説明

インクジェットプリンター

【課題】 能率的な切断処理が可能なインクジェットプリンターを構成する。
【解決手段】 カッターユニットの切断位置とプリントヘッドHとの間においてペーパーPが搬送される距離を、プリントヘッドHの主走査方向へのプリント毎に副走査方向にペーパーPが搬送される単位搬送量Wの整数倍に設定し、画像データのオーダサイズの副走査方向での長さが、単位搬送量Wの整数倍と異なる場合には、画像データを、副走査方向での長さが単位搬送量Wの整数倍となるプリントデータに変換する画像データ変換手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のペーパーを長手方向に搬送する搬送機構と、主走査方向への作動に伴い前記ペーパーにインクを噴射して画像をプリントするプリントヘッドと、プリント後のペーパーを切断するカッターユニットとを備えているインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたインクジェットプリンターとして、プリントヘッドで画像情報(本発明の画像データ)をプリントしたペーパーを搬送した場合に、プリントサイズに基づくペーパーの目標切断位置とカッターユニットの切断位置とが一致しないものでは、プリントヘッドのクリーニング作動を行う際等に、ペーパーとカッターユニットとを相対的に移動させる(例えば、ペーパーを送り出し方向、あるいは、巻き戻し方向に搬送する)ことにより、ペーパーの目標切断位置とカッターユニットの切断位置とを一致させてペーパーの切断を行うよう構成されたものが存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002‐160409号公報 (請求項1〜4、段落番号〔0016〕〜〔0043〕、図1〜図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、ペーパーの目標切断位置とカッターユニットの切断位置とを一致させて切断するものは、プリントサイズに適合したサイズのプリントペーパーが得られるものである。しかしながら、特許文献1に記載されるようにペーパーを切断するためにプリント処理を中断してペーパーとカッターユニットとを相対的に移動させるものでは、その切断を行う時間を利用してプリントヘッドのクリーニングを行うものであっても、複数のプリントを行う観点から考えるとプリント処理に時間を要するものとなり改善の余地があった。
【0005】
インクジェットプリンターは、一般的にペーパーの搬送を停止させた状態でプリントヘッドを主走査方向へ作動させることによって副走査方向で所定幅となるプリントを行い、この主走査方向へのプリントが終了する毎に所定幅に対応した量(単位搬送量)だけペーパーの搬送を行う作動を繰り返して行うため、ペーパーを間歇的に搬送する形態となる。このような搬送形態から、ペーパーの搬送が停止したタイミングで、できるだけ無駄な作動を行わずにペーパの切断を行うことにより能率的な処理を行いたい面もあった。
【0006】
本発明の目的は、能率的な切断処理が可能なインクジェットプリンターを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、長尺のペーパーを長手方向に搬送する搬送機構と、主走査方向への作動に伴い前記ペーパーにインクを噴射して画像をプリントするプリントヘッドと、プリント後のペーパーを切断するカッターユニットとを備えているインクジェットプリンターにおいて、
前記カッターユニットの切断位置と前記プリントヘッドとの間において前記ペーパーが搬送される距離を、前記プリントヘッドの主走査方向への1作動毎に前記搬送機構によって前記ペーパーが副走査方向に搬送される単位搬送量の整数倍に設定すると共に、
画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さと、前記単位搬送量を整数倍した長さとを比較して一致しない場合には、この画像データを、そのオーダサイズの副走査方向での長さが前記単位搬送量の整数倍の長さに一致するサイズとなるプリントデータに変換する画像変換手段を備えている点にある。
【0008】
この構成により、画像変換手段は、プリント対象とする画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さと、単位搬送量を整数倍の長さとを比較し、一致しない場合には、画像変換手段が、画像データをオーダサイズの副走査方向での長さが前記単位搬送量の整数倍の長さに一致するサイズとなるプリントデータに変換する。これにより、プリントヘッドでのプリントに伴いペーパーを副走査方向に搬送した場合には、この搬送の過程で画像の境界位置をカッターユニットでの切断位置一致させ、カッターユニットで切断することも可能となる。その結果、能率的な切断処理により処理能力が高いインクジェットプリンターが合理的に構成されたのである。
【0009】
本発明は、前記画像変換手段として、前記画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さと、前記単位搬送量の整数倍とが一致しない場合には、前記画像データのオーダサイズの副走査方向での長さを拡大又は縮小し、この拡大又は縮小後の長さが前記単位搬送量の整数倍と一致するサイズのプリントデータに変換するように処理形態を設定しても良い。
【0010】
この構成により、オーダサイズの副走査方向での長さが、単位搬送量の整数倍と一致しない場合でも、画像変換手段が、画像データの副走査方向でのサイズの拡大又は縮小することによって、画像データの副走査方向での長さを単位搬送量の整数倍に一致させたプリントが可能となり、画像データの副走査方向での全てのデータをプリントし、プリントされた画像の境界位置で切断することが可能となった。
【0011】
本発明は、前記画像変換手段として、前記画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さと、前記単位搬送量の整数倍とが一致しない場合には、前記画像データのオーダサイズの副走査方向での端部を切り取り、この切り取り後の長さが前記単位搬送量の整数倍と一致するサイズのプリントデータに変換するように処理形態を設定しても良い。
【0012】
この構成により、オーダサイズの副走査方向での長さが、単位搬送量の整数倍と一致しない場合でも、画像変換手段が、画像データの副走査方向での端部を切り取る形態となる変換を行うことによって、副走査方向での長さを単位搬送量の整数倍に一致させたプリントが可能となり、画像データを歪ませることなく、画像データをプリントし、プリントされた画像の境界位置で切断することが可能となった。
【0013】
本発明は、前記画像変換手段として、前記画像データに設定されたオーダサイズの主走査方向での長さと、前記ペーパー幅とを比較し、一致しない場合には、オーダサイズの主走査方向での長さを、前記ペーパー幅に一致又は近似させる拡大率又は縮小率を求め、この拡大率又は縮小率でオーダサイズを補正する予備変換を行い、この予備変換の後に、補正後のオーダサイズの副走査方向での長さと、前記単位搬送量を整数倍した長さとを比較して一致しない場合には、前記プリントデータへの変換処理を行うように処理形態を設定しても良い。
【0014】
この構成により、オーダサイズの主走査方向での長さがペーパー幅とが一致しない場合でも、これらを一致させるようにオーダサイズの拡大又は縮小する予備変換を行い、この予備変換によって補正された後のオーダサイズの副走査方向での長さと、単位搬送量の整数倍とが一致しない場合には、主走査方向においてペーパーサイズに画像データを整合させたプリントも行える。
【0015】
本発明は、前記単位搬送量ずつ前記ペーパーを間歇的に搬送するよう前記搬送機構の搬送形態が設定されると共に、この単位搬送量での搬送が行われた回数を計数することにより前記ペーパーの搬送量を取得してプリントデータの境界位置を判別し、この境界位置が前記カッターユニットの切断位置に達したことを判別したタイミングで前記カッターユニットを作動させて切断を行う切断処理手段を備えても良い。
【0016】
この構成により、搬送機構によるペーパーの搬送回数を計数することにより、ペーパーにプリントされた画像(プリントデータ)の境界位置を取得できるものとなり、このように取得した画像の境界位置がカッターユニットの切断位置に達したタイミングで、具体的には、ペーパーの搬送が停止している状況下において切断処理手段がペーパーの切断を行えるため、プリント処理を中断しなくて済み、効率的なプリントを実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように筐体10の下部に2つマガジン収容部A、Aを配置し、筐体10の上部にインクジェット型のプリントヘッドHを備えたプリント部Bを配置し、筐体10の側部にインク貯留部Cを配置し、更に、筐体10の上面部に比較的小さいサイズのペーパーPが横送りベルト16を介して送り出される仕分け部17と、大きいサイズのペーパーPを受け止めるラック板18とを配置してインクジェットプリンターが構成されている。
【0018】
前記2つマガジン収容部A、Aは、前壁体10Aと一体的なスライド作動によって開閉自在なドロワー20を備え、このドロワー20にマガジン21をセットできるよう構成されている。このマガジン21は、長尺のペーパーPを巻芯等に巻回したロール状のペーパーPを収容するよう構成されている。また、前記プリント部Bは、マガジン収容部Aから供給されるペーパーPに対して前記プリントヘッドHで画像(後述するプリントデータからペーパー上に生成される画像)のプリントを行うよう構成され、このプリント部Bの前面部には透明な樹脂板製の窓部22を形成したな壁体10Bを開閉自在に備えている。
【0019】
前記インク貯留部Cは、縦向き姿勢の軸芯周りで揺動開閉自在な壁体10Cの内部に異なる色相の複数のインクカートリッジ23を配置しており、これらのインクカートリッジ23は挿抜する形態で交換できるように構成されている。尚、夫々のインクカートリッジ23は、ブラック(BK)、ライトブラック(LK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、イエロー(Y)のインクを封入した7色のものが使用される。図面には示さないが、このインクジェットプリンターは、前記インクカートリッジ23に封入されたインクを空気圧によって送り出し、サブタンクに一時的に貯留した後、前記プリントヘッドHに供給するインクの供給系を備えている。
【0020】
図3、図4に示すように、このインクジェットプリンターは、供給ユニットU1と、プリント搬送ユニットU2と、カッターユニットU3と、スイッチバックユニットU4と、排出ユニットU5とを備えている。
【0021】
前記供給ユニットU1は、前記2つのマガジン収容部A、Aに収容されたロール状のペーパーPに回転力を作用させる支持ローラ25と、マガジン21からペーパーPを搬送する圧着型の供給ローラ26とを備えており、プリント時には前記2つのマガジン収容部A、Aに収納されたロール状のペーパーPのうち対象とするロール状のペーパーPの支持ローラ25の回転力を作用させ、このロール状のペーパーPから引き出されたペーパーPに供給ローラ26から搬送力を作用させることにより、ガイド部材27に案内される形態で、そのペーパーPを前記プリント搬送ユニットU2に送り込むように作動する。
【0022】
図面には示していないが、支持ローラ25と供給ローラ26とは供給搬送用の電動モータで駆動されるものである。また、前記マガジン21にはペーパーPの幅や種類を示す識別情報を含んだコードプレート(図示せず)を備え、マガジン収容部A、Aにはコードプレートから識別情報を取得するよう光学式や無線式等のコードセンサを備えている。このような構成から、プリント時にはコードセンサで取得した識別情報に基づいてマガジン収容部A、Aに収容されているペーパーPの幅や種類を識別し、必要とするペーパーPをプリント部Bに供給できるよう構成されている。
【0023】
前記プリント搬送ユニットU2は、前記プリントヘッドHの上流側に配置された圧着型の第1搬送ローラ31と、プリントヘッドHの下流側に配置された圧着型の第2搬送ローラ32とを備えると共に、この第1、第2搬送ローラ31、32(搬送機構の一例)の中間位置においてペーパーPの裏面側を案内する案内プレート33とを備えており、この案内プレート33の下方位置には、この案内プレート33に形成された多数の貫通孔を介してペーパーPに負圧を作用させる筐体34と、筐体34の内部の空気を排出することにより筐体34の内部に負圧を発生させるファン35を備えている。このような構成により、第1、第2搬送ローラ31、32で搬送されるペーパーPに案内プレート35から負圧を作用させることにより、案内プレート35にペーパーPを吸着させ、浮き上がりを防止すると同時に、プリント時におけるペーパーPの平面精度を高めるようにしている。
【0024】
図4に示すように、主走査方向(ペーパーPの幅方向)に沿う姿勢で配置されたガイドレール37でガイドされるスライダー38にキャリッジ39を支持し、このキャリッジ39の下面側に前記プリントヘッドHを支持している。また、前記ガイドレール37の両端部の近傍位置に配置した一対のプーリ40にタイミングベルト型の駆動ベルト41を巻回し、この駆動ベルト41にキャリッジ39を固定することにより、プーリ40の回転駆動力でキャリッジ39と一体的にプリントヘッドHを往復作動させるよう構成している。
【0025】
前記第1、第2搬送ローラ31、32を同期駆動するステッピングモータ型のペーパー搬送モータMSと、前記プーリ40を駆動するサーボモータ型の主走査モータM40と、プリントヘッドHの位置をフィードバックするようにロータリエンコーダで成る位置検出機構Sと、プリントヘッドHに形成されたインク噴射孔からインクを噴射させるピエゾ素子等のヘッド駆動機構42とを備え、これらを制御する制御系(図6を参照)を備えている。また、前記主走査モータM40としてステッピングモータを用いることも可能であるが、本発明のインクジェットプリンターでは、静粛性に優れ、ロータリエンコーダ型の位置検出機構Sとの組み合わせでプリントヘッドHを高精度で位置制御できるサーボモータを用いている。特に、前記位置検出機構Sとしてロータリエンコーダに代えて、駆動ベルト41あるいはプリントヘッドHと、固定系との相対位置関係をデジタル信号で出力するリニヤ型のエンコーダ(例えば、エンコーダベルト)を用いることも可能である。
【0026】
このような構成から、ペーパーPに画像(後述するプリントデータから生成される画像)をプリントする際には、前記ペーパーPを停止させた状態でプリントヘッドHを主走査方向に沿う一方の方向に作動させ乍ら(主走査方向への作動に伴い)ヘッド駆動機構42を駆動することによりペーパーPにインクを噴射する形態で図5に示す如く設定されたプリント幅で画像のプリントを行い、この主走査方向へのプリントが終了すると、前記第1、第2搬送ロー31、32を同期駆動することにより前記プリント幅に対応した単位搬送量WだけペーパーPを搬送し、この後、プリントヘッドHを主走査方向に沿う他方(逆方向)に作動させ乍ら設定されたプリント幅でのプリント作動を行い、このプリント作動を反復することによりペーパーPに画像のプリントを行うように構成されている。ちなみに、このプリント形態ではプリントヘッドHの往復作動時にプリントを行い、このプリントとプリントとの間のタイミングで単位搬送量WだけペーパーPを間歇的に搬送することになる。
【0027】
図面には示していないが、前記プリントヘッドHのインク噴射面には前記7色のインクに対応して副走査方向に7列に配置された複数のインク噴射孔が形成され、この7列のインク噴射孔が形成された副走査方向での長さは前記単位搬送量Wより長く設定されている。つまり、前記単位搬送量Wは前記プリントヘッドHのインク噴出面に形成されたインク噴出孔の副走査方向での長さより短く設定され、画像を形成する際には、プリントヘッドHを主走査方向に複数回作動させ、ペーパーPの同じ位置にインクを重ねて噴射するプリント形態が採用されている。また、前記ヘッド駆動機構42は、プリントデータの濃度情報に基づき夫々のインク噴射孔から噴射させるインク量(インク粒子径)を調節するよう機能する。
【0028】
前記カッターユニットU3は、図3、図4に示すように、フレーム(図示せず)に固定された固定刃45と、可動刃46と、この可動刃46を駆動するようカッターモータM46からの回転駆動力を往復作動力に変換するクランク式の駆動機構47とを備えると共に、このカッターユニットU3の切断位置を通過したペーパーPを搬送する圧着型の排出ローラ48を備えている。この排出ローラ48は排出モータM48で駆動されるよう構成され、ペーパーPにプリントされた画像の境界位置がカッターユニットUの切断位置に達すると、カッターモータM46画像を駆動して画像の境界位置で切断し、切り離されたペーパーPを排出ローラ48で前記スイッチバックユニットU4に受け渡すよう作動する。
【0029】
前記スイッチバックユニットU4は、駆動ローラ50と、これに圧着する位置に配置された遊転型の反転ローラ51と、図面には示していないが、駆動ローラ50を回転駆動する駆動モータと、反転ローラ51を駆動ローラ50の軸芯周りで正逆両方向に90度作動させる反転機構とを備えている。そして、このスイッチバックユニットU4では、前記排出ローラ48で搬送されることにより先端側から送り込まれるペーパーPを駆動ローラ50と反転ローラ51とで圧着した状態で更に搬送した後、図3に矢印で示すように、反転ローラ51を前記駆動ローラ50の軸芯周りで90度回転させた後、駆動ローラ50を逆転させることにより、ペーパーPを後端側から排出ユニットU5に送り出す作動を行う結果、ペーパーPの表裏を反転させるよう構成されている。
【0030】
前記排出ユニットU5は、ペーパーPを搬送する複数の圧着ローラ55を備えると共に、この搬送ローラ51で搬送されるペーパーPを筐体上部の横送りベルト16とラック板18との何れかに送り出す経路切り換え機構(図示せず)を備えている。
【0031】
本発明のインクジェットプリンターでは、図5に示すように、前記カッターユニットU3の切断位置と、前記プリントヘッドHでプリントが行われる領域の搬送方向での下流端位置との距離Lを前記単位搬送量Wの整数倍の位置に設定しており(同図では整数の値がMに設定されている)、プリント対象とする画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さが、前記単位搬送量Wの整数倍と異なる値である場合には、画像データ変換手段68(図6を参照)が、その画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さを前記単位搬送量Wの整数倍となるよう画像データの変換(拡大又は縮小)を行うことにより、プリントデータを生成する点に特徴を有するものである。
【0032】
ペーパーPに対する画像データのプリントと、このペーパーPの切断とを行う制御系の概要を図6のように示すことが可能である。つまり、マイクロプロセッサ(CPU)を備えた制御装置60の入出力インタフェース61から前記主走査モータM40、前記ペーパー搬送モータMS、前記カッターモータM46、排出モータM48、ヘッド駆動機構42夫々に制御信号を出力する信号系が形成されると共に、この入出力インタフェース61に対して前記位置検出機構Sからの信号が入力する信号系が形成され、また、この入出力インタフェース61に対してプリント対象とする画像データと、その画像データのプリントサイズ、プリント枚数等のデータを含むオーダデータとが入力する信号系が形成されている。また、マイクロプロセッサ(CPU)に対して半導体メモリRAM/ROMに対して信号がアクセスする系が形成されると共に、ヘッド走査手段63、ペーパー搬送手段64、カッター制御手段65(切断処理手段の一例)、オーダー管理手段66、プリント制御手段67、画像データ変換手段68夫々に対して信号がアクセスする系が形成されている。ちなみに、この制御装置60で制御を実現するためにはデータバスの他にコントロールバスやアドレスバス等を必要とするものであるが、複雑化を避ける目的から図面にはコントロールバスやアドレスバス、あるいは、インタフェース類を示していない。
【0033】
本実施の形態では前記位置検出機構Sとして、ロータリエンコーダのように主走査モータM40の回転量からプリントヘッドHの位置を取得するものを想定しているが、この位置取得機構SとしてプリントヘッドHの位置を直接的に検出するリニアエンコーダを用いることや、主走査モータM40がステッピングモータのように間歇信号で駆動されるものである場合には、間歇信号を計数することによりプリントヘッドHの位置を取得するよう構成したものであっても良い。尚、ヘッド走査手段63、ペーパー搬送手段64、カッター制御手段65、オーダー管理手段66、プリント制御手段67、画像データ変換手段68はソフトウエアで構成されるものであるが、ハードウエア、あるいは、ソフトウエア、又は、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで構成しても良い。
【0034】
前記ヘッド走査手段63は、主走査モータM40の制御によりペーパーPの幅(主走査方向での長さ)に対応したストロークでプリントヘッドHを往復作動させる制御を実現するものである。前記ペーパー搬送手段64は、ペーパー搬送モータMSの制御により前記第1搬送ローラ31、第2搬送ローラ32でのペーパーPの搬送量を設定するものである。前記カッター制御手段65は、前記カッターモータM46の制御によりペーパーPの切断を実現するものである。前記オーダー管理手段66は、プリントサイズ、プリント枚数等のデータに基づきオーダデータに従ったプリントを実現するものである。プリント制御手段67は、前記ヘッド走査手段63、ペーパー搬送手段64に必要とするデータを与えると共に、前記ヘッド駆動機構42にプリントデータを与えてペーパーPに対するプリント処理を実現するものである。前記画像データ変換手段68は画像データをペーパーPの長さに対応したサイズのプリントデータに変更する処理を実現するものである。
【0035】
この制御装置60でのプリント処理の概要を図7のフローチャートのように示すことが可能である。つまり、処理の最初にオーダサイズとオーダ枚数とを含むオーダデータと画像データとをセットし、かつ、フラグに「0」をセットする(#01ステップ)。次に、プリント処理ルーチン(#100ステップ)とカッティング処理ルーチン(#200ステップ)とをプリント処理が終了するまで継続する(#02ステップ)よう処理形態が設定されている。
【0036】
前記プリント処理ルーチン(#100ステップ)は、図8のフローチャートに示すように、オーダサイズとプリント可能サイズとを比較し、これらが一致する場合には画像データを、一致するプリントサイズに対応するプリントデータに変換する(#101〜#103ステップ)。前記オーダサイズとはLサイズやSサイズ等の既存のプリントサイズを指すものであり、前記プリント可能サイズとは、少なくとも副走査方向での長さが前記単位搬送量Wの整数倍となるものを指している。
【0037】
また、オーダサイズとプリント可能サイズとを比較した結果、これらが一致しない場合には、オーダサイズに最も近いプリント可能サイズを抽出し、画像データを、抽出したプリント可能サイズのプリントデータに変換する処理が行われる(#104、#105ステップ)。この処理では、図10に示すように、プリント可能サイズの主走査方向でのサイズはオーダサイズの主走査方向での長さを一致するものを想定しているが、図11に示す如く、このプリント可能サイズの主走査方向での長さがオーダサイズの主走査方向での長さと異なるものであっても良く、この場合には、オーダサイズの主走査方向での長さと副走査方向での長さから画像データの縦横の長さの比率が求められ、この比率に対応した最適なプリント可能サイズが抽出される。
【0038】
前述したプリント可能サイズを抽出し、プリントデータに変換する場合の処理を模式的に示すと、図10に示すように、パーパーPの幅Gとオーダサイズの主走査方向での長さEとが一致する場合には、次に、単位搬送量Wの整数倍の値(W×N)とオーダサイズの副走査方向での長さFとを比較し、一致する整数Nが存在する場合(F=W×N)には、主走査方向での幅G(Eと一致する)と副走査方向での長さX(W×Nと一致する)をプリントデータにするよう画像データの変換を行い、また、一致しない場合には(F≠W×N)、以下の第1の手段での変換と、第2の手段での変換との2種の変換形態の何れか一方の変換が選択される。
【0039】
つまり、第1の手段では、画像データのオーダサイズの副走査方向での長さFの拡大又は縮小を行った後の長さ(R・F)が前記単位搬送量の整数倍と一致する(R・F=W×N)ための係数Rを求め、この係数Rをオーダサイズの副走査方向での長さFに乗ずる形態での変換(R・F)を行うものであり、このような変換を行うことにより副走査方向での画像データを失うことのないプリントが可能となる。尚、この処理において示したW×Nの長さがプリントデータの副走査方向での長さXに一致する。
【0040】
また、第2の手段では、前記単位搬送量Wに整数Nを乗じた値(W×N)と、画像データのオーダサイズの副走査方向での長さFとを比較し、この値(W×N)が長さFより小さくなる整数Nのうち(F>W×N)、最大の値となる整数N、つまり、整数Nが、F>W×Nであり、かつ、F<(N+1)×Wとなる整数Nを抽出し、単位搬送量Wに整数Nを乗じた値(W×N)を副走査方向での長さXに設定するよう、画像データの端部を切り取る形態でプリントデータに変換する。尚、この処理により生成されたプリントデータの副走査方向での長さは、オーダサイズの副走査方向での長さFから、(W×N)の値を切り取った構造となる(F−(W×N)を演算した値が切り取り量となる)。
【0041】
また、図11に示すように、パーパーPの幅Gとオーダサイズの主走査方向での長さEとが一致しない場合には、まず、パーパーPの幅Gとオーダサイズの主走査方向での長さEとの比率K(係数)を求め、この比率Kに基づいて補正後のオーダサイズ(K・E,K・F)を求める。この比率Kはオーダサイズに乗ずる係数として機能するものであり、同図に示すようにパーパーPの幅Gよりオーダサイズの主走査方向での長さEが大きい場合に、この比率Kは「1」より小さい値となり、この逆の場合には「1」より大きい値となる。この比率Kをオーダサイズに乗ずる処理が予備変換処理であり、この予備変換処理によってオーダサイズの主走査方向でのサイズEがK・Eに変換され、副走査方向でのサイズFがK・Fに変換される。
【0042】
次に、単位搬送量Wの整数倍の値(W×N)と予備変換後のオーダサイズの副走査方向での長さ(K・F)とを比較し、一致する整数Nが存在する場合(K・F=W×N)には、主走査方向での幅G(K・Eと一致する)と副走査方向での長さX(W×Nと一致する)をプリントデータにするよう画像データの変換を行い、また、一致しない場合には(K・F≠W×N)、以下の第1の手段での変換と、第2の手段での変換との2種の変換形態の何れか一方の変換が選択される。
【0043】
つまり、第1の手段では、予備変換後のオーダサイズの副走査方向での長さK・Fの拡大又は縮小を行った後の長さ(R・K・F)が前記単位搬送量の整数倍と一致する(R・K・F=W×N)ための係数Rを求め、この係数Rを予備変換後の副走査方向での長さK・Fに乗ずる形態での変換(R・K・F)を行うものであり、このような変換を行うことにより副走査方向での画像データを失うことのないプリントが可能となる。尚、この処理において示したW×Nの長さがプリントデータの副走査方向での長さXに一致する。
【0044】
また、第2の手段では、前記単位搬送量Wに整数Nを乗じた値(W×N)と、予備変換後のオーダサイズの副走査方向での長さK・Fとを比較し、この値(W×N)が長さK・Fより小さくなる整数Nのうち(K・F>W×N)、最大の値となる整数N、つまり、整数Nが、K・F>W×Nであり、かつ、K・F<(N+1)×Wとなる整数Nを抽出し、単位搬送量Wに整数Nを乗じた値(W×N)を副走査方向での長さXに設定するよう、画像データの端部を切り取る形態でプリントデータに変換する。尚、この処理により生成されたプリントデータの副走査方向での長さは、予備変換後のオーダサイズの副走査方向での長さK・Fから、(W×N)の値を切り取った構造となる(K・F−(W×N)を演算した値が切り取り量となる)。
【0045】
因みに、プリントデータは前述したように7色のインクに対応した7種類のビットマップ構造のデータであり、プリント可能サイズに変換されたプリントデータの主走査方向でのドット数と副走査方向でのドット数とは、前記プリントヘッドHの解像度に対応して決まることになる。また、前記制御装置60にセットされる画像データはR(赤)・G(緑)・B(青)の三原色データであり、このデータはプリンタドライバにより前記ビットマップ構造のプリントデータに変換される。
【0046】
このようにプリントデータが生成された後には、プリントデータの副走査方向でのサイズXに対応した搬送回数(N:前記整数と一致)がセットされ、プリント可能サイズに対応したペーパーPを供給し、プリントデータに基づいたプリント処理が実行されるのである(#106、#107ステップ)。
【0047】
前記カッティング処理ルーチン(#200ステップ)は、前記単位搬送量Wに対応した1ピッチの搬送毎にカウント値Qをインクリメントする処理〔Q←Q+1〕を行い(#201ステップ)、フラグを判別してフラグが「0」である場合には、カウント値Qが値Mに達した場合にのみ切断処理を実行し、次に、フラグに「1」をセットし、カウント値Qを「0」にセットする(#202〜#205ステップ)。
【0048】
このフラグが「0」である場合に実行される切断処理は、プリント開始直後の1枚目の画像より先端側に位置する余白部分を切断して除去する処理である。つまり、前記値Mは、前記カッターユニットU3の切断位置と、前記プリントヘッドHにおいてプリントが行われる領域の搬送方向での下流端位置との距離Lを前記単位搬送量Wの値で除して得られる数値と一致するものであり、カウント値Qが値Mに達した場合には、ペーパーPにプリントされた画像における搬送方向での下流側の境界位置が前記カッターユニットU3の切断位置に達していると判断でき、このタイミングで切断作動を行うことによって余白部分を切断して除去できるのである。また、この切断処理は、プリント開始直後に1度だけ実行される処理である。
【0049】
次に、フラグが「1」である場合には、カウント値Qが値Nに達した場合にのみ切断処理を実行し、この切断処理を実行した後にはカウント値Qの値を「0」にセットする(#202、#206〜#208ステップ)。つまり、フラグが「1」である場合に実行される切断処理は、前述したように余白を除去するための切断作動が既に行われた後に、ペーパーPにプリントされた画像同士の境界位置を切断するために反復して行われる切断処理である。
【0050】
特に、#204ステップ、#207ステップの何れの切断処理においても、プリントヘッドHが主走査方向に作動してプリントが行われている際に、この切断処理が実行されるものであり、このようにプリントヘッドHが作動しているタイミング、つまり、ペーパーPの搬送が停止しているタイミングで切断作動を行うことによって、切断処理を行うためだけにペーパーPの搬送を停止させる必要がなく、切断処理を行うためにペーパーPの搬送を行う処理を行わずに済むものにしている。
【0051】
このように、本発明のインクジェットプリンターはプリントヘッドHによるプリント位置とカッターユニットU3の切断位置との距離を、前記単位搬送量Wの整数倍にセットすると云うハードウエア的な構成と、プリントすべき画像データに設定されたオーダサイズが、プリント可能サイズに一致しない場合には、そのオーダサイズに最も近いプリント可能サイズとなるように画像データを変換すると云うソフトウエア的な構成とを組み合わせることにより、プリントすべき画像データに設定されたオーダサイズが、プリント可能サイズに一致しない場合でも無理のないサイズでのプリントを行い、しかも、ペーパーPの搬送が停止しているタイミングでペーパーPの切断を行い迅速なプリント処理を実現するものとなっている。
【0052】
ちなみに、前記単位搬送量Wは、大型のプリンターでも数mm程度であり、オーダサイズに代えて、プリント可能サイズでプリントを実行した場合でも、そのプリント可能サイズとオーダサイズとの長さでの差は数mm以下となり、実用上の問題は殆どない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】インクジェットプリンタの斜視図
【図2】筐体の一部を開放したインクジェットプリンタの斜視図
【図3】ペーパーの搬送経路の概要を示す図
【図4】プリント搬送ユニットとカッターユニットとを示す斜視図
【図5】パーパーの搬送形態を示す模式図
【図6】制御系のブロック回路図
【図7】プリント処理のフローチャート
【図8】プリント制御ルーチンのフローチャート
【図9】カッティング処理ルーチンのフローチャート
【図10】ペーパーの幅とオーダサイズの幅が一致する状況におけるプリント形態を示す模式図
【図11】ペーパーの幅とオーダサイズの幅が一致しない状況におけるプリント形態を示す模式図
【符号の説明】
【0054】
31、32 搬送機構
65 切断処理手段
68 画像データ変換手段
H プリントヘッド
P ペーパー
U3 カッターユニット
W 単位搬送量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のペーパーを長手方向に搬送する搬送機構と、主走査方向への作動に伴い前記ペーパーにインクを噴射して画像をプリントするプリントヘッドと、プリント後のペーパーを切断するカッターユニットとを備えているインクジェットプリンターであって、
前記カッターユニットの切断位置と前記プリントヘッドとの間において前記ペーパーが搬送される距離を、前記プリントヘッドの主走査方向への1作動毎に前記搬送機構によって前記ペーパーが副走査方向に搬送される単位搬送量の整数倍に設定すると共に、
画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さと、前記単位搬送量を整数倍した長さとを比較して一致しない場合には、この画像データを、そのオーダサイズの副走査方向での長さが前記単位搬送量の整数倍の長さに一致するサイズとなるプリントデータに変換する画像変換手段を備えているインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記画像変換手段は、前記画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さと、前記単位搬送量の整数倍とが一致しない場合には、前記画像データのオーダサイズの副走査方向での長さを拡大又は縮小し、この拡大又は縮小後の長さが前記単位搬送量の整数倍と一致するサイズのプリントデータに変換するように処理形態が設定されている請求項1記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
前記画像変換手段は、前記画像データに設定されたオーダサイズの副走査方向での長さと、前記単位搬送量の整数倍とが一致しない場合には、前記画像データのオーダサイズの副走査方向での端部を切り取り、この切り取り後の長さが前記単位搬送量の整数倍と一致するサイズのプリントデータに変換するように処理形態が設定されている請求項1記載のインクジェットプリンター。
【請求項4】
前記画像変換手段は、前記画像データに設定されたオーダサイズの主走査方向での長さと、前記ペーパー幅とを比較し、一致しない場合には、オーダサイズの主走査方向での長さを、前記ペーパー幅に一致又は近似させる拡大率又は縮小率を求め、この拡大率又は縮小率でオーダサイズを補正する予備変換を行い、この予備変換の後に、補正後のオーダサイズの副走査方向での長さと、前記単位搬送量を整数倍した長さとを比較して一致しない場合には、前記プリントデータへの変換処理を行うよう処理形態を設定している請求項1記載のインクジェットプリンター。
【請求項5】
前記単位搬送量ずつ前記ペーパーを間歇的に搬送するよう前記搬送機構の搬送形態が設定されると共に、この単位搬送量での搬送が行われた回数を計数することにより前記ペーパーの搬送量を取得してプリントデータの境界位置を判別し、この境界位置が前記カッターユニットの切断位置に達したことを判別したタイミングで前記カッターユニットを作動させて切断を行う切断処理手段を備えている請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−27013(P2006−27013A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207403(P2004−207403)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】