説明

インクジェット被記録材料、それを用いた印刷物積層体及び印刷物貼着体の製造方法

本発明は、グリコールエーテルを主成分とする非水系溶媒中に顔料を分散してなる非水系型の顔料系インクを用いたインクジェット記録方式による印字が可能であって、インクの乾燥性、定着性、印刷適正に優れる上、耐候性が良好で、特に印字画像に亀裂がなく、鮮明性に優れる高品質印刷画像を得ることができるインクジェット被記録材料、前記被記録材料表面に、インクジェット記録方式で形成された高品質の印刷画像を有するインクジェット記録材料と、該印刷画像面に積層された貼着用部材とを有する印刷物積層体、及びこの印刷物積層体を用いて、被着体に該印刷物積層体を貼着させることにより、印刷物貼着体を製造する方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、インクジェット被記録材料、それを用いた印刷物積層体及び印刷物貼着体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、グリコールエーテルを主成分とする非水系溶媒中に顔料を分散してなる非水系型の顔料系インクを用いたインクジェット記録方式による印字が可能であって、インクの乾燥性、定着性、印刷適性に優れる上、耐候性が良好で、特に印字画像に亀裂がなく、鮮明性に優れる高品質印刷画像を得ることができるインクジェット被記録材料に関する。
さらに、前記被記録材料表面に、インクジェット記録方式で形成された高品質の印刷画像を有する。インクジェット記録材料と、該印刷画像面に積層された貼着用部材とを有する印刷物積層体、及びこの印刷物積層体を用いて、被着体に該印刷物積層体を貼着させることにより、印刷物貼着体を製造する方法に関する。
【背景技術】
近年、コンピュータ利用技術の普及により、コンピュータにより作成した資料や画像をプリンターなどを用いてポスターやプレゼンテーション資料を手軽にプリントアウトすることが頻繁に行われるようになってきた。その際使用されるプリンターとしては、ドットインパクトプリンター、レーザープリンター、サーマルプリンター又はインクジェットプリンターなどが挙げられるが、これらの中でインクジェットプリンターは、プリント時の機械騒音が少ない、フルカラー印刷ができる、プリントに伴うランニングコストが安いなどの利点を有することから広く利用されている。
このインクジェットプリンターにおいては、ノズルから記録用シートに向けてインクの微小液滴を高速に飛翔させ、記録面に付着させて画像や文字などの記録が行われる。
このようなインクジェット記録方式においては、これまで、着色剤として染料を含む水系型の染料系インクが、主として使用されてきた。
しかしながら、近年、インクジェット記録方式が、大型の屋外用ポスター、ディスプレイ、広告掲示板などに使用されるようになってきたため、耐候性、インク定着性、耐水性、光沢性、画像再現性などに優れる印字画像を得るべく、顔料をベースとした非水系型の顔料系インクジェットインクが用いられるようになってきた。
ところが、インクジェット被記録材料のインク受理層は、一般に水系型の染料系インクに対応したもの、例えば水溶性又は親水性高分子化合物などを含む層であるため、非水系型の顔料系インクを用いた場合、顔料がインク受理層に吸収されず、該インク受理層上に置かれた状態になるため、印字画像がこすれて消えたり、他のものにインクが付着するなど、インク定着性が悪く、また耐水性や耐候性も不十分であるなどの問題があった。
そこで、このような問題に対処するために、グリコールエーテル類を主媒体とする非水系型の顔料系インクジェットインクを用いて印刷するのに適した被記録材料として、例えば特定のセルロースアセテートブチレートからなるインク吸収層を有するものが提案されている(特開2002−219864号公報)。この公報によれば、該被記録材料は、インクの乾燥性、形成された印字画像の光沢性、画像再現性に優れ、プラスチックフィルムのラミネートなしでも屋外での使用に十分耐え得るとされている。
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記インクジェット被記録材料においては、印字画像の乾燥性が劣ることがあり、また、印字画像に亀裂が発生する場合があることが分かった。そして、この傾向は、環境問題の対応から、基材として塩化ビニル系樹脂に代えてアクリル系樹脂を用いた場合に著しいことが分かった。
さらに、最近では、プリンターに高速印刷モードが設定されており、通常の2倍程度の速度で印刷することも可能であるが、その場合、さらに亀裂が発生しやすくなるため、その解決が求められていた。
【発明の開示】
このような事情のもとで、本発明の第1の目的は、グリコールエーテルを主成分とする非水系溶媒中に顔料を分散してなる非水系型の顔料系インクを用いたインクジェット記録方式による印字が可能であって、インクの乾燥性、定着性、印刷適性に優れる上、耐候性が良好で、特に印字画像に亀裂がなく、鮮明性に優れる高品質印刷画像を得ることができ、さらに高速印刷にも対応できるインクジェット被記録材料を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、前記被記録材料表面に、インクジェット記録方式で形成された高品質の印刷画像を有するインクジェット記録材料と、該印刷画像面に積層された貼着用部材とを有する印刷物積層体を提供することにあり、第3の目的は、この印刷物積層体を用いた印刷物貼着体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材と、その一方の面に順に設けられた特定の樹脂を含む中間層及び特定のセルロースエステルと可塑剤とを所定の割合で含むインク受理層を有するインクジェット被記録材料により、第1の目的を達成し得ることを見出した。
また、前記被記録材料のインク受理層に、好ましくは非水系型の顔料系インクを用いるインクジェット記録方式にて、印字画像を形成させ、該印字画像面に剥離シート付粘着剤層が設けられた支持体からなる貼着用部材を積層してなる印刷物積層体により、第2の目的を達成し得ることを見出した。さらに、この印刷物積層体の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を被着体に当接させ、該印刷物積層体の印刷物を貼着させることにより、印刷物貼着体が得られ、第3の目的を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材と、その一方の面に順に設けられたハロゲン化ビニル樹脂及び/又はハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を含む中間層、及びセルロースエステルと、その100重量部当たり、可塑剤10〜100重量部とを含むインク受理層を有することを特徴とするインクジェット被記録材料、
(2)インク受理層を構成するセルロースエステルが、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートの中から選ばれる少なくとも1種である(1)項に記載のインクジェット被記録材料、
(3)インク受理層を構成する可塑剤が、フタル酸エステル系可塑剤である(1)又は(2)項に記載のインクジェット被記録材料、
(4)基材がアクリル系樹脂を素材とするものである(1)、(2)又は(3)項に記載のインクジェット被記録材料、
(5)インク受理層の厚さが5〜70μmである(1)ないし(4)項のいずれかに記載のインクジェット被記録材料、
(6)インク受理層における可塑剤の含有量が、セルロースエステル100重量部当たり、20〜80重量部である(1)ないし(5)項のいずれかに記載のインクジェット被記録材料、
(7)(1)ないし(6)項のいずれかに記載のインクジェット被記録材料であって、基材が透明性を有する被記録材料のインク受理層表面に印刷が施されてなるインクジェット記録材料(A)と、前記インクジェット記録材料の印刷面に粘着剤層を介して積層され、かつ該インクジェット記録材料とは反対側の面に剥離シート付粘着剤層が設けられている支持体からなる貼着用部材(B)とを有することを特徴とする印刷物積層体、
(8)貼着用部材(B)において、支持体がアクリル系樹脂を素材とするものである(7)項に記載の印刷物積層体、
(9)インクジェット記録材料(A)において、基材のインク受理層とは反対側の面に保護フィルムが設けられている(7)または(8)項に記載の印刷物積層体、
(10)(7)又は(8)項に記載の印刷物積層体の剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を被着体に当接させ、前記印刷物積層体のインクジェット記録材料(A)の基材側から押圧することにより、該印刷物積層体の印刷物を前記被着体に貼着させることを特徴とする印刷物貼着体の製造方法、及び
(11)(9)項記載の印刷物積層体の剥離シートをはがして、露出した粘着剤層を被着体に当接させ、前記保護フィルムの側から押圧することにより、該印刷物積層体の印刷物を前記被着体に貼着させ、さらに該保護フィルムを剥離することを特徴とする印刷物貼着体の製造方法、
を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
Fig.1は、本発明の印刷物積層体の1例の断面図である。Fig.1における符号1は基材、2は中間層、3はインク受理層、4は印刷層、5は粘着剤層I、6は支持体、7は粘着剤層II、8は剥離シート、9は保護フィルム、10はインクジェット記録材料、20は貼着用部材、30は印刷物積層体、40は印刷物である。
【発明を実施するための最良の形態】
まず、本発明のインクジェット被記録材料について説明する。
本発明のインクジェット被記録材料は、基材と、その一方の面に順に設けられた中間層、及びインク受理層を有するものである。
このインクジェット被記録材料における基材としては、基材としての適当な機械物性を有するものであればよく、特に制限されず、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース類;さらにはポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエーテルイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;フッ素系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;などのフィルムやシート、板状体、あるいは上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、バライタ紙、コート紙、段ボールなどの紙基材;天然繊維、合成繊維、再生繊維、半合成繊維などからなる単独又は複数の繊維を併用した混紡・混繊の織物、不織布などの布帛;これらの複合物などが挙げられる。中でも、合成樹脂からなるフィルム、シート又は板状体が好ましく、とりわけポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、あるいはポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂を素材とするフィルムやシートが好適に用いられる。
本発明のインクジェット被記録材料においては、基材とインク受理層との間に特定の中間層を設けることが特徴であるが、基材としてアクリル系樹脂を素材とするフィルムやシートを用いた場合に、この中間層の効果が端的に現われる。
アクリル系樹脂を素材とするフィルムやシートとしては、特に制限はないが、例えばポリメタクリル酸メチルやポリメタクリル酸エチル等のポリメタクリル酸エステル類、従来公知のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルと合成ゴムとの共重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体、又は、アクリルポリオールをポリイソシアネート架橋剤で架橋したアクリルウレタン系樹脂などからなるフィルムやシートが好ましく用いられる。
前記基材は、単層構造、積層構造のいずれであってもよい。また、透明、半透明、不透明のいずれであってもよいが、透明又は半透明のものが好ましい。また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。
基材に樹脂を用いる場合には、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの安定剤を添加することができる。またその表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凸凹化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、凸凹化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー処理を施してもよい。
基材としては、市販の各種フィルムやシートなどを用いることができる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどを工程シートとして用い、その上に基材を構成するための組成物を塗工し、乾燥処理して基材を形成することもできる。
基材の厚さは特に限定されないが、通常10〜200μm、好ましくは30〜100μmである。
本発明のインクジェット被記録材料において、前記基材とインク受理層の間に設けられる中間層は、ハロゲン化ビニル樹脂やハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を含む層である。
前記ハロゲン化ビニル樹脂としては、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニルの単独重合体樹脂又は共重合体樹脂であれば特に限定されないが、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂を好適に使用することができる。
一方、ハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂は、ハロゲン化ビニルと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体樹脂である。ハロゲン化ビニルとしては、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等を使用することができる。本発明において(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルを意味する。
ハロゲン化ビニルと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体樹脂を得るための(メタ)アクリル酸エステルは、特に限定されず、その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を挙げることができる。ハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂におけるハロゲン化ビニル単量体単位の比率は、25重量%以上であることが好ましい。
これらのハロゲン化ビニル樹脂及びハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、エチレン、酢酸ビニル、スチレン等のハロゲン化ビニル又は(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体を共重合したものであってもよい。
本発明において使用するハロゲン化ビニル樹脂又はハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂の分子量は、特に限定されない。
ハロゲン化ビニル樹脂又はハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂は、一種を単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。また、ハロゲン化ビニル樹脂又はハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂にアクリル系樹脂を加えてもよいが、その場合、中間層全体に対する、アクリル系樹脂とハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単位との合計の比率が75重量%以下であると、印字画像における亀裂発生を効果的に抑制することができる。
中間層の形成は、前記のハロゲン化ビニル樹脂及び/又はハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂及び所望により用いられるアクリル系樹脂を、適当な有機溶剤に均一に溶解し、濃度を調整した塗工液を基材に塗布し、次いで乾燥することによって行われる。
中間層の厚みは、乾燥後で、1〜50μmの範囲が好ましい。より好ましくは、3〜25μmである。
有機溶剤は、前記のハロゲン化ビニル樹脂やハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂などを均一に溶解できるものであれば特に限定はなく、具体的には、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;等を使用することができる。
基材への上記塗工液のコーティングは、公知のコーティング方法、例えば、フィルムアプリケーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレーコーター、カーテンコーター等により行うことができる。
塗工液の乾燥条件は、上記の基材及び中間層の劣化を引き起こさない限り、特に限定はない。
本発明のインクジェット被記録材料において、前記中間層上に設けられるインク受理層は、セルロースエステルと可塑剤を含む層である。
前記セルロースエステルは、セルロースと種々の有機酸とのエステルであれば、特に限定はない。その具体例としては、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、カプロン酸エステル、ラウリル酸エステル等のセルロースと脂肪族カルボン酸とのエステルを挙げることができる。また、セルロースの安息香酸エステル、トルイル酸エステル等の芳香族エステルを使用することも可能である。
これらのセルロースエステルの数平均分子量は、セルロースエステルの種類により異なるが、例えば、セルロースアセテート(CA)では30,000〜60,000、セルロースアセテートブチレート(CAB)では、10,000〜70,000、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)では、10,000〜80,000の範囲にあることが好ましい。
これらのセルロースエステルのアセチル化度は、セルロースエステルの種類により異なるが、例えば、セルロースアセテート(CA)では40モル%前後、セルロースアセテートブチレート(CAB)では、2〜30モル%程度、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)では0.5〜30モル%の範囲にあることが好ましい。また、セルロースアセテートブチレート(CAB)におけるブチル化度は15〜55モル%であることが好ましく、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)におけるプロピオニル化度は40〜50モル%であることが好ましい。更に、これらのセルロースエステルにおける水酸基の含有量は、1〜5重量%であることが好ましい。
ブチリル化度等のエステル化の度合いを上記範囲内とすることにより、インクジェットインクの受理性及び乾燥性を良好に保つことができ、印字画像における亀裂発生を効果的に防止し、鮮明な画像を得ることができる。
セルロースエステルのガラス転移点は、80〜170℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましい。
ガラス転移点を上記範囲内にすることにより、インクの受理性及び乾燥性を良好に保ち、印字画像における亀裂発生を効果的に防止し、鮮明な画像を得ることができる。
このセルロースエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、可塑剤は、前記セルロースエステル100重量部当たり、10〜100重量部の範囲で、インク受理層中に存在させることが必要である。
可塑剤を存在させることにより、インクの浸透性を向上させ、これにより、インクの乾燥性及び定着性を向上させ、印字画像における亀裂発生を防止することができる。
可塑剤の使用量は好ましくは20〜80重量部、より好ましくは30〜60重量部である。使用量が少ないと、効果が小さく、多すぎると、ブリードの問題が生じるおそれがある。
なお、高速印刷の場合は、可塑剤の使用量は、好ましくは50〜60重量部である。可塑剤の使用量がこの範囲内であると、高速印刷によりインクの吐出速度が速くなっても、乾燥性に優れ、印字画像に亀裂が発生しない。なお、「高速印刷」の場合、単位面積当たりの印刷時間が標準の2分の1程度であり、インクの吐出速度は標準の2倍程度である。
可塑剤の種類は、特に限定されないが、フタル酸エステル系可塑剤;燐酸エステル系可塑剤;アジピン酸エステル系可塑剤;セバシン酸エステル系可塑剤;ジ安息香酸ジエチレングリコール、ジ安息香酸ジプロピレングリコール等のグリコール誘導体系可塑剤;グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体系可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ誘導体系可塑剤;等を例示することができる。
フタル酸エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソテシル等のフタル酸ジアルキル可塑剤;フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ミリスチルベンジル等のフタル酸アルキルベンジル可塑剤;フタル酸アルキルアリール可塑剤;フタル酸ジベンジル可塑剤;フタル酸ジアリール可塑剤などを挙げることができる。
燐酸エステル系可塑剤の具体例としては、燐酸トリクレジル等の燐酸トリアリール可塑剤;燐酸トリオクチル等の燐酸トリアルキル可塑剤;燐酸アルキルアリール可塑剤を挙げることができる。
これらの可塑剤のうち、工業的に安価で入手しやすいこと、また作業性、低毒性などの点から、フタル酸エステル系可塑剤が好ましい。中でも、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル及びフタル酸ジ2−エチルヘキシルが好ましい。さらに高速印刷の場合は、特にフタル酸ジイソデシル(以下、DIDPと略記することがある)が好ましい。
これらの可塑剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
インク受理層の形成は、前記のセルロースエステル及び可塑剤を所定の割合で、有機溶剤に均一に溶解し、濃度を調整した塗工液を、基材上に形成された中間層上に塗布し、次いで乾燥することによって行われる。
インク受理層の厚みは、標準速度での印刷の場合は、乾燥後で、5〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは10〜40μmの範囲である。また、高速印刷の場合は、乾燥後で、30〜70μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜60μmの範囲である。
有機溶剤は、セルロースエステル及び可塑剤を均一に溶解できるものであれば特に限定はなく、具体的には、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;等を使用することができる。塗工液の濃度も特に限定されないが、通常、10〜30重量%程度である。
また、必要に応じて、各種の薬剤を塗工液に添加することができる。そのような薬剤の例としては、各種界面活性剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;レベリング剤;酸化防止剤;充填剤;等が挙げられる。
中間層への上記塗工液のコーティングは、公知のコーティング方法、例えば、フィルムアプリケーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレーコーター、カーテンコーター等により行うことができる。
塗工液の乾燥条件は、上記の基材、中間層及びインク受理層の劣化を引き起こさない限り、特に限定はない。
本発明のインクジェット被記録材料は、特に非水系型の顔料系インクジェットインクによる印字画像の形成に適している。
非水系型の顔料系インクにおける媒体としては、グリコールエーテル系が好ましい。グリコールエーテルとして、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノプロピレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジプロピレングリコールモノペンチルエーテルなどのグリコールエーテル類が挙げられる。これらの媒体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、非水系型の顔料系インクにおける顔料としては、例えば酸化チタン、亜鉛筆、酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック、コバルトブルー、黄鉛などの無機顔料、アニリド系、アセト酢酸アニリドビスアゾ系、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、キナクリドン系、チオインジゴ系、インダスロン系などの有機顔料が挙げられる。これらの顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、染料系インクを用いて印刷することもできる。該染料系インクにおける染料としては、例えばアゾ染料、キノリン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、ニトロ染料、金属錯塩染料などが挙げられる。
また、上記インクジェットインクのバインダーとしては、前記のグリコールエーテル類を含有する溶剤に混合分散できる公知のインクジェット用インクのバインダーであればいかなるものでもさしつかえない。該インクのバインダーとしては、例えば、スチレン−アクリル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、繊維素系樹脂などが挙げられ、必要に応じて、可塑剤、分散剤、ワックス、界面活性剤、帯電防止剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を添加したものも使用することができる。
本発明のインクジェット被記録材料においては、前記インク受理層への印刷は、通常のインクジェットプリンター及びプロッターを使用して、上記のグリコールエーテル類、顔料、染料などの着色剤、バインダー及び各種添加剤を含む公知のインクジェットインク、好ましくは顔料系インクを用い、通常のインクジェット印刷条件で実施することができる。また、高速印刷を行う場合には、高速モードあるいは高速印刷用プリンターを使用する。
次に、本発明の印刷物積層体について説明する。
本発明の印刷物積層体は、前述した本発明のインクジェット被記録材料であって、基材が透明性を有する被記録材料のインク受理層面に、このようにして印刷が施されてなるインクジェット記録材料(A)と、前記インクジェット記録材料(A)の印刷面に粘着剤層を介して積層され、かつ該インクジェット記録材料とは反対側の面に剥離シート付粘着剤層が設けられている支持体からなる貼着用部材(B)とを有するものである。前記透明性を有する基材としては、透明性及び耐候性に優れる上、前記した中間層の効果が有効に発揮されるなどの点から、アクリル系樹脂を素材とするフィルムやシートが特に好適である。
前記印刷面に設けられる粘着剤層(以下、粘着剤層Iと称す。)及び剥離シート付粘着剤層(以下、粘着剤層IIと称す。)を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びポリウレタン系粘着剤などを用いることができるが、これらの中で、耐候性などの面からアクリル系粘着剤が好ましい。
前記アクリル系粘着剤としては、主成分として、例えばアクリル酸エステル単独重合体、アクリル酸エステル単位2種以上を含む共重合体及びアクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体の中から選ばれた少なくとも1種を含有するものが用いられる。該アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステルなどが挙げられる。また、官能性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなどのヒドロキシル基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸などのカルボン酸基含有単量体などが挙げられる。
この粘着剤には、所望に応じて架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤などを配合することができる。なお、粘着剤層Iには、印刷画像に対する隠蔽力を向上させる目的で、所望により、顔料が配合された粘着剤を用いることができる。前記粘着剤層I及びIIの厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μm程度である。
前記印刷面に粘着剤層Iを介して積層される剥離シート付粘着剤層IIが設けられた支持体としては特に制限はなく、例えば紙、合成紙、プラスチックシートなどの中から適宜選択することができる。ここで、紙としては、例えば上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、これらの紙にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙などが挙げられる。
合成紙は、熱可塑性樹脂と無機充填剤との組合わせにより表層を紙化したものであって、例えばポリオレフィン系樹脂合成紙、ポリスチレン系樹脂合成紙、ポリ塩化ビニル系樹脂合成紙、ポリエステル系樹脂合成紙などを用いることができる。
一方、プラスチックシートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、各種オレフィン系共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるシートを挙げることができる。
これらのプラスチックシートは、粘着剤層Iが顔料を含み、隠蔽層としての機能を有する場合には、透明であっても、不透明であってもよい。一方、該粘着剤層Iが透明である場合には、白色系の不透明であることが好ましい。
前記プラスチックシートは、粘着剤層I及びIIとの密着性を向上させるために、所望によりその両面に表面処理やプライマー処理を施すことができる。前記表面処理としては、前述のインクジェット被記録材料における基材の説明において、例示した方法と同じ方法を用いることができる。
本発明においては、前記支持体の厚さは、通常10〜100μm、好ましくは20〜70μmの範囲である。
粘着剤層IIに貼付されている剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、上質紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
本発明の印刷物積層体においては、インクジェット記録材料(A)の印刷面に、粘着剤層Iを介して、剥離シート付粘着剤層IIが設けられてなる支持体を積層する方法として、例えば以下に示す方法を用いることができる。
まず、従来公知の方法により、支持体の両面に、それぞれ粘着剤層I及びIIが設けられ、さらにそれらの上に剥離シートが貼付されてなる両面粘着シートを作製する。次に、前記粘着剤層I側の剥離シートを剥がし、該粘着剤層Iが、インクジェット記録材料(A)の印刷面に接するようにして、片面に剥離シートが貼付された両面粘着シートを積層する方法を用いることができる。
このようにして得られた本発明の印刷物積層体においては、インクジェット記録材料(A)における基材のインク受理層とは反対側の面に、所望により保護フィルムを設けることができる。この保護フィルムとしては、前記基材に対し適度な剥離性を有し、かつ保護フィルムとして、適当な機械物性を有するものであればよく、特に制限はない。このようなものとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系フィルムなどを用いることができる。また、これらの保護フィルムには、必要に応じ、インクジェット記録材料(A)の基材と接触する側の面に、ポリエチレンワックスなどの剥離層を設けることができる。
前記保護フィルムの厚さについては特に制限はないが、通常10〜150μm程度、好ましくは20〜100μmである。
この保護フィルムは、後で詳しく説明するが、本発明の印刷物積層体を用いて、被着体に印刷物を貼着させる際に、インクジェット記録材料(A)における基材の損傷を防止する機能を有している。また、該基材に保護フィルムを積層することで、インク受理層にインクジェット記録方式で印刷を施す際に、インクの媒体による基材の波うち現象や、表面のゆがみを抑制する作用も有している。
基材に前記保護フィルムを積層する方法としては、特に制限はなく、様々な方法を用いることができる。例えば保護フィルム上に、基材形成用樹脂材料を、フィルムアプリケーター、グラビアコーター、ロールナイフコーター、リバースコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどにより、所定の厚さにコートし、積層する方法などを用いることができる。尚、本発明のインクジェット被記録材料において前述した工程シートを、前記保護フィルムとして機能させることもできる。
このような構成の本発明の印刷物積層体は、被着体への印刷物貼着用として用いられる。当該印刷物積層体を用いて、被着体に印刷物を貼着するには、まず、当該印刷物積層体における粘着剤層IIに貼付されている剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層IIを被着体に当接させる。次いで、インクジェット記録材料(A)の基材側から、スキージなどで押圧して、印刷物を被着体に貼着させることにより、印刷物貼着体が得られる。この際、基材に直接スキージを当てて押圧すると、基材が損傷する危険性があるので、前述のように、該基材上に保護フィルムを設け、その上からスキージなどで押圧すれば、基材の損傷を回避することができる。印刷物の被着体への貼着が終了すれば、前記保護フィルムは基材から剥離して取り除く。
本発明は、このような印刷物貼着体の製造方法をも提供する。
Fig.1は、本発明の印刷物積層体の1例の断面図である。印刷物積層体30は必要により保護フィルム9が積層された基材1の他方の面に、中間層2及び表面に印刷層4を有するインク受理層3が順に積層され、インクジェット記録材料(A)10を構成している。そして、インクジェット記録材料(A)10の印刷層4に、粘着剤層I5、支持体6及び剥離シート8付粘着剤層II7を設けてなる貼着部材(B)20が、粘着剤層I5を介して積層された構造を有している。
このような構成の印刷物積層体30を用いて、印刷物貼着体を製造するには、まず、剥離シート8を剥がし、露出した粘着剤層II7を被着体に当接させ、保護フィルム9側から、スキージなどで押圧したのち、保護フィルム9を剥がすことにより、印刷物40が被着体に貼着してなる印刷物貼着体が得られる。
本発明の印刷物積層体においては、インク受理層に、好ましくは非水系型の顔料系インクを用いて、インクジェット記録方式で印刷することにより、鮮明でかつ耐候性、インク定着性が良好である上、亀裂の発生が抑制された高品質の印刷画像が得られる。したがって、このような高品質の印刷画像を有する本発明の印刷物積層体は、例えば屋内外の広告用、表示用、装飾用などとして、具体的には屋外看板や自動車用マーキングシート、屋外用電飾看板テント、アクリル樹脂板面の表面グラフィックシートなどとして、好適に用いることができる。
次に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られたインクジェット被記録フィルムの評価は、以下に示す方法で行った。
(1)印字画像における亀裂の有無(標準速度印刷の場合)
記録された画像の品質を目視により下記の3段階で評価する。
○:ベタ印刷部分に全く亀裂がない。
△:ベタ印刷部分にやや亀裂が認められる。
×:ベタ印刷部分に亀裂が多く認められる。
(2)乾燥性(標準速度印刷の場合)
記録された画像を印字10分後に指で軽く擦った際の画像の変化を目視で観察し、下記の3段階で評価する。
○:変化なし。
△:指にインクが移るが画像自体に変化なし。
×:指にインクが移り、画像が擦れている。
(3)印字画像における亀裂の有無(高速印刷の場合)
記録された画像の品質を目視により下記の4段階で評価する。
◎:ベタ印刷部分に全く亀裂がない。
○:ベタ印刷部分にほんのわずかに微小な亀裂が認められる部分があるが、実用上問題ないレベルである。
△:ベタ印刷部分にやや亀裂が認められる。
×:ベタ印刷部分に亀裂が多く認められる。
【実施例1】
下記に示す塗工液の各成分を混合し、ディスパーを用いて1400rpmで15分間分散させ、基材用塗工液を調製した。
アクリル樹脂(メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、共重合比率=90/8/2) 100重量部
メチルエチルケトン(MEK) 200重量部
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 100重量部
紫外線吸収剤[旭電化工業社製、「アデカスタブ1413」] 1重量部
ポリエステル系可塑剤[大日本インキ化学工業社製、「モノサイザーW−260]] 5重量部
着色剤 10重量部
次に、上記基材用塗工液を、工程シートである厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[帝人デュポン社製、「GII−50」]の上にフィルムアプリケーターを用いて乾燥塗膜厚さが50μmとなるように塗工して基材を形成した。次に、この基材の上に中間層としてポリ塩化ビニル:アクリル樹脂=重量比1:1の混合物[大日精化工業社製表面処理剤、「レザヒットLG−325(カイ)」]をバーコーターで乾燥塗膜厚さが5μmとなるように塗工した。次いでインク受理層としてセルロースエステル[イーストマンケミカル社製、「CAB−381−2」、数平均分子量40,000、アセチル化度13.5モル%、ブチル化度38.0モル%、水酸基含有量1.3重量%、ガラス転移点133℃]100重量部と可塑剤としてのフタル酸ジイソデシル40重量部をMEK200重量部、DMF100重量部を十分に分散・溶解させたものを塗工液とし、フィルムアプリケーター用いて前記の中間層の上に乾燥塗膜厚さが25μmとなるように塗工し、インクジェット被記録フィルムを得た。
このインクジェット被記録フィルムのインク受理層に、市販のインクジェットプリンター[ローランド ディージー社製、「SOLJET SC−500」]とグリコールエーテルを主成分とする非水系溶媒中に顔料を分散させてなる顔料系インク(「SOLINK」)を使用してシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色のフルカラーベタ印刷を標準速度で行い、印字画像における亀裂の有無と乾燥性を評価した。結果を第1表に示す。
【実施例2】
セルロースエステル[イーストマンケミカル社製、「CAB−381−2」]に代えてセルロースエステル[イーストマンケミカル社製、「CAB−381−0.5」、数平均分子量30,000、アセチル化度13.5モル%、ブチル化度38.0モル%、水酸基含有量1.3重量%、ガラス転移点130℃]を用いたほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
【実施例3】
フタル酸ジイソデシルに代えてフタル酸ジイソノニルを用いたほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
【実施例4】
中間層として、ポリ塩化ビニル:アクリル樹脂=重量比1:1の混合物[大日精化工業社製表面処理剤、「レザヒットLG−325(カイ)」]に代えて、ポリ塩化ビニル:アクリル樹脂=重量比1:2.7の混合物を用いたほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
比較例1
中間層として、ポリ塩化ビニル:アクリル樹脂=重量比1:1の混合物[大日精化工業社製表面処理剤、「レザヒットLG−325(カイ)」]に代えて、アクリル樹脂100%からなる表面処理剤[大日精化工業社製、「レザヒットLG−961」]を用いたほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
比較例2
インク受理層としてセルロースエステル[イーストマンケミカル社製、「CAB−381−2」]100重量部とフタル酸ジイソデシル5重量部をMEK200重量部、DMF100重量部に十分に分散・溶解させたものを塗工液とし、フィルムアプリケーターを用いて乾燥塗膜厚さが25μmとなるように塗工したほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
比較例3
基材の上に中間層を塗工しないほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。

第1表の結果から、中間層を用いない場合(比較例3)は、印字画像に亀裂が発生することが分かる。また、中間層を形成しても、それがアクリル樹脂100%からなる場合(比較例1)は、印字画像に亀裂が発生し、乾燥性も十分でないことが分かる。更に、インク受理層に含有される可塑剤の量が、本発明で規定する範囲より少ないとき(比較例2)も、印字画像に亀裂が発生し、乾燥性も十分ではないことが分かる。
これに対して、ハロゲン化ビニル樹脂又はハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂からなる中間層を形成し、インク受理層がセルロースエステルと、セルロースエステル100重量部に対して10重量部以上の可塑剤とを含有してなるとき(実施例1〜4)は、標準速度での印刷においては、印字画像に亀裂発生がなく、乾燥性もよいことが分かる。
【実施例5】
インク受理層としてセルロースエステル[イーストマンケミカル社製、「CAB−381−2」]100重量部とフタル酸ジイソデシル50重量部をMEK200重量部、DMF100重量部に十分に分散・溶解させたものを塗工液とし、フィルムアプリケーターを用いて乾燥塗膜厚さが50μmとなるように塗工したほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。
このインクジェット被記録フィルムのインク受理層に、市販のインクジェットプリンター[ローランド ディージー社製、「SOLJET SC−500」]、高速モード(高速モードは標準モードの2倍の印字速度)と前述のインク(「SOLINK」)を使用してシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色のフルカラーベタ印刷を高速で行い、インクジェット記録材料を作製し、印字画像における亀裂の有無を評価した。結果を第2表に示す。
【実施例6】
インク受理層としてセルロースエステル[イーストマンケミカル社製、「CAB−381−2」]100重量部とフタル酸ジイソデシル60重量部をMEK200重量部、DMF100重量部に十分に分散・溶解させたものを塗工液とし、フィルムアプリケーターを用いて乾燥塗膜厚さが50μmとなるように塗工したほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例5と同様の評価を行った。結果を第2表に示す。
【実施例7】
実施例1のインクジェット被記録フィルムを用いて実施例5と同様の印刷を行い、インクジェット記録材料を作製し、印字画像における亀裂の有無を評価した。結果を第2表に示す。
【実施例8】
インク受理層としてセルロースエステル[イーストマンケミカル社製、「CAB−381−2」]100重量部とフタル酸ジイソデシル40重量部をMEK200重量部、DMF100重量部に十分に分散・溶解させたものを塗工液とし、フィルムアプリケーターを用いて乾燥塗膜厚さが50μmとなるように塗工したほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例5と同様の評価を行った。結果を第2表に示す。
【実施例9】
インク受理層としてセルロースエステル[イーストマンケミカル社製、「CAB−381−2」]100重量部とフタル酸ジイソデシル60重量部をMEK200重量部、DMF100重量部に十分に分散・溶解させたものを塗工液とし、フィルムアプリケーターを用いて乾燥塗膜厚さが25μmとなるように塗工したほかは実施例1と同様にして、インクジェット被記録フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例5と同様の評価を行った。結果を第2表に示す。

第2表の結果から、本発明のインクジェット被記録材料を用いた高速印刷仕様の実施例5及び実施例6では、高速印刷時においてもベタ印刷部分に全く亀裂を生じないことが分かる。
【実施例10〜15】
マウント用両面粘着シート[リンテック社製、「LAGマウントマザークリーンA−3532W」、支持体:厚さ50μmの白色アクリルフィルム、片面に30μm厚の顔料入りアクリル系粘着剤層、他面に25μm厚のアクリル系粘着剤層が設けられている。]の顔料入り粘着剤層側の剥離シートを剥がし、顔料入り粘着剤層を露出させた。
次いで、実施例1〜6で得られたインクジェット被記録フィルムのインク受理層に印刷が施されてなる各インクジェット記録材料を、その印刷面が前記顔料入り粘着剤層に接するようにして貼付し、各印刷物積層体を作製した。
次に、前記印刷物積層体の剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ、アクリル樹脂板に、該粘着剤層を当接させたのち、保護フィルムの上から、スキージにより押圧し、さらに、保護フィルムを剥がすことにより、アクリル樹脂板に印刷物を貼着させてなる各印刷物貼着体を作製した。
前記実施例10〜15の印刷物貼着体は、高品質の印刷画像を有しており、商品価値の高いものであった。
【産業上の利用可能性】
本発明のインクジェット被記録材料は、グリコールエーテルを主成分とする非水系溶媒中に顔料を分散してなる非水系型の顔料系インクを用いたインクジェット記録方式による印字が可能であって、インクの乾燥性、定着性、印刷適性に優れる上、耐候性が良好で、特に印字画像に亀裂がなく、鮮明性に優れる高品質印刷画像を得ることができる。
また、本発明の印刷物積層体は非水系型の顔料系インクを用いたインクジェット記録方式により形成し得る鮮明でかつ耐候性、インク定着性などが良好である上、亀裂の発生が抑制された高品質の印刷画像を有し、屋内外の広告用、表示用、装飾用などの印刷物貼着体作製用として好適に用いられる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その一方の面に順に設けられたハロゲン化ビニル樹脂及び/又はハロゲン化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を含む中間層、及びセルロースエステルと、その100重量部当たり、可塑剤10〜100重量部とを含むインク受理層を有することを特徴とするインクジェット被記録材料。
【請求項2】
インク受理層を構成するセルロースエステルが、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のインクジェット被記録材料。
【請求項3】
インク受理層を構成する可塑剤が、フタル酸エステル系可塑剤である請求項1又は2に記載のインクジェット被記録材料。
【請求項4】
基材がアクリル系樹脂を素材とするものである請求項1、2又は3に記載のインクジェット被記録材料。
【請求項5】
インク受理層の厚さが5〜70μmである請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェット被記録材料。
【請求項6】
インク受理層における可塑剤の含有量が、セルロースエステル100重量部当たり、20〜80重量部である請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェット被記録材料。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェット被記録材料であって、基材が透明性を有する被記録材料のインク受理層表面に印刷が施されてなるインクジェット記録材料(A)と、前記インクジェット記録材料の印刷面に粘着剤層を介して積層され、かつ該インクジェット記録材料とは反対側の面に剥離シート付粘着剤層が設けられている支持体からなる貼着用部材(B)とを有することを特徴とする印刷物積層体。
【請求項8】
貼着用部材(B)において、支持体がアクリル系樹脂を素材とするものである請求項7に記載の印刷物積層体。
【請求項9】
インクジェット記録材料(A)において、基材のインク受理層とは反対側の面に保護フィルムが設けられている請求項7または8に記載の印刷物積層体。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の印刷物積層体の剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を被着体に当接させ、前記印刷物積層体のインクジェット記録材料(A)の基材側から押圧することにより、該印刷物積層体の印刷物を前記被着体に貼着させることを特徴とする印刷物貼着体の製造方法。
【請求項11】
請求項9記載の印刷物積層体の剥離シートをはがして、露出した粘着剤層を被着体に当接させ、前記保護フィルムの側から押圧することにより、該印刷物積層体の印刷物を前記被着体に貼着させ、さらに該保護フィルムを剥離することを特徴とする印刷物貼着体の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/087432
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504247(P2005−504247)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004563
【国際出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【出願人】(000108214)ゼオン化成株式会社 (10)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】