説明

インクジェット記録媒体及びその製造方法

【課題】 本発明の目的は、特に高速塗布適性を有し、かつ、フチなしプリント出力においてインク溢れの発生やプリント故障発生を低減するインクジェット記録媒体およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】 支持体上に少なくとも1層のインク吸収層を有するインクジェット記録媒体において、前記インク吸収層の空隙率が20%以上であり、かつ該インク吸収層が水混和性高沸点有機溶媒を空隙体積の1〜10%の範囲で含有することを特徴とするインクジェット記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高画質のインクジェット記録媒体およびその製造方法に関し、特に高速塗布適性を有し、かつ、フチなしプリント出力においてインク溢れの発生やプリント故障発生を低減するインクジェット記録媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録媒体(以下、単に記録用紙ともいう)の性能向上はめざましく、銀塩印画紙を用いたプリント画質に匹敵するようになってきた。
【0003】
さらには、近年のデジタルカメラの普及、及びプリンタの小型化、低価格化とあいまって、一般家庭でL判プリント出力を行う機会が増大している。しかし、L判プリントはA4サイズのプリントに比べて記録用紙の幅が狭く、プリンタの搬送ローラーで挟持される部分が少なくなる。また、プリント四辺に未印画部分を残さない、いわゆる四辺フチなしのプリントを出力するためには、印画部分のみを挟んで搬送する必要があるが、プリント直後の印画部分は乾燥が十分完了しない場合が想定されるため、印画後に記録用紙と接触する搬送ローラーは、歯車ギアのように接触面積が小さいものが使われる場合が多く、このためフチなしプリントの後端部を印画中は、特に記録媒体の保持が不安定になりやすい。これらの理由により、L判のフチなしプリント作成においては一般に搬送不良の発生確率が相対的に高くなる傾向にあった。また、近年のインクジェットプリンタは、印字速度向上を目的としたノズル数増加に伴いプリントヘッドが大型化し、またインク液滴の小サイズ化に伴い着弾精度向上のためにプリントヘッドと記録用紙の間隙が小さくなり、記録用紙がカールしている場合、プリントヘッドと記録用紙の接触に起因するプリント故障が発生しやすくなる傾向にあった。
【0004】
このようなプリント故障を防ぐための手段として、記録用紙のカールを抑制する方法があり、例えばバックコート層を工夫する技術はよく知られている(例えば、特許文献1参照)。また、高分子ポリマー添加による記録用紙のカール抑制技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、バックコート加工は製造コストがかさみやすく、また高分子ポリマー添加の記録用紙はインク吸収速度の低下や吸収量の減少を生じやすく、特に高速プリンタでのプリント時にインクあふれによる画質低下を生じやすかった。さらには、記録用紙上のヒビ防止及び光沢性または接着性改良のための低分子量の高沸点有機溶媒添加技術が、知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
そして、低分子量の高沸点有機溶媒を塗布液に混合して塗布を行う場合、塗布液粘度が下がりやすい傾向にあり、また高速塗布を行った場合にひび割れ等の膜面故障を発生しやすい傾向にあった。その原因は明確ではないが、低分子量の高沸点有機溶媒の持つ親水性部位(例えば水酸基など)が、バインダーとして用いられるポリビニルアルコールの間に介在することにより、ポリビニルアルコール同士の結合が弱まってしまうためと推定される。
【0007】
このような状況において、高速塗布適性を有し、かつ、フチなしプリント出力においてインク溢れの発生やプリント故障発生が生じにくいインクジェット記録媒体が望まれていた。
【特許文献1】特開平5−221115号公報
【特許文献2】特開平6−47924号公報
【特許文献3】特開2002−307806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、特に高速塗布適性を有し、かつ、フチなしプリント出力においてインク溢れの発生やプリント故障発生を低減するインクジェット記録媒体およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
(請求項1)
支持体上に少なくとも1層のインク吸収層を有するインクジェット記録媒体において、前記インク吸収層の空隙率が20%以上であり、かつ該インク吸収層が水混和性高沸点有機溶媒を空隙体積の1〜10%の範囲で含有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
【0011】
(請求項2)
前記インク吸収層を、無機微粒子と親水性バインダーを含有する水系塗布液Aを支持体上に塗布することにより形成した塗膜を乾燥させて形成した後、水混和性高沸点有機溶媒を含有する水系塗布液Bを前記インク吸収層上に塗布する一連の工程を有して作製されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【0012】
(請求項3)
前記水混和性高沸点有機溶媒は、分子量が250以下の多価アルコールまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体。
【0013】
(請求項4)
前記インク吸収層が塗設される支持体は、非吸水性支持体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0014】
(請求項5)
前記無機微粒子の平均一次粒子径が30nm以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0015】
(請求項6)
支持体上に少なくとも無機微粒子と親水性バインダーを含有する水系塗布液Aを塗布することにより形成した塗膜を乾燥させてインク吸収層を形成した後、水混和性高沸点有機溶媒を含有する水系塗布液Bを前記インク吸収層上に塗布することを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成により、高速塗布適性を有し、かつ、フチなしプリント出力においてインク溢れの発生やプリント故障発生を低減するインクジェット記録媒体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明は、支持体上に少なくとも1層のインク吸収層を有するインクジェット記録媒体において、前記インク吸収層の空隙率が20%以上であり、かつ該インク吸収層が水混和性高沸点有機溶媒を空隙体積の1〜10%の範囲で含有することを特徴とする。
【0019】
本発明においてインク吸収層の空隙率とは、インク吸収能を有するインク吸収層全体において、固形分容量に対する空隙容量を指し、一つの方法としては、以下の式に従って求めることができる。
【0020】
空隙率=100×〔(全乾燥膜厚−塗布固形分膜厚)/(全乾燥膜厚)〕
また、ブリストー測定による飽和転移量、あるいは吸水量測定などによっても簡易に求めることができる。
【0021】
本発明においては、高速印字適性を付与する観点から、インク吸収層の空隙率は20%以上必要である。
【0022】
本発明にかかるインクジェット記録媒体は、インク吸収層が水混和性高沸点有機溶媒を空隙体積の1〜10%の範囲で含有するが、ここでいう空隙体積とは、水混和性高沸点有機溶媒を含有し、最終的に仕上がった状態のインクジェット記録媒体における空隙体積を指す。また、本発明において水混和性高沸点有機溶媒の含有率は、単位空隙体積(100cm3)あたりにおける高沸点有機溶媒の質量(g)を用いて表すこととする。
本発明において水混和性有機溶媒とは、沸点が150℃以上であり、かつ水に対して5質量%以上混和する有機化合物を指すものである。
中でも、水酸基を2つ以上有する多価アルコールおよびその誘導体が好ましく用いられる。具体的には、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、2−ピロリジノン、トリエチレングリコールなどが挙げられる。中でも塗布乾燥時のひび割れ低減の観点から、沸点が200℃以上の水混和性有機溶媒が特に好ましく、またインク吸収速度の低下を最小限にとどめるという観点から、水混和性有機溶媒の分子量は250以下であることが好ましい。
【0023】
本発明においては、上述したような本発明に係る水混和性有機溶媒をインク吸収層の空隙体積の1〜10%の範囲で含有することが特徴であり、その添加方法としては、特に規定されないが、インク吸収層の空隙形成効率の向上、及び、塗膜の乾燥工程における塗膜のひび割れ発生軽減の観点から、無機微粒子と親水性バインダーを含有する水系塗布液Aを支持体上に塗布することにより形成した塗膜を乾燥させてインク吸収層を形成した後、水混和性高沸点有機溶媒を含有する水系塗布液Bを前記インク吸収層上に塗布する一連の工程を有して作成する態様が好ましい。
【0024】
次いで、本発明に係る水系塗布液Aの詳細について説明する。
【0025】
この水系塗布液Aは、基本的には多孔質のインク吸収層を形成するための塗布液であり、微細な空隙を持つ多孔質媒体(以下、多孔質インクジェット記録媒体ともいう)の製造方法において、従来から公知である塗布液を用いることができ、一般的には、無機微粒子と親水性バインダーが主な構成要素となる。
【0026】
本発明に係る多孔質媒体で用いることのできる無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。
【0027】
本発明においては、多孔質媒体で高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子としては、シリカまたはアルミナが好ましく、更には、アルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカ、もしくは気相法により合成された微粒子シリカ等が好ましく、気相法で合成された微粒子シリカが特に好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がアルミニウムで修飾されたものであっても良い。表面がアルミニウムで修飾された気相法シリカのアルミニウム含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0028】
本発明に係る多孔質媒体においては、用いる無機微粒子のサイズには特に制限はないが、インクジェット記録媒体表面の光沢性向上の観点から、平均一次粒子径が、30nm以下であることが好ましく、更に好ましくは3〜20nm、より好ましくは5〜10nmである。
【0029】
上記無機微粒子の平均粒子径は、多孔質層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、任意の100個の粒子について粒子径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒子径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0030】
上記無機微粒子は、一次粒子のままで、あるいは二次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で多孔質層に存在していても良いが、上記平均一次粒子径は、電子顕微鏡で観察した時に多孔質層中で独立の粒子を形成しているものの粒径をいう。
【0031】
上記無機微粒子の水系塗布液Aにおける含有量は、5〜40質量%であることが好ましく、特に7〜30質量%が好ましい。上記無機微粒子は、十分なインク吸収性を有し、かつ皮膜のひび割れ等が少ない多孔質層を形成するために、多孔質層中には、10g/m2以上の付き量になることが好ましく、更には10〜55g/m2になることが好ましく、特に好ましくは10〜25g/m2である。
【0032】
次いで、親水性バインダーについて説明する。
【0033】
多孔質層に含有される親水性バインダーとしては、特に制限は無く、公知の親水性バインダーを挙げることができ、例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等を用いることができるが、その中でもポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0034】
ポリビニルアルコールは、無機微粒子と相互作用を有しており、無機微粒子に対する保持力が特に高く、更に、湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が小さいため、塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0035】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,000〜5,000のものが好ましく用いられ、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.8%のものが特に好ましい。
【0036】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されるような、第1〜3級アミノ基や第4級アミノ基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0037】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−メチルビニルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0038】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0039】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号の各公報に記載されているビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、特開平7−285265号公報に記載されている水溶性基を有する変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0040】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0041】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類の違いなど、2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい増粘が無く好ましい。
【0042】
本発明に係る多孔質媒体においては、多孔質層に含有される親水性バインダー(B)に対する無機微粒子(F)の比率(F/B)が、質量比で2〜20であることが好ましい。質量比が2以上であれば、充分な空隙率の多孔質膜が得られ、充分な空隙容量を得やすくなり、維持できる親水性バインダーによるインクジェット記録時の膨潤によって空隙を塞ぐ状況を招かず、高インク吸収速度を維持できる要因となる。一方、この比率が20以下であれば、多孔質層を厚膜で塗布した際、ひび割れが生じにくくなる。特に好ましい親水性バインダーに対する無機微粒子の比率F/Bは2.5〜12、最も好ましくは3〜10である。
【0043】
本発明に係る多孔質媒体には、記録後の保存による画像のにじみを防止する目的で、カチオン性ポリマーが好ましく用いられる。
【0044】
カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物等が挙げられる。
【0045】
また、化学工業時報平成10年8月15、25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0046】
本発明に係る多孔質媒体では、多孔質層を形成する親水性バインダーの硬膜剤を添加することが好ましい。
【0047】
本発明で用いることのできる硬化剤としては、親水性バインダーと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0048】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0049】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0050】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが、両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することが出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。上記硬化剤の総使用量は、上記親水性バインダー1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0051】
本発明に用いる支持体は、印画後のコックリングによる平滑感、及び光沢感の低下を抑制する観点から、非吸水性支持体であることが好ましい。
【0052】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体または不透明支持体がある。透明支持体としてはポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、50μm〜200μmが好ましい。
【0053】
又、不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0054】
前記各種支持体と多孔質層の接着強度を大きくする等の目的で、多孔質層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明に係る多孔質媒体は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0055】
本発明に係る多孔質媒体では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。
【0056】
そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0057】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPまたはLDPの割合は10質量%〜70質量%が好ましい。
【0058】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0059】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0060】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0061】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0062】
多孔質層側のポリエチレン層には、写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して通常3質量%〜20質量%、好ましくは4質量%〜13質量%である。
【0063】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、又、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3質量%〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0064】
本発明に係る多孔質媒体には、上記説明した構成要素の他に、各種の公知の添加剤を添加することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオン界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号の各公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号の各公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号の各公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0065】
次に、本発明の多孔質媒体の製造方法における多孔質層の形成方法について説明する。
【0066】
本発明に係る多孔質媒体は、多孔質層を含む各構成層を、各々単独にあるいは同時に、公知の塗布方式から適宜選択して、非吸水性支持体上に塗布、乾燥して製造することができる。塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号の各明細書に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0067】
同時重層塗布を行う際の各塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0068】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0069】
塗布および乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0070】
次に、本発明に係る水混和性高沸点有機溶媒を含有する水系塗布液Bについて説明する。この水系塗布液Bは、前述の水系塗布液Aを支持体上に塗布することにより形成した塗膜を乾燥させて多孔質層を形成した後に供給されるが、皮膜の柔軟性を高めてプリント故障の発生を軽減させるという観点からは、多孔質層の上部にとどまるものではなく、塗布直後に多孔質層中を浸透していく性質を有することが好ましい。多孔質層中を浸透するために1〜30mPa・s程度の粘度範囲で塗布することが好ましい。
【0071】
水混和性高沸点有機溶媒を水系塗布液Bとして塗布する場合、塗布性を劣化させない範囲で、従来公知の各種添加剤(例えば、多孔質媒体としての耐光性、耐ガス性、耐水性、耐湿性、皮膜物性、インク吸収速度の向上剤など)を添加することが可能である。
【0072】
本発明においては、耐湿性改良の効果が高い多価金属化合物を、水混和性高沸点有機溶媒とともに水系塗布液Bに含有させる態様が好ましい。
【0073】
本発明に係る水系塗布液Bに好ましく用いられる多価金属化合物をとしては、2価以上の金属イオンであれば特に限定されるものでは無いが、好ましい多価金属イオンとしては、アルミニウムイオン、ジルコニウムイオン、チタニウムイオン等が挙げられる。
【0074】
これらの多価金属イオンは、水溶性または非水溶性の塩の形態で多孔質層に含有させることができる。アルミニウムイオンを含む塩の具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0075】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。
【0076】
また、ジルコニウムイオンを含む塩の具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウム等が挙げられる。
【0077】
これらの化合物の中でも、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニル、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましく、特に、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルが好ましい。これらの多価金属イオンは、単独で用いても良いし、異なる2種以上を併用してもよい。
【0078】
これらの多価金属イオンは、記録用紙1m2当り、概ね0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
【0079】
水系塗布液Bの塗布方法は、特に制限されず、水系塗布液Aと同様に従来公知の塗布方法が適用できるが、特に、水系塗布液Aの塗布、乾燥直後に行なわれることが好ましい。すなわち、長尺の非吸水性支持体を用いての塗布の場合、塗布、乾燥後に巻き取る工程が必ず存在するが、巻き取る前に、本発明に係る水系塗布液Bを塗布、乾燥することが製造コスト上好ましい。
【0080】
また、必ずしも水系塗布液Aが完全に乾燥されていなくても、水系塗布液Bを塗布開始してよい。
【0081】
本発明に係る水系塗布液Bの塗布方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができ、具体的な塗布方式としては、前述の多孔質層の塗布で記載の方法を用いることができるが、特に好ましい方式は、グラビア塗布方式、もしくは特開2002−331745号公報に記載された溶液を液滴として噴霧する方式であり、特に好ましくは微少ノズルを塗布幅にわたって複数有し、ガスを噴出するガスノズルを備えたスロットノズルスプレー装置を用いて溶液を供給する方式である。
【0082】
水系塗布液Bの塗布は、室温以上、60℃以下の温度で塗布するのが好ましい。
【0083】
水系塗布液Bは塗布に先立って濾過することが好ましく、特に、塗布方式として上記のガスノズルを備えたスロットノズルスプレー装置を用いる場合には、微小の異物・ゴミなどがノズルを目詰まらせて塗布筋の原因となりやすい。通常は5〜20μm程度の粒子を除去できるフィルターを用いることが好ましい。
【0084】
溶媒を塗布した後、多孔質媒体は乾燥してロール状に巻き取ることが好ましい。
【0085】
この際、オーバーコートで供給した溶媒の50%以上が乾燥された状態で巻き取ることが本発明では好ましい。
【0086】
付与した溶媒の50%以上が乾燥された状態で巻き取ることにより、断裁後にカールが大きくなるのを抑制でき、またこのロールの保管中での凹凸の発生を抑制でき、その結果、筋状故障を低減することができる。好ましくは、付与した溶媒の1/3以下の質量になるまで乾燥することであり、特に、周囲の環境と平衡状態になるまで乾燥させるのが好ましい。
【0087】
また、多孔質媒体を保管する際には、本発明係る多孔質媒体は、オーバーコートして乾燥した後、ロールに保管したまま、あるいはシート状に断裁した後、保管することが好ましい。30℃以上で一定時間、例えば、1日〜1ヶ月間保管すると、インク吸収速度が更に改善されてマダラ状のムラの軽減に役立つ。好ましい保管条件は、30〜50℃で1〜30日である。
【0088】
本発明に係る水系塗布液Bをスプレー塗布方式で塗布する場合には、例えば特開2004−106379号公報などに記載されているスロットノズルスプレー塗布装置を用いる態様が好ましい。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を挙げ本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0090】
実施例1
《記録用紙の作製》
[インクジェット記録用紙101の作製]
〔支持体の調製〕
含水率7.5質量%、坪量180g/m2の写真用紙基材の裏面に、押し出し塗布法により密度0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで塗布した。ついで写真用紙基材の表側にアナターゼ型酸化チタン9.5質量%を含有する密度0.92の低密度ポリエチレンを溶融押し出し塗布法により26μmの厚さで塗布した。このようにして作成された、両面をポリエチレンで被覆した光沢面を有する支持体の光沢度は60度で35%であった。
【0091】
この支持体の表面(酸化チタン含有層側)に、コロナ放電した後、ポリビニルアルコール、ホウ酸及び界面活性剤を含有する下引き層を、ポリビニルアルコールが0.05g/m2になるように塗工した。
【0092】
一方、支持体の裏面には、平均粒径約1μmのシリカ微粒子(マット剤)と少量のカチオン性ポリマー(導電剤)を含有するスチレン/アクリル系エマルジョンを乾燥膜厚が約0.5μmになるように塗工して、インク受容層を塗布するための支持体を作製した。この様にして得られた支持体の裏面のRaは約1.2μmであった。
【0093】
〔インク受容層の形成〕
次に、表側のインク受容層用として下記の組成の分散液を調製した。
【0094】
〈酸化チタン分散液−1の調製〉
平均粒径が0.25μmの酸化チタン20kg(石原産業製:W−10)を、pH=7.5のトリポリリン酸ナトリウム150g、ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)500g、カチオン性ポリマー(P−1)150gおよび10gのサンノブコ株式会社製消泡剤SN381を含有する水溶液90Lに添加し高圧ホモジナイザー(三和工業株式会社製)で分散したあと、全量を100Lに仕上げて均一な酸化チタン分散液−1を得た。
【0095】
〈シリカ分散液1の調製〉
水 71L
ホウ酸 0.34kg
ほう砂 0.34kg
エタノール 2.2L
カチオン性ポリマー(P−1)25%水溶液 9L
退色防止剤(AF1 *1)10%水溶液 8.5L
蛍光増白剤水溶液(*2) 0.1L
無機微粒子として、気相法シリカ(平均一次粒子径 約12nm)を21kg用意し、これに上記添加剤を添加した後、特開2002−47454号公報の実施例5に記載された分散方法により分散した後、全量を純水で120Lに仕上げてシリカ分散液1を得た。
【0096】
*1:退色防止剤(AF−1) HO−N(C24SO3Na)2
*2:チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、UVITEX NFW LIQUID
〈シリカ分散液2の調製〉
上記シリカ分散液1の調製において、カチオン性ポリマー(P−1)を、カチオン性ポリマー(P−2)に変更した以外は同様にして、シリカ分散液2を調製した。
【0097】
【化1】

【0098】
〔インク吸収層塗布液の調製〕
第1層、第2層、第3層及び第4層の各インク吸収層用塗布液を、以下の手順で調製した。
【0099】
〈第1層用塗布液〉
シリカ分散液1の610mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0100】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
220ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
酸化チタン分散液−1 30ml
ラテックスエマルジョン(第一工業株式会社製:AE−803) 21ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 1.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0101】
〈第2層用塗布液〉
シリカ分散液1の650mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0102】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
ラテックスエマルジョン(第一工業株式会社製:AE−803) 15ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0103】
〈第3層用塗布液〉
シリカ分散液2の650mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0104】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0105】
〈第4層用塗布液〉
シリカ分散液2の650mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0106】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
シリコン分散液(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製:BY−22−839) 3.5ml
サポニン50%水溶液 4ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 6ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0107】
【化2】

【0108】
上記のようにして得られた塗布液を、東洋濾紙株式会社製TCP10で2段濾過した。
【0109】
上記塗布液はいずれも40℃において、30〜80mPa・s、15℃において、30〜100Pa・sの粘度特性を示した。
【0110】
このようにして得られた各塗布液を、前術した支持体の表側に、支持体表面に近い方から第1層(23μm)、第2層(30μm)、第3層(30μm)、第4層(27μm)の順に同時塗布した。かっこ内はそれぞれの湿潤膜厚を示す。塗布においては、それぞれの塗布液を40℃に調製し、4層式カーテンコーターを用いて同時塗布を行った。塗布直後の試料は8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、相対湿度30%以下の乾燥風を吹き付けて乾燥し、さらに23℃・相対湿度40〜60%で調湿後にロール状に巻き取り、ついで40℃で5日間加温保管した。このようにして作成したインクジェット記録用紙101の全乾燥膜厚は40.3μmであり、空隙率は58%であった。
【0111】
[インクジェット記録用紙102〜109の作製]
記録用紙101の作製において、特開2004−106379号の実施例1の試料5の作製に用いられているスロットノズルスプレー装置用いて、インク吸収層の乾燥終点以降に下記塗布液Bを湿潤膜厚が15μmとなるようオーバーコートした以外は同様にして、記録材料102〜109を作製した。なお、水混和性高沸点有機溶媒の種類及び量は、記録材料の単位面積あたりの付量(g/m2)で表1に記載した。また各記録材料の空隙率も合わせて表1に記載した。
【0112】
〔オーバーコート用塗布液B〕
水混和性高沸点有機溶媒(種類及び量は表1に記載)
界面活性剤(SF1)5%水溶液 6ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0113】
[インクジェット記録用紙110の作製]
記録用紙101の作製において、第4層塗布液に、ジエチレングリコールを記録材料の単位面積あたりの付量が1.87g/m2となるように添加した以外は同様にして、記録材料110を作製した。
【0114】
《評価》
[記録材料101〜110の評価]
上述のようにして作製したインクジェット記録材料101〜110に対して、以下のような評価を行った。
【0115】
〔塗布性の評価〕
各インクジェット記録材料の塗膜をルーペを用いて観察し、10cm2当たりのひび割れ個数をカウントし、これを塗布性の尺度とした。ひび割れ発生個数が多いほど塗布性が悪いことを表す。
【0116】
〔搬送性の評価〕
各インクジェット記録材料をL判サイズ(89mm×127mm)に断裁加工した後、各々20枚ずつ重ねて、23℃20%RHの環境下に5時間放置した。次いで、各インクジェット記録材料について、20枚を重ねたまま、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−G800にセットし、財団法人・日本規格協会発行の、高精細カラーデジタル標準画像データ「N5−自転車」(1995年12月発行)を評価用標準画像として、23℃20%RHの雰囲気下で20枚連続してプリントを行った。このとき、以下に挙げるプリント故障の発生有無を観察し、故障発生の枚数を数えて3段階評価を行った。
【0117】
〈プリント故障の種類〉
・一度に2枚以上の記録用紙が搬送される(多重搬送)
・記録用紙が搬送されない(搬送ミス)
・記録用紙がプリンタヘッドと接触し、プリント面あるいはプリント端部に汚れが発生する
(判定)
◎:20枚全てにプリント故障がない
○:1〜2枚のプリントに端部汚れ等の軽微な故障が生じる
△:3枚〜5枚のプリントに軽微な故障が生じる、または1〜2枚のプリントに、明らかな画像汚れやバンディング等の致命的な故障が生じる
×:6枚以上のプリントに軽微な故障が生じる、または3枚以上のプリントに致命的な故障が生じる
〔インクあふれの評価〕
各インクジェット記録材料をL判サイズ(89mm×127mm)に断裁加工した後、23℃80%RHの環境下に1時間放置した。次いで、各インクジェット記録材料について、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−950Cにセットし、青色から黒色、赤色から黒色、緑色から黒色に連続的に変化するグラデーションパターンを評価用標準画像として、23℃80%RHの雰囲気下でプリントを行った。このとき、グラデーションパターン中に、斑状の不均一な部分が発生するかどうかを確認し、以下のようにして評点をつけた。
【0118】
(判定)
○:BGRすべてのグラデーションパターンにおいて、斑状の不均一部分の発生がない
△:軽微な斑上の不均一部分が観察されるが、30cmくらいからの観察においては、プリント品質にほとんど影響を与えない
×:30cmくらいの距離からでも斑上の不均一部分が観察され、プリント品質を著しく損ねる。
【0119】
以上により得られた各結果を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
表1からわかるように、インク吸収層が水混和性高沸点有機溶媒を空隙体積の1〜10%の範囲で含有しているインクジェット記録材料は、搬送トラブルによるプリント故障の発生が少なく、また水混和性高沸点有機溶媒の含有量がインク吸収層の空隙体積の10%以下であるインクジェット記録材料は、高湿条件下のプリントにおいてもインク溢れによるプリント画質の低下がほとんどみられなかった。両方の条件を満たす、すなわち本発明の記録材料103、104、106〜110は、インク溢れ及びプリント故障の発生がほとんどなく好ましいことがわかる。
【0122】
本発明の記録材料の中でも、インク吸収層を形成した後、水混和性高沸点有機溶媒を含有する水系塗布液Bを前記インク吸収層上に塗布する一連の工程を有して作成された記録材料103、104、106〜109は、塗膜のひび発生がほとんどなく、本発明の好ましい態様であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも1層のインク吸収層を有するインクジェット記録媒体において、前記インク吸収層の空隙率が20%以上であり、かつ該インク吸収層が水混和性高沸点有機溶媒を空隙体積の1〜10%の範囲で含有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記インク吸収層を、無機微粒子と親水性バインダーを含有する水系塗布液Aを支持体上に塗布することにより形成した塗膜を乾燥させて形成した後、水混和性高沸点有機溶媒を含有する水系塗布液Bを前記インク吸収層上に塗布する一連の工程を有して作製されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記水混和性高沸点有機溶媒は、分子量が250以下の多価アルコールまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記インク吸収層が塗設される支持体は、非吸水性支持体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記無機微粒子の平均一次粒子径が30nm以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
支持体上に少なくとも無機微粒子と親水性バインダーを含有する水系塗布液Aを塗布することにより形成した塗膜を乾燥させてインク吸収層を形成した後、水混和性高沸点有機溶媒を含有する水系塗布液Bを前記インク吸収層上に塗布することを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2006−187982(P2006−187982A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2468(P2005−2468)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】