説明

インクジェット装置

【課題】非使用状態が長期間続く場合などに、ノズル詰まりを防止するために吐出ヘッドの吐出面に粘着テープを貼着する際、多連ヘッド構成であっても各吐出ヘッドに対してほぼ同時にしかもほぼ同じ押し付け圧で粘着テープを貼着できるようにした、インクジェット装置を提供する。
【解決手段】ノズルを有する吐出ヘッド34を備えたインクジェット装置である。ノズルを覆って粘着テープ100を吐出ヘッド34のノズル形成面に貼着するテープ貼着手段220を有している。テープ貼着手段220は風船状の加圧体221と、加圧体221内への流体の供給及び流体の排出を行う流体給排手段222とを備え、加圧体221に流体を供給して膨らませ、膨らませた加圧体221の内圧で粘着テープ100を吐出ヘッド34のノズル形成面に押し付けることで粘着テープ100を貼着するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
民生用のプリンタや工業用の成膜装置などとして用いられているインクジェット装置は、圧電素子等のアクチュエーターによってインクに対し瞬間的に圧力を加え、ノズルからインクを液滴として吐出するように構成されている。
【0003】
ところで、このようなインクジェット装置にあっては、非使用状態が長期間続くと、ノズル内にて外気に接しているメニスカス部分からインク中の溶媒が気化し、ノズル内でインクが固化してノズル詰まりが起こってしまう。
【0004】
このようなノズル詰まりを防止するため、従来では、例えば非記録時に、吐出部を粘着テープで塞ぐようにした技術が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、印刷に伴って吐出部に付着するインクミスト等の汚れを取り除くため、吐出部に粘着性のクリーニングテープを貼り付けるようにしたインクジェット記録装置も提供されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−84925号公報
【特許文献2】特開平11−320900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のクリーニングテープを貼り付けるようにしたインクジェット記録装置におけるテープ貼着機構(テープ貼着手段)では、この貼着機構を、特に吐出部となる吐出ヘッドを複数備えた、いわゆる多連ヘッド構成のインクジェット記録装置に適用しようとした場合、複数の吐出ヘッドに対して個別に粘着テープ(クリーニングテープ)を貼着する必要があることから、処理に手間がかかってしまう。また、各吐出ヘッドに対して同じ押し付け圧で粘着テープを貼着するのが難しく、したがって各吐出ヘッド毎に異なる押し付け圧で粘着テープが貼着されてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、例えば非使用状態が長期間続く場合などに、ノズル詰まりを防止するために吐出ヘッドの吐出面に粘着テープを貼着する際、多連ヘッド構成であっても各吐出ヘッドに対してほぼ同時にしかもほぼ同じ押し付け圧で粘着テープを貼着できるようにした、インクジェット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット装置は、インクを吐出するためのノズルを有した吐出ヘッドを備えてなるインクジェット装置において、
前記ノズルを覆って粘着テープを前記吐出ヘッドのノズル形成面に貼着するテープ貼着手段を有し、
前記テープ貼着手段は、風船状の加圧体と、該加圧体内への流体の供給及び該流体の排出を行う流体給排手段とを備え、前記加圧体に流体を供給して膨らませ、膨らませた前記加圧体の内圧で前記粘着テープを前記吐出ヘッドのノズル形成面に押し付けることで該粘着テープを貼着するよう構成されていることを特徴としている。
【0009】
このインクジェット装置によれば、例えば非使用状態が長期間続く場合などに、ノズル詰まりを防止するために吐出ヘッドの吐出面に粘着テープを貼着する際、流体給排手段により加圧体内に流体を供給してこれを膨らませ、その内圧で前記粘着テープを前記吐出ヘッドのノズル形成面に押し付けることにより、該粘着テープを加圧体の内圧による押し付け圧で均一に貼着することができる。特に、吐出ヘッドが多連ヘッド構成であっても、各吐出ヘッドに貼着させる粘着テープを、加圧体によってその全面を同時に押圧することで、各吐出ヘッドに対して粘着テープをほぼ同時に貼着することができる。さらに、加圧体はその内圧が一定であることから、粘着テープの全面をほぼ同じ押し付け圧で貼着することができる。
【0010】
また、前記インクジェット装置においては、前記ノズルが、インクのメニスカスを位置させるノズル孔部と、該ノズル孔部より吐出側において、ノズル孔部より大きな開口からなる吐出側開口部とから構成されている場合、前記粘着テープを前記吐出ヘッドのノズル形成面に押し付ける際の前記加圧体の内圧Pが、下記式で表される圧に調整されているのが好ましい。
【0011】
P<Yd/t …式
(ただし、dは前記吐出側開口部の厚さ、Yは粘着テープの粘着層のヤング率、tは粘着層の厚さであって前記dより大である)
このように、粘着テープを吐出ヘッドのノズル形成面に押し付ける際の加圧体の内圧Pが、前記式で表される圧に調整されていれば、この内圧Pで粘着テープが前記吐出ヘッドのノズル形成面に押し付けられ貼着されることにより、後述するように、粘着テープの粘着層がノズルのノズル孔部を直接塞がないようになる。したがって、粘着テープを剥がした際、粘着層の材料の一部がノズル孔部の開口縁部に残ってしまい、その後の吐出性能を損なってしまうといったおそれが無くなる。また、粘着テープがノズル孔部内のインクのメニスカスに直接接触してしまい、インクを変質させてしまうおそれも無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0013】
まず、本発明のインクジェット装置の概略構成について説明する。なお、本発明は、カラーフィルタ等の薄膜の形成や、配線パターンなどのパターン形成などに用いられる工業用のインクジェット装置、さらには、記録用紙に印刷を行うための民生用のインクジェットプリンタ(インクジェット装置)の、いずれにも適用される。
【0014】
まず、工業用のインクジェット装置の一例について図1を参照して説明する。図1において符号30はインクジェット装置であり、このインクジェット装置30は、ベース31、基板移動手段32、ヘッド移動手段33、吐出ヘッド34、液供給手段35、前記吐出ヘッドを制御するための制御装置40等を有して構成されたものである。なお、図1に示す例では、説明を容易にするため吐出ヘッド34が一つであるものとして、図示し説明するが、後述するように吐出ヘッド34が複数設けられた、いわゆる多連ヘッド構成のインクジェット装置であってもよいのはもちろんである。
【0015】
ベース31は、その上に前記基板移動手段32、ヘッド移動手段33を設置したものである。
【0016】
基板移動手段32は、ベース31上に設けられたもので、Y軸方向に沿って配置されたガイドレール36を有したものである。この基板移動手段32は、例えばリニアモータ(図示せず)により、スライダ37をガイドレール36に沿って移動させるよう構成されたものである。
【0017】
スライダ37上にはステージ39が固定されている。よって、基板移動手段32がステージ39の移動軸となる。このステージ39は、基板Sを位置決めし保持するためのものである。すなわち、このステージ39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Sをステージ39の上に吸着保持するようになっている。基板Sは、例えばステージ39の位置決めピン(図示せず)により、ステージ39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。
【0018】
前記ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a、33aと、これら架台33a、33a上に設けられた走行路33bとを備えてなるもので、該走行路33bをX軸方向、すなわち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a、33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d、33dとを有して形成されたもので、ガイドレール33d、33dの長さ方向に吐出ヘッド34を搭載するキャリッジ42を移動可能に保持したものである。キャリッジ42は、リニアモータ(図示せず)等の作動によってガイドレール33d、33d上を走行し、これにより吐出ヘッド34をX軸方向に移動させるよう構成されたものである。
【0019】
ここで、このキャリッジ42は、ガイドレール33d、33dの長さ方向、すなわちX軸方向に例えば1μm単位で移動が可能になっており、このような移動は制御装置40によって制御されるようになっている。吐出ヘッド34は、前記キャリッジ42に取付部43を介して回動可能に取り付けられたものである。取付部43にはモータ44が設けられており、吐出ヘッド34はその支持軸(図示せず)がモータ44に連結している。このような構成のもとに、吐出ヘッド34はその周方向に回動可能となっている。また、モータ44も前記制御装置40に接続されており、これによって吐出ヘッド34はその周方向への回動も、制御装置40によって制御されるようになっている。なお、前記制御装置40は、後述するように予め設定された駆動波形を吐出ヘッド34に印加することにより、吐出ヘッド34の吐出を制御するようになっている。
【0020】
図2(a)、(b)は、前記インクジェット装置30が備えた吐出ヘッド34の概略構成を説明するための図である。前記吐出ヘッド34は、図2(a)に示すように例えばステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものである。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数のキャビティ15とリザーバ16とが形成されており、これらキャビティ15とリザーバ16とは流路17を介して連通している。
【0021】
各キャビティ15とリザーバ16は、その内部にインクを満たしてこれを収容するようになっており、これらの間の流路17はリザーバ16からキャビティ15にインクを供給する供給口として機能するようになっている。ノズルプレート12には、図2(b)に示すようにその吐出側(外側)にクレータメッキ12aが施されており、これによって撥液性が付与されている。なお、このクレータメッキ12aの外面が、本発明における吐出ヘッド34のノズル形成面、すなわち吐出面となっている。
【0022】
また、このクレータメッキ12aを形成したノズルプレート12には、キャビティ15からインクを吐出するための孔状のノズル18が縦横に整列した状態で複数形成されている。ノズル18は、ノズルプレート12に形成されたノズル孔部18aと、該ノズル孔部18aより吐出側、すなわち外側において、クレータメッキ12aに形成された吐出側開口部18bとから構成されている。これらノズル孔部18aと吐出側開口部18bとは、いずれも開口形状が円形のもので、同一の中心軸を有するものである。また、吐出側開口部18bは、ノズル孔部18aより大きな内径を有する開口からなっている。
【0023】
一方、振動板13には、図2(a)に示すようにリザーバ16内に開口する孔19が形成されており、この孔19には液供給手段35が接続されるようになっている。また、前記液供給手段35は、インクを充填したタンク45と、このタンク45からインクを供給するためのチューブ46とからなっていて、前記チューブ46が前記孔19に接続している。
【0024】
また、振動板13のキャビティ15に向く面と反対の側の面上には、図2(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、吐出ヘッド34においてアクチュエーターとして機能するもので、一対の電極21、21間に挟持され、インクジェット装置30が備えている制御装置40によって外側に突出するようにして撓ませるように構成されたものである。
【0025】
すなわち、圧電素子20は、その電極21、21間に通電されて吐出波形が印加されると撓曲する。そして、このように圧電素子20が撓曲すると、圧電素子20に接合された振動板13は、圧電素子20と一体になって同時に外側へ撓曲し、これによりキャビティ15の容積を増大させる。すると、キャビティ15内とリザーバ16内とが連通しており、リザーバ16内にインクが充填されている場合には、キャビティ15内に増大した容積分に相当するインクが、リザーバ16から流路17を介して流入する。
【0026】
そして、このような状態から圧電素子20への通電を解除し、あるいは逆の電位で通電すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。よって、キャビティ15も元の容積に戻ることから、キャビティ15内部のインクの圧力が上昇し、ノズル18のノズル開口9からインクが液滴22となって吐出される。
【0027】
また、このようにして吐出動作を行うと、キャビティ15内のインクの一部がノズル18のノズル孔部18a内に残った状態となり、図2(b)に示したようにこのノズル孔部18aにインクのメニスカスMが位置させられた状態となる。
【0028】
次に、民生用のインクジェットプリンタ(インクジェット装置)の一例について図3を参照して説明する。なお、この例でも、説明を容易にするため吐出ヘッドが一つであるものとして、図示し説明するが、多連ヘッド構成のインクジェット装置であってもよいのは、前記例と同様である。
【0029】
図3において符号600はインクジェットプリンタであり、このインクジェットプリンタ600は、装置本体620と、記録用紙Pを設置するトレイ621と、記録用紙Pを排出する排出口622と、装置本体620の上面に配置された操作パネル670とを備えて構成されたものである。
【0030】
装置本体620の内部には、印刷装置640と、記録用紙Pを印刷装置640に送り込む給紙装置650と、印刷装置640および給紙装置650を制御する制御部660とが設けられている。
【0031】
印刷装置640は、往復動するヘッドユニット630と、ヘッドユニット630の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット630を往復動させる往復動機構642とを有したものである。
【0032】
ヘッドユニット630は、吐出ヘッド50と、この吐出ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、ヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632と、を備えてなるものである。ここで、吐出ヘッド50は、図2(a)、(b)に示した吐出ヘッド34と基本的に同じ構成を有したものであり、ノズル孔部18aと吐出側開口部18bとからなるノズル18を多数有したものである。
【0033】
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸644と、キャリッジガイド軸644と平行に延在するタイミングベルト643とを有したものである。キャリッジガイド軸644は、キャリッジ632が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ632を支持している。さらに、キャリッジ632は、タイミングベルト643の一部に固定されている。キャリッジモータ641の作動により、タイミングベルト643を走行させると、キャリッジガイド軸644に導かれて、ヘッドユニット630が往復動する。この往復動の際に、吐出ヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0034】
給紙装置650は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有したものである。給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する、従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとを備えている。駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されている。
【0035】
このような構成のインクジェットプリンタ600において、使用されるインクとしては、基本的には染料や顔料等の固形分を溶媒に溶解したものである。また、前記のインクジェット装置30において用いられるインクとしては、その工業的用途に応じて種々のものが用いられる。具体的には、カラーフィルタの成膜の場合、カラーフィルタの形成材料を溶媒に溶解したものが用いられ、金属配線の形成の場合、銀や金などの金属微粒子を分散媒に分散させたものが用いられる。
【0036】
このようなインクジェットプリンタ600やインクジェット装置30では、使用中における比較的短時間(数十秒〜数分、数十分程度)の吐出休止時には、吐出ヘッド34(50)は必要に応じてゴムや軟質樹脂等からなるキャップ材などでキャッピングされ、インク中の溶媒(分散媒)が気化してノズル詰まりが生じるのが防止される。しかし、例えば数時間以上、または1日以上の長期に亘って非使用状態が続く場合には、キャップ材によるキャッピングではノズル詰まりの防止効果が十分に得られない。
【0037】
そこで、本発明では、このように特に長期に亘って非使用状態が続く場合などに、ノズル詰まりを確実に防止するため、前記ノズル18を覆って粘着テープを前記吐出ヘッド34(50)のノズル形成面に貼着するテープ貼着手段を有している。
【0038】
図4は前記テープ貼着手段としての貼着装置220を示す図であり、この貼着装置220は、主に図1に示した工業用のインクジェット装置30に備えられるものである。ただし、全体を小型化することなどにより、図3に示した民生用のインクジェットプリンタ(インクジェット装置)にも適用可能なのはもちろんである。
【0039】
貼着装置220は、粘着テープ100を前記吐出ヘッド34(50)の吐出面(ノズル形成面)に貼着するためのテープ貼着手段であって、特にこの例では、一つのキャリッジ42に三つの吐出ヘッド34が設けられた、いわゆる多連ヘッド構成のインクジェット装置に、備えられたものである。この貼着装置220は、巻回した粘着テープ100を送り出して供給する供給リール201と、供給リール201から送られた粘着テープ100を巻き取る巻取リール202と、剥離ローラ204とを備え、さらに、風船状の加圧体221と、該加圧体230内への流体の供給及び該流体の排出を行う流体給排手段222とを備えたものである。
【0040】
供給リール201、巻取リール202は、モータ等の駆動手段(図示せず)によって同時に回転させられるよう構成されたものである。また、これら供給リール201、巻取リール202間に張架された粘着テープ100の上方には、前記キャリッジ42の側方となる位置に、前記吐出ヘッド34から粘着テープ100を剥離するための剥離ローラ204が複数(図4では一対)配設されている。
【0041】
これら剥離ローラ204は、図示しない駆動手段により、粘着テープ100をその上面側から押圧するべく、昇降可能に構成されている。このような構成によって剥離ローラ204は、粘着テープ100の上方に待機した状態から、下降して粘着テープ100の上面を押圧することにより、吐出ヘッド34から粘着テープ100を剥離するようになっている。
【0042】
一方、供給リール201、巻取リール202間に張架された粘着テープ100の下方には、前記の風船状の加圧体221が配設されている。この加圧体221は、ゴムや軟質の合成樹脂等からなるもので、内部に空気や水等の流体が供給されることで膨らみ、その内圧によって均一な押圧力を発生するものである。
【0043】
流体給排手段222は、加圧体221の口部221aに連通するフレキシブルチューブ223と、このフレキシブルチューブ223に接続する開閉弁224と、この開閉弁224に配管225を介して接続されたポンプやコンプレッサー等の流体供給源226とを備えたものである。開閉弁224及び流体供給源226には制御部227が接続され、加圧体221にはその内圧を検知する圧力計(図示せず)が設けられている。制御部227は、加圧体221による加圧時には、開閉弁224を開くとともに、流体供給源226を作動させる。そして、加圧体221内の内圧Pが所定の圧、例えば後述する式(1)に規定する圧となると、これを検知した圧力計からの信号を受け、開閉弁224を閉じるとともに、流体供給源226の作動を停止させるようになっている。
【0044】
なお、加圧体221は、流体が供給されて膨らんだ際、その上部側が、前記供給リール201と巻取リール202との間に張架された粘着テープ100に当接し、これを押圧するように配置されている。または、この加圧体221に昇降機構(図示せず)を設けておき、加圧体221を膨らませた後、これを上昇させて粘着テープ100に当接させ、これを押圧するように構成してもよい。
【0045】
ここで、貼着に使用する粘着テープ100としては、基本的には図5(a)に示すようにテープ基材101と、このテープ基材101上に設けられた粘着層102とを有してなるものである。これらテープ基材101、粘着層102は、いずれも使用するインクに対して耐性を有するもの、すなわち耐インク性のものとされる。また、特にテープ基材101については、インク中の溶媒蒸気に対してガスバリア性を有したものとされる。さらに、粘着テープ100は、使用するインクと反応せず、したがって該インクの性状、例えばその組成や分散性、溶解性を変化させない材料からなるものとされる。
【0046】
インクとして、例えば銀微粒子を分散液である水に分散させてなるものを用いた場合、テープ基材101としてはポリイミドが、また粘着層102としてはアクリル系粘着材が好適に用いられる。具体的には、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの重合によって得られるカプトン[登録商標]や、ポリイミドフィルムカプトン[登録商標]などがより好適とされる。なお、このような粘着テープ100の厚さとしては、特に限定されることなく、任意のものが使用可能である。一例として、テープ基材101の厚さが100μm程度、粘着層102の厚さが10μm程度のものが好適に使用可能である。ただし、非使用状態が特に長期になる場合などでは、これらテープ基材101や粘着層102の厚さを適宜厚くすることも可能である。
【0047】
また、インクとして、顔料を水系の溶媒に溶解してなるインクジェットプリンタ600用のものを用いた場合には、図5(b)に示すように、テープ基材101を三層構造で形成することもできる。すなわち、粘着層102側から順に耐溶剤層103、ガスバリア層104、保護層105の三層を配し、これら三層によってテープ基材101を構成してもよい。このような構造において、テープ基材101における耐溶剤層103とガスバリア層104との間、およびガスバリア層104と保護層105との間については、例えば互いの層間を融着することで接着することができる。
【0048】
具体的には、耐溶剤層103と保護層105とをそれぞれ厚さ200μm程度のポリエチレン(PE)で形成し、ガスバリア層104を厚さ200μm程度のエチレンビニルアルコール(EVOH)で形成することができる。エチレンビニルアルコールはガスバリア性が高いものの、耐水性が低いため、耐水性の高いポリエチレンでその表裏を覆うことにより、耐水性にもガスバリア性にも優れたテープ基材101を形成することができる。なお、耐溶剤層103及び保護層105としては、ポリエチレンに代えてポリプロピレンを用いることもできる。
【0049】
また、このようにテープ基材101を三層構造で形成する場合に、耐溶剤層103とガスバリア層104との間、およびガスバリア層104と保護層105との間の融着による接着層(図示せず)については、厚さ50μm程度とすることで層間を良好に接着することができる。なお、粘着層102については、図5(a)に示した場合と同様に、アクリル系粘着材が好適に用いられ、その厚さについても、10μm程度とするのが好ましい。
【0050】
また、このようにテープ基材101を三層構造で形成した粘着テープ100を、前記したような銀微粒子を分散液である水に分散させてなるインクを用いた場合に適用することもできる。
【0051】
また、インクとして、前記したような銀微粒子を分散液である水に分散させてなるインクを用いた場合、テープ基材101としては、例えば図5(c)に示すように、テープ基材101を二層構造で形成することもできる。すなわち、粘着層102側から順に耐溶剤層106、金属層107の二層を配し、これら二層によってテープ基材101を構成してもよい。具体的には、耐溶剤層106を耐溶剤性を有する絶縁性材料、例えば厚さ100μm程度のポリエチレン(PE)で形成し、金属層107をガスバリア性と耐溶剤性を有する金属、例えば厚さ100μm程度のアルミ箔や、金箔、SUS304等のステンレスによって形成することができる。なお、粘着層102については、図5(a)に示した場合と同様に、アクリル系粘着材が好適に用いられ、その厚さについても、10μm程度とするのが好ましい。
【0052】
このように、金属層107の粘着層102側に絶縁性の耐溶剤層106を配することにより、インク中の銀微粒子と金属層107との間、すなわち異種金属間でボルタ電池が形成されてしまい、電流が生じてしまうのを防止することができる。ただし、粘着層102が良好な絶縁性を有し、かつ絶縁性を発揮するに十分な厚さを有している場合には、耐溶剤層106を省略して金属層107のみからテープ基材101を構成することもできる。
【0053】
また、インクとして、例えばカラーフィルタの形成材料を溶媒に溶解したもののような有機系のインクを用いた場合、前記した、金属層107のみからテープ基材101を構成した粘着テープ100を用いることができる。
【0054】
なお、粘着テープ100としては、前記した構成のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、図5(a)に示した構成においてテープ基材101としては、ポリオレフィン、ポリエチレン、塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂や、これら樹脂にアルミニウム等の金属層を蒸着法やスパッタ法で形成したものが使用可能である。
【0055】
また、図5(a)に示した構成において粘着層102としては、前記したアクリル系粘着材(難燃性アクリル系を含む)以外にも、シリコン系粘着材、ゴム系粘着材(天然ゴム系、合成ゴム系、再生ゴム系、熱硬化性ゴム系、スチレン・イソプレン・スチレン系)、ペトロラタム系粘着材等が使用可能である。
【0056】
このような粘着テープ100を、図6(a)、(b)に示すように前記吐出ヘッド34の吐出面となるノズル形成面に貼着する際には、粘着テープ100の粘着層102がノズルプレート12に直接当接し、ノズル孔部18aを塞がないようにするのが好ましい。粘着層102がノズルプレート12に直接当接してノズル孔部18aを塞ぐと、粘着テープ100を剥がした際、粘着層102の材料の一部がノズル孔部18aの開口縁部に残ってしまい、その後の吐出性能を損なってしまうおそれがあるからである。また、粘着テープ100がノズル孔部18aに接触し、その粘着層102がノズル孔部18a内のインクのメニスカスMに直接接触してしまうと、特に粘着層102がインクと反応し易い場合には、インクを変質させてしまうおそれがあるからである。
【0057】
なお、吐出側開口部18aについては、ノズル孔部18aから吐出される液滴の吐出性に関して影響する度合いが少なく、仮にその開口縁部に粘着層102の材料の一部が残ってしまっても、実質的に吐出性能を損なうことはない。
【0058】
また、本例で使用する粘着テープ100は、前述したようにその粘着層102も使用するインクと反応せず、したがって該インクの性状、例えばその組成や分散性、溶解性を変化させない材料からなっているので、これがインクに直接接触しても、インクの性状を変化させることはない。
【0059】
このように、粘着層102がノズルプレート12に直接当接し、ノズル孔部18aを塞がないようにして、粘着テープ100をノズル形成面、すなわちクレータメッキ12aの外面に貼着するには、前記したように、特に下記式(1)で表される圧Pで押し付け、貼着するのが好ましい。
【0060】
P<Y・d/t …式(1)
ここで、前記式においてdは前記吐出側開口部18bの厚さ(深さ)[μm]、Yは粘着テープの粘着層102のヤング率[Pa]、tは粘着テープ100の粘着層102の厚さ[μm]である。前記式(1)に示したように、押し付け圧Pは、特にその上限が粘着層102のヤング率、すなわち粘着層102の材質によって大きく依存することになる。なお、ここでは、前記粘着テープ100の粘着層102の厚さtが、前記吐出側開口部18bの厚さdより大であるものとする。
【0061】
粘着テープ100をクレータメッキ12aの外面に押し付け圧Pで押し付け、貼着すると、粘着層102には、図6(b)に示すようにクレータメッキ12aの外面に直接押し付けられた部分と、吐出側開口部18b内にてクレータメッキ12aの外面に直接押しつけられない部分との間で、歪みΔtが生じる。このΔtは、粘着層102の材質に依存する値であり、下記式(2)を満足する値となる。
【0062】
P=Y・Δt/t …式(2)
Δtは、前記したように粘着層102がノズルプレート12に直接当接し、ノズル孔部18aを塞がないようにするためには、下記式(3)を満足する必要がある。
【0063】
Δt<d …式(3)
したがって、前記式(2)、式(3)より、前記式(1)が導かれるのである。
【0064】
例えば、粘着テープ100として、アクリル樹脂系粘着材によって粘着層102が形成され、該粘着層102の厚さ(t)が10μmであるものを用い、これを、クレータメッキ12aの厚さ、すなわち吐出側開口部18bの厚さ(d)が5μmである吐出ヘッド34(50)に対して貼着する場合、その押し付け圧Pとしては、アクリル樹脂系粘着材のヤング率(Y)が2×10Paであることから、
P<2×10[Pa]×5[μm]/10[μm]となり、
P<10[Pa]=10[kPa]となる。
【0065】
そして、前記貼着装置220は、前記したように、加圧体221によって前記粘着テープ100を吐出ヘッド34の吐出面に押し付ける際の内圧(押し付け圧)Pを、前記の式(1)に規定した圧とするようになっている。すなわち、この貼着装置220は、その流体供給源226による加圧体221への流体供給により、加圧体221の内圧Pを前記の式(1)に規定した圧とし、これによってこの内圧Pを押し付け圧として、粘着テープ100を吐出ヘッド34の吐出面に押し付け、貼着させるるようになっているのである。
【0066】
このような構成からなる貼着装置220は、例えば図1に示したインクジェット装置30において、基板移動手段32の側方に設けられ、非使用時において動作させられるようになっている。その場合、貼着装置220に移動機構を設けておき、貼着装置220を吐出ヘッド34の直下に移動させ、該吐出ヘッド34の吐出面に粘着テープ100を貼着するようにしてもよい。または、貼着装置220をヘッド移動手段33によるキャリッジ42の移動範囲内に配置しておき、キャッリジ42を貼着装置220の直上に移動させることにより、吐出ヘッド34の吐出面に粘着テープ100を貼着するようにしてもよい。
【0067】
このような貼着装置220を備えたインクジェット装置30にあっては、非使用状態が長期間続く場合、その保守方法として、前記貼着装置220によって前記粘着テープ100を前記吐出ヘッド34の吐出面に貼着する。すなわち、まず、吐出ヘッド34の直下に貼着装置220を相対的に位置させる。また、これに先立ち、あるいはこれの後、供給リール201から使用前の粘着テープ100を送り出し、該供給リール201と巻取リール202との間に使用前の粘着テープ100を張架させておく。その際、張架された粘着テープ100を、吐出ヘッド34の下面に当接させず、該下面から僅かに離間させておく。なお、粘着テープ100については、その粘着層102を上側(吐出ヘッド34側)に向けて張架させておく。
【0068】
次に、流体供給源226によって加圧体221に流体を供給し、加圧体221を膨らませてその内圧Pを前記の式(1)に規定した圧とする。これにより、粘着テープ100を下から押し上げ、その粘着層102側を吐出ヘッド34の吐出面(下面)に押し付けることができる。粘着テープ100を吐出ヘッド34の吐出面に押し付ける際の押し付け圧は、前記したように加圧体221の内圧Pとなり、この加圧体221に押圧された箇所は全て内圧Pで押圧される。したがって、粘着テープ100は吐出ヘッド34の吐出面(下面)に均一に押し付けられ、貼着されることになる。
【0069】
このようにして吐出ヘッド34の下面に粘着テープ100を貼着することにより、吐出ヘッド34のノズル18の吐出側開口部18bを覆うことができる。これにより、吐出ヘッド34内のインクは、特にノズル18のノズル孔部18a内に位置しているメニスカスM部分において固化し、ノズル詰まりが起こるといったことが抑えられる。ただし、このように単に粘着テープ100を貼着しただけでは、図7(a)に示したようにインクのメニスカスM部分と粘着テープ100の貼着面(粘着層102の外面)との間に空気が残留することから、特に非使用状態が長期間続く場合には、これだけではノズル詰まりが起こるおそれがある。
【0070】
すなわち、吐出ヘッド34内のインクは、前記したようにノズル18のノズル孔部18a内においてメニスカスMを形成し、このメニスカスM部分が外気に接することでインク中の溶媒を気化させる。このメニスカスM部分は、非吐出時には吐出ヘッド34のノズル形成面より奥側に引っ込んだ位置に形成されることから、単に粘着テープ100を吐出ヘッド34のノズル形成面に貼着するだけでは、この粘着テープ100の貼着面と前記メニスカスM部分との間に空気が残ってしまう。すると、メニスカスM部分からインク中の溶媒が気化してその蒸気が空気層に移行し、結果としてメニスカスM部分が僅かながらも固化し、ノズル詰まりが生じてしまうおそれがあるのである。
【0071】
そこで、このようなノズル詰まりをより確実に防止するためには、特に粘着テープ100として、その粘着層102が使用するインクと反応せず、したがって該インクの性状、例えばその組成や分散性、溶解性を変化させない材料からなっている場合、粘着テープ100でノズル18の吐出側開口部18bを覆った状態のもとで、該ノズル18のノズル孔部18aからインクを押し出し、図7(b)に示すようにノズル18内と前記粘着テープ100の貼着面との間をインクIで満たすのが好ましい。
【0072】
ノズル18からのインクIの押し出しについては、吐出ヘッド34によるノズル18からの通常のインク吐出動作、すなわち圧電素子(アクチュエーター)20への吐出波形の印加によって行うことができる。このような通常のインク吐出動作を用いるようにすれば、特にインクジェット装置30としてその装置構成を変えることなく、ノズル18内と粘着テープ100の貼着面との間をインクで容易に満たすことができ、これによりノズル詰まりを確実に防止することができる。
【0073】
また、ノズル18からのインクIの押し出しを、該ノズル18にインクを供給するインク供給系を加圧することにより、行うようにしてもよい。ノズル18にインクを供給するインク供給系として、例えばインクIの流路となるチューブを加圧したり、インクIを貯留するタンクやカートリッジの位置を上昇させることで水頭値を高くすることにより、ノズル18からインクIを押し出すことができる。このようにしても、ノズル18内と粘着テープ100の貼着面との間をインクIで満たし、ノズル詰まりを確実に防止することができる。
【0074】
ここで、このようにして吐出ヘッド34の下面に粘着テープ100を貼着し、吐出ヘッド34のノズル18を覆った状態ノズル18内と粘着テープ100の貼着面との間をインクIで満たしておくと、粘着テープ100とインクIとは直接接触することになる。しかし、粘着テープ100として、前述したように使用するインクIに対して耐性を有し、該インクIと反応せず該インクIの性状を変化させない材料からなっているテープを用いているので、非使用時においてインクIが変質してしまうことを防止することができる。また、テープ基材101がインクI中の溶媒蒸気に対してガスバリア性を有しているので、インクI中の溶媒が気化してその蒸気がテープ基材101を透過し、インクIが固化するといったことも防止することができる。
【0075】
このようにして吐出ヘッド34のノズル詰まりを防止し、その状態で長期間保持した後、再度使用する際には、粘着テープ100の上方に待機させておいた剥離ローラ204を下降させ、これで粘着テープ100の上面を押圧することにより、吐出ヘッド34から粘着テープ100を剥離する。なお、貼り付け用ローラ203については、粘着テープ100を剥離する前に下降させ、粘着テープ100から離間させておく。
【0076】
このようにして吐出ヘッド34から粘着テープ100を剥離したら、吐出ヘッド34または貼着装置220を移動させて貼着装置220を吐出ヘッド34の使用時における可動範囲から退避させ、保守状態を終了する。そして、吐出ヘッド34に対し吸引手段(図示せず)によりそのノズル18からインクを吸引し、また吐出面をワイピングして粘着層102の残留物等を除去し、さらにフラッシングや微振動等の予備動作を行うことなどにより、使用状態にする。
【0077】
このようにして使用状態にすると、吐出ヘッド34は、前述したように粘着テープ100の粘着層102によってノズル18のノズル孔部18aが直接塞がれず、したがって粘着層102の材料の一部がノズル孔部18aの開口縁部に残っていないので、その後の吐出性能が損なわれるといったことが確実に防止されている。
【0078】
なお、吐出ヘッド34の下面に粘着テープ100を貼着する場合、吐出ヘッド34の数やその配置等に応じて、貼着装置220の構成やその数、さらには粘着テープ100の幅などを適宜に変更することができる。
【0079】
例えば、図8(a)に示すように一つのキャリッジ42に対して12個(6対)の吐出ヘッド34が設けられており、吐出ヘッド34が6個(3対)一列に配列され、これら6個の吐出ヘッド34からなる列が2列直線状に配置されている多連ヘッド構成の場合には、前記の貼着装置220を二つ用い、各列毎に6個の吐出ヘッド34を一つの連続した粘着テープ100で覆うようにすることができる。または、図8(b)に示すように各列間において斜め方向に隣り合う2対の吐出ヘッド34を、一つの貼着装置220を用いてその粘着テープ100で覆い、同様に他の2対の吐出ヘッド34についても、それぞれ一つの貼着装置220を用いてその粘着テープ100で覆い、したがって計三つの貼着装置220を用いて12個(6対)の吐出ヘッド34の吐出面を覆うようにしてもよい。
【0080】
また、図8(a)、(b)に示したような吐出ヘッド34の配列の場合にも、粘着テープ100として特に幅の広いものを用いることにより、一つの貼着装置220で全ての吐出ヘッド34の吐出面を、連続した粘着テープ100によって一括して覆うようにしてもよい。
【0081】
このような多連ヘッド構成の場合に、特にこの貼着装置220にあっては、対象となる複数の吐出ヘッド34の全ての吐出面を、粘着テープ100によってほぼ同時に一括して覆い、これら吐出面に粘着テープ100をほぼ同時に貼着することができる。したがって、貼着処理が容易になる。また、加圧体221はその内圧Pが一定であることから、粘着テープ100の全面をほぼ同じ押し付け圧で貼着することができる。
【0082】
なお、多連ヘッド構成のインクジェット装置に対応する貼着装置としては、供給リール201と巻取リール202とを複数ずつ備えてこれらの間に複数の粘着テープ100を張架させ、これら複数の粘着テープ100を加圧体221によってほぼ同時に一括して押圧するように構成してもよい。また、粘着テープ100として特に幅の広いものを用い、この粘着テープ100で複数の吐出ヘッド34の全ての吐出面を覆うようにしてもよい。その場合にも、この幅広の粘着テープ100のほぼ全面を加圧体によって一括して押圧することができる。したがって粘着テープ100の貼着処理を容易にかつ迅速に行うことができる。
【0083】
なお、前記貼着装置220については、図1に示したインクジェット装置30における吐出ヘッド34への粘着テープ100の貼着に適用した場合を例にして説明したが、図3に示したインクジェットプリンタ(インクジェット装置)600の吐出ヘッド50への粘着テープ100の貼着にも適用できるのはもちろんである。
【0084】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係るインクジェット装置の斜面図である。
【図2】(a)は、吐出ヘッドの斜視図、(b)は、(a)の要部側断面図である。
【図3】本発明に係るインクジェットプリンタの斜面図である。
【図4】本発明に係る貼着装置の一例を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は粘着テープの概略構成を示す側断面図である。
【図6】(a)、(b)は吐出ヘッドへの粘着テープの貼着の説明図である。
【図7】(a)、(b)は粘着テープを貼着した後の吐出ヘッドの説明図である。
【図8】(a)、(b)は粘着テープの貼着方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0086】
12…ノズルプレート、12a…クレータメッキ、15…キャビティ、18…ノズル、18a…ノズル孔部、18b…吐出側開口部、30…インクジェット装置、34、50、300…吐出ヘッド、100…粘着テープ、101…テープ基材、102…粘着層、220…貼着装置(テープ貼着手段)、221…加圧体、222…流体給排手段、I…インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するためのノズルを有した吐出ヘッドを備えてなるインクジェット装置において、
前記ノズルを覆って粘着テープを前記吐出ヘッドのノズル形成面に貼着するテープ貼着手段を有し、
前記テープ貼着手段は、風船状の加圧体と、該加圧体内への流体の供給及び該流体の排出を行う流体給排手段とを備え、前記加圧体に流体を供給して膨らませ、膨らませた前記加圧体の内圧で前記粘着テープを前記吐出ヘッドのノズル形成面に押し付けることで該粘着テープを貼着するよう構成されていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
前記ノズルが、インクのメニスカスを位置させるノズル孔部と、該ノズル孔部より吐出側において、ノズル孔部より大きな開口からなる吐出側開口部とから構成されており、
前記粘着テープを前記吐出ヘッドのノズル形成面に押し付ける際の前記加圧体の内圧Pが、下記式で表される圧に調整されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット装置。
P<Yd/t …式
(ただし、dは前記吐出側開口部の厚さ、Yは粘着テープの粘着層のヤング率、tは粘着層の厚さであって前記dより大である)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−326293(P2007−326293A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159384(P2006−159384)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】