インクジェット記録ヘッドおよび該インクジェット記録ヘッド用の記録素子基板
【課題】インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子の駆動信号を伝送するために電気配線部材から延在する複数の接続端子に接続される複数の電極端子と、接続端子が電極端子に接続される接続部までの、前記接続端子の延在部分を前記記録素子基板に対して絶縁するための絶縁部とを具え、接続部が、複数の接続端子間の毛細管力により広がる封止剤により封止されてなるインクジェット記録ヘッドにおいて、絶縁部による封止剤の堰き止めに起因した封止剤の不存在領域が生じないようにする。
【解決手段】複数の接続端子H1304のそれぞれに接する分離した複数の凸状部111によって絶縁部110を構成し、凸状部間には封止剤H1307の通過を許容するための溝112が形成されるようにする。
【解決手段】複数の接続端子H1304のそれぞれに接する分離した複数の凸状部111によって絶縁部110を構成し、凸状部間には封止剤H1307の通過を許容するための溝112が形成されるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出して記録動作を行うインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドおよび該インクジェット記録ヘッド用の記録素子基板に関する。なお、本発明のインクジェット記録ヘッドは、一般的なプリント装置のほか、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、あるいは、これらの装置を複合した多機能記録装置等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドとも言う)の構成としては、特許文献1などに開示されたものがある。
【0003】
かかる特許文献1に開示されている記録ヘッドの主な構成要素として、インクを吐出するために利用されるエネルギを発生するエネルギ発生素子と、そのエネルギ発生素子に電気信号を与えるための複数の電極端子とを具備する記録素子基板がある。一方、記録素子基板には、電気配線基板が接続される。電気配線基板は、記録素子基板を囲む開口部と、開口部内に突出して記録素子基板の電極端子と接続する接続端子(リード端子)と、外部から記録素子の駆動信号を含む電気信号を受容する接続端子と、これら端子間で電気信号を伝送する配線を具備する。そして、これらの記録素子基板および電気配線基板はベース部材によって支持固定されている。
【0004】
例えば基板の主平面に対して垂直な方向にインクを吐出させる形態の記録素子基板では、その表面にエネルギ発生素子が形成され、さらにそのエネルギ発生素子に対応するインク吐出口が形成された吐出口形成部材が配置される。かかる記録素子基板では、その表裏両面を貫通して記録素子上にインクを供給するためのインク供給穴が設けられる。そして記録素子基板は、その裏面側においてインク供給穴がインクタンクからのインク流路形成部材に連通する状態に保持され、基板周側面が封止剤(第1の封止剤)によって封止されることで、インクの漏洩が防止されるようにしている。
【0005】
記録素子基板の電極端子と電気配線基板のリード端子とは、TAB実装技術により電気接続され、当該電気接続部がさらに第2の封止剤によって封止されることで、インクによる腐食や外力から保護している。
【0006】
第1の封止剤は記録素子基板の側面部から塗布され、周側面に沿って徐々に広がった後、毛細管力により電気接続部付近まで広がる。また、第2の封止剤は、第1の封止剤の塗布後に、主に電気接続部の上面に塗布されることになる。
【0007】
ところで、電気配線基板のリード端子を接続する際には、リード端子が記録素子基板の電極端子以外の記録素子基板上の部位に接する可能性がある。このため、特許文献1においては、記録素子基板上の、電極端子に接続されるリード端子先端部までのリード端子延在部の下方に位置する部位に障壁層の部分を設けることで、リード端子延在部と記録素子基板とを電気的絶縁する技術を開示している。
【0008】
図13〜図15を用い、かかる特許文献1に開示の技術を説明する。図13は記録素子基板と電気配線部材との接続部分を示す模式的平面図、図14および図15は、それぞれ、そのXIV−XIV線およびXV−XV線の模式的断面図である。
【0009】
これらの図において、H1101は記録素子基板、H1105はその上に設けられた電極端子である。H1109は吐出口H1107が形成された吐出口形成部材であり、記録素子基板H1101の表面に形成されたエネルギ発生素子に対して吐出口H1107を位置合わせした状態で記録素子基板H1101に対して設けられる。H1301は記録素子基板H1101を露出させる開口H1303を有する電気配線基板であり、開口H1303内にリード端子H1304が延在して、その先端部が電極端子H1105に接続される。そして、記録素子基板H1101上の、リード端子H1304の延在部の下方に位置する部位には、リード端子H1304の配列方向に沿って延在する一体の障壁層(絶縁部)110が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−023997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示の構成には、以下に述べるような問題点があった。
【0012】
図16を用いてこれを説明する。記録素子基板H1101の周側面は第1の封止剤H1307によって封止されるが、この際、電極端子H1105とリード端子H1304との接続部にも第1の封止剤H1307が広がって封止される。しかし、特許文献1のようにリード端子H1304の配列方向に沿って一体の絶縁部110が設けられている場合、毛細管力により電気接続部付近にまで広がるべき第1の封止剤H1307が、絶縁部110により塞き止められることがあった。その結果、電気接続部の一部に第1の封止剤が充分に充填されず、リード端子H1304と記録素子基板H101の間や、リード端子間等に、気泡が存在する、ないしは第1の封止剤H1307が充填されない領域113として残ってしまうことがあった。
【0013】
この領域113が存在したまま第2の封止剤を塗布すると、当該塗布後の工程である封止剤硬化のための加熱工程にて、空気が膨張して外気と連通するなどする可能性がある。このように外気と連通するとインクが流入して記録ヘッドの電気的信頼性を低下させる可能性あった。また、記録装置に装着した後の記録動作時に加わる外力などで封止剤に亀裂が入ってしまい、同様に電気的信頼性を低下させる可能性があった。
【0014】
よって本発明は、気泡が存在する、ないしは第1の封止剤が充填されない領域が生じないようにし、記録ヘッドの電気的信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのために本発明インクジェット記録ヘッドの製造方法は、インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子と、前記素子と電気的に接続され、列状に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極端子に沿って、列状に設けられた複数の絶縁部材と、を備えた面を有を有し、前記複数の絶縁部材が前記複数の電極端子より前記面の端に近い側に設けられている記録素子基板を用意する工程と、
外部の電気配線基板と前記電極端子とを電気的に接続する複数の電気配線部材を、前記電極端子と接触し、かつ前記複数の絶縁部材によって支持されるように設ける工程と、
封止部材が隣接する前記電気配線部材の間に達するように、前記記録素子基板の周縁に前記封止部材を塗布し、前記封止部材を隣接する前記電気配線部材の間の毛細管力を用いて、隣接する前記電極端子の間に、前記封止部材を設ける工程と、
を具えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明インクジェット記録ヘッドは、インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子と、前記素子と電気的に接続され、列状に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極端子に沿って、列状に設けられた複数の絶縁部材と、を備えた面を有し、前記複数の絶縁部材が前記複数の電極端子より前記面の端に近い側に設けられている記録素子基板と、
前記電極端子と接触し、外部の電気配線基板と前記電極端子とを電気的に接続するとともに、前記複数の絶縁部材によって支持されるように設けられている複数の電気配線部材と、
隣接する前記電極端子の間に設けられた封止部材と、を含むインクジェット記録ヘッドであって、
前記絶縁部材は、前記電極端子にそれぞれ対応するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録素子基板上の絶縁部材に溝が設けられていることにより、記録素子基板の側部より塗布されて複数の接続端子間の毛細管力により広がることで接続部を封止する封止剤(第1の封止剤)が、絶縁部材により堰きとめられにくくなる。すなわち、封止剤が溝を通過することで封止剤の移動が円滑なものとなり、封止剤の不存在領域が残りにくくなる。
【0018】
従って、第2の封止剤を塗布した後に封止剤硬化のために加熱したとしても、大気に連通することは無く、インクを介して導通して、記録ヘッドの信頼性が低下する可能性を低減することができる。さらに、記録装置に装着した後の記録動作時に加わる外力などで封止剤に亀裂が入ってしまい、絶縁状態を確保できない可能性を低減することができる。この結果、記録ヘッドの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用可能な記録ヘッドの構成例を示す斜視図である。
【図2】(a)および(b)は、図1の記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】本発明を適用可能な記録素子基板の基本的な構成を説明するために一部を破断して示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る記録素子基板の模式的平面図である。
【図5】図4の記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図である。
【図6】図5のVI−VI線の模式的断面図である。
【図7】図5のVII−VII線の模式的断面図である。
【図8】第1の実施形態の構成に対して塗布された第1の封止剤が広がって行く状態を説明するための説明図である。
【図9】第1の実施形態の構成に対して塗布された第1の封止剤が広がって行く状態を説明するための説明図である。
【図10】第1の実施形態の構成に対して塗布された第1の封止剤が広がって行く状態を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る記録素子基板の模式的平面図である。
【図12】図11の記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図である。
【図13】従来の記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線の模式的断面図である。
【図15】図13のXV−XV線の模式的断面図である。
【図16】従来の記録素子基板に対して第1の封止材を塗布したときに発生する不都合を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明インクジェット記録ヘッド及びその製造方法の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドと言う)はインクタンクを分離不能に一体化してなるものである。そして、例えばカラーインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)がそれぞれ充填されたインク収納部および各インク収納部から供給されるカラーインクを吐出する各吐出部を有するものとすることができる。かかる記録ヘッドは、例えば記録装置のキャリッジ上に、位置決め手段および電気的接点によって固定支持されるとともに、キャリッジに対して着脱可能なカートリッジの形態とすることができる。そして、充填されているインクが消費されてなくなった場合は、記録ヘッドを交換するものとすることができる。
【0022】
(1)記録ヘッドの構成
図1、図2(a)および(b)を参照して、以下に実施形態で用いる記録ヘッドH1001の基本的構成を説明する。
【0023】
図1は記録ヘッドH1001の構成例を示す斜視図、図2(a)および(b)はその分解斜視図である。
【0024】
記録ヘッドH1001は、図1に示すように、インクジェット記録装置本体のキャリッジの装着位置に案内するための装着ガイドH1560、およびキャリッジの所定の装着位置に位置決めするための突き当て部H1570,H1590等を備えている。これら突き当て部によりキャリッジ102上に位置決めされることで、テープ状の電気配線基板(以下、電気配線テープと称する)H1301上の外部信号接続端子H1302とキャリッジ内に設けられた電気接続部のコンタクトピンとの電気的接触が可能となる。
【0025】
記録ヘッドH1001は記録素子基板H1101、電気配線テープH1301、その支持部材でもあるインク供給保持部材H1501、フィルタH1701〜H1703、インク吸収体H1601〜H1603、蓋部材H1901、及びシール部材H1801を具える。以下、これらのうちの主たる構成要素について詳述する。
【0026】
記録素子基板
図3は、本発明を実施するために用意される記録素子基板H1101の基本的な構成を説明するために一部を破断して示す斜視図である。本実施形態の記録素子基板は、電気信号に応じてインクに膜沸騰を生じさせるための熱エネルギを発生する電気熱変換素子を用いたものである。また、電気熱変換素子とインク吐出口とが対向するように配置され、基板の主平面に対して垂直な方向にインクを吐出させる形態のものである。
【0027】
図3に示すように、記録素子基板H1101は、厚み0.5mm〜1mmのSi基板H1110に、シアン、マゼンタおよびイエローの各色インク用の3個の長穴状のインク供給口H1102を並列に形成してなるものである。それぞれのインク供給口H1102を挟んでその両側には、電気信号に応じて膜沸騰をインクに生じさせるための熱エネルギを生成する電気熱変換素子H1103の列が1列ずつ配置されている。そして、各列間の電気熱変換素子同士は、配列方向に配列ピッチの1/2だけずれて配置されている。この記録素子基板H1101上に、樹脂材料にフォトリソグラフィ技術によって液路壁H1106や吐出口H1107を形成した吐出口形成部材H1109を、各電気熱変換素子と吐出口と位置合わせして接合することで、各色の吐出部H1108が構成される。
【0028】
Si基板H1110上には、電気熱変換素子H1103に電力を供給するAlなどの電気配線、記録データに応じて電気熱変換素子を駆動するためのロジック回路、およびこれら各部を外部と電気的に接続するための電極部H1104等が形成されている。さらに、電極部H1104には、Au等のメッキバンプ形態の電極端子H1105が形成されている。なお、電気熱変換素子H1103等は、既存の成膜技術を利用して形成することができる。
【0029】
なお、本発明の第1の実施形態に係る記録素子基板H1101は、以上のような基本構成に加え、後述するような特徴構成を具える。
【0030】
電気配線テープ
電気配線テープH1301は、ポリイミドのベース基材上に複数の電気配線部材となる銅箔の配線パターンを形成したものであり、これにより記録素子基板H1101に対してインクを吐出するための電気信号を印加する電気信号経路が形成される。電気配線テープH1301には記録素子基板H1101を組み込むための開口部H1303が形成され、この開口部H1303の縁からは、記録素子基板H1101の電極部H1104に接続される接続端子としてのリード端子H1304が突出して形成されている。また、電気配線テープH1301には、本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号接続端子H1302が形成されており、リード端子H1304と外部信号接続端子H1302は連続した銅箔等を含む導電性の配線パターンでつながれている。ここで、電気配線テープH1301はTABテープを用いて形成されており、リード端子H1304は露出するものとなっている。
【0031】
電気配線テープH1301と記録素子基板H1101の電気的接続は、例えば次のようになされている。すなわち、記録素子基板H1101の電極部H1104に形成された電極端子H1105と、対応する電気配線テープH1301のリード端子H1304とは、熱超音波圧着法により電気接合される。
【0032】
インク供給保持部材
吐出部を構成する記録素子基板H1101および電気配線部材を含んだ電気配線テープH1301を支持する支持部材としても機能するインク供給保持部材H1501は、樹脂を成形することにより形成されている。樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーをある比率で混入した樹脂材料を使用することが望ましい。
【0033】
インク供給保持部材H1501は、インクタンク機能とインク供給機能とを備えている。すなわち図2(b)に示すように、内部にシアン、マゼンタおよびイエローのインクを保持するための負圧を発生するインク吸収体H1601、H1602およびH1603をそれぞれ独立して収納するための空間を有することで、インクタンク機能を実現している。また、記録素子基板H1101の各インク供給口H1102にそれぞれインクを導くための独立した液路を形成する流路部材H1200を組み込むことでインク供給機能を実現している。
【0034】
流路部材H1200は記録素子基板H1101を配置するための凹部を有しており、その凹部には、記録素子基板H1101にシアン、マゼンタおよびイエローの各インクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。そして、記録素子基板H1101の各インク供給口H1102がインク供給保持部材H1501の各インク供給口H1201に連通するよう、記録素子基板H1101がインク供給保持部材H1501に対して位置精度良く接着固定される。
【0035】
また、流路部材H1200の凹部周囲の平面には、電気配線テープH1301の裏面の一部が接着固定される。記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気接続部分は、第1の封止剤H1307および第2の封止剤H1308(他の封止部材)により封止されており、これにより電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護している。第1の封止剤H1307は、主に電気配線テープH1301のリード端子H1304と記録素子基板の電極端子H1105との接続部の裏面側と記録素子基板の外周部分を封止する。一方、第2の封止剤H1308は、その接続部の表側、すなわち電極端子H1105およびリード端子H1304の上側を封止している。
【0036】
一方、電気配線テープH1301の外部信号接続端子H1302が配置される領域の側は、インク供給保持部材H1501のインク供給口H1201を有する面にほぼ直交した本体側面に沿って折り曲げられる。そして、当該領域のまわりの数箇所に設けた孔に本体側面に突設したピンを挿通し、熱加締めを施すことによって電気配線テープH1301がインク供給保持部材H1501に固定される。あるいは、当該領域の裏面側を本体側面に接着することによって固定が行われるものでもよい。
【0037】
(2)記録素子基板の特徴構成
図4〜図7を用い、本実施形態の特徴構成を詳述する。ここで、図4は本実施形態に係る記録素子基板の模式的平面図、図5は記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図、図6および図7は、それぞれ、図5のVI−VI線およびVII−VII線の模式的断面図である。なお、図7には、第1の封止剤HH1307および第2の封止剤H1308の塗布状態が示されている。
【0038】
本実施形態の絶縁部材(絶縁部)110は、リード端子H1304の配列方向に延在する一体の障壁層として形成されたものではなく、当該方向に沿って複数の凸状部111が列状に配列されてなるものである。従って、隣接する凸状部111間にはリード端子の延在方向と平行に溝112が形成されることになる。凸状部111は記録素子基板H1101上の、リード端子H1304の延在部の下方に位置してリード端子H1304に接することで、リード端子延在部と記録素子基板とを電気的絶縁する絶縁部である。凸状部111および溝112を有する本実施形態の絶縁部は、電気熱変換素子H1103毎に吐出口ないしこれに至る液路を形成する樹脂材料からなる構造体(すなわち吐出口形成部材H1109)と同様に、フォトリソグラフィ技術によって形成可能である。
【0039】
本実施形態において凸状部111は、略直方体形状を有しており、その寸法は、記録素子基板H1101上の配設位置およびリード端子H1304の寸法,弾性特性等を考慮して適宜定めることができる。
【0040】
例えば、絶縁部110から、配列方向と直交する方向(リード端子延在方向)の記録素子基板101の端部までの長さA(図4)が適切でない場合には、リード端子H1304と記録素子基板H1101とが接触し、絶縁状態を確保できない可能性がある。すなわち、長さAが過小である(凸状部111が記録素子基板端部側に偏倚している)場合には、凸状部111から電極端子H1105に向かうリード端子延在部分が記録素子基板H1101に接触する可能性がある。一方、長さAが過大である(凸状部111が電極端子側に偏倚している)場合には、絶縁部111から電気配線テープH1301に向かうリード端子延在部分が記録素子基板H1101の端部に接触する可能性がある。これらを避けるために、本実施形態では長さAを40μm程度としている。
【0041】
また、配列方向と交差(直交)する方向(リード端子延在方向)の凸状部111の幅B(図4)が狭いと、電極端子H1105とリード端子H1304との接続によって生じる応力により凸状部111が変形したり、横倒し状態になって破損したりする可能性がある。これを避けるために、本実施形態では幅Bを30μm程度としている。
【0042】
さらに、凸状部111の厚みG(図6)が適切でない場合にも、次のような不都合が生じ得る。すなわち、厚みGが過小であれば、凸状部111から電気配線テープH1301に向かうリード端子延在部分が記録素子基板H1101の端部に接触する可能性がある。一方、厚みGが過大であれば、リード端子H1304の変形が大きくなり、電極端子H1105に対するリード端子H1304の接続部および凸状部111に加わる応力が大きくなる。すると、リード端子H1304の接続部が剥れたり、凸状部111に亀裂が生じる可能性がある。そこでこれらを考慮し、本実施形態では、厚みGを25μm程度としている。
【0043】
また、凸状部111と、電極端子H1105に対するリード端子H1304の接続部の端部(凸状部111側の端部)までの距離H(図7)が短い場合にも、凸状部111の厚みGが過大である場合と同様の不都合が発生し得る。そこでこれを考慮し、本実施形態では、距離Hを60μm程度としている。
【0044】
さらに本実施形態では、リード端子H1304の延在方向において、各電極端子H1105と各凸状部111とが整列している。換言すれば、隣接するリード端子H1304間の間隙に対応する位置に溝112が設けられている。ここで、溝112の幅が過小であれば、第1の封止剤H1307の円滑な広がりを阻害する(従来と同様の堰き止めを生じさせる)可能性がある。一方、これが過大であれば、すなわち配列方向における凸状部111の幅が狭小であれば、リード端子H1304が溝112に落ち込む可能性がある。そこで本実施形態では、隣接する電極端子H1105間の距離を40μmとする一方、溝112の幅I(図4)もこれと同等の距離としている。しかしリード端子H1304の落ち込みを有効に防止するためには、隣接する電極端子H1105間の距離よりも溝112の幅Iを若干小さくすることが望ましい。
【0045】
上述したように、記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気接続部分は、第1の封止剤H1307および第2の封止剤H1308により封止され、これにより電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護する機能を果たす。そして図7に示すように、第1の封止剤H1307は主として記録素子基板101の外周部分を封止するとともに、概してリード端子の裏側から電気配線テープH1301のリード端子H1304と記録素子基板H1101の電極部H1104との接続部を封止する。一方、第2の封止剤H1308は、概してリード端子の表側から接続部を封止する。
【0046】
図8〜図10は、以上の構成に対して塗布された第1の封止剤H1307が広がって行く状態を説明するための説明図である。
【0047】
第1の封止剤H1307は、記録素子基板H1101と、これが配置された流路部材H1200の凹部との間隙、すなわち記録素子基板H1101の周縁にディスペンス法を用いて塗布される。そして、記録素子基板H1101の周側面に沿って徐々に広がった後、リード端子H1304間の毛細管力により電極端子H1105の方向に向かって流入し、リード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部付近まで広がる。図8は、矢印で示すように、第1の封止剤H1307が記録素子基板H1101の端部へ向けて広がりつつある様子を示している。また、図9は、記録素子基板H1101端部から、リード端子H1304間の毛細管力により、第1の封止剤H1307が記録素子基板H1101上の電極端子H1105へ向けて広がりつつある様子を示している。ここで、第1の封止剤H1307は、凸状部111間に存在する溝112を通過することが可能である。このため、リード端子H1304と記録素子基板H1101との間や、リード端子H1304間等に、気泡あるいは第1の封止剤H1307が充填されない領域113(図16参照)が残りづらくなる。そして図10は、リード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部まで第1の封止剤H1307が広がり、ほぼ封止を完了した様子を示している。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る絶縁部110は、記録素子基板H1101の端部に沿って一体に延在する部材ではなく、リード端子H1304および電極端子H1105に対応して分離した凸状部111を有しており、凸状部111間には溝112が形成される。従って、リード端子H1304間の毛細管力によりリード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部付近まで広がろうとする第1の封止剤H1307は、絶縁部110により堰きとめられることがない。すなわち、第1の封止剤H1307が溝112を伝い、リード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部に到達することで、この部位に充分充填することが可能となる。よって、リード端子H1304と記録素子基板H1101との間や、リード端子H1304間等に、気泡あるいは第1の封止剤H1307が充填されない領域113が残りづらくなる。
【0049】
従って、第2の封止剤H1308を塗布した後の工程である封止剤硬化のための加熱工程にて、領域113における空気が膨張ないし破裂し、第1の封止剤H1307の上に塗布された第2の封止剤H1308まで突き破ってしまう不都合が生じることがない。この結果、電気接続部が露出することがなくなるため、インクを介して導通し、記録ヘッドの信頼性を低下させてしまう可能性を低減できる。さらに、記録ヘッドの構造を脆弱にする領域113が存在しないため、記録装置に装着した後の記録動作時に加わる外力などで封止剤に亀裂が入ることを防止することができ、絶縁状態を確保することができる。
【0050】
加えて、従来の構成を採用した場合には、上記領域113を残さないようにする観点から、封止剤の塗布工程における塗布位置や塗布速度等の条件に対するマージンが少なくなる。これに対し、本実施形態によれば、これらの条件設定が容易となり、記録ヘッドの生産性を大幅に向上することが可能となる。
【0051】
さらに加えて、上記領域113の発生による生産工程での記録ヘッドの不具合も格段に少なくなることから、記録ヘッドの生産性を一層向上することが可能となる。
【0052】
(3)第2の実施形態
図11および図12を用い、本発明の第2の実施形態の特徴構成を詳述する。ここで、図11は第2の実施形態に係る記録素子基板の模式的平面図、図12は記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図であり、上記第1の実施形態と同様の構成要素には対応箇所に同一の符号を付してある。
【0053】
上記第1の実施形態では、それぞれ等しい幅をもつ記録素子基板H1101の電極端子H1105および電気配線テープH1301のリード端子H1304がそれぞれ均一な間隔をもって配列された構成について説明した。しかし本発明は、電極端子H1105およびリード端子H1304のそれぞれの幅と間隔とが一様でない場合にも、図11および図12に示すように対応できるものである。すなわち、電極端子H1105およびリード端子H1304の幅と間隔とに合わせて凸状部111ないしは溝112を設けることができる。なお、その他の各部寸法、例えば凸状部111から、リード端子延在方向の記録素子基板H1101の端部までの長さや、凸状部111の厚みについては、第1の実施形態とほぼ同様とすることができる。
【0054】
本実施形態においても、第1の封止剤H1307は、記録素子基板H1101と、これが配置された流路部材H1200の凹部との間隙、すなわち記録素子基板H1101の周縁から塗布される。そして、記録素子基板H1101の周側面に沿って徐々に広がった後、リード端子H1304間の毛細管力により、リード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部付近まで広がる。この際、第1の封止剤H1307は凸状部111間に設けた溝112を通過することが可能であるため、上記領域113(図16参照)が残りづらくなる。従って、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(4)その他
なお、以上の各実施形態においては、電気配線テープの複数の接続端子(リード端子)のそれぞれについて絶縁用の凸状部を設けるものとした。すなわち、すなわち隣接するすべてのリード端子の間の位置に溝が設けられるものとした。しかし溝の機能は、リード端子の先端部と記録素子基板の電極端子との接続部に向かう第1の封止剤の広がりを円滑化し、第1の封止剤が堰き止められることによる封止剤不存在領域が残らないようにすることにある。従って、この機能が阻害されないものであれば、少なくとも一部のリード端子間に溝が設けられるもの、すなわちいくつかの連続するいくつかのリード端子が1つの凸状部でまとめて絶縁されているものでもよい。
【0056】
また、以上では、シアン、マゼンタおよびイエローの3色のインクを吐出させるカラー用の記録素子基板H1101ないしはこれを用いる記録ヘッドH1001の構成に本発明を適用した例について説明した。しかし、記録素子基板ないしは記録ヘッドにおいて用いるインクの色調(色および濃度)の種類や数については、適宜定め得ることは言うまでもない。
【0057】
さらに、上例ではインク収納部分を分離不能に一体化してなる記録ヘッドに本発明を適用した場合を例示した。しかし本発明は、気泡が残る、あるいは第1の封止剤が充填されない領域の発生を防止することで絶縁状態を確保し、記録素子基板ひいては記録ヘッドの信頼性を高めることを主たる目的とするものである。従って、かかる観点からは、インクタンクを分離可能に一体化してなる、もしくはインクタンクとは別体であるような記録ヘッドの形態にも有効に適用できるものである。
【0058】
加えて、上例では、インクの吐出方向に対して実質的に垂直な方向に主平面を有し、その主平面に電気熱変換素子が配された形態の記録素子基板を用いる場合について説明した。しかし本発明は、インクの吐出方向に対して実質的に平行な方向に主平面を有し、その主平面に電気熱変換素子が配された形態の記録素子基板を用いる場合であっても適用できることは勿論である。
【0059】
さらに加えて、インク吐出方式としても、上述のような電気熱変換素子を用いるもの、すなわちインクを吐出するために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生するもののほか、ピエゾ素子などにより機械的エネルギを発生するものを採用することも可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出して記録動作を行うインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドおよび該インクジェット記録ヘッド用の記録素子基板に関する。なお、本発明のインクジェット記録ヘッドは、一般的なプリント装置のほか、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、あるいは、これらの装置を複合した多機能記録装置等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドとも言う)の構成としては、特許文献1などに開示されたものがある。
【0003】
かかる特許文献1に開示されている記録ヘッドの主な構成要素として、インクを吐出するために利用されるエネルギを発生するエネルギ発生素子と、そのエネルギ発生素子に電気信号を与えるための複数の電極端子とを具備する記録素子基板がある。一方、記録素子基板には、電気配線基板が接続される。電気配線基板は、記録素子基板を囲む開口部と、開口部内に突出して記録素子基板の電極端子と接続する接続端子(リード端子)と、外部から記録素子の駆動信号を含む電気信号を受容する接続端子と、これら端子間で電気信号を伝送する配線を具備する。そして、これらの記録素子基板および電気配線基板はベース部材によって支持固定されている。
【0004】
例えば基板の主平面に対して垂直な方向にインクを吐出させる形態の記録素子基板では、その表面にエネルギ発生素子が形成され、さらにそのエネルギ発生素子に対応するインク吐出口が形成された吐出口形成部材が配置される。かかる記録素子基板では、その表裏両面を貫通して記録素子上にインクを供給するためのインク供給穴が設けられる。そして記録素子基板は、その裏面側においてインク供給穴がインクタンクからのインク流路形成部材に連通する状態に保持され、基板周側面が封止剤(第1の封止剤)によって封止されることで、インクの漏洩が防止されるようにしている。
【0005】
記録素子基板の電極端子と電気配線基板のリード端子とは、TAB実装技術により電気接続され、当該電気接続部がさらに第2の封止剤によって封止されることで、インクによる腐食や外力から保護している。
【0006】
第1の封止剤は記録素子基板の側面部から塗布され、周側面に沿って徐々に広がった後、毛細管力により電気接続部付近まで広がる。また、第2の封止剤は、第1の封止剤の塗布後に、主に電気接続部の上面に塗布されることになる。
【0007】
ところで、電気配線基板のリード端子を接続する際には、リード端子が記録素子基板の電極端子以外の記録素子基板上の部位に接する可能性がある。このため、特許文献1においては、記録素子基板上の、電極端子に接続されるリード端子先端部までのリード端子延在部の下方に位置する部位に障壁層の部分を設けることで、リード端子延在部と記録素子基板とを電気的絶縁する技術を開示している。
【0008】
図13〜図15を用い、かかる特許文献1に開示の技術を説明する。図13は記録素子基板と電気配線部材との接続部分を示す模式的平面図、図14および図15は、それぞれ、そのXIV−XIV線およびXV−XV線の模式的断面図である。
【0009】
これらの図において、H1101は記録素子基板、H1105はその上に設けられた電極端子である。H1109は吐出口H1107が形成された吐出口形成部材であり、記録素子基板H1101の表面に形成されたエネルギ発生素子に対して吐出口H1107を位置合わせした状態で記録素子基板H1101に対して設けられる。H1301は記録素子基板H1101を露出させる開口H1303を有する電気配線基板であり、開口H1303内にリード端子H1304が延在して、その先端部が電極端子H1105に接続される。そして、記録素子基板H1101上の、リード端子H1304の延在部の下方に位置する部位には、リード端子H1304の配列方向に沿って延在する一体の障壁層(絶縁部)110が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−023997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示の構成には、以下に述べるような問題点があった。
【0012】
図16を用いてこれを説明する。記録素子基板H1101の周側面は第1の封止剤H1307によって封止されるが、この際、電極端子H1105とリード端子H1304との接続部にも第1の封止剤H1307が広がって封止される。しかし、特許文献1のようにリード端子H1304の配列方向に沿って一体の絶縁部110が設けられている場合、毛細管力により電気接続部付近にまで広がるべき第1の封止剤H1307が、絶縁部110により塞き止められることがあった。その結果、電気接続部の一部に第1の封止剤が充分に充填されず、リード端子H1304と記録素子基板H101の間や、リード端子間等に、気泡が存在する、ないしは第1の封止剤H1307が充填されない領域113として残ってしまうことがあった。
【0013】
この領域113が存在したまま第2の封止剤を塗布すると、当該塗布後の工程である封止剤硬化のための加熱工程にて、空気が膨張して外気と連通するなどする可能性がある。このように外気と連通するとインクが流入して記録ヘッドの電気的信頼性を低下させる可能性あった。また、記録装置に装着した後の記録動作時に加わる外力などで封止剤に亀裂が入ってしまい、同様に電気的信頼性を低下させる可能性があった。
【0014】
よって本発明は、気泡が存在する、ないしは第1の封止剤が充填されない領域が生じないようにし、記録ヘッドの電気的信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのために本発明インクジェット記録ヘッドの製造方法は、インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子と、前記素子と電気的に接続され、列状に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極端子に沿って、列状に設けられた複数の絶縁部材と、を備えた面を有を有し、前記複数の絶縁部材が前記複数の電極端子より前記面の端に近い側に設けられている記録素子基板を用意する工程と、
外部の電気配線基板と前記電極端子とを電気的に接続する複数の電気配線部材を、前記電極端子と接触し、かつ前記複数の絶縁部材によって支持されるように設ける工程と、
封止部材が隣接する前記電気配線部材の間に達するように、前記記録素子基板の周縁に前記封止部材を塗布し、前記封止部材を隣接する前記電気配線部材の間の毛細管力を用いて、隣接する前記電極端子の間に、前記封止部材を設ける工程と、
を具えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明インクジェット記録ヘッドは、インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子と、前記素子と電気的に接続され、列状に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極端子に沿って、列状に設けられた複数の絶縁部材と、を備えた面を有し、前記複数の絶縁部材が前記複数の電極端子より前記面の端に近い側に設けられている記録素子基板と、
前記電極端子と接触し、外部の電気配線基板と前記電極端子とを電気的に接続するとともに、前記複数の絶縁部材によって支持されるように設けられている複数の電気配線部材と、
隣接する前記電極端子の間に設けられた封止部材と、を含むインクジェット記録ヘッドであって、
前記絶縁部材は、前記電極端子にそれぞれ対応するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録素子基板上の絶縁部材に溝が設けられていることにより、記録素子基板の側部より塗布されて複数の接続端子間の毛細管力により広がることで接続部を封止する封止剤(第1の封止剤)が、絶縁部材により堰きとめられにくくなる。すなわち、封止剤が溝を通過することで封止剤の移動が円滑なものとなり、封止剤の不存在領域が残りにくくなる。
【0018】
従って、第2の封止剤を塗布した後に封止剤硬化のために加熱したとしても、大気に連通することは無く、インクを介して導通して、記録ヘッドの信頼性が低下する可能性を低減することができる。さらに、記録装置に装着した後の記録動作時に加わる外力などで封止剤に亀裂が入ってしまい、絶縁状態を確保できない可能性を低減することができる。この結果、記録ヘッドの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用可能な記録ヘッドの構成例を示す斜視図である。
【図2】(a)および(b)は、図1の記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】本発明を適用可能な記録素子基板の基本的な構成を説明するために一部を破断して示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る記録素子基板の模式的平面図である。
【図5】図4の記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図である。
【図6】図5のVI−VI線の模式的断面図である。
【図7】図5のVII−VII線の模式的断面図である。
【図8】第1の実施形態の構成に対して塗布された第1の封止剤が広がって行く状態を説明するための説明図である。
【図9】第1の実施形態の構成に対して塗布された第1の封止剤が広がって行く状態を説明するための説明図である。
【図10】第1の実施形態の構成に対して塗布された第1の封止剤が広がって行く状態を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る記録素子基板の模式的平面図である。
【図12】図11の記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図である。
【図13】従来の記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線の模式的断面図である。
【図15】図13のXV−XV線の模式的断面図である。
【図16】従来の記録素子基板に対して第1の封止材を塗布したときに発生する不都合を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明インクジェット記録ヘッド及びその製造方法の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドと言う)はインクタンクを分離不能に一体化してなるものである。そして、例えばカラーインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)がそれぞれ充填されたインク収納部および各インク収納部から供給されるカラーインクを吐出する各吐出部を有するものとすることができる。かかる記録ヘッドは、例えば記録装置のキャリッジ上に、位置決め手段および電気的接点によって固定支持されるとともに、キャリッジに対して着脱可能なカートリッジの形態とすることができる。そして、充填されているインクが消費されてなくなった場合は、記録ヘッドを交換するものとすることができる。
【0022】
(1)記録ヘッドの構成
図1、図2(a)および(b)を参照して、以下に実施形態で用いる記録ヘッドH1001の基本的構成を説明する。
【0023】
図1は記録ヘッドH1001の構成例を示す斜視図、図2(a)および(b)はその分解斜視図である。
【0024】
記録ヘッドH1001は、図1に示すように、インクジェット記録装置本体のキャリッジの装着位置に案内するための装着ガイドH1560、およびキャリッジの所定の装着位置に位置決めするための突き当て部H1570,H1590等を備えている。これら突き当て部によりキャリッジ102上に位置決めされることで、テープ状の電気配線基板(以下、電気配線テープと称する)H1301上の外部信号接続端子H1302とキャリッジ内に設けられた電気接続部のコンタクトピンとの電気的接触が可能となる。
【0025】
記録ヘッドH1001は記録素子基板H1101、電気配線テープH1301、その支持部材でもあるインク供給保持部材H1501、フィルタH1701〜H1703、インク吸収体H1601〜H1603、蓋部材H1901、及びシール部材H1801を具える。以下、これらのうちの主たる構成要素について詳述する。
【0026】
記録素子基板
図3は、本発明を実施するために用意される記録素子基板H1101の基本的な構成を説明するために一部を破断して示す斜視図である。本実施形態の記録素子基板は、電気信号に応じてインクに膜沸騰を生じさせるための熱エネルギを発生する電気熱変換素子を用いたものである。また、電気熱変換素子とインク吐出口とが対向するように配置され、基板の主平面に対して垂直な方向にインクを吐出させる形態のものである。
【0027】
図3に示すように、記録素子基板H1101は、厚み0.5mm〜1mmのSi基板H1110に、シアン、マゼンタおよびイエローの各色インク用の3個の長穴状のインク供給口H1102を並列に形成してなるものである。それぞれのインク供給口H1102を挟んでその両側には、電気信号に応じて膜沸騰をインクに生じさせるための熱エネルギを生成する電気熱変換素子H1103の列が1列ずつ配置されている。そして、各列間の電気熱変換素子同士は、配列方向に配列ピッチの1/2だけずれて配置されている。この記録素子基板H1101上に、樹脂材料にフォトリソグラフィ技術によって液路壁H1106や吐出口H1107を形成した吐出口形成部材H1109を、各電気熱変換素子と吐出口と位置合わせして接合することで、各色の吐出部H1108が構成される。
【0028】
Si基板H1110上には、電気熱変換素子H1103に電力を供給するAlなどの電気配線、記録データに応じて電気熱変換素子を駆動するためのロジック回路、およびこれら各部を外部と電気的に接続するための電極部H1104等が形成されている。さらに、電極部H1104には、Au等のメッキバンプ形態の電極端子H1105が形成されている。なお、電気熱変換素子H1103等は、既存の成膜技術を利用して形成することができる。
【0029】
なお、本発明の第1の実施形態に係る記録素子基板H1101は、以上のような基本構成に加え、後述するような特徴構成を具える。
【0030】
電気配線テープ
電気配線テープH1301は、ポリイミドのベース基材上に複数の電気配線部材となる銅箔の配線パターンを形成したものであり、これにより記録素子基板H1101に対してインクを吐出するための電気信号を印加する電気信号経路が形成される。電気配線テープH1301には記録素子基板H1101を組み込むための開口部H1303が形成され、この開口部H1303の縁からは、記録素子基板H1101の電極部H1104に接続される接続端子としてのリード端子H1304が突出して形成されている。また、電気配線テープH1301には、本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号接続端子H1302が形成されており、リード端子H1304と外部信号接続端子H1302は連続した銅箔等を含む導電性の配線パターンでつながれている。ここで、電気配線テープH1301はTABテープを用いて形成されており、リード端子H1304は露出するものとなっている。
【0031】
電気配線テープH1301と記録素子基板H1101の電気的接続は、例えば次のようになされている。すなわち、記録素子基板H1101の電極部H1104に形成された電極端子H1105と、対応する電気配線テープH1301のリード端子H1304とは、熱超音波圧着法により電気接合される。
【0032】
インク供給保持部材
吐出部を構成する記録素子基板H1101および電気配線部材を含んだ電気配線テープH1301を支持する支持部材としても機能するインク供給保持部材H1501は、樹脂を成形することにより形成されている。樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーをある比率で混入した樹脂材料を使用することが望ましい。
【0033】
インク供給保持部材H1501は、インクタンク機能とインク供給機能とを備えている。すなわち図2(b)に示すように、内部にシアン、マゼンタおよびイエローのインクを保持するための負圧を発生するインク吸収体H1601、H1602およびH1603をそれぞれ独立して収納するための空間を有することで、インクタンク機能を実現している。また、記録素子基板H1101の各インク供給口H1102にそれぞれインクを導くための独立した液路を形成する流路部材H1200を組み込むことでインク供給機能を実現している。
【0034】
流路部材H1200は記録素子基板H1101を配置するための凹部を有しており、その凹部には、記録素子基板H1101にシアン、マゼンタおよびイエローの各インクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。そして、記録素子基板H1101の各インク供給口H1102がインク供給保持部材H1501の各インク供給口H1201に連通するよう、記録素子基板H1101がインク供給保持部材H1501に対して位置精度良く接着固定される。
【0035】
また、流路部材H1200の凹部周囲の平面には、電気配線テープH1301の裏面の一部が接着固定される。記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気接続部分は、第1の封止剤H1307および第2の封止剤H1308(他の封止部材)により封止されており、これにより電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護している。第1の封止剤H1307は、主に電気配線テープH1301のリード端子H1304と記録素子基板の電極端子H1105との接続部の裏面側と記録素子基板の外周部分を封止する。一方、第2の封止剤H1308は、その接続部の表側、すなわち電極端子H1105およびリード端子H1304の上側を封止している。
【0036】
一方、電気配線テープH1301の外部信号接続端子H1302が配置される領域の側は、インク供給保持部材H1501のインク供給口H1201を有する面にほぼ直交した本体側面に沿って折り曲げられる。そして、当該領域のまわりの数箇所に設けた孔に本体側面に突設したピンを挿通し、熱加締めを施すことによって電気配線テープH1301がインク供給保持部材H1501に固定される。あるいは、当該領域の裏面側を本体側面に接着することによって固定が行われるものでもよい。
【0037】
(2)記録素子基板の特徴構成
図4〜図7を用い、本実施形態の特徴構成を詳述する。ここで、図4は本実施形態に係る記録素子基板の模式的平面図、図5は記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図、図6および図7は、それぞれ、図5のVI−VI線およびVII−VII線の模式的断面図である。なお、図7には、第1の封止剤HH1307および第2の封止剤H1308の塗布状態が示されている。
【0038】
本実施形態の絶縁部材(絶縁部)110は、リード端子H1304の配列方向に延在する一体の障壁層として形成されたものではなく、当該方向に沿って複数の凸状部111が列状に配列されてなるものである。従って、隣接する凸状部111間にはリード端子の延在方向と平行に溝112が形成されることになる。凸状部111は記録素子基板H1101上の、リード端子H1304の延在部の下方に位置してリード端子H1304に接することで、リード端子延在部と記録素子基板とを電気的絶縁する絶縁部である。凸状部111および溝112を有する本実施形態の絶縁部は、電気熱変換素子H1103毎に吐出口ないしこれに至る液路を形成する樹脂材料からなる構造体(すなわち吐出口形成部材H1109)と同様に、フォトリソグラフィ技術によって形成可能である。
【0039】
本実施形態において凸状部111は、略直方体形状を有しており、その寸法は、記録素子基板H1101上の配設位置およびリード端子H1304の寸法,弾性特性等を考慮して適宜定めることができる。
【0040】
例えば、絶縁部110から、配列方向と直交する方向(リード端子延在方向)の記録素子基板101の端部までの長さA(図4)が適切でない場合には、リード端子H1304と記録素子基板H1101とが接触し、絶縁状態を確保できない可能性がある。すなわち、長さAが過小である(凸状部111が記録素子基板端部側に偏倚している)場合には、凸状部111から電極端子H1105に向かうリード端子延在部分が記録素子基板H1101に接触する可能性がある。一方、長さAが過大である(凸状部111が電極端子側に偏倚している)場合には、絶縁部111から電気配線テープH1301に向かうリード端子延在部分が記録素子基板H1101の端部に接触する可能性がある。これらを避けるために、本実施形態では長さAを40μm程度としている。
【0041】
また、配列方向と交差(直交)する方向(リード端子延在方向)の凸状部111の幅B(図4)が狭いと、電極端子H1105とリード端子H1304との接続によって生じる応力により凸状部111が変形したり、横倒し状態になって破損したりする可能性がある。これを避けるために、本実施形態では幅Bを30μm程度としている。
【0042】
さらに、凸状部111の厚みG(図6)が適切でない場合にも、次のような不都合が生じ得る。すなわち、厚みGが過小であれば、凸状部111から電気配線テープH1301に向かうリード端子延在部分が記録素子基板H1101の端部に接触する可能性がある。一方、厚みGが過大であれば、リード端子H1304の変形が大きくなり、電極端子H1105に対するリード端子H1304の接続部および凸状部111に加わる応力が大きくなる。すると、リード端子H1304の接続部が剥れたり、凸状部111に亀裂が生じる可能性がある。そこでこれらを考慮し、本実施形態では、厚みGを25μm程度としている。
【0043】
また、凸状部111と、電極端子H1105に対するリード端子H1304の接続部の端部(凸状部111側の端部)までの距離H(図7)が短い場合にも、凸状部111の厚みGが過大である場合と同様の不都合が発生し得る。そこでこれを考慮し、本実施形態では、距離Hを60μm程度としている。
【0044】
さらに本実施形態では、リード端子H1304の延在方向において、各電極端子H1105と各凸状部111とが整列している。換言すれば、隣接するリード端子H1304間の間隙に対応する位置に溝112が設けられている。ここで、溝112の幅が過小であれば、第1の封止剤H1307の円滑な広がりを阻害する(従来と同様の堰き止めを生じさせる)可能性がある。一方、これが過大であれば、すなわち配列方向における凸状部111の幅が狭小であれば、リード端子H1304が溝112に落ち込む可能性がある。そこで本実施形態では、隣接する電極端子H1105間の距離を40μmとする一方、溝112の幅I(図4)もこれと同等の距離としている。しかしリード端子H1304の落ち込みを有効に防止するためには、隣接する電極端子H1105間の距離よりも溝112の幅Iを若干小さくすることが望ましい。
【0045】
上述したように、記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気接続部分は、第1の封止剤H1307および第2の封止剤H1308により封止され、これにより電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護する機能を果たす。そして図7に示すように、第1の封止剤H1307は主として記録素子基板101の外周部分を封止するとともに、概してリード端子の裏側から電気配線テープH1301のリード端子H1304と記録素子基板H1101の電極部H1104との接続部を封止する。一方、第2の封止剤H1308は、概してリード端子の表側から接続部を封止する。
【0046】
図8〜図10は、以上の構成に対して塗布された第1の封止剤H1307が広がって行く状態を説明するための説明図である。
【0047】
第1の封止剤H1307は、記録素子基板H1101と、これが配置された流路部材H1200の凹部との間隙、すなわち記録素子基板H1101の周縁にディスペンス法を用いて塗布される。そして、記録素子基板H1101の周側面に沿って徐々に広がった後、リード端子H1304間の毛細管力により電極端子H1105の方向に向かって流入し、リード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部付近まで広がる。図8は、矢印で示すように、第1の封止剤H1307が記録素子基板H1101の端部へ向けて広がりつつある様子を示している。また、図9は、記録素子基板H1101端部から、リード端子H1304間の毛細管力により、第1の封止剤H1307が記録素子基板H1101上の電極端子H1105へ向けて広がりつつある様子を示している。ここで、第1の封止剤H1307は、凸状部111間に存在する溝112を通過することが可能である。このため、リード端子H1304と記録素子基板H1101との間や、リード端子H1304間等に、気泡あるいは第1の封止剤H1307が充填されない領域113(図16参照)が残りづらくなる。そして図10は、リード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部まで第1の封止剤H1307が広がり、ほぼ封止を完了した様子を示している。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る絶縁部110は、記録素子基板H1101の端部に沿って一体に延在する部材ではなく、リード端子H1304および電極端子H1105に対応して分離した凸状部111を有しており、凸状部111間には溝112が形成される。従って、リード端子H1304間の毛細管力によりリード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部付近まで広がろうとする第1の封止剤H1307は、絶縁部110により堰きとめられることがない。すなわち、第1の封止剤H1307が溝112を伝い、リード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部に到達することで、この部位に充分充填することが可能となる。よって、リード端子H1304と記録素子基板H1101との間や、リード端子H1304間等に、気泡あるいは第1の封止剤H1307が充填されない領域113が残りづらくなる。
【0049】
従って、第2の封止剤H1308を塗布した後の工程である封止剤硬化のための加熱工程にて、領域113における空気が膨張ないし破裂し、第1の封止剤H1307の上に塗布された第2の封止剤H1308まで突き破ってしまう不都合が生じることがない。この結果、電気接続部が露出することがなくなるため、インクを介して導通し、記録ヘッドの信頼性を低下させてしまう可能性を低減できる。さらに、記録ヘッドの構造を脆弱にする領域113が存在しないため、記録装置に装着した後の記録動作時に加わる外力などで封止剤に亀裂が入ることを防止することができ、絶縁状態を確保することができる。
【0050】
加えて、従来の構成を採用した場合には、上記領域113を残さないようにする観点から、封止剤の塗布工程における塗布位置や塗布速度等の条件に対するマージンが少なくなる。これに対し、本実施形態によれば、これらの条件設定が容易となり、記録ヘッドの生産性を大幅に向上することが可能となる。
【0051】
さらに加えて、上記領域113の発生による生産工程での記録ヘッドの不具合も格段に少なくなることから、記録ヘッドの生産性を一層向上することが可能となる。
【0052】
(3)第2の実施形態
図11および図12を用い、本発明の第2の実施形態の特徴構成を詳述する。ここで、図11は第2の実施形態に係る記録素子基板の模式的平面図、図12は記録素子基板と電気配線テープとの接続部分を示す模式的平面図であり、上記第1の実施形態と同様の構成要素には対応箇所に同一の符号を付してある。
【0053】
上記第1の実施形態では、それぞれ等しい幅をもつ記録素子基板H1101の電極端子H1105および電気配線テープH1301のリード端子H1304がそれぞれ均一な間隔をもって配列された構成について説明した。しかし本発明は、電極端子H1105およびリード端子H1304のそれぞれの幅と間隔とが一様でない場合にも、図11および図12に示すように対応できるものである。すなわち、電極端子H1105およびリード端子H1304の幅と間隔とに合わせて凸状部111ないしは溝112を設けることができる。なお、その他の各部寸法、例えば凸状部111から、リード端子延在方向の記録素子基板H1101の端部までの長さや、凸状部111の厚みについては、第1の実施形態とほぼ同様とすることができる。
【0054】
本実施形態においても、第1の封止剤H1307は、記録素子基板H1101と、これが配置された流路部材H1200の凹部との間隙、すなわち記録素子基板H1101の周縁から塗布される。そして、記録素子基板H1101の周側面に沿って徐々に広がった後、リード端子H1304間の毛細管力により、リード端子H1304の先端と電極端子H1105との接続部付近まで広がる。この際、第1の封止剤H1307は凸状部111間に設けた溝112を通過することが可能であるため、上記領域113(図16参照)が残りづらくなる。従って、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(4)その他
なお、以上の各実施形態においては、電気配線テープの複数の接続端子(リード端子)のそれぞれについて絶縁用の凸状部を設けるものとした。すなわち、すなわち隣接するすべてのリード端子の間の位置に溝が設けられるものとした。しかし溝の機能は、リード端子の先端部と記録素子基板の電極端子との接続部に向かう第1の封止剤の広がりを円滑化し、第1の封止剤が堰き止められることによる封止剤不存在領域が残らないようにすることにある。従って、この機能が阻害されないものであれば、少なくとも一部のリード端子間に溝が設けられるもの、すなわちいくつかの連続するいくつかのリード端子が1つの凸状部でまとめて絶縁されているものでもよい。
【0056】
また、以上では、シアン、マゼンタおよびイエローの3色のインクを吐出させるカラー用の記録素子基板H1101ないしはこれを用いる記録ヘッドH1001の構成に本発明を適用した例について説明した。しかし、記録素子基板ないしは記録ヘッドにおいて用いるインクの色調(色および濃度)の種類や数については、適宜定め得ることは言うまでもない。
【0057】
さらに、上例ではインク収納部分を分離不能に一体化してなる記録ヘッドに本発明を適用した場合を例示した。しかし本発明は、気泡が残る、あるいは第1の封止剤が充填されない領域の発生を防止することで絶縁状態を確保し、記録素子基板ひいては記録ヘッドの信頼性を高めることを主たる目的とするものである。従って、かかる観点からは、インクタンクを分離可能に一体化してなる、もしくはインクタンクとは別体であるような記録ヘッドの形態にも有効に適用できるものである。
【0058】
加えて、上例では、インクの吐出方向に対して実質的に垂直な方向に主平面を有し、その主平面に電気熱変換素子が配された形態の記録素子基板を用いる場合について説明した。しかし本発明は、インクの吐出方向に対して実質的に平行な方向に主平面を有し、その主平面に電気熱変換素子が配された形態の記録素子基板を用いる場合であっても適用できることは勿論である。
【0059】
さらに加えて、インク吐出方式としても、上述のような電気熱変換素子を用いるもの、すなわちインクを吐出するために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生するもののほか、ピエゾ素子などにより機械的エネルギを発生するものを採用することも可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子と、前記素子と電気的に接続され、列状に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極端子に沿って、列状に設けられた複数の絶縁部材と、を備えた面を有を有し、前記複数の絶縁部材が前記複数の電極端子より前記面の端に近い側に設けられている記録素子基板を用意する工程と、
外部の電気配線基板と前記電極端子とを電気的に接続する複数の電気配線部材を、前記電極端子と接触し、かつ前記複数の絶縁部材によって支持されるように設ける工程と、
封止部材が隣接する前記電気配線部材の間に達するように、前記記録素子基板の周縁に前記封止部材を塗布し、前記封止部材を隣接する前記電気配線部材の間の毛細管力を用いて、隣接する前記電極端子の間に、前記封止部材を設ける工程と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
さらに、前記電極端子と前記電気配線部材との上側に、前記電極端子と前記電気配線部材とを封止する他の封止部材を設ける工程を具えたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記電極端子にそれぞれ対応するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項4】
インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子と、前記素子と電気的に接続され、列状に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極端子に沿って、列状に設けられた複数の絶縁部材と、を備えた面を有し、前記複数の絶縁部材が前記複数の電極端子より前記面の端に近い側に設けられている記録素子基板と、
前記電極端子と接触し、外部の電気配線基板と前記電極端子とを電気的に接続するとともに、前記複数の絶縁部材によって支持されるように設けられている複数の電気配線部材と、
隣接する前記電極端子の間に設けられた封止部材と、を含むインクジェット記録ヘッドであって、
前記絶縁部材は、前記電極端子にそれぞれ対応するように設けられていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記絶縁部材は、前記面に垂直な方向に関して、前記電気配線部材と前記面との間に、前記電極端子を支持するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
隣接する前記絶縁部材の間にも、前記封止部材が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
隣接する前記絶縁部材の間の幅は、隣接する前記電極端子の間の幅よりも小さいことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項8】
前記封止部材は、隣接する前記電気配線部材の間の毛細管力により、前記絶縁部材から前記電極端子の方向に向かって流入することで、隣接する前記電極端子の間に充填されることを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項9】
前記電極端子と前記電気配線部材との上側には、前記電極端子と前記電気配線部材とを封止する他の封止部材が設けられていることを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項1】
インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子と、前記素子と電気的に接続され、列状に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極端子に沿って、列状に設けられた複数の絶縁部材と、を備えた面を有を有し、前記複数の絶縁部材が前記複数の電極端子より前記面の端に近い側に設けられている記録素子基板を用意する工程と、
外部の電気配線基板と前記電極端子とを電気的に接続する複数の電気配線部材を、前記電極端子と接触し、かつ前記複数の絶縁部材によって支持されるように設ける工程と、
封止部材が隣接する前記電気配線部材の間に達するように、前記記録素子基板の周縁に前記封止部材を塗布し、前記封止部材を隣接する前記電気配線部材の間の毛細管力を用いて、隣接する前記電極端子の間に、前記封止部材を設ける工程と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
さらに、前記電極端子と前記電気配線部材との上側に、前記電極端子と前記電気配線部材とを封止する他の封止部材を設ける工程を具えたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記電極端子にそれぞれ対応するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項4】
インクを吐出させるためのエネルギを発生する素子と、前記素子と電気的に接続され、列状に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極端子に沿って、列状に設けられた複数の絶縁部材と、を備えた面を有し、前記複数の絶縁部材が前記複数の電極端子より前記面の端に近い側に設けられている記録素子基板と、
前記電極端子と接触し、外部の電気配線基板と前記電極端子とを電気的に接続するとともに、前記複数の絶縁部材によって支持されるように設けられている複数の電気配線部材と、
隣接する前記電極端子の間に設けられた封止部材と、を含むインクジェット記録ヘッドであって、
前記絶縁部材は、前記電極端子にそれぞれ対応するように設けられていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記絶縁部材は、前記面に垂直な方向に関して、前記電気配線部材と前記面との間に、前記電極端子を支持するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
隣接する前記絶縁部材の間にも、前記封止部材が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
隣接する前記絶縁部材の間の幅は、隣接する前記電極端子の間の幅よりも小さいことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項8】
前記封止部材は、隣接する前記電気配線部材の間の毛細管力により、前記絶縁部材から前記電極端子の方向に向かって流入することで、隣接する前記電極端子の間に充填されることを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項9】
前記電極端子と前記電気配線部材との上側には、前記電極端子と前記電気配線部材とを封止する他の封止部材が設けられていることを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−162891(P2010−162891A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284028(P2009−284028)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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