説明

インクジェット捺染用インク、インクジェット捺染方法及び捺染物

【課題】インクジェット描画における連続吐出信頼性に優れ、ノズル詰まりの復帰に優れ、捺染画像の染色ムラの少ない、インクジェット捺染用インク及びインクジェット捺染方法を提供すること。
【解決手段】分散染料、分散剤、水及び水溶性有機溶剤、並びに、アセチレンジオール及びアセチレングリコール、を含有することを特徴とする、インクジェット捺染用インク、好ましくは、上記アセチレンジオール及び上記アセチレングリコールがそれぞれ特定の式(1)及び式(2)で表されるインクジェット捺染用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染用インク、インクジェット捺染方法及び捺染物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、布、皮革等に対してインクジェット方式により捺染等の染色を施す技術が知られている。インクジェット方式による染色は、生産性に優れ、デザインの変更にも迅速に対応可能であるといった長所を有している。
【0003】
その反面、インクジェット方式では、被染色体を移動可能なライン上に、インクを打滴して、ドットの集合体を用いて染色を行うため、インクの安定性に伴う吐出安定性の確保が難しく、均一性の高い染色に不利である。さらには布、皮革等の染色対象物への浸透時間が不足し、染色終了後に色移りや洗濯等による色落ちといった染色不良や表面形状、厚さ変動等に影響を受けて染色ムラが発生することがあった。
【0004】
中でも、分散染料を用いたポリエステル繊維の染色において、これらの問題が特に顕在化しやすく、従来染色剤では困難な場合が存在する。
これら課題に対し従来は、布、皮革等の染色対象物への濡れ性を向上させるため、各種界面活性剤が用いられているが、分散染料の安定性が損なわれ、凝集物によりインクジェット吐出に不具合が生じる場合がある。また、界面活性剤によっては、泡が発生しやすく、染色ムラが生じる。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、インクジェット方式で捺染を施すに際して、ジアルキルコハク酸塩を含有し、かつ尿素骨格を有する化合物を含有しないインクジェットインク組成物により、インク出射性及びインク保存性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−315733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インクジェット染色工程における染色不良について、特許文献1に記載の発明でも決定的な解決策は見出されておらず、依然解決困難な問題の一つであることが当該業界での認識である。
本発明が解決しようとする課題は、上記に鑑みて、インクジェット描画における連続吐出信頼性に優れ、ノズル詰まりの復帰に優れ、捺染画像の染色ムラの少ない、インクジェット捺染用インク及びインクジェット捺染方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は以下の手段<1>、<8>及び<10>により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<7>及び<9>と共に列記する。
<1>分散染料、分散剤、水及び水溶性有機溶剤、並びに、アセチレンジオール及びアセチレングリコール、を含有することを特徴とする、インクジェット捺染用インク、
<2>前記アセチレンジオール及び前記アセチレングリコールがそれぞれ以下の式(1)及び式(2)で表される、<1>に記載のインクジェット捺染用インク、
【0009】
【化1】

式(1)及び式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R1とR2、又はR3とR4が結合して環を形成してもよく、m及びnは、それぞれ独立に、1〜100の整数を表す。
<3>前記アセチレンジオール及び前記アセチレングリコールがそれぞれ以下の式(3)及び式(4)で表される、<1>又は<2>に記載のインクジェット捺染用インク、
【0010】
【化2】

式(4)中、m及びnは、それぞれ独立に、1〜100の整数を表す。
<4>前記アセチレンジオールの含有量及び前記アセチレングリコールの含有量が、それぞれ、インク組成物中で、0.01〜2.5重量%である、<1>〜<3>いずれか1つに記載のインクジェット捺染用インク、
<5>前記水溶性有機溶剤が、少なくとも1種の多価アルコールである、<1>〜<4>いずれか1つに記載のインクジェット捺染用インク、
<6>少なくともシアン、イエロー、マゼンタ、及び、ブラックの4色を含むインクセットとした、<1>〜<5>いずれか1つに記載のインクジェット捺染用インク、
<7>オレンジ、グリーン及びバイオレットよりなる群から選ばれた少なくとも1つの特色インクを更に含む、<6>に記載のインクジェット捺染用インク、
<8><1>〜<7>いずれか1つに記載のインクジェット捺染用インクを被染色体上に吐出する吐出工程、前記インクジェット捺染用インクを被染色体に定着する定着工程、及び、未定着染料を水洗除去する除去工程、を含むことを特徴とするインクジェット捺染方法、
<9>被染色体が、ポリエステル繊維を含有する布帛である、<8>に記載のインクジェット捺染方法、
<10><8>又は<9>に記載のインクジェット捺染方法によって染色された捺染物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクジェット描画における連続吐出信頼性に優れ、ノズル詰まりの復帰性に優れ、捺染画像の染色ムラの少ない、インクジェット捺染用インク及びインクジェット捺染方法を提供することができた。
本発明のインクは、特定のノニオン界面活性剤を併用することにより、分散染料の安定性向上、発泡抑制及びノズルプレートの汚染防止に基づく長期間の連続吐出とノズル詰まりの復帰に優れると推定される。また、インクジェット描画のための前処理を行わないポリエステル繊維に対しても滲みを防止して染色ムラの少ない捺染物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインクジェット捺染用インク(以下、単に「インク組成物」又は「インク」ともいう。)は、分散染料、分散剤、水及び水溶性有機溶剤、並びに、アセチレンジオール及びアセチレングリコール、を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明のインクジェット捺染方法は、本発明のインクジェット捺染用インクを被染色体上に吐出する吐出工程、前記インクジェット捺染用インクを被染色体に定着する定着工程、及び、未定着染料を水洗除去する除去工程、を含むことを特徴とする。
以下、詳細に本発明のインク及びインクジェット捺染方法を順に説明する。
【0014】
<分散染料>
本発明のインクに使用する分散染料について説明する。
【0015】
本発明に使用する分散染料とは、水に難溶性で、アゾ系、アントラキノン系又はその他の縮合系の化学構造を有し、分子量が2,000以下であり、水溶性基を有していない染料である。
【0016】
本発明においては、このような条件を満たす従来公知の分散染料であれば、いずれも使用することができる。
【0017】
本発明に好ましく使用できる分散染料を具体的に例示する。
C.I.Disperse Yellow 3、4、5、7、9、13、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、 76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、186、192、198、199、202、 204、210、211、215、216、218、224、
【0018】
C.I.Disperse Orange 1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、 53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142、
【0019】
C.I.Disperse Red 1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、 75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、289、298、302、303、310、311、312、320、324、328、
【0020】
C.I.Disperse Violet 1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、
【0021】
C.I.Disperse Green 6:1、9、
C.I.Disperse Brown 1、2、4、9、13、19、
【0022】
C.I.Disperse Blue 3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333等、
C.I.Disperse Black 1、3、10、24。
【0023】
インク中の分散染料の含有量は、2種以上を併用する場合は総含有量を意味するものとして、インク中(「インク総重量に対して」を意味する。)0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜14重量%がより好ましく、1〜10重量%が特に好ましい。分散染料含有量を前記の範囲内とすることにより、発色濃度を十分として、かつ、インクの保存安定性を確保することができる。
分散染料は市販品のまま使用してもよいが、適宜精製処理を行うことが好ましい。精製方法としては公知の再結晶方法、洗浄等を用いることができる。
分散染料は粉末又は塊状の乾燥状態の他に、ウエットケーキやスラリーの状態でも入手でき、染料粒子の凝集を抑える目的で、界面活性剤等を少量含有していてもよい。
【0024】
分散染料は、媒体分散機等により、小さな粒子に均一に分散されて、インクとして使用される。染料粒子の粒径としては、数平均粒径が150〜400nmであることが好ましく、150〜350nmであることがより好ましい。最大粒径が1,000nm以上の粒子を含まず、最大粒径が900nm以下であることが好ましく、粒子径が200nm以下の粒子の占める割合が80重量%以下であると、凝集による物性変化を防止することができる。上記の粗大粒子は、フィルター濾過で除去することができる。
数平均粒径、粒子分布又は最大粒径が上記の範囲内であると、微細なノズルよりインクを安定に吐出させることができ、インクジェット捺染方法において、目詰まりを防止して、安定に吐出することができる。数平均粒子径及び粒子分布は、レーザー光散乱法を用いた市販の粒径測定機により求めることができる。3mmの角形セルを用いて、200回積算することにより測定する。
【0025】
<分散剤>
本発明のインクは、分散染料の微粒子を安定に水系媒体に分散するために、分散剤を含有する。分散剤としては、低分子の、イオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤、並びに高分子分散剤が使用できる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が好ましく使用され、ノニオン界面活性剤がより好ましく使用される。高分子分散剤としては、アニオン水溶性樹脂が好ましく使用される。
本発明で好ましく使用される低分子のノニオン界面活性剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が挙げられ、ここでアルキル基は炭素数が12〜20であることが好ましく、ポリオキシエチレンのセチルエーテル、ラウリルエーテル、オレイルエーテルが例示できる。オキシエチレンの付加モル数が15〜25であり、オキシプロピレンの付加モル数が2〜6のセチルエーテルがより好ましい。
これらのセチルエーテル類は、日光ケミカルズ(株)よりNIKKOLの商品名及び花王(株)よりエマルゲンの商品名で市販されている。
【0026】
高分子分散剤として好ましく使用されるアニオン水溶性樹脂は、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β−不飽和カルボン酸の脂肪族アルコ−ルエステル、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマ−ル酸及びその誘導体、酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれる少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体である。)からなるブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体、並びにこれらの塩などを挙げることができる。
本発明おいて、低分子とは分子量が1,000以下の分子を意味し、高分子とは分子量が1,000を超える分子をいう。
【0027】
これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であることが好ましい。中でも、側鎖にカルボキシル基又はスルホン酸基及びそれらの塩類を有する水溶性高分子化合物が特に良好である。
【0028】
分散剤の配合量は、インク中で、0.1〜30重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。
【0029】
<水>
本発明のインクは、粘度調整の観点から、水をインク全重量に対して、10〜90重量%含有することが好ましく、20〜70重量%含有することがより好ましい。水としては、イオン交換水が好ましく使用される。水は、分散染料の粒子を分散するための媒体として有用である。
【0030】
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤とは、水と相溶性を有する有機溶媒であり、室温において、水と等重量以上の有機溶媒とが均一に相溶する有機溶媒をいう。
水溶性有機溶媒の種類は、多岐にわたるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の1価アルコール類、以下に説明する多価アルコール類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が含まれる。
【0031】
(多価アルコール類)
本発明おいて、好ましく使用される水性有機溶媒は、多価アルコール類である。多価アルコール類は2以上の水酸基を有する脂肪族化合物である。いずれの水酸基もエーテルやエステルに誘導されていない、未変性の多価アルコールが好ましい。
本発明のインクに使用する多価アルコールには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類;チオジグリコール;グリセリンが含まれる。
多価アルコール類の総含有量は、インク総重量に対して、2〜50重量%であることが好ましく、10〜40重量%であることがより好ましい。
多価アルコール類は、ノズル部やチューブ内を含むインクジェット装置内におけるインクの揮発抑制や固化防止に有用である。
【0032】
本発明のインクは、多価アルコールのエーテル類を含有してもよく、炭素数が2〜6個のアルキレン基を含むアルキレングリコールのエーテル類、オキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体のエーテル類(以上まとめて「グリコールエーテル化合物」ともいう。)が例示できる。
グリコールエーテル化合物には、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等のアルキレングリコールのモノ低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類が含まれる。ここで、低級とは、含有炭素数が1〜5のアルキル基をいう。
【0033】
本発明のインクに任意的に添加するグリコールエーテル化合物は、粘度が25℃で1〜40cPであることが好ましく、2〜30cPであることがより好ましい。粘度が上記範囲内であるとヘッド内の洗浄に有効に作用するため好ましい。
本発明において、グリコールエーテル化合物は沸点が50〜150℃であることが好ましく、60〜130℃であることがより好ましい。沸点が上記範囲内であると使用後のインクの残存がなく、使用時にも揮発することを抑制して安全かつ効果的に使用できる。
【0034】
本発明のインク中で、グリコールエーテル化合物の添加量は、0〜70重量%であることが好ましく、0〜50重量%であることがより好ましく、0〜40重量%であることが特に好ましい。
【0035】
<アセチレンジオール及びアセチレングリコール>
本発明のインクジェット捺染用インクは、アセチレンジオール及びアセチレングリコールを含有する。
上記アセチレンジオール及び上記アセチレングリコールは、それぞれ以下の式(1)及び式(2)で表されることが好ましい。
【0036】
【化3】

【0037】
式(1)及び式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R1とR2、又はR3とR4が結合して環を形成してもよく、m及びnは、それぞれ独立に、1〜100の整数を表す。
上記のアルキル基は置換基を有していてもよく、フェニル基で置換されたアルキル基であるアラルキル基を含む。アルキル基に許容される置換基は、アリール基の他にハロゲン原子、アルコキシ基を含む。
式(2)におけるエチレンオキシド付加モル数である(m+n)は、好ましくは、5〜60であり、より好ましくは、6〜40である。
【0038】
上記アセチレンジオール及び上記アセチレングリコールは、それぞれ以下の式(3)及び式(4)で表されることが好ましい。
【0039】
【化4】

式(4)中、(m+n)は、好ましくは、6〜20であり、より好ましくは、6〜16である。
【0040】
式(3)及び式(4)で表される化合物は、市販品を入手することができる。米国のエアープロダクツ社により製造され、日新化学工業(株)により販売されている、サーフィノール104シリーズ及び同400シリーズ、並びにオルフィンEシリーズ及び同PDシリーズが該当する。
上記アセチレンジオールの使用量は、インクジェット捺染用インク中において、0.01〜2.5重量%であることが好ましく、0.15〜1.0重量%であることがより好ましい。
上記アセチレングリコールの使用量は、インクジェット捺染用インク中において、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.3〜2.5重量%であることがより好ましい。
【0041】
アセチレンジオールとアセチレングリコールとは、一般には個別に使用されることが多い。インクジェット捺染用インクには、これらの併用により、界面活性能と消泡性の効果に加えて、インクジェットヘッドのノズルプレート劣化を抑えて、長期間安定した吐出性を確保することが可能となる。
インクジェットヘッドのノズルプレート劣化の原因がインク中微量不純物である金属イオン(Na+等)であることがわかっており、アセチレングリコールの包接作用による金属イオントラップ効果によりノズルプレート劣化防止ができていると推定される。
【0042】
(その他の成分)
本発明のインクジェット捺染インクは、任意成分として、その他の成分を含有することができる。
本発明のインクは、必要に応じて、前記各成分以外に、増感剤、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含有することができる。これらは、特開2009−185186号公報に記載されている。
【0043】
本発明のインクは、分散染料、分散剤、水及び水溶性有機溶剤、並びに、アセチレンジオール及びアセチレングリコールを均一に混合することにより得ることができる。上述の分散染料及び分散剤を水中で微粒子として分散して、濃縮した染料分散液を調製した後に、この濃縮液、水、水溶性有機溶剤、アセチレンジオール及びアセチレングリコール等の必要な添加物と共に均一に混合して、インクを調製することが好ましい。
染料を分散する方法として、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、超音波分散機が使用され、サンドミル(ビーズミル)が好ましく使用できる。
【0044】
本発明のインクジェット捺染用インクは、少なくともシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの4色を含むインクセットとすることが好ましい。このインクセットにより、フルカラーのプリントが可能となる。
本発明のインクジェット捺染用インクは、オレンジ、グリーン及びバイオレットよりなる群から選ばれた少なくとも1つの特色インクを更に含むことがさらに好ましい。このような特色インクをインクセットに加えることにより、色再現可能な領域を拡大することができる。
【0045】
次いで、本発明のインクジェット捺染方法について説明する。
本発明のインクジェット捺染方法は、本発明のインクジェット捺染用インクを被染色体上に吐出する吐出工程、前記インクジェット捺染用インクを被染色体に定着する定着工程、及び、未定着染料を水洗除去する除去工程、を含むことを特徴とする。
以下に上記のインクジェット捺染方法を説明する。
【0046】
本発明のインクジェット捺染方法は、インクの吐出工程、インク中の分散染料の定着工程、及び、未定着染料の除去工程の3工程を必須の工程として含む。
上記の吐出工程は、本発明のインクジェット捺染用インクを被染色体上に吐出する。
インクを吐出するために使用するインクジェット装置は、市販の装置を使用することができる。このようなインクジェット装置は、前記インクを打滴するためのインクヘッド部と、プリント画像の情報を入力するためのデータ入力部と、少なくともC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、及び、B(ブラック)の各インクを含むインクセットの打滴量をそれぞれ演算する演算部と、前記演算部で演算された打適量の各色インクを所定の場所に打滴するように、前記インクヘッド部を駆動する駆動部とを備えることが好ましい。インクセットには減色法の3原色であるCMY及びB以外に、グリーン、オレンジ、バイオレットなどの特色インクを併用することが好ましい。
【0047】
また、本発明のインクジェット捺染方法においては、分散染料で染色可能である被染色体を使用する。被染色体としては、ポリエステル繊維を主体とする布帛が好ましい。ポリエステル繊維を「主体とする」とは、織物、編物、不織物等いずれの形態であれ、ポリエステル繊維を50重量%以上含むことを意味する。従って、布帛としては、ポリエステル繊維が100%であることが好ましいが、レーヨン、綿、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛及び絹等との混紡織布又は混紡不織布等も使用することができる。また、上記布帛を構成する糸の太さとしては10〜100dの範囲が好ましい。
【0048】
本発明のインクジェット捺染方法においては、均一な染色物を得るために、インク吐出工程に先立って、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた加工剤、処理剤又は汚れを洗浄して除去する精錬工程を実施することが好ましい。詳しくは、日本化学会編、「化学便覧」、丸善発行(昭和61年)などに記載されている。
【0049】
洗浄に用いられる洗浄剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムといったアルカリ、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤といった界面活性剤、又は漂白剤が用いられる。
【0050】
本発明のインクジェット捺染方法においては、画像の滲み防止として公知の方法による前処理を行うことができる。前処理としては、水溶性高分子類、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、界面活性剤等の化合物の少なくとも1つの物質を、被染色体に対して0.2〜50重量%付与する方法が含まれる。ここで、被染色体の繊維素材に適した方法を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0051】
水溶性金属塩としては、KCl、CaCl2等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の無機塩、有機酸塩等を用いることができる。また、ポリカチオン化合物としては、各種の4級アンモニウム塩のポリマー又はオリゴマー、ポリアミン塩等を用いることができる。ただし、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物の中には染色物の色調を変化させたり、耐光堅牢度を低下させるものがあるため、目的とする染色物に応じて選択することが好ましい。
【0052】
水溶性高分子類には、天然高分子類(例えば、トウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴム等の多糖類、ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質等)、合成高分子類(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系ポリマー等)が含まれる。
【0053】
界面活性剤には、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的にはアニオン系の界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、ナフタレン誘導体のスルホン酸塩等、カチオン系の界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等、両性界面活性剤としてはイミダゾリン誘導体等、ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが含まれる。
【0054】
これらの前処理剤として予め布帛に付与される水溶性高分子や界面活性剤は、インクジェットプリントを行った後、高温で発色させる際に、タール化等による汚れの原因とならないために、高温環境に対して安定であることが好ましい。また、これらの予め布帛に付与される水溶性高分子や界面活性剤は、インクジェットプリントを行って、高温で発色させた後の洗浄処理で布帛から取り除きやすいものが好ましい。
本発明においては、上記の前処理剤を施さない布帛を使用しても、染色画像の染色ムラの少ない染色物が得られる。
【0055】
インク吐出工程の後に、吐出された捺染用インクジェットインクに熱を加え、前記インクジェット捺染用インクを被染色体に定着する工程を実施する。
インク吐出によりプリントされた布帛を巻き取ることなく連続的に、又は一旦巻き取った後に、吐出されたインクジェット捺染用インクを有する被染色体を加熱して、インクの乾燥と、分散染料を被染色体の繊維に拡散させる被染色体への定着を実施する。
【0056】
プリントされた被染色体はすぐに加熱処理しても、しばらく静置してから加熱処理してもよく、用途に合わせて乾燥・発色処理すればよい。加熱処理法としては、オーブン(乾熱)、ヒートロール、スチーミング(蒸熱)等、用途にあった方法を選択する。
【0057】
加熱条件は適宜選択できるが、被染色体がポリエステルの場合、170〜200℃において1〜2分が好ましい。また、高圧スチーマーでは、125〜130℃において30〜40分の加熱処理が好ましい。
【0058】
加熱処理後は、未定着染料を分解して水洗除去する除去工程を実施する。染着に関与しなかった未定着染料を除去することにより、染色安定性と堅牢度を向上する。また、布帛に施した前処理物がある場合、これを一緒に除去することも好ましい。
未定着の染料を被染色体から除去する方法に関しては、従来公知の洗浄方法を用いることができるが、特に還元洗浄を用いることが好ましく、アルカリ還元処理によることがより好ましい。
【0059】
上記の除去工程の後、被染色体を乾燥させることが好ましい。洗浄した布帛を脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥する。
【0060】
この一連の工程により、インクジェット捺染用インクとしての特徴が生かされ、美しい図柄が染色された染色物を得ることができる。
【実施例】
【0061】
イエロー染料、シアン染料及びマゼンタ染料の各濃縮液を以下のように作成した。
なお、Kayalonはいずれも日本化薬(株)製の製品を使用した。
(分散染料濃縮分散液の作成)
〜イエロー濃縮分散液〜
Kayalon Microester Yellow AQ−LE 30g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 8g
イオン交換水 62g
【0062】
上記素材をシルバーソン高速撹拌機にて20分撹拌し、予備分散を終了した後、染料分散液をボールミルに充填し、室温で12時間分散した。その後、2μmのフィルターにて濾過し、イエロー濃縮分散液A1を作成した。
【0063】
〜シアン濃縮分散液〜
Kayalon Microester Blue AQ−LE 30g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 8g
イオン交換水 62g
上記素材をイエロー濃縮分散液作成と同様な方法にて、シアン濃縮分散液A1を作成した。
【0064】
〜マゼンタ濃縮分散液〜
Kayalon Polyester Red BL−E 30g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 8g
イオン交換水 62g
上記素材をイエロー濃縮分散液作成と同様な方法にて、マゼンタ濃縮分散液A1を作成した。
【0065】
〜ブラック濃縮分散液〜
Kayalon Polyester Black EX−SF 200 30g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 8g
イオン交換水 62g
上記素材をイエロー濃縮分散液作成と同様な方法にて、ブラック濃縮分散液A1を作成した。
【0066】
〜マゼンタ濃縮分散液〜
Kayalon Polyester Red BL−E 30g
エマルゲン120(花王(株)製) 8g
イオン交換水 62g
上記素材をイエロー濃縮分散液作成と同様な方法にて、マゼンタ濃縮分散液A2を作成した。
【0067】
(捺染用インク作成)
〜イエローインク〜
イエロー濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 0.5g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.25g
上記素材をポリプロピレン製容器に投入し、シルバーソン高速撹拌機にて内温を40℃以下に制御しながら約30分撹拌し、混合した。その後、2μmのフィルターにて濾過し、イエローインクB1を作成した。
【0068】
〜シアンインク〜
シアン濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 0.5g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.25g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、シアンインクB1を作成した。
【0069】
〜マゼンタインク〜
マゼンタ濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 0.5g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.25g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、マゼンタインクB1を作成した。
【0070】
〜ブラックインク〜
ブラック濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 0.5g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.25g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、ブラックインクB1を作成した。
【0071】
〜マゼンタインク〜
マゼンタ濃縮分散液A2 3g
エマルゲン120(花王(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 0.5g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.25g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、マゼンタインクB2を作成した。
【0072】
〜マゼンタインク〜
マゼンタ濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 0.5g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.5g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、比較マゼンタインクB3を作成した。
【0073】
〜マゼンタインク〜
マゼンタ濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.75g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、比較マゼンタインクB4を作成した。
【0074】
〜マゼンタインク〜
マゼンタ濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 0.02g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.98g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、マゼンタインクB5を作成した。
【0075】
〜マゼンタインク〜
マゼンタ濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 4.8g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 59.2g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、マゼンタインクB6を作成した。
【0076】
〜マゼンタインク〜
マゼンタ濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 0.01g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 63.99g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、マゼンタインクB7を作成した。
【0077】
〜マゼンタインク〜
マゼンタ濃縮分散液A1 3g
NIKKOL PBC−34(日光ケミカルズ(株)製) 3g
サーフィノール104E(日信化学工業(株)製) 5.1g
サーフィノール465(日信化学工業(株)製) 0.25g
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製) 10g
グリセリン(和光純薬工業(株)製) 20g
イオン交換水 58.9g
上記素材をイエローインクB1と同様な方法にて撹拌、混合し、マゼンタインクB8を作成した。
【0078】
<実施例1>
イエローインクB1を、ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録実験装置を用いて、実施例1(Ex1)として、被染色体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなり、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に45℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、60plのサイズドットを150×150dpiの解像度で射出できるよう駆動した。描画後は180℃、30秒加熱処理、還元剤による還元処理、水洗、乾燥プロセスを実施した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。被染色体として、ポリエステル布(厚600μm、一次繊維17μm、二次繊維320μm)を用いた。
【0079】
〜評価〜
<吐出性>
上記のインクジェット描画装置を用い、以下の3種(A、B、C)の評価を実施した。
〔評価A(連続吐出信頼性)〕
インクジェット装置稼働前に、インクによる液循環を15分間繰り返し、装置内のインク接触部に残存しているインクを除去した。その後、1時間の連続使用を実施し、描画不良(不吐出、間欠不吐出等)を起こすノズル数をカウントした。
4 ・・・ 吐出不良なし
3 ・・・ 吐出不良1又は2ノズル
2 ・・・ 吐出不良3ノズル以上10ノズル未満
1 ・・・ 吐出不良10ノズル以上
なお、すべて1ヘッドあたりでカウントした。
【0080】
〔評価B(クリーニング性)〕
評価Aにて20時間以上連続使用したヘッドのノズルプレートを非接触吸引にて付着しているインクを除去するクリーニングを実施し、スタート時の吐出状態を評価した。
4 ・・・ 吐出不良なし
3 ・・・ 吐出不良1又は2ノズル
2 ・・・ 吐出不良3ノズル以上10ノズル未満
1 ・・・ 吐出不良10ノズル以上
なお、すべて1ヘッドあたりでカウントした。
【0081】
〔評価C(吐出方向ズレ性)〕
評価Aと同様な方法にて吐出評価を実施し、描画画像から吐出方向がズレているノズル数をカウントした。
4 ・・・ 吐出ズレノズルなし
3 ・・・ 吐出ズレノズル1又は2ノズル
2 ・・・ 吐出ズレノズル3ノズル以上10ノズル未満
1 ・・・ 吐出ズレノズル10ノズル以上
なお、すべて1ヘッドあたりでカウントした。
【0082】
<染色ムラ>
染色、定着処理したポリエステル布表面の状態を目視にて評価した。
4 ・・・ ムラなし
3 ・・・ ほとんどムラなし
2 ・・・ 一部ムラが観察される
1 ・・・ ほぼ全面ムラが観察される
【0083】
<定着性>
染色、定着処理したポリエステル布の表面を、未染色の同じポリエステル布により擦り
未定着ポリエステル布への色移りを目視にて評価した。
3 ・・・ 色移りなし
2 ・・・ かすかに色移りが観察される
1 ・・・ 色移りが観察される
【0084】
(実施例2〜4)
実施例1におけるイエローインクB1を、シアンインクB1、マゼンタインクB1、又はブラックインクB1に取り替える以外は全く同様にして、ポリエステル布への記録を行い、実施例2〜4を実施した。
【0085】
(実施例5〜11)
実施例1におけるイエローインクB1を、表1に記載したインクに取り替える以外は全く同様にして、ポリエステル布への記録を行い、実施例5〜11(Ex5〜11)を実施した。
なお、表1中、Yはイエローインクを、Mはマゼンタインクを、Cはシアンインクを、Bはブラックインクをそれぞれ表す。
104Eは、サーフィノール104E(日信化学工業(株)製)の略称であり、465は、サーフィノール465(日信化学工業(株)製)の略称であり、420、440、485、104A、104BC、104PAも、それぞれ、サーフィノール(日信化学工業(株)製)の型番を表す。
【0086】
(比較例1〜3)
化合物(1)及び化合物(2)を、表1に示すように、化合物(1)の単独使用又は化合物(2)の単独使用に変更する以外は、実施例1と同様にして、比較例1及び2を実施した。
【0087】
【表1】

【0088】
実施例1〜11は吐出安定性、定着性及び染色ムラが良好な結果を示した。いずれの実施例も、インクジェット法による捺染プロセスにおける染色不良が改善されており、満足すべきレベルを示した。
一方、比較例1及び2(C1及びC2)のように、サーフィノール104Eを1種のみ使用した場合には、ヘッドノズルプレートの汚染に伴うクリーニング性や着弾位置精度に問題が生じ、またサーフィノール465を1種のみ使用した場合にも、発泡による連続吐出性に問題が生じた。さらに、従来用いられるロート油Aを用いた比較例3(C3)では、インクの安定性が損なわれ、吐出安定性が大きく悪化すると共に、定着性、染色ムラも悪化の傾向であった。
また、本発明化合物の添加量が最適範囲外となる場合、吐出安定性及び染色中に泡の発生が散見され、染色ムラが発生する傾向があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散染料、
分散剤、
水及び水溶性有機溶剤、並びに、
アセチレンジオール及びアセチレングリコール、を含有することを特徴とする、
インクジェット捺染用インク。
【請求項2】
前記アセチレンジオール及び前記アセチレングリコールがそれぞれ以下の式(1)及び式(2)で表される、請求項1に記載のインクジェット捺染用インク。
【化1】

式(1)及び式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R1とR2、又はR3とR4が結合して環を形成してもよく、m及びnは、それぞれ独立に、1〜100の整数を表す。
【請求項3】
前記アセチレンジオール及び前記アセチレングリコールがそれぞれ以下の式(3)及び式(4)で表される、請求項1又は2に記載のインクジェット捺染用インク。
【化2】

式(4)中、m及びnは、それぞれ独立に、1〜100の整数を表す。
【請求項4】
前記アセチレンジオールの含有量及び前記アセチレングリコールの含有量が、それぞれ、インク中で、0.01〜2.5重量%である、請求項1〜3いずれか1項に記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項5】
前記水溶性有機溶剤が、少なくとも1種の多価アルコールである、請求項1〜4いずれか1項に記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項6】
少なくともシアン、イエロー、マゼンタ、及び、ブラックの4色を含むインクセットとした、請求項1〜5いずれか1項に記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項7】
オレンジ、グリーン及びバイオレットよりなる群から選ばれた少なくとも1つの特色インクを更に含む、請求項6に記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載のインクジェット捺染用インクを被染色体上に吐出する吐出工程、
前記インクジェット捺染用インクを被染色体に定着する定着工程、及び、
定着染料を水洗除去する除去工程、を含むことを特徴とする
インクジェット捺染方法。
【請求項9】
被染色体が、ポリエステル繊維を含有する布帛である、請求項8に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のインクジェット捺染方法によって染色された捺染物

【公開番号】特開2011−174007(P2011−174007A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40267(P2010−40267)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】