説明

インクジェット印刷装置

【課題】簡易な構成でありながら、インクの消費を低減することができるとともに、速やかにインクジェットヘッドをクリーニングすることが可能なインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の管路と接続可能な複数の外部吸引口、およびハウジング内部を吸引する吸引路と接続する内部吸引口が、切換部の回転中心から等しい距離に配設されたハウジングにおいて、該切換部を回転することで複数の吸入口のいずれかを選択的に吸引手段に接続する接続切換手段を備えたことにより、切換部が内部吸引口と接続された場合には、ハウジング内部を吸引することで全てのインクジェットノズルからインクを吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のインクジェットヘッドを備えるインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多数のインクジェットノズルを有するインクジェットヘッドを備えるインクジェット印刷装置では、インクジェットノズルの一部が目詰まりを起こすことによる、いわゆるノズル欠けと呼称される印刷不良を解消するために、吸引によるインクジェットヘッドのクリーニング(吸引パージ)が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、吐出口群(インクジェットヘッド)を個別に覆うキャップと、インクの吐出口(インクジェットノズル)から吸引によりキャップ内にインクを引き出すためのポンプとを備え、個々のキャップとポンプを接続する接続路に、個別に開閉弁が介設された構成を有している。そして、このインクジェット記録装置では、吐出口群(インクジェットヘッド)の各キャップに連通する接続路に介設された開閉弁を選択的に開放することにより、例えば、インクが吐出されないインクジェットノズルが含まれるインクジェットヘッドを覆うキャップのみを、ポンプと接続して個別吸引する吸引パージが可能となっている。
【0004】
また、複数のインクジェットヘッドに対してまとめて吸引を行う全体吸引と、1個のインクジェットヘッドに対してのみ個別吸引とを行うことが可能なクリーニング機構を備えるインクジェット印刷装置も提案されている(特許文献2参照)。このクリーニング機構は、複数のインクジェットヘッドを個別に覆うキャップのうちの1個のみがチューブを介してポンプに接続される個別吸引用キャップと、その他複数のキャップに分岐して接続されるチューブを介してポンプに接続されるキャップと、複数のキャップの吸引動作を同時に切り換える第1の開閉弁と、個別吸引用キャップの吸引動作のみを切り換える第2の開閉弁とから構成されている。そして、全体吸引を行う場合には、複数のインクジェットヘッドを全てキャップで覆い、第1、第2の開閉弁を開放して吸引を行っている。また、個別吸引を行う場合には、1個のインクジェットヘッドのみを個別吸引用のキャップで覆い、第1の開閉弁を閉じるとともに第2の開閉弁を開放することで、吸引を行いたいインクジェットヘッドの個別吸引を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−213216
【特許文献2】国際公開第2007/058139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、電磁開閉弁をキャップの数に応じて多数配設する必要があるため、装置が大型化し生産コストが高くなるという問題が生じる。また、多数の電磁開閉弁を駆動させるため、消費電力が高くなりランニングコストが高くなるという問題も生じる。
【0007】
一方、特許文献2に記載の装置では、複数のインクジェットヘッドが一方向に列設されたインクジェットユニット毎にクリーニング動作を行っている。このため、インクジェットヘッドの個別吸引を行う場合に、吸引を行う必要があるインクジェットヘッドのインクジェットユニットでの配置によっては、インクジェットヘッドと個別吸引用キャップとの位置あわせのためにインクジェットユニットを移動させる時間が長くなり、インクジェットヘッドのクリーニングに要する時間が長くなるという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、簡易な構成でありながら、インクの消費を低減することができるとともに、速やかにインクジェットヘッドをクリーニングすることが可能なインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決する為に、請求項1に記載した発明は、複数のインクジェットノズルが列設された複数のインクジェットヘッドと、前記複数のインクジェットヘッドの各々に対応する複数のキャップと、前記複数のキャップに各々連通接続される複数の管路と、前記複数のキャップおよび複数の管路を介して前記複数のインクジェットノズルからインクを吸引するための吸引手段と、を備えるインクジェット印刷装置であって、前記吸引手段に接続される吸出口と、内部に前記吸出口と連通する連通路が形成されるとともに、駆動手段に接続されることにより回転可能に支持された切換部と、前記切換部を内包するハウジングであって、前記複数の管路と接続可能な複数の外部吸引口、および前記ハウジング内部を吸引する吸引路と接続する内部吸引口が、前記切換部の回転中心から等しい距離に配設されたハウジングと、を備え、前記切換部を前記連通路が前記複数の吸入口のいずれかと連通接続する位置に回転させることにより、前記吸引口を前記吸引手段に選択的に接続する接続切換手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
また、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、前記ハウジング下部に、該ハウジング内部を吸引する吸引路の吸出口を備えること、を特徴としている。
【0011】
さらに、請求項3に記載した発明は、請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、前記ハウジングは、前記複数の吸引口をラジアル状に備えること、を特徴としている。
【0012】
加えて、請求項4に記載した発明は、請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、前記ハウジングは、前記複数の吸引口をコ-アキシャル状に備えること、を特徴としている。
【0013】
また、請求項5に記載した発明は、請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、前記ハウジングに、該ハウジング内部を吸引する吸引路が形成されていること、を特徴としている。
【0014】
さらに、請求項6に記載した発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、前記複数のインクジェットヘッドは、単一のインク色に対して複数備えられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至6に記載のインクジェット印刷装置は、複数の管路と接続可能な複数の外部吸引口、およびハウジング内部を吸引する吸引路と接続する内部吸引口が、切換部の回転中心から等しい距離に配設されたハウジングにおいて、該切換部を回転することで複数の吸入口のいずれかを選択的に吸引手段に接続する接続切換手段を備えたことにより、切換部が外部吸引口のいずれかと接続された場合には複数のインクジェットノズルのうちいずれかからインクを吸引し、切換部が内部吸引口と接続された場合には、ハウジング内部を吸引することにより全てのインクジェットノズルからインクを吸引するので、吸引パージの必要のないインクジェットヘッドを吸引パージすることによるインクの消費を低減することができるとともに、複数のインクジェットヘッドに対して選択的に迅速なクリーニングを実行することが可能となる。
【0016】
特に、請求項2に記載のインクジェット印刷装置は、ハウジング下部に該ハウジング内部を吸引する吸引路の吸出口を備えるので、ハウジング内部に蓄積したインクを確実に吸引することができる。
【0017】
特に、請求項5に記載のインクジェット印刷装置は、ハウジング内部を吸引する吸引路が形成されたハウジングなので、ハウジングをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】インクジェット印刷装置100を説明するための図である。
【図2】吐出部3を説明するための図である。
【図3】吐出部3を説明するための図である。
【図4】接続切換部315の外部構成を説明するための図である。
【図5】接続切換部315の内部構成を説明するための図である。
【図6】接続切換部315の動作によるインクジェットノズル群30の吸引を説明するための図である。
【図7】接続切換部315の別の形態を説明するための図である。
【図8】接続切換部315のハウジング315'kを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を利用しながら、本発明を実施形態について、説明を行なう。
【0020】
〈第1の実施形態〉
図1は、本発明に関わるインクジェット印刷装置100を説明するための図である。インクジェット印刷装置100は、搬送されるロール紙に対してインクを吐出して印刷を行なう印刷装置である。インクジェット印刷装置100は、制御部1、搬送部2、吐出部3、乾燥部4、検査部5を備える。
【0021】
制御部1は、インクジェット印刷装置100全体を制御するためのものである。制御部1が、搬送部2による用紙9の搬送、吐出部3による用紙9へのインク吐出、あるいは吐出部3におけるクリーニング動作、乾燥部4におけるインクが吐出された用紙9の乾燥、検査部5における用紙9の印刷像撮影をそれぞれ制御することにより、用紙9に対するインクジェット印刷装置100の印刷を実現している。
【0022】
搬送部2は、インクジェット印刷装置100における用紙9の搬送を行なうための構成であり、用紙収納部20、駆動ローラ21、支持ローラ22を備えている。
用紙収納部20は、印刷を行なうためのロール紙である用紙9を収納するためのものであり、用紙収納部20aは印刷前の用紙9を収納し、用紙収納部20bは印刷後の用紙9を収納する。
用紙収納部20aから引き出された用紙9は、支持ローラ22によって支持されながら駆動ローラ21a、21bによって吐出部3、乾燥部4、検査部5を搬送され、用紙収納部20bに巻取られる。
【0023】
吐出部3は、図示しないインクタンクからインクの供給を受け、制御部1が画像情報に基づいて生成した駆動信号によってインクを吐出し、用紙9に対する印刷を行なう。
吐出部3は複数のインクジェットノズル群30k、30c、30m、30yを備えている。インクジェットノズル群30k、30c、30m、30yは用紙9の搬送方向に直交しており、多数のノズルを列設することにより用紙9の搬送幅以上の吐出幅を実現している。吐出部3がこのような構成を備えることにより、吐出部3は用紙9の搬送幅方向に往復走査せずとも一度の吐出で印刷を実行する。
なお、吐出部3のインクジェットノズル群の数は4つに限定されることはなく、単色吐出のためインクジェットノズル群の数は1つであってもよいし、特色を加えた吐出を行なうため5つ以上のインクジェットノズル群を備えていても良い。
【0024】
乾燥部4は、ヒーター、ドライヤー等により、吐出部3による印刷後の用紙9に対して熱を加えることにより、インクの溶媒(主に水である)を蒸発させることで、インクの定着を行なう。
なお、吐出部3による吐出がUV硬化インクなどの放射線硬化インクである場合、乾燥部4は放射線発振を行なうための構成を備えることで、用紙9に対するインクの定着(硬化)を行うことになる。
【0025】
検査部5は、制御部1が用紙9に行なわれた印刷が良好であるか否かを判定するために、印刷像を撮影する。検査部5は、CCDラインセンサ、あるいはCCDカメラにより、搬送される用紙9に印刷された印刷像を撮影し、制御部1へ撮影情報を送信する。制御部1は、インク吐出を行なうために使用した画像情報と撮影情報とを比較することにより、吐出部3における吐出不良の有無を判定することによって、印刷が良好であるか否かを判定することができる。
吐出不良とは、ノズルからのインク不吐出、インク滴の不良飛翔、インク滴サイズの不良等であり、このような吐出部3における吐出不良が存在すると制御部1が判断したならば、制御部1は吐出部3のクリーニングを実行する。
【0026】
図2、および図3は、クリーニングを実行する吐出部3の概要を説明するための図である。図2は、吐出部3が用紙9に対する印刷を行なっている状態であり、図3は吐出部3がクリーニングを行っている状態である。
【0027】
吐出部3は、インクジェットノズル群30のクリーニングを行なうため、吸引キャップ311、吸引チューブ312、電磁開閉弁313、吸引ポンプ314、接続切換部315、吸引管路316と、を有するクリーニング部31を備えている。
【0028】
なお、ここでは、一つのインクジェットノズル群30を構成するために、8個のインクジェットヘッド30a〜30hが列設されているものとして説明を行なう。無論、インクジェットノズル群30を構成するために列設されるインクジェットヘッドの数は、8に限定されることはない。
【0029】
また、ここでは、説明のため一つのインクジェットノズル群30に対応する一つのクリーニング部31を備えているよう説明しているが、複数のインクジェットノズル群30各々に対応した複数のクリーニング部31を吐出部3が備えている。
【0030】
吸引キャップ311は、ノズルの乾燥、汚染を防ぐため、インクジェットノズル群30を被覆する。吸引ポンプ314に接続される吸引チューブ312を備えた吸引キャップ311は、制御部1の制御に基づいてインクジェットノズル群30が下降することで、図3に示すような被覆を実行し、インクジェットノズル群30のインク詰まりを解消するための吸引を行なうことができる。
ここでは、インクジェットヘッド30a〜30hに対応して、吸引キャップ311a〜311hが備えられている。
【0031】
吸引チューブ312は、前述のように吸引キャップ311に接続されており、図3に示すように吸引キャップ311に被覆されたインクジェットノズル群30から吸引されたインクは吸引チューブ312を経て吸引ポンプ314によって吸引される。
ここでは、吸引キャップ311a〜311hに対応して、吸引チューブ312a〜312hが備えられており、接続切換部315に吸引可能に接続されている。
また、吸引チューブ312zは、吸引キャップ311に直接接続はされていないが、接続切換部315内部の吸引を行なうように接続切換部315に接続されることで、吸引キャップ311a〜311hからのインク吸引を実現する(詳細は後述する)。
【0032】
電磁開閉弁313は、吸引ポンプ314と接続切換部315とを接続する接続する吸引管路316に備えられている。制御部1の制御により、電磁開閉弁313は、図2に示すようにインクジェットノズル群30による用紙9への吐出処理が行なわれている間は吸引管路316を閉鎖している。図3に示すように、インクジェットノズル群30を吸引キャップ311が被覆し、接続切換部315が吸引ポンプ314と吸引チューブ312a〜312hとをそれぞれ切り換えて接続することでインクジェットヘッド30a〜30hからインクの吸引を行なう時、制御部1の制御により電磁開閉弁313が吸引管路316を開放する(詳細は後述する)。
また、接続切換部315が吸引チューブ312zに切り換えて接続することで、吸引ポンプ314がインクジェットヘッド30a〜30hからまとめてインクを吸引する場合にも、電磁開閉弁313は制御部1の制御により、吸引管路316を開放する(詳細は後述する)。
【0033】
吸引ポンプ314は、図3に示すような状態で、吸引管路316、接続切換部315、吸引チューブ312a〜312h、あるいは312z、吸引キャップ311を介して、インクジェットノズル群30からインクを吸引する。吸引ポンプ314が負圧を発生させると、インクジェットノズル群30からインクが流出する。負圧によって流出したインクは、吸引キャップ311、吸引チューブ312、接続切換部315、吸引管路316、吸引ポンプ314を経由して、インクジェット印刷装置100の図示しない廃液タンクに蓄積される。
【0034】
接続切換部315は、吸引ポンプ314によるインクジェットノズル群30のインク吸引を行なうに際して、インクジェットノズル群30を構成するインクジェットヘッド30a〜30hを個別に吸引するため、あるいはインクジェットヘッド30a〜30hまとめて吸引するために、制御部1の制御に基づいて、吸引管路316と吸引チューブ312a〜h、あるいは312zとを切り換える。
【0035】
接続切換部315の詳細を図4および図5で説明する。
図4は、接続切換部315の外部構成を説明するための図である。接続切換部315は、吸引管路316に連通する切換部315k(本図では図示せず)を密閉して内包するためのハウジング315hが、吸引チューブ312a〜312h、312zを接続するための複数の吸引口315iを備えている。
【0036】
ハウジング315hは、切換部315kを回転可能とするための密閉軸受け部315jを備えることにより、ハウジング315k内部の密閉状態を維持したまま、切換部315kの回転が図示しないモータによって行なわれる。
【0037】
複数の吸引口315iは、それぞれ吸引チューブ312a〜312h、および吸引チューブ312zに対応するように、ハウジング315hの外周方向にラジアル状に備えられている。
すなわち、吸引口315iaが吸引チューブ312aに連通するように接続され、吸引口315ibが吸引チューブ312bに連通するように接続され、以降同様に吸引口315ihが吸引チューブ312hに連通するように接続されている。
一方、吸引口315izもまた吸引チューブ312zに連通するように接続されているが、吸引チューブ312zはインクジェットノズル群30ではなく、ハウジング315hに備えられたインク吸出口315oに連通するように接続されている。
【0038】
インク吸出口315oは、インクジェットノズル群30全ての吸引を行なった際(後述する)に、ハウジング315h内に蓄積されるインクを吸い出すために備えられたものである。インク吸出口315oは、蓄積したインクを吸い出すのに好適な位置として、ハウジング315h下部、XYZ軸で方向を表現する場合はY軸マイナス方向、に備えられることが望ましい。
【0039】
ハウジング315hは、吸引ポンプ314による吸引時の圧力に耐え、かつインクによって腐食されない材質であるステンレスやチタニウム、あるいはフッ素樹脂などで実現することができる。
【0040】
図5は、接続切換部315の内部構成を説明するための図である。接続切換部315の内部には、吸引管路316に連通する切換部315kが回転可能に備えられている。
【0041】
切換部315kは略L字型の形状を有しており、制御部1の制御に基づいて、図示しないモータによって回転することでハウジング315h内部に形成された複数の吸引口315iに滑合する。切換部315kと吸引口315iが滑合すると、吸引チューブ312と吸引管路316が連通するので、吸引ポンプ314が吸引キャップ311に被覆されたインクジェットノズル群30からインクを吸引することが可能となる。
なお、切換部315kと吸引口315iとの滑合部位は、効率のよい吸引を行なうため、また後述するインクジェットノズル群30全ての吸引のため、グリスシールやゴムシール、あるいはメタルシールなどのシーリング構造を備えていることが望ましい。
【0042】
複数の吸引口315ia〜315ihは、吸引チューブ312a〜312hに連通可能なように接続されているが、吸引口315izに接続された吸引チューブ312zは、図示するようにハウジング315h下部に備えられたインク吸出口315oに連通可能なように接続されている。このような接続がなされていることにより、切換部315kを吸引口315izに滑合させて吸引チューブ312zと吸引管路316が連通することにより、吸引ポンプ314によってハウジング315h内部の吸引が行なわれる。
【0043】
図6は、接続切換部315の動作によるインクジェットノズル群30の吸引を説明するための図である。
図6(a)は、クリーニング部31によるインクジェットノズル群30に対するクリーニング処理として、インクジェットヘッド30a〜30hを個別に吸引する場合を説明するためのハウジング315hの内部状態を説明するための図であり、ここでは接続切換部315は、インクジェットヘッド30aのインクを吸引するための動作を実行している。
【0044】
吐出部3が図3に示すような状態で、制御部1の制御により、図示しているように切換部315kが回転の結果吸引口315iaと滑合すると、吸引チューブ312aと吸引管路316が連通した状態となる。ここで、電磁開閉弁313を「開」として、吸引ポンプ314が吸引を開始することにより、滑合部分がシーリングされていることから吸引管路316が負圧となり、該負圧によって吸引管路316と連通する吸引チューブ312aを経て吸引キャップ311aに被覆されたインクジェットヘッド30aからインクが流出する。流出したインクは、吸引キャップ311a、吸引チューブ312aを経由して、吸引ポンプ314により吸引され、インクジェット印刷装置100の図示しない廃液タンクに蓄積される。
【0045】
インクジェットヘッド30b〜30hから、それぞれインクを吸引する場合は、制御部1が切換部315kを回転させ、吸引口315ib〜315ihにそれぞれ滑合させて電磁開閉弁313を開き、吸引ポンプ314による吸引を行なうことにより、インクジェットヘッド30a同様に、インクジェットヘッド30b〜30hからそれぞれインクを吸引することができる。
【0046】
図6(a)に示すインク吸引動作は、クリーニング部31がインクジェットノズル群30のクリーニングを行なうに際して、特に個々のインクジェットヘッド30a〜30hに異常が生じていた場合のクリーニングとして好適なものである。
しかし、インクジェットノズル群30を構成するインクジェットヘッドの数が多い場合には、全てのインクジェットヘッドからインクを吸引するために図6(a)に示すような動作を繰り返し行なうことは多大な時間を要することになる。
例えば、図6(a)に示すようなインク吸引を行なった場合、負圧による余計なインク吐出を防止するためには、吸引キャップ311内が大気圧に戻るまでの時間を必要とする。この時間を一つのインクジェットヘッドに10秒ほどかけるとすると、インクジェットヘッドの数が8個ならば、クリーニング動作において80秒ものアイドルタイムが生じることになる。
【0047】
そのような問題を解決するため、クリーニング部31のハウジング315hは、該ハウジング315h内部の吸引を行なうためのインク吸引口315oを備えている。
図6(b)は、クリーニング部31によるインクジェットノズル群30に対するクリーニング処理として、インクジェットヘッド30a〜30hをまとめて吸引する場合を説明するためのハウジング315hの内部状態を説明するための図である。ここでは接続切換部315は、インクジェットノズル群30全てからインクを吸引するための動作を実行している。
【0048】
吐出部3が図3に示すような状態で、制御部1の制御に基づいて、図示しているように切換部315kが回転の結果吸引口315izと滑合すると、インク吸出口315oと連通可能に接続した吸引チューブ312zと吸引管路316が連通した状態となる。ここで、電磁開閉弁313を「開」として、吸引ポンプ314が吸引を開始すると、滑合部分がシーリングされていることから吸引管路316が負圧となり、インク吸出口315oを介したハウジング315h内部もまた負圧を示す。
【0049】
ハウジング315hは密閉構造を有しているので、ハウジング315h内部が負圧となることにより、吸引口315ia〜315ihに接続された吸引チューブ312a〜312hを経て吸引キャップ311a〜311hにも負圧が加わるため、インクジェットヘッド30a〜30hからインクが流出する。
【0050】
インクジェットヘッド30a〜30hから流出したインクは、吸引キャップ311a〜311h、吸引チューブ312a〜312h、吸引口315ia〜315ihを経由して、ハウジング315h内部に流れ込む。
【0051】
ハウジング315h内部に流れ込んだインクは、インク吸出口315oを経て吸引口315izに流れる。ここで、インク吸出口315oがハウジング315hの下部に備えられているので、ハウジング315h内部に蓄積されたインクが自然にインク吸出口315oに集中するため、効率のよいインク吸引を行なうことができる。
【0052】
そして、インク吸出口315oから吸引チューブ312zを経て、さらに吸引口315izと滑合した切換部315kを経由して吸引ポンプ314によりインクが吸引されることで、インクジェット印刷装置100の図示しない廃液タンクに蓄積される。
【0053】
従って、図6(b)に示すインク吸引動作は、クリーニング部31がインクジェットノズル群30のクリーニングを行なうに際して、短時間で全てのインクジェットヘッド30a〜30hのクリーニングを実現することができる。
【0054】
このように、図1に示したインクジェット印刷装置100において、図2に示したクリーニング部31が図4、5に示すような接続切換部315を備えることにより、切換部315kが吸引口315ia〜315ihのいずれかと接続された場合にはインクジェットヘッド30a〜30hのうちいずれかからインクを吸引し、切換部315kが吸引口315izと接続された場合には、インク吸出口315oを介してハウジング315h内部を吸引することによりインクジェットノズル群30全てからインクを吸引するので、吸引パージの必要のないインクジェットヘッドを吸引パージすることによるインクの消費を低減することができるとともに、複数のインクジェットヘッドに対して選択的に迅速なクリーニングを実行することが可能となる。
【0055】
また、インクジェットノズル群30からのインク吸引のみならず、該インクジェットノズル群30に対して制御部1が行なわせたフラッシング処理、あるいは加圧パージ処理により、吸引キャップ311a〜311hに蓄積したインクの吸引に際しても図6(b)に示すインク吸引動作を実行することにより、吸引キャップ311からインクが溢れるのを防止することができる。
【0056】
〈第2の実施形態〉
ここまでの説明では、接続切換部315のハウジング315hについて、略円筒形状を有しており外周方向に複数の吸引口315iを備えるものとして説明を行なってきたが、ハウジング315hにおける複数の吸引口315iの配置は、これに限定されることはない。
【0057】
図7は、接続切換部315の別の形態を説明するための図である。
図7(a)に示す接続切換部315のハウジング3150hにおいて、複数の吸引口3150iは、該ハウジング3150hの外周方向ではなく、略円筒の中心軸に平行するコ-アキシャル状に、吸引管路316の反対側に設けられている。この場合でも、インク吸出口3150oは、ハウジング3150hの下部に設けるようにすることができる。
【0058】
図7(b)は、吸引管路316側から接続切換部315を示した図である。ここで、ハウジング3150hの吸引管路316側の円板、および外周面は説明のため破線で示している。
図7(b)の切換部3150kは、図5に示したものとは異なり、略クランク形状を有している、切換部3150kもまた、吸引管路316に連通しており、制御部1の制御に基づいて、図示しないモータによって回転することでハウジング3150h内部に形成された複数の吸引口3150iに滑合する。
切換部3150kと吸引口3150iとの滑合部位は、効率のよい吸引を行なうため、またインクジェットノズル群30全ての吸引のため、グリスシールやゴムシール、あるいはメタルシールなどのシーリング構造を備えていることがやはり望ましい。
【0059】
図7に示す接続切換部315は、吸引管路316と複数の吸引口3150iが略同軸状に配置されることから、Y軸方向についての収納スペースを削減することができ、インクジェット印刷装置100において、吸引パージの必要のないインクジェットヘッドを吸引パージすることによるインクの消費を低減することができるとともに、複数のインクジェットヘッドに対して選択的に迅速なクリーニングを実行することが可能となる。
【0060】
〈第3の実施形態〉
ここまでの説明では、接続切換部315のハウジング315h、あるいは3150hがインク吸出口315o、あるいは3150oを備えており、該インク吸出口315o、あるいは3150oに連通可能に接続された吸引チューブ312zと吸引口315iz、あるいは3150izが接続される構成を有するものとして説明を行なってきたが、ハウジング315h、あるいは3150h自体に吸引チューブ312zと同様の機能を実現する吸引路を
構成するようにしてもよい。
【0061】
図8は、接続切換部315のハウジング315'kである。ハウジング315'kは、吸引チューブ312a〜312hに吸引口315'a〜315'hからなる複数の吸引口315'iを備えているが、インク吸出口315'oと吸引口315'izとの間を連通しているのは、ハウジング315'kに形成された吸引路315'vである。
【0062】
このような構成であっても、インクジェット印刷装置100において、吸引パージの必要のないインクジェットヘッドを吸引パージすることによるインクの消費を低減することができるとともに、複数のインクジェットヘッドに対して選択的に迅速なクリーニングを実行することが可能となる。
【0063】
〈変形例〉
ここまでの説明では、接続切換部315のハウジング315kについて、略円筒状であると説明を行なってきたが、ハウジング315kの形状が略円錐形や略球帯形、あるいは略球冠形であってもよい。すなわち、ハウジング315kは、複数の吸引口315iが切換部315kの回転中心から等しい距離に配設される形状であれば良い。
この場合であっても、これまでの説明同様の作用効果を奏することができる。
【0064】
また、ここまでの説明では、クリーニング部31において切換部315kの回転中心が略水平方向となるように接続切換部315が配置された状態を説明してきたが、切換部315kの回転中心が略垂直方向となるように接続切換部315が配置される状態であってもよい。
この場合、インク吸出口315oをハウジング315kの下部に備えることにより、自然流下によってさらにインクの蓄積が行なわれるので、インクジェットノズル群30全てのインク吸引処理をより効率的に行なうことができる。特に、ハウジング315kが略円錐形、あるいは略球冠形であれば、さらなる効率化が実現する。
【0065】
なお、インクジェット印刷装置100で使用されることでクリーニングの対象となるインクの溶媒は、水に限定されることはない。
また、インクジェット印刷装置100で使用されることでクリーニングの対象となるインクは、一般的なインクジェット印刷に使用される染料インクのみならず顔料インクであってもよい。
さらに、インクジェット印刷装置100で使用されることでクリーニングの対象となるインクは、一般的な印刷に使用されるインクのみならず回路パターン形成用、生体組織形成用、三次元造形用などの機能性インクであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 制御部
2 搬送部
3 吐出部
4 乾燥部
5 検査部
9 用紙
30、30k、30c、30m、30y インクジェットノズル群
31 クリーニング部
311、311a、311b、311c、311d、311e、311f、311g、311h 吸引キャップ
312、312a、312b、312c、312d、312e、312f、312g、312h、312z 吸引チューブ
313 電磁開閉弁
314 吸引ポンプ
315 接続切換部
316 吸引管路
315h、315'h 3150h ハウジング
315i、315ia、315ib、315ic、315id、315ie、315if、315ig、315ih、315iz、3150i 吸引口
315k、3150k 切換部
315j 密閉軸受け部
315o、3150o インク吸出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインクジェットノズルが列設された複数のインクジェットヘッドと、前記複数のインクジェットヘッドの各々に対応する複数のキャップと、前記複数のキャップに各々連通接続される複数の管路と、前記複数のキャップおよび複数の管路を介して前記複数のインクジェットノズルからインクを吸引するための吸引手段と、を備えるインクジェット印刷装置であって、
前記吸引手段に接続される吸出口と、
内部に前記吸出口と連通する連通路が形成されるとともに、駆動手段に接続されることにより回転可能に支持された切換部と、
前記切換部を内包するハウジングであって、前記複数の管路と接続可能な複数の外部吸引口、および前記ハウジング内部を吸引する吸引路と接続する内部吸引口が、前記切換部の回転中心から等しい距離に配設されたハウジングと、
を備え、
前記切換部を前記連通路が前記複数の吸入口のいずれかと連通接続する位置に回転させることにより、前記吸引口を前記吸引手段に選択的に接続する接続切換手段と、
を有することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記ハウジング下部に、該ハウジング内部を吸引する吸引路の吸出口を備えること、
を特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記ハウジングは、前記複数の吸引口をラジアル状に備えること、
を特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記ハウジングは、前記複数の吸引口をコ-アキシャル状に備えること、
を特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記ハウジングに、該ハウジング内部を吸引する吸引路が形成されていること、
を特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記複数のインクジェットヘッドは、単一のインク色に対して複数備えられること、
を特徴とするインクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200930(P2012−200930A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65633(P2011−65633)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】