説明

インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法

【課題】各色のインクによる印刷が可能なインクジェットプリンタにおいて、印刷ヘッドのクリーニングによるインク消費量の低減を図る。
【解決手段】ノズルの目詰まり具合をチェックするテスト印刷を、クリーニングを実行する毎に繰り返し実行し(ステップS13)、テスト印刷結果に基づきクリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると(ステップS15)、選択されたクリーニング対象ヘッドに対するクリーニングを行う(ステップS19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ヘッドのクリーニングを行うインクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インク収容室であるインクタンクから印刷ヘッドにインクを供給し、印刷ヘッドにある複数のインク吐出用のノズルからインクを印刷用紙に吐出することにより印刷を行う。液体のインクを扱う関係上、インクタンクからノズルに至るまでの経路に気泡などが溜まってインクを均一に吐出できなくなることがあるため、殆どのインクジェットプリンタにはクリーニング機能が設けられている。クリーニング機能は、ノズルのインク吐出面にキャップをし、吸引ポンプで負圧をかけて密閉した後、インクを吸引することにより、目詰まりを解消するものである。しかし、このクリーニング処理にはかなりの量のインクを必要とすることから、できる限りその量を減らしたいという要望がある。
【0003】
特許文献1には、クリーニングによるインク消費量を抑制する技術が開示されている。すなわち、特許文献1には、印刷処理を実行するにあり、生成された印刷データを解析しこれから実行する印刷処理に必要なインク色を決定し、そのインクヘッドのみのクリーニングを行うことができるインクジェットプリンタが開示されている。さらに、印刷処理に必要なインクヘッドだけキャッピングを解除し、それ以外の色のインクヘッドはキャッピングしたままの状態で印刷処理を行うことができるようになっている。これにより、印刷処理に使用されない色のインクヘッドはキャッピングされたままなので、ノズルの乾燥を防止することができる。また、印刷処理に使用されない色のインクヘッドはクリーニングされることがないのでクリーニングによる無駄なインク消費を防止することができるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、ユーザがノズルに目詰まりが生じているか否かを目詰まりパターンに基づき判断し、目詰まりが有ることが入力されると、全てのインクヘッドに対してクリーニングを実行するよう設定されたインクジェットプリンタが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平08−142351号公報
【特許文献2】特開平10−278287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットプリンタの場合、クリーニングを実行するか否か、あるいはキャッピングを行うか否かの判断は、印刷データに基づきプリンタに組み込まれたファームウェアにしたがって自動的に行われる。すなわち、プリンタはこれから実行する印刷処理に必要なインクが何色なのかを識別することはできるが、どのインクヘッド(ノズル)が目詰まりしているか否かを識別できるわけではない。このため、これから印刷処理に使用するインクヘッドに設けられている全てのノズルに対してクリーニングを行ってしまうため、クリーニングが必要でないノズルに対してまでクリーニングを行ってしまうことが想定される。
【0007】
また、特許文献2に記載のインクジェットプリンタでは、ユーザによる目詰まり有りの入力に応じて、全てのインクヘッドに対するクリーニングを行ってしまう。これでは、目詰まりが生じていないノズルに対してもクリーニングが行われてしまう可能性があり、クリーニングによるインク消費量を低減させるためにはさらなる改良の余地があるところである。
【0008】
したがって本発明は、上記課題に鑑み、目詰まりが生じているインクヘッドをユーザが指定することによって、指定されたインクヘッドに対してのみクリーニングを実行することができるようにすることを目的とする。
【0009】
さらには、目詰まりが生じているインクヘッドのノズルをユーザが判別することができ、かつ目詰まりが生じているインクヘッドのノズルをユーザが指定することによってクリーニングによるインク消費量の更なる低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、各色のインクに対応して設けられ、インクタンクから供給されるインクを吐出させる複数のノズルを備えた複数の印刷ヘッドと、クリーニング実行指示に基づき前記印刷ヘッドのノズルから前記インクを吸引して印刷ヘッドのクリーニングを行うクリーニング機構と、前記ノズルの目詰まり具合をチェックするテスト印刷を、前記クリーニングを実行する毎に繰り返し実行する印刷制御部と、テスト印刷結果に基づき前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する前記クリーニングを行うよう前記クリーニング機構を制御するクリーニング制御部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、各色のインクに対応して設けられ、インクタンクから供給されるインクを吐出させる複数のノズルを備えた複数の印刷ヘッドと、クリーニング実行指示に基づき前記印刷ヘッドのノズルから前記インクを吸引して印刷ヘッドのクリーニングを行うクリーニング機構と、を備えたインクジェットプリンタのクリーニング制御方法であって、
前記ノズルの目詰まり具合をチェックするテスト印刷を、前記クリーニングを実行する毎に繰り返し実行し、
テスト印刷結果に基づき前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する前記クリーニングを行うこと特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、テスト印刷結果に基づきクリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対するクリーニングを行う。したがって、ユーザはテスト印刷結果から目詰まりを起こしている印刷ヘッドを確認することができる。そして、印刷ヘッド選択指示を与えることによって目詰まりを起こしていない正常な印刷ヘッドに対するクリーニングは実行されず、目詰まりを起こしている印刷ヘッドに対してのみクリーニングが実行される。このため、クリーニングによって無駄なインクが消費されることを抑制することができインク消費量を低減させることができる。
【0013】
また、本発明は、前記クリーニングの実行回数を記憶するクリーニング情報記憶部を有し、前記クリーニング制御部は、前記印刷ヘッド選択指示がある毎に繰り返し前記クリーニングを実行し、前記実行回数が前記1つのクリーニング実行指示で行われる最大クリーニング実行回数以上である場合に、前記クリーニングを実行することなくクリーニング異常終了を通知することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記インクジェットプリンタは、前記クリーニングの実行回数を記憶するクリーニング情報記憶部を有し、
前記印刷ヘッド選択指示がある毎に繰り返し前記クリーニングを実行し、
前記実行回数が前記1つのクリーニング実行指示で行われる最大クリーニング実行回数以上である場合に、前記クリーニングを実行することなくクリーニング異常終了を通知することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、クリーニングの実行回数が、1つのクリーニング実行指示で行われる最大クリーニング実行回数以上である場合には、クリーニングを実行することなくクリーニング異常終了を通知する。通常ユーザは、テスト印刷結果を確認してノズルの目詰まりが解消されない場合には、印刷ヘッド選択指示を繰り返し与えて複数回クリーニングを実行することが予想される。しかしながら、複数回クリーニングを実行しても正常なテスト印刷結果が得られない場合は、それ以上クリーニングを実行しても改善される見込みがない。このような状態でユーザの印刷ヘッド選択指示が与えられるままにクリーニングが行われると、無駄にインクを消費してしまうことになる。したがって、予め最大クリーニング実行回数を設定しておくことによって、無駄なインクが消費されることを抑制することができインク消費量を低減させることができる。なお、最大クリーニング実行回数とは、ノズルの目詰まりが生じた場合に、クリーニングによって目詰まりを解消できると想定される実行回数であって、例えば3回程度が好ましい。
【0016】
また、本発明において、前記クリーニング制御部は、前記テスト印刷結果に基づき、各印刷ヘッドに備えられたノズルのうち前記クリーニングを必要とするノズルを選択するノズル選択指示があると、選択されたクリーニング対象ノズルに対する前記クリーニングを行うよう前記クリーニング機構を制御することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記テスト印刷結果に基づき、各印刷ヘッドに備えられたノズルのうち前記クリーニングを必要とするノズルを選択するノズル選択指示があると、選択されたクリーニング対象ノズルに対する前記クリーニングを行うことを特徴とする
【0018】
上記構成によれば、クリーニングを必要とするノズルを選択するノズル選択指示があると、選択されたクリーニング対象ノズルに対するクリーニングを行うことができるので、選択されなかったノズルに対するクリーニングは実行されない。このため、目詰まりを起こしているノズルに対してのみクリーニングを行うので、クリーニングによるインク消費量の更に低減することができる。
【0019】
また、本発明において、前記クリーニング制御部は、通常印刷結果に基づき前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する最初のクリーニングを行い、
前記クリーニングの実行後に得られる前記テスト印刷結果に基づき再び前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する2回目以降のクリーニングを行うことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、通常印刷結果に基づき前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する最初のクリーニングを行い、
前記クリーニングの実行後に得られる前記テスト印刷結果に基づき再び前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する2回目以降のクリーニングを行うことを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、通常印刷結果に基づき印刷ヘッド選択指示を与えると最初のクリーニングを行うよう構成されている。ここでいう、通常印刷結果とは、クリーニング実行指示に応じて行われるテスト印刷とは異なり、インクジェットプリンタが通常の印刷処理を行うことによって得られる印刷結果をいう。例えば、赤黒2色のインクに対応する印刷ヘッドを備えたインクジェットプリンタであれば、通常印刷結果を参照するだけでどちらの色の印刷ヘッドに目詰まりが生じているか判断することができる。すなわち、テスト印刷を実行するまでもなくクリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択することができる。したがって、最初のテスト印刷を行う必要がないので、その分のインク消費を削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの内部処理の要部を説明するための制御ブロック図である。
本実施形態のインクジェットプリンタ20は、ホストコンピュータ10からの印刷指示に応じて印刷を行う。
【0023】
以下、図1に示す制御ブロック図を参照して、インクジェットプリンタ20を更に詳しく説明する。同図において、インクジェットプリンタ20は、主としてホストコンピュータ10と通信を行う通信インターフェース201と、各色のインクに対応して設けられ、図示せぬインクタンクから供給されるインクを吐出させる複数のノズルを備えた複数の印刷ヘッド206と、クリーニングボタン212からのクリーニング実行指示、あるいは通信インターフェース201を介して与えられるクリーニング実行指示に応じて、印刷ヘッド206のクリーニングを実行するクリーニング機構208、とを備えている。クリーニング機構208は、印刷ヘッド206のインク吐出面を覆うキャップ部材(不図示)、印刷ヘッド206を覆った状態で負圧をかけノズルからインクを吸引する吸引ポンプ等から構成されている。
【0024】
さらに、インクジェットプリンタ20は、上記機械的構成部の動作を制御する制御部220を有している。制御部220は、クリーニング機構の動作を制御するクリーニング制御部207と、印刷ヘッド206やキャリッジ等の印刷機構部の動作を制御する印刷制御部204と、クリーニングボタン212からの入力信号を監視する入力管理部209と、クリーニングの実行回数を記憶するクリーニング情報制御部210と、ホストコンピュータ10から送信された印刷データや印刷コマンド等の各種コマンドを一時的に記憶する受信バッファ202と、印刷データが展開されるプリントバッファ205と、インクジェットプリンタ20の全体動作を総合的に管理制御する主制御部203と、を備えている。
【0025】
一般に、インクジェットプリンタには、定期的に行われる自動クリーニングと、ユーザが指示を与えたタイミングで実行されるマニュアルクリーニングとが設定されているが、以下では、マニュアルクリーニングを対象として説明する。主制御部203を介してクリーニング実行指示がクリーニング制御部207、印刷制御部204に伝えられると、クリーニング機構208および印刷ヘッド206はクリーニング処理に関するファームウェアにしたがって、クリーニング処理を実行する。
【0026】
本実施形態のインクジェットプリンタ20が備える印刷ヘッド206は、例えば赤黒2色のインクタンクに対応した構成となっている。クリーニング機構208は、それぞれの印刷ヘッドに対して独立してキャップすることができる構造となっており、キャッピングした方の印刷ヘッドのノズルからのみインクを吸引することができる。すなわち、ホストコンピュータ10から送信される印刷ヘッド選択指示に応じて、クリーニング制御部207は選択された印刷ヘッドに対するクリーニング処理を実行するようクリーニング機構208を制御する。
【0027】
さらに、クリーニング機構208は、それぞれの印刷ヘッドが備える各ノズルに対して独立してインク吸引動作を実行することができる構造となっており、キャッピングした方の印刷ヘッドのうち選択されたノズルからのみインクを吸引することができる。すなわち、ホストコンピュータ10から送信されるノズル選択指示に応じて、クリーニング制御部207は選択された印刷ヘッドのノズルに対するクリーニング処理を実行するようクリーニング機構208を制御する。
【0028】
なお、ノズル単位のインク吸引を行うには、例えばキャップ部材に各ノズルに対応する選択開閉弁を設け、印刷ヘッドのインク吐出面をキャップしたときに、ノズル選択指示によって選択されたノズルのみを閉ざすことによって吸引ポンプの負圧を伝達させないようにすれば、閉ざされたノズルからはインクを吸引させないようにすることができる。ただし、このような実施方法に限られず各ノズルから独立してインクを吸引することができる構成であれば他の構成であってもよい。
【0029】
クリーニング実行指示が印刷制御部204に伝えられると、印刷制御部204は印刷ヘッド206のノズルの目詰まり具合をチェックするためのテスト印刷を実行する。本実施形態では、印刷ヘッド選択指示に応じて、赤黒の印刷ヘッドのうち選択された印刷ヘッドのみを駆動させてテスト印刷を実行する。また、ノズル選択指示に応じて、印刷ヘッド206のうちから選択されたノズルのみを駆動させてテスト印刷を実行することができる。
【0030】
主制御部203は、印刷ヘッド206をクリーニングするに際し、規定回数以上クリーニングを行ったかどうかを判定する。規定回数以上クリーニングを行っていなければ、即ちクリーニング実行回数が規定回数未満であれば、クリーニング制御部207にクリーニング処理を実行させる。これに対して、規定回数以上クリーニングを行っていれば、即ちクリーニング実行回数が規定回数以上であれば、ユーザに異常終了を通知する。この通知は、ホストコンピュータ10を介して行うか、もしくは図示せぬ表示部にて行うようにしてもよい。クリーニング実行回数は、主制御部203によってクリーニング情報記憶部210に記憶され、主制御部203はクリーニングの実行にあたってクリーニング情報記憶部209に記憶されたクリーニング実行回数を参照する。なお、クリーニング情報記憶部209には、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の揮発性メモリが用いられる。
【0031】
次に、印刷ヘッド206のノズルクリーニング処理について、図2から図9を参照して説明する。図2は、本実施形態のインクジェットプリンタが行うクリーニング処理を説明するためのフローチャートであり、図3は、テスト印刷結果を示す模式図であり、図4は、ホストコンピュータのユーザインターフェースに表示される印刷ヘッドの選択画面の模式図であり、図5は、印刷ヘッドが選択された後に行われたテスト印刷によって得られる印刷結果の模式図であり、図6は、ノズル単位でクリーニングを行う場合のテスト印刷結果を示す模式図であり、図7は、ホストコンピュータのユーザインターフェースに表示される印刷ヘッド毎のクリーニング対象ノズル選択画面の模式図であり、図8は、クリーニング対象ノズルが選択された後に行われたテスト印刷によって得られる印刷結果の模式図であり、図9は、規定回数以上のクリーニングを実行したときに表示されるクリーニング異常終了を通知画面である。
【0032】
まず、クリーニング実行指示があるかどうか判定する(ステップS11)。すなわちクリーニングボタン212を操作したときの信号、あるいはホストコンピュータ10からクリーニング実行指示を受信したかどうかを判定する。クリーニング実行指示がない場合はこのステップを繰り返し、クリーニング実行指示があれば全ての印刷ヘッド206をクリーニング対象ヘッドに設定する(ステップS12)。すなわち、赤色と黒色の2つの印刷ヘッド206をクリーニング対象ヘッドに設定する。次いで、クリーニング対象ヘッドの目詰まり状態を確認するためにテスト印刷を行う(ステップS13)。
【0033】
テスト印刷が終了すると、ユーザは図3に示すそのテスト印刷結果から赤色と黒色の印刷ヘッド206の状態を確認する(ステップS14)。そして、正しく印刷されていれば、ユーザは異常がないものと判断して、クリーニング処理を終了する操作を行う(ステップS15:Yes)。この操作により主制御部203はユーザに正常終了を通知する(ステップS16)。これに対して、2つの印刷ヘッド206のうち、いずれか1つでも異常であれば、ユーザは図4に示す印刷ヘッド選択画面から正常に印刷できない印刷ヘッドを選択する(ステップS15:No)。具体的には、図4に示すような表示(「正しく印字できないヘッドにチェックを入れて下さい」)がプリンタ本体の表示部(図示略)又はホストコンピュータ10に表示されるものとすると、ユーザが正しく印字できていない印刷ヘッド206に対してチェックを入れる(印刷ヘッド選択指示)。ここでは、図3のテスト印刷結果から、赤色の印刷結果に白すじが入っているため、赤色の印刷ヘッドのノズルに目詰まりが生じているものと考えられる。そこで、ユーザはして赤色のヘッド2(赤)のチェックボックスにチェックを入れる。
【0034】
次に、クリーニング情報記憶部210に記憶されているクリーニング実行回数を参照し、規定回数(最大クリーニング実行回数)以上のクリーニングが実行されたか否かを判断する(ステップS16)。規定回数は、1つのクリーニング実行指示に基づいて実行されるクリーニングの最大実行回数であって、インクジェットプリンタ20に予め設定されている回数である。本実施形態では3回に設定されている。クリーニング実行回数が規定回数(3回)未満であれば(ステップS16:No)、クリーニング対象ヘッドをユーザが指定した印刷ヘッド(この場合、赤色の印刷ヘッド206)に設定し(ステップS18)、そのクリーニング対象ヘッドをクリーニングする(ステップS19)。このときクリーニング情報記憶部210のクリーニング実行回数を1回として記憶する。この処理を終えると、ステップS13に戻り、再びテスト印刷を行う。
【0035】
図5は、クリーニング対象ヘッド(赤色の印刷ヘッド)についてのみクリーニングした後のテスト印刷結果である。クリーニングを行うことによって、図3に示す場合と比べて改善されていることが分かる。しかしながら、ユーザは図5に示すテスト印刷結果からまだ白すじが残っており完全ではないことを確認すると(ステップS14)、再び図4の印刷ヘッド設定画面において「ヘッド2(赤)のチェックボックスにチェックを入れる(ステップS15:No)。前回のクリーニングによってクリーニング情報記憶部210に記憶されたクリーニング実行回数(1回)が規定回数(3回)以上であるかを判断する(ステップS16)。ここでは、クリーニング実行回数は未だ規定回数未満であるためクリーニング対象ヘッドを赤色の印刷ヘッドに設定し再び赤色の印刷ヘッドのみクリーニングを実行する(ステップS19)。以降、規定回数の範囲内でステップS13〜ステップS19の処理が繰り返される。
【0036】
なお、ステップS11で与えられたクリーニング実行指示に基づいて実行されたクリーニングが規定回数(3回)以上となった場合には(ステップS16:Yes)、ユーザに図9に示すようにクリーニングの異常終了が通知される(ステップS17)。
【0037】
このように、本実施の形態のインクジェットプリンタ20によれば、ユーザがクリーニングボタン212の操作を行うとクリーニングを開始し、全ての印刷ヘッド206をクリーニング対象ヘッドに設定してテスト印刷を行い、その結果をユーザが確認してクリーニングを必要とする印刷ヘッドを指定すると、クリーニング実行回数が規定回数未満であれば、ユーザが指定した印刷ヘッドに対してクリーニングを行う。したがって、ユーザが指定した印刷ヘッド206のみクリーニングを行うことから、印刷ヘッド206のクリーニングによるインク消費量の低減が可能となる。
【0038】
(変形例)
上記第1実施形態は、印刷ヘッド単位(即ち色単位)のクリーニング処理を行うものであったが、本変形例は、ノズル単位でクリーニング処理を行うものである。なお、クリーニング処理の流れは図2に示すフローチャートと同様である。インクジェットプリンタの構成そのものは図1と同じであるが、印刷制御部204が、赤色および黒色の印刷ヘッドの各ノズルに番号をつけ、目詰まりが生じているノズルを特定することができるようなテスト印刷を実行することができるよう構成されている。
【0039】
図6は、各ノズルに番号をつけノズル単位でテスト印刷が行われた結果の一例である。図6の例では、黒色の印刷ヘッドではノズル3が、赤色の印刷ヘッドではノズル2に異常がある。各ノズルに番号をつけることによって、テスト印刷結果から目詰まりが生じているノズルが判明するので、ユーザはそのノズルを指定することができる。例えば、図7に示すようなノズル選択画面(「正しく印字できないノズルにチェックを入れて下さい」)がプリンタ本体の表示部(図示略)又はホストコンピュータ10に表示されるものとすると、ユーザが正しく印字できていない印刷ヘッドのノズルに対してチェックを入れる。図7では、黒色の印刷ヘッドに対して、3番、38番、50番の各ノズルに対してチェックが入れられている。赤色の印刷ヘッドに対しも同様に行われる。目詰まりが生じているノズルを指定することで、主制御部203は、クリーニング制御部207に対して、チェックされたノズルのみをリーニングする制御コマンド(ノズル選択指示)を与える。クリーニング制御部207は、主制御部203からの制御コマンドに従ってクリーニング機構208を制御し、選択されたノズルに対してのみクリーニングを行うことができる。
【0040】
図8は、図7のノズル選択画面において選択されたクリーニング対象ノズル(黒色の3番、38番、50番の各ノズル及び赤色の4番、12番、16番のノズル)についてのみクリーニングした結果である。クリーニングを行うことによって、図6に示すクリーニング実行前のテスト印刷結果と比べて改善されていることが分かる。しかし、図8に示す場合でも50番のノズルが改善されていないので、再びクリーニング処理が行われる。すなわち、上述した実施形態と同様に規定回数の範囲内で処理(図2のステップS13〜ステップS19に対応する)が繰り返される。そして、クリーニングを規定回数以上行っても改善されず、クリーニング対象ノズルを選択し続けると、図9に示すような異常終了が通知される(ステップS17)。
【0041】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタによれば、赤色及び黒色の印刷ヘッドに対するテスト印刷をノズル単位で行うことができ、ユーザは目詰まりが生じている印刷ヘッドのノズルを判別することができる。そして、ユーザが判別したノズルに対してのみクリーニングを行うので、インク消費量の更なる低減が可能となる。
【0042】
<第2実施形態>
なお、上記実施形態では、クリーニング実行指示が与えられると、そのときのノズルの目詰まり具合をテストするため初めにテスト印刷を行うよう設定されている。これを、クリーニング実行指示が与えられてから初めのテスト印刷を実行しないよう設定することも可能である。上記のように印刷ヘッドが黒色と赤色の2種類のみから構成されるインクジェットプリンタでは、通常の印刷結果からでも黒色と赤色のうちどちらのインクノズルに目詰まりが生じているかを十分判断することは可能である。つまり、ユーザは通常の印刷処理によって得られた赤黒の印刷結果を参照し、赤黒のうちどちらの印刷ヘッドのノズルが目詰まりを起こしているかを見極め、その上でクリーニング指示を行う場合は、最初のテスト印刷を行わず、クリーニング対象ヘッドを初めから選択できるよう構成してもよい。
【0043】
初めのテスト印刷を省いた場合のノズルクリーニング処理は、図10のフローチャートに示すようになる。
ユーザは通常印刷処理において得られた赤黒の印刷結果からノズルの目詰まりを認識すると、目詰まりを解消させるためマニュアルクリーニングを実行しようと考える。
ユーザがクリーニングボタン212を操作すると、クリーニング実行指示がインクジェットプリンタに与えられる(ステップS21:Yes)。
【0044】
通常印刷結果から何れかの印刷ヘッドに異常があれば、ユーザは図4に示す印刷ヘッド設定画面において、クリーニング対象ヘッドを選択する(ステップS22:No)。次に、クリーニング情報記憶部210に記憶されているクリーニング実行回数を参照し、規定回数(最大クリーニング実行回数)以上のクリーニングが実行されたか否かを判断する(ステップS23)。クリーニング実行回数が規定回数未満であれば(ステップS23:No)、クリーニング対象ヘッドをユーザが指定した印刷ヘッドに設定し(ステップS24)、そのクリーニング対象ヘッドをクリーニングする(ステップS25)。このときクリーニング情報記憶部210のクリーニング実行回数を1回として記憶する。
【0045】
ここで、初めてクリーニング対象ヘッドのノズルの目詰まり状態を確認するためのテスト印刷を行う(ステップS26)。ユーザはテスト印刷結果からまだ白すじが残っており完全ではないことを確認すると(ステップS27)、再び図4の印刷ヘッド設定画面においてクリーニング対象ヘッドを選択する(ステップS22:No)。一方、ステップS27においてユーザはテスト印刷結果から目詰まりが解消したものと判断すると、印刷ヘッド設定画面においてクリーニング対象ヘッドを選択しない(ステップS22:Yes)。これによりクリーニング処理は正常に終了する。
【0046】
ステップS23において、クリーニング実行回数が未だ規定回数未満であれば、規定回数の範囲内でステップS22〜ステップS27の処理が繰り返される。
【0047】
なお、クリーニング実行回数が規定回数以上となった場合には(ステップS23:Yes)、ユーザに図9に示すようにクリーニングの異常終了が通知される。
【0048】
このように、第1実施形態で行っていた、クリーニング実行指示を受けて初めに実行する全ての印刷ヘッドによるテスト印刷を省くことで、印刷ヘッドのクリーニングによるインク消費量の更なる低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態のインクジェットプリンタの内部処理の要部を説明するための制御ブロック図である。
【図2】本実施形態のインクジェットプリンタが行うクリーニング処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】テスト印刷結果を示す模式図である。
【図4】ホストコンピュータのユーザインターフェースに表示される印刷ヘッドの選択画面の模式図である。
【図5】印刷ヘッドが選択された後に行われたテスト印刷によって得られる印刷結果の模式図である。
【図6】ノズル単位でクリーニングを行う場合のテスト印刷結果を示す模式図である。
【図7】ホストコンピュータのユーザインターフェースに表示される印刷ヘッド毎のクリーニング対象ノズル選択画面の模式図である。
【図8】クリーニング対象ノズルが選択された後に行われたテスト印刷によって得られる印刷結果の模式図である。
【図9】規定回数以上のクリーニングを実行したときに表示されるクリーニング異常終了を通知画面である。
【図10】本実施形態のインクジェットプリンタが行うクリーニング処理の第2実施形態を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10:ホストコンピュータ、20:インクジェットプリンタ、201:通信インターフェース、202:受信バッファ:203:主制御部、204:印刷制御部、205:プリントバッファ、206:印刷ヘッド、207:クリーニング制御部、208:クリーニング機構、209:入力管理部、210:クリーニング情報記憶部、212:クリーニングボタン、220:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各色のインクに対応して設けられ、インクタンクから供給されるインクを吐出させる複数のノズルを備えた複数の印刷ヘッドと、
クリーニング実行指示に基づき前記印刷ヘッドのノズルから前記インクを吸引して印刷ヘッドのクリーニングを行うクリーニング機構と、
前記ノズルの目詰まり具合をチェックするテスト印刷を、前記クリーニングを実行する毎に繰り返し実行する印刷制御部と、
テスト印刷結果に基づき前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する前記クリーニングを行うよう前記クリーニング機構を制御するクリーニング制御部と、を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記クリーニングの実行回数を記憶するクリーニング情報記憶部を有し、
前記クリーニング制御部は、前記印刷ヘッド選択指示がある毎に繰り返し前記クリーニングを実行し、前記実行回数が前記1つのクリーニング実行指示で行われる最大クリーニング実行回数以上である場合に、前記クリーニングを実行することなくクリーニング異常終了を通知することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記クリーニング制御部は、前記テスト印刷結果に基づき、各印刷ヘッドに備えられたノズルのうち前記クリーニングを必要とするノズルを選択するノズル選択指示があると、選択されたクリーニング対象ノズルに対する前記クリーニングを行うよう前記クリーニング機構を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記クリーニング制御部は、通常印刷結果に基づき前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する最初のクリーニングを行い、
前記クリーニングの実行後に得られる前記テスト印刷結果に基づき再び前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する2回目以降のクリーニングを行うことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
各色のインクに対応して設けられ、インクタンクから供給されるインクを吐出させる複数のノズルを備えた複数の印刷ヘッドと、クリーニング実行指示に基づき前記印刷ヘッドのノズルから前記インクを吸引して印刷ヘッドのクリーニングを行うクリーニング機構と、を備えたインクジェットプリンタのクリーニング制御方法であって、
前記ノズルの目詰まり具合をチェックするテスト印刷を、前記クリーニングを実行する毎に繰り返し実行し、
テスト印刷結果に基づき前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する前記クリーニングを行うこと特徴とするインクジェットプリンタのクリーニング制御方法。
【請求項6】
前記インクジェットプリンタは、前記クリーニングの実行回数を記憶するクリーニング情報記憶部を有し、
前記印刷ヘッド選択指示がある毎に繰り返し前記クリーニングを実行し、
前記実行回数が前記1つのクリーニング実行指示で行われる最大クリーニング実行回数以上である場合に、前記クリーニングを実行することなくクリーニング異常終了を通知することを特徴とする請求項5に記載のインクジェットプリンタのクリーニング制御方法。
【請求項7】
前記テスト印刷結果に基づき、各印刷ヘッドに備えられたノズルのうち前記クリーニングを必要とするノズルを選択するノズル選択指示があると、選択されたクリーニング対象ノズルに対する前記クリーニングを行うことを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェットプリンタのクリーニング制御方法。
【請求項8】
通常印刷結果に基づき前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する最初のクリーニングを行い、
前記クリーニングの実行後に得られる前記テスト印刷結果に基づき再び前記クリーニングを必要とする印刷ヘッドを選択する印刷ヘッド選択指示があると、選択されたクリーニング対象ヘッドに対する2回目以降のクリーニングを行うことを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェットプリンタの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−238439(P2008−238439A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78621(P2007−78621)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】