説明

インクジェットプリンタおよび画像形成装置と制御方法

【課題】 電動ピットイン式インクジェットプリンタ装置において、特にインク供給・回復中にメイン電源からの給電が停止した場合の装置・ヘッド損傷を回避するためのバックアップ給電システムの提供。
【解決手段】 メイン電源検出手段、システム制御手段、バックアップ電池の放電パス制御手段、バックアップ電池充電状況検出手段、警告手段を用いて、通常は装置電源ON直後、バックアップ電池の充電を行って、正常/異常充電を警告し、電動ピットイン動作分だけの電力量を充電しておく。その後、プリントモードに入り、メイン電源検出で異常検出時に放電パスをシステム制御手段により放電モードに切り替えて、速やかにバックアップ電池からの給電を開始。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録メディアに対して画像記録するためのインクを必要なときだけ必要な量だけ電動制御によりサブタンクへ供給・回復できることを特徴とした電動ピットイン方式プリンタに関するものである。特に、ピットイン時に、装置電源が何らかの要因でOFFされた場合のバックアップ電源システムとその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来式のインクジェットタイプのプリンタでは、画像記録に必要な全インクが1つのカートリッジに内蔵され、カートリッジ付属の画像形成部(ヘッド)へ電気制御信号を与えることによりヘッドから内蔵インクを各色インクごとに吐出し、メディアへの画像記録を行う方式であった。また、インクカートリッジについては、残インク無し状態になった場合、ユーザーが任意にプリンタ本体から離脱できる構造であった。
【0003】
このため、本発明のようにメインインクカートリッジからサブインクタンクへインク供給・回復する構成となっていないため、ヘッドからのインク吐出中に何らかの要因で電源OFFされるような異常給電状態になっても、カートリッジ付属のヘッド損傷程度で済み、装置本体を破壊することはなく、異常給電時の異常状態を回避するためのバックアップ電源を真剣に考える必要はなかった。
【0004】
しかしながら、世の中には、プリンタ装置以外の装置において、メイン電源停止時のバックアップ電池あるいは電源からの駆動例として、エレベータ停電時における人閉じ込め状態回避のためのバックアップ電池給電と電池寿命診断に関するものがある。電池寿命診断のためにエレベータ無人運転を稼動時間以外の時間に行い、電池残量を管理するものがある。(例えば、特許文献1参照。)
また、例えば、エレベータ停電時のバックアップ給電方法として、エレベータ内に人が残っている状態では、ユーザー任意で非難運転モードを選択されたときに電池駆動により非常回避するものがある。(例えば、特許文献2参照。)
その他、バックアップ給電システムの制御方法の例として、非常時直流バックアップ給電におけるモーターのインバータ駆動に関して、バックアップ電池電圧低下に伴うインバータ回路の1次電流増大を回避するために、モーターの速度制御を電池電圧値により行うものがある。通常のモーター駆動電圧よりも低電圧であれば、1次電流抑制のためゆっくりモーターを駆動するように制御を行うものがある。(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献1】特開平11−49446号公報
【特許文献2】特開2000−7252号公報
【特許文献3】特開平5−30776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[課題]
電動ピットイン方式のインクジェットプリンタに関し、特に外部からの給電用電源が自由に装着,離脱できる給電システムをもつものに関し、第一の課題として、メインインクカートリッジから装置内蔵のサブタンクへのインク供給・回復中(ピットイン動作中)に給電用電源が不用意に落とされると、ピットインのためのインク流路部、サブタンクとの接合部でのインク漏れ,固着により、正常なインク充填が行われなくなる。また、場合によっては、装置内部にインクが漏れ、装置の損傷,メディア汚染につながる懸念がある。
【0006】
第二の課題として、仮に異常状態を回避するためのバックアップ用電池を搭載していても、速やかに異常状態を回避できる給電構成をとってないと、例えば装置の姿勢差,放置などにより装置破壊を未然に防ぐことが困難である。
【0007】
第三の課題として、バックアップ電池の種類の選定にあたって、1次電池である場合は複数回の異常給電終了時に対応できるだけの電力を保持できず、製品寿命を数年と考えると非現実的な方法といえる。2次電池である場合は、ニッケル水素,ニッカドといった安価で定型タイプで入手性の良いモバイル製品用電池として候補に上がるが、単セルあたりの電池電圧が約1.5V程度であり、制御システムを駆動させるのに最低でも+3V必要であり、セル数のアップにともなう装置サイズの大型化が懸念される。また、充電電流もリチウムイオンほど大きくできず、バックアップ給電できるほどの電池電圧を確保するのに充電時間が長くなり非現実的である。
【0008】
[課題解決のための本発明の目的]
本発明の目的は、電動ピットイン方式のインクジェットプリンタに関し、特に外部からの給電用電源が自由に装着,離脱できる給電システムをもつものに関し、第一の目的として、ピットイン動作中の給電停止を速やかに回避するためのバックアップ給電システムを提供し、装置の損傷あるいは二次災害をなくすことである。
【0009】
第二の目的として、システム用電源のためのメイン電源変換部(DC/DC)からの給電をバックアップ電池の方へも充電できる構成をとり、メインOFFとなった場合、速やかに充電池からシステム及びピットインのためのモーターへ放電を行う高速かつシンプルな構成をとることである。
【0010】
第三の目的として、バックアップ電池の種類として、リチウムイオン二次電池を使用することにより、システム電源として直接給電できる仕組みを提供し、かつ電動ピットインのためのモーターを駆動できる程度の電圧/電流を確保できる仕組みを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
電動ピットイン式のインクジェットプリンタに関し、特に外部からの給電用電源が自由に装着,離脱できる給電システムをもつものに関し、
電動ピットイン中に外部からの給電用電源(例えばACアダプタ)が離脱された場合、離脱されたことを検出するためのメイン電源検出手段を設け、この検出結果によりバックアップ電池からの放電パスをシステム制御手段により設定し、システム制御部及び電動ピットイン用のモーターを駆動し、ピットイン異常状態を速やかに回避する。
【0012】
また、バックアップ電池については、メイン電源電圧変換のためのDCDC回路出力から通常のシステム給電とは別にパラレルに低電圧充電を行い、ピットイン異常状態時の給電エネルギーのストックを行う。バックアップ電池については、システム制御用の駆動電圧として約3.3V程度であること、及び電動ピットインのためのモーターとしては3.3V程度の電圧でも動作できるDCモーターとし、駆動時の電流として約1A程度を確保できるリチウムイオン二次電池を1セル構成で設ける構成をとっている。
【0013】
さらに、通常モードでの装置電源ON時においては、バックアップ電池への充電を行う構成をとるが、電池への充電が正常に行われたどうかを検出(装置ON後にある一定時間に、ピットイン異常を回避できるだけの充電電圧になったかどうかを検出)するための充電状態検出手段を設け、バックアップ電池の充電状態を管理する機能を備えている。この結果に応じて、充電状態が悪ければ、システム制御手段から表示手段へ表示する構成をとり、ピットイン回避できないことを通達する。
【発明の効果】
【0014】
第一の効果として、電動ピットイン方式プリンタとして、ピットイン中のメイン電源からの給電停止時に、バックアップ電池から速やかに給電を再開し、異常状態を回避する。
【0015】
第二の効果として、電動ピットインに必要な駆動電圧をバックアップ電池から直接行うことで非常にシンプルかつ低コストでバックアップ給電システムを構成できる。
【0016】
第三の効果として、装置電源ON時にバックアップ電池のバックアップ充電管理を装置ON直後からの経過時間で管理することで、異常回避のための電力量を精度良く見積もることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0018】
本明細書において、「プリント」(「記録」、「画像形成」という場合もある)とは、文字,図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広くプリント媒体上に画像,模様,パターン等を形成する場合、またはプリント媒体の加工を行うものをいうものとする。
【0019】
「電池」とは、本装置を動かすための動力・エネルギー源のことをいい、広くは燃料電池、化学電池、物理電池、発電設備、蓄電設備などのエネルギーを発生し得る媒体の総称をいうものとする。
【0020】
本発明における電池は、メイン電源としての電池駆動のための電池と、装置内蔵のバックアップ用途としての電池があるが、前者については、前記を特徴とした電池とするが、後者のバックアップ電池としての電池については、電池電圧、放電電流、充電の可否の特性を考慮した上で選択された特徴のある電池であり、現状の電池としては、例えばリチウムイオン2次電池を想定している。
【0021】
「メディア」とは、一般的なプリント装置で用いられている紙のみならず、広く布,プラスティック,フィルム,金属板等、ガラス,セラミックス,木材,皮革等、インクを受容可能な物をいうものとする。
【0022】
「インク」(「液体」という場合もある)とは、上記「プリント」の定義と同様広く解釈されるべきものであり、メディア上に付与されることによって、画像,模様,パターン等の形成、メディアの加工、あるいはインク処理(例えば、メディアに付与されるインク中の色材の凝固または不溶化)に供される液体をいうものとする。
【0023】
「ヘッド」(「記録ヘッド」、「画像形成手段」という場合もある)とは、文字,図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広くプリント媒体上に画像,模様,パターン等を形成するための機構をいう。
【0024】
特に、前記「インク」を前記「メディア」に記録させるためのしくみを内蔵した機構をいう。
【0025】
具体的には、インクを吐出させるためのインク流路とインク吐出口をもち、インク吐出のためにヒート抵抗に電流をある一定時間通電することによってインク内に発砲し、その体積膨張によりインクが吐出し、それによりメディア上への画像形成を行う構造をもつ。
【0026】
「ピットイン」とは、プリンタ本体接続のメインインクカートリッジからインクを別のインクタンク(サブタンク)にインクを供給する動作のことを意味する。サブタンクへのインク供給は、本体内蔵のモーター駆動させることによりメインカートリッジへインク供給口に針を刺して針からインク吸引してインクを引き込む構成をとる。
【0027】
通常、このピットイン中にメイン電源がOFFすることはないため、メインインクカートリッジに針が刺さったままのことは起こらない。しかし、不意にユーザーがメイン電源OFFする状態にした場合、針刺し状態でプリンタは静止する。これによって、針先にインクが固着してインク流路を詰まらせたり、針刺し口からのインクが漏れたり、あるいは針の酸化による離脱NGといった問題が懸念される。よって、インク流路を損傷させるだけでなく、インク漏れによるユーザーへの被害、装置の破壊など多々問題があるため、ピットイン状態での装置停止は回避する必要がある。
【0028】
「バックアップ」とは、本発明に関する部分では、前記記載のピットイン動作中における装置停電に関して、これを回避するための駆動電力を保持しておくための電池への給電を行うことを意味する。
【0029】
通常のメイン電源からの給電が正常に行われている状態では、このバックアップ用の電池への充電が行われる。しかし、メイン電源がOFFした状態を検出するためのメイン電源検出手段による検出結果が、「メイン電源なし」となった場合、通常モードでバックアップ電池への充電が、放電モードに放電パスを制御しピットイン回避に必要なシステム制御手段及び電動ピットインモーターの給電を速やかに再開する構成をとる。
【0030】
「基本構成」
図1に基づいて本発明に関わるプリント装置の基本構成について説明する。
【0031】
装置本体A100には、プリント記録するためのインクとメディアを装置に装着/離脱する方式をとっている。インクはインク収納容器A101に、プリント記録用メディアA103はメディア収納容器A102に内蔵される。
【0032】
本装置の給電方式として、電池駆動とACアダプタ駆動の二方式を排他選択できる。電池駆動方式は、電池パック本体A104を装置本体A100の専用接続箇所に接続し、直流電圧給電を電池端子A105を介して行うことができる。一方、ACアダプタ駆動方式は、商用電源ACコンセントA107を商用電源に接続し、ACアダプタ本体(AC/DC)A106から装置本体A100の専用接続箇所に接続し、直流電圧給電を行うことができる。
【0033】
本装置への排他接続可能なメイン電源の電池パック本体A104及びACアダプタ本体A106の装着/離脱は自由に行うことが可能であり、例えば、ユーザーが不意にACアダプタ本体A104をピットイン動作中に離脱することもある。
【0034】
これら二方式による装置駆動形態(電池駆動,ACアダプタ駆動)において、様々な負荷電圧要求に答えるため装置本体A100の内部に直流電圧変換部(DC/DCコンバータ)を設けて、所望の負荷電圧値に変換を行っている。
【0035】
本装置のプリントデータ取得方式として、メモリカードA108,デジカメ109,パソコンA110,携帯電話A112といったデジタル情報機器デバイスからのプリントデータを装置本体A100で受信プリントできる。いずれも、装置本体側の操作キーA116により、印刷モード(デバイスの選定)を排他決定しプリントさせることが可能である。特に、デジカメA109、パソコンA110といった装置からのデータ取得方法は、専用の接続コネクタのUSBコネクタA111に通信ケーブルを接続し、装置本体A100へデータ転送し、プリントできる。また、携帯電話A112は、ここでは無線通信の赤外線通信(irDA)により、赤外線(irDA)通信部A113で受信し、装置本体A100でプリントできる。
【0036】
画像形成部については、キャリッジA114にインク収納容器から取得したインクをストックするためのサブのインクタンク、画像形成のためのヘッド、ヘッド駆動のための制御線をもつ。装置本体A100の制御・予測手段からのプリントデータに基づいた制御信号を受けてヘッド駆動を行い、プリントメディアA103へプリントを行う。キャリッジA114は、プリントメディアA103に対して副走査方向にモーター駆動にてスキャン動作させ、主走査方向へは装置本体A100の紙搬送モーターにより紙送りを行い、プリントメディアA103の全面にヘッドからインクを吐出させて画像形成を行うものとする。
【0037】
ユーザーインターフェースについては、特にメモリカードA108からダイレクトに印刷させたり、デジカメA109や携帯電話A112といったデバイスに、プリントデータの確認手段の無い場合を想定して、表示手段(Viewer)A115でデータを確認できる構成をもつ。また、電池寿命の表示やプリント条件(メディア、画像形式、通信方式、異常告知など)告知の機能も備えている。装置本体A100の制御・予測手段からの制御によって、これらの表示は行われる。
【0038】
「バックアップ給電システム」
図2に基づいて本発明におけるプリント装置としてのバックアップ給電システムB100について説明する。
【0039】
まず最初に正常系でのメイン電源からのプリント装置の給電について説明する。メイン電源B101として、ACアダプタとメイン電池が装置本体の給電端子に排他装着可能な構成をとっている。メイン電源B101は、装着と離脱をユーザー任意に行うことができ、例えば装置本体へ給電中にメイン電源B101を抜くと装置給電停止状態が発生する。
【0040】
メイン電源B101は、装置内蔵の各種定電圧負荷に対する要求から、所望の負荷電圧に電力変換する必要がある。特にメイン電源B101として電池駆動を行う場合などは、電池放電電流などにより電池電圧が変動し、負荷要求電圧どおりの電圧にしないと装置駆動が正常に行われない。このため、メイン電源電圧を変換するための電力変換部B102を設け、本実施例としては、画像形成手段(ヘッド)B108を駆動するための電圧として、ヘッド電圧VH=18Vと、装置の各種制御を行うためのシステム制御手段B104のための駆動電圧Vcc=3.4Vにメイン電源B101の電圧を電圧変換する。
【0041】
電動ピットインのためのモーター部B113は、駆動電圧範囲が比較的広くとれることから、メイン電源B101から直接給電を行うようにし、電力損失を極力抑制する構成をとっている。通常、モーター駆動は、メイン電源B101からの給電だけでは動作させることができない。このため、モーター部B113を駆動するための制御信号をシステム制御手段B104から受信し、モーター励磁電流のON/OFFによりモーター部B113を駆動制御するモーター制御手段B112をメイン電源B101とモーター部B113の給電ラインの間に設ける。システム制御手段B104からの励磁制御として、モーター部B113の所定モーターの選択,回転速度・方向の制御、停止制御などを行うことができる。また、モーター部B113は、装置の低コスト化,小型化のためにDCモーターを採用しているため、システム制御手段B104の駆動電圧よりも、低い電圧(例えば2.5V)程度でもゆっくりではあるが回転させることが可能である。
【0042】
バックアップ電池(リチウムイオン2次電池)B110の充電は、電力変換部B102のシステム制御手段B104の駆動電圧と同じ電圧の約3.4Vで充電を行う。バックアップ電池B110はリチウムイオン2次電池1セル構成であるため、通常の満充電では約4.2V程度まで充電する必要があるが、本発明の充電方法としては、システム制御手段B104の駆動と電動ピットインモーターB113が駆動できる充電電圧に設定し、実際のピットイン異常時回避のための電力量をもつ程度の電圧に設定する低電圧充電を電力変換部B102を用いて行う。
【0043】
充電制御シーケンスは、メイン電源B101が装着されている状態で、操作手段B107の電源SW ON後、システム制御手段B104に電力変換部B102からの駆動電圧が正常に印加されて、システムが起動してから、バックアップ電池電圧検出手段B114からの電池電圧情報をシステム制御手段B104で受け、システム制御手段B104がきちんと駆動できる電圧(ここでは+3.4V)あれば、システムと電動ピットインモータの駆動が正常に行えるため、充電は行わない。一方、駆動できない電圧であった場合は、バックアップ電池の充放電パス手段B111を充電モード(切替部C:ON(Close),切替え部A:ON(Close),切替え部B(Open))にシステム制御手段B104より設定制御を行う。なお、バックアップ電池として使用するリチウムイオン2次電池については、装置出荷状態では、終止電圧+2.5Vに対して3.0V程度に予め初期充電を行った状態で組み込まれている。(電池劣化に対する配慮のため初期充電を実施)
その後、バックアップ電池の電圧をバックアップ電池電圧検出手段B114からの電圧をシステム制御手段B104内蔵のA/Dコンバータで受けて確認し、充電モード設定時からの所望の充電時間で所望の充電電圧になったかどうかをシステム制御手段B104で充電管理を行いながら、バックアップ電池B110へ充電を行う。
【0044】
もし、正常に充電完了されていれば、表示手段B105へ「バックアップOK」の表示をシステム制御手段B104から制御指示を行い、ピットイン中の異常終了回避のための電力を確保できているため、通常のプリント動作への移行も受け付ける。逆に、正常に充電されていなければ、表示手段B105へ「バックアップNG」の表示とシステム制御手段B104から制御指示を行い、ピットイン中の異常終了時の回避策がないことをユーザーに認知させた上で、通常のプリント動作への移行はユーザー判断により行うことが可能であるものとする。
【0045】
ピットイン中の異常終了モードでの、バックアップ給電制御について述べる。メイン電源検出手段B103の検出結果が、「メイン電源なし」とシステム制御手段B104より判断された場合、本装置の電源ON後にバックアップ電池B110への充電制御を行っているため電池にはピットイン異常状態回避のための電力が保持されているとは思うが、再度、この段階でバックアップ電池電圧B110の電池電圧をバックアップ電池電圧検出手段B114の電圧情報をシステム制御手段B104で受けて確認する。その結果、バックアップ電池電圧が、ピットインできる電圧値の+3.0〜3.4Vであれば、異常回避できるものとシステム制御手段B104にて判断し、表示手段B106へ「バックアップOK」と再表示を行う。そして、本装置内蔵のバックアップ電池B110を放電モード動作に移行し、バックアップ電池の充放電パス制御手段B111を放電モード(切替え部A:ON(Close),切替え部B:OFF(Open),切り替え部C:ON(Close))にシステム制御手段B104より設定制御を行う。そして、表示手段B106へ「ピットイン異常」と表示し、ユーザーへバックアップ電池からの異常モード回避を行うことを告知し、インク供給状態に応じて、電動ピットイン用のモータ制御を行い異常回避した後で、システム制御手段B104から、自動的に電源SWの方へOFF制御を行い電源OFFを行う。
【0046】
一方、バックアップ電池B110の電圧が、異常回避できない電圧であるとシステム制御手段B104より判断された場合は、システム制御手段B104が動作できない電圧であれば、そのまま、装置全体の給電が停止し、放置状態であるが、もしシステム制御手段B104が仮に動作できる程度の電圧があれば、表示手段B106へ「バックアップNG」と再表示したまま、バックアップ電池B110の電力が無くなるまで、ユーザーへメッセージを与えつづけるものとする。このとき、電動ピットインのためのモーター駆動は行わない。
【0047】
最後に、本発明のプリント装置の通常プリント動作について簡単に説明する。メイン電源B101からの正常給電及び、バックアップ電池B110への正常充電が行われている状態で、ユーザーが操作手段B107よりプリント実行決定を行った場合、外部記憶手段B106にストアされているプリントデータをシステム制御手段B104側へ転送し、画像形成手段B108でメディアB109にプリント記録可能なデータに変換し、そのデータを画像形成手段B108へ制御信号として送信することで、メディアB109へ所望のデータをプリント記録できる構成となっている。
【0048】
「ピットイン機構」
図3に基づいて本発明におけるプリント装置としてのピットイン機構とピットイン動作説明図C100について説明する。
【0049】
本発明のプリント装置本体の外部からメインインクカートリッジC101を装着/離脱できる構成をとっている。メインインクカートリッジC101が装置本体に装着され、プリント動作実行が確定すると、メインインクカートリッジC101の離脱はできなくなる。メインインクカートリッジC101には、メディアへのプリント記録に必要な3色(シアン,マゼンタ,イェロー)のインクが分離して搭載(メインインクカートリッジのTop View図参照)されている。
【0050】
このメインインクカートリッジC101と対向した側にキャリッジC102が設置されている。キャリッジC102には、メインインクカートリッジC101からのインクを1次ストックするためのサブインクタンクC103、このサブインクタンクC103からインクをメディア面に吐出させる機構の画像形成手段(ヘッド)C104、キャリッジの走査を行うためのリードスクリュー部C106、メインインクカートリッジC101から一回の印刷に必要なインクだけサブインクタンクC103に供給・回復する必要するためのインク供給用針(ニードル)C105が存在する。
【0051】
次に「ピットイン動作」について説明する。通常、メディアへのプリント記録に必要なインクは、メインインクカートリッジC101に内蔵されており、プリント記録に必要な分だけサブインクタンクC104にインク供給・回復動作(ピットイン動作)を行う必要がある。
【0052】
このため、最初にメインインクカートリッジC101をキャリッジC102側のニードルC106にジョイントする動作をプリント開始前に実施する。ジョイントは、メインインクカートリッジC101を昇降させるためのカム機構C109と直結されたニードルジョイントモーターを回転させることによって所定の高さまでリフトアップさせる。そうすると、ニードルC105は、ニードルジョイント部C107に誘導され、メインインクカートリッジC101からのインク吸引の準備が整う。
【0053】
その後、メインインクカートリッジC101,ニードルC105,サブインクタンクC103,インク流路C110のインク供給ラインがつながったため、インク流路C101延長上のシリンダC111のピストン動作によって、インクの供給を行う。このため、シリンダC111に内接したシリンダC113を、ポンプモーターC112の正転/逆転制御で左右に動かし、インクをサブインクタンクC103へ注入することができる。
【0054】
このように、ピットイン動作は、ジョイントモーターC108とポンプモーターC112の両方を駆動させることでピットイン動作中にメイン電源からの給電がストップすれば、ニードルC106がメインインクカートリッジC101に差されたままとなり、ニードルジョイント部C107からのインク漏れ、インク固着による針抜き不能などによる正常なインク供給不能など、装置破壊する懸念があるため、いかなる状態においても、確実にピットイン動作を終了させる必要がある。
【0055】
「装置Power ON時のバックアップ充電」
図4にバックアップ給電システムに基づいた「装置Power ON時のバックアップ充電制御シーケンス」S100を示す。
【0056】
装置本体の操作手段の電源SWにてPower ON S101されると、すぐにメイン電源検出手段からの検出情報をシステム制御手段にて、メイン電源の装着有無を確認する。このとき、メイン電源自体がなければ、装置自体の電源ONさせることは無理なのでそのままとなる。一方、メイン電源が検出され正常の入力が行われたとシステム制御手段で認識された場合、装置本体内蔵のバックアップ電池充電モードへ移行し、バックアップ電池電圧検出手段より電圧検出S102を行い、システム制御手段でバックアップ充電電圧として正常か否かの電圧値判断S103を行う。
【0057】
システム制御手段によるバックアップ電池電圧の確認の結果、「3.0〜3.4V(システム駆動電圧)である:Yes」ならば、バックアップ電池の充電が行える充電モードの状態と判断し、システム制御手段から表示手段側へ「バックアップOK」の表示S104を行う。その結果、バックアップ電池への充電パスを生成する必要があるため、バックアップ電池の充放電パス制御手段を、切替え部A:ON(Close),切替え部B:OFF(Open),切替え部C:ON(Close)にシステム制御手段から設定制御S106を行い、システム制御手段駆動と並列でバックアップ電池への充電を行う。
【0058】
一方、「3.0V未満あるいは3.4V超過である:No」ならば、システム駆動電圧より低い電圧値の場合においては、充電のためのパスを生成した時点で、システム制御手段とバックアップ電池の並列駆動になるため、電池電圧の低い方にシステム駆動電圧が低下し、システムを停止させてしまう恐れがあるため非充電モードとする。また、システム駆動電圧より高い電圧値の場合においては、充電パスを生成した時点で、システム制御手段を過電圧で破壊する恐れがあるため、これも低いケース同様に非充電モードとする。よって、非充電モードのため、システム制御手段より表示手段側へ「バックアップNG」の表示S105を行う。その結果、バックアップ電池の充電を行う必要がないため、バックアップ電池の充放電パス手段を、切替え部A:ON(Close),切替え部B:OFF(Open),切替え部C:OFF(Close)にシステム制御手段から設定制御S107を行い、バックアップ電池を切り離し、装置はアイドル(軽負荷)状態で待機S109する。このアイドル状態で、ユーザー側から任意に操作手段からプリント確定された場合、上記表示手段で「バックアップNG」を告知しているため、仮にバックアップ電池からの電力供給が必要なピットイン異常停止対応ができなくても、プリントモードへの移行はOKとみなし、システム制御手段にてプリント動作に遷移できる。
【0059】
電源SW ON後のバックアップ電池への充電モードに移行し、パス生成が完了した時点で、バックアップ電池の充電制御を充電時間で管理する方式としているため、システム制御手段内部のタイマをセットS108を行う。その後、タイマセット時点から一定時間経過後、システム駆動電圧値に達したかどうかを、バックアップ電池電圧検出手段からの電圧情報をシステム制御手段側で受けて判断制御S110を行う。もし、所望の電圧値に達していれば、「充電OK(充電はきちんとできている)」とし、バックアップ電池からの給電が必要な状態になるまで、システム駆動と並列に常時充電S111を行う。一方、所望の電圧値3.0Vに達していなければ、「充電NG(充電異常)」とし、バックアップ電池をシステムから切り離すため、バックアップ電池充放電パス制御手段の切り替え部CをOFF(Open)し、常時充電を行わないようにシステム制御手段にて設定制御S112を行う。
【0060】
その後、バックアップ電池の充電/非充電にかかわらず、システムをアイドル(軽負荷)状態で待機S113して、ユーザーからの任意な動作決定を待つ。
【0061】
なお、装置本体内蔵のバックアップ電池は、装置出荷時点で、電池劣化を回避するために3.0〜3.4Vの電圧範囲内で予め充電されており、仮に電源ONと同時にメイン電源からの給電が停止しても、回避するだけの電力をストックしているものとする。
【0062】
「バックアップ給電制御」
図5にバックアップ給電システムに基づいた「ピットイン時の異常給電状態でのバックアップ給電制御シーケンス」S200を示す。
【0063】
装置の動作モードがプリントモードに移行し、通常給電によるピットイン動作処理に入った状態S201で、メイン電源の装着有無S202をメイン電源検出手段からの検出情報をシステム制御手段側で識別を行う。メイン電源装着/離脱がユーザー任意に行われるため、例えば装置ピットイン中のACアダプタ離脱などの異常給電発生を随時モニタし、即座にバックアップを行える準備をしておく。
【0064】
メイン電源の装着有無S202の検出結果、「メイン電源有り」であれば、ピットイン動作を続けながら、メイン電源の装着有無を所定のインターバルでシステム制御手段側で行う。一方、「メイン電源無し」ならば、早急に給電を開始する必要があるため、バックアップ電池からの放電ラインを生成して、電動ピットインのためのモーター駆動を行う必要があり、放電パス手段をシステム制御手段からの制御信号を受けて、充電モードから放電モードに切替え変更S203する。その後、異常給電状態をユーザー告知するために「ピットイン異常」の表示S204を表示手段から行う。
【0065】
この後、実際にピットイン動作を正常終了するための処理に入る。メイン電源無しによるピットイン異常終了状態として、「インク供給前・後」と「インク供給中」の2モードがある。これらの動作状態は、プリント動作中のピットイン動作シーケンスに入った段階でシステム制御手段にて、現在どのシーケンス状態にあるのか管理するものとし、その管理状態に応じて、異常終了モード時に下記の処理を行うものとする。
【0066】
まず1つ目の「インク供給前・後」では、わざわざインクを供給して、最悪バックアップ電池駆動でもローバッテリーとなった場合、ジョイントのまま停止するためインク漏れなどの懸念があるため、インク供給は行わずにジョイント離脱S206(メインインクカートリッジの昇降動作)のみ行い、省電力化と異常回避時間の短縮化を行う。
【0067】
2つ目の「インク供給中」での異常終了では、インク供給が既に行われており、インク供給最中である場合、きちんとインク供給を行い、メインインクカートリッジからのジョイント用ニードルを離脱しないと、インク漏れだけでなく、インク流路にインクが残り、そのインクが固着すると、次回ピットイン時に正常にインク供給できなくなる懸念があるため、システム制御手段側からインク供給動作を実施し、ジョイント離脱実行S207させ、装置の破壊を回避する処理を行う。
【0068】
その後、上記各ピットイン状態において、正常に動作完了させた段階で、ピットイン側へのバックアップ電池からの給電は必要としないため、次回正常にメイン電源から給電が実施された場合に備えて、放電パス手段を「充電モード」にシステム制御手段から制御変更S208し、バックアップ電池の節電のため、システム制御手段を電源OFFモード(スタンバイモード)S209で待機する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明におけるプリント装置の基本構成
【図2】本発明におけるプリント装置としてのバックアップ給電システム
【図3】本発明におけるプリント装置としてのピットイン機構とピットイン動作説明図
【図4】本発明におけるプリント装置としての装置Power ON時のバックアップ充電制御シーケンス
【図5】本発明におけるプリント装置としてのピットイン時の異常給電状態でのバックアップ給電制御シーケンス
【符号の説明】
【0070】
A100 装置本体
A101 インク収納容器
A102 メディア収納容器
A103 プリント記録用メディア
A104 電池パック本体
A105 電池端子
A106 商用電源ACコンセント
A107 ACアダプタ本体(AC/DC)
A108 メモリカード
A109 デジカメ(デジタルカメラ)
A110 パソコン
A111 USBコネクタ
A112 携帯電話
A113 赤外線(irDA)通信部
A114 キャリッジ
A115 表示手段(Viewer)
A116 操作手段(操作キー)
B100 ピットイン方式プリンタ装置としてのバックアップ給電システム
B101 メイン電源(ACアダプタ、メイン電池)
B102 電力変換部(DC/DC)
B103 メイン電源検出手段
B104 システム制御手段
B105 表示手段
B106 画像記憶手段
B107 操作手段
B108 画像形成手段(ヘッド)
B109 メディア
B110 バックアップ電池(リチウムイオン2次電池)
B111 バックアップ電池の充放電パス制御手段
B112 モーター制御手段(Mtr. Drv.)
B113 電動ピットインのためのモーター部
B114 バックアップ電池電圧検出手段
C100 本発明におけるプリント装置としてのピットイン機構とピットイン動作説明図
C101 メインインクカートリッジ
C102 キャリッジ
C103 サブインクタンク
C104 画像形成手段(ヘッド)
C105 インク供給用針(ニードル)
C106 キャリッジ走査用リードスクリュー
C107 ニードルジョイント部
C108 ニードルジョイント用モーター
C109 メインインクカートリッジの昇降用カム機構
C110 インク流路
C111 シリンダー(インク流路含む)
C112 サブインクタンクのインク供給・回復用モーター(ポンプモーター)
C113 ピストン
C114 メディア給紙位置
S100 装置Power ON時ののバックアップ充電制御シーケンス
S200 ピットイン時の異常給電状態でのバックアップ給電制御シーケンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録メディアに対して画像記録するためのインクを必要なときだけ電動制御により供給することのできることを特徴とし、装置を動かすための第一の電源が、装着/離脱可能であることを特徴とする電動ピットイン方式プリンタ。
【請求項2】
請求項1記載の第一の電源が、ピットイン動作中になんらかの要因で装置から離脱、停電・ACコンセント抜けされた場合、速やかにピットイン動作を正常終了させるためのバックアップ給電用の第二の電源として装置内蔵電池をもつことを特徴とした請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
第二の電池は、第一の電源より電圧が小さく、電池から直接システム制御のための電気ブロックを駆動でき、かつピットイン動作のためのモーターを駆動できるもので、充電可能な電池を使用することを特徴とした請求項1記載のプリンタ。
【請求項4】
第一の電源が外部から装着され正常給電されている場合、この第一の電源から第二の電池に充電するために、第一の電源から一定電圧を生成する電力変換部(DC/DC)を経由して第二の電池にシステム制御手段を駆動電圧と同じ、低電圧充電を行うことを特徴とした請求項1記載のプリンタ。
【請求項5】
第二の電池の充電制御として、第一の電源が外部から装着され正常に給電された後で、電池電圧検出手段の検出結果、システム制御手段の駆動電圧内の電圧である場合、第一の電源から一定電圧を生成する電力変換部(DC/DC)を経由して第二の電池に充電を開始し、所定の時間を経過したときに所定の電圧になっているか否かで充電正常/異常をシステム制御手段により管理することを特徴とした請求項1記載のプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−160677(P2007−160677A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359245(P2005−359245)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】