説明

インクジェット用グレーインク、インクジェット用グレーインクの作製方法、インクジェット記録方法及びインクカートリッジ

【課題】堅牢性に優れる画像を記録できるインクジェット用グレーインク等を提供する。
【解決手段】色材を含有するインクジェット用グレーインクであって、前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物等のアゾ化合物を含み、かつ、インク全質量を基準とした前記色材の含有量が、1種の化合物あたり0.40質量%以下であることを特徴とするインクジェット用グレーインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用グレーインク、インクジェット用グレーインクの作製方法、インクジェット記録方法及びインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置の普及に伴い、銀塩写真に匹敵するような画質、とりわけ粒状感が低減され、さらに階調性に優れた、今まで以上に優れた画質を有する画像を記録できることが要求されている。このような課題に対して、シアン、マゼンタ、及びイエローの基本色のインクに加えて、ニュートラルな色調を有するグレーインクが用いられるようになっている。従来の基本色のインクに加えてグレーインクを用いることで、例えば、肌色や背景などの暗部における粒状感や、明部から暗部へと階調をつなぐ際の階調性が向上し、より高画質な記録物が得られることが知られている。
【0003】
グレーインクは、例えば、ブラックの色材をメインに、色調調整として必要に応じて、シアン、マゼンタ、及びイエローの各色材を組み合わせて含有するブラックインクの色材濃度を低減することにより作製できる。
【0004】
一方で、インクジェット記録方法の問題点には、得られた記録物の画像保存性が劣ることが挙げられる。一般に、インクジェット記録方法で得られた記録物は、銀塩写真と比較してその画像保存性が低い。特に、記録物が、光、湿度、熱、空気中に存在するオゾンガスなどの環境ガスに長時間さらされた際に、記録物上の色材が劣化し、画像の色調変化や褪色が発生し易いといった問題がある。この技術課題に対しては例えば、特許文献1及び2では、ブラックインクの色調及びオゾンガスに対する変褪色の改良がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特登録02919615号公報
【特許文献2】特公平8−26263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らが検討した結果、上記で挙げたような特許文献に記載されたブラックインクを用いて、色材濃度を低減させたグレーインクを作製しても、得られる画像の堅牢性は著しく不十分であることを見出した。このため、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの各インクにより形成されたドットと比較して、グレーインクのドットは褪色が激しいため、画像としてのバランスが崩れてしまった。そこで、本発明者らは、従来のグレーインクよりもより優れた堅牢性を有するが像を記録できるインクジェット用グレーインクが必要であるということを認識した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、堅牢性に優れる画像を記録できるインクジェット用グレーインクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、堅牢性に優れる画像を記録できるインクジェット用グレーインクを作製する方法を提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、前記方法により作製されたインクジェット用グレーインクや、上記のグレーインクを使用したインクジェット記録方法及びインクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、以下の本発明によって解決される。すなわち、本発明のインクジェット用グレーインクは、色材を含有するインクジェット用グレーインクであって、前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ、インク全質量を基準とした前記色材の含有量が、1種の化合物あたり0.40質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)中、[A]はカルボキシル基又はスルホン酸基を有する脂肪族アミン残基であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである。)
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(II)中、[B]はカルボキシル基及びスルホン酸基の少なくとも一方で置換されたフェニル基であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、堅牢性に優れる画像を記録できるインクジェット用グレーインクを提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、堅牢性に優れる画像を記録できるインクジェット用グレーインクを作製する方法を提供することができる。さらに、本発明の別の実施態様によれば、前記方法により作製されたインクジェット用グレーインクや、上記のグレーインクを使用したインクジェット記録方法及びインクカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩の少なくとも一部はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、一般式(I)で表される化合物、及び一般式(II)で表される化合物は、それぞれ「一般式(I)の化合物」及び「一般式(II)の化合物」と省略して記載することがある。
【0015】
<インクジェット用グレーインク>
以下、本発明のインクジェット用グレーインク(以下、単に「グレーインク」や「インク」と省略して記載することがある)を構成する各成分について説明する。
【0016】
(色材)
本発明のインクは、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を色材として含有するものである。本発明のインクに用いるこれらの色材は、堅牢性に優れる画像を記録できるものである。
【0017】
〔一般式(I)で表される化合物〕
【0018】
【化3】

【0019】
(一般式(I)中、[A]はカルボキシル基又はスルホン酸基を有する脂肪族アミン残基であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである。)
一般式(I)中、Mのアンモニウムは、無置換のアンモニウム又は有機基で置換されたアンモニウムである。本発明における一般式(I)の化合物の好ましい具体例としては、下記の例示化合物I−1〜I−12が挙げられる。なお、本発明は、前記一般式(I)の構造に包含されるものであれば、下記の例示化合物に限られるものではない。本発明においては、下記の例示化合物の中でも、特に、例示化合物I−1、I−5、及びI−9を用いることが好ましい。
【0020】
【表1】

【0021】
〔一般式(II)で表される化合物〕
【0022】
【化4】

【0023】
(一般式(II)中、[B]はカルボキシル基及びスルホン酸基の少なくとも一方で置換されたフェニル基であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである。)
一般式(II)中、Mのアンモニウムは、無置換のアンモニウム又は有機基で置換されたアンモニウムである。本発明における一般式(II)の化合物の好ましい具体例は、下記の例示化合物II−1〜II−4が挙げられる。なお、下記の例示化合物は遊離酸の形で記載する。勿論、本発明は、前記一般式(II)の構造及びその定義に包含されるものであれば、下記の例示化合物に限られるものではない。
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
〔色材の検証方法〕
本発明で用いる色材がインク中に含まれているか否かの検証には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法が適用できる。
(1) ピークの保持時間
(2) (1)のピークについての極大吸収波長
(3) (1)のピークについてのマススペクトルのM/Z(posi及びnega)
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は、以下に示す通りである。先ず、純水で約1,000倍に希釈した液体(インク)を調製し、測定用サンプルとした。そして、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーでの分析を行い、ピークの保持時間(retention time)、及び、ピークの極大吸収波長を測定した。
・カラム:SunFire C18(日本ウォーターズ製)2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2mL/min
・PDA:200nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:表2
【0029】
【表2】

【0030】
また、マススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。得られたピークについて、下記の条件でマススペクトルを測定し、最も強く検出されたM/Zをposi及びnegaそれぞれに対して測定する。
・イオン化法
・ESI
キャピラリ電圧:3.5kV
脱溶媒ガス:300℃
イオン源温度:120℃
・検出器
posi:40V 200〜1500amu/0.9sec
nega:40V 200〜1500amu/0.9sec。
【0031】
上記した方法及び条件下で、それぞれの色材の代表例として、一般式(I)の化合物の具体例である例示化合物I−1、及び、一般式(II)の化合物の具体例である例示化合物II−4について測定を行った。その結果、得られた保持時間、極大吸収波長、M/Z(posi及びnega)の値を表3に示した。未知のインクについて、上記したと同様の方法及び条件下で測定を行って、表3に示す値に該当する場合、本発明において用いる化合物に該当する化合物を含有しているものと判断できる。
【0032】
【表3】

【0033】
〔色材の含有量〕
本発明のインクに含有させる色材(一般式(I)の化合物及び一般式(II)の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種)は、画像堅牢性に優れる特性を有するため、インクにごく少量でも含有させることで、画像堅牢性を向上する効果を得ることができる。しかし、上記特定の色材の含有量が多すぎると、グレーインクの色調が崩れる場合がある。このため、本発明のインク中における上記特定の色材の含有量は、インク全質量を基準として、1種の化合物あたり0.40質量%以下である必要がある。なお、上記特定の色材の含有量の下限は0.00質量%を超えることが好ましい。
【0034】
〔その他の色材〕
本発明のインクには、一般式(I)の化合物及び一般式(II)の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の色材に加えて、その他の色材を組み合わせて含有させてもよい。その他の色材としては、インクジェット用のインクに一般的に用いることができるものであれば、特に制限はなく、従来公知のいずれのものも用いることができ、また、1種類又は2種類以上の色材を組み合わせてインクに含有させることができる。インク中におけるその他の色材の含有量は、グレーインクとして好適な画像濃度を得られるように適宜決定することができるが、インク全質量を基準として、1.50質量%以下であることが好ましい。
【0035】
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水と各種水溶性有機溶剤との混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下、さらには10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、インクジェット用のインクに一般的に用いることができるものであれば、特に制限はなく、従来公知のいずれのものも用いることができ、また、1種類又は2種類以上の水溶性有機溶剤を組み合わせてインクに含有させることができる。
【0036】
(その他の添加剤)
本発明のインクには、上記で挙げた成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体類、糖類及びその誘導体などの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、本発明のインクセットを構成する各インクには必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性ポリマーなど、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0037】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する方法である。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
【0038】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えてなり、前記インク収容部に、上記で説明した本発明のインクが収容されてなるものである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものが挙げられる。または、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量の全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部であるインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
【0039】
<インクジェット用グレーインクの作製方法>
本発明のインクジェット用グレーインクの作製方法は、本発明のインクにおける必須の成分である上記特定の色材(一般式(I)の化合物及び一般式(II)の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種)を含有するインクを得る方法である。具体的には、本発明の作成方法は、上記特定の色材を含有するインクを収容するインクカートリッジに、水及び水溶性有機溶剤で構成される水性媒体を充填する工程を有する。本発明においては特に、上記特定の色材を含有するインクを使いきった後のインクカートリッジに対して前記工程を行う作成方法とすることが好ましい。これは、画像堅牢性に優れる上記特定の色材を含有するインクや該インクを収容するインクカートリッジを再利用することが可能となるためである。さらに、前記効果に加えて、一度インクを収容したインクカートリッジは、インクの再充填が容易となるという付帯的効果も同時に得ることができるためである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、色材の調製やインクの調製における「部」や「%」は、質量基準である。また、実施例において使用したアセチレノールE100は川研ファインケミカル製の界面活性剤である。
【0041】
<色材の合成>
(例示化合物I−1及びI−9の合成)
上記で挙げた例示化合物I−1及び例示化合物I−9は、国際公開第2006/001274号パンフレットの実施例1及び2に記載された方法に準じてそれぞれ合成した。なお、各例示化合物は、一般式(I)におけるMがナトリウムであるものとした。
【0042】
[例示化合物II−1及びII−4の合成]
上記で挙げた例示化合物II−1及び例示化合物II−4は、国際公開第2007/077931号パンフレットの実施例1〜3及び2〜6に記載された方法に準じてそれぞれ合成した。なお、各例示化合物は、一般式(II)におけるMがナトリウムであるものとした。
【0043】
<インクの調製>
下記表4及び表5に示す各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ0.2μmのフィルターにて加圧ろ過を行い、インク1〜4及び比較インクA〜Hをそれぞれ調製した。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
<インクの評価>
上記で得られたインクを、インク収容部として、液体のインクを収容するインク収容室、及び、毛管力によりインクを保持する負圧発生部材とを有するインクカートリッジにそれぞれ充填した。そして、このインクカートリッジを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)に搭載した。そして、温度23℃、相対湿度55%の環境下で、記録密度を2400dpi×1200dpi、インクの吐出体積を2.5pLとして、記録媒体(プロフェッショナルフォトペーパーPR−101;キヤノン製)に記録デューティが50%である画像を記録した。得られた記録物を温度23℃、相対湿度55%で24時間自然乾燥させた。
【0047】
(画像堅牢性の評価)
上記で得られた記録物を、オゾン試験装置(商品名:OMS−H;スガ試験機製)中に置き、温度40℃、湿度55%、オゾンガス濃度2ppmの環境で20時間、オゾン曝露を行った。例示化合物I−1、I−9、II−1、及びII−4の代わりにイオン交換水を含有するインクとの比較という観点で、インク1〜4を用いて得られた記録物の画像堅牢性を目視で確認して評価を行った。具体的には、インク1に対して比較インクA、インク2に対して比較インクB、インク3に対して比較インクB、インク4に対して比較インクD、という組み合わせで各画像を比較した。画像堅牢性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表6に示す。
A:比較インクに対して画像堅牢性が向上した
B:比較インクに対して画像堅牢性が同等であった
C:比較インクに対して画像堅牢性が劣っていた。
【0048】
【表6】

【0049】
(色調の評価)
上記で得られた記録物の色調の評価を行った。例示化合物I−1、I−9、II−1、及びII−4の含有量が0.40%以下であるのに対して、含有量が0.40%を超えたインクとの比較という観点で、インク1〜4を用いて得られた記録物の色調を目視で確認して評価を行った。具体的には、インク1に対して比較インクE、インク2に対して比較インクF、インク3に対して比較インクG、インク4に対して比較インクH、という組み合わせで各画像を比較した。色調の評価基準は以下の通りである。評価結果を表7に示す。
A:比較インクに対して好ましいグレーの色調であった
B:比較インクに対して色調が同等であった
C:比較インクに対して色調が劣っていた。
【0050】
【表7】

【0051】
<インクの作製方法:インク及び水性媒体の調製>
下記表8に示す各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ0.2μmのフィルターにて加圧ろ過を行い、インクI及びII並びに水性媒体をそれぞれ調製した。
【0052】
【表8】

【0053】
液体のインクを収容するインク収容室、及び、毛管力によりインクを保持する負圧発生部材とを有するインクカートリッジに、上記表8で示す処方で調製したインクI及びIIをそれぞれ14.5g充填した。その後、インクカートリッジからそれぞれ12.5gのインクを排出した。その後さらに、上記で得られた水性媒体をインクカートリッジにそれぞれ10.0g充填して、インクを調製した。このインクカートリッジからインクを抜き取り、構成成分を分析したところ、下記表9に示す組成(表8のインクIに対応するのが表9のインク5、表8のインクIIに対応するのが表9のインク6)であることがわかった。
【0054】
【表9】

【0055】
<インクの作製方法及びそれにより得られたインクの評価>
上記で得られたインク5及び6を充填したインクカートリッジを、上記と同様のインクジェット記録装置に搭載して、先に述べたものと同様の画像を記録した。その後、得られた記録物を温度23℃、相対湿度55%で24時間自然乾燥させた。
【0056】
(画像堅牢性の評価)
上記で得られた記録物を、上記と同様の条件でオゾン曝露を行った。例示化合物I−1及びII−4の代わりにイオン交換水を含有するインクとの比較という観点で、インク5及び6を用いて得られた記録物の堅牢性を目視で確認して評価を行った。具体的には、インク5に対して比較インクA、インク6に対して比較インクD、という組み合わせで各画像を比較した。画像堅牢性の評価基準は先の画像堅牢性の評価基準と同じである。評価結果を表10に示す。
【0057】
【表10】

【0058】
(色調の評価)
上記で得られた記録物の色調の評価を行った。例示化合物I−1及びII−4の含有量が0.40%以下であるのに対して、含有量が0.40%を超えたインクとの比較という観点で、インク5及び6を用いて得られた記録物の色調を目視で確認して評価を行った。具体的には、(インク1に対して比較インクE、インク4に対して比較インクH、という組み合わせで各画像を比較した。色調の評価基準は先の色調の評価基準と同じである。評価結果を表11に示す。
【0059】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を含有するインクジェット用グレーインクであって、
前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ、インク全質量を基準とした前記色材の含有量が、1種の化合物あたり0.40質量%以下であることを特徴とするインクジェット用グレーインク。
【化1】


(一般式(I)中、[A]はカルボキシル基又はスルホン酸基を有する脂肪族アミン残基であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである。)
【化2】


(一般式(II)中、[B]はカルボキシル基及びスルホン酸基の少なくとも一方で置換されたフェニル基であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである。)
【請求項2】
インクジェット用グレーインクの作製方法であって、
前記色材として、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するインクを収容するインクカートリッジに、
水及び水溶性有機溶剤で構成される水性媒体を充填する工程を有することを特徴とするインクジェット用グレーインクの作製方法。
【化3】


(一般式(I)中、[A]はカルボキシル基又はスルホン酸基を有する脂肪族アミン残基であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである。)
【化4】


(一般式(II)中、[B]はカルボキシル基及びスルホン酸基の少なくとも一方で置換されたフェニル基であり、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである。)
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット用グレーインクの作製方法により得られたことを特徴とするインクジェット用グレーインク。
【請求項4】
インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、請求項1又は3に記載のインクジェット用グレーインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】
インクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジであって、前記インク収容部に収容されたインクが、請求項1又は3に記載のインクジェット用グレーインクであることを特徴とするインクカートリッジ。

【公開番号】特開2011−26474(P2011−26474A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174515(P2009−174515)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】