説明

インクジェット記録装置、インクジェット記録方法および予備吐出制御方法

【課題】 「余白なし記録」時の様に、適用するノズル数を制限して画像を形成する場合であっても、インク消費量やスループットの観点において、より効率的な予備吐出動作を実行可能なインクジェット記録装置及び予備吐制御方法を提供する。
【解決手段】 所定の記録動作を行うにあたり、複数の記録素子のうち一部の記録素子のみが適用されるか否かを検出する。一部の記録素子のみが利用されると判断された場合には当該一部の記録素子の吐出回数に基づいて予備吐出動作の実行を判断し、一部の記録素子のみが利用されると判断されなかった場合には記録ヘッドの全ての記録素子に対する吐出回数に基づいて予備吐出動作の実行を判断する。これにより、一部の記録素子しか適用しない記録動作時であっても、非記録素子のために無駄な予備吐出は行われない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置及び当該記録装置の予備吐出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)は、ノズルの微小な穴(以後、吐出口という)から記録媒体に向けてノズル内のインク液滴を吐出させて記録を行う。このとき、記録ヘッドではインクを吐出させることによってノズル内のインクは減少し、新たなインクが毛管力によりインク液室から充填される。
【0003】
しかしながら、長時間にわたってインク吐出が無い場合、吐出口においてインクの水分や溶剤が蒸発して色材が析出し、析出した色材が吐出口に皮膜を作り正常なインクの吐出を妨げることがある。記録ヘッドの記録動作によりインク液滴を吐出させるために発生した運動エネルギはその皮膜を破ることに費やされ、インク液滴は十分な吐出速度を得られず、記録媒体上の所望の位置に記録されない。
【0004】
これに対しインクジェット記録装置では、インクの水分や溶剤の蒸発による記録不良の発生を防止するために、吐出口が十分な皮膜を形成しない時間の内に、記録ヘッドを記録媒体の外側に移動させ、所定の場所でインクを吐出させ(以後、この吐出を予備吐出という)、記録時におけるノズルを正常なインク吐出ができる状態に保っている。
【0005】
一般に、シリアルスキャン型のインクジェット記録装置では記録ヘッドを搭載したキャリッジの往復走査中の反転時に前回の予備吐出から所定時間以上経過しているかどうかを判断し、所定時間以上経過している場合に記録ヘッドを記録媒体の外側に移動して予備吐出を行う制御を実行している。
【0006】
しかし、予備吐出の動作を頻繁に行うと記録速度(スループット)低下の要因となり、更に、実際の記録以外でのインクの消費はランニングコストの上昇につながるという欠点も含んでいる。
【0007】
このような欠点を克服するために、例えば、特許文献1では、複数のノズルの駆動回数を所定時間間隔で計測し、その計測値が所定回数未満の場合に予備吐出を行う一方、その値が所定回数以上の場合は予備吐出を行わない制御が開示されている。この方法であれば、記録のための吐出動作が頻繁に行われているノズルには予備吐出動作は行われなくなるので、予備吐出のために無駄に消費されるインク量が抑制される。
【0008】
また、特許文献2によれば、複数のノズルの駆動回数を所定時間間隔で計測し、その計測値が所定回数以上であるか否かを判断し、当該判断結果に従ってその後の記録可能時間を調整する方法が開示されている。そして、1回の記録走査が終了するたびに、調整後の記録可能時間と次の記録走査に要する時間とを比較し、記録可能時間のほうが短い場合にのみ予備吐出動作を実行している。このような制御方法であれば、1回の記録走査に要される時間が非吐出のノズルの吐出保証時間と同等な場合であっても、記録走査の度に不用意に予備吐出が実行されるわけではない。極力スループットを落とさず効率的に予備吐出を実行することが可能となる。
【0009】
インクジェット記録装置の予備吐出は、画像品位を維持するために必要な重要な動作である。しかしながら一方で、インクの消費量を増大させ、スループットを低下させる要因ともなりうる。このような観点から、近年のインクジェット記録装置においては、いかに効率的に無駄のない状態で予備吐出動作を実行するかが課題の1つとなっている。
【0010】
【特許文献1】特開昭63−252748号公報
【特許文献2】特開2004−082629号公報
【特許文献3】特開2003−127353号公報
【特許文献4】特開2004−1416号公報
【特許文献5】特開2002−137371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで近年では、記録媒体に余白を設けずに画像を形成する、いわゆる「余白なし記録」への需要が高まってきている。そして、このような記録を可能とする装置構成や記録方法も、既に多数提案されている(例えば特許文献3および特許文献4参照。)。「余白なし記録」で記録媒体の最端部近傍への記録を実行する際、記録媒体の支持が不安定になり、搬送精度が低下する恐れが生じる。また、記録媒体からはみ出して吐出されるインクによって、装置内部や記録媒体の非記録部分などを汚染してしまう懸念も発生する。よって、上記特許文献4に開示されているように、記録媒体の最端部近傍を記録する際には、実際に記録に適用するノズルの数を制限する方法が一般に採用されている。
【0012】
このような「余白なし記録」を実行した場合でも、従来では特許文献1や特許文献2に記載の予備吐出方法を採用していた。しかしながら、最端部記録時のノズル数を制限した状態では、記録に関与しない非吐出ノズルが常に存在する状態であるので、従来法の予備吐出制御では効率的な予備吐出動作を行うことが出来なかった。すなわち、記録媒体の最端部近傍に対する記録時には、記録に関与しないノズルのために必要以上に多くの予備吐出動作が実行されてしまい、インクを不用意に消耗しスループットを低減させる結果になってしまっていたのである。
【0013】
本発明は、上記課題を顧みてなされたものであり、その目的とするところは、「余白なし記録」のように適用するノズル数を制限して画像を形成する場合であっても、インク消費量やスループットの観点において、より効率的な予備吐出動作を実行可能なインクジェット記録装置及び予備吐制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのために本発明においては、インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドの記録素子の吐出回数をカウントする手段と、該カウント手段によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する手段と、前記判断手段による判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる手段とを具備し、前記判断手段は、前記記録ヘッドが備える複数の記録素子のうち所定の一部の記録素子のみを使用して記録動作を実行する場合、前記所定の一部の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする。
【0015】
また、インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録媒体の中央部に対して前記記録ヘッドが備える複数の記録素子を用いて記録を行う第1記録動作と、前記記録媒体の先端部および後端部に対して前記複数の記録素子よりも少ない数の所定の一部の記録素子を用いて記録を行う第2記録動作を実行するための記録制御手段と、前記記録ヘッドの記録素子の吐出回数をカウントする手段と、該カウント手段によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する手段と、前記判断手段による判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる手段とを具備し、前記判断手段は、前記第2記録動作を行う場合、前記所定の一部の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断し、且つ前記第1記録動作を行う場合、前記複数の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする。
【0016】
また、インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用い、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、所定の記録動作を実行する際に前記複数の記録素子のうち所定の一部の記録素子のみが使用されるか否かを、前記所定の記録動作に先立って検出する手段と、記録動作中の前記記録素子の吐出回数をカウントするカウント手段と、該カウント手段によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する手段と、前記判断手段による判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる手段とを具備し、前記判断手段は、前記検出手段によって前記所定の一部の記録素子のみが使用されると判断された場合には前記所定の一部の記録素子に対する前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断し、前記所定の一部の記録素子のみが使用されると判断されなかった場合には前記記録ヘッドの全ての記録素子に対する前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする。
【0017】
また、インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、前記記録ヘッドの記録素子の吐出回数をカウントする工程と、該カウント工程によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する工程と、前記判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる工程とを有し、前記判断工程は、前記記録ヘッドが備える複数の記録素子のうち所定の一部の記録素子のみを使用して記録動作を実行する場合、前記所定の一部の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする。
【0018】
更に、インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、前記記録媒体の中央部に対して前記記録ヘッドが備える複数の記録素子を用いて記録を行う第1記録工程と、前記記録媒体の先端部および後端部に対して前記複数の記録素子よりも少ない数の所定の一部の記録素子を用いて記録を行う第2記録工程と、前記記録ヘッドの記録素子の吐出回数をカウントする工程と、該カウント工程によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する工程と、前記判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる工程とを有し、前記判断工程は、前記第2記録工程において、前記所定の一部の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断し、且つ前記第1記録工程において、前記複数の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする。
【0019】
更にまた、インクを吐出する記録素子を複数備えた記録ヘッドを用い、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置の予備吐出制御方法であって、所定の記録動作を実行する際に前記複数の記録素子のうち所定の一部の記録素子のみが使用されるか否かを、前記所定の記録動作に先立って検出する工程と、記録動作中の前記記録素子の吐出回数をカウントするカウント工程と、該カウント工程によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する工程と、前記判断工程による判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる工程とを有し、前記判断工程は、前記検出工程によって前記所定の一部の記録素子のみが使用されると判断された場合には前記所定の一部の記録素子に対する前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断し、前記所定の一部の記録素子のみが使用されると判断されなかった場合には前記記録ヘッドの全ての記録素子に対する前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一部の記録素子しか使用しない記録動作時であっても、無駄な予備吐出は行われなくなるので、インク消費量やスループットの観点において、より効率的な予備吐出動作を実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギを発生する素子を総括して言うものとする。
また、本明細書において「余白なし記録」とは、記録媒体の先端部あるいは後端部の少なくとも一端(1つの端部)に余白を設けずに記録を行うことを意味する。余白無し記録の際には、記録領域のサイズを記録媒体のサイズよりも大きくするのが一般であるが、記録領域のサイズを記録媒体のサイズと一致させるようにしても構わない。
【0022】
<インクジェット記録装置の説明>
図1は本発明の代表的な実施形態であるインクジェット記録装置1の構成の概要を示す外観斜視図である。図において、2は、記録ヘッドカートリッジ3を搭載しながら図の矢印A方向に移動可能なキャリッジである。記録ヘッドカートリッジ3には、画像信号に従ってインクを吐出する記録ヘッドが備えられ、さらに当該記録ヘッドにインクを供給するためのインクタンク6が着脱可能になっている。本実施形態の記録装置1はカラー記録が可能であり、記録ヘッドカートリッジ3にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)のインクを収容した4つのインクタンク6が搭載される。これら4つのインクタンク6は記録ヘッドカートリッジ3に対し、夫々独立に着脱可能となっている。インクタンク6に収容された各色のインクは、吐出動作に伴って記録ヘッドに供給される。
【0023】
図2は、本実施形態で用いる記録ヘッドカートリッジ3を、吐出口面側から観察した場合の詳細図(斜視図)である。ここでの記録ヘッドカートリッジ3は、通常の使用状態を逆転した状態で示されている。40K、40C、40M、および40Yは、Bk(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の4色のインク吐出するための、吐出口列であり、各色のインクタンク6は図の矢印の方向から装着される形態となっている。
【0024】
本実施形態の記録ヘッドは、熱エネルギを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用しており、熱エネルギを発生するための電気熱変換体を個々のノズル内に備えている。記録(吐出)を実行する際、画像信号に応じて個々の電気熱変換体に電気エネルギが印加され、これが熱エネルギへと変換される。急激な発熱により電気熱変換体近傍インクには膜沸騰が起こり、気泡の成長および収縮によって所定量のインクが吐出口より吐出される。
【0025】
43は、キャリッジ2との間で電気的接続を達成維持するためのコンタクト面である。コンタクト面43から受信される記録信号によって、記録ヘッド3は複数のノズル(吐出口)からインクを選択的に吐出することが出来る。
【0026】
再度図1を参照するに、キャリッジ2はキャリッジモータM1の駆動力を伝達する伝達機構4の駆動ベルト7の一部に連結されており、ガイドシャフト13に沿って矢印A方向に摺動自在に案内支持されている。従って、キャリッジ2は、キャリッジモータM1の正転及び逆転によってガイドシャフト13に沿って往復移動が可能となっている。また、キャリッジ2の移動方向(矢印A方向)に沿った位置には、キャリッジ2の絶対位置を示すためのスケール8が備えられている。本実施形態のスケール8は、所定のピッチで黒色のバーを印刷した透明なPETフィルムであり、その一方はシャーシ9に固着され、他方は板バネ(不図示)で支持されている。
【0027】
以上の構成により、キャリッジ2が走査を行いながら、その位置情報に従って記録ヘッド3は適切なタイミングでインクを吐出させることができる。これにより、記録媒体Pには1回の記録走査分の画像が形成される。記録ヘッド3と対向する位置には、記録媒体Pを下部から支える様にプラテン(図1では不図示)が配備されている。本実施形態の記録装置1は「余白なし記録」が実行可能な記録装置であり、そのための構成としてプラテンに特徴を持たせているが、プラテンの詳細については後述する。
【0028】
1回の記録走査が行われると、記録媒体Pは以下に説明する搬送機構によって、矢印B方向に搬送される。M2は、搬送機構の駆動源となる搬送モータであり、14は記録媒体Pに接触しこれを搬送する搬送ローラである。搬送モータM2の駆動力は、不図示の中間ギアおよび搬送ローラ14の一端に固着された搬送ローラギア17を介し、搬送ローラ17に伝達される。記録媒体Pは、不図示のばねに付勢されたピンチローラ15によって搬送ローラ14に当節され、搬送ローラ14の回転に伴って矢印B方向に搬送される。なお、ピンチローラ15はピンチローラホルダ16によって回転自在に支持されている。
【0029】
20は、画像が形成された記録媒体Pを記録装置外に排出するための排出ローラである。排出ローラ20も、搬送モータM2の駆動力が伝達されることで回転される仕組みになっている。記録媒体Pは、不図示のばねにより付勢された拍車ローラによって、排出ローラ20に当接される。22は、拍車ローラを回転自在に支持する拍車ホルダである。記録媒体は、搬送ローラ16とピンチローラ15によるローラ対、および排出ローラ20と拍車によるローラ対の、2組のローラ対によって挟持され矢印B方向へ搬送される。但し、「余白なし記録」時に、記録媒体の先端部あるいは後端部を記録している状況においては、記録媒体はどちらか一方のローラ対のみによって挟持および搬送されている。
【0030】
以上の構成により、記録ヘッドカートリッジ6による記録主走査と、所定量の搬送動作とを間欠的に繰り返すことにより、記録媒体Pに順次画像が形成されていく。
【0031】
キャリッジ2の記録走査領域外の位置(例えば、ホームポジションに対応する位置)には、記録ヘッドの吐出不良を回復するための回復装置10が配設されている。回復装置10は、記録ヘッドの吐出口面をキャッピングするキャッピング機構11や、記録ヘッドの吐出口面をクリーニングするワイピング機構12などを備えている。キャッピング機構11が吐出口面をキャッピングした状態で、吸引手段により吐出口からインクを強制的に排出させることにより、ノズルのインク流路内に存在する粘度の増したインクや気泡等を除去することが出来る。また、非記録動作時等には、記録ヘッドの吐出口面をキャッピング機構11でキャッピングすることにより、記録ヘッドを保護するとともに吐出口からのインクの蒸発や乾燥を防止することができる。
【0032】
一方、ワイピング機構12はキャッピング機構11の近傍に配され、記録ヘッドの吐出口面に付着したインク液滴などを拭き取る役割を担っている。キャッピング機構11やワイピング機構12のような回復装置10によって、記録ヘッドのインク吐出状態を正常に保つことが可能となっている。
【0033】
<インクジェット記録装置の制御構成>
図3は、本実施形態で適用する記録装置の制御構成を示すブロック図である。図において600は、記録装置全般の制御を司るコントローラである。コントローラ600には、MPU601、ROM602、殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などが配備されている。ROM602には、MPUが実行するための制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データなどが格納されている。ASIC603は、キャリッジモータM1の制御、搬送モータM2の制御、および記録ヘッドの制御のための制御信号を生成する役割を担っている。また、RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域として利用されている。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続し、これらの間のデータの授受を行っている。さらに、A/D変換器606は、各種センサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
【0034】
610は外部に接続されたホスト装置であり、インタフェイス611を介することにより、本実施形態の記録装置に接続されている。ホスト装置610としては、記録装置に対する画像データの供給源となれば如何なるものでもよく、コンピュータあるいは画像読取り用のリーダやデジタルカメラなども適用可能である。インタフェイス(I/F)611は、画像データの他、各種コマンドや記録装置のステータス信号等を送受信することが出来る。
【0035】
620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、記録開始を指令するためのプリントスイッチ622、回復動作の起動を指示するための回復スイッチ623など、操作者による指令入力を受けるためのスイッチから構成されている。630は装置状態を検出するためのセンサ群であり、ホームポジションを検出するフォトカプラなどの位置センサ631、環境温度を検出するための温度センサ632等から構成されている。
【0036】
さらに、640はキャリッジモータM1を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバである。
【0037】
ホスト装置610から記録コマンドが入力されると、記録装置本体はコマンドを解析し、画像データをRAM602の展開バッファに展開する。展開後の画像データは所定の処理が施された後、やはりRAM602のプリントバッファに保存される。記録走査の際、ASIC603は、RAM602のプリントバッファに直接アクセスしながら記録ヘッド31に対して駆動データを転送する。
【0038】
次に、本実施形態の記録装置で「余白なし記録」を実行する際の記録方法を説明する。 図4は、本実施形態の記録装置に備えられたプラテン400の拡大図であり、図4(a)は斜視図、同図(b)は断面図である。プラテン400には、上方へ向けて突出するリブ401および402が備えられている。よって、プラテン400上を通過する記録媒体Pは、リブ401および402の上面によって支持されつつ、B方向(副走査方向)へと搬送される。リブ401とリブ402との間には、内部にインク吸収体403が備えられた溝404が配備されており、「余白なし記録」時に記録媒体よりはみ出したインクを収容する。但し、余白無し記録を行う上で、溝404にインク吸収体403を設けることは必須ではない。
【0039】
図5は、「余白なし記録」を実行する際の、プラテン400近傍における記録媒体Pと記録ヘッド31の位置を説明するための模式図である。
【0040】
記録開始時、まず先端部Paに対する記録を実行するため、リブ401とリブ402との間に先端部Paが配置される位置まで、記録媒体Pが搬送される。この状態を示したのが図5(a)である。記録媒体の位置決め動作が完了すると、記録ヘッド31は主走査方向へ走査し、先端部Paに対してインク滴を吐出させる(図5(b)参照)。このとき、実際に吐出動作を実行するノズルは、記録ヘッド31に配列するノズルのうちの一部となっている。
【0041】
図6は、本実施形態で適用する記録ヘッド31の吐出口の配列構成と、「余白なし記録」の先端部および後端部を記録する際に、実際に吐出動作を実行する吐出口領域を説明するための模式図である。既に、図1でも説明したが、本実施形態の記録ヘッド31は、ブラック用のノズル列40Bk、シアン用のノズル列40C、マゼンタ用のノズル列40Mおよびイエロー用のノズル列40Yを有しており、それぞれのノズル列には256個のノズルが所定のピッチで副走査方向(B方向)に配列している。「余白なし記録」ではない通常の記録モードの場合、また「余白なし記録」であっても先端部や後端部以外の領域へ画像を記録する場合には、各色全256のノズルを用いて吐出を行う。しかし、「余白なし記録」の先端部や後端部を記録する場合には、領域Aに含まれる64個のノズルのみを用いて画像を形成する。
【0042】
記録媒体の最端部に記録する画像データは、先端部Paよりも外側にはみ出した状態で作成されている。これは、記録装置の搬送制度や吐出方向に僅かなばらつきがあっても、確実に余白のない画像を形成するためである。このとき、記録ヘッド31の領域Aに対向する部分は、予め吸収体403が配備されている領域となっている。よって、記録媒体の最端部からはみ出して吐出されたインクは、吸収体403にほぼ完全に収容することが出来る。このような構成は、記録媒体の左右端部においても同様である。
【0043】
1行分の記録走査が終了すると、搬送ローラ14によって記録媒体Pは所定量搬送され、次の記録走査が実行される。次の記録走査も、記録ヘッド31の領域Aに含まれる64ノズルのみを用いた記録となる。このような主記録走査と搬送動作が繰り返し行われ、記録ヘッド31の全ノズルによって吐出を行っても、先端部Paよりインクがはみ出さない状態となった時点で、記録ヘッド31上の吐出を実行させるノズルを全領域に拡大する。以後、記録媒体Pの後端部Pb近傍への記録となるまで、全256ノズルによる記録走査と、当該記録幅に対応する搬送動作とを繰り返す。
【0044】
後端部Pb近傍に対する記録を実行する状態を図5(c)に示す。ここでも、領域Aに含まれる64ノズルを用い、後端部Pbよりも外側にはみ出した状態でインクを吐出している。先端部と同様、はみ出して吐出されたインクは、吸収体403にほぼ完全に収容される。
【0045】
本実施形態のように、記録媒体Pが、吸収体403やプラテン平面より突出した位置に形成されたリブ401の上端面に支持されつつ移動する構成であれば、記録媒体Pが吸収体に接することもなく、その裏面が汚れることもない。
【0046】
<予備吐動作>
以下に、本実施形態の記録中の予備吐出シーケンスを説明する。
【0047】
図7は予備吐出制御処理を説明するためのフローチャートである。本処理はROM602に格納された制御プログラムをMPU601が読みだして実行することにより行なわれる。
【0048】
記録装置が記録データ待ちの状態すなわち非記録動作時には、記録ヘッド31の吐出口面はホームポジションにおいてキャッピングされている。ホスト装置610からの記録コマンドの受信が確認されると、MPU601はキャッピング機構11を動作し、記録ヘッド3の吐出口面を開放する(ステップS301)。そして、続くステップS302において、キャッピング機構11に向けて、全ノズルより予備吐出を実行する。
【0049】
次に、ステップS303において、記録可能時間(PENBL)を所定の値に初期化する。記録可能時間(PENBL)とは、吐出を行なっていない状態でも、記録ヘッドが次の吐出を正常に行えると期待される時間であり、PENBLの初期値は記録ヘッドや記録装置の性能に因って定められる。
【0050】
ステップS304では、記録ヘッド31のノズル毎の吐出駆動回数を計測するノズルカウンタの計測値(Dcount(i) i=1〜N)を“0”に初期化する。ここで、Nはノズルの総数である。
【0051】
さらに、ステップS305に進み、所定の時間間隔で記録可能時間(PENBL)を更新するタイミングをつくるための割り込みタイマを始動させる。本実施形態において、割り込み時間間隔(TINRT)は50msecとする。以下に、本実施形態における割り込み処理について簡単に説明する。
【0052】
図8は割り込みタイマによる割り込み処理を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS801で、次の記録走査が「余白なし記録」の先端部あるいは後端部に対するものであるか否かを判断する。判断方法は既知のものでよく、例えば、「余白なし記録」の先端部や後端部分を記録しているときは、記録装置内部の所定メモリを“1”に、それ以外では“0”にセットし、該メモリの値を参照することによって判断してもよい。ステップS801で「余白なし記録」の先後端部ではないと判断された場合は、ステップS805に進む。
【0053】
ステップS805では、全色、全ノズルのノズルカウンタの計測値(Dcount(i)=1、N)が所定値(TH)に達しているかどうかを調べる。本実施形態の場合、TH=3とする。ノズルカウンタの計測値全てに関し、Dcount≧3であれば、ステップS807に進み、記録可能時間(PENBL)をリセットして初期化する。一方、いずれかのノズルカウンタの計測値がDcount<3であった場合、ステップS806に進み、記録可能時間(PENBL)を50msec減算した値を新たな記録可能時間(PENBL)として更新する。
【0054】
ステップS801で、「余白なし記録」の先後端部であると判断された場合には、ステップS802に進む。ステップS802では、全色の領域Aに含まれる64個のノズルカウンタの計測値(Dcount(i)=1、N)が所定値(TH)に達しているかどうかを調べる。すなわち、領域Aに含まれるノズルカウンタの計測値全てに関し、Dcount≧3であれば、ステップS805に進み、記録可能時間(PENBL)をリセットして初期化する。一方、いずれかのノズルカウンタの計測値がDcount<3であった場合、ステップS804に進み、記録可能時間(PENBL)を50msec減算した値を新たな記録可能時間(PENBL)として更新する。
【0055】
ステップS804からステップS807によって記録可能時間(PENBL)の設定が完了すると、ステップS808に進み、ノズルカウンタの計測値(Dcount(i) i=1〜N)の全てを“0”に初期化する。以上で、割り込み処理を終了する。
【0056】
図8で説明した割り込み処理は、図7のステップS305によってタイマがスタートされた後であれば、続くステップS306以後の処理中であっても、50msecごとに割り込んで実行される。
【0057】
再度図7のフローチャートに戻る。ステップS306で記録動作が開始されると、ステップS307では、記録ヘッド31を移動させて記録走査を実行する。本実施形態の記録装置は、キャリッジの往方向走査と復方向走査の両方でインクを吐出して記録を行う、いわゆる双方向記録を行うものとする。よって、各記録走査では、まずキャリッジを所定速度まで加速し、当該所定速度の等速移動時に記録媒体への吐出を行い、更に速度を減速して移動方向の向きを反転する。以上の工程が1回分の記録走査として行われる。
【0058】
但し、本実施形態においては、キャリッジ2の速度を減速する直前にステップS308の処理を同時に進行させる。ステップS308では、現在行っている記録走査でページ内全ての記録が完了したか否かを判断する。完了すると判断された場合には、本処理を終了する。一方、未だ記録すべき画像データが存在すると判断された場合にはステップS309へ進む。
【0059】
ステップS309では、現時点での記録可能時間(PENBL)と次の記録走査に要する時間(Tscan)とを比較する。ここで、PENBL≧Tscanであれば、予備吐出動作なしで次の記録走査を行うことが出来るとみなし、ステップS307に戻る。一方、PENBL<Tscanであれば、次の記録走査を実行する前に予備吐出動作が必要であると判断し、処理はステップS310に進む。
【0060】
ステップS310では記録ヘッド31の予備吐出動作を実行する。本実施形態において、予備吐出位置はホームポジションのキャップ位置とする。予備吐出は、全色全ノズルに対して行っても良いが、次の記録走査が「余白なし記録」の先後端部に対する記録走査であるならば、領域Aに含まれるノズルに対してのみの予備吐出であってもよい。
【0061】
続くステップS311では記録可能時間(PENBL)を初期値にリセットする。
【0062】
さらにステップS312ではノズルカウンタの計測値(Dcount(i) i=1〜N)を“0”にリセットする。その後、次の記録走査のためにステップS307に戻る。
【0063】
ところで、ステップS308の判断によって本処理を終了した後であっても、比較的短い時間内に次の記録命令が入力されれば、そのままステップS307からの工程を開始することが出来る。しかし、所定時間待機しても記録命令が入力されない場合には、記録ヘッド31はホームポジションへ移動され、キャッピング機構11によってキャップされる。
【0064】
以上説明したように本実施形態によれば、従来の予備吐出方法に従い、記録走査の終了毎に、次の記録走査に要する時間(Tscan)と予備吐出を行わずとも記録可能な記録可能時間(PENBL)とを比較する場合であっても、次の記録走査で吐出が行われない領域のノズルに対しては、記録可能時間(PENBL)の判断対象から除外することが出来る。すなわち、「余白なし記録」で先後端部を記録しているような状況であっても、記録に使用しないノズルのために、不用意に予備吐出を実行することがなくなるので、スループットの低下を最小限に抑えるとともに、予備吐出に伴うインクの消費量も最小限に抑えることが可能となる。
【0065】
(第2の実施形態)
上記実施形態では「余白なし記録」の記録モードの場合について説明したが、本発明は「余白なし記録」の記録モードのみに適用可能なものではない。記録ヘッドに備えられている複数ノズルの一部のみを使用した記録走査を行う記録モードに対して広く適用可能である。以下、「余白無し記録」でない通常の記録モードにおいて適用する場合について説明する。
【0066】
上述したように記録媒体の搬送は2組のローラ対で行われる。2組のローラ対のうち一方は、記録ヘッドよりも上流側に位置するローラ対、具体的には、搬送ローラ16とピンチローラ15によるローラ対である。他方は、記録ヘッドよりも下流側に位置するローラ対、具体的には、排出ローラ20と拍車によるローラ対である。
【0067】
さて、記録媒体の先端部および後端部以外の中央部を記録するときは、この2組のローラ対によって記録媒体が保持・搬送される。従って、記録媒体の搬送精度は高い。しかし、記録媒体の先端部および後端部を記録するときは、この2組のローラ対のうち一方のみによって記録媒体が保持・搬送されるため、記録媒体の搬送精度は低い。
【0068】
そこで、特許文献5に記載されるように、記録媒体の先端部および後端部に対する記録時には、中央部に対する記録時よりも使用ノズル数を低減させて且つ1回あたりの搬送量も低減させるのが有効である。この手法によれば、先端部および後端部においても、比較的高い精度で記録媒体を搬送することができるからである。
【0069】
ところで、上述の手法によれば、「余白無し記録」でない通常の記録モードであっても、先端部および後端部の記録時には中央部の記録時に比べてノズルの使用範囲が制限される。そこで、第1の実施形態の「余白無し記録」と同様、先端部および後端部の記録時には、制限された使用範囲(使用領域)のノズルだけを記録可能時間(PENBL)の判断対象とする。具体的には、図7で説明したように、使用範囲のノズルについてだけ、現時点での記録可能時間(PENBL)と次の記録走査に要する時間(Tscan)とを比較する。そして、PENBL≧Tscanであれば、予備吐出動作なしで次の記録走査を行うことが出来ると判定し、予備吐出動作なしで次の記録走査を行う。一方、PENBL<Tscanであれば、次の記録走査を実行する前に予備吐出動作が必要であると判定し、次の記録走査を行う前に予備吐出を行う。
【0070】
以上の構成よれば、「余白無し記録」でない通常の記録モードであっても、次の記録走査で吐出が行われない領域(範囲)のノズルに対しては記録可能時間(PENBL)の判断対象から除外することが出来る。よって、不用意な予備吐出を抑制することができる。
【0071】
(その他の実施形態)
なお、上記第1および第2の実施形態においては、次の記録走査に関わる時間(Tscan)と記録可能時間(PENBL)とを、記録走査ごとに比較する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。PENBLの初期値を予め長く設定可能な記録装置の場合には、例えば複数の記録走査単位など、別の単位を設けて両者の比較を行い予備吐出動作を実行しても構わない。
【0072】
また、上記説明では特許文献2に記載の予備吐出シーケンスを基本としたフローチャート(図7)を用いて説明したが、本発明はこのような工程に限定されるものではない。特許文献2のように所定のタイミングで記録可能時間(PENBL)を調整するのではなく、例えば特許文献1のような構成であってもよい。個々のノズル単位でカウントする手段を有し、そのカウント値を利用して予備吐出の有無を決定する機構を備えていれば、本発明は有効に機能することが出来る。
【0073】
また、上記第1および第2の実施形態では予備吐出動作をホームポジションのキャッピング機構11に向けて行う構成で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。近年のインクジェット記録装置においては、キャリッジ走査方向の記録領域の両側であってキャッピング機構11よりも近い位置に予備吐出を受けるための予備吐パッドを予め配備してあるものも多く提供されている。このような構成であれば、記録動作中に予備吐出が必要となった場合であっても、逐一キャッピング機構11までキャリッジ2が移動せずともよい。より近い位置にある予備吐パッドに対し、予備吐出動作を実行することが可能となるので、スループットの点からはより効率的に予備吐出動作を実行することが出来る。更に、上記第1および第2の実施形態では、「余白なし記録」や「通常記録」において、先端部あるいは後端部の記録時に使用ノズル範囲を制限する形態について説明したが、本発明はこの形態のみに適用可能なものではない。記録ヘッドに備えられているノズル領域の一部に含まれるノズルによって記録走査が行われることを予め検出できる機構を有していれば、本発明はその効果を発揮することが出来る。すなわち、図8に示したフローチャートの様に、次の記録動作が所定の一部のノズルのみで行われるものであるか否かを判断する工程および手段を備えることが出来れば、予備吐出動作のためにスループットを低減することもなく、必要以上にインクを消費することもないのである。
【0074】
更にまた、上記実施形態では熱エネルギを利用して、ノズルからインクを吐出させる構成のインクジェット記録装置を例に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものでもない。ピエゾ素子等の機械的振動を利用してノズルからインクを吐出させる構成のインクジェット記録装置であっても、勿論、適用可能である。このようにインクを吐出可能な複数のノズルを備えた記録ヘッドを用いて画像を記録するインクジェット記録装置であれば、本発明の効果は十分に発揮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の代表的な実施形態であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態で用いる記録ヘッドカートリッジを、吐出口面側から観察した場合の詳細図(斜視図)である。
【図3】本発明の実施形態で適用する記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】(a)および(b)は、本発明の実施形態の記録装置に備えられたプラテンの拡大図である。
【図5】「余白なし記録」を実行する際の、プラテン近傍における記録媒体と記録ヘッドの位置を説明するための模式図である。
【図6】本発明の実施形態で適用する記録ヘッドの吐出口の配列構成と、「余白なし記録」の先端部および後端部を記録する際に、実際に吐出動作を実行する吐出口領域を説明するための模式図である。
【図7】予備吐出制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】割り込みタイマによる割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェット記録装置
2 キャリッジ
3 記録ヘッドカートリッジ
4 伝達機構
6 インクタンク
7 駆動ベルト
8 スケール
10 回復装置
11 キャッピング機構
12 ワイピング機構
13 ガイドシャフト
14 搬送ローラ
15 ピンチローラ
16 ピンチローラホルダ
17 搬送ローラギア
20 排出ローラ
22 拍車ホルダ
31 記録ヘッド
40 ノズル列
43 コンタクト面
400 プラテン
401 リブ
402 リブ
403 吸収体
404 溝
600 コントローラ
601 MPU
602 ROM
603 ASIC
604 RAM
605 システムバス
606 A/D変換器
610 ホスト装置
611 インタフェイス
620 スイッチ群
621 電源スイッチ
622 プリントスイッチ
623 回復スイッチ
630 センサ群
631 位置センサ
632 温度センサ
640 キャリッジモータドライバ
642 搬送モータドライバ
M1 キャリッジモータ
M2 搬送モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドの記録素子の吐出回数をカウントする手段と、
該カウント手段によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する手段と、
前記判断手段による判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる手段とを具備し、
前記判断手段は、前記記録ヘッドが備える複数の記録素子のうち所定の一部の記録素子のみを使用して記録動作を実行する場合、前記所定の一部の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記記録媒体の中央部に対して前記記録ヘッドが備える複数の記録素子を用いて記録を行う第1記録動作と、前記記録媒体の先端部および後端部に対して前記複数の記録素子よりも少ない数の所定の一部の記録素子を用いて記録を行う第2記録動作を実行するための記録制御手段と、
前記記録ヘッドの記録素子の吐出回数をカウントする手段と、
該カウント手段によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する手段と、
前記判断手段による判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる手段とを具備し、
前記判断手段は、前記第2記録動作を行う場合、前記所定の一部の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断し、且つ前記第1記録動作を行う場合、前記複数の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用い、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
所定の記録動作を実行する際に前記複数の記録素子のうち所定の一部の記録素子のみが使用されるか否かを、前記所定の記録動作に先立って検出する手段と、
記録動作中の前記記録素子の吐出回数をカウントするカウント手段と、
該カウント手段によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する手段と、
前記判断手段による判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる手段とを具備し、
前記判断手段は、前記検出手段によって前記所定の一部の記録素子のみが使用されると判断された場合には前記所定の一部の記録素子に対する前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断し、前記所定の一部の記録素子のみが使用されると判断されなかった場合には前記記録ヘッドの全ての記録素子に対する前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記吐出回数と所定の閾値とを所定の時間間隔で比較することによって前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記吐出回数と所定の閾値とを所定のタイミングで比較することによって該所定のタイミング以降の記録可能時間を設定し、該記録可能時間と前記所定の記録動作に関わる時間とを更に比較することによって前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドが前記記録媒体に対し相対的に移動走査しながらインクの吐出を行う記録主走査を実行する手段と、前記記録主走査の間に前記記録媒体を前記記録主走査とは交差する方向に所定量搬送させる手段とを更に備え、
前記判断手段は、前記記録主走査が実行される度に前記記録可能時間と1回の前記記録主走査に関わる時間とを比較することによって前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、
前記記録ヘッドの記録素子の吐出回数をカウントする工程と、
該カウント工程によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する工程と、
前記判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる工程とを有し、
前記判断工程は、前記記録ヘッドが備える複数の記録素子のうち所定の一部の記録素子のみを使用して記録動作を実行する場合、前記所定の一部の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項8】
インクを吐出するための記録素子を複数備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、
前記記録媒体の中央部に対して前記記録ヘッドが備える複数の記録素子を用いて記録を行う第1記録工程と、
前記記録媒体の先端部および後端部に対して前記複数の記録素子よりも少ない数の所定の一部の記録素子を用いて記録を行う第2記録工程と、
前記記録ヘッドの記録素子の吐出回数をカウントする工程と、
該カウント工程によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する工程と、
前記判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる工程とを有し、
前記判断工程は、前記第2記録工程において、前記所定の一部の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断し、且つ前記第1記録工程において、前記複数の記録素子についてカウントされた前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項9】
インクを吐出する記録素子を複数備えた記録ヘッドを用い、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置の予備吐出制御方法であって、
所定の記録動作を実行する際に前記複数の記録素子のうち所定の一部の記録素子のみが使用されるか否かを、前記所定の記録動作に先立って検出する工程と、
記録動作中の前記記録素子の吐出回数をカウントするカウント工程と、
該カウント工程によって得られた前記吐出回数に基づいて、前記記録ヘッドの予備吐出動作の実行の有無を判断する工程と、
前記判断工程による判断結果に応じて、前記記録ヘッドの前記記録素子より前記予備吐出を実行させる工程とを有し、
前記判断工程は、前記検出工程によって前記所定の一部の記録素子のみが使用されると判断された場合には前記所定の一部の記録素子に対する前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断し、前記所定の一部の記録素子のみが使用されると判断されなかった場合には前記記録ヘッドの全ての記録素子に対する前記吐出回数に基づいて前記予備吐出動作の実行の有無を判断することを特徴とする予備吐出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−15217(P2007−15217A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198953(P2005−198953)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】