF、且つ補給弁63をONの状態となるように制御される。
【0073】
次に、状態判断部230、監視部240、駆動判断部250の動作について図5に示すタイミングチャートを用いて詳細に説明する。以下、記録命令(又は、印字命令)がある場合を<記録時又は、インク吐出時>とし、記録命令が無い場合を<非記録時又は、非インク吐出時>とする。なお、図5では、第1の液面検出部42の検出信号、第1の液面検出部42の検出信号を監視する時間間隔、ポンプ33の駆動状態(駆動、又は停止)のみを示し、第2の液面検出部45の検出信号、補給弁63の駆動状態(開放、又は閉鎖)については省略している。また、初期状態として第1の液面検出部42及び第2の液面検出部45がON状態からインク循環がスタートするもとする。
【0074】
状態判断部230によって印字を行いながらインクを循環させる第1のモードと判断された場合、第1の液面検出部42の検出信号、第1の液面検出部42の検出信号を監視する時間間隔、及びポンプ33の駆動状態のそれぞれは、図5a、図5c、図5eに示すようになる。一方、状態判断部230によってインクの温度調整やフィルタによる異物除去等を行うために印字を行わずにインクを循環させる第2のモードと判断された場合、第1の液面検出部42の検出信号、第1の液面検出部42の検出信号を監視する時間間隔、及びポンプ33の駆動状態のそれぞれは、図5b、図5d、図5fに示すようになる。
【0075】
まず、状態判断部230によって第1のモードと判断された時について説明する。
第1のモード時は、インクを循環しながらインクヘッド2からインクを吐出させるが、液面61と液面62が安定していなければ、インクヘッド2にかかる圧力が安定せず、吐出ムラが生じてしまう。換言すれば、第1のタンク31のインク液面及び第2のタンク32のインク液面の変動量が大きいと、インクヘッド2にかかる圧力が変化し、高画質な画像を記録することができない。
【0076】
そこで、状態判断部230は、第1のモード時は、液面61と液面62を安定させるために、図5cに示すように、監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を第1の時間間隔で監視するように設定する。本実施形態では、この第1の時間間隔を、例えば、50msに設定している。
【0077】
これにより、監視部240は、頻繁に液面状態(第1の液面検出部42の検出信号)を監視し、液面61の低下を即座に検知することができる。つまり、液面61がOFF状態になると、監視部240によって即座に液面61がOFF状態である検出信号を検出し、駆動判断部250によって即座にポンプ33を駆動させることができる(状態100)。
【0078】
また、ポンプ33が駆動したことにより、上昇した液面61を即座に検知して、ポンプ33を停止させることができる(状態101)。このような検出と駆動を繰り返すことで、図6(a),(b)に示す状態100,101のように、液面検出部42の近傍の狭い変動範囲で液面61を安定させることができる。
【0079】
次に、状態判断部230によって第2のモードと判断された時について説明する。
第2のモードは、インク温度調整部34によるインクの加温・冷却や、フィルタ35による異物除去を目的とした循環であり、インク吐出を行うことはない。このため、特に、正常なメニスカスを維持しなくとも、インクが垂れ落ちない状態を維持できれば、頻繁に液面状態を監視させる必要は無い。そこで、状態判断部230は、第2のモード時は、図5dに示すように、監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を第2の時間間隔で監視するように設定する。この第2の時間間隔は、第1の時間間隔より長くなっている。本実施形態では、この第2の時間間隔を、例えば、250msに設定している。
【0080】
このため、第2のモード時では、図5bに示すように、第1の液面検出部42がOFF状態の検出信号を出力していても、監視部240が図5dに示すタイミングで第1の液面検出部42の検出信号を取り込みに行くため、すぐにポンプ33は駆動されず、停止したままである。換言すれば、第1のモード時では、監視部240が頻繁に液面状態を監視しているため、状態100の時点で第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を読み取ることができるが、第2のモード時では、監視部240が第1のモード時よりも第1の液面検出部42を監視する時間間隔が長いため、状態102の時点で第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を読み取り、ポンプ33が駆動される。そのため、第1のタンク31の液面61は、図6(c)に示すように、第1のモード時(図6(a))より液面が低下する。
【0081】
また、ポンプ33が駆動したことにより液面が上昇するが、第2のモード時では、図5bに示すように、第1の液面検出部42がON状態の検出信号を出力したとしても、監視部240が図5dに示すタイミングで第1の液面検出部42の検出信号を取り込みに行くため、すぐにポンプ33は停止されず、駆動したままである。換言すれば、第1のモード時では、監視部240が頻繁に液面状態を監視しているため、状態101の時点で第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を読み取ることができるが、第2のモード時では、監視部240が第1のモード時よりも第1の液面検出部42を監視する時間間隔が長いため、状態103の時点で第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を読み取り、ポンプ33が停止される。そのため、第1のタンク31の液面61は、図6(d)に示すように、第1のモード時(図6(b))より液面が上昇する。
【0082】
このように、第2のモード時では、図6(c),(d)の状態102,状態103に示すように、液面の高さが大きく変動するが、ポンプ33のON/OFF回数を必要以上に多くせずにインク循環を行うことができる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、印字を行いながらインクを循環させるモードと印字を行わずにインクを循環させるモードとで、液面検出部の検出信号を取り込む時間間隔を変えることにより、タンク内の液面変動量を異ならせる。これによって、総計的なポンプの駆動・停止の回数を減少させることができ、ポンプ駆動の寿命を延命させることができると共に、効率的にインクを循環させることができる。
【0084】
<第2に実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図7において、本実施形態は、前述した第1の実施形態の構成(図1)のインク循環制御部210に遅延部260を更に設けることにより、ポンプの駆動・停止を遅延させる例である。本実施形態における遅延部以外の構成は、前述した第1の実施形態の構成(図1)と同等であり、同じ構成部位には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0085】
前述した第1の実施形態では、第1のモード時と第2のモード時とで、監視部240が液面検出部の検出信号を取り込む時間間隔を切り替え、ポンプの駆動・停止の回数を減少させている。これに対して、本実施形態では、第1のモード時と第2のモード時とで、監視部240が液面検出部の検出信号を取り込む時間間隔は同じにするが、第2のモード時では、監視部240が検出信号を取り込んだ後、予め設定した時間を遅延した後、ポンプ33の駆動、又は停止を行う。
【0086】
通常、インク温度調整部34によるインクの加温・冷却や、フィルタ35による異物除去を目的としたインク循環においては、特にインク吐出は行わないため、頻繁に液面状態を監視させる必要は無い。
【0087】
そこで本実施形態では、状態判断部230によって第2のモードと判断された場合、監視部240の出力信号(液面検出部42及び液面検出部45がON/OFF状態を示唆する信号)を遅延部260に入力する。遅延部260は、予め設定した時間T(ms)を経過した後、駆動判断部250に監視部240の検出信号を出力する。駆動判断部250は、入力された監視部240の検出信号が示唆する液面状態に応じてポンプ33を駆動すべきか否か又は駆動を停止するか否か判断を行う。
【0088】
図8及び図10に示すタイミングチャートと、図9(a),(b)及び図11(a),(b)に示す液面状態を参照して、ポンプ33の駆動について説明する。図8は、監視部240がOFF状態である検出信号を取り込んでから、所定の時間だけ遅延させてからポンプ33の駆動を開始する例であり、図10は、監視部240がON状態である検出信号を取り込んでから、所定の時間だけ遅延させてからポンプ33の駆動を停止させる例である。
【0089】
まず、図8及び図9について説明する。
状態判断部230が第1のモードと判断した場合は、前述した第1の実施形態と同様である。つまり、監視部240は、図8cに示すように、第1の液面検出部42の検出信号を、例えば、50msの時間間隔で取り込んでおり、図8a及び図8dに示すように第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を駆動させる。また、図8a及び図8dに示すように第1の液面検出部42がON状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を停止させる。これにより、液面を安定させることができる。
【0090】
一方、状態判断部230が第2のモードと判断した場合、本実施形態では、前述した第1の実施形態と異なり、図8cに示すように、監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を50msの時間間隔で取り込んでいる。つまり、本実施形態では、第1のモード時でも第2のモード時でも監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を取り込む時間間隔は同じとなる。そして、第2のモード時は、図8b及び図8eに示すように第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を監視部240が検出すると、遅延部260によって予め設定された遅延時間Tmsを遅延させた後、駆動判断部250がポンプ33を駆動させる(状態104)。そのため、状態104の時のタンク内の液面は、図9(a)に示すようになる。また、図8b及び図8eに示すように第1の液面検出部42がON状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を停止させる(状態105)。そのため、状態105の時のタンク内の液面は、図9(b)に示すようになる。
【0091】
尚、遅延時間Tmsの設定は、循環する時間当たりのインク量とタンクの容量により決定される。少なくとも最大量のインクが第1のタンク31及び第2のタンク32から流出した場合でも、共に、設定時間内でタンク内のインクが枯渇しないように設定されている。
このように、監視部240が第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を検出した後、遅延部260によって予め設定された遅延時間Tmsを遅延させてから駆動判断部250がポンプ33を駆動させることで、タンク内の液面は、図9(a),(b)に示すように変動する。これによって、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0092】
次に、図10及び図11について説明する。
状態判断部230が第1のモードと判断した場合は、前述した第1の実施形態と同様である。つまり、監視部240は、図10cに示すように、第1の液面検出部42の検出信号を、例えば、50msの時間間隔で取り込んでおり、図10a及び図10dに示すように第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を駆動させる。また、図10a及び図10dに示すように第1の液面検出部42がON状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を停止させる。これにより、液面を安定させることができる。
【0093】
一方、状態判断部230が第2のモードと判断した場合、本実施形態では、前述した第1の実施形態と異なり、図10cに示すように、監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を50msの時間間隔で取り込んでいる。つまり、本実施形態では、第1のモード時でも第2のモード時でも監視部240が第1の液面検出部42の検出信号を取り込む時間間隔は同じとなる。
【0094】
そして、第2のモード時は、図8b及び図8eに示すように第1の液面検出部42がOFF状態である検出信号を監視部240が検出すると、監視部240は、遅延部260を遅延無く通過させる又は、直接的に駆動判断部250に入力(通知)する。これにより、駆動判断部250は、即座にポンプ33を駆動させる(状態106)。そのため、状態106の時のタンク内の液面は、図11(a)に示すようになる。
【0095】
また、図10b及び図10eに示すように第1の液面検出部42がON状態である検出信号を監視部240が検出すると、遅延部260によって予め設定された遅延時間Tmsを遅延させた後、駆動判断部250がポンプ33を停止させる(状態107)。そのため、状態107の時のタンク内の液面は、図10(b)に示すようになる。
【0096】
尚、ポンプ停止に際する遅延時間Tmsの設定は、循環する時間当たりのインク量とタンクの容量により決定される。少なくとも最大量のインクが第1のタンク31及び第2のタンク32に流れ込んだ場合でも、設定時間内でオーバーフローしないように設定されている。
【0097】
このように、監視部240が第1の液面検出部42がON状態である検出信号を検出した後、遅延部260によって予め設定された遅延時間Tmsを遅延させてから駆動判断部250がポンプ33を停止させることで、タンク内の液面は、図11(a),(b)に示すように変動する。これによって、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、図8と図10とを組み合わせて実施してもよい。
【0098】
以上のことから本実施形態でも、印字を行いながらインクを循環させるモードと印字を行わずにインクを循環させるモードとで、ポンプの駆動開始と駆動停止の少なくとも一方を遅延させることによりタンク内の液面変動量を異ならせる。これによって、総計的なポンプの駆動・停止の回数を減少させることができ、ポンプ駆動の寿命を延命させることができると共に、効率的にインクを循環させることができる。
【符号の説明】
【0099】
1…インクジェットプリンタ、2…インクヘッド、3…画像記録部、4…インク循環経路(インク循環部)、5…インクカートリッジ、6…インク補充部、7…廃液部、8…第1のタンク共通気室、9…第2のタンク共通気室、10…圧力調整部、11…インク分配器、12…インク回収器、13…ジョイント部、14…カートリッジ装着判断部、15…インクカートリッジトレイ、21…廃液タンクトレイ、22…廃液タンク、23…廃インク量検知部、24…廃液タンク装着検知部、31…第1のタンク、31a…インク入口ポート、31b…インク出口ポート、31c…大気ポート、31d…補給ポート、32…第2のタンク、32b…インク出口ポート、33…ポンプ、34…インク温度調整部、35…フィルタ、40…第1の経路、41…第2の経路、42,45…液面検出部、42a,45a…フロート部材、42b,45b…液面位置センサ、42c,45c…磁石、42d,45d…支持軸、44…オーバーフロータンク、46…大気開放弁、54…大気開放弁、60…ノズルプレート面、62…インク液面、63…補給弁、64…一方向弁、200…制御部、210…インク循環制御部、220…圧力制御部、230…状態判断部、240…監視部、250…駆動判断部、300…第1の大気開放部、301…第2の大気開放部、303…大気経路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、
前記インクヘッドにインクを供給する第1のタンクと、
前記インクヘッドから吐出されず排出されたインクを回収する第2のタンクと、
前記第2のタンクに貯留されたインクを揚送して前記第1のタンクに復帰させるポンプと、
前記第1のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第1の液面検出部と、
前記第2のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第2の液面検出部と、
前記第1のタンクから前記インクヘッドを経て、前記第2のタンクへのインク流路となる第1のインク経路及び、前記第2のタンクから前記ポンプを経て、前記第1のタンクへのインク流路となる第2のインク経路からなるインク循環経路と、
画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時における前記第1の液面検出部及び前記第2の液面検出部からの各検出信号の取り込む時間間隔を前記第1のモード時における検出信号の取り込み時間間隔よりも長く設定し、取り込み時間間隔で得られた検出信号に基づき、前記ポンプの駆動・停止を制御するインク循環制御部と、
を具備することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、
前記インクヘッドにインクを供給する第1のタンクと、
前記インクヘッドから吐出されず排出されたインクを回収する第2のタンクと、
前記第2のタンクに貯留されたインクを揚送して前記第1のタンクに復帰させるポンプと、
前記第1のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第1の液面検出部と、
前記第2のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第2の液面検出部と、
前記第1のタンクから前記インクヘッドを経て、前記第2のタンクへのインク流路となる第1のインク経路及び、前記第2のタンクから前記ポンプを経て、前記第1のタンクへのインク流路となる第2のインク経路からなるインク循環経路と、
入力された信号に対して予め定められた遅延時間を遅延させて、前記信号を出力する遅延部と、
画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時には、前記第1の液面検出部及び前記第2の液面検出部による各検出信号を前記遅延部を経由させて、前記ポンプの駆動開始及び駆動停止を遅延させる制御を行うインク循環制御部と、
を具備することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インクジェットプリンタは、更に、
前記インク循環経路内にインク補充経路を通じてインクを補充するインク補充部と、
前記インク補充経路上に設けられ、開閉によりインクの補充又は補充停止を行う補給弁と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の液面検出部と前記第2の液面検出部による検出結果が、共に、前記インク液面の高さが前記予め定められた高さよりも低い場合に、前記補給弁を開き、インク補充を行い、
前記第1の液面検出部による検出結果が前記インク液面の高さが前記予め定められた高さよりも低く、且つ前記第2の液面検出部による検出結果が前記インク液面の高さが前記予め定められた高さよりも高い場合に、前記ポンプを駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
インクを循環させるインク循環経路上に、インク供給を行う第1のタンクと、供給されたインクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドから回収されたインクを貯留する第2のタンクと、前記第2のタンクに貯留されたインクを前記第1のタンクに揚送して帰還させるポンプとを配置するインクジェットプリンタの駆動方法であって、
画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時における前記第1のタンク及び前記第2のタンクに貯留されるインクの液面の高さを検出する時間間隔を、前記第1のモード時における前記インクの液面の高さを検出する時間間隔よりも長く設定し、異なる時間間隔で得られた検出信号に基づき、前記ポンプの駆動・停止を制御することを特徴とするインクジェットプリンタのインク循環方法。
【請求項5】
インクを循環させるインク循環経路上に、インク供給を行う第1のタンクと、供給されたインクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドから回収されたインクを貯留する第2のタンクと、前記第2のタンクに貯留されたインクを前記第1のタンクに揚送して帰還させるポンプとを配置するインクジェットプリンタの駆動方法であって、
前記第1のタンク内と前記第2のタンク内における各インクの液面の高さを示す検出信号の検出時間から予め定めた時間を遅延させて、前記ポンプの駆動開始及び駆動停止を遅延させることを特徴とするインクジェットプリンタのインク循環方法。
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、
前記インクヘッドにインクを供給する第1のタンクと、
前記インクヘッドから吐出されず排出されたインクを回収する第2のタンクと、
前記第2のタンクに貯留されたインクを揚送して前記第1のタンクに復帰させるポンプと、
前記第1のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第1の液面検出部と、
前記第2のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第2の液面検出部と、
前記第1のタンクから前記インクヘッドを経て、前記第2のタンクへのインク流路となる第1のインク経路及び、前記第2のタンクから前記ポンプを経て、前記第1のタンクへのインク流路となる第2のインク経路からなるインク循環経路と、
画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時における前記第1の液面検出部及び前記第2の液面検出部からの各検出信号の取り込む時間間隔を前記第1のモード時における検出信号の取り込み時間間隔よりも長く設定し、取り込み時間間隔で得られた検出信号に基づき、前記ポンプの駆動・停止を制御するインク循環制御部と、
を具備することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクヘッドと、
前記インクヘッドにインクを供給する第1のタンクと、
前記インクヘッドから吐出されず排出されたインクを回収する第2のタンクと、
前記第2のタンクに貯留されたインクを揚送して前記第1のタンクに復帰させるポンプと、
前記第1のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第1の液面検出部と、
前記第2のタンク内で予め定められた高さに対するインク液面の高さを検出する第2の液面検出部と、
前記第1のタンクから前記インクヘッドを経て、前記第2のタンクへのインク流路となる第1のインク経路及び、前記第2のタンクから前記ポンプを経て、前記第1のタンクへのインク流路となる第2のインク経路からなるインク循環経路と、
入力された信号に対して予め定められた遅延時間を遅延させて、前記信号を出力する遅延部と、
画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時には、前記第1の液面検出部及び前記第2の液面検出部による各検出信号を前記遅延部を経由させて、前記ポンプの駆動開始及び駆動停止を遅延させる制御を行うインク循環制御部と、
を具備することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インクジェットプリンタは、更に、
前記インク循環経路内にインク補充経路を通じてインクを補充するインク補充部と、
前記インク補充経路上に設けられ、開閉によりインクの補充又は補充停止を行う補給弁と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の液面検出部と前記第2の液面検出部による検出結果が、共に、前記インク液面の高さが前記予め定められた高さよりも低い場合に、前記補給弁を開き、インク補充を行い、
前記第1の液面検出部による検出結果が前記インク液面の高さが前記予め定められた高さよりも低く、且つ前記第2の液面検出部による検出結果が前記インク液面の高さが前記予め定められた高さよりも高い場合に、前記ポンプを駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
インクを循環させるインク循環経路上に、インク供給を行う第1のタンクと、供給されたインクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドから回収されたインクを貯留する第2のタンクと、前記第2のタンクに貯留されたインクを前記第1のタンクに揚送して帰還させるポンプとを配置するインクジェットプリンタの駆動方法であって、
画像記録動作を含むインク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環する第1のモードと、非インク吐出時に前記インク循環経路でインクを循環させる第2のモードを有し、前記第2のモード時における前記第1のタンク及び前記第2のタンクに貯留されるインクの液面の高さを検出する時間間隔を、前記第1のモード時における前記インクの液面の高さを検出する時間間隔よりも長く設定し、異なる時間間隔で得られた検出信号に基づき、前記ポンプの駆動・停止を制御することを特徴とするインクジェットプリンタのインク循環方法。
【請求項5】
インクを循環させるインク循環経路上に、インク供給を行う第1のタンクと、供給されたインクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドから回収されたインクを貯留する第2のタンクと、前記第2のタンクに貯留されたインクを前記第1のタンクに揚送して帰還させるポンプとを配置するインクジェットプリンタの駆動方法であって、
前記第1のタンク内と前記第2のタンク内における各インクの液面の高さを示す検出信号の検出時間から予め定めた時間を遅延させて、前記ポンプの駆動開始及び駆動停止を遅延させることを特徴とするインクジェットプリンタのインク循環方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−30448(P2012−30448A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170989(P2010−170989)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【出願人】(511050985)オルテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【出願人】(511050985)オルテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
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