インクジェット式記録ヘッド、インクジェット式記録装置、インクジェット式記録ヘッドの製造装置
【課題】インクジェット式記録ヘッドの記録装置内への組付け作業性を向上し、作業時に発生する不具合を防止する。
【解決手段】ヘッド部29上方に配置されたインクタンク27と、シリアル-パラレル変換画像データ制御素子23を搭載した第1のリジッド基板24と、パラレル伝送される画像データ信号に応じて、圧電素子に駆動波形を入力する圧電素子駆動素子を搭載した第2のリジッド基板28と、両基板を電気的に接続するFPC基板25とを備え、第1のリジッド基板24のFPC基板25側とは反対側に、上位基板と接続するコネクタ20を備え、コネクタ20がインクタンク27の上面に配置され、第1のリジッド基板24がインクタンク27の側面に配置され、第2のリジッド基板28がインクタンク27とヘッド部29の間に挟持され、FPC基板25が第1のリジッド基板24と第2のリジッド基板28の間に屈曲した状態で配置される。
【解決手段】ヘッド部29上方に配置されたインクタンク27と、シリアル-パラレル変換画像データ制御素子23を搭載した第1のリジッド基板24と、パラレル伝送される画像データ信号に応じて、圧電素子に駆動波形を入力する圧電素子駆動素子を搭載した第2のリジッド基板28と、両基板を電気的に接続するFPC基板25とを備え、第1のリジッド基板24のFPC基板25側とは反対側に、上位基板と接続するコネクタ20を備え、コネクタ20がインクタンク27の上面に配置され、第1のリジッド基板24がインクタンク27の側面に配置され、第2のリジッド基板28がインクタンク27とヘッド部29の間に挟持され、FPC基板25が第1のリジッド基板24と第2のリジッド基板28の間に屈曲した状態で配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッドに係り、特に電源を供給したり画像データや駆動波形などの信号を伝送する基板の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来のインクジェット式記録ヘッドの斜視図である。同図に示すように従来のインクジェット式記録ヘッドは、記録ヘッド本体101の外側に画像データ制御基板102が設けられており、記録ヘッド本体101と画像データ制御基板102はフレキシブルプリント基板(FPC)103で接続されている。
【0003】
また、図示していないが、インク滴を吐出するための圧電素子(ピエゾ素子)を駆動する駆動波形や画像データを生成するための上位基板が設けられており、その上位基板と前記画像データ制御基板102は、両基板にコネクタをそれぞれ実装し、ツイストフラットケーブル等を介して前記上位基板と画像データ制御基板102を電気的に接続していた。
【0004】
一方、特開2005-204927号公報(特許文献1)には、複数のリジッド基板の密閉容器内への収納効率の向上を目的として、複数のリジッド基板と、その複数のリジッド基板を予め一連に接続するフレキシブルプリント基板とを備え、隣接するリジッド基板が互いに対向するようにフレキシブルプリント基板を折り曲げた状態で容器内に収納したカプセル型の医療装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図14に示す従来のインクジェット式記録ヘッドでは、前記画像データ制御基板102は記録ヘッド本体101の外部に配置されるため、インクジェット式記録装置内に画像データ制御基板102の設置スペースを確保する必要があり、インクジェット式記録装置の小型化に障害となる。
【0006】
また、記録ヘッド本体101と画像データ制御基板102は柔軟なフレキシブルプリント基板103で接続されているため、記録ヘッド本体101の記録装置への組み込み作業や交換作業時に、記録ヘッド本体101と画像データ制御基板102をそれぞれ手で持つ必要があり、両手が塞がってしまい、作業性が悪いという問題がある。
【0007】
さらに、作業性の向上をする目的で、画像データ制御基板102を記録ヘッド本体101の中に内蔵するために、フレキシブルプリント基板103を数mm程度まで短くすると、屈曲性に優れているフレキシブルプリント基板103が固く折り曲げ難くなってしまう問題がある。
【0008】
さらにまた、ツイストフラットケーブルの挿入時に発生する応力が画像データ制御基板102の固定部分に集中するため、画像データ制御基板102が反って変形し、それによって画像データ制御基板102の半田部にクラック等が発生するなどの不具合が生じる。
【0009】
前記特許文献1に記載されているカプセル型の医療装置では、隣接するリジッド基板が互いに対向するようにフレキシブル基板を折り曲げた状態で装置内に収納しているため、コネクタの搭載スペースを確保する必要が無く、密閉容器内への収納効率を向上することはできる。しかし、後述する本発明のように、インクジェット式記録ヘッドのインクジェット式記録装置内への組付け作業性を向上し、作業時に発生する不具合を防止するという機能は備えていない。
【0010】
本発明は、ツイストフラットケーブルの挿入時に発生する応力が第1のリジッド基板の固定部分に集中することにより、第1のリジッド基板が反るなどの変形を起こし、それによって当該基板の接続部にクラック等が発生するなどの不具合が生じないインクジェット式記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、
多数のノズルと、前記ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、各圧力室内を加圧してインクを前記ノズルから吐出する多数の圧電素子とを備えたヘッド部と、
前記ヘッド部の上方に配置されて、前記圧力室にインクを供給するインクを貯留するインクタンクと、
シリアル転送される画像データ信号をパラレル転送に変換する画像データ制御素子を搭載した第1のリジッド基板と、
前記第1のリジッド基板からパラレル伝送される画像データ信号に応じて、前記圧電素子に駆動波形を入力する圧電素子駆動素子を搭載した第2のリジッド基板と、
前記第1のリジッド基板と第2のリジッド基板を電気的に接続するためのフレキシブルプリント基板とを備えたインクジェット式記録ヘッドを対象とするものである。
【0012】
そして、前記第1のリジッド基板のフレキシブルプリント基板側とは反対側に取り付けられて、上位基板と接続するためのコネクタを備え、
前記コネクタが前記インクタンクの上面側に配置され、
前記第1のリジッド基板が前記インクタンクの側面側に配置され、
前記第2のリジッド基板が前記インクタンクと前記ヘッド部の間に挟持されて、
前記フレキシブルプリント基板が第1のリジッド基板と第2のリジッド基板の間に屈曲した状態で配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前述のような構成になっており、ツイストフラットケーブルの挿入時に発生する応力が第1のリジッド基板の固定部分に集中することにより、第1のリジッド基板が反るなどの変形を起こし、それによって当該基板の例えば半田部などに接続部にクラック等が発生するなどの不具合が生じない、品質の高いインクジェット式記録ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例に係るオンデマンド方式のライン走査型インクジェット式記録装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】そのインクジェット式記録ヘッドにおける記録ヘッド本体の構成を示す概略図である。
【図3】そのインクジェット式記録ヘッドに用いるヘッドユニットの拡大底面図である。
【図4】そのインクジェット式記録ヘッド全体の概略構成を示す側面図である。
【図5】そのインクジェット式記録ヘッドにおける記録ヘッド本体の側面図である。
【図6】そのインクジェット式記録ヘッドにおけるヘッド部の分解斜視図である。
【図7】ツイストフラットケーブルの挿入時におけるコネクタの位置関係とフレキシブルプリント基板の概略形状を示す図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の第1実施例を示す図である。
【図8】そのインクジェット式記録ヘッドに用いるリジッド・フレキシブル基板の拡大断面図である。
【図9】そのインクジェット式記録ヘッドに用いるフレキシブルプリント基板における電源銅箔層のパターン配線を示す平面図である。
【図10】フレキシブルプリント基板における信号銅箔層のパターン配線を示す図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の実施例を示す図である。
【図11】記録ヘッド本体の上面図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の実施例を示す図である。
【図12】本発明の第2実施例において、ツイストフラットケーブルの挿入時におけるコネクタの位置関係とフレキシブルプリント基板の概略形状を示す図である。
【図13】本発明の第2実施例で使用するフレキシブルプリント基板を蛇腹形状に変形させるフレキシブルプリント基板の折り曲げ機の斜視図である。
【図14】従来のインクジェット式記録ヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施例を図面と共に説明する。図1は、本発明の実施例に係るオンデマンド方式のライン走査型インクジェット式記録装置の全体構成を示す概略図である。
【0016】
図1に示すようにインクジェット式記録装置Xは、用紙供給部2と用紙回収部13の間に配置されている。用紙供給部2から高速で繰り出された連続した記録用紙(被記録媒体)1は、インクジェット式記録装置Xで所望のカラー画像が形成されて、用紙回収部13で順次巻き取り回収される。
【0017】
インクジェット式記録装置X内の用紙搬送装置は、前記用紙供給部2から供給された記録用紙1の幅方向の位置決めを行う規制ガイド3、駆動ローラと従動ローラで構成されたインフィード部4、記録用紙1の張力に対応して上下して位置信号を出力するダンサローラ5、記録用紙1の蛇行を制御するEPC(Edge Position Control)6、蛇行量のフィードバックに使用する蛇行量検出器7、記録用紙1を設定された速度で搬送するために一定速度で回転する駆動ローラと従動ローラからなるアウトフィード部11、記録用紙1を装置外に排紙する駆動ローラと従動ローラからなるプラー12などから構成されている。
【0018】
この用紙搬送装置は、ダンサローラ5の位置検出を行い、インフィード部4の回転を制御して搬送中の記録用紙1の張力を一定に保つ張力制御型の搬送装置である。 またインクジェット式記録装置X内には、インクジェット式記録ヘッド8と、そのインクジェット式記録ヘッド8と対向するように設けられたプラテン9と、乾燥手段10が設けられている。
【0019】
前記インクジェット式記録ヘッド8はノズルを印刷幅全域に配置したラインヘッドを有し、カラー印刷はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの各ラインヘッドにより行われ、各ラインヘッドのノズル面はプラテン9上に所定の隙間を保って支持されている。インクジェット式記録ヘッド8が用紙搬送速度に同期してインク滴吐出を行うことで、記録用紙1上にカラー画像を形成する。
【0020】
前記乾燥手段10は、インクジェット式記録ヘッド8により印刷されたインクを記録用紙1に乾燥定着させるためのものである。本実施例において乾燥手段10は記録用紙1から若干離れた非接触の乾燥装置を用いているが、接触式の乾燥装置であってもよい。
【0021】
図2は、インクジェット式記録ヘッド8における記録ヘッド本体14の構成を示す概略図である。
本実施例の場合記録ヘッド本体14は、ブラックのインク滴を吐出するブラック用ヘッドアレイ14K、シアンのインク滴を吐出するシアン用ヘッドアレイ14C、マゼンダのインク滴を吐出するマゼンダ用ヘッドアレイ14M、イエローのインク滴を吐出するイエロー用ヘッドアレイ14Yの集合体により構成されている。
【0022】
各ヘッドアレイ14K,14C,14M,14Yは、図に示すように記録用紙1の搬送方向(矢印方向)と直交する方向に延びている。このようにヘッドをアレイ化することにより広域な印刷領域幅を確保している。
【0023】
さらに各ヘッドアレイ14K,14C,14M,14Yは、複数個のヘッドユニット15により構成されており、本実施例ではヘッドユニット15を2列各3個、千鳥状に配列している。このようにヘッドユニット15を複数個千鳥状に配列することにより、記録ヘッド本体14の小型化が図れる。
【0024】
図3は、ヘッドユニット15の拡大底面図である。
同図に示すように、ヘッドユニット15のノズル面(底面)17には多数のノズル16が千鳥状に配列されており、本実施例ではノズル16を2列各64個千鳥状に配列している。このように多数のノズル16を千鳥配列することで、高解像度に対応している。
【0025】
図4は、インクジェット式記録ヘッド全体の概略構成を示す側面図である。
同図に示すようにインクジェット式記録ヘッド8は、記録ヘッド本体14と、ドライバ基板(上位基板)18と、ツイストフラットケーブル19から主に構成される。
【0026】
前記ドライバ基板18は、記録ヘッド本体14内の圧電素子(後述する)を駆動するための駆動波形、及び、画像データ信号を生成するための回路を実装したリジッド基板である。ツイストフラットケーブル19は、ドライバ基板18と記録ヘッド本体14を電気的に接続するものである。
【0027】
同図に示す記録ヘッド本体14の下面側がノズル面17となっている。記録ヘッド本体14が故障した場合は、ツイストフラットケーブル19を外して、記録ヘッド本体14のみを交換するようになっている。 なお図4は、図面を簡略化するために、ドライバ基板18と記録ヘッド本体14を一対一の関係で図示しているが、1枚のドライバ基板18に対して複数個の記録ヘッド本体14が接続されて駆動できる構成になっている。
【0028】
図5は、記録ヘッド本体14の側面図である。
記録ヘッド本体14は図に示すように、ヘッドカバー21、画像データ制御基板24、フレキシブルプリント基板25、インクタンク27、ヘッド基板28ならびにヘッド部29などで主に構成されている。
【0029】
画像データ制御基板24は画像データ制御IC23とコネクタ20を搭載したリジッド基板であり、画像データ制御IC23は、上位であるドライバ基板18(図4参照)からシリアル転送される画像データ信号をパラレル転送に変換する機能を有している。また、前記コネクタ20は、ツイストフラットケーブル19(図4参照)が引っ張れた時のコネクタの抜け防止を目的として、ラッチ機能が付加されたコネクタとなっている。
【0030】
フレキシブルプリント基板25は、図に示すように画像データ制御基板24とヘッド基板28を電気的に接続するためのものであり、柔軟な素材で構成された基板であり、容易に折り曲げることが可能である。
【0031】
ヘッド基板28は、ヘッド部29内に実装される圧電素子支持基板45(図6参照)を接続するためのパッドが設けられたリジッド基板であり、ヘッド部29とインクタンク28の間に配置されている。ヘッド部29内部の構成については、図6を用いて後で説明する。
【0032】
インクタンク27は、ノズル16(図3,6参照)から吐出されるインクを一時的に収容するためのタンクである。また、インクは、インクタンク27の上部に設けられたジョイント部26を通して供給される。なお、ジョイント部26から上位の構成については、図示と説明を省略する。
【0033】
同図に示すように、インクタンク27の下部にヘッド基板28を間に挟んでヘッド部29が取り付けられている。また、画像データ制御基板24は、フレキシブルプリント基板25を図5に示すように折り曲げて、インクタンク27の側面に実装することで、収納効率の向上を図っている。フレキシブルプリント基板25が蛇腹形状である理由については、図7を用いて後で説明する。画像データ制御基板24の上部に取り付けられているコネクタ20はインクタンク27の上面に載置・固定されている。
【0034】
ヘッドカバー21は、画像データ制御基板24とフレキシブルプリント基板25の機械的な保護と、画像データ制御基板24へのインク付着防止を目的としており、画像データ制御基板24ならびにフレキシブルプリント基板25を囲うように配置されて、インクタンク27の側面に固定用ネジ22で固定されている。 なお、画像データ制御基板24の固定用ネジ22と対応する位置には貫通孔48が形成されており、ヘッドカバー21の外側から挿入された固定用ネジ22は前記貫通孔48を通り、インクタンク27の側面に螺挿される。このようにして画像データ制御基板24がインクタンク27に一体に取り付けられ、記録ヘッド本体14の組み込み作業や交換作業時に片手で取り扱うことができ、作業性の向上が図れる。
【0035】
前記画像データ制御基板24とフレキシブルプリント基板25、ヘッド基板28は、リジッドフレキシブル基板の製造技術を採用することで、各基板24,25,28の間にコネクタを使用することなく、一連に接続することが可能である。リジッドフレキシブル基板の構成については、図8を用いて後で説明する。
【0036】
図6は、ヘッド部29の分解斜視図である。
ヘッド部29は図に示すように、ノズルプレート32、圧力室プレート34、リストリクタプレート36、ダイアフラムプレート39、剛性プレート30ならびに圧電素子群41から主に構成されている。
【0037】
多数個のノズル16が千鳥状に配列、形成されたノズルプレート32と、各ノズル16に対応する圧力室33を形成した圧力室プレート34と、共通インク流路40と圧力室33を連通して圧力室33へのインク流量を制御するリストリクタ35を形成したリストリクタプレート36と、振動板37とフィルタ38を設けたダイアフラムプレート39とを順次重ねて位置決めして接合することにより流路板が構成される。
【0038】
この流路板を剛性プレート30に接合して、フィルタ38を共通インク流路40の開口部と対向させる。インク導入パイプ43の上側開口端は、剛性プレート30の共通インク流路40に接続され、インク導入パイプ43の下側開口端は、図5に示したインクタンク27に接続される。
【0039】
圧電素子支持基板45上に圧電素子44を多数個配列して構成した圧電素子群41を、剛性プレート30に設けられている開口部42から挿入し、各圧電素子44の自由端を振動板37に接着固定することにより、ヘッド部29が構成される。
【0040】
圧電素子支持基板45には、図5に示したヘッド基板28と接続するための電極パッド46が設けられ、ヘッド基板28と半田付けで電気的に接続される。また、圧電素子支持基板45には、画像データ制御基板24からパラレル伝送される画像データ信号に応じて、圧電素子44に駆動波形を入力する圧電素子駆動IC47が搭載される。
【0041】
なお、図中の符号67は、圧電素子44と圧電素子駆動IC47とを電気的に接続するための銅箔パターンである。また、符号68は、圧電素子44と銅箔パターン67とを電気的に接続し、且つ、圧電素子44と圧電素子支持基板45とを接着させるための圧電素子接続用電極パッドである。
【0042】
尚、図6では図面の簡略化を図るためにノズル16、圧力室33、リストリクタ35、圧電素子44などの数を減らして図示している。またこのヘッド部29におけるインク滴の吐出動作の説明は、一般に公知であるため省略する。
【0043】
図7(a),(b)は、ツイストフラットケーブル19の挿入時におけるコネクタ20の位置関係とフレキシブルプリント基板25の概略形状を示す図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の第実施例を示す図である。
画像データ制御基板24に搭載されたコネクタ20に、ツイストフラットケーブル19を挿入する際に発生する応力の吸収方法について次に説明する。
【0044】
図7(a)に示す比較例は、画像データ制御基板24に設けられた貫通孔48の穴径が、固定用ネジ22の径と同等であり、画像データ制御基板24を固定用ネジ22で直接インクタンク27に固定している。
【0045】
前述のようにコネクタ20は画像データ制御基板24に取り付けられているため、画像データ制御基板24をインクタンク27に固定した際に、コネクタ20がインクタンク27より若干浮いて、両者の間に隙間58が形成される。 なお、ツイストフラットケーブル19の端部にはコネクタ57が取り付けられている。これは、図7(b)に示す本実施例においても同様である。
【0046】
この図7(a)に示す比較例においては、ツイストフラットケーブル19のコネクタ57を画像データ制御基板24のコネクタ20に差し込んだ際に発生する応力が、全て固定用ネジ22と画像データ制御基板24の接合部、すなわち基板固定部に集中する。そのため図7(a)に示すように画像データ制御基板24に反りが生じ、その画像データ制御基板24の変形が原因で画像データ制御IC23の半田付け部分にクラックが発生することがある。
【0047】
そこで本実施例では図7(b)に示すように、画像データ制御基板24をヘッドカバー21の上からネジ止め支持する構造とし、さらに、画像データ制御基板24に設けられた貫通孔48の径を固定用ネジ22の径よりも大径にしている。具体的には貫通孔48の径を、固定用ネジ22の径に、記録ヘッド本体14を構成している各部材の高さ方向の寸法公差より大きな値を加算した値とする。
【0048】
本実施例では固定用ネジ22の径3.0mmに対し、貫通孔48の径を8.0mmとているため、画像データ制御基板24がヘッドカバー21内で上下方向に±2.50mm移動可能な構造になっている。
【0049】
なお、本実施例においてもツイストフラットケーブル19(コネクタ57)を画像データ制御基板24のコネクタ20に差し込む前の状態では、図5に示すようにコネクタ20とヘッドカバー21の間には隙間58が形成されている。
【0050】
ツイストフラットケーブル19のコネクタ57を画像データ制御基板24のコネクタ20に差し込んだ際に、図7(b)に示すようにコネクタ20の下面をインクタンク27の上面に確実に押し当てることができる。
【0051】
また、フレキシブルプリント基板25は容易に屈曲させることが可能であるが、記録ヘッド本体14の小型化を図る目的で、例えば図7(a)に示すようにフレキシブルプリント基板25を数mm程度まで短くしてしまうと、折り曲げた際に、こしが発生し、固くなる傾向がある。そのため、ツイストフラットケーブル19の挿入時における画像データ制御基板24の上下移動の際に、フレキシブルプリント基板25が画像データ制御基板24のバッファとして機能しなくなってしまう。
【0052】
そこで、図7(b)に示すように、フレキシブルプリント基板25を画像データ制御基板24とヘッド基板28の間で例えば側面形状が略「つ」の字状になるように屈曲した状態で配置することで、記録ヘッド本体のサイズを巨大化すること無く、フレキシブルプリント基板25が本来の目的(画像データ制御基板24がヘッドカバー21内で上下方向に±2.50mm移動することに対し、フレキシブルプリント基板25がバッファとして機能すること)を達成することができる。
【0053】
従って、画像データ制御基板24がヘッドカバー21内で上下方向に移動可能な構造とし、且つ、フレキシブルプリント基板25を伸縮可能となる蛇腹形状にすることで、ツイストフラットケーブル19の挿入時に発生する応力を、コネクタ20をインクタンク27に押し当て、記録ヘッド本体14全体で受け止めて吸収することが可能となる。そのため図7(a)に示すように、画像データ制御基板24が反って、画像データ制御IC23の半田付け部分にクラックが発生するようなことが記録ヘッド本体サイズを巨大化すること無く解消される。
【0054】
図8は、リジッド・フレキシブル基板49の拡大断面図である。
前記画像データ制御基板24とフレキシブルプリント基板25とヘッド基板28は、別々の基板で構成して、それら基板同士をコネクタを介して接続したものではなく、1枚のリジッド・フレキシブル基板49によって連続して構成されている。図8は、そのリジッド・フレキシブル基板49の拡大断面図である。
【0055】
リジッド・フレキシブル基板49は同図に示すように、厚さ方向のほぼ中間に設けられている電源銅箔層50の上下両面に例えばポリイミドフィルムからなる第1の絶縁層51aを有し、上側の第1の絶縁層51aの上に第1の信号銅箔層52aが設けられ、その第1の信号銅箔層52aの上に例えばポリイミドフィルムからなる第2の絶縁層51bが形成されている。
【0056】
また、前記第1の絶縁層51aの下面ならびに第2の絶縁層51bの上面には、第1の接着剤層53aを介して第2の信号銅箔層52bが形成されている。さらに、その第2の信号銅箔層52bの下面ならびに上面には、第2の接着剤層53bを介して例えばポリイミドフィルムからなる絶縁外層54が形成された多層構造になっている。
【0057】
このリジッド・フレキシブル基板49のフレキシブルプリント基板25に相当する中間箇所の上下面に形成されている第1の接着剤層53a、第2の信号銅箔層52b、第2の接着剤層53bならびに絶縁外層54を適宜な手段で除去して薄くして、フレキシブル性を持たせて、フレキシブルプリント基板25aとする。
【0058】
また、そのフレキシブルプリント基板25aの一方側に連なる部分を画像データ制御基板24aとし、フレキシブルプリント基板25aの他方側に連なる部分をヘッド基板28aとする。
【0059】
従って画像データ制御基板24aとヘッド基板28aは層の構成が同じであり、上下両面が絶縁外層54で覆われて絶縁処理されている。一方、前記フレキシブルプリント基板25aは上下両面が第1の絶縁層51aまたは第2の絶縁層51bで覆われて絶縁処理されている。
【0060】
図示していないが、画像データ制御基板24aに画像データ制御IC23が搭載され、ヘッド基板28aに圧電素子制御IC47が搭載される。前記電源銅箔層50は画像データ制御IC23や圧電素子制御IC47に電源を供給し、前記信号銅箔層52は画像データ制御IC23や圧電素子制御IC47に画像データ信号や駆動波形を送信する機能を有している。
【0061】
また、前記画像データ制御基板24aには、電源銅箔層50や信号銅箔層52と画像データ制御IC23を電気的に接続するためのビアホール55aが、ヘッド基板28aには、電源銅箔層50や信号銅箔層52と圧電素子制御IC47を電気的に接続するためのビアホール55bが、それぞれ設けられている。
【0062】
このリジッド・フレキシブル基板49を使用することにより、基板間を接続するためのコネクタが不要になり、そのために省スペース化、FPCの接続工数が削減できる。また、コネクタにおける接触抵抗が無くなり、基板間でのインピーダンス制御が可能になり、精密なインク吐出制御ができる。
【0063】
図9は、フレキシブルプリント基板25aにおける電源銅箔層50のパターン配線56を示す図である。
フレキシブルプリント基板25aは、屈曲性に優れ、容易に曲げられることが特長であるが、フレキシブルプリント基板25aを構成する銅箔層の配線量が多くなるほど屈曲性が下がる。
【0064】
電源銅箔層50のパターン配線56は、銅箔ベタ配線とすることが一般的であるが、図9に示すように微小隙間をおいて多数本の線状部分が互いに交差したメッシュ状の配線パターンにすることで、フレキシブルプリント基板25aの屈曲性を向上させることができる。このメッシュ配線のパターン幅は、パターン幅の合計が電源の電流許容量を満足する程度の幅とする。
なお、画像データ制御基板24aならびにヘッド基板28aの電源銅箔層50もフレキシブルプリント基板25aと同様なメッシュ状のパターン配線56にすることにより、リジッド・フレキシブル基板49全体の製造効率を高めることができる。
【0065】
図10(a),(b)は、フレキシブルプリント基板25aにおける信号銅箔層52aのパターン配線を示す図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の実施例を示す図である。また、図11(a),(b)は、記録ヘッド本体14の上面図で、(a)は比較例、(b)は本発明の実施例を示す図である。
【0066】
図10(a),(b)に示すように、信号銅箔層52aには、配線幅が0.1mm程度の画像データ信号用パターン59と、配線幅が3mm程度の駆動波形信号用パターン58が配線されている。
【0067】
信号銅箔層52aの中心線57を対象として、片側一方に駆動波形用信号パターン58が配線されるような図10(a)に示す配線条件においては、フレキシブルプリント基板25を折り曲げ、インクタンク27の側面に実装する際に、銅箔量が多い駆動波形用信号パターン58が配線されている側のフレキシブルプリント基板25が折り曲げ難くなる。
【0068】
よって、図11(a)に示すように、フレキシブルプリント基板25を折り曲げた際に、歪んでしまい、インクタンク27の側面と並行して配置することが困難となるため、ヘッドカバー21で画像データ制御基板24を覆う際に障害となる。
【0069】
そこで本発明の実施例では、図10(b)に示すように、信号銅箔層52aの中心線57を中心として、銅箔の配線量を左右均一にすることで、フレキシブルプリント基板25を折り曲げ、インクタンク27の側面に実装する際にインクタンク27の側面と平行して配置することが可能であり、ヘッドカバー21を容易に取り付けることができる。
【0070】
なお、図10(b)では、フレキシブルプリント基板25の亀裂を防止するために、亀裂が入りにくい駆動波形用信号パターン58を外側に配線している。
【0071】
図12は、本発明の第2実施例において、ツイストフラットケーブルの挿入時におけるコネクタの位置関係とフレキシブルプリント基板の概略形状を示す図である。この第2実施例において、図7(b)に示す第1実施例に係るフレキシブルプリント基板25と相違する点は、フレキシブルプリント基板25を蛇腹形状にした点である。
【0072】
画像データ制御基板24がヘッドカバー21内で上下方向に移動することに対して、フレキシブルプリント基板25を蛇腹形状にすることにより、記録ヘッド本体のサイズを大きくすることなく、フレキシブルプリント基板25のバッフア機能が十分に発揮される。
【0073】
図13は、フレキシブルプリント基板25を蛇腹形状に変形させるFPC折り曲げ機60の斜視図である。
FPC折り曲げ機60は図に示すように、温度調節器61、デジタルタイマー62、ハンドプレス63、上面加圧板64、下面加圧板65、カートリッジヒーター66などで主に構成され、フレキシブルプリント基板25を加熱・加圧することで蛇腹形状に変形させるものである。
上面加圧板64と下面加圧板65には、それぞれ断面形状が三角形の突条が複数本平行に形成されている。
【0074】
フレキシブルプリント基板25を下面加圧板65の上に実装し、ハンドプレス62を下限位置まで押し下げることで、フレキシブルプリント基板25は上面加圧板64と下面加圧板65の間に挟まれて所定の圧力が加わり、上面加圧板64の突条と下面加圧板65の突条の噛み合いにより蛇腹形状に変形される。
【0075】
加圧のみではフレキシブルプリント基板25は変形しないため、温度調節器61により所定温度に設定されたカートリッジヒーター66を上面加圧板64の側面に実装し、フレキシブルプリント基板25を加圧すると同時に加熱する。この加熱・加圧時の条件は、フレキシブルプリント基板25に影響が出ない条件とする。
【0076】
デジタルタイマー62で一定時間カウント後、カートリッジヒーター66の電源を切り、ハンドプレス62を上限位置まで押し上げる。また、図示していないが、冷却ファン等でレキシブルプリント基板25を急冷することによって、加熱・加圧後のフレキシブルプリント基板25の形状を保持させる。
【0077】
前述した本発明の実施例によれば下記のような作用効果を奏することができる。
(1).圧電素子を接続するための第一のリジッド基板と、圧電素子を制御するための回路を実装した第二のリジッド基板と、前記2枚のリジッド基板を電気的に接続するためのフレキシブルプリント基板を、リジッドフレキ基板にすることで一連に接続し、前記フレキシブル基板の部分を折り曲げた状態でインクジェット式記録ヘッド内部に収納することで、筐体の小型化を図り、組付け作業性を向上できる。
【0078】
(2).上位基板と接続(ケーブル挿入)する際に発生する応力を、インクジェット式記録ヘッド全体で吸収することで、基板反りによる半田クラック等の不具合を防止することを目的としているため、ツイストフラットケーブルの挿入時における第二のリジッド基板の上下移動の際に、フレキシブルプリント基板が第二のリジッド基板のバッファとして機能する必要がある。
【0079】
そこで、図7(b)あるいは図12に示すように、フレキシブルプリント基板を屈曲状態で配置したり、蛇腹形状にすることで、伸縮可能な構成とし、バッファとして機能させることが可能となる。
【0080】
(3).フレキシブル基板の銅箔層に於ける配線パターンを均等配線することで、基板を垂直に折り曲げ、ヘッド内に収納することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1:記録用紙(被記録媒体)、
8:インクジェット式記録ヘッド、
16:ノズル、
18:ドライバ基板(上位基板)、
19:ツイストフラットケーブル、
20:コネクタ、
21:ヘッドカバー、
22:固定用ネジ、
23:画像データ制御IC、
24:画像データ制御基板、
24a:画像データ制御基板、
25:フレキシブルプリント基板、
27:インクタンク、
28:ヘッド基板、
29:ヘッド部、
33:圧力室、
37:振動板、
44:圧電素子、
47:圧電素子駆動IC、
48:貫通孔、
49:リジッド・フレキシブル基板、
50:電源銅箔層、
51a,51b:絶縁層、
52a,52b,52c:信号銅箔層、
53a,53b:接着剤層、
54:絶縁外層、
55a,55b:ビアホール、
56:パターン配線、
60:FPC折り曲げ機、
61:温度調節器、
62:デジタルタイマー、
63:ハンドプレス、
64:上面加圧板、
65:下面加圧板、
66:カートリッジヒーター、
X:インクジェット式記録装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特開2005−204927号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッドに係り、特に電源を供給したり画像データや駆動波形などの信号を伝送する基板の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来のインクジェット式記録ヘッドの斜視図である。同図に示すように従来のインクジェット式記録ヘッドは、記録ヘッド本体101の外側に画像データ制御基板102が設けられており、記録ヘッド本体101と画像データ制御基板102はフレキシブルプリント基板(FPC)103で接続されている。
【0003】
また、図示していないが、インク滴を吐出するための圧電素子(ピエゾ素子)を駆動する駆動波形や画像データを生成するための上位基板が設けられており、その上位基板と前記画像データ制御基板102は、両基板にコネクタをそれぞれ実装し、ツイストフラットケーブル等を介して前記上位基板と画像データ制御基板102を電気的に接続していた。
【0004】
一方、特開2005-204927号公報(特許文献1)には、複数のリジッド基板の密閉容器内への収納効率の向上を目的として、複数のリジッド基板と、その複数のリジッド基板を予め一連に接続するフレキシブルプリント基板とを備え、隣接するリジッド基板が互いに対向するようにフレキシブルプリント基板を折り曲げた状態で容器内に収納したカプセル型の医療装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図14に示す従来のインクジェット式記録ヘッドでは、前記画像データ制御基板102は記録ヘッド本体101の外部に配置されるため、インクジェット式記録装置内に画像データ制御基板102の設置スペースを確保する必要があり、インクジェット式記録装置の小型化に障害となる。
【0006】
また、記録ヘッド本体101と画像データ制御基板102は柔軟なフレキシブルプリント基板103で接続されているため、記録ヘッド本体101の記録装置への組み込み作業や交換作業時に、記録ヘッド本体101と画像データ制御基板102をそれぞれ手で持つ必要があり、両手が塞がってしまい、作業性が悪いという問題がある。
【0007】
さらに、作業性の向上をする目的で、画像データ制御基板102を記録ヘッド本体101の中に内蔵するために、フレキシブルプリント基板103を数mm程度まで短くすると、屈曲性に優れているフレキシブルプリント基板103が固く折り曲げ難くなってしまう問題がある。
【0008】
さらにまた、ツイストフラットケーブルの挿入時に発生する応力が画像データ制御基板102の固定部分に集中するため、画像データ制御基板102が反って変形し、それによって画像データ制御基板102の半田部にクラック等が発生するなどの不具合が生じる。
【0009】
前記特許文献1に記載されているカプセル型の医療装置では、隣接するリジッド基板が互いに対向するようにフレキシブル基板を折り曲げた状態で装置内に収納しているため、コネクタの搭載スペースを確保する必要が無く、密閉容器内への収納効率を向上することはできる。しかし、後述する本発明のように、インクジェット式記録ヘッドのインクジェット式記録装置内への組付け作業性を向上し、作業時に発生する不具合を防止するという機能は備えていない。
【0010】
本発明は、ツイストフラットケーブルの挿入時に発生する応力が第1のリジッド基板の固定部分に集中することにより、第1のリジッド基板が反るなどの変形を起こし、それによって当該基板の接続部にクラック等が発生するなどの不具合が生じないインクジェット式記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、
多数のノズルと、前記ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、各圧力室内を加圧してインクを前記ノズルから吐出する多数の圧電素子とを備えたヘッド部と、
前記ヘッド部の上方に配置されて、前記圧力室にインクを供給するインクを貯留するインクタンクと、
シリアル転送される画像データ信号をパラレル転送に変換する画像データ制御素子を搭載した第1のリジッド基板と、
前記第1のリジッド基板からパラレル伝送される画像データ信号に応じて、前記圧電素子に駆動波形を入力する圧電素子駆動素子を搭載した第2のリジッド基板と、
前記第1のリジッド基板と第2のリジッド基板を電気的に接続するためのフレキシブルプリント基板とを備えたインクジェット式記録ヘッドを対象とするものである。
【0012】
そして、前記第1のリジッド基板のフレキシブルプリント基板側とは反対側に取り付けられて、上位基板と接続するためのコネクタを備え、
前記コネクタが前記インクタンクの上面側に配置され、
前記第1のリジッド基板が前記インクタンクの側面側に配置され、
前記第2のリジッド基板が前記インクタンクと前記ヘッド部の間に挟持されて、
前記フレキシブルプリント基板が第1のリジッド基板と第2のリジッド基板の間に屈曲した状態で配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前述のような構成になっており、ツイストフラットケーブルの挿入時に発生する応力が第1のリジッド基板の固定部分に集中することにより、第1のリジッド基板が反るなどの変形を起こし、それによって当該基板の例えば半田部などに接続部にクラック等が発生するなどの不具合が生じない、品質の高いインクジェット式記録ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例に係るオンデマンド方式のライン走査型インクジェット式記録装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】そのインクジェット式記録ヘッドにおける記録ヘッド本体の構成を示す概略図である。
【図3】そのインクジェット式記録ヘッドに用いるヘッドユニットの拡大底面図である。
【図4】そのインクジェット式記録ヘッド全体の概略構成を示す側面図である。
【図5】そのインクジェット式記録ヘッドにおける記録ヘッド本体の側面図である。
【図6】そのインクジェット式記録ヘッドにおけるヘッド部の分解斜視図である。
【図7】ツイストフラットケーブルの挿入時におけるコネクタの位置関係とフレキシブルプリント基板の概略形状を示す図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の第1実施例を示す図である。
【図8】そのインクジェット式記録ヘッドに用いるリジッド・フレキシブル基板の拡大断面図である。
【図9】そのインクジェット式記録ヘッドに用いるフレキシブルプリント基板における電源銅箔層のパターン配線を示す平面図である。
【図10】フレキシブルプリント基板における信号銅箔層のパターン配線を示す図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の実施例を示す図である。
【図11】記録ヘッド本体の上面図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の実施例を示す図である。
【図12】本発明の第2実施例において、ツイストフラットケーブルの挿入時におけるコネクタの位置関係とフレキシブルプリント基板の概略形状を示す図である。
【図13】本発明の第2実施例で使用するフレキシブルプリント基板を蛇腹形状に変形させるフレキシブルプリント基板の折り曲げ機の斜視図である。
【図14】従来のインクジェット式記録ヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施例を図面と共に説明する。図1は、本発明の実施例に係るオンデマンド方式のライン走査型インクジェット式記録装置の全体構成を示す概略図である。
【0016】
図1に示すようにインクジェット式記録装置Xは、用紙供給部2と用紙回収部13の間に配置されている。用紙供給部2から高速で繰り出された連続した記録用紙(被記録媒体)1は、インクジェット式記録装置Xで所望のカラー画像が形成されて、用紙回収部13で順次巻き取り回収される。
【0017】
インクジェット式記録装置X内の用紙搬送装置は、前記用紙供給部2から供給された記録用紙1の幅方向の位置決めを行う規制ガイド3、駆動ローラと従動ローラで構成されたインフィード部4、記録用紙1の張力に対応して上下して位置信号を出力するダンサローラ5、記録用紙1の蛇行を制御するEPC(Edge Position Control)6、蛇行量のフィードバックに使用する蛇行量検出器7、記録用紙1を設定された速度で搬送するために一定速度で回転する駆動ローラと従動ローラからなるアウトフィード部11、記録用紙1を装置外に排紙する駆動ローラと従動ローラからなるプラー12などから構成されている。
【0018】
この用紙搬送装置は、ダンサローラ5の位置検出を行い、インフィード部4の回転を制御して搬送中の記録用紙1の張力を一定に保つ張力制御型の搬送装置である。 またインクジェット式記録装置X内には、インクジェット式記録ヘッド8と、そのインクジェット式記録ヘッド8と対向するように設けられたプラテン9と、乾燥手段10が設けられている。
【0019】
前記インクジェット式記録ヘッド8はノズルを印刷幅全域に配置したラインヘッドを有し、カラー印刷はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの各ラインヘッドにより行われ、各ラインヘッドのノズル面はプラテン9上に所定の隙間を保って支持されている。インクジェット式記録ヘッド8が用紙搬送速度に同期してインク滴吐出を行うことで、記録用紙1上にカラー画像を形成する。
【0020】
前記乾燥手段10は、インクジェット式記録ヘッド8により印刷されたインクを記録用紙1に乾燥定着させるためのものである。本実施例において乾燥手段10は記録用紙1から若干離れた非接触の乾燥装置を用いているが、接触式の乾燥装置であってもよい。
【0021】
図2は、インクジェット式記録ヘッド8における記録ヘッド本体14の構成を示す概略図である。
本実施例の場合記録ヘッド本体14は、ブラックのインク滴を吐出するブラック用ヘッドアレイ14K、シアンのインク滴を吐出するシアン用ヘッドアレイ14C、マゼンダのインク滴を吐出するマゼンダ用ヘッドアレイ14M、イエローのインク滴を吐出するイエロー用ヘッドアレイ14Yの集合体により構成されている。
【0022】
各ヘッドアレイ14K,14C,14M,14Yは、図に示すように記録用紙1の搬送方向(矢印方向)と直交する方向に延びている。このようにヘッドをアレイ化することにより広域な印刷領域幅を確保している。
【0023】
さらに各ヘッドアレイ14K,14C,14M,14Yは、複数個のヘッドユニット15により構成されており、本実施例ではヘッドユニット15を2列各3個、千鳥状に配列している。このようにヘッドユニット15を複数個千鳥状に配列することにより、記録ヘッド本体14の小型化が図れる。
【0024】
図3は、ヘッドユニット15の拡大底面図である。
同図に示すように、ヘッドユニット15のノズル面(底面)17には多数のノズル16が千鳥状に配列されており、本実施例ではノズル16を2列各64個千鳥状に配列している。このように多数のノズル16を千鳥配列することで、高解像度に対応している。
【0025】
図4は、インクジェット式記録ヘッド全体の概略構成を示す側面図である。
同図に示すようにインクジェット式記録ヘッド8は、記録ヘッド本体14と、ドライバ基板(上位基板)18と、ツイストフラットケーブル19から主に構成される。
【0026】
前記ドライバ基板18は、記録ヘッド本体14内の圧電素子(後述する)を駆動するための駆動波形、及び、画像データ信号を生成するための回路を実装したリジッド基板である。ツイストフラットケーブル19は、ドライバ基板18と記録ヘッド本体14を電気的に接続するものである。
【0027】
同図に示す記録ヘッド本体14の下面側がノズル面17となっている。記録ヘッド本体14が故障した場合は、ツイストフラットケーブル19を外して、記録ヘッド本体14のみを交換するようになっている。 なお図4は、図面を簡略化するために、ドライバ基板18と記録ヘッド本体14を一対一の関係で図示しているが、1枚のドライバ基板18に対して複数個の記録ヘッド本体14が接続されて駆動できる構成になっている。
【0028】
図5は、記録ヘッド本体14の側面図である。
記録ヘッド本体14は図に示すように、ヘッドカバー21、画像データ制御基板24、フレキシブルプリント基板25、インクタンク27、ヘッド基板28ならびにヘッド部29などで主に構成されている。
【0029】
画像データ制御基板24は画像データ制御IC23とコネクタ20を搭載したリジッド基板であり、画像データ制御IC23は、上位であるドライバ基板18(図4参照)からシリアル転送される画像データ信号をパラレル転送に変換する機能を有している。また、前記コネクタ20は、ツイストフラットケーブル19(図4参照)が引っ張れた時のコネクタの抜け防止を目的として、ラッチ機能が付加されたコネクタとなっている。
【0030】
フレキシブルプリント基板25は、図に示すように画像データ制御基板24とヘッド基板28を電気的に接続するためのものであり、柔軟な素材で構成された基板であり、容易に折り曲げることが可能である。
【0031】
ヘッド基板28は、ヘッド部29内に実装される圧電素子支持基板45(図6参照)を接続するためのパッドが設けられたリジッド基板であり、ヘッド部29とインクタンク28の間に配置されている。ヘッド部29内部の構成については、図6を用いて後で説明する。
【0032】
インクタンク27は、ノズル16(図3,6参照)から吐出されるインクを一時的に収容するためのタンクである。また、インクは、インクタンク27の上部に設けられたジョイント部26を通して供給される。なお、ジョイント部26から上位の構成については、図示と説明を省略する。
【0033】
同図に示すように、インクタンク27の下部にヘッド基板28を間に挟んでヘッド部29が取り付けられている。また、画像データ制御基板24は、フレキシブルプリント基板25を図5に示すように折り曲げて、インクタンク27の側面に実装することで、収納効率の向上を図っている。フレキシブルプリント基板25が蛇腹形状である理由については、図7を用いて後で説明する。画像データ制御基板24の上部に取り付けられているコネクタ20はインクタンク27の上面に載置・固定されている。
【0034】
ヘッドカバー21は、画像データ制御基板24とフレキシブルプリント基板25の機械的な保護と、画像データ制御基板24へのインク付着防止を目的としており、画像データ制御基板24ならびにフレキシブルプリント基板25を囲うように配置されて、インクタンク27の側面に固定用ネジ22で固定されている。 なお、画像データ制御基板24の固定用ネジ22と対応する位置には貫通孔48が形成されており、ヘッドカバー21の外側から挿入された固定用ネジ22は前記貫通孔48を通り、インクタンク27の側面に螺挿される。このようにして画像データ制御基板24がインクタンク27に一体に取り付けられ、記録ヘッド本体14の組み込み作業や交換作業時に片手で取り扱うことができ、作業性の向上が図れる。
【0035】
前記画像データ制御基板24とフレキシブルプリント基板25、ヘッド基板28は、リジッドフレキシブル基板の製造技術を採用することで、各基板24,25,28の間にコネクタを使用することなく、一連に接続することが可能である。リジッドフレキシブル基板の構成については、図8を用いて後で説明する。
【0036】
図6は、ヘッド部29の分解斜視図である。
ヘッド部29は図に示すように、ノズルプレート32、圧力室プレート34、リストリクタプレート36、ダイアフラムプレート39、剛性プレート30ならびに圧電素子群41から主に構成されている。
【0037】
多数個のノズル16が千鳥状に配列、形成されたノズルプレート32と、各ノズル16に対応する圧力室33を形成した圧力室プレート34と、共通インク流路40と圧力室33を連通して圧力室33へのインク流量を制御するリストリクタ35を形成したリストリクタプレート36と、振動板37とフィルタ38を設けたダイアフラムプレート39とを順次重ねて位置決めして接合することにより流路板が構成される。
【0038】
この流路板を剛性プレート30に接合して、フィルタ38を共通インク流路40の開口部と対向させる。インク導入パイプ43の上側開口端は、剛性プレート30の共通インク流路40に接続され、インク導入パイプ43の下側開口端は、図5に示したインクタンク27に接続される。
【0039】
圧電素子支持基板45上に圧電素子44を多数個配列して構成した圧電素子群41を、剛性プレート30に設けられている開口部42から挿入し、各圧電素子44の自由端を振動板37に接着固定することにより、ヘッド部29が構成される。
【0040】
圧電素子支持基板45には、図5に示したヘッド基板28と接続するための電極パッド46が設けられ、ヘッド基板28と半田付けで電気的に接続される。また、圧電素子支持基板45には、画像データ制御基板24からパラレル伝送される画像データ信号に応じて、圧電素子44に駆動波形を入力する圧電素子駆動IC47が搭載される。
【0041】
なお、図中の符号67は、圧電素子44と圧電素子駆動IC47とを電気的に接続するための銅箔パターンである。また、符号68は、圧電素子44と銅箔パターン67とを電気的に接続し、且つ、圧電素子44と圧電素子支持基板45とを接着させるための圧電素子接続用電極パッドである。
【0042】
尚、図6では図面の簡略化を図るためにノズル16、圧力室33、リストリクタ35、圧電素子44などの数を減らして図示している。またこのヘッド部29におけるインク滴の吐出動作の説明は、一般に公知であるため省略する。
【0043】
図7(a),(b)は、ツイストフラットケーブル19の挿入時におけるコネクタ20の位置関係とフレキシブルプリント基板25の概略形状を示す図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の第実施例を示す図である。
画像データ制御基板24に搭載されたコネクタ20に、ツイストフラットケーブル19を挿入する際に発生する応力の吸収方法について次に説明する。
【0044】
図7(a)に示す比較例は、画像データ制御基板24に設けられた貫通孔48の穴径が、固定用ネジ22の径と同等であり、画像データ制御基板24を固定用ネジ22で直接インクタンク27に固定している。
【0045】
前述のようにコネクタ20は画像データ制御基板24に取り付けられているため、画像データ制御基板24をインクタンク27に固定した際に、コネクタ20がインクタンク27より若干浮いて、両者の間に隙間58が形成される。 なお、ツイストフラットケーブル19の端部にはコネクタ57が取り付けられている。これは、図7(b)に示す本実施例においても同様である。
【0046】
この図7(a)に示す比較例においては、ツイストフラットケーブル19のコネクタ57を画像データ制御基板24のコネクタ20に差し込んだ際に発生する応力が、全て固定用ネジ22と画像データ制御基板24の接合部、すなわち基板固定部に集中する。そのため図7(a)に示すように画像データ制御基板24に反りが生じ、その画像データ制御基板24の変形が原因で画像データ制御IC23の半田付け部分にクラックが発生することがある。
【0047】
そこで本実施例では図7(b)に示すように、画像データ制御基板24をヘッドカバー21の上からネジ止め支持する構造とし、さらに、画像データ制御基板24に設けられた貫通孔48の径を固定用ネジ22の径よりも大径にしている。具体的には貫通孔48の径を、固定用ネジ22の径に、記録ヘッド本体14を構成している各部材の高さ方向の寸法公差より大きな値を加算した値とする。
【0048】
本実施例では固定用ネジ22の径3.0mmに対し、貫通孔48の径を8.0mmとているため、画像データ制御基板24がヘッドカバー21内で上下方向に±2.50mm移動可能な構造になっている。
【0049】
なお、本実施例においてもツイストフラットケーブル19(コネクタ57)を画像データ制御基板24のコネクタ20に差し込む前の状態では、図5に示すようにコネクタ20とヘッドカバー21の間には隙間58が形成されている。
【0050】
ツイストフラットケーブル19のコネクタ57を画像データ制御基板24のコネクタ20に差し込んだ際に、図7(b)に示すようにコネクタ20の下面をインクタンク27の上面に確実に押し当てることができる。
【0051】
また、フレキシブルプリント基板25は容易に屈曲させることが可能であるが、記録ヘッド本体14の小型化を図る目的で、例えば図7(a)に示すようにフレキシブルプリント基板25を数mm程度まで短くしてしまうと、折り曲げた際に、こしが発生し、固くなる傾向がある。そのため、ツイストフラットケーブル19の挿入時における画像データ制御基板24の上下移動の際に、フレキシブルプリント基板25が画像データ制御基板24のバッファとして機能しなくなってしまう。
【0052】
そこで、図7(b)に示すように、フレキシブルプリント基板25を画像データ制御基板24とヘッド基板28の間で例えば側面形状が略「つ」の字状になるように屈曲した状態で配置することで、記録ヘッド本体のサイズを巨大化すること無く、フレキシブルプリント基板25が本来の目的(画像データ制御基板24がヘッドカバー21内で上下方向に±2.50mm移動することに対し、フレキシブルプリント基板25がバッファとして機能すること)を達成することができる。
【0053】
従って、画像データ制御基板24がヘッドカバー21内で上下方向に移動可能な構造とし、且つ、フレキシブルプリント基板25を伸縮可能となる蛇腹形状にすることで、ツイストフラットケーブル19の挿入時に発生する応力を、コネクタ20をインクタンク27に押し当て、記録ヘッド本体14全体で受け止めて吸収することが可能となる。そのため図7(a)に示すように、画像データ制御基板24が反って、画像データ制御IC23の半田付け部分にクラックが発生するようなことが記録ヘッド本体サイズを巨大化すること無く解消される。
【0054】
図8は、リジッド・フレキシブル基板49の拡大断面図である。
前記画像データ制御基板24とフレキシブルプリント基板25とヘッド基板28は、別々の基板で構成して、それら基板同士をコネクタを介して接続したものではなく、1枚のリジッド・フレキシブル基板49によって連続して構成されている。図8は、そのリジッド・フレキシブル基板49の拡大断面図である。
【0055】
リジッド・フレキシブル基板49は同図に示すように、厚さ方向のほぼ中間に設けられている電源銅箔層50の上下両面に例えばポリイミドフィルムからなる第1の絶縁層51aを有し、上側の第1の絶縁層51aの上に第1の信号銅箔層52aが設けられ、その第1の信号銅箔層52aの上に例えばポリイミドフィルムからなる第2の絶縁層51bが形成されている。
【0056】
また、前記第1の絶縁層51aの下面ならびに第2の絶縁層51bの上面には、第1の接着剤層53aを介して第2の信号銅箔層52bが形成されている。さらに、その第2の信号銅箔層52bの下面ならびに上面には、第2の接着剤層53bを介して例えばポリイミドフィルムからなる絶縁外層54が形成された多層構造になっている。
【0057】
このリジッド・フレキシブル基板49のフレキシブルプリント基板25に相当する中間箇所の上下面に形成されている第1の接着剤層53a、第2の信号銅箔層52b、第2の接着剤層53bならびに絶縁外層54を適宜な手段で除去して薄くして、フレキシブル性を持たせて、フレキシブルプリント基板25aとする。
【0058】
また、そのフレキシブルプリント基板25aの一方側に連なる部分を画像データ制御基板24aとし、フレキシブルプリント基板25aの他方側に連なる部分をヘッド基板28aとする。
【0059】
従って画像データ制御基板24aとヘッド基板28aは層の構成が同じであり、上下両面が絶縁外層54で覆われて絶縁処理されている。一方、前記フレキシブルプリント基板25aは上下両面が第1の絶縁層51aまたは第2の絶縁層51bで覆われて絶縁処理されている。
【0060】
図示していないが、画像データ制御基板24aに画像データ制御IC23が搭載され、ヘッド基板28aに圧電素子制御IC47が搭載される。前記電源銅箔層50は画像データ制御IC23や圧電素子制御IC47に電源を供給し、前記信号銅箔層52は画像データ制御IC23や圧電素子制御IC47に画像データ信号や駆動波形を送信する機能を有している。
【0061】
また、前記画像データ制御基板24aには、電源銅箔層50や信号銅箔層52と画像データ制御IC23を電気的に接続するためのビアホール55aが、ヘッド基板28aには、電源銅箔層50や信号銅箔層52と圧電素子制御IC47を電気的に接続するためのビアホール55bが、それぞれ設けられている。
【0062】
このリジッド・フレキシブル基板49を使用することにより、基板間を接続するためのコネクタが不要になり、そのために省スペース化、FPCの接続工数が削減できる。また、コネクタにおける接触抵抗が無くなり、基板間でのインピーダンス制御が可能になり、精密なインク吐出制御ができる。
【0063】
図9は、フレキシブルプリント基板25aにおける電源銅箔層50のパターン配線56を示す図である。
フレキシブルプリント基板25aは、屈曲性に優れ、容易に曲げられることが特長であるが、フレキシブルプリント基板25aを構成する銅箔層の配線量が多くなるほど屈曲性が下がる。
【0064】
電源銅箔層50のパターン配線56は、銅箔ベタ配線とすることが一般的であるが、図9に示すように微小隙間をおいて多数本の線状部分が互いに交差したメッシュ状の配線パターンにすることで、フレキシブルプリント基板25aの屈曲性を向上させることができる。このメッシュ配線のパターン幅は、パターン幅の合計が電源の電流許容量を満足する程度の幅とする。
なお、画像データ制御基板24aならびにヘッド基板28aの電源銅箔層50もフレキシブルプリント基板25aと同様なメッシュ状のパターン配線56にすることにより、リジッド・フレキシブル基板49全体の製造効率を高めることができる。
【0065】
図10(a),(b)は、フレキシブルプリント基板25aにおける信号銅箔層52aのパターン配線を示す図で、(a)は比較例を示す図、(b)は本発明の実施例を示す図である。また、図11(a),(b)は、記録ヘッド本体14の上面図で、(a)は比較例、(b)は本発明の実施例を示す図である。
【0066】
図10(a),(b)に示すように、信号銅箔層52aには、配線幅が0.1mm程度の画像データ信号用パターン59と、配線幅が3mm程度の駆動波形信号用パターン58が配線されている。
【0067】
信号銅箔層52aの中心線57を対象として、片側一方に駆動波形用信号パターン58が配線されるような図10(a)に示す配線条件においては、フレキシブルプリント基板25を折り曲げ、インクタンク27の側面に実装する際に、銅箔量が多い駆動波形用信号パターン58が配線されている側のフレキシブルプリント基板25が折り曲げ難くなる。
【0068】
よって、図11(a)に示すように、フレキシブルプリント基板25を折り曲げた際に、歪んでしまい、インクタンク27の側面と並行して配置することが困難となるため、ヘッドカバー21で画像データ制御基板24を覆う際に障害となる。
【0069】
そこで本発明の実施例では、図10(b)に示すように、信号銅箔層52aの中心線57を中心として、銅箔の配線量を左右均一にすることで、フレキシブルプリント基板25を折り曲げ、インクタンク27の側面に実装する際にインクタンク27の側面と平行して配置することが可能であり、ヘッドカバー21を容易に取り付けることができる。
【0070】
なお、図10(b)では、フレキシブルプリント基板25の亀裂を防止するために、亀裂が入りにくい駆動波形用信号パターン58を外側に配線している。
【0071】
図12は、本発明の第2実施例において、ツイストフラットケーブルの挿入時におけるコネクタの位置関係とフレキシブルプリント基板の概略形状を示す図である。この第2実施例において、図7(b)に示す第1実施例に係るフレキシブルプリント基板25と相違する点は、フレキシブルプリント基板25を蛇腹形状にした点である。
【0072】
画像データ制御基板24がヘッドカバー21内で上下方向に移動することに対して、フレキシブルプリント基板25を蛇腹形状にすることにより、記録ヘッド本体のサイズを大きくすることなく、フレキシブルプリント基板25のバッフア機能が十分に発揮される。
【0073】
図13は、フレキシブルプリント基板25を蛇腹形状に変形させるFPC折り曲げ機60の斜視図である。
FPC折り曲げ機60は図に示すように、温度調節器61、デジタルタイマー62、ハンドプレス63、上面加圧板64、下面加圧板65、カートリッジヒーター66などで主に構成され、フレキシブルプリント基板25を加熱・加圧することで蛇腹形状に変形させるものである。
上面加圧板64と下面加圧板65には、それぞれ断面形状が三角形の突条が複数本平行に形成されている。
【0074】
フレキシブルプリント基板25を下面加圧板65の上に実装し、ハンドプレス62を下限位置まで押し下げることで、フレキシブルプリント基板25は上面加圧板64と下面加圧板65の間に挟まれて所定の圧力が加わり、上面加圧板64の突条と下面加圧板65の突条の噛み合いにより蛇腹形状に変形される。
【0075】
加圧のみではフレキシブルプリント基板25は変形しないため、温度調節器61により所定温度に設定されたカートリッジヒーター66を上面加圧板64の側面に実装し、フレキシブルプリント基板25を加圧すると同時に加熱する。この加熱・加圧時の条件は、フレキシブルプリント基板25に影響が出ない条件とする。
【0076】
デジタルタイマー62で一定時間カウント後、カートリッジヒーター66の電源を切り、ハンドプレス62を上限位置まで押し上げる。また、図示していないが、冷却ファン等でレキシブルプリント基板25を急冷することによって、加熱・加圧後のフレキシブルプリント基板25の形状を保持させる。
【0077】
前述した本発明の実施例によれば下記のような作用効果を奏することができる。
(1).圧電素子を接続するための第一のリジッド基板と、圧電素子を制御するための回路を実装した第二のリジッド基板と、前記2枚のリジッド基板を電気的に接続するためのフレキシブルプリント基板を、リジッドフレキ基板にすることで一連に接続し、前記フレキシブル基板の部分を折り曲げた状態でインクジェット式記録ヘッド内部に収納することで、筐体の小型化を図り、組付け作業性を向上できる。
【0078】
(2).上位基板と接続(ケーブル挿入)する際に発生する応力を、インクジェット式記録ヘッド全体で吸収することで、基板反りによる半田クラック等の不具合を防止することを目的としているため、ツイストフラットケーブルの挿入時における第二のリジッド基板の上下移動の際に、フレキシブルプリント基板が第二のリジッド基板のバッファとして機能する必要がある。
【0079】
そこで、図7(b)あるいは図12に示すように、フレキシブルプリント基板を屈曲状態で配置したり、蛇腹形状にすることで、伸縮可能な構成とし、バッファとして機能させることが可能となる。
【0080】
(3).フレキシブル基板の銅箔層に於ける配線パターンを均等配線することで、基板を垂直に折り曲げ、ヘッド内に収納することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1:記録用紙(被記録媒体)、
8:インクジェット式記録ヘッド、
16:ノズル、
18:ドライバ基板(上位基板)、
19:ツイストフラットケーブル、
20:コネクタ、
21:ヘッドカバー、
22:固定用ネジ、
23:画像データ制御IC、
24:画像データ制御基板、
24a:画像データ制御基板、
25:フレキシブルプリント基板、
27:インクタンク、
28:ヘッド基板、
29:ヘッド部、
33:圧力室、
37:振動板、
44:圧電素子、
47:圧電素子駆動IC、
48:貫通孔、
49:リジッド・フレキシブル基板、
50:電源銅箔層、
51a,51b:絶縁層、
52a,52b,52c:信号銅箔層、
53a,53b:接着剤層、
54:絶縁外層、
55a,55b:ビアホール、
56:パターン配線、
60:FPC折り曲げ機、
61:温度調節器、
62:デジタルタイマー、
63:ハンドプレス、
64:上面加圧板、
65:下面加圧板、
66:カートリッジヒーター、
X:インクジェット式記録装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特開2005−204927号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のノズルと、前記ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、各圧力室内を加圧してインクを前記ノズルから吐出する多数の圧電素子とを備えたヘッド部と、
前記ヘッド部の上方に配置されて、前記圧力室にインクを供給するインクを貯留するインクタンクと、
シリアル転送される画像データ信号をパラレル転送に変換する画像データ制御素子を搭載した第1のリジッド基板と、
前記第1のリジッド基板からパラレル伝送される画像データ信号に応じて、前記圧電素子に駆動波形を入力する圧電素子駆動素子を搭載した第2のリジッド基板と、
前記第1のリジッド基板と第2のリジッド基板を電気的に接続するためのフレキシブルプリント基板とを備えたインクジェット式記録ヘッドを対象とするものである。
そして、前記第1のリジッド基板のフレキシブルプリント基板側とは反対側に取り付けられて、上位基板と接続するためのコネクタを備え、
前記コネクタが前記インクタンクの上面側に配置され、
前記第1のリジッド基板が前記インクタンクの側面側に配置され、
前記第2のリジッド基板が前記インクタンクと前記ヘッド部の間に挟持されて、
前記フレキシブルプリント基板が第1のリジッド基板と第2のリジッド基板の間に屈曲した状態で配置されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記第1のリジッド基板の外側にヘッドカバーが配置されて、前記ヘッドカバーは前記第1のリジッド基板を貫通する固定用ネジによって前記インクタンクに固定され、
前記第1のリジッド基板には前記固定用ネジの径よりも大きい貫通孔が形成されて、当該第1のリジッド基板が前記ヘッドカバー内において上下動可能になっていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記第1のリジッド基板と前記フレキシブルプリント基板と前記第2のリジッド基板が一連に接続されたリジッド・フレキシブル基板で構成され、
前記フレキシブルプリント基板が蛇腹形状をしていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記第1のリジッド基板から前記フレキシブルプリント基板を通って前記第2のリジッド基板まで、電源を供給する電源箔層と信号を伝送する信号箔層が、絶縁層を介して層状にそれぞれ連続して形成され、
前記第1のリジッド基板に前記画像データ制御素子を搭載して、前記第1のリジッド基板の電源箔層ならびに信号箔層と前記画像データ制御素子を電気的に接続するビアホールを設け、
前記第2のリジッド基板に前記圧電素子駆動素子を搭載して、前記第2のリジッド基板の電源箔層ならびに信号箔層と前記圧電素子駆動素子を電気的に接続するビアホールを設けていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項5】
請求項3または4に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記フレキシブルプリント基板は、前記第1のリジッド基板ならびに前記第2のリジッド基板よりも薄く形成されており、
前記第1のリジッド基板、前記フレキシブルプリント基板ならびに前記第2のリジッド基板の両面に絶縁層が形成されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
少なくとも前記フレキシブルプリント基板の電源箔層が、微小隙間をおいて多数本の線状部分が互いに
交差したメッシュ配線パターンになっていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記電源箔層のメッシュ配線パターンが前記第1のリジッド基板から前記フレキシブルプリント基板を通って前記第2のリジッド基板まで延びていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項8】
請求項3ないし7のいずれか1項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記フレキシブルプリント基板の前記電源銅箔層と前記信号銅箔層が、当該フレキシブルプリント基板の中心線を中心にしてほぼ均等に配線されていることを特徴とする特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項9】
インクジェット式記録ヘッドと、前記インクジェット式記録ヘッドに対して被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段を備えたインクジェット式記録装置において、
前記インクジェット式記録ヘッドが請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインクジェット式記録ヘッドであることを特徴とするインクジェット式記録装置。
【請求項10】
請求項3に記載の前記フレキシブルプリント基板を一定時間、加熱・加圧して蛇腹形状に変形すること特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造装置。
【請求項1】
多数のノズルと、前記ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、各圧力室内を加圧してインクを前記ノズルから吐出する多数の圧電素子とを備えたヘッド部と、
前記ヘッド部の上方に配置されて、前記圧力室にインクを供給するインクを貯留するインクタンクと、
シリアル転送される画像データ信号をパラレル転送に変換する画像データ制御素子を搭載した第1のリジッド基板と、
前記第1のリジッド基板からパラレル伝送される画像データ信号に応じて、前記圧電素子に駆動波形を入力する圧電素子駆動素子を搭載した第2のリジッド基板と、
前記第1のリジッド基板と第2のリジッド基板を電気的に接続するためのフレキシブルプリント基板とを備えたインクジェット式記録ヘッドを対象とするものである。
そして、前記第1のリジッド基板のフレキシブルプリント基板側とは反対側に取り付けられて、上位基板と接続するためのコネクタを備え、
前記コネクタが前記インクタンクの上面側に配置され、
前記第1のリジッド基板が前記インクタンクの側面側に配置され、
前記第2のリジッド基板が前記インクタンクと前記ヘッド部の間に挟持されて、
前記フレキシブルプリント基板が第1のリジッド基板と第2のリジッド基板の間に屈曲した状態で配置されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記第1のリジッド基板の外側にヘッドカバーが配置されて、前記ヘッドカバーは前記第1のリジッド基板を貫通する固定用ネジによって前記インクタンクに固定され、
前記第1のリジッド基板には前記固定用ネジの径よりも大きい貫通孔が形成されて、当該第1のリジッド基板が前記ヘッドカバー内において上下動可能になっていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記第1のリジッド基板と前記フレキシブルプリント基板と前記第2のリジッド基板が一連に接続されたリジッド・フレキシブル基板で構成され、
前記フレキシブルプリント基板が蛇腹形状をしていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記第1のリジッド基板から前記フレキシブルプリント基板を通って前記第2のリジッド基板まで、電源を供給する電源箔層と信号を伝送する信号箔層が、絶縁層を介して層状にそれぞれ連続して形成され、
前記第1のリジッド基板に前記画像データ制御素子を搭載して、前記第1のリジッド基板の電源箔層ならびに信号箔層と前記画像データ制御素子を電気的に接続するビアホールを設け、
前記第2のリジッド基板に前記圧電素子駆動素子を搭載して、前記第2のリジッド基板の電源箔層ならびに信号箔層と前記圧電素子駆動素子を電気的に接続するビアホールを設けていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項5】
請求項3または4に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記フレキシブルプリント基板は、前記第1のリジッド基板ならびに前記第2のリジッド基板よりも薄く形成されており、
前記第1のリジッド基板、前記フレキシブルプリント基板ならびに前記第2のリジッド基板の両面に絶縁層が形成されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
少なくとも前記フレキシブルプリント基板の電源箔層が、微小隙間をおいて多数本の線状部分が互いに
交差したメッシュ配線パターンになっていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記電源箔層のメッシュ配線パターンが前記第1のリジッド基板から前記フレキシブルプリント基板を通って前記第2のリジッド基板まで延びていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項8】
請求項3ないし7のいずれか1項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、
前記フレキシブルプリント基板の前記電源銅箔層と前記信号銅箔層が、当該フレキシブルプリント基板の中心線を中心にしてほぼ均等に配線されていることを特徴とする特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
【請求項9】
インクジェット式記録ヘッドと、前記インクジェット式記録ヘッドに対して被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段を備えたインクジェット式記録装置において、
前記インクジェット式記録ヘッドが請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインクジェット式記録ヘッドであることを特徴とするインクジェット式記録装置。
【請求項10】
請求項3に記載の前記フレキシブルプリント基板を一定時間、加熱・加圧して蛇腹形状に変形すること特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−31994(P2013−31994A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29458(P2012−29458)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]