説明

インクジェット塗装方法

【課題】目地を有する基材1に対してインクジェット塗装を施す際に、基材の寸法誤差による基材の目地とインクジェット塗装との位置ずれの発生を大幅に低減することができるインクジェット塗装方法を提供する。
【解決手段】目地2を有する基材1の表面に色柄パターンをインクジェット塗装により塗装するインクジェット塗装方法に関する。インクジェット塗装前の基材1における目地間隔Pを測定する。前記測定値に最も近い目地間隔Pを有する色柄パターンを目地間隔Pの設定値が異なる複数の色柄パターンから選択する。前記選択された色柄パターンを基材1にインクジェット塗装にて塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地が形成されたセメント系等の基材に対してインクジェット塗装を施すインクジェット塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外壁材、屋根材、塀材などの建築用外装材には、セメント系の化粧板が広く用いられている。このような化粧板は、建物の外観の形成を担うため、各種の意匠を実現する表面化粧について技術的な検討が加えられている。たとえばセメント系成形材料を抄造、押出成形、注型成形等により成形して得られる湿潤シートを養生硬化させ、得られる無機質板に塗装を施すことが一般的に行われている。
【0003】
塗装の一方式として、最近、コンベア上で搬送される無機質板の表面に向けて、この無機質板の搬送速度と同期させてインクジェットノズルヘッドより塗料を噴射するインクジェット塗装が考えられている。このようなインクジェット塗装は、これまで一般的に用いられてきた塗装ロール等に比べ、局所的なしかも位置制御された塗装が可能である。したがって、濃淡表現などにより自然な風合いの高意匠塗装された化粧板が製造可能であるという利点がある(特許文献1参照)。
【0004】
このようなインクジェット塗装により、例えば目地が形成された基材に対して、目地が形成された箇所に塗装を施さないようにしたり、目地が形成されている箇所と目地が形成されていない箇所とを異なる色に塗装するなどして、レンガ調やタイル調の化粧板を得ることができる。
【特許文献1】特開2004−17007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように目地が形成された複数の基材にそれぞれインクジェット塗装を施す場合、目地形成時の加工精度や、セメント系の基材を作製する際の養生硬化時等や乾燥時における寸法変化のばらつき等により、複数の基材ごとに目地の間隔に若干のばらつきが生じることは避けがたい。このため、塗装位置ずれの発生頻度を低減するため、予め基材に形成される目地間隔の規格値を設定しておき、目地間隔が前記規格値となることを目標として基材を作製し、インクジェット塗装を施す際には、前記規格値に基づく色柄パターンを基材に塗装するようにしていた。
【0006】
しかし、寸法精度や養生硬化時の寸法変化は、基材が作製される環境の微妙な変化等により生じ、目地間隔の寸法誤差の変化には前記環境の変化等に応じた傾向が生じる。このため、目地間隔の寸法誤差が上記規格値とは異なる値付近で安定する場合もある。このような場合にも基材の塗装を一律に上記規格値に基づいて行うと、基材の目地の位置とインクジェット塗装との間に同程度の位置ずれが生じる状態が続くことになる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、目地を有する基材に対してインクジェット塗装を施す際に、基材の寸法誤差による基材の目地とインクジェット塗装との位置ずれの発生を低減することができるインクジェット塗装方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、目地2を有する基材1の表面に色柄パターンをインクジェット塗装により塗装するインクジェット塗装方法であって、インクジェット塗装前の基材1における目地間隔Pを測定する。前記測定値に最も近い目地間隔Pを有する色柄パターンを目地間隔Pの設定値が異なる複数の色柄パターンから選択する。そして、前記選択された色柄パターンを基材1にインクジェット塗装にて塗装することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記基材1を連続的に搬送しながら、上記目地間隔Pの測定と、上記基材1に対するインクジェット塗装とを行うことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2において、上記基材1の搬送を、サーボモータにて駆動するタイミングベルト3にて行うことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3において、上記目地間隔Pの測定を行うための検知装置4として変位センサを基材1の搬送経路に沿って配置し、基材1に対するインクジェット塗装の開始のタイミングを前記変位センサによる検知結果に基づいて決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、目地を有する複数の基材における目地間隔にばらつきが生じていても、各基材ごとに目地間隔を測定して、この測定結果に基づき、複数の色柄パターンのなかから、前記測定値に応じた目地間隔の設定値を有する適切な色柄パターンを選択して、インクジェット塗装を施すことができ、色柄パターンとして目地間隔が予め設定された規格値のもののみを用いる場合よりも、基材の寸法誤差による基材の目地とインクジェット塗装との位置ずれの発生を大幅に低減することができるものである。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、各基材ごとに、搬送経路上でこの基材を搬送しながら目地間隔の測定とインクジェット塗装とを連続して行うことができるものである。
【0014】
また、請求項3に係る発明によれば、搬送経路上での基材の搬送を正確に制御することができ、基材の目地間隔の測定や基材に対するインクジェット塗装の位置精度を向上することができて、基材の目地とインクジェット塗装との位置ずれの発生を更に低減することができるものである。
【0015】
また、請求項4に係る発明によれば、基材の目地間隔を測定するための変位センサをインクジェット塗装のタイミング制御にも利用することができ、基材の目地とインクジェット塗装との位置ずれの発生を更に低減することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
本発明における塗装の対象である基材1としては適宜のものを用いることができるが、例えばセメント系の無機質板を用いることができる。無機質板の作製には、セメントと補強繊維を主成分とする湿潤シート(グリーンシート)を用いることができる。この湿潤シートは、セメント系の水性スラリーを原料組成物として用いて、長網式、丸網式の各種の抄造法により抄造することができるが、押出成形等の他の適宜の手法も採用することができる。原料組成物としては、例えば水硬性のセメント成分が30〜95質量%、シリカ、珪石粉、フライアッシュ等の充填材が2〜60質量%、パルプ等の補強繊維が3〜10質量%を占める固形分からなるものとし、この固形分100質量部に対し、水50〜2000質量部程度の割合としたスラリーを用いることができる。尚、セメント成分は、普通ポルトランドセメントをはじめ、高炉セメント等の、適宜に組成調整されたものを用いることができる。補強繊維のパルプは、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、古紙パルプ、あるいはこれらのうち二種以上の混合物等を用いることができる。この湿潤シートを養生硬化することにより、基材1を得ることができる。
【0018】
上記湿潤シートの養生硬化は適宜の手法で行うことができるが、オートクレーブ養生をすることが望ましく、その際の温度としては140℃以上とすることが好適である。また、実際的には、養生は、オートクレーブ養生と、これに先行しての促進前養生、つまり加温のために水蒸気が投入される前養生との二段階での養生であることが望ましい。これによって、基材1の強度が向上し、組織と性能の均一化が図られることになる。
【0019】
この養生時には、養生前の湿潤シートの表面にシーラーを塗布することが望ましい。このシーラーを塗布することにより、養生時にエフロレッセンスが発生することを防止することができ、更にシーラーの塗膜が耐透水性を発揮することで、基材1の耐透水性を向上することができる。
【0020】
シーラーは特に制限されないが、例えばアクリル系、酢酸ビニル系、エポキシ系、塩化ゴム系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系等の水性樹脂エマルションを用いることができる。
【0021】
また、このようなシーラー中には、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、顔林、ベントナイト、セリサイト、ドロマイト、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、珪藻土等の無機粒子を混合することができる。
【0022】
そして、このようなシーラーを湿潤シートの表面に塗布し、加熱成膜することでシーラーの塗膜を形成することができる。
【0023】
このようなシーラーの塗装は、養生前に行うものであるが、上記のように促進前養生を行う場合には促進前養生後にシーラーを塗布し、次いでオートクレーブ養生を行うことが好ましく、これにより基材1の耐凍害性や寸法安定性を向上することができる。
【0024】
このような養生硬化により得られた基材1には、必要に応じて乾燥処理や切削加工が施される。
【0025】
この基材1の、模様形成が施される一面側には、図2に示すように、凹溝からなる目地2を形成する。この目地2は、例えば湿潤シートをプレス成形や押出成形等により形成する際に同時に形成することができる。目地2の寸法は適宜設定されるが、例えば幅3〜50mm、深さ1〜15mmの範囲に形成することができる。また隣り合う目地2の間の間隔も適宜設定されるが、例えば20〜400mmの範囲とすることができる。
【0026】
基材1の塗装は、インクジェット塗装により行う。インクジェット塗装は基材1に対して塗装模様を位置精度良く容易に形成することができ、塗装模様を目地2に対して位置合わせして形成する際に位置精度良く容易に形成することができる。
【0027】
インクジェット塗装を施す場合には、基材1の模様形成が為される一面側に、必要に応じて予めインク受理層(インク受容層)を形成する。インク受理層はインクジェット塗装時に塗布されるインクを滲みなく定着させる機能を有し、インクを吸収する性質を有するもの、例えば吸水性を有する多孔質の層を形成するものであるが、このようなインク受理層を形成するための組成物(受理層形成組成物)としては、水性のものを用いることが好ましい。
【0028】
上記受理層形成組成物としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることができる。受理層形成組成物には、体質顔料と吸湿性樹脂のうちの少なくとも一方を配合しておくのが好ましい。これにより、インクの定着性を向上させることができる上に、後で水性塗料でクリアー層を形成する際に滲みを防止することができると共に、発色性も向上させることができるものである。ここで、体質顔料としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、多孔質シリカ、珪藻土等を用いることができ、吸湿性樹脂としては、酢酸ビニル、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール等のインキ吸収性ポリマー等を用いることができる。また、インク受理層を受理層形成組成物で形成するにあたっては、基材1の表面に受理層形成組成物を塗布量30〜200g/m・wetで塗布するのが好ましい。なお、受理層形成組成物の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
【0029】
また、受理層形成組成物中の顔料は、上述した体質顔料のほか、着色顔料も意味する。着色顔料としては、酸化チタン、弁柄、オーカー、炭酸カルシウム、複合金属酸化物等の無機顔料や、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー、群青等の有機顔料を用いることができる。顔料は一種のみを用いたり、二種以上を組み合わせて用いたりすることができる。化粧板の耐候性を向上させることができることから、顔料の中でも無機顔料を用いるのが好ましい。顔料の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径で0.01〜4μm程度が好ましい。また、顔料の分散は通常の方法で行うことができ、また、その際に分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤等を使用することが可能である。
【0030】
このような水性の受理層形成組成物を用いると、インクジェット塗装において水性インクを用いる場合の塗装模様の発色性が高くなる。
【0031】
上記のような受理層形成組成物を、シーラーが設けられた基材1の表面に例えばスプレーコート、カーテンコート、浸漬、ワイヤーバーコート、アプリケーターコート、スピンコート、ロールコート、電着コート、刷毛塗り等の適宜の手法にて塗布し、加熱硬化することでインク受理層を形成することができる。
【0032】
このように形成された基材1に対して、インクジェット塗装を施す。
【0033】
インクジェット塗装を行うために用いる塗装装置としては、図1に示すものを挙げることができる。この塗装装置は、基材1を水平方向に連続的に搬送する搬送手段12に沿って、上流側に目地間隔測定手段13を、下流側に塗装手段14を設けて構成される。
【0034】
搬送手段12は無限帯状のベルト6をプーリ5間に懸架したベルトコンベアで形成することができる。ベルトコンベアとしては、特にサーボモータにて駆動するタイミングベルト3を設けることで、搬送手段12による搬送中の基材1の位置制御を正確に行うことが好ましい。搬送手段12は例えば基材1を30〜40m/minの速度で搬送する。
【0035】
目地間隔測定手段13としては適宜のものを設けることができるが、搬送手段12により搬送される基材1上の複数の目地2が目地間隔測定手段13による検知位置を通過するごとに目地2の存在を検知し、この検知結果に基づいて目地間隔Pを導出するものを設けることができる。
【0036】
目地間隔測定手段13にて測定する目地間隔Pは、基材1に設けられる複数の目地2から選択された、特定の二つの目地2同士の間隔とすることができる。このとき、基材1上の隣り合う二つの目地2同士の間隔を測定しても良いが、図2に示すように、基材1上の複数の目地2のうち、間に所定数の目地2を挟んだ特定の二つの目地2a,2bの間隔を測定すれば、目地間隔Pの測定時の誤差を低減することができる。
【0037】
目地間隔測定手段13の一例としては、搬送手段12による基材1の搬送経路に沿って設けた変位センサを、検知装置4として具備するものを挙げることができる。この変位センサとしては、基材1の搬送経路の上方にレーザ変位センサ等の非接触式変位センサを設けることができる。この場合、基材1が搬送手段12にて搬送されるのに従って基材1の上面が変位センサにてスキャニングされる。この変位センサによる検知信号は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成される計測処理装置7に入力され、この計測処理装置7において目地間隔Pを導出することができる。
【0038】
計測処理装置7による処理動作の一例を、図3のグラフを参照して説明する。計測処理装置7は、任意に設定される基準高さを基準とし、変位センサによる基材1上面の高さの測定値が所定の値Xを超えて大きくなった時点で、変位センサによる検知位置に基材1の前端部が到達したものと判定し(判定A)、この判定後、前記測定値が所定の値Y(前記値Xよりも大きい値)よりも小さくなるごとに、各時点で変位センサによる検知位置に目地2が存在するものと判定し(判定B)、その後、前記測定値が前記所定の値Xよりも小さくなった時点で、基材1の後端部が変位センサによる検知位置を通過したものと判定する(判定C)。これらの値X,Yは、基材1の厚み並びに目地2の深さに応じて適宜設定される。そして、前記判定Aから判定Cまでの間になされたn回の判定B(B〜B)のうち、a回目及びb回目になされた二つの判定Ba,Bbがなされる間に経過した時間と、搬送手段12による基材1の搬送速度とに基づき、目地間隔Pを算出する。a及びbは1≦a<b≦nの範囲で選択される任意の数であり、a回目に測定される目地2とb回目に測定される目地2は、上記特定の二つの目地2a,2bに相当する。
【0039】
また、目地間隔測定手段13は上記のように検知装置4として変位センサを具備するもののほか、例えば検知装置4として、搬送手段12による基材1の搬送経路の上方にCCDカメラ等の撮像装置を設けても良い。この場合、搬送手段12にて搬送される基材1を前記撮像装置にてスキャンし、得られる画像データを計測処理装置7にて画像処理することで目地間隔Pを導出することができる。
【0040】
塗装手段14は、塗装ノズルヘッド8、塗装ノズルヘッド8に塗料を供給する塗料供給タンク(図示省略)、塗装ノズルヘッド8からの塗料の噴射を制御する塗装制御システムなどを設けたインクジェット式塗装機等から構成される。
【0041】
塗装ノズルヘッド8としては、それぞれ異なる色の塗料(インク)をインクジェット方式で噴射する複数の塗装ノズルヘッド8が設けられ、一組のヘッドセット9が構成されている。各塗装ノズルヘッド8としては例えばイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の塗料を噴射する4種類の塗装ノズルヘッド8y,8c,8m,8kが設けられており、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。塗装ノズルヘッド8の個数はこれに限られず、使用するインクの種類に応じた個数が設けられる。各塗装ノズルヘッド8にはこの塗装ノズルヘッド8へインクを供給する塗料供給タンクがそれぞれ接続されている。例えばイエローのインクを供給する塗料供給タンクは塗装ノズルヘッド8yに、シアンのインクを供給する塗料供給タンクは塗装ノズルヘッド8cに、マゼンタのインクを供給する塗料供給タンクは塗装ノズルヘッド8mに、ブラックのインクを供給する塗料供給タンクは塗装ノズルヘッド8kにそれぞれ接続してある。そして各塗装ノズルヘッド8y,8c,8m,8kは搬送手段12にて搬送される基材1の上方に、この基材1の搬送方向に沿って配列してある。
【0042】
また、塗装手段14には各塗装ノズルヘッド8からのインクの噴射を制御する塗装制御システムが設けられる。塗装制御システムは、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、印刷処理装置11、印刷処理装置10等を備えて形成してある。印刷処理装置11は、原画をスキャナ等して得た複数の色柄パターンのデータが保存されているものであり、印刷処理装置10は、塗装を行う基材1に応じた色柄パターンのデータを選択して印刷処理装置11から取り出し、この色柄パターンのデータに基づいて各塗装ノズルヘッド8y,8c,8m,8kを制御するものである。各各塗装ノズルヘッド8は例えばピエゾ制御方式や光熱交換素子にレーザ光を照射する制御方式により噴射が制御される噴射ノズルを備え、印刷処理装置11で各噴射ノズルを制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各塗料の噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行なうことができる。
【0043】
上記色柄パターンとしては、基材1上の目地2が形成された箇所に塗装を施さないようにしたり、目地2が形成されている箇所と目地2が形成されていない箇所とを異なる色に塗装したりするなど、基材1の目地2の位置に応じたものが上記印刷処理装置11に保存される。
【0044】
この色柄パターンとしては、目地間隔Pの設定値が異なる複数のものが上記印刷処理装置11に保存される。この各色柄パターンは、各設定値に合致するパターンを有する。
【0045】
ここで、目地間隔Pは、基材1に設けられる複数の目地2から選択された、特定の二つの目地2a,2b同士の間隔で表すことができる。この特定の二つの目地2a,2bは、上記目地間隔測定手段13にて目地間隔Pを測定する際に選択される二つの目地2a,2bと同一とすることができる。
【0046】
このような複数の色柄パターンとしては、例えば目地間隔Pの設定値が設計上の規格値となっている色柄パターンを中心に、当該設定値を前記規格値から所定値刻みで増大し、及び減少させた複数の色柄パターンを用いることができる。具体的には例えば目地間隔Pの規格値を2436.0mmとし、これを中心に目地間隔Pの設定値を0.5mm刻みで変化させた合計9つの色柄パターン、すなわち目地間隔Pの設定値が2434.0mm、2434.5mm、2435.0mm、2435.5mm、2436.0mm、2436.5mm、2437.0mm、2437.5mm、2438.0mmの各色柄パターンを用意し、これらの色柄パターンを、上記塗装制御システムにおける印刷処理装置11に保存しておくことができる。この色柄パターンの数、並びに刻み幅は、印刷処理装置11の記憶容量等に応じて適宜設定される。
【0047】
また、印刷処理装置10による色柄パターンの選択のための処理動作の一例を示す。印刷処理装置10には、上記目地間隔測定手段13の計測処理装置7から目地間隔Pの測定結果が入力される。前記測定結果が入力されると、印刷処理装置10は印刷処理装置11に保存されている目地間隔Pの設定値が異なる複数の色柄パターンから、目地間隔Pの測定値に最も近い目地間隔Pの設定値を有する色柄パターンを選択する。具体的には、上記測定値と、各色柄パターンの設定値とを比較して、両者の差が最も小さくなる色柄パターンを選択する。
【0048】
また、印刷処理装置10は、目地間隔測定手段13から入力される検知結果に基づいて、塗装手段14による塗装開始のタイミングを決定することもできる。すなわち、既述のように検知装置4として変位センサを用いる場合、変位センサによる検知位置に基材1の前端部が到達したことを、この変位センサにて検知することができる。そこで、計測処理装置7が上記判定Aのように変位センサによる検知位置に基材1の前端部が到達したことを判定したら、その時刻を印刷処理装置10に入力する。計測処理装置7は搬送手段12による基材1の搬送速度、並びに変位センサによる検知位置と塗装ノズルヘッド8の設置位置との間の距離に基づき、前記変位センサによる検知位置に基材1の前端部が到達した時刻から、この基材1の前端部が塗装ノズルヘッド8の設置位置に到達する時刻を算出する。そして、算出された時刻に塗装ノズルヘッド8からインクが噴射されるように、塗装ノズルヘッド8を制御するものである。
【0049】
ここで、図示の例では、塗装手段14には複数の塗装ノズルヘッド8からなる一組のヘッドセット9が二つ設けられており、目地間隔測定手段13では二つの検知装置4が設けられている。
【0050】
この各ヘッドセット9a,9bは、基材1の搬送方向と直交する方向に位置をずらして設けられている。このため例えば一枚の基材1の一側部を一方のヘッドセット9aにて塗装し、他側部を他方のヘッドセット9bにて塗装することができる。また二枚の基材1を搬送方向と直交する方向に並べて搬送する場合に、一方の基材1を一方のヘッドセット9aにて塗装し、他方の基材1を他方のヘッドセット9bにて塗装することもできる。これに限らず、ヘッドセット9は適宜の個数を設けることができる。
【0051】
また、このようにヘッドセット9を二つ設ける場合に、図示の例のように二つの検知装置4(4a,4b)を設ければ、一方のヘッドセット9aの動作制御を一方の検知装置4aにて行い、他方のヘッドセット9aの動作制御を他方の検知装置4bにて行うことができ、各ヘッドセット9の動作制御を各検知装置4による検知結果に基づいてそれぞれ行うことができる。このため、一枚の基材1に対して二つのヘッドセット9a,9bにてインクジェット塗装を施す場合は、この1枚の基材1を二つの検知装置4a,4bにてそれぞれ検知して、その検知結果に基づき各ヘッドセット9a,9bの動作制御を行うことができる。また、二つの基材1に対してそれぞれ各ヘッドセット9a,9bにて別個にインクジェット塗装を施す場合には、各基材1を各検知装置4a,9bにてそれぞれ別個に検知を行い、その検知結果に基づき各ヘッドセット9a,9bの動作制御を行うことができて、二つの基材1を別個に搬送してそれぞれ独立してインクジェット塗装を施すことができる。
【0052】
基材1に対するインクジェット塗装を行うにあたっては、まず搬送手段12に基材1を供給する。このとき、複数の基材1を順次間隔をあけて搬送することができる。
【0053】
搬送手段12により、基材1が検知装置4を通過したら、検知装置4により基材1の検知が行われる。このとき、上記のように計測処理装置7にて基材1の前端部が検知装置4による検知位置に到達した時刻と、基材1の目地間隔Pとが測定され、その測定結果が、印刷処理装置10に入力される。
【0054】
印刷処理装置10は前記目地間隔Pの測定結果に基づき、上記のようにインクジェット塗装に適用する色柄パターンを選択すると共に、基材1の前端部が検知装置4による検知位置に到達した時刻の測定結果に基づいて、上記のように塗装手段14による塗装開始のタイミングを決定する。
【0055】
そして、基材1が塗装ノズルヘッド8を通過する際には、印刷処理装置10による制御にて塗装ノズルヘッド8からインクが噴射され、基材1に対して前記選択された色柄パターンに基づく意匠模様が施されるものである。
【0056】
このような基材1の目地間隔Pの測定、色柄パターンの選択及びインクジェット塗装は、複数の基材1を順次塗装する場合には、各基材1ごとに行うことができる。このため、各基材1の目地間隔Pに誤差が生じていても、基材1の目地2の位置と、基材1へのインクジェット塗装との間の位置ずれが抑制される。
【0057】
このようなインクジェット塗装後の基材1(化粧板)には、更に必要に応じて、表面保護用のクリアー層を形成する。クリアー層は適宜のクリアー塗料を塗布成膜することにより形成することができ、例えばアクリル系エマルション等を用い、これをスプレー等にて塗布した後、100〜150℃で30秒以上加熱乾燥することにより成膜して、クリアー層を形成することができる。このクリアー層の厚みは特に制限されないが、5〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0058】
また、化粧板には、更に無機質塗料層を形成することもできる。無機質塗料層はクリアー層の表面に無機質塗料を塗布成膜することで形成することができ、これにより化粧板の耐候性を向上することができる。無機質塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えばオルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液に、ポリオルガノシロキサンや、アルキルチタン酸塩等の縮合反応触媒を加え、或いは更にシリカを加えたケイ素アルコキシド系塗料等を用い、これを静電塗装等して塗布した後、60〜120℃で焼き付け乾燥等することにより成膜することにより、無機質塗料層を形成することができる。この無機質塗料層の厚みは特に制限されないが、1〜10μmの範囲であることが好ましい
また、更に光触媒層を形成することも好ましい。光触媒層は、無機質塗料層の表面に光触媒を含有する無機質塗料を塗布成膜することで形成することができ、これにより化粧板の防汚性を向上することができる。光触媒を含有する無機質塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えば上記のようなケイ素アルコキシド系塗料に酸化チタン等の光触媒を加えたもの等を用い、これをスプレー塗装等して塗布した後、60〜120℃で焼き付け乾燥等することにより成膜することにより、光触媒層を形成することができる。この光触媒層の厚みは特に制限されないが、0.2〜1.0μmの範囲であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略の側面図である。
【図2】基材の一例を示す側面図である。
【図3】同上の実施の形態の一例における、変位センサによる基材の検知結果の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1 基材
2 目地
3 タイミングベルト
4 検知装置(変位センサ)
P 目地間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地を有する基材表面に色柄パターンをインクジェット塗装により塗装するインクジェット塗装方法であって、インクジェット塗装前の基材における目地間隔を測定し、前記測定値に最も近い目地間隔を有する色柄パターンを目地間隔の設定値が異なる複数の色柄パターンから選択し、前記選択された色柄パターンを基材にインクジェット塗装にて塗装することを特徴とするインクジェット塗装方法。
【請求項2】
上記基材を連続的に搬送しながら、上記目地間隔の測定と、上記基材に対するインクジェット塗装とを行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット塗装方法。
【請求項3】
上記基材の搬送を、サーボモータにて駆動するタイミングベルトにて行うことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット塗装方法。
【請求項4】
上記目地間隔の測定を行うための検知装置として変位センサを基材の搬送経路に沿って配置し、基材に対するインクジェット塗装の開始のタイミングを前記変位センサによる検知結果に基づいて決定することを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェット塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−313392(P2007−313392A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143292(P2006−143292)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】