説明

インクジェットプリントヘッドの製造方法

多数の整列されるモジュール(20)を含むインクジェットプリントヘッドを製造する方法において、整列マーク(32)が第一及び第二の隣接するモジュール(20)上に形成され、整列マーク(32)は、第一及び第二の隣接するモジュール(20)間の境界上に位置付けられ、ウェーハ(26)は境界に沿って分離される。分離するステップでは、整列マーク(32)が第一及び第二の隣接するモジュール(20)に亘って分割されるよう、ウェーハ(26)は別個のモジュール(20)に分離される。前記第一及び第二の隣接するモジュール(20)の少なくとも一方は、分割後の整列マーク(32)を基準にして整列される。本方法はモジュール(20)を整列し得る精度を向上する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の整列されるモジュールを含み、複数のモジュールがウェーハの上に形成されるインクジェットプリントヘッドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
US6,692,113B2は、半導体モジュールが微小電子機械システム(MEMS)によって形成され、MEMSの各々は、複数の液滴噴射ノズルを形成するインクジェットプリントヘッド、及び、インクチャンバ、アクチュエータ等のような、関連する液滴生成機器を開示している。プリントヘッドの全ノズルアレイは、複数のそのようなモジュールから成るので、高品質の印刷画像を達成するために、モジュール、故に、その上に形成されるノズルが互いに高精度で整列されることが必要である。
【0003】
大きなウェーハから写真平版技法を用いてMEMSを形成し得る。次に、ウェーハはダイスカットされ、個々のモジュールを形成し、次に、プリントヘッドが組み立てられるとき、個々のモジュールはキャリア上に取り付けられ且つ整列される。モジュールの縁部が整列手続において基準として働き得るよう、モジュールは、典型的には、長方形の形状を有する。これはモジュールの縁部が明確な位置関係を有するようモジュールが配置されることを意味する。
【0004】
WO02/070471A1は、インクジェットプリントヘッドを製造する方法を記載しており、共通プレートの上で半導体チップを整列するために整列マークが使用され、次に、共通プレートはダイスカットされ、プリントヘッドモジュールを形成する。ノズルは別個のノズルプレートに形成され、ノズルプレートはチップの上に結合され、その上に形成される整列マークを覆う。
【0005】
US−A−5,719,605は、半導体チップを覆うノズルプレートの上に整列マークが形成される方法を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モジュールを整列し得る精度を向上することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に従った方法は、
ウェーハ(26)の上に多数のモジュール(20)を形成するステップと、
第一及び第二の隣接するモジュール(20)の上に整列マーク(32)を形成するステップであって、整列マーク(32)は、第一及び第二の隣接するモジュールの間の境界(30)の上に位置付けられ、ウェーハ(26)は、境界に沿って分離されるステップと、
整列マーク(32)が第一及び第二の隣接するモジュール(20)に亘って分割されるよう、ウェーハ(26)を別個のモジュール(20)に分離するステップと、
分割後の整列マーク(32)を基準にして第一及び第二の隣接するモジュール(20)の少なくとも一方を整列するステップとを含む。
【0008】
整列マークの使用は、半導体装置を製造し且つ実装する技術分野において知られている。その場合には、整列マークは、例えば、ウェーハ上の異なる領域を、装置の所望のパターンをウェーハ上に投射するために使用される光学システムと整列するために使用される。更に、半導体モジュールをベース支持体と視覚的に整列するために整列マークを使用することは、当該技術分野において知られている。視覚的整列マークは、モジュールの縁部から離れてモジュールの外表面上に位置付けられる。
【0009】
分離するステップにおいて、ウェーハは別個のモジュールに分離される。分離ステップは、ダイスカット、切断、又は、レーザ切断を含み得るし、ウェーハを別個のモジュールに分離する如何なる他の方法をも含み得る。
【0010】
本発明において、整列マークは、第一及び第二の隣接するモジュールの間の境界の上に位置付けられ、ウェーハは境界に沿って分離される。分離するステップにおいて、整列マークは第一及び第二の隣接するモジュールに亘って分割される。モジュール上に残る分割後の整列マークの一部は、モジュールの縁部付近に配置され、モジュールの整列を促進し得る。具体的には、整列マークは滑らかな縁部を含み得る。整列マークの縁部は、モジュールの分離ステップ後にモジュールを整列するための基準縁部を提供し得る。具体的には、分割後の整列マークの縁部を物理的に接触させることによって、モジュールを整列し得る。
【0011】
US2003/0060024A1は、ダイスカットプロセスがグリッド状パターンの溝をウェーハにエッチング処理することによって促進される、半導体装置を製造する方法を開示している。これらの溝は、ウェーハをダイスカットすべき線を定める。
【0012】
本発明において、整列マークはモジュールを製造又は実装するプロセスにおいて使用されず、モジュールが組み立てられてインクジェットプリントヘッドを形成するとき、特にこれらのモジュールの整列を促進する目的のために、整列マークは個々のモジュールに対して適用される。プリントヘッド上の物理的な基準に対するこれらのモジュールの物理的な整列を促進するために、分割後の整列マークを使用し得る。プリントヘッド上の物理的な基準は、例えば、ノッチであり得る。
【0013】
個々のモジュール上に形成される整列マークを基準にしてモジュールが互いに対して整列されるときには、モジュールの縁部が整列基準として使用される従来技術で達成可能な精度よりも有意に高い整列精度を達成することが可能である。その理由は、ウェーハをダイスカットすることによって形成されるモジュールの縁部は余り正確ではないことにある。何故ならば、ダイスカット刃は可撓であり、摩耗、機械的応力、及び、冷却流体の熱的影響等に起因する摩耗及び変形に晒されるからである。全てのこれらの要因は、MEMSを形成する構造に対するモジュールの縁部の位置及び縁部が明確に定められず、整列精度を制限するという効果を有する。対照的に、整列が、(例えば、写真平版技法によって)モジュール構造を形成することと共に、ウェーハ上に容易に形成し得る特別な整列マークに基づくときには、整列誤差のそのような源を回避し得るので、整列精度が有意に向上される。
【0014】
本発明のより具体的な機能を従属項に示す。
【0015】
図面を参照して実施態様の実施例を今や記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】多数の整列されるモジュールを含むインクジェットプリントヘッドの一部を示す斜視図である。
【図2】複数のモジュールが形成されるウェーハの一部を示す平面図である。
【図3】ダイスカット後の個々のモジュールを拡大して示す概略図である。
【図4】本発明に従って整列された複数のモジュールを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示されるように、インクジェットプリントヘッド10は、インク供給ダクトとして働く複数の溝14を有する棒形状のキャリア12を含む。より広い溝16が加熱装置を収容し、加熱装置はインク(例えば、ホットメルトインク)をその動作温度に加熱するために使用される。
【0018】
多数の配給タイル18が、加熱装置16に跨り且つインクダクトの各々と連絡するよう、キャリア12の一方の側に取り付けられている。キャリア12と反対側において、各配給タイル18は、多数のインク吐出モジュール20と、インク吐出モジュールを制御する電子ドライバ22とを支持する。
【0019】
インク吐出モジュール20は、微小電子機械システム(MEMS)であり、例えばシリコンのような半導体材料の長方形チップの形態を有する。各モジュール20は、複数のノズル24を形成する電子機械的な微細構造を有する。図面に示されていないが、各ノズルはインク通路によってインク室に接続され、このインク通路は再び配給タイル18の対応するインク供給ラインに接続される。更に、ノズル24からインク液滴を放出するようインク室内に収容されるインクを加圧するために、モジュールはインク室と関連付けられるアクチュエータを形成し或いは収容する。
【0020】
それ自体既知であるように、全てのこれらの構造は、モジュール20がより大きなシリコンウェーハの一部を依然として形成する状態において、写真平版技法によってモジュール20内に形成される。
【0021】
図1に示される実施例において、各インク吐出モジュール20上のノズル24は、4つの平行な列を形成し、1つの列は4色の各々のためであり、モジュール20は、ノズル列が複数のモジュール20の全体に亘って連続的であり、複数の配給タイル18に亘ってさえも連続的であるように整列される。更に、モジュール20は、各列のノズル24が隣接するモジュール間の境界でさえも均一なピッチを有するよう整列されなければならない。
【0022】
図2は大量のモジュール20を形成し得るウェーハの一部を示している。
【0023】
各モジュール20の上及び内に形成される微小電子機械構造は、図2では概ね見えない。見えるのは、ウェーハを形成するシリコン材料内にエッチング処理されるノズル24だけである。
【0024】
個々のモジュールを区切る境界28,30が図2に破線で示されている。後の処理段階では、当該技術分野において周知のダイスカット刃の適切な配列を用いて、ウェーハ26は、これらの境界28,30に沿って、個々のモジュール20にダイスカットされる。
【0025】
図2に更に示されるように、多数の整列マーク32がウェーハ26内にエッチング処理される。これらの整列マーク32は、シリコン材料のウェーハ内にエッチング処理される長方形の貫通孔によって形成される。これらの長方形の孔は、個々のモジュール20のより長い縁部を制限する水平境界30の上で中心化されるよう配置され、モジュール毎に2つの整列マーク32が各境界30上のノズル24に対して対称的に設けられる。整列マーク32のより短い側部がこれらの境界によって二等分され且つ各半分が2つの隣接するモジュール20のうちの異なるモジュールに属するよう、整列マーク32を形成する長方形の孔は水平境界30と平行なより長い側部を有する。よって、各モジュール20は全部で4つの整列マーク32を有し、ダイスカット後、それらはモジュールの長手縁部において長方形のU形状切欠きの形態を有する。
【0026】
図2に示されるウェーハ段階では、MEMSの他の構造を形成する前、後、又は、同時に、同じ照射機器を用いて、整列マーク32を形成(例えば、エッチング処理)し得る。それは他の構造に対する整列マークの高い位置精度を保証する。
【0027】
その4つの整列マーク32を備える個々のモジュール20が図3により大きな縮尺で示されている。この図面では、ノズル24に対する縁部の正しい位置を伴って、モジュール20の理想的な長方形の形状が破線で示されているのに対し、ダイスカット処理の結果得られるモジュール20の真実の縁部は実線で示されている。図3に誇張して示されているように、ダイスカット刃の位置的不正確性及び変形の故に、モジュール20の真実の縁部は理想的な形状から逸脱している。その上、ダイスカットプロセス中の切断縁部のささくれの故に、縁部はでこぼこして見える。
【0028】
結果的に、図1に示されるように、モジュールを互いに対して整列するために、モジュール20の真実の縁部が使用されるとき、結果として得られる精度は不満足であるだけである。しかしながら、その位置及び形状がノズル24の位置に対して明確に定められるエッチング処理後の整列マーク32は、有意により高い精度でモジュール20を整列することを許容する基準をもたらす。整列マーク32を形成するエッチング処理済み孔は滑らかな縁部を有するという事実によって整列は更に促進され、例えば、電子カメラ及び適切な画像処理ソフトウェアとの組み合わせで顕微鏡を使用することによって、その位置を高精度で決定し得る。分割後の整列マーク32の3つの滑らかな縁部によって促進されて、モジュール20を物理的に整列し得る。エッチング処理済み整列マーク32の滑らかな縁部は、プリントヘッド(図示せず)上の物理的基準に対する正確な整列及び位置決めを促進する。プリントヘッド上の物理的基準は、例えば、ノッチ、ボール等であり得る。具体的には、物理的基準は、分割された整列マーク、分離ステップ(図示せず)後に三角形の形状を有する分割された整列マークと接触するボールであり得る。
【0029】
図4は、キャリア12上に整列される4つのモジュール20の配列を示している。
【0030】
整列プロセスにおいて、点破線34によって象徴化されるように、整列マーク32のより短い側部が互いに整列され、それは様々なモジュール20のノズル24の4つの列が互いに正確に整列されることを保証する。
【0031】
その上、図4に点破線36によって象徴化されるように、各ノズル列において、ノズル間距離又はピッチdが、個々のモジュール内のみならず、異なるモジュールに属する(異なる配給タイル18にさえ属する)ノズル間でも均一であるよう、個々のモジュール20間の間隔を調節するために、整列マーク32のより長い側部を使用し得る。
【0032】
もしこれが特定の種類のプリントヘッドのために要求されるべきであるならば、モジュールを二次元配列で整列するためにも、線36と共に、整列マーク32、特に、そのより長い側部を使用し得る。
【0033】
本発明の詳細な実施態様がここに開示された。しかしながら、開示の実施態様は、様々な形態で具現し得る本発明の例証に過ぎないことが理解されるべきである。従って、ここに開示される特定の構造及び機能的な詳細は制限的であると解釈されるべきではなく、請求項の基礎として、並びに、実質的にあらゆる適切な詳細な構造において本発明を利用するよう当業者に教示する基礎として解釈されるべきである。具体的には、別個の従属項中に提示され且つ記載される機能を組み合わせで適用し得るし、そのような請求項の如何なる組み合わせもここに開示される。
【0034】
更に、ここで使用される用語及び言回しは制限的であると解釈されてはならない。むしろ、本発明の理解可能な記載をもたらすためであると解釈されるべきである。ここで使用されるとき、不定冠詞は、1つ又は1つよりも多くとして定められる。ここで使用されるとき、複数という用語は、2つ又は2つよりも多くとして定められる。ここで使用されるとき、他という用語は、少なくとも2つ又はそれよりも多くとして定められる。ここで使用されるとき、含む/有する用語は、含む(即ち、開放言語)として定められる。ここで使用されるとき、結合されるという用語は、必ずしも直接的にではないが、接続されるとして定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の整列されたモジュールを含むインクジェットプリントヘッドを製造する方法であって、
ウェーハの上に多数の前記モジュールを形成するステップと、
第一及び第二の隣接するモジュールの上に整列マークを形成するステップであって、前記整列マークは、前記第一及び第二の隣接するモジュールの間の境界の上に位置付けられ、前記ウェーハは、前記境界に沿って分離されるステップと、
前記整列マークが前記第一及び第二の隣接するモジュールに亘って分割されるよう、前記ウェーハを別個のモジュールに分離するステップと、
前記分割後の整列マークを基準にして前記第一及び第二の隣接するモジュールの少なくとも一方を整列するステップとを含む、
方法。
【請求項2】
前記整列マークは、前記多数の整列マークの各々の上に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記整列マークは、前記分離するステップの後、前記分割される整列マークの縁部の少なくとも1つと物理的に接触させることによる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記整列マークは、エッチング処理によって形成される、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記整列マークは、前記ウェーハの貫通孔として形成される、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記整列マークは、長方形の形状を有する、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記モジュールは、長方形の形状を有し、前記モジュールの側部は、前記長方形の整列マークの側部と平行である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記整列マークは、前記モジュールのより長い縁部に形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各モジュールは、4つの整列マークで形成され、該4つの整列マークの位置は、長方形の隅部を定める、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記整列マークは、前記第一及び第二の隣接するモジュールの間の境界の上で中心化され、前記ウェーハは、前記境界に沿って分離される、請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−510384(P2012−510384A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538008(P2011−538008)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066200
【国際公開番号】WO2010/063744
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(593016732)オセ−テクノロジーズ ビーブイ (103)
【Fターム(参考)】