説明

インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法

【課題】ライン品質、文字品質に優れ、格子のゆがみが抑制された、高画質の画像形成が可能なインクジェット記録用インクセットを提供する。
【解決手段】少なくとも画像を形成するための少なくとも1種の第1の液体Aと、前記第1の液体Aと組成が異なる少なくとも1種の液体Bとから構成されるインクセットであって、少なくともひとつの液体に、同一分子内にオキシラン環及びオキセタン環を有するカチオン重合性化合物を少なくとも1種含むことを特徴とするインクジェット記録用インクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法に関し、詳細には、画像再現性に優れた多液のインクジェット記録用インクセット及びそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル等のインク吐出口からインクを液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、印字媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンタに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
現在、インクジェットプリンタにより、普通紙あるいは、プラスチックなど非吸水性の記録媒体にインクを打滴して印字する際の高速化及び高画質化が重要な課題となっている。
【0004】
インクジェット記録は、インク(液体)の液滴を連続的に液滴n1、液滴n2、液滴n3、・・・、液滴nxと吐出し、被記録媒体上に液滴n1、液滴n2、液滴n3、・・・、液滴nxにてラインを形成したり、画像を形成するものであるが、特に打滴後の液滴の浸透に時間が掛かると、画像に滲みが生じやすく、また、隣接するインク液滴n1とインク液滴n2の間で混合が生じ、鮮鋭な画像形成の妨げとなるなど、実用上問題があった。液滴間での混合の際には、打滴された隣接の液滴が合一して液滴の移動が起こるために、着弾した位置からずれ、細線を描く場合には線幅の不均一が生じ、着色面を描く場合には色ムラ等が発生する。
【0005】
画像の滲みや線幅の不均一等を抑制する方法の一つとして、インクの硬化を促進する方法がある。その一つとして、インク溶媒の揮発ではなく放射線によって硬化し固着する技術が提案されている。更には、精密描画性を付与するために2液式のインクを用い、記録媒体上で両者を反応させるものであり、例えば、塩基性ポリマーを有する液体を付着させた後、アニオン染料を含有するインクを記録する方法(例えば、特許文献1参照)や、カチオン性物質を含む液体組成物を適用した後、アニオン性化合物と色材を含有するインクを適用する方法(例えば、特許文献2参照)、一方に光硬化型樹脂を、他方に光重合開始剤を含むインクを用いる記録方法(例えば、特許文献3参照)などが開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法では、画像の滲み抑制にはある程度の効果はあるものの、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の解消には不充分であり、また、水性溶媒を含むために乾燥速度が遅い、析出した染料が不均一に分布しやすく画質低下を招く懸念もある。
【0007】
上記に関連する技術として、着色成分として顔料を用い、放射線によって硬化して固着する技術がある(例えば、特許文献4参照)。ここでは、固化するモノマーを含有するインクと顔料分散体を含有するインクとのいずれか一方を用いて画素を形成した後に他方で前記画像と同一ポイントに画素を形成し、硬化を紫外線、電子線等を用いて行なうことが記載されている。
また、水と共に反応性モノマーや着色剤等を含有するインク組成物と凝集物を生じさせる凝集剤を含有する凝集溶液とを用い、記録媒体上に前記凝集溶液を付着させた後に前記インク組成物を付着させることが記載されたものがある(例えば、特許文献5参照)。さらに、光重合開始剤を含有する反応液を全面付与した後にモノマー含有のインク組成物を付与し、紫外線照射を行なうことが記載されたものもある(例えば、特許文献6参照)。
【0008】
上記以外に、インクを2種類に分けて互いに重なるように打滴することに関する記載がなされたものもある(例えば、特許文献7参照)。
【特許文献1】特開昭63−60783号公報
【特許文献2】特開平8−174997号公報
【特許文献3】特許第3478495号
【特許文献4】特開平8−218018号公報
【特許文献5】特開2001−348519号公報
【特許文献6】特許3642152
【特許文献7】特開2000−135781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来の技術のみでは、特にインク吸収速度の遅い非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いて記録を行なう場合で、高い画像濃度を得ようと隣接する液滴a1、液滴a2を重ねて打滴すると、隣接する液滴同士が非硬化状態で媒体上に存在している際の液滴間の混合、すなわち隣接する液滴の合一という現象が生じてしまい、それに伴なう線幅の不均一や混色(色ムラ等)などを充分に抑制することは困難である。 また、2液を用いたインクジェット記録において、格子や文字のような画像を形成する場合には、打滴干渉により格子のゆがみや文字のゆがみが発生しやすいが、上記した従来の技術のみでは、これらの発生を充分に抑制することも困難である。
【0010】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、ライン品質、文字品質に優れ、格子のゆがみが抑制された、高画質の画像形成が可能なインクジェット記録用インクセットを提供すること、及び、ライン品質、文字品質に優れ、格子のゆがみが抑制された、高画質の画像形成が可能なインクジェット記録方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
(1) 少なくとも画像を形成するための少なくとも1種の第1の液体Aと、前記第1の液体Aと組成が異なる少なくとも1種の第2の液体Bとから構成されるインクセットであって、少なくとも液体A又はBのいずれかひとつの液体に、同一分子内にオキシラン環及びオキセタン環を有するカチオン重合性化合物を少なくとも1種含むことを特徴とするインクジェット記録用インクセットである。
(2) 前記カチオン重合性化合物を含む液体の含水率が0.01〜5.0質量%であることを特徴とする(1)に記載のインクジェット記録用インクセットである。
(3) 前記カチオン重合性化合物が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のインクジェット記録用インクセットである。
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Lは2価の連結基を表す。X及びYはそれぞれ独立にアルキレン基または単結合を表す。〕
【0014】
(4) 前記一般式(I)で表される化合物において、X−L−Yで表される基の主鎖を構成する原子の数が3又は4であることを特徴とする(3)に記載のインクジェット記録用インクセットである。
(5) 少なくとも液体A又はBのいずれかひとつの液体に、重合性もしくは架橋性材料を架橋反応させる重合開始剤を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットである。
【0015】
(6) 前記第2の液体Bが、親油性溶剤を含み、前記親油性溶剤の含有量が前記第2の液体Bの全質量の50質量%以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットである。
(7) 前記親油性溶剤は、沸点が100℃よりも高い高沸点有機溶媒であることを特徴とする(6)に記載のインクジェット記録用インクセットである。
【0016】
(8) 前記第1の液体Aが、着色剤を更に含むことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットである。
(9) 前記第2の液体Bが着色剤を含有しないか、又は、含有する場合には、着色剤の含有量が1質量%未満であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットである。
【0017】
(10) (1)〜(9)のいずれか1項に記載のインクセットを用い、前記第2の液体Bを前記第1の液体Aで形成される前記画像と同一もしくは該画像よりも広い範囲に予め被記録媒体に付与しておくことを特徴とするインクジェット記録方法である。
(11) 前記第1の液体Aを少なくとも第1の液滴a1及び液滴a2にて、前記液滴a1と前記液滴a2とを重なり部分をもって打滴することで画像を記録することを特徴とする(10)に記載のインクジェット記録方法である。
【0018】
(12) 前記重なり部分における重なり率が10%以上90%以下である(11)に記載のインクジェット記録方法である。
(13) 前記第2の液体Bの付与後、前記液体A(少なくとも前記第1の液滴a1)が打滴されるまでの打滴間隔が5μ秒以上400m秒以下である(10)〜(12)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法である。
【0019】
(14) 打滴された前記液体A(前記第1の液滴a1及び液滴a2を含む)の液滴サイズが、0.1ピコリットル以上100ピコリットル以下である(10)〜(13)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法である。
(15) 前記第1の液体A打滴までの間は第2の液体Bを液体状に保持することを特徴とする(10)〜(14)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法である。
(16) 前記液体A(少なくとも前記第1の液滴a1)の打滴後に活性エネルギーを前記画像に与えて前記重合性もしくは架橋性材料を重合もしくは架橋する(10)〜(15)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ライン品質、文字品質に優れ、格子のゆがみが抑制された、高画質の画像形成が可能なインクジェット記録用インクセットを提供すること、及び、ライン品質、文字品質に優れ、格子のゆがみが抑制された、高画質の画像形成が可能なインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
≪インクジェット記録用インクセット≫
本発明のインクジェット記録用インクセットは、少なくとも画像を形成するための少なくとも1種の第1の液体Aと、前記第1の液体Aと組成が異なる少なくとも1種の第2の液体Bとから構成されるインクセットであって、少なくとも液体A又はBのいずれかひとつの液体に、同一分子内にオキシラン環及びオキセタン環を有するカチオン重合性化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする。
尚、本明細書中では、液体A又は液体Bを、単に「インク組成物」ということがある。
【0022】
<同一分子内にオキシラン環及びオキセタン環を有するカチオン重合性化合物>
本発明の重合性化合物は同一分子内に3員の環状エーテルであるオキシラン環、及び4員の環状エーテルであるオキセタン環を有していれば如何なる重合性化合物であってもかまわない。これらの置換基は酸存在下で開環重合をし得る置換基である。
【0023】
<カチオン重合性化合物を含む液体の含水率>
前記カチオン重合性化合物を含む液体の含水率は、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜5.0質量%であることが更に好ましく、0.02〜2.5質量%であることが特に好ましい。
上記範囲内であれば、硬化性、基材への密着性、形成した画像の耐久性、耐水性、インクの長期保存性(特にノズル内に滞留するインクの保存性)を良好に保つことができる。
前記液体の含水率を0.01〜5.0質量%とする手段としては、疎水性の高い化合物を選択するなど、含水率をできる限り小さくすることが有効である。また、このように素材を選択するだけでなく、インクと外気とを遮断する方法もあるが、通常は、インク製造の最終段階において、加温処理、脱水処理、減圧処理など、物理的に脱水処理を行うことが好ましい。
尚、本発明におけるインクの含水率は、hiranuma aquacounter AQ200(平沼産業株式会社製)により、カールフィッシャー法にて測定した値を意味する。
【0024】
<一般式(I)で表される化合物>
同一分子内にオキシラン環及びオキセタン環を有するカチオン重合性化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0025】
【化2】

【0026】
式中、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Lは2価の連結基を表す。X及びYはそれぞれ独立にアルキレン基または単結合を表す。
【0027】
前記一般式(I)において、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、該置換基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、複素芳香族基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基等が挙げられ、これらの置換基は、更に上述の置換基によって置換されていてもよく、また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。または、R1〜R8は各々の置換基の末端部が任意に結合して環を形成しても良く、該環は脂肪族炭化水素環であることが好ましく、該環には上述した置換基が置換していても良い。R1〜R8としては、水素原子、アルキル基であることが好ましい。
【0028】
前記一般式(I)において、R1〜R8で表されるアルキル基は直鎖でも分岐を有していても、環状になっていても良く、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、更に好ましくはメチル基またはエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0029】
前記一般式(I)において、R1〜R8で表されるアルケニル基としては例えば、ビニル基、アリル基等、アルキニル基としては例えば、エチニル基、プロパルギル基等、芳香族炭化水素基としては例えば、フェニル基、ナフチル基等、複素芳香族基としては例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等、ヘテロ環基としては例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等、アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等、アリールオキシ基としては例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等、アルキルチオ基としては例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等、アリールチオ基としては例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等、アルコキシカルボニル基としては例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等、アリールオキシカルボニル基としては例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等、スルファモイル基としては例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等、アシル基としては例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等、アシルオキシ基としては例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等、アミド基としては例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等、カルバモイル基としては例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等、ウレイド基としては例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等、アルキルスルホニル基としては例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等、アリールスルホニル基としてはフェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等、アミノ基としては例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等、ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等、フッ化炭化水素基としては例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等、シリル基としては例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等が挙げられる。
【0030】
Lは2価の連結基を表し、例えば酸素(−O−)、硫黄(−S−)、窒素(−NR−)、カルボニルオキシ(−CO2−)の2価の連結基が挙げられる。ここでRは水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の好ましい例は上記R1〜R8の場合と同義である。さらに好ましくは酸素(−O−)、硫黄(−S−)、カルボニルオキシ(−CO2−)の2価の連結基である。中でも、酸素(−O−)の2価の連結基が最も好ましい。
X及びYはそれぞれ独立にアルキレン基または単結合を表し、該アルキレン基としては炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基であることがさらに好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。
X−L−Yで表される基の主鎖を構成する原子の数が3又は4であることが更に好ましい。ここで、「主鎖を構成する原子」には、X、LまたはYに置換しうる置換基を構成する原子はもちろん、X、LまたはY中の水素原子をも含まない。例えばアルキレン基の場合、主鎖を構成する原子とはアルキレン基を構成する炭素原子のみをいい、アルキレン基を構成する水素原子は含まない。
【0031】
一般式(I)で表される化合物の粘度は例えばRE80型粘度計(商品名、東機産業株式会社製)を用いて測定することができる。一般式(I)で表される化合物の25℃における粘度は1〜10mPa・sが好ましく、1〜8mPa・sがより好ましい。
【0032】
一般式(I)における好ましい組み合わせについて、以下説明する。
本発明による効果を、より効果的に達成できる点で、前記R1が水素原子またはアルキル基であって、前記R2が水素原子またはアルキル基であって、前記R3が水素原子またはアルキル基であって、前記R4がアルキル基であって、前記R5が水素原子またはアルキル基であって、前記R6が水素原子またはアルキル基であって、前記R7が水素原子またはアルキル基であって、前記R8が水素原子またはアルキル基であって、Xがアルキレン基であって、Yがアルキレン基であって、Lが酸素(−O−)連結基またはカルボニルオキシ連結基(−CO2−)である態様が好ましい。
【0033】
以下に、本発明における一般式(I)で表される化合物の具体例(例示化合物I−1〜I−34)を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
本発明における上記一般式(I)で表される化合物は、公知の合成法、例えば、米国特許第3,457,193号やMacromolecules,2003,36,1522−1525に記載の方法により合成可能であるが、以下に代表的な合成の一例を挙げる。
【0037】
(化合物I−1の合成例)
48%水酸化ナトリウム水溶液1.5L、エピクロロヒドリン1.0L、テトラブチルアンモニウム硫酸水素30gを室温で攪拌し、ここへ3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン350gを2時間かけてゆっくりと滴下した。さらに室温で6時間攪拌し、反応溶液を氷水にあけて酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水洗、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。酢酸エチルを留去し、残留物を減圧蒸留にて精製した。2.5mmHgにて100℃〜105℃の留分として450gの化合物I−1を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,δ):4.47(dd,2H),4.38(d,2H),3.82(dd,1H),3.67(d,1H),3.60(d,1H),3.41(dd,1H),3.17−3.15(m,1H),2.80(dd,1H),2.61(dd,1H),1.76(q,2H),0.90(t,3H).
化合物I−1の25℃における粘度をRE80型粘度計(商品名、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、3.5mPa・sであった。
【0038】
(化合物I−2の合成例)
48%水酸化ナトリウム水溶液160mL、エピクロロヒドリン100mL、テトラブチルアンモニウム硫酸水素4.3gを室温で攪拌し、ここへ3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン25gを30分かけてゆっくりと滴下した。さらに室温で6時間攪拌し、反応溶液を氷水にあけて酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水洗、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。酢酸エチルを留去し、残留物をクロマトグラフィーにて精製し、30.5gの化合物I−2を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,δ):4.53(dd,2H),4.36(d,2H),3.82(dd,1H),3.62(d,1H),3.57(d,1H),3.45(dd,1H),3.17−3.15(m,1H),2.80(dd,1H),2.61(dd,1H),1.35(s,3H).
化合物I−2の25℃における粘度をRE80型粘度計(商品名、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、4.1mPa・sであった。
【0039】
(化合物I−3の合成例)
48%水酸化ナトリウム水溶液150mL、エピクロロヒドリン100mL、テトラブチルアンモニウム硫酸水素3.7gを室温で攪拌し、ここへ3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン25gを30分かけてゆっくりと滴下した。さらに室温で7時間攪拌し、反応溶液を氷水にあけて酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水洗、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。酢酸エチルを留去し、残留物をクロマトグラフィーにて精製し、32.4gの化合物I−3を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,δ):4.48(dd,2H),4.40(d,2H),3.64−3.58(m,3H),3.41(d,1H),2.75(dd,1H),2.61(dd,1H),1.77(q,2H),1.38(s,3H),0.95(t,3H).
化合物I−3の25℃における粘度をRE80型粘度計(商品名、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、5.9mPa・sであった。
【0040】
(化合物I−4の合成例)
DMF250mLへ水素化ナトリウム13.7gを0℃にて加え、ここへ攪拌しながら3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン26gをゆっくりと滴下した。30分攪拌した後、クロチルクロリド22.7gを滴下し、6時間攪拌した。反応溶液を氷水にあけて酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル層を水洗、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。酢酸エチルを留去し、残留物をクロマトグラフィーにて精製し38.1gを得た。
続いて得られた化合物17.0gと酢酸エチル300mL、炭酸水素ナトリウム42g、水300mL、アセトン58gを室温で攪拌し、ここへOXONE(アルドリッチ社製)65gを水300mLに溶かし、30分かけて滴下した。室温で10時間攪拌した後、水層を廃棄し酢酸エチル層をチオ硫酸ナトリウム水溶液、食塩水、水で洗浄し硫酸マグネシウムにて乾燥した。酢酸エチルを留去し、残留物をクロマトグラフィーにて精製し、7.5gの化合物I−4を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,δ):4.48(dd,2H),4.40(d,2H),3.78−3.42(m,4H),2.95(m,2H),1.77(q,2H),1.38(d,3H),0.95(t,3H).
化合物I−4の25℃における粘度をRE80型粘度計(商品名、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、6.2mPa・sであった。
【0041】
(化合物I−5の合成例)
DMF215mLへ水素化ナトリウム12.9gを0℃にて加え、ここへ攪拌しながら3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン25gをゆっくりと滴下した。30分攪拌した後、1−クロロ−3−メチル−2−ブテン24.8gを滴下し、4時間攪拌した。反応溶液を氷水にあけて酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル層を水洗、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。酢酸エチルを留去し、残留物をクロマトグラフィーにて精製し38.4gを得た。
続いて得られた化合物18.1gと酢酸エチル300mL、炭酸水素ナトリウム42g、水300mL、アセトン58gを室温で攪拌し、ここへOXONE(アルドリッチ社製)65gを水300mLに溶かし、30分かけて滴下した。室温で10時間攪拌した後、水層を廃棄し酢酸エチル層をチオ硫酸ナトリウム水溶液、食塩水、水で洗浄し硫酸マグネシウムにて乾燥した。酢酸エチルを留去し、残留物をクロマトグラフィーにて精製し、11.9gの化合物I−5を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,δ):4.48(dd,2H),4.40(d,2H),3.78−3.52(m,4H),2.98(t,1H),1.77(q,2H),1.35(s,3H),1.31(s,3H),0.94(t,3H).
化合物I−5の25℃における粘度をRE80型粘度計(商品名、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、6.9mPa・sであった。
【0042】
一般式(I)で表される化合物の含有量は、任意に設定できるが、粘度や、硬化性の観点から、インク組成物の総量の5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましい。
本発明で用いられる一般式(I)で表される化合物は、単独で用いるだけでなく複数混合して用いても、他のカチオン重合性化合物と混合して用いてもよい。一般式(I)で表される化合物と他のカチオン重合性化合物の総量は、インク組成物の総量に対して70質量%以上99質量%以下が好ましく、75質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下が最も好ましい。
一般式(I)で表される化合物の重合性化合物の総量に対する割合としては、任意に設定できるが、硬化性や粘度、硬化物の物性の観点から5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましく、15質量%以上70質量%以下が特に好ましい。
【0043】
<sp値>
本発明においてsp値とは、種々の溶剤、溶質に対して定義されるものであり、溶剤/溶剤間、溶剤/溶質間における溶けやすさを示す値である。この値は、溶剤と溶剤とが混ざり合う場合、溶剤に溶質が溶ける場合のエネルギーの変化から算出されるものであり、本発明で用いたsp値は、具体的には、東北大学 R.L.smithによるsp値計算プログラムにより計算して得られるものである。計算に際しては、25℃を基準とし、炭素原子を含まない化合物を除き、ポリマーやポリエチレン鎖等の構成単位については結合手を持つ飽和の繰り返し単位(例えばスチレンの場合は−CH2−CH(C65)−)とし、水(H2O)は47.8として計算される。
【0044】
本発明においては、第1の液体Aの付与前に予め付与しておくための第2の液体Bのsp値を35以下とすると共に、第1の液体Aと第2の液体Bとの間のsp値の差を10以下とすることが好ましい。
sp値が35以下であると、第2の液体Bは、例えば後述するように重合性もしくは架橋性材料を含む第1の液体A(液滴a1、液滴a2・・・)との間の親和性が増大し、第1の液滴a1及び液滴a2を互いに重なり部分を有して付与したときの液滴同士の合一を抑止でき、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生を効果的に防止することができる。尚、液滴a1及び液滴a2については、後述のインクジェット記録方法の説明で詳述する。
【0045】
第2の液体において、前記sp値としては、30以下がより好ましく、25以下が特に好ましい。また、第1の液体Aと第2の液体Bとの間のsp値の差としては、5以下がより好ましい。
【0046】
また、第1の液体Aと第2の液体Bとの間のsp値の差が前記範囲内であると、互いに溶解しやすく、液滴a1は液滴a2との間よりも液滴Bとの間の方が接触面積が大きいため第2の液体Bとの間で親和性が良好になり、したがって例えば、互いに重なり部分を有して付与される液滴a1、液滴a2、・・・が着色剤を含有する場合に、液滴a1及び液滴a2間で色滲みや混色を起こしたり、着色された線像の線幅バラツキの回避に効果的である。
sp値の調整は、後述の親油性溶剤、重合性材料などを用いて好適に調整が可能であり、例えば液滴中の親油性溶剤の割合を高めることでよりsp値を下げることができる。
【0047】
<表面張力>
本発明において表面張力は、SURFACE TENSIONMETER(協和界面化学株式会社製)で、測定した値を意味する。
本発明のインクジェット記録用インクセットに含まれる液体Aと液体Bとは、被記録媒体上に目的の大きさの記録液ドットを形成する観点から、下記の条件(A)、(B)、及び(C)の全てを満たすことが好ましい。
(A)液体Bの表面張力は、インクジェット記録用インクセットに含まれるいずれかの液体Aの表面張力よりも小さい。
(B)液体Bに含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>1mN/m
の関係を満たす。
(C)液体Bの表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2
の関係を満たす。
【0048】
ここで、γsは、液体Bの表面張力の値である。γs(0)は、液体Bのうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに飽和する該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0049】
〈条件(A)〉
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさの記録液ドットを形成するためには、液体Bの表面張力γsは、インクジェット記録用インクセットに含まれる液体Aの表面張力γkよりも小さくすることが好ましい。
さらに、着滴から露光までの間の記録液ドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)がより好ましく、γs<γk−5(mN/m)が特に好ましい。
また、フルカラーの画像を印字する場合は、画像の鮮鋭性を向上させる観点から、液体Bの表面張力γsは、少なくとも視感度の高い着色剤を含有する記録液の表面張力よりも小さくすることが好ましく、インクジェット記録用インクセットに含まれる全ての記録液の表面張力より小さいことがより好ましい。なお、ここで視感度の高い着色剤とは、マゼンタ、または、ブラック、または、シアンの色を呈する着色剤が挙げられる。
また、液体Aの表面張力γkと液体Bの表面張力γsとの値が上記の関係を満たしていても、両者の値が15mN/m未満であるとインクジェット打滴時に液滴の形成が困難になり不吐出が生じる場合がある。一方、50mN/mを超えると、インクジェットヘッドとの濡れ性が悪くなり不吐出の問題が生じる場合がある。したがって、吐出適正の観点から、液体Aの表面張力γkと液体Bの表面張力γsとは、15mN/m以上50mN/m以下が好ましく、18mN/m以上40mN/m以下がより好ましく、20mN/m以上38mN/m以下が特に好ましい。
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃にて測定した値である。
【0050】
〈条件(B)と条件(C)〉
本発明において、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、液体Bは少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有することが好ましい。なお、この場合は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、下記の条件(B)を満たすことが好ましい。
γs(0)−γs(飽和)>1mN/m …条件(B)
さらに、液体Bの表面張力は、下記の条件(C)の関係を満たすことが好ましい。
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2 …条件(C)
【0051】
既述のように、γsは、液体Bの表面張力の値である。γs(0)は、液体Bのうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに飽和する該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、液体Bに含有する界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0052】
なお、前記γs(0)は、液体Bのうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値を測定することによって得られる。前記γs(飽和)は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の含有濃度を0.01質量%ずつ増加させたときに、表面張力の変化量が0.01mN/m以下になったときの該液の表面張力を測定することによって得られる。
【0053】
以下、前記γs(0)、γs(飽和)、γs(飽和)最大 について具体的に説明する。
例えば、液体B(例1)を構成する成分が、高沸点溶媒(フタル酸ジエチル、和光純薬工業(株)製)、重合開始剤(TPO−L、下記の開始剤−1)、フッ素系界面活性剤(メガファック F475、大日本インキ化学工業(株)製)、炭化水素系界面活性剤(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム)とした場合、γs(0)、γs(飽和)1(フッ素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)2(炭化水素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)、および、γs(飽和)最大は、下記の通りとなる。
【0054】
【化5】

【0055】
即ち、γs(0)は、液体Bのうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値であり、36.7mN/mとなる。また、該液にフッ素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)1としたとき、その値は20.2mN/mとなる。さらに、同様に該液に炭化水素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)2としたとき、その値は30.5mN/mとなる。
【0056】
前記液体B(例1)は、前記条件(B)を満たす界面活性剤を2種類含有するため、γs(飽和)は、フッ素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和)1)と炭化水素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和)2)の2つの値をとり得る。これらから、γs(飽和)最大は、前記γs(飽和)1及びγs(飽和)2のうちの最大値であることから、γs(飽和)2の値となる。
以上より、それらを纏めると下記のようになる。
γs(0)=36.7mN/m
γs(飽和)1=20.2mN/m(フッ素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)2=30.5mN/m(炭化水素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)最大=30.5mN/m
【0057】
以上の結果から、液体Bの表面張力γsとしては、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2=33.6mN/m
の関係を満たすことが好ましい。
なお、前記条件(C)については、着滴から露光までの間のインク滴の拡大をより効果的に防ぐ観点から、液体Bの表面張力としては、
γs<γs(0)−3×{γs(0)− γs(飽和)}/4
の関係を満たすことがより好ましく、
γs≦γs(飽和)
の関係を満たすことが特に好ましい。
【0058】
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃にて測定した値である。
【0059】
(界面活性剤)
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、液体Bは少なくとも1種類の界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明でいう界面活性剤は、ヘキサン、シクロヘキサン、p−キシレン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、シクロヘキサノン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、メタノール、水、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、好ましくは、ヘキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、特に好ましくは、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質である。
上記に列挙した溶媒に対して、ある化合物が強い表面活性を有する物質か否かは、下記の手順によって判断することができる。
(手順)
上記に列挙した溶媒から1種類の溶媒を選択し、該溶媒の表面張力γ(0)溶媒を測定する。前記γ(0)溶媒を求めた溶媒と同じ液に該化合物を添加し、該化合物の濃度を0.01質量%ずつ増加させ、表面張力の変化が0.01mN/m以下になったときの溶液の表面張力γ(飽和)溶媒を測定する。前記γ(0)溶媒と前記γ(飽和)溶媒の関係が、
γ(0)溶媒 − γ(飽和)溶媒 > 1 mN/m
であれば、該化合物は該溶媒に対して強い表面活性を有する物質であると判断する。
【0060】
界面活性剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。その他、界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
これらの界面活性剤の添加量はインク全体量の0.2重量%から10重量%までの添加量が好ましく、0.5重量%から8重量%が更に好ましく、1重量%から5重量%が特に好ましい。また、液体Aへの添加量は液体Bへの添加量より少ないことが好ましい。
【0061】
<第1の液体A(第1の液滴a1、液滴a2・・・)>
本発明おける第1の液体A(第1の液滴a1、液滴a2・・・)は、被記録媒体上に予め付与された後述の第2の液体Bの上に打滴して記録画像を構成するものである。
第1の液体Aは、重合性もしくは架橋性材料を含有することが好ましい。更に必要に応じて着色剤、重合開始剤、増感色素、共増感剤、親油性溶剤、その他成分を用いて構成することができる。以下、これらの各成分について説明する。
【0062】
(重合性もしくは架橋性材料)
本発明における重合性もしくは架橋性材料は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合もしくは架橋反応を生起し、硬化する機能を有するものである。
【0063】
重合性もしくは架橋性材料としては、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、二量化反応など公知の重合性もしくは架橋性材料(以下、まとめて重合性材料という)を適用することができる。
【0064】
本発明に用いられる重合性もしくは架橋性材料は、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、カチオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましい。
重合性化合物は反応速度や、インク物性、硬化膜物性等を調整する目的で1種または複数を混合して用いることができる。また、重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。
【0065】
〜カチオン重合性モノマー〜
本発明において重合性もしくは架橋性材料として用いられる光カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0066】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどが挙げられる。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0067】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン等があげられる。
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0068】
本発明に用いうる単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0069】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0070】
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0071】
本発明で用いられる単官能オキセタンの例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0072】
多官能オキセタンの例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0073】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
本発明で使用するオキセタン化合物のなかでも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
【0074】
本発明のインク組成物には、これらの重合性もしくは架橋性材料は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、少なくとも1種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを併用することが好ましい。
【0075】
〜ラジカル重合性モノマー〜
本発明においては、重合性もしくは架橋性材料として光ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル重合性モノマーを使用することも好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、等が挙げられる。なお、本明細書において「アクリレート」、「メタクリレート」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0076】
本発明に用いられる(メタ)アクリレートとしては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル基(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
【0077】
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0078】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等を挙げることができる。
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0080】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0081】
本発明に用いられる芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0082】
さらに本発明におけるラジカル重合性モノマーとしてはビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、ビニルエーテル[メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
【0083】
これらのうち、本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては硬化速度の点から、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、特に硬化速度の点から4官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、インク組成物の粘度の観点から上記多官能(メタ)アクリレート、と単官能もしくは2官能の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドを併用することが好ましい。
【0084】
重合性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性材料の、第1の液体又は必要に応じて第2の液体中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲が好ましく、70〜99.0質量%の範囲がより好ましく、80〜99.0質量%の範囲がさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲が好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲が特に好ましい。
【0085】
(着色剤)
第1の液体Aには、着色剤の少なくとも一種を含有することができ、単色の若しくは多色の可視画像の記録が可能な構成とすることができる。
なお、着色剤は、第1の液体A以外の第2の液体B又はその他の液体に含有してもよい。
好ましくは第一の液体A中の含有量が1〜30質量%であり、更に好ましくは1.5〜25質量%であり、特に好ましくは2〜15質量%である。
また、第二の液体B中の含有量は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の顔料、染料を適宜選択して用いることができる。
【0086】
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。さらに、市販の顔料分散体や表面処理された顔料、例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0087】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0088】
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0089】
青あるいはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、PB15:3等のC.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0090】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0091】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0092】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0093】
着色剤の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
着色剤の分散を行う際には、市販の分散剤を利用することができる。分散剤としては高分子分散剤が好ましく、高分子分散剤としては、efka社の4000シリーズ等の高分子分散剤、Zeneca社のSolsperseシリーズ、BYK−chemie社のdisperbykシリーズ等が挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0094】
インク組成物において着色剤などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性もしくは架橋性材料を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線硬化型のインクであることが好ましく、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性もしくは架橋性材料を用い、なかでも、最も粘度が低い重合性もしくは架橋性材料を選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0095】
ここで用いる着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01〜0.4μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.2μmの範囲である。最大粒径は3μm以下、好ましくは1μm以下となるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
インク組成物中における着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。本発明においては、レーザー回折・散乱法を用いた測定により得られた値を採用する。
着色剤はインク組成物中、固形分換算で1〜20質量%添加されることが好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0096】
(重合開始剤)
本発明における第1の液体A及び/又は第2の液体Bには、重合性化合物を含有する態様においてラジカル重合、若しくは、カチオン重合の重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することが特に好ましい。
本発明における重合開始剤は光の作用、または、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から前記光ラジカル発生剤、又は光酸発生剤であることが好ましい。
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0097】
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier”Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0098】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
【0099】
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0100】
(b)芳香族オニウム塩としては、周期律表の第V、VIおよびVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、またはIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、および同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、および同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、および特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、および同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0101】
(c)「有機過酸化物」としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0102】
(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0103】
(e)ケトオキシムエステルとしては3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0104】
本発明における光重合開始剤の他の例である(f)ボレート塩の例としては米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
光重合開始剤の他の例である(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号各公報記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0105】
光重合開始剤の他の例である(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0106】
(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、および同0388343号各明細書、米国特許3901710号、および同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、および特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、および同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、および同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、および特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、および特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0107】
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0108】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0109】
上記(a)〜(j)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0110】
【化6】

【0111】
【化7】

【0112】
【化8】

【0113】
【化9】

【0114】
【化10】

【0115】
【化11】

【0116】
【化12】

【0117】
【化13】

【0118】
重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
2種の重合開始剤を組み合わせたものの具体例としては、例えば、下記「重合開始剤−2」(Irg250、チバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。
【0119】
【化14】

【0120】
インク組成物中の重合開始剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0121】
(増感色素)
本発明においては、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加しても良い。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10−ジブトキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0122】
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0123】
【化15】

【0124】
式(IX)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。
【0125】
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−または−NR62−または−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同してして色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0126】
一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0127】
【化16】

【0128】
【化17】

【0129】
(共増感剤)
さらに本発明のインク組成物には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えても良い。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0130】
別の例としてはチオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0131】
(親油性溶剤)
本発明における第1の液体A及び第2の液体B(好ましくは第2の液体B)は、親油性溶剤を含有することができる。
親油性溶剤は、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生防止に効果的であると共に、第1の液体及び第2の液体のsp値を既述の範囲に調整することができる。
「親油性」とは、水100ccに対して1g以下の溶解性を有する化合物をいう。
【0132】
なお、親油性溶剤は、第2の液体Bに含有すると共にあるいは含有せずに、第1の液体Aに含有することもできる。また、第2の液体B並びに第1の液体A以外の他の液体に含有するようにしてもよい。
【0133】
親油性溶剤としては、高沸点有機溶媒、前述の重合性化合物などが挙げられ、ノズル固化回避などに対しては高沸点有機溶剤が好ましく、インクにより形成する膜の膜強度を高めるためには重合性化合物を用いることが好ましい。
以下、本発明において好適な高沸点有機溶媒について説明する。
【0134】
前記高沸点有機溶媒としては、(1) 25℃での粘度が100mPa・s以下又は60℃での粘度が30mPa・s以下であり、かつ(2) 沸点が100℃よりも高いものが好ましい。
【0135】
前記(1) の粘度条件のいずれをも満たさない高沸点有機溶媒では、粘度が高くなって、被記録媒体上への付与に支障を来すことがあり、前記(2) の沸点条件を満たさない高沸点有機溶媒では、沸点が低くなりすぎて画像記録中に蒸発し、本発明の効果が低下することがある。
【0136】
前記(1) の条件のうち、25℃での粘度は、更に70mPa・s以下の範囲が好ましく、40mPa・s以下の範囲がより好ましく、20mPa・s以下の範囲が特に好ましい。60℃での粘度は、更に20mPa・s以下の範囲が好ましく、10mPa・s以下の範囲が特に好ましい。また、前記(2) の条件については、沸点は150℃以上の範囲がより好ましく、170℃以上の範囲が特に好ましい。また、融点の下限値としては80℃以下の範囲が好ましい。更には、水の溶解度(25℃)が4g以下であるものが好ましく、3g以下の範囲がより好ましく、2g以下の範囲がさらに好ましく、1g以下の範囲が特に好ましい。
【0137】
ここでの「粘度」は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10r.p.m.の回転数にて測定を行なった。但し、60mPa・sより高粘なものについては、必要により回転数を5r.p.m.、2.5r.p.m.、1r.p.m.、0.5r.p.m.等に変化させて測定を行なった。
【0138】
なお、「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
【0139】
前記高沸点有機溶媒としては、下記式〔S−1〕〜〔S−9〕で表される化合物が好ましい。
【0140】
【化18】

【0141】
前記式〔S−1〕においてR1、R2及びR3は各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表す。また、a,b,cは、各々独立に0又は1を表す。
【0142】
式〔S−2〕においてR4及びR5は各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表し、R6は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I以下同じ)、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、dは0〜3の整数を表す。dが複数のとき、複数のR6は同じでも異なっていてもよい。
【0143】
式〔S−3〕においてArはアリール基を表し、eは1〜6の整数を表し、R7はe価の炭化水素基又はエーテル結合で互いに結合した炭化水素基を表す。
【0144】
式〔S−4〕においてR8は脂肪族基を表し、fは1〜6の整数を表し、R9はf価の炭化水素基又はエーテル結合で互いに結合した炭化水素基を表す。
【0145】
式〔S−5〕においてgは2〜6の整数を表し、R10はg価の炭化水素基(ただしアリール基を除く)を表し、R11は脂肪族基又はアリール基を表す。
【0146】
式〔S−6〕においてR12、R13及びR14は各々独立に、水素原子、脂肪族基又はアリール基を表す。Xは−CO−又は−SO2−を表す。R12とR13又はR13とR14は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0147】
式〔S−7〕においてR15は脂肪族基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリール基又はシアノ基を表し、R16はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、hは0〜3の整数を表す。hが複数のとき、複数のR16は同じでも異なっていてもよい。
【0148】
式〔S−8〕においてR17及びR18は、各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表し、R19はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、iは0〜5の整数を表す。iが複数のとき、複数のR19は同じでも異なっていてもよい。
【0149】
式〔S−9〕においてR20及びR21は、各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表す。jは1又は2を表す。R20及びR21は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0150】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21が脂肪族基又は脂肪族基を含む基であるとき、脂肪族基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、また不飽和結合を含んでいても置換基を有していてもよい。置換基の例として、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、エポキシ基等がある。
【0151】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21が環状脂肪族基、すなわちシクロアルキル基であるか、又はシクロアルキル基を含む基であるとき、シクロアルキル基は3〜8員の環内に不飽和結合を含んでよく、また置換基や架橋基を有していてもよい。置換基の例としてハロゲン原子、脂肪族基、ヒドロキシル基、アシル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基等があり、架橋基の例としてメチレン、エチレン、イソプロピリデン等が挙げられる。
【0152】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21、Arがアリール基又はアリール基を含む基であるとき、アリール基はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0153】
式〔S−3〕、〔S−4〕、〔S−5〕においてR7、R9又はR10が炭化水素基であるとき、炭化水素基は環状構造(例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環)や不飽和結合を含んでいてもよく、また置換基を有していてもよい。置換基の例としてハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エポキシ基等がある。
【0154】
以下に、式〔S−1〕〜〔S−9〕で表される高沸点有機溶媒の中でも、特に好ましい高沸点有機溶媒について述べる。
式〔S−1〕においてR1、R2及びR3は、各々独立して、炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基(例えばn−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、EH−オクチル、2−エチルヘキシル、3,3,5−トリメチルヘキシル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、ベンジル、オレイル、2−クロロエチル、2,3−ジクロロプロピル、2−ブトキシエチル、2−フェノキシエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えばフェニル、クレジル、p−ノニルフェニル、キシリル、クメニル、p−メトキシフェニル、p−メトキシカルボニルフェニル)が好ましい。これらの中でも、R1、R2及びR3は特に、n−ヘキシル、n−オクチル、EH−オクチル、2−エチルヘキシル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ドデシル、2−クロロエチル、2−ブトキシエチル、シクロヘキシル、フェニル、クレジル、p−ノニルフェニル、クメニルが好ましい。
a、b、cは各々独立に0又は1であり、より好ましくはa、b、cすべて1である。
【0155】
式〔S−2〕においてR4及びR5は、各々独立して、炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基(例えば前記R1について挙げた脂肪族基と同じ基、ヘプチル、エトキシカルボニルメチル、1,1−ジエチルプロピル、2−エチル−1−メチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、1−エチル−1,5−ジメチルヘキシル、3,5,5−トリメチルシクロヘキシル、メンチル、ボルニル、1−メチルシクロヘキシル)、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記R1について挙げたアリール基、4−t−ブチルフェニル、4−t−オクチルフェニル、1,3,5−トリメチルフェニル、2,4,−ジ−t−ブチルフェニル、2,4,−ジ−t−ペンチルフェニル)が好ましい。これらの中でも、R4及びR5は更に、脂肪族基が好ましく、特に、n−ブチル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、2−ブトキシエチル、エトキシカルボニルメチルが好ましい。
6はハロゲン原子(好ましくは塩素原子)、炭素原子数1〜18のアルキル基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ドデシル)、炭素原子数1〜18のアルコキシ基(例えばメトキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ベンジルオキシ)、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−トリルオキシ、4−メトキシフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ)又は炭素原子数2〜19のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル)又は炭素原子数6〜25のアリールオキシカルボニル基が好ましい。これらの中でも、R6は更に、アルコキシカルボニル基が好ましく、特に、n−ブトキシカルボニルが好ましい。
dは0又は1である。
【0156】
式〔S−3〕においてArは炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えばフェニル、4−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、4−n−ブトキシフェニル、1,3,5−トリメチルフェニル、2−(2−n−ブトキシカルボニルフェニル)フェニル)が好ましく、これらの中でも、Arは特に、フェニル、2,4−ジクロロフェニル、2−(2−n−ブトキシカルボニルフェニル)フェニルが好ましい。
eは1〜4(好ましくは1〜3)の整数である。
7はe価の炭素原子数2〜24(好ましくは2〜18)の炭化水素基〔例えば前記R4について挙げた脂肪族基、n−オクチル、前記R4について挙げたアリール基、−(CH22−、
【0157】
【化19】

【0158】
〕又はe価の炭素原子数4〜24(好ましくは4〜18)のエーテル結合で互いに結合した炭化水素基〔例えば、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2(OCH2CH23−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、
【0159】
【化20】

【0160】
〕が好ましい。これらの中でも、R7は、更にアルキル基が好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシルが好ましい。
【0161】
式〔S−4〕においてR8は炭素原子数1〜24(好ましくは1〜17)の脂肪族基(例えばメチル、n−プロピル、1−ヒドロキシエチル、1−エチルペンチル、n−ヘプチル、n−ウンデシル、n−トリデシル、ペンタデシル、8,9−エポキシヘプタデシル、シクロプロピル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)が好ましく、これらの中でも、R8は特に、n−ヘプチル、n−トリデシル、1−ヒドロキシエチル、1−エチルペンチル、8,9−エポキシヘプタデシルが好ましい。
fは1〜4(好ましくは1〜3)の整数である。
9はf価の炭素原子数2〜24(好ましくは2〜18)の炭化水素基又はf価の炭素原子数4〜24(好ましくは4〜18)のエーテル結合で互いに連結した炭化水素基(例えば前記R7について挙げた基、1−メチル−2−メトキシエチル、2−ヘキシルデシル)が好ましく、これらの中でも、R9は特に、2−エチルヘキシル、2−ヘキシルデシル、1−メチル−2−メトキシエチル、
【0162】
【化21】

【0163】
が好ましい。
【0164】
式〔S−5〕においてgは2〜4(好ましくは2又は3)である。
10はg価の炭化水素基〔例えば、−CH2−、−(CH22−、−(CH24−、−(CH27−、−(CH28−、
【0165】
【化22】

【0166】
〕が好ましく、これらの中でも、R10は特に、−(CH24−、−(CH28−、
【0167】
【化23】

【0168】
が好ましい。
11は炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記R4について挙げた脂肪族基、アリール基)が好ましく、これらの中でも、R11は、更にアルキル基が好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシルが好ましい。
【0169】
式〔S−6〕において、R12は水素原子、炭素原子数1〜24の脂肪族基(好ましくは3〜20)〔例えばn−プロピル、1−エチルペンチル、n−ウンデシル、n−ペンタデシル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシメチル、4−t−オクチルフェノキシメチル、3−(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)プロピル、1−(2,4−ジ−t−ブチルフェキシ)プロピル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、8−N,N−ジエチルカルバモイルオクチル〕、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記Arについて挙げたアリール基、3−メチルフェニル、2−(N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル)フェニル)が好ましく、これらの中でも、R12は特に、n−ウンデシル、8−N,N−ジエチルカルバモイルオクチル、3−メチルフェニル、2−(N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル)フェニルが好ましい。
13及びR14は、水素原子、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)の脂肪族基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、シクロペンチル、シクロプロピル)又は炭素原子数6〜18(好ましくは6〜15)のアリール基(例えばフェニル、1−ナフチル、p−トリル)が好ましく、これらの中でも、R13及びR14は特に、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチル、n−テトラデシル、フェニルが好ましい。
13とR14とが互いに結合し、Nとともにピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成してもよく、R12とR13とが互いに結合し、Nとともにピロリドン環、ピペリジン環を形成してもよい。
Xは−CO−又は−SO2−であり、好ましくはXは−CO−である。
【0170】
式〔S−7〕においてR15は炭素原子数1〜24(好ましくは3〜18)の脂肪族基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル、t−ペンチル、t−ヘキシル、t−オクチル、2−ブチル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ドデシル、2−ヘキサデシル、t−ペンタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル)、炭素原子数2〜24(好ましくは5〜17)のアルコキシカルボニル基(例えばn−ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル)、炭素原子数7〜24(好ましくは7〜18)のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、クレジルオキシカルボニル基)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)のアルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル、n−ブチルスルホニル、n−ドデシルスルホニル)、炭素原子数6〜30(好ましくは6〜24)のアリールスルホニル基(例えばp−トリルスルホニル、p−ドデシルフェニルスルホニル、p−ヘキサデシルオキシフェニルスルホニル)、炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリール基(例えばフェニル、p−トリル)又はシアノ基が好ましく、これらの中でも、R15は、更に炭素原子数1〜24の脂肪族基、炭素原子数2〜24のアルコキシカルボニル基がより好ましく、特に、炭素原子数1〜24の脂肪族基が好ましい。
16はハロゲン原子(好ましくはCl)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)の脂肪族基{より好ましくは、アルキル基(例えば前記R15について挙げたアルキル基)、炭素原子数3〜18(更に好ましくは5〜17)のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)}、炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリール基(例えばフェニル、p−トリル)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)のアルコキシ基(例えばメトキシ、n−ブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ベンジルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ)又は炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−t−ブチルフェノキシ、p−t−オクチルフェノキシ、m−ペンタデシルフェノキシ、p−ドデシルオキシフェノキシ)であり、これらの中でも、R16は、更に炭素原子数1〜24の脂肪族基がより好ましく、特に炭素原子数1〜12の脂肪族基が好ましい。
hは1〜2の整数である。
【0171】
式〔S−8〕においてR17及びR18の好ましい例は、前記R13及びR14における水素原子以外の例と同じであり、これらの中でも、R17及びR18は、更に脂肪族基がより好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、n−ドデシルが好ましい。但し、R17及びR18は互いに結合して環を形成することはない。
19の好ましい例は、前記R16と同じであり、これらの中でもR19は、更にアルキル基及びアルコキシ基がより好ましく、特に、n−オクチル、メトキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシが好ましい。
iは1〜5の整数である。
【0172】
式〔S−9〕においてR20及びR21の好ましい例は、結合して環を形成しない場合には、前記R1、R2及びR3と同じであり、これらの中でもR20及びR21は、特に、炭素原子数1〜24の置換又は無置換の脂肪族基が好ましい。
20とR21とが互いに結合し環を形成してもよく、形成される環としては、3〜10員環が好ましく、5〜7員環が特に好ましい。
jは1又は2を表し、好ましくは、jは1である。
【0173】
以下、高沸点有機溶媒の具体例(例示化合物S−1〜S−53)並びに、各高沸点有機溶媒の粘度(25℃及び60℃の環境下、前記手段により測定した値;mPa・s)及び沸点(℃)を示す。
ここで、高沸点有機溶媒の沸点は、減圧蒸留時の沸点から常圧に換算した値である。なお、下記具体例において、沸点の記載のないものは170℃で沸騰しないことが確認されたものであり、25℃における粘度の記載のないものは25℃で固体であることを表す。
【0174】
【化24】

【0175】
【化25】

【0176】
【化26】

【0177】
【化27】

【0178】
【化28】

【0179】
【化29】

【0180】
【化30】

【0181】
【化31】

【0182】
【化32】

【0183】
高沸点有機溶媒は、1種類を単独で用いても、2種以上〔例えば、トリクレジルホスフェートとジブチルフタレート、トリオクチルホスフェートとジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブチルフタレートとポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)〕を混合して使用してもよい。
【0184】
高沸点有機溶媒の前記以外の化合物例、及び/又はこれら高沸点有機溶媒の合成方法については、例えば、米国特許第2,322,027号、同第2,533,514号、同第2,772,163号、同第2,835,579号、同第3,594,171号、同第3,676,137号、同第3,689,271号、同第3,700,454号、同第3,748,141号、同第3,764,336号、同第3,765,897号、同第3,912,515号、同第3,936,303号、同第4,004,928号、同第4,080,209号、同第4,127,413号、同第4,193,802号、同第4,207,393号、同第4,220,711号、同第4,239,851号、同第4,278,757号、同第4,353,979号、同第4,363,873号、同第4,430,421号、同第4,430,422号、同第4,464,464号、同第4,483,918号、同第4,540,657号、同第4,684,606号、同第4,728,599号、同第4,745,049号、同第4,935,321号、同第5,013,639号、欧州特許第276,319A号、同第286,253A号、同第289,820A号、同第309,158A号、同第309,159A号、同第309,160A号、同第509,311A号、同第510,576A号、東独特許第147,009号、同第157,147号、同第159,573号、同第225,240A号、英国特許第2,091,124A号等の各明細書、特開昭48−47335号、同50−26530号、同51−25133号、同51−26036号、同51−27921号、同51−27922号、同51−149028号、同52−46816号、同53−1520号、同53−1521号、同53−15127号、同53−146622号、同54−91325号、同54−106228号、同54−118246号、同55−59464号、同56−64333号、同56−81836号、同59−204041号、同61−84641号、同62−118345号、同62−247364号、同63−167357号、同63−214744号、同63−301941号、同64−9452号、同64−9454号、同64−68745号、特開平1−101543号、同1−102454号、同2−792号、同2−4239号、同2−43541号、同4−29237号、同4−30165号、同4−232946号、同4−346338号等の各公報に記載されている。
【0185】
本発明においては、沸点が100℃よりも高い高沸点有機溶媒が好適であり、更には沸点が170℃よりも高い高沸点有機溶媒が好ましい。
【0186】
親油性溶剤のインク組成物中における添加量としては、該液体の全質量に対して、50%質量以上100質量%以下の範囲が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0187】
(その他成分)
上記した成分以外に、公知の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
〜貯蔵安定剤〜
本発明における第1の液体A及び第2の液体B(好ましくは第1の液体Aに)には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性もしくは架橋性材料と共存させて用いることが好ましく、また、含有する液滴又は液体あるいは共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0188】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0189】
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性もしくは架橋性材料の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、液中における固形分換算で、0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
【0190】
〜導電性塩類〜
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性が良い場合には、適当量添加してもよい。
前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0191】
〜溶剤〜
本発明においては、既述の高沸点溶剤以外の溶剤を用いることができる。溶剤としては、液(インク)の極性や粘度、表面張力、着色材料の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で使用できる。
なお、溶剤は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが、速乾性及び線幅の均一な高画質画像を記録する点で好ましいことから、中でも既述した高沸点有機溶媒を用いた構成とするのが望ましい。
【0192】
100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高いものを用いることが好ましく、安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0193】
溶剤は一種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量は各液中0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、実質的に含まないのが好ましい。本発明における第1の液体A及び第2の液体Bに水を含有すると、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性の点、及び非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いたときの乾燥性の点で好ましくない。なお、実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
【0194】
〜その他添加剤〜
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0195】
さらに、インク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる。また、メガファックF475(大日本インキ化学工業(株)製)などのフッ素系界面活性剤を添加することもできる。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0196】
また、上記のほか、混合により反応して凝集物を生成するか、増粘する1組の化合物をそれぞれ、本発明における第1の液体Aと第2の液体Bとに分けて含有することができる。前記1組の化合物は、凝集体を急速に形成させるか、あるいは液を急速に増粘させる特徴を有するものであり、これにより互いに隣接する液滴間の合一をより効果的に抑制することができる。
前記1組の化合物の反応例としては、酸/塩基反応、カルボン酸/アミド基含有化合物による水素結合反応、ボロン酸/ジオールに代表される架橋反応、カチオン/アニオンによる静電的相互作用による反応等が挙げられる。
【0197】
<第2の液体B>
本発明においては、既述の第1の液滴a1を打滴する前に予め、被記録媒体上に、該被記録媒体上における少なくとも第1の液滴a1、液滴a2で打滴形成される画像と同一領域もしくは該画像より広い領域に、第1の液滴a1、液滴a2、・・・(第1の液体A)と組成の異なる第2の液体Bを付与しておく。
第2の液体Bは、重合開始剤、親油性溶剤を含有することも好ましい態様である。更に必要に応じて着色剤、増感色素、共増感剤、その他成分を用いて構成することができる。これらの成分の詳細については、前述のとおりである。好ましい態様としては液体Bには着色剤が1質量%以下であることであり、0.5質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0198】
第2の液体Bは、sp値が35以下となるように調製されており、非水溶性であって、油溶性の有機溶剤系側の性質に調整された状態にあることが好ましい。既述の少なくとも第1の液滴a1は、重合性もしくは架橋性材料を含んで有機溶剤系に好適に調製でき、有機溶剤系に調製されているときには第2の液体Bと混合しやすく、互いに接触して重なり部分を有するように打滴される第1の液滴a1と液滴a2間の合一を効果的に回避できる。これにより、既述のように、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生を効果的に防止される。
【0199】
第2の液体Bのsp値の調整は、親油性溶剤(高沸点有機溶媒、重合性材料)などを用いて好適に行なえる。好ましい調整態様の一つとして、親油性溶剤(高沸点有機溶媒、重合性材料)を第2の液体Bの全質量の50質量%以上100質量%以下の範囲で含有する構成とすることができる。親油性溶剤の含有量が前記範囲内であると、sp値を低減して35以下の範囲に調整することができる。sp値の好ましい範囲は30以下である。
【0200】
ノズル固化回避の観点では高沸点有機溶媒を用いることが好ましく、画像形成後のインク膜の強度に関しては重合性材料を用いることが好ましい。
【0201】
≪インクジェット記録方法≫
本発明のインクジェット記録方法は、前述のインクジェット記録用インクセットを用い、前記第2の液体Bを前記第1の液体Aで形成される前記画像と同一もしくは該画像よりも広い範囲に予め前記被記録媒体に付与しておくことを特徴とする。ここで、前記第1の液体Aを少なくとも第1の液滴a1及び液滴a2にて、前記液滴a1と前記液滴a2とを重なり部分をもって打滴することで所望の画像を記録する態様が好ましい。
【0202】
インクジェット記録方法においては、被記録媒体として、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体が用いられる場合がある。このような液体吸収性の低い被記録媒体に画像記録を行なうときには、高い画像濃度を得るために、互いに重なり部分を有して付与された隣接の液滴(第1の液滴a1と液滴a2)が乾燥前に媒体上に留まって接触していると、互いに合一して画像の滲みや細線の線幅が不均一になって先鋭な画像の形成性が損なわれやすい。そこで、第1の液滴a1及び液滴a2の打滴前に、予め第2の液体Bのsp値を特定する構成により、液滴a1及び液滴a2が互いに重なり部分を有して付与されても液滴a1及び液滴a2間の合一を抑えて、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生が効果的に防止される。その結果、高画像濃度の画像解像度を確保しつつ、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、高品質の画像を記録することができる。また、ベタツキがなく擦過性にも優れる。
【0203】
ここで、非浸透性の記録媒体とは、実質的に液滴が浸透しない媒体をいう。「実質的に浸透しない」とは、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、緩浸透性記録媒体とは、10pl(ピコリットル)の液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100m秒以上である媒体をいい、具体的にはアート紙などが挙げられる。非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体の詳細については後述する。
なお、浸透性の記録媒体は、10plの液滴を被記録媒体上に滴下した場合に全液量が浸透するまでの時間が100m秒以下である媒体であり、具体的には普通紙、多孔質紙などである。
【0204】
上記の被記録媒体上には、第1の液滴a1を打滴した後、後続の第1の液滴a2を前記液滴a1と重なり部分を有するように打滴することが好ましい。そして、第1の液滴a1及び液滴a2の付与前には予め、第1の液体Aと組成の異なる第2の液体Bを、被記録媒体上における前記液滴a1及び前記液滴a2で打滴形成される画像と同一領域もしくは該画像より広い領域に付与する。
【0205】
本発明においては、画像を形成するための液体として、第1の液滴a1及び液滴a2を含む第1の液体Aと、これと組成の異なる第2の液体Bとを用いる。ここで、第1の液滴a1及び液滴a2は、単一の第1の液体Aを用いてインク吐出口から打滴される液滴a1、a2、a3、・・・axにおける液滴であって重なり合って打滴されるものを意味する。打滴が同時である液滴であってもよいし、先行打滴と後続打滴の関係である先行液滴と後続液滴であってもよく、先行液滴と後続液滴であることが好ましい。第1の液体Aと第2の液体Bとは組成が異なる液体である。
【0206】
本発明のインクジェット記録方法においては、既述の第1の液滴a1及び液滴a2を、インクジェットノズル等を用いて打滴するようにし、第2の液体Bについては、必ずしもインクジェットノズルを用いた噴射による付与に限られず、塗布等の他の手段によって付与することができる。
【0207】
次に、被記録媒体上に第2の液体Bを付与する際の付与手段について説明する。なお、第1の液滴a1及び液滴a2(第1の液体A)を打滴する打滴手段については、前記のようにインクジェットノズルを用いた噴射を中心に説明する。以下に、具体例を示す。
【0208】
(i)塗布装置を用いた塗布
塗布装置を用いて、第2の液体Bを被記録媒体上に塗布し、その後に液滴a1及び液滴a2(第1の液体A)をインクジェットノズルにより打滴することによって、画像記録する態様は好適である。
【0209】
塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
また、インクジェットノズルは、特に制限はなく、公知のノズルから目的等に応じて適宜選択することができる。なお、インクジェット記録方式については後述する。
【0210】
なお、第1の液滴a1及び液滴a2(第1の液体A)並びに第2の液体B以外の他の液体を用いてもよく、他の液体については、前記塗布装置による塗布やインクジェットノズルによる噴射など、いかなる方法で記録媒体上に付与してもよく、また、付与のタイミングも特に限定されるものではない。着色剤を含有する場合には、インクジェットノズルでの噴射によるのが好ましく、第2の液体Bを塗布した後に付与することが好ましい。
【0211】
(ii)インクジェットノズルによる噴射
インクジェットノズルによって第2の液体Bを液滴b1、液滴b2、液滴b3、・・・液滴bxにて噴射し、その後に第1の液滴a1、液滴a2、液滴a3、・・・液滴ax(第1の液体A)をインクジェットノズルにより打滴することによって、画像記録する態様は好適である。インクジェットノズルについては、前記同様である。
【0212】
この場合もまた、第1の液滴a1及び液滴a2(第1の液体A)並びに第2の液体B以外の他の液体については、塗布装置による塗布や、インクジェットノズルによる噴射など、いかなる方法で被記録媒体上に付与してもよく、付与のタイミングも特に限定されるものではない。着色剤を含有する場合には、インクジェットノズルでの噴射によるのが好ましく、第2の液体Bをノズルから噴射した後に更に噴射して付与されることが好ましい。
【0213】
次に、インクジェットノズルによる噴射の方式(インクジェット記録方式)について説明する。
本発明においては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式、等の公知の方式が好適である。
なお、インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0214】
前記(i)の付与手段による場合、予め被記録媒体上に塗布された第2の液体Bの上に更に、少なくとも第1の液滴a1及び第1の液滴a2が、インクジェット記録方式によって打滴され、画像形成される。前記(ii)の付与手段による場合は、予めインクジェット記録方式により被記録媒体上に付与された第2の液体Bの上に更に、少なくとも第1の液滴a1及び第1の液滴a2がインクジェット記録方式により打滴され、画像形成される。
【0215】
本発明においては、液滴a1と液滴a2とが重なり部分を有することにより、単位長さ当たりの打滴数が増し、より高解像度の画像記録が可能となる。このとき、第2の液体Bを被記録媒体上に付与した後、1秒以下の間に第1の液滴a1及び液滴a2を打滴することが好ましい。
【0216】
重なり部分を有して打滴する際の重なり率は、少なくとも液滴a1と液滴a2とが重なって打滴されてから1秒後の重なり率であり、特に第1の液滴a1を打滴した後の第1の液滴a2の打滴から1秒後の重なり部分における重なり率が10%以上90%以下となるように打滴するようにするのが好ましい。より高解像度の画像記録に有効である。
中でも、重なり率は、20%以上80%以下であるのが好ましく、30%以上70%以下であるのが好ましい。
【0217】
前記重なり率とは、隣接する液滴(液滴a1、液滴a2、・・・)が、いかなる割合で重なっているかを示す指標である。記録媒体上に着弾後の液滴の直径をaとした場合、1/2aが重なっている場合には重なり率は50%である。本発明における場合、隣接して打滴された液滴は互いに合一せずに打滴形状を保持しうるが、重なり率は、1滴打滴して1秒後の液滴半径をbとし、隣接打滴間の間隔をcとしたとき、100×(2b−c)/2b[%]で表される。
【0218】
画像記録の際、第1の液滴a1及び第1の液滴a2の1打滴当たりの第2の液体Bの付与量のバランスとしては、液滴a1又は液滴a2の量を1とした場合の第2の液体Bの付与量(質量比)は0.05〜5の範囲が好ましく、0.07〜1の範囲がより好ましく、0.1〜1の範囲が特に好ましい。
【0219】
打滴された前記液体A(第1の液滴a1及び/又は液滴a2を含む)は、0.1pL(ピコリットル;以下同様)以上100pL以下の液滴サイズにて(好ましくはインクジェットノズルにより)打滴されるのが好ましい。液滴サイズが前記範囲内であると、高先鋭度の画像を濃度で描写できる点で有効である。また、より好ましくは0.5pL以上50pL以下である。
また、第2の液体Bについても液滴サイズは第1の液体Aと同様の範囲が好ましい。
【0220】
また、第2の液体Bの付与後、前記液体A(少なくとも前記第1の液滴a1)が打滴されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上400m秒以下の範囲内であるのが好ましい。打滴間隔が前記範囲内であると、本発明の効果を顕著に奏し得る点で有効である。打滴間隔は、より好ましくは10μ秒以上300m秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上200μ秒以下である。
【0221】
なお、インクジェット記録方式によって被記録媒体上に噴射される第1の液体A(液滴)並びに第2の液体B(液滴)の物性については、装置により異なるが、一般にはそれぞれ、25℃での粘度は5〜100mPa・sの範囲が好ましく、10〜80mPa・sがより好ましい。第1の液体Aと第2の液体Bとの関係において、粘度差(25℃)は25mPa・s以内が好ましい。
【0222】
本発明において、上記のように予め第2の液体Bを付与しておき、その後に前記液体A(少なくとも前記第1の液滴a1)を打滴した後には、優れた定着性を得る観点から、エネルギーを付与することで記録画像を固定化する工程を設けることができる。エネルギーの付与により、含まれる重合性もしくは架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応を促進させ、より強固な画像をより効率よく形成することができる。例えば重合開始剤を含む系では、活性光や加熱などの活性エネルギーの付与により重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性もしくは架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応が促進される。
エネルギーの付与は、活性光の照射、又は加熱によって好適に行なうことができる。
【0223】
前記活性光としては、例えば、紫外線、可視光線など、並びにα線、γ線、X線、電子線などが使用できる。これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点で好ましく、紫外線が特に好ましい。
硬化反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般には1〜500mJ/cm2程度である。
【0224】
また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
加熱は、非接触型の加熱手段を使用して行なうことができ、オーブン等の加熱炉内を通過させる加熱手段や、紫外光〜可視光〜赤外光等の全面露光による加熱手段等が好適である。加熱手段としての露光に好適な光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、水銀灯等が挙げられる。
【0225】
本発明においては、題2の液体Bと第1の液体Aとの打滴の間に前記活性光線で硬化させる過程を含むことも可能であるが、第1の液体Aの打滴を開始するまでの間は予め被記録媒体に付与された第2の液体Bを液体状に保持することが好ましく、したがって、全く硬化させない、又は半硬化させることが好ましい態様である。
【0226】
<被記録媒体>
被記録媒体としては、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いることもできる。
非浸透性の記録媒体としては、例えば、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。また、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した基材も使用できる。
【0227】
前記合成樹脂としては、いかなる合成樹脂も使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。合成樹脂を用いた場合の厚みや形状としては、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれでもよく、特に限定されるものではなく、透明又は不透明のいずれであってもよい。
【0228】
前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状にして用いることも好ましく、各種非吸収性のプラスチックス及びそのフィルムを用いることができる。プラスチックスフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等が挙げられる。その他プラスチックスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などを使用できる。
【0229】
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。特に好ましいのは、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
【0230】
前記金属としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛等、又はステンレス等、及びこれらの複合材料が好適である。
【0231】
また更に、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスク等を用いることも可能であり、レーベル面側にインク受容層および光沢付与層を付与することもできる。
【実施例】
【0232】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0233】
〔実施例1〜7〕〔比較例1、2〕
<シアン顔料分散物の調製>
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)16g、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221;東亞合成(株)製)48g、及びBYK−168(ビックケミー社製)16gを混合し、スターラーで1時間攪拌した。攪拌後の混合物をアイガーミルにて分散し、顔料分散物P−1を得た。
ここで、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間1時間とした。
【0234】
<シアン顔料を含有するインクジェット記録用液体A−1の調製>
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、第1の液体Aとして、インクジェット記録用液体A−1を調製した。インクジェット記録用液体A−1のsp値は18、表面張力は32N/m、含水率は1質量%であった。
・上記の顔料分散物P−1 ・・・ 3.75g
・ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル・・・0.825g
・1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−
オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000
ダイセル・サイテック(株)製) ・・・8.925g
・下記重合開始剤−2
(Irg250、チバスペシャリティーケミカルズ社製) ・・・ 1.5g
【0235】
【化33】

【0236】
sp値は、既述のように、R.L.smith(東北大学)によるsp値計算プログラムにより計算した(25℃)。以下、同様である。但し、炭素原子を含まない化合物は計算から除くと共に、ポリマーやポリエチレン鎖等の構成単位については結合手を持つ飽和の繰り返し単位とし、水は47.8として計算した。
【0237】
<シアン顔料を含有するインクジェット記録用液体A−2〜A−8の調製>
液体A−1中の1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000ダイセル・サイテック(株)製)の2/5を下記表1に示す例示化合物(一般式(I)で表される化合物)に置き換えた以外は液体A−1と同様の方法で、第1の液体Aとして、液体A−2〜A−8を調製した。表1に更に各液体のSP値、表面張力、含水率を示した。
【0238】
【表1】

【0239】
<顔料を含まないインクジェット記録用インクの液体B−1の調製>
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、第2の液体Bとして、インクジェット記録用インクの液体B−1を調製した。液体B−1のsp値は19、表面張力は23mN/m、含水率は1質量%であった。
・ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル・・・4.18g
・1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−
オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000
ダイセル・サイテック(株)製) ・・・ 9.77g
・9,10−ジブトキシアントラセン ・・・ 0.75g
・メガファックF475(大日本インキ化学工業
株式会社製) ・・・ 0.3g
【0240】
<顔料を含まないインクジェット記録用インクの液体B−2〜B−8の調製>
液体B−1中の1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000ダイセル・サイテック(株)製)の2/5を下記表2に示す例示化合物(一般式(I)で表される化合物)に置き換えた以外は液体B−1と同様の方法で、第2の液体Bとして、液体B−2〜B−8を調製した。表2に更に各液体のSP値、表面張力、含水率を示した。
【0241】
【表2】

【0242】
<1液型シアン顔料を含むインクジェット記録用インクA−0の調製>
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して1液型のインクジェット記録用の比較インク液A−0を調製した。液体A−0のsp値は19、表面張力は32N/mであった。
【0243】
・顔料分散物P−1 ・・・3.75g
・ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル・・・ 0.6g
・1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−
オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000
ダイセル・サイテック(株)製) ・・・ 8.4g
・上記重合開始剤−1 ・・・ 1.5g
・9,10−ジブトキシアントラセン ・・・0.75g
【0244】
<画像記録及び評価>
調製したインクジェット記録用液体A−1、液体B−1をインクジェットプリンタ(東芝テックヘッド(CA3)搭載冶具:打滴周波数:4.8KHz、ノズル数:318、ノズル密度150npi(ノズル パー インチ)ドロップサイズ6pl〜42plまで7段階に可変、のヘッドを2つ配列し、300npiにしたヘッドセットを4組搭載)に装填した。以下、液体A−1及び液体B−1の組み合わせを「インクセットA−1/B−1」ということがある。
液体B−1を装填したヘッドセットからは42plのドロップサイズで、被記録媒体上全面に均一に描画した。その上に液体A−1を装填したヘッドからライン状の描画を行った。また100μm間隔の格子状のパターンを描画した。また、別途、5ポイントの文字で「あいうえお」と言う文字の描画を行った。被記録媒体として、厚さ60μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート(商品名:PPL/レーザープリンタ用ゼロックスフィルム OHP FILM、富士ゼロックス(株)製;以下、PETシートという。)を用いた。
【0245】
吐出は、液体B−1とインクジェット記録用液体A−1とを打滴する際の打滴間隔を400m秒とし、まず液体B−1(第2の液体B)を吐出後、液体B−1に重ねてインクジェット記録用液体A−1(第1の液体A)を吐出した。このとき、吐出周波数を調整して、液体B−1については隣接する液滴間の重なり率が5%になるように、インクジェット記録用液体A−1については隣接する液滴(第1の液滴a1と第1の液滴a2)間の重なり率が50%になるようにした。
【0246】
なお、重なり率は、既述のように、1滴打滴して1秒後の液滴半径をbとし、隣接打滴間の間隔をcとして100×(2b−c)/2b[%]にて算出したものである。
【0247】
吐出後、メタルハライドランプを用いて365nmの波長にて紫外線量〜500mJ/cm2で紫外線を照射し、画像を記録した。照射はA−1打滴後1秒後に行った。
得られた画像については、下記の評価を行なった。評価結果は下記表3に示す。なお、上記で調製した各液について、「A−」の液をA液(第1の液体A)、「B−」の液をB液(第2の液体B)という。
【0248】
また、上記において用いたインクセットA−1/B−1を下記表に示すような組み合わせA−2/B−2、A−3/B−3、A−4/B−4、A−5/B−5、A−6/B−6、A−7/B−7、A−8/B−8、に変更し、上記した方法と同様に画像を形成し、評価を行った。
【0249】
以下の評価を行い、結果を表3に示した。
−1.ライン品質の評価−
ラインの品質を下記評価基準にしたがって評価した。但し、比較インク液A−0は1液のみをライン状に打滴した。
〈評価基準〉
A :ドット形状が保持され、均質なライン形状が得られた。
B :各ドットの独立性がなく、ところどころ隣接する液滴間の合一による線幅の乱れが認められた。
C :各ドットの独立性がなく、全体的に隣接する液滴間の合一による線幅の乱れが認められた。
【0250】
−2.格子のゆがみの評価−
格子のゆがみを評価した。
〈評価基準〉
A:ゆがみの無い良好な画質である。
B:ラインの乱れ由来のゆがみが生じている。
C:ゆがみが若干生じている。
D:大きなゆがみが生じている。
【0251】
−3.文字品質の評価−
文字のゆがみを評価した。
〈評価基準〉
A:ゆがみの無い良好な文字品質である。
B:ラインの乱れ由来のゆがみが生じている。
C:ゆがみが若干生じている。
D:大きなゆがみが生じている。
【0252】
−4.ベタツキ性の評価−
紫外線の照射直後、画像面(記録面)を指で触り、下記評価基準にしたがって評価した。
〈評価基準〉
A:ベタツキはなかった。
B:若干ベタツキが認められた。
C:著しくベタツキが認められた。
【0253】
−5.耐擦過性の評価−
ライン状の画像が記録されたPETシート及びアート紙について、紫外線照射後30分経過した後の画像を消しゴムで10往復擦ったときの変化を観察し、下記評価基準にしたがって評価した。
〈評価基準〉
A:擦過による濃度低下は全くなかった。
B:擦過による濃度低下が僅かに認められた。
C:擦過により著しく濃度が低下した。
【0254】
−6.耐光性の評価−
ライン状の画像が記録されたPETシートに対して、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いてキセノン光(85,000Lux)を1週間照射し、照射前後の濃度をマイクロデンシトメーター(機種名:MICRO−PHOTOMETER MPM−No.172、メーカー名:ユニオン オプティカル(株)製)にて測定して色素残存率〔%〕を求め、下記評価基準にしたがって5段階評価した。
〈評価基準〉
A:色素残存率が90%以上であった。
B:色素残存率が89〜80%であった。
C:色素残存率が79〜70%であった。
D:色素残存率が69〜50%であった。
E:色素残存率が49%未満であった。
【0255】
−7.オゾン耐性の評価−
ライン状の画像が記録されたPETシートをオゾン濃度5.0ppm条件下に1週間保存し、保存前後での画像の濃度をマイクロデンシトメーター(機種名:MICRO−PHOTOMETER MPM−No.172、メーカー名:ユニオン オプティカル(株)製)にて測定して色素残存率(%)を求め、下記評価基準にしたがって5段階評価した。なお、オゾン耐性の評価はPETシート上の画像のみについて行なった。
〈評価基準〉
A:色素残存率が90%以上であった。
B:色素残存率が89〜80%であった。
C:色素残存率が79〜70%であった。
D:色素残存率が69〜50%であった。
E:色素残存率が49%未満であった。
【0256】
【表3】

【0257】
表3に示すように、本発明のインクセット(実施例1〜7)を用いた場合には、良好なライン品質、文字品質、耐擦性、耐光性、耐オゾン性を得ることができ、格子のゆがみやベタツキを抑制することができた。
しかしながら、本発明以外のモノマーで構成されるインクセットや1液型のインクを用いた比較例1、2では、格子のゆがみ、文字のゆがみが生じた。
また、A−0はノズルに液を詰めっぱなしにした場合にノズル固化が生じた。これに対し、A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8、B−1、B−2、B−3、B−4、B−5、B−6、B−7、B−8はノズル固化が起こらず、吐出安定性に優れていた。
【0258】
(実施例8〜14)
前記液体B−1の調製において、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル、及び1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000ダイセル・サイテック(株)製)を、高沸点有機溶媒の例示化合物S−9に置き換えた以外はB−1と同様にして、液体B−1−2を調製した。さらに、実施例1〜7のインクセットに用いられている液体B−2〜B−8を、B−1−2に置き換えて、実施例8〜14のインクセットとした。
実施例8〜14のインクセットについて、実施例1〜7と同様にライン品質、格子ゆがみ、文字品質の評価を行ったところ、実施例1〜7と同様に本発明の効果が確認できた。
【0259】
(実施例15〜21)
前記液体B−1の調製において、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル、及び1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000ダイセル・サイテック(株)製)を、高沸点有機溶媒の例示化合物S−15に置き換えた以外はB−1と同様にして、液体B−1−3を調製した。さらに、実施例1〜7のインクセットに用いられている液体B−2〜B−8を、B−1−3に置き換えて、実施例15〜21のインクセットとした。
実施例15〜21のインクセットについて、実施例1〜7と同様にライン品質、格子ゆがみ、文字品質の評価を行ったところ、実施例1〜7と同様に本発明の効果が確認できた。
【0260】
(実施例22〜28)
前記液体B−1の調製において、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル、及び1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000ダイセル・サイテック(株)製)を、高沸点有機溶媒の例示化合物S−21に置き換えた以外はB−1と同様にして、液体B−1−4を調製した。さらに、実施例1〜7のインクセットに用いられている液体B−2〜B−8を、B−1−4に置き換えて、実施例22〜28のインクセットとした。
実施例22〜28のインクセットについて、実施例1〜7と同様にライン品質、格子ゆがみ、文字品質の評価を行ったところ、実施例1〜7と同様に本発明の効果が確認できた。
【0261】
(実施例29〜35)
前記液体B−1の調製において、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル、及び1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000ダイセル・サイテック(株)製)を、高沸点有機溶媒の例示化合物S−32に置き換えた以外はB−1と同様にして、液体B−1−5を調製した。さらに、実施例1〜7のインクセットに用いられている液体B−2〜B−8を、B−1−5に置き換えて、実施例29〜35のインクセットとした。
実施例29〜35のインクセットについて、実施例1〜7と同様にライン品質、格子ゆがみ、文字品質の評価を行ったところ、実施例1〜7と同様に本発明の効果が確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも画像を形成するための少なくとも1種の第1の液体Aと、前記第1の液体Aと組成が異なる少なくとも1種の第2の液体Bとから構成されるインクセットであって、少なくとも液体A又はBのいずれかひとつの液体に、同一分子内にオキシラン環及びオキセタン環を有するカチオン重合性化合物を少なくとも1種含むことを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【請求項2】
前記カチオン重合性化合物を含む液体の含水率が0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項3】
前記カチオン重合性化合物が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクセット。
【化1】

〔式中、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Lは2価の連結基を表す。X及びYはそれぞれ独立にアルキレン基または単結合を表す。〕
【請求項4】
前記一般式(I)で表される化合物において、X−L−Yで表される基の主鎖を構成する原子の数が3又は4であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項5】
少なくとも前記液体A又はBのいずれかひとつの液体に、重合性もしくは架橋性材料を架橋反応させる重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項6】
前記第2の液体Bが、親油性溶剤を含み、前記親油性溶剤の含有量が前記第2の液体Bの全質量の50質量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項7】
前記親油性溶剤は、沸点が100℃よりも高い高沸点有機溶媒であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項8】
前記第1の液体Aが、着色剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項9】
前記第2の液体Bが着色剤を含有しないか、又は、含有する場合には、着色剤の含有量が1質量%未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクセットを用い、前記第2の液体Bを前記第1の液体Aで形成される前記画像と同一もしくは該画像よりも広い範囲に予め被記録媒体に付与しておくことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記第1の液体Aを少なくとも第1の液滴a1及び液滴a2にて、前記液滴a1と前記液滴a2とを重なり部分をもって打滴することで画像を記録することを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記重なり部分における重なり率が10%以上90%以下である請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記第2の液体Bの付与後、前記液体Aが打滴されるまでの打滴間隔が5μ秒以上400m秒以下である請求項10〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
打滴された前記液体Aの液滴サイズが、0.1ピコリットル以上100ピコリットル以下である請求項10〜13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
前記第1の液体A打滴までの間は第2の液体Bを液体状に保持することを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項16】
前記液体Aの打滴後に活性エネルギーを前記画像に与えて前記重合性もしくは架橋性材料を重合もしくは架橋する請求項10〜15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2007−270070(P2007−270070A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100506(P2006−100506)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】