インクジェットヘッド駆動部及びその製造方法
【課題】インクジェットヘッド駆動部及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】上面に溝が形成された振動板と、上記溝の底面及び側壁を覆うように形成された第1電極と、上記溝を埋めるように上記第1電極上に形成された圧電体及び上記圧電体上に形成された第2電極を含むインクジェットヘッド駆動部を提供する。本発明によれば、薄膜圧電体及び振動板を備えて振動変位が大きく駆動電圧が低いインクジェットヘッド駆動部及びこれを製造する方法が提供される。
【解決手段】上面に溝が形成された振動板と、上記溝の底面及び側壁を覆うように形成された第1電極と、上記溝を埋めるように上記第1電極上に形成された圧電体及び上記圧電体上に形成された第2電極を含むインクジェットヘッド駆動部を提供する。本発明によれば、薄膜圧電体及び振動板を備えて振動変位が大きく駆動電圧が低いインクジェットヘッド駆動部及びこれを製造する方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド駆動部及びその製造方法に関するもので、より詳細には、薄膜圧電体及び振動板を備えて振動変位が大きく駆動電圧が低いインクジェットヘッド駆動部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェットヘッドは、印刷用インクを微小な液滴の状態で、用紙や織物等の印刷媒体上の所望する位置に吐出させ、印刷媒体の表面に所定の色相の画像を印刷する装置である。このようなインクジェットヘッドは、インクの吐出方式によっていくつかに分けることができる。一つは熱源を用いてインクにバブルを発生させてそのバブルの膨張力によりインクを吐出させる熱駆動方式のインクジェットヘッドであって、他の一つは圧電体を用いてその圧電体の変形によってインクに圧力をかけ、その圧力によってインクを吐出させる圧電方式のインクジェットヘッドである。
【0003】
ここで、圧電方式のインクジェットヘッドについて説明する、駆動部は、リストリクター、リザーバ、チャンバ及びノズル部分を除けば、図1に示されたように、チャンバ板101、振動板102、圧電体104、上部電極105及び下部電極103を含む構成となっている。このうち、チャンバ板101を除く場合もある。ここで、上部電極105及び下部電極103の間に圧電体104が配置され、下部電極103の下面は振動板102と結合する。また、振動板102の下面にはチャンバ板101が結合する。このような圧電方式のインクジェットヘッド駆動部は、インクジェットヘッドのインク吐出性能を決定する重要な要素で、電圧印加時に振動できる変位が大きく、駆動電圧は低いほど有利である。このためには、圧電体104と振動板102をなるべく薄く作る必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みて成されたものであって、本発明は、薄膜圧電体及び振動板を備え、振動変位が大きく駆動電圧の低いインクジェットヘッド駆動部を提供することを目的の一つとする。
【0005】
さらに、本発明は、上記インクジェットヘッド駆動部を容易に製造することができる方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し目的を達成するために、本発明の一側面は、上面に溝が形成された振動板と、上記溝の底面及び側壁を覆うように形成された第1電極と、上記溝を埋めるように上記第1電極上に形成された圧電体及び上記圧電体上に形成された第2電極を含むインクジェットヘッド駆動部を提供する。
【0007】
振動変位を向上するという側面においては、上記圧電体の厚さを20〜30μmとすることが好ましい。また、上記振動板の上面及び上記圧電体の上面を同一の平面に配置することが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、上記圧電体は上記第1電極に接合され形成されたものとすることができる。また、上記振動板はシリコンからなることができる。
【0008】
一方、本発明の他の側面は、振動板の一面に溝を形成する段階と、上記溝の底面及び側壁に第1電極を形成する段階と、上記溝を埋めるように上記第1電極上に圧電体を形成する段階と、上記振動板及び上記圧電体の厚さが薄くなるように上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階及び上記圧電体上に第2電極を形成する段階を含むインクジェットヘッド駆動部の製造方法を提供する。ここで、上記溝を埋めるように上記第1電極上に圧電体を形成する段階は、上記第1電極に上記圧電体を接合させる段階であることが好ましい。
【0009】
また、上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階は、上記振動板及び上記圧電体を同時に研磨する段階であることが好ましい。
【0010】
好ましくは、上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階は、研磨後の上記振動板及び上記圧電体の表面が互いに同一の平面をなすように行われる。
【0011】
また、上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階は、上記圧電体の厚さが20〜30μmになるように行われる。
【0012】
また、上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階は、化学機械研磨(CMP)により行われることが好ましい。
【0013】
一方、上記溝を埋めるように上記第1電極上に圧電体を形成する段階は、上記圧電体の厚さが80〜120μmとなるように行われる。
【0014】
本発明の他の実施形態の場合、上記振動板は内部に形成されたエッチング阻止層を備えることができる。この場合、上記振動板の一面に溝を形成する段階は、上記振動板を上記エッチング阻止層までエッチングを行う段階とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薄膜圧電体及び振動板を備え、振動変位が大きく駆動電圧の低いインクジェットヘッド駆動部及びこれを製造する方法を得ることができる。このようなインクジェットヘッド駆動部の薄膜化は駆動波形を単純化させることができ、これにより駆動部の振動セル間の干渉を低減させ、吐出される周波数特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明の実施形態は、様々な形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上に同じ符号で表される要素は同一の要素である。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部を示す断面図である。図2を参照すると、本実施形態によるインクジェットヘッド駆動部200は、チャンバ板201、振動板202、下部電極203、圧電体204及び上部電極205を備えて構成される。チャンバ板201は、内部に吐出しようとする液体を収容することができる空間を備え、振動板202の振動により液体を吐出することができる。この場合、チャンバ板201と振動板202はシリコン等からなる一体構造とすることができる。但し、チャンバ板201を除いた構成をインクジェットヘッド駆動部200と称することもできる。
【0018】
振動板202は、圧電体204の振動によりチャンバ板201の液体収容空間の体積を変化させる。特に、本実施形態の場合、その上部に溝が形成された構造である。振動板202の溝には下部電極203及び圧電体204が順に形成され振動板202の溝を埋める。即ち、振動板202の溝の底面及び側壁を覆うように導電性物質を蒸着する等の方法で下部電極203を形成し、下部電極203上に電気的信号により振動することができる圧電体204を形成する。
【0019】
後述するように、圧電体204は初めから薄膜状態で形成されるものではなく、約100μm以上の厚さを有する比較的に厚いバルク状態で下部電極203に接合され、それから研磨され所望の厚さt1を有することができる。このとき、圧電体204は、厚さt1が20〜30μm程度の薄膜形態になることによって振動変位を大きくとることができるため、駆動電圧を低くすることができる。また、インクジェットヘッド駆動部を薄膜化することは、駆動波形を単純化させることとなり、これにより駆動部の振動セル間の干渉を低減させ吐出周波数特性を向上させることができる。一方、圧電体204は当該技術分野において使用される、例えば、セラミック圧電体や水晶片等のどのような物質であっても使用することができる。
【0020】
図3a〜図3eは、図2に示された構造を有する第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の作製技法を工程別に示した断面図である。先ず、図3aに示されたように、チャンバ板201と振動板202を設ける。詳細に図示はしていないが、所望の形状を有するようにチャンバ板201を適切にエッチングして液体収容空間を形成し、振動板202と接合させる。ここで、振動板202は、後続の工程により研磨され薄くすることができるため、所定水準以上の厚さ、例えば、圧電体を接合してから共に研磨する工程を容易に制御することができる程度の厚さを有することが好ましい。
【0021】
次に、図3bに示されたように、振動板202をその上部から厚さ方向に一部を除去し、溝を形成する。振動板202に溝を形成する理由は、上述したように、下部電極と圧電体を埋めるためのものである。ここで、溝形成工程としては、当該技術分野において公知となっているどのようなエッチング方法(ICP、湿式エッチング等)も利用することができ、後述するように、図5に示したエッチング阻止層を利用すると、より容易に溝を形成することができる。
【0022】
次に、図3cに示されたように、振動板202の溝の底面及び側壁を覆うように下部電極203を形成する。下部電極203は、上部電極と共に圧電体に電圧を印加するために利用されるものであって、導電性物質をメッキ加工や蒸着等の方法により形成されることができる。一方、図3cでは、振動板202の上面にまで下部電極203が形成されたことを説明したが、これとは異なり、下部電極203は、振動板202の溝の領域のみに限り形成することもできる。
【0023】
次に、図3dに示されたように、振動板202の溝を埋めるように下部電極203上に圧電体204を形成する。圧電体204は、電圧印加時に振動することができるセラミック物質や水晶片等からなる。特に、本実施形態の場合、図4に示されたように、圧電体204はバルク形態で予め設けられてから下部電極203に接合される。この場合、研磨され薄くなる前の圧電体204の厚さt2は、本発明で所望するように薄くする必要がなく、80〜120μm程度の厚さでも構わない。
【0024】
本実施形態と異なる方法として、セラミック粉末をポリマーバインダー等と混合し、これをスクリーン印刷した後で塑性する方法によって圧電体を形成する。この方法の場合、圧電体の厚さを比較的容易に調節することはできるが、圧電体の耐久性等が弱く、性能についても本発明のようにバルク形態の圧電体を使用する場合に比べて劣る。しかし、バルク形態の圧電体を100μm以下に加工することは困難であり、即ちバルク形態の薄膜圧電体を振動板に接合する方式でインクジェットヘッド駆動部を形成することは、決して容易であるとはいえない。このような問題を解決するために、本実施形態では、100μmという比較的に厚みのある圧電体204を振動板202の溝に埋め込み、後続の工程で振動板202と共に研磨する方法を使用した。
【0025】
これについて、図3eを参照して説明すると、圧電体204が接合された状態で、振動板202、圧電体204、及び下部電極203の上面を研磨して、圧電体204が厚さ20〜30μmになるようにする。この場合、下部電極203も共に研磨される。本研磨工程は、化学機械研磨(CMP)を利用して行われ、圧電体204が埋め込まれた状態で振動板202と共に研磨されるため、従来のように、別個に圧電体204を研磨してから接合する場合に比べて、工程の精密性と利便性を向上することができる。即ち、圧電体204が振動板202及びチャンバ板201と接合された状態で研磨されることができ、容易に研磨工程を制御することができる。
【0026】
次に、圧電体204の上面に上部電極をメッキ、蒸着等の工程により形成する。上部電極まで形成され、完成されたインクジェットヘッド駆動部の構造は図2に示されたものと同様である。
【0027】
図5a〜図5eは、第1の実施形態から変形された第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。図5a〜図5eを参照すると、本実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法は、図3a〜図3eで説明したように、チャンバ板501及び振動板502を設ける段階と、エッチングを通じて振動板502に溝を形成する段階と、下部電極503を形成する段階と、圧電体504を接合する段階と、振動板502及び圧電体504を研磨する段階を含む。図3a〜図3eにおける工程との相違点は、振動板502の内部にエッチング阻止層506を形成して、後続の溝形成工程をより容易にしたことである。エッチング阻止層506は、SiO2のような酸化物からなるものとすることができ、所望する振動板502の厚さに該当する位置に配置される場合、図5cに示されたように、振動板502の溝の深さを適切に調節することができる。
【0028】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面により限定されるものではなく、上記の特許請求の範囲により限定されるものである。従って、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当該技術分野における通常の知識を有する者により多様な形態への置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術によるインクジェットヘッド駆動部を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部を示す断面図である。
【図3a】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図3b】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図3c】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図3d】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図3e】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図4】図3dに示された工程を詳細に示した断面図である。
【図5a】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図5b】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図5c】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図5d】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図5e】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【符号の説明】
【0030】
201 チャンバ板
202 振動板
203 下部電極
204 圧電体
205 上部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド駆動部及びその製造方法に関するもので、より詳細には、薄膜圧電体及び振動板を備えて振動変位が大きく駆動電圧が低いインクジェットヘッド駆動部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェットヘッドは、印刷用インクを微小な液滴の状態で、用紙や織物等の印刷媒体上の所望する位置に吐出させ、印刷媒体の表面に所定の色相の画像を印刷する装置である。このようなインクジェットヘッドは、インクの吐出方式によっていくつかに分けることができる。一つは熱源を用いてインクにバブルを発生させてそのバブルの膨張力によりインクを吐出させる熱駆動方式のインクジェットヘッドであって、他の一つは圧電体を用いてその圧電体の変形によってインクに圧力をかけ、その圧力によってインクを吐出させる圧電方式のインクジェットヘッドである。
【0003】
ここで、圧電方式のインクジェットヘッドについて説明する、駆動部は、リストリクター、リザーバ、チャンバ及びノズル部分を除けば、図1に示されたように、チャンバ板101、振動板102、圧電体104、上部電極105及び下部電極103を含む構成となっている。このうち、チャンバ板101を除く場合もある。ここで、上部電極105及び下部電極103の間に圧電体104が配置され、下部電極103の下面は振動板102と結合する。また、振動板102の下面にはチャンバ板101が結合する。このような圧電方式のインクジェットヘッド駆動部は、インクジェットヘッドのインク吐出性能を決定する重要な要素で、電圧印加時に振動できる変位が大きく、駆動電圧は低いほど有利である。このためには、圧電体104と振動板102をなるべく薄く作る必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みて成されたものであって、本発明は、薄膜圧電体及び振動板を備え、振動変位が大きく駆動電圧の低いインクジェットヘッド駆動部を提供することを目的の一つとする。
【0005】
さらに、本発明は、上記インクジェットヘッド駆動部を容易に製造することができる方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し目的を達成するために、本発明の一側面は、上面に溝が形成された振動板と、上記溝の底面及び側壁を覆うように形成された第1電極と、上記溝を埋めるように上記第1電極上に形成された圧電体及び上記圧電体上に形成された第2電極を含むインクジェットヘッド駆動部を提供する。
【0007】
振動変位を向上するという側面においては、上記圧電体の厚さを20〜30μmとすることが好ましい。また、上記振動板の上面及び上記圧電体の上面を同一の平面に配置することが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、上記圧電体は上記第1電極に接合され形成されたものとすることができる。また、上記振動板はシリコンからなることができる。
【0008】
一方、本発明の他の側面は、振動板の一面に溝を形成する段階と、上記溝の底面及び側壁に第1電極を形成する段階と、上記溝を埋めるように上記第1電極上に圧電体を形成する段階と、上記振動板及び上記圧電体の厚さが薄くなるように上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階及び上記圧電体上に第2電極を形成する段階を含むインクジェットヘッド駆動部の製造方法を提供する。ここで、上記溝を埋めるように上記第1電極上に圧電体を形成する段階は、上記第1電極に上記圧電体を接合させる段階であることが好ましい。
【0009】
また、上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階は、上記振動板及び上記圧電体を同時に研磨する段階であることが好ましい。
【0010】
好ましくは、上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階は、研磨後の上記振動板及び上記圧電体の表面が互いに同一の平面をなすように行われる。
【0011】
また、上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階は、上記圧電体の厚さが20〜30μmになるように行われる。
【0012】
また、上記振動板の上記溝形成面と上記圧電体の露出面を研磨する段階は、化学機械研磨(CMP)により行われることが好ましい。
【0013】
一方、上記溝を埋めるように上記第1電極上に圧電体を形成する段階は、上記圧電体の厚さが80〜120μmとなるように行われる。
【0014】
本発明の他の実施形態の場合、上記振動板は内部に形成されたエッチング阻止層を備えることができる。この場合、上記振動板の一面に溝を形成する段階は、上記振動板を上記エッチング阻止層までエッチングを行う段階とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薄膜圧電体及び振動板を備え、振動変位が大きく駆動電圧の低いインクジェットヘッド駆動部及びこれを製造する方法を得ることができる。このようなインクジェットヘッド駆動部の薄膜化は駆動波形を単純化させることができ、これにより駆動部の振動セル間の干渉を低減させ、吐出される周波数特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明の実施形態は、様々な形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上に同じ符号で表される要素は同一の要素である。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部を示す断面図である。図2を参照すると、本実施形態によるインクジェットヘッド駆動部200は、チャンバ板201、振動板202、下部電極203、圧電体204及び上部電極205を備えて構成される。チャンバ板201は、内部に吐出しようとする液体を収容することができる空間を備え、振動板202の振動により液体を吐出することができる。この場合、チャンバ板201と振動板202はシリコン等からなる一体構造とすることができる。但し、チャンバ板201を除いた構成をインクジェットヘッド駆動部200と称することもできる。
【0018】
振動板202は、圧電体204の振動によりチャンバ板201の液体収容空間の体積を変化させる。特に、本実施形態の場合、その上部に溝が形成された構造である。振動板202の溝には下部電極203及び圧電体204が順に形成され振動板202の溝を埋める。即ち、振動板202の溝の底面及び側壁を覆うように導電性物質を蒸着する等の方法で下部電極203を形成し、下部電極203上に電気的信号により振動することができる圧電体204を形成する。
【0019】
後述するように、圧電体204は初めから薄膜状態で形成されるものではなく、約100μm以上の厚さを有する比較的に厚いバルク状態で下部電極203に接合され、それから研磨され所望の厚さt1を有することができる。このとき、圧電体204は、厚さt1が20〜30μm程度の薄膜形態になることによって振動変位を大きくとることができるため、駆動電圧を低くすることができる。また、インクジェットヘッド駆動部を薄膜化することは、駆動波形を単純化させることとなり、これにより駆動部の振動セル間の干渉を低減させ吐出周波数特性を向上させることができる。一方、圧電体204は当該技術分野において使用される、例えば、セラミック圧電体や水晶片等のどのような物質であっても使用することができる。
【0020】
図3a〜図3eは、図2に示された構造を有する第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の作製技法を工程別に示した断面図である。先ず、図3aに示されたように、チャンバ板201と振動板202を設ける。詳細に図示はしていないが、所望の形状を有するようにチャンバ板201を適切にエッチングして液体収容空間を形成し、振動板202と接合させる。ここで、振動板202は、後続の工程により研磨され薄くすることができるため、所定水準以上の厚さ、例えば、圧電体を接合してから共に研磨する工程を容易に制御することができる程度の厚さを有することが好ましい。
【0021】
次に、図3bに示されたように、振動板202をその上部から厚さ方向に一部を除去し、溝を形成する。振動板202に溝を形成する理由は、上述したように、下部電極と圧電体を埋めるためのものである。ここで、溝形成工程としては、当該技術分野において公知となっているどのようなエッチング方法(ICP、湿式エッチング等)も利用することができ、後述するように、図5に示したエッチング阻止層を利用すると、より容易に溝を形成することができる。
【0022】
次に、図3cに示されたように、振動板202の溝の底面及び側壁を覆うように下部電極203を形成する。下部電極203は、上部電極と共に圧電体に電圧を印加するために利用されるものであって、導電性物質をメッキ加工や蒸着等の方法により形成されることができる。一方、図3cでは、振動板202の上面にまで下部電極203が形成されたことを説明したが、これとは異なり、下部電極203は、振動板202の溝の領域のみに限り形成することもできる。
【0023】
次に、図3dに示されたように、振動板202の溝を埋めるように下部電極203上に圧電体204を形成する。圧電体204は、電圧印加時に振動することができるセラミック物質や水晶片等からなる。特に、本実施形態の場合、図4に示されたように、圧電体204はバルク形態で予め設けられてから下部電極203に接合される。この場合、研磨され薄くなる前の圧電体204の厚さt2は、本発明で所望するように薄くする必要がなく、80〜120μm程度の厚さでも構わない。
【0024】
本実施形態と異なる方法として、セラミック粉末をポリマーバインダー等と混合し、これをスクリーン印刷した後で塑性する方法によって圧電体を形成する。この方法の場合、圧電体の厚さを比較的容易に調節することはできるが、圧電体の耐久性等が弱く、性能についても本発明のようにバルク形態の圧電体を使用する場合に比べて劣る。しかし、バルク形態の圧電体を100μm以下に加工することは困難であり、即ちバルク形態の薄膜圧電体を振動板に接合する方式でインクジェットヘッド駆動部を形成することは、決して容易であるとはいえない。このような問題を解決するために、本実施形態では、100μmという比較的に厚みのある圧電体204を振動板202の溝に埋め込み、後続の工程で振動板202と共に研磨する方法を使用した。
【0025】
これについて、図3eを参照して説明すると、圧電体204が接合された状態で、振動板202、圧電体204、及び下部電極203の上面を研磨して、圧電体204が厚さ20〜30μmになるようにする。この場合、下部電極203も共に研磨される。本研磨工程は、化学機械研磨(CMP)を利用して行われ、圧電体204が埋め込まれた状態で振動板202と共に研磨されるため、従来のように、別個に圧電体204を研磨してから接合する場合に比べて、工程の精密性と利便性を向上することができる。即ち、圧電体204が振動板202及びチャンバ板201と接合された状態で研磨されることができ、容易に研磨工程を制御することができる。
【0026】
次に、圧電体204の上面に上部電極をメッキ、蒸着等の工程により形成する。上部電極まで形成され、完成されたインクジェットヘッド駆動部の構造は図2に示されたものと同様である。
【0027】
図5a〜図5eは、第1の実施形態から変形された第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。図5a〜図5eを参照すると、本実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法は、図3a〜図3eで説明したように、チャンバ板501及び振動板502を設ける段階と、エッチングを通じて振動板502に溝を形成する段階と、下部電極503を形成する段階と、圧電体504を接合する段階と、振動板502及び圧電体504を研磨する段階を含む。図3a〜図3eにおける工程との相違点は、振動板502の内部にエッチング阻止層506を形成して、後続の溝形成工程をより容易にしたことである。エッチング阻止層506は、SiO2のような酸化物からなるものとすることができ、所望する振動板502の厚さに該当する位置に配置される場合、図5cに示されたように、振動板502の溝の深さを適切に調節することができる。
【0028】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面により限定されるものではなく、上記の特許請求の範囲により限定されるものである。従って、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当該技術分野における通常の知識を有する者により多様な形態への置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術によるインクジェットヘッド駆動部を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部を示す断面図である。
【図3a】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図3b】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図3c】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図3d】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図3e】第1の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図4】図3dに示された工程を詳細に示した断面図である。
【図5a】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図5b】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図5c】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図5d】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【図5e】本発明の第2の実施形態によるインクジェットヘッド駆動部の製造技法を工程別に示した断面図である。
【符号の説明】
【0030】
201 チャンバ板
202 振動板
203 下部電極
204 圧電体
205 上部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に溝が形成された振動板と、
前記溝の底面及び側壁を覆うように形成された第1電極と、
前記溝を埋めるように前記第1電極上に形成された圧電体と、
前記圧電体上に形成された第2電極と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッド駆動部。
【請求項2】
前記圧電体の厚さは、20〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動部。
【請求項3】
前記振動板の上面及び前記圧電体の上面は、互いに同一の平面をなすことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動部。
【請求項4】
前記圧電体は、前記第1電極に接合され形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動部。
【請求項5】
前記振動板は、シリコンからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動部。
【請求項6】
振動板の一面に溝を形成する段階と、
前記溝の底面及び側壁に第1電極を形成する段階と、
前記溝を埋めるように前記第1電極上に圧電体を形成する段階と、
前記振動板及び前記圧電体の厚さが薄くなるように前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階と、
前記圧電体上に第2電極を形成する段階と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項7】
前記溝を埋めるように前記第1電極上に圧電体を形成する段階は、前記第1電極に前記圧電体を接合させる段階であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項8】
前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階は、前記振動板及び前記圧電体を同時に研磨する段階であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項9】
前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階は、研磨後の前記振動板及び前記圧電体の表面が互いに同一の平面をなすように行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項10】
前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階は、前記圧電体の厚さが20〜30μmになるように行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項11】
前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階は、化学機械研磨により行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項12】
前記溝を埋めるように前記第1電極上に圧電体を形成する段階は、前記圧電体の厚さが80〜120μmになるように行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項13】
前記振動板は、内部に形成されたエッチング阻止層を備えることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項14】
前記振動板の一面に溝を形成する段階は、前記振動板を前記エッチング阻止層までエッチングする段階であることを特徴とする請求項13に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項1】
上面に溝が形成された振動板と、
前記溝の底面及び側壁を覆うように形成された第1電極と、
前記溝を埋めるように前記第1電極上に形成された圧電体と、
前記圧電体上に形成された第2電極と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッド駆動部。
【請求項2】
前記圧電体の厚さは、20〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動部。
【請求項3】
前記振動板の上面及び前記圧電体の上面は、互いに同一の平面をなすことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動部。
【請求項4】
前記圧電体は、前記第1電極に接合され形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動部。
【請求項5】
前記振動板は、シリコンからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動部。
【請求項6】
振動板の一面に溝を形成する段階と、
前記溝の底面及び側壁に第1電極を形成する段階と、
前記溝を埋めるように前記第1電極上に圧電体を形成する段階と、
前記振動板及び前記圧電体の厚さが薄くなるように前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階と、
前記圧電体上に第2電極を形成する段階と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項7】
前記溝を埋めるように前記第1電極上に圧電体を形成する段階は、前記第1電極に前記圧電体を接合させる段階であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項8】
前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階は、前記振動板及び前記圧電体を同時に研磨する段階であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項9】
前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階は、研磨後の前記振動板及び前記圧電体の表面が互いに同一の平面をなすように行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項10】
前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階は、前記圧電体の厚さが20〜30μmになるように行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項11】
前記振動板の前記溝形成面と前記圧電体の露出面を研磨する段階は、化学機械研磨により行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項12】
前記溝を埋めるように前記第1電極上に圧電体を形成する段階は、前記圧電体の厚さが80〜120μmになるように行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項13】
前記振動板は、内部に形成されたエッチング阻止層を備えることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【請求項14】
前記振動板の一面に溝を形成する段階は、前記振動板を前記エッチング阻止層までエッチングする段階であることを特徴とする請求項13に記載のインクジェットヘッド駆動部の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【公開番号】特開2010−30267(P2010−30267A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315666(P2008−315666)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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