説明

インクジェット方式画像形成装置及びインク粘度検出方法

【課題】インク粘度検出の精度を高めたインクジェット方式画像形成装置を提供する。
【解決手段】サブタンク80内のインクを粘度検出器90に吸入させて、粘度検出器90でインク粘度を検出する。この粘度検出結果を、予め印字の安定限界値として設定しておいた粘度値Nsと比較し、NがNs未満の粘度であった場合、サブタンク80内のインクを希釈液で希釈しない。この場合、希釈液タンク92内の希釈液が矢印E方向に流れるように希釈ポンプ95を駆動し、粘度検出で希釈液流路93内に流入したインクをサブタンク80に戻す。NがNs以上の粘度であった場合、希釈液タンク92内の希釈液をサブタンク80内のインクに注入することにより希釈を行う。この場合、希釈液タンク92からサブタンク80に希釈液を供給するときには、希釈液を粘度検出器90に一旦流入して流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置及びこのインクの粘度を検出するインク粘度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッド(印字ヘッド)から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。このインクジェット方式画像形成装置では、一般に、インクを吐出する複数のノズルが高密度に形成された小型の記録ヘッドを用いて高精細な画像を形成できる。また、この小型の記録ヘッドを複数配置して各記録ヘッドから異なる色のインクを吐出させることにより、比較的安価で小型な構成で記録媒体にカラー画像を形成できる。インクジェット方式画像形成装置は上記のような利点を有するので、業務用、家庭用を問わず、プリンタ、ファクシミリ及び複写機など、様々な画像出力装置に用いられている。
【0003】
上記のようなインクジェット方式画像形成装置には、クリーニング動作によって印字ヘッドから回収したインクを再使用するタイプのものがある。このインクを再使用するタイプのインクジェット方式画像形成装置では、印字ヘッドから回収されたインクをサブタンクに戻して再使用する。この再使用されるインクは大気に触れて揮発することにより増粘することがある。このインク増粘に起因して、印字ヘッドからのインク吐出が不安定になり、印字品位低下の原因となる。
【0004】
上記のようなインクジェット方式画像形成装置では、記録ヘッドからのインク吐出を安定させるために、サブタンク内のインクの粘度を検出するインク粘度検出手段及びインク粘度調整手段を備え、このインク粘度検出手段によって検出された粘度に応じてインク粘度調整手段でインクの粘度を調整しながら使用しているものがある(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2003−063032号公報
【特許文献2】特開2005−001195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなインクジェット方式画像形成装置では、サブタンク内のインクの粘度をインク粘度検出手段によって定期的に検出し、予め設定した粘度上限値よりも検出された粘度値が高い場合には、インク粘度調整手段によりサブタンク内に規定量の希釈液を注入して、サブタンク内のインクの粘度を所望値の範囲内に保持するように構成されている。
【0006】
サブタンク内のインクの粘度検出は繰り返して行われるので、インク粘度検出手段(装置)内には、粘度の検出されたインクが付着して残存してしまうこととなる。この残存したインクが増粘して、次の粘度検出時に検出誤差の原因になるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、インク粘度検出の精度を高めたインクジェット方式画像形成装置及びインク粘度検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のインクジェット方式画像形成装置は、印字ヘッドにインクを供給するインクタンクに貯められたインクの粘度をインク粘度検出手段で検出し、この検出した粘度に基づいて前記インクタンクに希釈液を供給して該インクタンク内のインクの粘度を調整しながら、前記印字ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置において、
(1)前記インク粘度検出手段は、前記インクタンクに供給される希釈液が流入するものであることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、
(2)前記希釈液が貯められる希釈液タンクを備え、
(3)前記インク粘度検出手段は、前記希釈液タンクと前記インクタンクをつなぐ希釈液流路の途中に配置されたものであり、
(4)前記希釈液タンクの希釈液は前記希釈液流路を通って前記インク粘度検出手段に流入して流出した後に前記インクタンクに供給されるようにしてもよい。
【0010】
さらに、
(5)前記希釈液流路のうち前記インク粘度検出手段と前記インクタンクとをつなぐ部分に接続された、廃液を貯める廃液タンクを備えてもよい。
【0011】
さらにまた、
(6)前記希釈液流路のうち前記インク粘度検出手段と前記インクタンクとをつなぐ部分にその一端部が接続されると共に、その他端部が前記希釈液タンクに接続された循環流路を備えてもよい。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明のインク粘度検出方法は、印字ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、前記印字ヘッドにインクを供給するインクタンクに貯められたインクの粘度を検出するインク粘度検出方法において、
(7)前記インクの粘度を検出するインク粘度検出手段に、インクを薄める希釈液を流入させて、前記インク粘度検出手段に残留しているインクを希釈することを特徴とするものである。
【0013】
ここで、
(8)前記インク粘度検出手段が検出したインク粘度が所定値以下のときは、前記インクタンクに前記希釈液を供給せずに、前記インク粘度検出手段に前記希釈液を流入させるようにしてもよい。
【0014】
さらに、
(9)前記インク粘度検出手段に流入させた前記希釈液を廃棄してもよい。
【0015】
さらにまた、
(10)前記インク粘度検出手段に流入させた前記希釈液を、該希釈液が貯められる希釈液タンクに戻すようにしてもよい。
【0016】
なお、本明細書でいう、「記録」(画像形成とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も含むものとする。
【0017】
また、「記録媒体」(シートとも称する)とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含むものとする。
【0018】
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を含むものとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、インクタンクに供給される前の希釈液がインク粘度検出手段に流入するので、インク粘度検出手段に残留しているインクは希釈されて排出される易くなる。このため、インク粘度検出手段ではインク粘度の検出誤差が除去されることとなるので、インク粘度検出の精度を高められる。この結果、印字ヘッドからのインク吐出を安定化できて画質の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、記録紙などの記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式のプリンタに実現された。
【実施例1】
【0021】
図1を参照して、本発明のインクジェット方式画像形成装置の一例であるプリンタを説明する。
【0022】
図1は、本発明のインクジェット方式画像形成装置の一例であるプリンタを模式的に示す正面図である。
【0023】
プリンタ10は、このプリンタ10に画像情報を送るホストPC(パソコン)12に接続されている。プリンタ10には、4つ(4本)の印字ヘッド22K、22C、22M、22Yが記録媒体(ここではロ−ル紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yからはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクが吐出される。これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yは、所謂ラインヘッドであり、図1の紙面に直交する方向(矢印A方向に直交する方向)に延びている。これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yの長さは、プリンタ10で印字できる記録媒体のうち最大の幅(図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yは、画像形成中は固定されて動かない。
【0024】
4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yから安定してインクを吐出できるように、プリンタ10には、回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によって、印字ヘッド22K、22C、22M、22Yからのインク吐出状態は初期のインク吐出状態に回復する。回復ユニット40には、回復動作のときに4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yのインク吐出口形成(フェイス面)22Ks、22Cs、22Ms、22Ysからインクを除去するキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに独立して設けられており、図1の例では6色分(即ち、6つのキャッピング機構50)が示されているが、このうち2色分は印字ヘッド追加時の予備的な機構である。キャッピング機構50は、周知のブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等から構成されている。
【0025】
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給され、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0026】
ロ−ル紙Pに画像を形成する際には、搬送中のロ−ル紙Pの記録開始位置がブラックの印字ヘッド22Kの下に到達した後に、記録データ(画像情報)に基づいて印字ヘッド22Kからブラックインクを選択的に吐出する。同様に印字ヘッド22C、印字ヘッド22M、印字ヘッド22Yの順に、各色のインクを吐出してカラー画像をロ−ル紙Pに形成する。プリンタ10には、上記の部品・部材の他、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに供給されるインクを貯めておくメインタンク28K、28C、28M、28Yや、印字ヘッド22K、22C、22M、22Yにインクを供給したり回復動作をしたりするための各種ポンプ(図3等参照)などが備えられている。
【0027】
図2を参照して、プリンタ10の電気的な系統を説明する。
【0028】
図2は、図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【0029】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング機構50(図1参照)から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0030】
続いて、出力ポート114、モータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)、及び低速度でロ−ル紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pにインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)でロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに印字ヘッド制御回路112経由して(介して)転送する。
【0031】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yのクリーニング等の各動作時に、CPU100は、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧、吸引等の制御や、出力ポート114を介して粘度検出を行う。
【0032】
また、プリンタ10には、サブタンク80(図3参照)内のインクの濃度を検出する粘度検出器90(本発明のいうインク粘度検出手段の一例である)が備えられている。この粘度検出器90は、粘度検出器制御部126によって制御される。粘度検出器制御部126は、所定時間毎に粘度用ポンプ95(図3参照)と粘度検出器90を駆動させるように構成してもよいし、操作パネル110から入力した指示によって粘度用ポンプ95と粘度検出器90を駆動させるように構成してもよい。
【0033】
図3を参照して、プリンタ10に組み込まれたインク供給機構について説明する。
【0034】
図3は、プリンタ10に組み込まれたインク供給機構を示す模式図である。図3では、印字ヘッド22Kにインクを供給したり、この印字ヘッド22Kを回復させたりするためのインク供給機構を示すが、他の印字ヘッド22C、22M、22Yについても同じ構成のインク供給機構が備えられている。また、図3では、図1と図2に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
【0035】
プリンタ10(図1参照)には、印字ヘッド22Kにインクを供給するインク供給機構60が組み込まれている。インク供給機構60は、プリンタ10の本体に着脱自在なメインタンク(インクカートリッジ)28Kと、このメインタンク28Kと印字ヘッド22Kとをつなぐインク供給路62,64の間に配置されたサブタンク80と、サブタンク80内のインク粘度を検出する粘度検出器90などから構成されている。サブタンク80と印字ヘッド22Kは、2つのインク流路64、65で接続されている。また、インクが貯められたサブタンク80と、増粘したインクを希釈する希釈液が貯められた希釈液タンク92とは希釈液流路93で接続されている。この希釈液流路93の途中には、サブタンク80に貯められたインクの粘度を検出する粘度検出器90が配置されている(取り付けられている)。
【0036】
インク流路64、65それぞれはサブタンク80と印字ヘッド22Kとを接続する。また、インク流路64には、印字ヘッド22Kのクリーニング時に駆動する加圧ポンプ63が取り付けられている。インク流路65には、所定のタイミングでインク流路65を開閉する待機バルブ67が取り付けられている。なお、加圧ポンプ63は、ダイヤフラムポンプ等の非駆動時にインクの流通可能なポンプを使用し、図3の矢印C方向にインクが流れるようにのみ駆動する。
【0037】
インク流路76は、回復キャップ50と供給ポンプ72とを接続する。回復時にヘッドノズル22Knから排出されたインクは供給ポンプ72が駆動することによりサブタンク80に運ばれる。
【0038】
希釈液流路93には、インクの粘度を検出するときと、サブタンク80内のインクを希釈するときに駆動する希釈ポンプ95が取り付けられている。なお、希釈ポンプ95は、両方向(矢印D、E方向)にインクが流れるように選択的に駆動する。また、希釈液流路93には所定のタイミングで流路を開閉する待機バルブ96、97、98が取り付けられている。これらの待機バルブ96、97、98は待機時に密閉状態となる。
【0039】
サブタンク80には、このサブタンク80に貯められているインク(貯蔵インク)の液面レベルを検知する周知の液面検知センサ86が取り付けられている。液面検知センサ86が、サブタンク80内のインク液面が一定レベル以下になったと検知したときは、供給弁73が開放され、供給ポンプ72が稼動し始めてメインタンク28Kからインクが吸引されてサブタンク80に供給される。一方、液面検知センサ86が、サブタンク80内のインク液面があらかじめ決められている上限レベルになったと検知したときは、供給ポンプ72が停止し、供給弁73が密閉されてインクの供給は停止される。
【0040】
上記したサブタンク80内のインクの粘度を検出するインク粘度検出方法について、図4を参照して説明する。
【0041】
図4は、サブタンク内のインク粘度を検出して希釈するまでの手順を示すフロー図である。
【0042】
このフローは、上記した粘度検出器制御部126(図2参照)によって所定時間毎に粘度用ポンプ95(図3参照)と粘度検出器90が駆動したときか、又は、操作パネル110(図2参照)から入力した指示によって粘度用ポンプ95と粘度検出器90が駆動したときに起動する。
【0043】
このフローが起動したとき(希釈モード実施時)には、先ず、希釈液流路93のうちサブタンク80と粘度検出器90との間の部分に配置されたバルブ96、及び大気と連通するバルブ98を開放する(S401)。この状態で、インクが矢印D方向に移動する(流れる)ように希釈ポンプ95を駆動することにより(S402)、サブタンク80内のインクを粘度検出器90に吸入させて、粘度検出器90でインク粘度を検出する(S403)。この検出が終了した時点で希釈ポンプ95を停止する(S404)。S403で得られた粘度検出結果Nを、予め印字の安定限界値として設定しておいた粘度値Nsと比較する(S405)。
【0044】
S405でNがNs未満の粘度であった場合、サブタンク80内のインクを希釈液で希釈しない。この場合、先ず、希釈液タンク92内の希釈液が矢印E方向に流れるように希釈ポンプ95を駆動する(S431)。この動作によって、粘度検出で希釈液流路93内に流入したインクをサブタンク80に戻す。一定時間経過後、希釈ポンプ95を停止し(S432)、バルブ96、98を密閉する(S433)。
【0045】
S405においてNがNs以上の粘度であった場合、希釈液タンク92内の希釈液をサブタンク80内のインクに注入することにより希釈を行う。この場合、希釈液タンク92とサブタンク80をつなぐ希釈液流路93を開放するために、バルブ97を開放し(S411)、バルブ98を密閉する(S412)。希釈液流路93が開通した後、希釈液が矢印E方向に流れるように希釈ポンプ95を駆動して希釈液をサブタンク80に注入する(S413)。希釈量はNの値によって予め定めておき、それによって希釈ポンプ95の駆動時間が決定される。希釈液タンク92からサブタンク80に希釈液を供給するときには、希釈液が粘度検出器90に一旦流入して流出する。従って、粘度検出器90のうちインクが流れる部分が希釈液によって洗浄されることとなる。規定時間経過後、バルブ98を開放し(S414)、バルブ97を密閉して(S415)流路を切り換えることにより、希釈液流路93内の全ての希釈液を空気でサブタンク80に押し流す。続いて、希釈ポンプ95を停止し(S416)、開放しているバルブ96,98を全て密閉して(S417)希釈前と同じバルブ状態に戻す。上記した手順により、希釈液流路93内を希釈前に近い状態にすることが可能となる。即ち、サブタンク80内のインクの粘度を検出する際に粘度検出器90に流入して残留したインクは、粘度検出器90に流入した希釈液によって希釈されて排出される易くなる。このため、粘度検出器90ではインク粘度の検出誤差が除去されることとなるので、インク粘度検出の精度を高められる。この結果、印字ヘッドからのインク吐出を安定化できて画質の低下を防止できる。
【0046】
希釈液をサブタンクに供給する量の調整方法は、粘度検出器で測定した粘度に応じて供給量を決定し、その量をポンプで供給するフィードバック制御を行う。供給量の調整は、エンコーダ等で回転量の制御が可能なチューブポンプを使用して、測定した粘度に応じた回転量の制御を行うことにより可能である。
【0047】
図5と図6を参照して、粘度検出器の具体例を説明する。
【0048】
図5は、回転式の粘度検出器を示す模式図である。図6は、音叉型振動式の粘度検出器を示す模式図である。これらの図では、図3に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
【0049】
回転式の粘度検出器130は、図5に示すようにモータ132で回転する回転体134を容器136の中に配置しておき、容器136内にサブタンク80からインクを流入させて、モータ132の回転抵抗を検知してインクの粘度を検出するものであり、周知のものである。
【0050】
音叉型振動式粘度計140は、先端に振動子146、147を取り付けた一対の板バネ141、142を電磁駆動部144、145により一定の振動数及び振幅でそれぞれ逆位相に共振振動させ、振動子と試料との間に生じる粘性抵抗の相違を加進力である駆動電流の変化として検出し、その駆動電流と粘性抵抗との比例関係を利用して試料の粘度を連続的に求めるものである。位置検知センサ143は、振幅が一定であることを知るためにある。また、中央部にある温度センサ148により、粘度と温度との同時測定ができる特徴がある。
【0051】
いずれのタイプの粘度検出器であっても、インクが流入する部分が存在し、この部分にはインクが残留することがある。従って、上述したように、粘度検出器のうちインクが残留するおそれのある部分に希釈液を流入させて、残留インクを除去することによりインク粘度の検出誤差を低減できることとなる。
【実施例2】
【0052】
図7、8を参照して本発明の実施例2について説明する。
【0053】
図7は、プリンタ10に組み込まれた実施例2のインク供給機構を示す模式図である。図8は、図7のインク供給機構においてサブタンク内のインク粘度を検出して希釈するまでの手順を示すフロー図である。これらの図では、図3と図4に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
【0054】
実施例2では、実施例1の構成に廃液タンク91と廃液流路94を加え、希釈不要時に粘度検出器を洗浄可能な構成となっている。廃液流路94の上端は、希釈液流路93のうち粘度検出器90とバルブ96の間の部分に接続されており、廃液流路94の下端は廃液タンク91につながれている。
【0055】
このようなインク供給機構によってインク粘度を検出して希釈するまでの手順を説明する。
【0056】
このフローは、上記した粘度検出器制御部126(図2参照)によって所定時間毎に粘度用ポンプ95(図3参照)と粘度検出器90が駆動したときか、又は、操作パネル110(図2参照)から入力した指示によって粘度用ポンプ95と粘度検出器90が駆動したときに起動する。
【0057】
このフローが起動したとき(希釈モード実施時)には、先ず、希釈液流路93のうちサブタンク80と粘度検出器90との間の部分に配置されたバルブ96、及び大気と連通するバルブ98を開放する(S801)。この状態で、インクが矢印D方向に移動する(流れる)ように希釈ポンプ95を駆動することにより(S802)、サブタンク80内のインクを粘度検出器90に吸入させて、粘度検出器90でインク粘度を検出する(S803)。この検出が終了した時点で希釈ポンプ95を停止する(S804)。S803で得られた粘度検出結果Nを、予め印字の安定限界値として設定しておいた粘度値Nsと比較する(S805)。
【0058】
S805でNがNs未満の粘度であった場合、サブタンク80内のインクを希釈液で希釈しない。この場合、先ず、希釈液タンク92内の希釈液が矢印E方向に流れるように希釈ポンプ95を駆動する(S831)。この動作によって、粘度検出で希釈液流路93内に流入したインクをサブタンク80に戻す。一定時間経過後、希釈ポンプ95を停止し(S832)、バルブ97、99を開放し(S833)、続いて、バルブ96,98を密閉して(S834)、希釈液流路93と廃液流路94を開放する。この状態で、希釈液タンク92から希釈液が廃液タンク91に流入するように(矢印E方向に希釈液が流れるように)ポンプ95を駆動する(S835)。矢印E方向に流れる希釈液によって粘度検出器90は洗浄され、洗浄後の希釈液は廃液タンク91に排出される。一定時間経過後、バルブ98を開放し(S836)、バルブ97を密閉して(S837)流路を切り換えることにより、希釈液流路93内の全ての希釈液を空気で廃液タンク91に押し流す。この動作により、希釈液流路93内を希釈前に近い状態にすることが可能となる。最後にポンプ95を停止し(S838)、開放しているバルブを全て密閉することで希釈前と同じバルブ状態に戻す(S839)。
【0059】
S805においてNがNs以上の粘度であった場合、希釈液タンク92内の希釈液をサブタンク80内のインクに注入することにより希釈を行う。この場合、希釈液タンク92とサブタンク80をつなぐ希釈液流路93を開放するために、バルブ97を開放し(S811)、バルブ98を密閉する(S812)。希釈液流路93が開通した後、希釈液が矢印E方向に流れるように希釈ポンプ95を駆動して希釈液をサブタンク80に注入する(S813)。希釈量はNの値によって予め定めておき、それによって希釈ポンプ95の駆動時間が決定される。希釈液タンク92からサブタンク80に希釈液を供給するときには、希釈液が粘度検出器90に一旦流入して流出する。従って、粘度検出器90のうちインクが流れる部分が希釈液によって洗浄されることとなる。規定時間経過後、バルブ98を開放し(S814)、バルブ97を密閉して(S815)流路を切り換えることにより、希釈液流路93内の全ての希釈液を空気でサブタンク80に押し流す。続いて、希釈ポンプ95を停止し(S816)、開放しているバルブ96,98を全て密閉して(S817)希釈前と同じバルブ状態に戻す。上記した手順により、希釈液流路93内を希釈前に近い状態にすることが可能となる。即ち、サブタンク80内のインクの粘度を検出する際に粘度検出器90に流入して残留したインクは、粘度検出器90に流入した希釈液によって希釈されて排出される易くなる。このため、粘度検出器90ではインク粘度の検出誤差が除去されることとなるので、インク粘度検出の精度を高められる。この結果、印字ヘッドからのインク吐出を安定化できて画質の低下を防止できる。
【実施例3】
【0060】
図9、10を参照して本発明の実施例2について説明する。
【0061】
図9は、プリンタ10に組み込まれた実施例3のインク供給機構を示す模式図である。図10は、図9のインク供給機構においてサブタンク内のインク粘度を検出して希釈するまでの手順を示すフロー図である。これらの図では、図3と図4に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
【0062】
実施例3では、実施例1の構成に循環流路61を加え、インクと希釈液を無駄なく使用できるように構成した。循環流路61にはバルブ99が取り付けられている。循環流路61の一端、希釈液流路93のうち粘度検出器90とバルブ96の間の部分に接続されており、その他端は希釈液タンク92につながれている。
【0063】
このようなインク供給機構によってインク粘度を検出して希釈するまでの手順を説明する。
【0064】
このフローは、上記した粘度検出器制御部126(図2参照)によって所定時間毎に粘度用ポンプ95(図3参照)と粘度検出器90が駆動したときか、又は、操作パネル110(図2参照)から入力した指示によって粘度用ポンプ95と粘度検出器90が駆動したときに起動する。
【0065】
このフローが起動したとき(希釈モード実施時)には、先ず、希釈液流路93のうちサブタンク80と粘度検出器90との間の部分に配置されたバルブ96、及び大気と連通するバルブ98を開放する(S1001)。この状態で、サブタンク80内のインクが矢印D方向に移動する(流れる)ように希釈ポンプ95を駆動することにより(S1002)、サブタンク80内のインクを粘度検出器90に吸入させて、粘度検出器90でインク粘度を検出する(S1003)。この検出が終了した時点で希釈ポンプ95を停止する(S1004)。S1003で得られた粘度検出結果Nを、予め印字の安定限界値として設定しておいた粘度値Nsと比較する(S1005)。
【0066】
S1005でNがNs未満の粘度であった場合、粘度検出器90内のインクを希釈液で希釈しない。この場合、最初に粘度検出に使用したインクを可能な限りサブタンク80に戻すために、インクが矢印E方向に流れるようにポンプ95を駆動し(S1031)、一定時間経過後に停止する(1032)。ポンプ95の駆動によって、希釈液流路93及び粘度検出器90内の大半のインクがサブタンク80に戻されるが、希釈液流路93及び粘度検出器90の壁面にインクが残留してしまうので、これを除去する必要がある。そのために、サブタンク80から希釈液タンク92までの流路を遮断し、バルブ97、99を開放して(S1033)、バルブ96、98を密閉して(S1034)希釈液タンク92と粘度検出器90の間でインクを循環させる流路を開通させる。この循環流路が開通した後、希釈液を循環させるために、希釈液が矢印F方向に流れるようにポンプ95を駆動する(S1035)。この駆動によって、希釈液が粘度検出器90を通過し、粘度検出器90内を洗浄することができる。
【0067】
しかし、流路内に残留していた少量のインクが循環動作によって希釈液と混合してインク粘度が変化する。そこで、一定時間循環後、インクと希釈液が混ざり合ったときに希釈液の粘度を粘度検出器90で検出する(S1036)。ここで検出した粘度に応じて次回の希釈時の希釈量を決定する。希釈液の粘度と希釈量の関係は、CPU100などに予め記憶させておく。その後、ポンプ95を一旦停止し(S1037)、バルブ98を開放し(S1038)、続いてバルブ97を密閉して(S1039)、バルブ98からの空気が矢印E方向に流れるようにポンプ95を駆動する(S1040)。これにより、循環流路内に空気を送り込み、希釈液流路93と循環流路61内の液体を全て希釈タンク90に戻す。従って、希釈流路内は希釈前の状態に戻る。最後にポンプ95を停止し(S1041)、全てのバルブを密閉する(S1042)。
【0068】
一方、S1005でNがNs以上の粘度であった場合、希釈を行う。希釈を行う流れは実施例1、2と同様であり、S1011からS1017までとなる。実施例1、2と異なる点は、希釈液の状態である。実施例1、2の場合、インクと混合した希釈液は廃液として廃棄されるため、希釈液の粘度は変化しない。従って、希釈量はサブタンク80内のインクの粘度によってのみ決定される。それに対して、実施例3の場合、インクと混合した希釈液は希釈液タンク92内に戻ってくるので、希釈液の粘度が経時的に変化する。従って、希釈量はサブタンク80内のインクの粘度と希釈液粘度の2つのパラメータによって決定されることになる。このフローによって、希釈前の状態を略一定に保ち、インク粘度検出精度を高めながら希釈を行うとともに、無駄なくインク及び希釈液を使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のインクジェット方式画像形成装置の一例であるプリンタを模式的に示す正面図である。
【図2】図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【図3】プリンタに組み込まれたインク供給機構を示す模式図である。
【図4】サブタンク内のインク粘度を検出して希釈するまでの手順を示すフロー図である。
【図5】回転式の粘度検出器を示す模式図である。
【図6】細管式の粘度検出器を示す模式図である。
【図7】プリンタに組み込まれた実施例2のインク供給機構を示す模式図である。
【図8】図7のインク供給機構においてサブタンク内のインク粘度を検出して希釈するまでの手順を示すフロー図である。
【図9】プリンタに組み込まれた実施例3のインク供給機構を示す模式図である。
【図10】図9のインク供給機構においてサブタンク内のインク粘度を検出して希釈するまでの手順を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0070】
10 プリンタ
22K、22C、22M、22Y 印字ヘッド
80 サブタンク
90 粘度検出器
92 希釈液タンク
95 希釈ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドにインクを供給するインクタンクに貯められたインクの粘度をインク粘度検出手段で検出し、この検出した粘度に基づいて前記インクタンクに希釈液を供給して該インクタンク内のインクの粘度を調整しながら、前記印字ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置において、
前記インク粘度検出手段は、前記インクタンクに供給される希釈液が流入するものであることを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。
【請求項2】
前記希釈液が貯められる希釈液タンクを備え、
前記インク粘度検出手段は、前記希釈液タンクと前記インクタンクをつなぐ希釈液流路の途中に配置されたものであり、
前記希釈液タンクの希釈液は前記希釈液流路を通って前記インク粘度検出手段に流入して流出した後に前記インクタンクに供給されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット方式画像形成装置。
【請求項3】
前記希釈液流路のうち前記インク粘度検出手段と前記インクタンクとをつなぐ部分に接続された、廃液を貯める廃液タンクを備えたことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット方式画像形成装置。
【請求項4】
前記希釈液流路のうち前記インク粘度検出手段と前記インクタンクとをつなぐ部分にその一端部が接続されると共に、その他端部が前記希釈液タンクに接続された循環流路を備えたことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット方式画像形成装置。
【請求項5】
印字ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、前記印字ヘッドにインクを供給するインクタンクに貯められたインクの粘度を検出するインク粘度検出方法において、
前記インクの粘度を検出するインク粘度検出手段に、インクを薄める希釈液を流入させて、前記インク粘度検出手段に残留しているインクを希釈することを特徴とするインク粘度検出方法。
【請求項6】
前記インク粘度検出手段が検出したインク粘度が所定値以下のときは、前記インクタンクに前記希釈液を供給せずに、前記インク粘度検出手段に前記希釈液を流入させることを特徴とする請求項5に記載のインク粘度検出方法。
【請求項7】
前記インク粘度検出手段に流入させた前記希釈液を廃棄することを特徴とする請求項6に記載のインク粘度検出方法。
【請求項8】
前記インク粘度検出手段に流入させた前記希釈液を、該希釈液が貯められる希釈液タンクに戻すことを特徴とする請求項6に記載のインク粘度検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−207371(P2008−207371A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44090(P2007−44090)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】