説明

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法

【課題】 本発明は、先打ち記録する走査と後打ち記録する走査との時間差が異なることによる時間差むらの発生を軽減することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、先打ち記録と後打ち記録との間の時間差が異なる領域が発生するように記録を行う構成において、時間差むらが発生しやすい領域では往方向と復方向の記録比率の差を相対的に大きくすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを走査させながら記録媒体にインク等の記録液体を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出するノズルを複数備えた記録ヘッドやインクタンクを搭載するキャリッジと、記録媒体を搬送する搬送手段と、これらを制御する制御手段とを備えた、シリアル型のインクジェット記録装置が広く用いられている。このインクジェット記録装置は、キャリッジを記録媒体の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッドよりインクを吐出させて記録を行う主走査と、記録時に記録媒体を記録ヘッドの記録幅に対応する距離だけ搬送する副走査とを繰り返し行う。また、現在用いられているインクジェット記録装置の多くは、複数色のインクを用いてフルカラー画像を記録できるものとなっている。例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)などのインクを吐出可能な記録ヘッドがキャリッジに搭載され、これらのインクを用いてフルカラー画像を記録する。キャリッジには、各インクに対応する複数の記録ヘッドが順次、主走査方向に沿って配置されているものが多い。
【0003】
主走査における往方向に沿ってBk,C,M,Yの順で記録ヘッドが配列されている場合、記録媒体に対して往方向への走査で記録する時の記録順は、Bk,C,M,Yとなり、復方向への走査で記録する時の記録順は、Y,M,C,Bkとなる。このように、往方向への走査と、復方向への走査とで記録順が異なることにより、記録媒体上でインクが重なる順序が、往方向で記録する時と、復方向で記録する時とで異なることとなる。このため、記録媒体の搬送距離毎に色相が異なり、これが色むらとなって画像品質の低下を招く可能性がある。
【0004】
上記のように、往方向への記録と復方向への記録とを行ういわゆる双方向記録における記録順むらを防止するための技術を開示する文献として特許文献1がある。この特許文献1には、記録データに基づいて往方向および復方向で記録動作を行う際に通常の用紙搬送方向とは逆方向に搬送を交互に実行することで、記録領域におけるインクの記録順を常に一定に保つことが可能な記録方法が開示されている。このように記録媒体上でインクが重なる順序を一定とすることで、記録順違いによる色むらが記録領域内に発生することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−24007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術においては、領域によって、先に記録するスキャン(先打ちともいう)と後に記録するスキャン(後打ちともいう)との時間差(間隔)が異なる。例えば、特許文献1の図4の場合、第1領域および一番下のラスターを除く第2領域は1スキャン目に先打ち記録、2スキャン目に後打ち記録を行うのに対し、第2領域の一番下のラスターは1スキャン目に先打ち記録、4スキャン目に後打ち記録を行うことになる。そのため、領域によって先打ち記録と後打ち記録の時間差(間隔)が異なることになり、結果として記録媒体への浸透定着や乾燥の違いによる時間差むらを発生させてしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、先打ち記録するスキャンと後打ち記録するスキャンの時間差が異なることによる時間差むらの発生を軽減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数色のノズル列を所定方向に配列した記録ヘッドを前記所定方向の往方向および復方向に走査させることにより、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、記録媒体の第1領域および第2領域に対してインクの吐出を伴う前記往方向への第1走査とインクの吐出を伴う前記復方向への第2走査により記録を完成させるとともに、前記第1走査と第2走査との間に介在するインクの吐出を伴わない走査の回数を前記第1領域と第2領域とで異ならせる記録手段と、 前記第1領域および第2領域の画素領域ごとに入力画像データに基づいてインクの吐出または非吐出を規定する記録データを生成する生成手段と、複数の前記画素領域において前記入力画像データの値に基づいて前記往方向で記録される記録比率および前記復方向で記録される記録比率を決定する決定手段と、を有し、前記生成手段は、前記決定手段により決定された前記往方向および前記復方向の記録比率に基づいて前記記録データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、先打ち記録するスキャンと後打ち記録するスキャンの時間差が異なることによる時間差むらの発生を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の平面図である。
【図2】第1の実施形態に用いる記録ヘッドの吐出口の配列を模式的に示す平面図である。
【図3】第1の実施形態における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図4】第1の本実施形態における記録データの生成処理の概略を模式的に示す図である。
【図5】第1の実施形態で行われる2カラム間引き方法の一例を模式的に示す図である。
【図6】第1の実施形態による記録データの生成手順を説明するための模式図である。
【図7】第1の実施形態に用いられるドット配置パターンデータを示す模式図である。
【図8】第1の実施形態に用いられる記録方向比率切り換え判定方法1に用いられるインデックスパターン切り換え手順を説明する為の模式図である。
【図9】第1の実施形態に用いられるインデックスパターン選択手順を説明する為の模式図である。
【図10】第1の実施形態による記録データの生成処理に関するフローチャートである。
【図11】第1の実施形態による所定領域内の画像を形成する際のデータ処理結果を説明するための模式図である。
【図12】第1の実施形態における記録動作を説明する図である。
【図13】時間差むら発生メカニズムを説明する図である。
【図14】時間差むら抑制メカニズムを説明する図である。
【図15】第2の実施形態に用いられる記録データ処理方法について説明するための図である。
【図16】第2の実施形態に用いられる記録方法での各領域の記録が実行される経過時間を表したものである。
【図17】第2の実施形態に用いられる主走査時間差テーブルを説明する図である。
【図18】第2の実施形態による記録データの生成処理に関するフローチャートである。
【図19】第2の実施形態による所定領域内の画像を形成する際のデータ処理結果を説明するための模式図である。
【図20】第3の実施形態に用いられる記録方向比率切り換え判定方法2に用いられるインデックスパターン切り換え手順を説明する為の模式図である。
【図21】第4の実施形態で行われる2カラム間引き方法の一例を模式的に示す図である。
【図22】第4の実施形態に用いられるドット配置パターンデータを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)の平面図である。ここに示すインクジェット記録装置は、比較的大判の記録媒体に記録を行うものであり、記録媒体を搬送方向へと搬送する不図示の搬送ユニットを含む記録装置2の本体を備える。この本体2には、ガイド軸(不図示)に沿って主走査方向に移動可能に取り付けられたキャリッジ1が設けられている。キャリッジ1はベルト34を介して不図示のキャリッジモータから伝達される駆動力によって、搬送方向と交差する所定方向の主走査方向(X方向)に沿って往復移動可能に構成されている。このキャリッジ1にはインク滴を吐出する複数のノズルを有する記録ヘッド5が複数個搭載されており、記録ヘッド5はキャリッジ1と共に主走査方向に移動する。また、キャリッジ1には、光学式センサ32が設けられている。この光学センサ32は、キャリッジ1と共に主走査方向へと移動しつつプラテン4上における記録媒体の存否を検出する。また、本実施形態のインクジェット記録装置は、記録ヘッドの各ノズルのインク不吐出を検知できる投光部および受光部を有する不吐出ノズル検知ユニット(不図示)を備える。具体的には、投光部から受光部に至る光路を遮断するインク滴の有無を検知することによって各ノズルの不吐出を検出する。
【0012】
また、このインクジェット記録装置2には、記録ヘッド5の各ノズルの吐出性能を適正な状態に保つため、記録ヘッドの回復手段が備えられている。この回復手段は、記録ヘッド5のノズル先端に形成される吐出口をポンプに連結されているキャップで覆い、ポンプによりキャップ内に発生させた負圧によって、ノズル内の増粘インク等を吸引排出させる、いわゆる吸引回復機構30によって構成される。
【0013】
図2は本発明の実施形態に用いる記録ヘッドの吐出口の配列を模式的に示す平面図である。ここに示す記録ヘッド5には、インクを吐出するノズルが複数備えられている。このノズルは、インクを吐出する吐出口nと、これに連通する不図示のインク流路からなり、各ノズルのインク流路内には、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、その発泡エネルギでインクを吐出させる電気熱変換体が設けられている。記録ヘッドには、使用する複数色のインクそれぞれに対応した吐出口列が配列されている。本実施形態の各吐出口列は、記録媒体の搬送方向である副走査方向に沿って、1200dpiの密度で配列された1280個の吐出口から構成されている。この構成を実現するために、本実施形態では、インク色ごとにそれぞれ搬送方向(Y方向)に600dpiの密度で640個の吐出口が配列された2列の副吐出口列(ODD列、EVEN列)がノズル間隔の半分の距離だけずれて配置される。
【0014】
本実施形態における記録ヘッドは、フルカラー画像の記録を可能とするため、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する吐出口列101〜104をX方向に沿って順次配置した、いわゆる横並びヘッドとなっている。なお、ノズル列101からはBk、ノズル列102からはC、ノズル列103からはM、ノズル列104からはYのインクがそれぞれ吐出される。
【0015】
このように構成されたインクジェット記録装置において、記録媒体は不図示の搬送ユニットから副走査方向に搬送される。記録ヘッド5は、不図示の記録制御部から記録信号を受け取り、キャリッジ1と共に主走査方向に移動しつつ、記録媒体の記録領域に向かってインクを吐出する。このような記録動作と、所定量だけ記録媒体を副走査方向に搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより記録を行う。
【0016】
図3は、本実施形態における制御系の概略構成を示すブロック図である。主制御部300は、演算、選択、判別、制御などの処理動作を実行するCPU301と、CPU301によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM302と、記録データのバッファ等として用いられるRAM303と、出力ポート304等を備えている。なお、CPUは、後述の選択工程を行う第1の選択手段、および第2の選択手段として機能する。そして、入出力ポート304には、搬送モータ(LFモータ)312、キャリッジモータ(CRモータ)313、記録ヘッド5及び切断ユニットにおけるアクチュエータなどの各駆動回路305,306,307,308が接続されている。さらに入出力ポート304には、種々のセンサ類が接続されている。例えば、記録ヘッド温度を検出するヘッド温度センサ314、キャリッジ1が回復動作を行うホームポジションの位置に有ることを検出するホームポジションセンサ314、記録ヘッド5の吐出状態を検査する不吐ノズル検出ユニットなどが接続されている。さらに、主制御部300はインターフェース回路311を介してホストコンピュータ315に接続されている。以上の構成を有するインクジェット記録装置によって実施される記録動作を説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
本実施形態では、後述のドット配置パターンデータ(インデックスパターンデータともいう)を用いて、多値の入力画像データをドットを形成するか否か、すなわち記録ヘッドにおけるインク滴の吐出、非吐出を表す2値のデータ(記録データ)に変換する。この2値化処理は、例えば、ホスト装置において画像データを比較的低解像度に量子化し、その量子化した多値の画像データを記録装置本体に転送する。記録装置本体では受信した画像データをインデックスパターンデータを用いて2値のデータ(記録データ)に変換し、これをバッファに展開する。
【0018】
図4は、記録装置本体が多値の入力データを受信してから記録データを生成するまでの処理の概略を模式的に示す図である。図において、ホストコンピュータ315から受け取った入力画像データは600dpiの解像度に内部処理された画素データ401(図4(a))に変換される。なお、ここでいう画素データとは、入力画像データの最小単位の領域である1画素にインクを付与するための多値の画像データを意味し、この段階での画素データは、0〜255段階のレベルを有する。次に、画素データ401を0〜2の3段階のレベルに量子化処理が行なわれ、量子化処理結果402(図4(b))が得られる。次に、予め定められたインデックスパターンデータに基づき、図4(c)に示す縦2エリア×横2エリアのマトリクスM(単位領域)に対し、ドットを形成するか否かを表す2値の記録データ403を割り当てる。なお、記録データはドットの形成を表すデータであり、インク滴を吐出させるためのデータ信号として用いられる。このインデックスパターンデータに基づく処理(以下、インデックス処理と称す)を施すことにより、横1200dpi、縦1200dpiの解像度を有する記録データとして生成することができる。以上が記録データ生成処理の概略である。
【0019】
上記記録データを主制御部300が受信すると、CPU301は、ROM302に格納されたプログラムおよびRAM303に格納されたデータなどに基づき、入出力ポート304を介して各モータや記録ヘッドなどの駆動を制御し、記録動作を行う。記録動作としては、キャリッジ1の駆動速度を高速化するため、記録ヘッドによる1回の記録走査によって記録可能な領域内の画像を、複数回の記録走査に分割して記録する記録方法がある。この記録方法を分割記録方法と称す。本実施形態における記録技術は、この分割記録方法と、前述の記録データの生成方法とを用いることによって実現される。以下、本実施形態における記録技術を、具体的な例を挙げてより詳細に説明する。
【0020】
本実施形態における分割記録方法は、各記録走査における記録解像度を下げ、記録走査毎に特定のカラムデータのみを記録する2カラム間引き方法を用いる。
【0021】
図5は本実施形態で行われる2カラム間引き方法の一例を模式的に示す図である。この2カラム間引き方法では、記録データを奇数カラムデータと、偶数カラムデータとに分け、奇数カラムデータに基づく記録走査と、偶数カラムデータに基づく記録走査とを順次繰り返す。従って、各記録走査によって用いるべきカラムデータは、一義的に決まることとなる。いま、図5に示す縦2エリア×横2エリアからなるマトリクス(単位領域)の記録データにおいて、図中の左端から右方向へと順次割り当てられたカラムデータ501,502に基づいて記録を行う場合、各カラムは次のように記録される。双方向記録走査を2カラム間引き方法によって実行するとき、奇数カラムデータ(501)は、往方向への記録走査(以下、往走査)において用いられる。また、偶数カラムデータ(502)は、復方向の記録走査(以下、復走査)において用いられる。
【0022】
図6は、本実施形態における記録データの生成手順を説明するための模式図である。入力されたR、G、Bの多値の画素データは、600dpiの解像度の画素データ601に処理される(図6(a))。次に、R、G、Bの多値(8ビット:0から255)の入力画素データを、C、M、Y、Bkの多値(8ビット:0から255)の画素データ602(図6(b))に変換する。この後、C、M、Y、Bkの多値の画素データを、量子化処理によって0から2の3レベルのC、M、Y、Bkの画素データ(図6(c))に変換する。次に、量子化処理された各画素データのレベルに基づいて後述のインデックスパターンデータを参照し、図6(d)に示す横2エリア、縦2エリアからなるマトリクスM内に割り当てるべき記録データを生成する。
【0023】
上述した2カラム間引き方法と、マトリクスMに記録データが割り当てられたエリアの位置とを考慮すると、マトリクスMに記載された1,3の数字で示すエリアに展開される記録データは、往方向への記録走査において用いられるデータとなる。一方、マトリクスMに記載された2,4の数字で示すエリアに展開される記録データは、復方向への記録走査において用いられる記録データとなる。
【0024】
上記の2値の記録データに基づいて実際に記録を行った際のドットの着弾位置を、図6(e)の記録結果605に示す。記録解像度は600dpiであるので、マトリクスMにおけるエリア1,2に展開された2値の記録データに基づいて吐出されたインク滴は、着弾位置Aに着弾する。同様にエリア3,4に展開された記録データに基づいて吐出されたインク滴は、着弾位置Bに着弾する。
【0025】
2カラム間引き方法の特性とインク滴の着弾位置とを考慮すると、横1200dpiの解像度の記録データに基づき、横600dpiの記録解像度で画像を記録する場合、エリア1,3に割り当てられた画素データは往方向での記録走査に用いられる。一方、エリア2,4に割り当てられたデータは復方向での記録走査に用いられる。なお、本実施形態では、上述した2カラム間引き方式を採用する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、データ間引き処理と記録走査方向とが確定していれば他の方式を採用することも可能である。
【0026】
次に、本実施形態によって実行される時間差むら抑制制御について説明する。本実施形態では、特許文献1に開示された搬送制御(副走査制御)を実施することで、記録領域でのインクの重ね順を一定に保つようにしている。ただし、特許文献1の方法では、先打ちと後打ちとの時間差による時間差むらが発生するため、本実施形態では、時間差むら抑制制御を合わせて行う。この時間差むら抑制制御は、所定の画像データ領域単位で先打ちおよび後打ちの記録比率を可変とすることによって、画像に発生する時間差むらを抑制するものである。つまり、搬送領域毎に往方向および復方向の記録比率を制御することで、先打ちおよび後打ちの記録比率を可変とすることができるようになる。尚、搬送領域とは、特許文献1に開示された記録方式において、所定回数の記録走査によって記録が完成する単位領域であり、本実施形態の例では、4スキャンによって記録が完了する、副走査方向に4画素×4のサイズを有する領域(図11)である。以下、図を参照しつつ説明する。
【0027】
図7は、本実施形態において用いられるドット配置パターンデータを示す模式図である。図中に記載のレベルは、量子化処理された画素データのレベルを示している。ここではレベル1とレベル2のパターンデータを用いてドット配置と記録方向の関係について説明する。
【0028】
図7(a)にインデックスパターンデータA群を示す。インデックスパターンデータA群は、横2エリア、縦2エリアからなるマトリクスM内に記録データを割り当てたパターンデータ701と702、703と704、705と706、707と708の4種類のI〜IVのインデックスパターンデータからなる。また、図7(b)にインデックスパターンデータB群を示す。インデックスパターンデータB群は、横2エリア、縦2エリアからなるマトリクスM内に記録データを割り当てたパターンデータ709と710、711と712、713と714の4種類のV〜VIIIのインデックスパターンデータからなる。ここで、一方のインデックスパターンデータ群Aのパターンデータ701と702、703と704、705と706、707と708は、レベル1とレベル2にそれぞれ対応している。同様に、第2のインデックスパターンデータ群Bのパターンデータ709と710、711と712、713と714はレベル1とレベル2にそれぞれ対応している。ここで、レベル1は、マトリクスMの中に記録データが1つ、レベル2では記録データが2つ割り当てられている。なお、量子化処理された画素データのレベルは、前述のように0から2の3段階であり、レベル0ではマトリクスM内に記録データは割り当てられない。
【0029】
図7(a)に示すインデックスパターンデータA群では、レベル1、2において図6に示すマトリクス604におけるエリア1,2,3,4のいずれかに記録データが割り当てられているため、往走査と復走査のそれぞれにおいてドットが記録される。すなわち、レベル1では、マトリクス701に示すようにエリア4、マトリクス703に示すようにエリア2(図6のマトリクスM参照)に記録データが割り当てられているため、この記録データに従って復走査でドットが記録される。一方マトリクス705に示すようにエリア3、マトリクス707に示すようにエリア1に記録データが割り当てられているため、この記録データに従って往走査でドットが記録される。また、レベル2では、マトリクス702に示すようにエリア1と4、マトリクス704に示すようにエリア2と3、マトリクス706に示すようにエリア3と4、マトリクス708に示すようにエリア1と2に記録データが割り当てられている。そのため、この記録データに従って往走査と副走査とで均等比率のドットが記録される。
【0030】
一方、図7(b)インデックスパターンデータBでは、レベル1では、マトリクス709に示すようにエリア3、マトリクス711に示すようにエリア1、マトリクス713に示すようにエリア3、マトリクス715に示すようにエリア1に記録データが割り当てられている。そのため、この記録データに従って往走査でドットが記録される。また、レベル2では、マトリクス710、712、714、716に示すようにエリア1と3に記録データが割り当てられているため、この記録データに従って往走査でドットが記録される。
【0031】
以上説明したインデックスパターンデータ群Aとインデックスパターンデータ群Bはそれぞれ4種類のインデックスパターンデータを有する。これらのパターンデータ群をインデックスパターンデータセット(ドット配置パターンデータセット)と称す。このインデックスパターンデータセットの中のいずれのインデックスパターンデータを選択すべきかを、後述の処理によって判断し、この判断結果に基づいてインデックスパターンデータ群AまたはBを選択する。そして、選択したインデックスパターンデータ群AまたはBの中から後述の選択方法によってインデックスパターンデータを選択し、画素データに対応したマトリクスを割り当て、それを記録データとして展開する。
【0032】
次に、前述のインデックスパターンデータ群A,Bを用いたデータ処理を、図6のデータ処理の流れに沿って説明する。
【0033】
前述のように、600dpiの解像度に処理された8ビットのRGB形式の多値の画素データ601は、8ビットのCMYK形式の画素データ602に変換される。次に、CMYK形式の画素データ602は、量子化処理によって0から2の3レベルのC、M、Y、Bkの量子化処理結果603に変換される。また、入力された多値の画素データ601に基づき、所定画像データ領域の記録方式として往方向記録と復方向記録の最適な比率を判定し比率の変更を実行する。この記録方向比率変更方法と記録方向比率切り換え判定方法については後述する。ここで往方向記録の比率を増加すべきであると判断された場合には、インデックスパターンデータ群Bの比率を増加させ、このインデックスパターンデータ群Bの中から、量子化処理結果のレベルに応じたパターンデータを選択する。インデックスパターンデータ群Aでは、図6のマトリクスMに記載されたエリア1,2,3,4に記録データが割り当てられているので往走査と副走査とで記録される。一方、前記記録方向比率切り換え判定方法の判定結果により往方向記録に切り換えるべきと判断された画素データである場合には、インデックスパターンデータ群Bが選択される。そして、このインデックスパターンデータ群Bの中から、画素データのレベルに応じたパターンデータが選択される。例えば603の処理結果がレベル2であり、図7のインデックスパターンデータVが選択された場合、パターンデータ710に基づいて画素パターンデータが展開される。エリア1と3に記録データが割り当てられているため、この記録データに従って往走査でのみドットが記録される。インデックスパターンデータI〜IVおよび、インデックスパターンデータV〜VIIIの選択方法については後述する。
【0034】
このように記録データ生成方法と、複数記録走査にて分割して記録する記録方法とを組み合わせた記録方式を採ることによって所定の画素で形成されるマトリクス(ここでは横2エリア×縦2エリア)毎に記録走査の方向を選択することが可能である。
【0035】
次に、上述した記録方向比率変更方法について説明する。まず、所定画像データ領域においてインデックスパターンデータ群A若しくはインデックスパターンデータ群Bを選択するためのインデックスパターン選択閾値マトリクスを設定する。ここでは所定画像データ領域が横8画素×縦4画素として説明する。
【0036】
図8(a)は所定画像データ領域のインデックス切り換え個数の判定を行なう為の閾値テーブルである。31段階の閾値を設けている。図8(b)は横8画素×縦4画素のインデックスパターン群選択マトリクスを表している。32箇所の画素に0〜31の閾値番号を割振る。後述する判定方法により多値の画素入力値から導き出される判定値と閾値テーブルに記載の31段階の閾値と比較し、インデックスパターンデータ群Bに切り換える画素数を決定する。決定された画素数に応じてインデックスパターン群選択マトリクスからインデックスパターンデータ群Bに切り換える画素を決定する。例えば、判定値が520である場合、図8(a)の閾値th15まで越えている。したがってインデックスパターンデータ群Bに切り換える画素数は16個である。切り換えるべき16個の画素はインデックスパターン選択閾値マトリクスにおいて0〜15の番号を記載した画素位置となる。
【0037】
図8(c)はインデックスパターン群Bに切り替わる画素位置の模式図である。図8(c)において、黒塗りの画素がインデックスパターンデータ群Bに切り替わることになる。結果としてインデックスパターンデータ群Aとインデックスパターンデータ群Bの比率は1対1となる。所定画像データ領域において全ての画素がレベル1もしくはレベル2であった場合、インデックスパターンデータ群Aは往方向50%、復方向50%であり、インデックスパターンデータ群Bは往方向100%、復方向0%である。従って、この領域は、合計すると往方向75%、復方向25%という記録比率で記録がなされることになる。つまり本実施形態の記録方法によれば、先打ち記録75%、後打ち25%という比率で記録がなされることになる。
【0038】
次に、インデックスパターンデータを用いた2値展開フローを説明する。複数のインデックスパターンを有するインデックスパターン群から任意のインデックスパターンの選択を行なう方法を説明する。図9(a)は横8画素×縦4画素のデータ位置を示す為の模式図である。図9(b)はインデックスパターンデータ群Aに対応したインデックス選択テーブルAである。図9(c)はインデックスパターンデータ群Bに対応したインデックス選択テーブルBである。
【0039】
上述したインデックス切り換え判定の工程を経てインデックスパターンデータ群Aを用いて2値展開することが決定した画素については、図7(a)に示したI〜IVのいずれかのインデックスパターンデータを選択し、2値展開を実行する。また、インデックスパターンデータ群Bを用いて2値展開することが決定した画素については、図7(b)に示したV〜VIIIのいずれかのインデックスパターンデータを選択し、2値展開を実行する。2値展開に使用される複数のインデックスパターンデータの選択にはインデックス選択テーブルA若しくはインデックス選択テーブルBを使用する。例えば、インデックスパターンデータ群Bに切り換える画素数は16個と判定された場合、図8(c)の12番の画素位置を例にあげると、図9(a)においてはb3の画素に該当し、インデックスパターン群Bを選択すると判定されている。従って図9(c)においてインデックスパターンデータ群Bに対応したインデックス選択テーブルBを参照し、インデックスパターンデータVを使用することになる。インデックスパターンデータVの中から入力されたレベルに応じたドット配置パターンを選択し、2値展開を実行する。
【0040】
このようにインデックス選択テーブルを使用し複数のインデックスパターンデータからドット配置パターンを選択することで特定のドット配置が繰り返されることを防止し、画質に弊害を成すテクスチャの発生を抑制できる。
【0041】
(先打ち後打ち比率切り換え判定方法)
次に、上述した先打ち記録と後打ち記録の最適な記録比率を判定する為の先打ち後打ち比率切り換え判定方法について説明する。ここでは入力された多値データから各インク色の付与量と時間差むらに対する色毎の重み付けを想定した記録方向比率切り換え判定方法について記載する。
【0042】
所定画像データ領域(横8画素×縦4画素)において、各インク色に対応する多値(0〜255)の画素データのシアンの画素入力値をVc、マゼンタの画素入力値をVm、イエローの画素入力値をVy、ブラックの画素入力値をVk、とする。また各インクの重み付けNについてシアンの重み付けをNc、マゼンタの重み付けをNm、イエローの重み付けをNy、ブラックの重み付けをNk、とする。これらの重み付けは、時間差むらに対する各インクの寄与度に鑑みて設定する。任意の1画素の入力される各インク色の画素入力値とその重み付け係数Nにより算出される換算値をKn(n=整数)としたとき、Knは式1により求められる。
Kn=Nc×Vc+Nm×Vm+Ny×Vy+Nk×Vk (式1)
ここでは、所定画像データ領域に存在する32の画素に対して、式1よりKnを算出する。所定画像データ領域のインデックス切り換え個数を決定する為の判定値Sは、式2に示すように32画素のKnの値の平均値とする。
【0043】
【数1】

【0044】
本実施形態では事前に検証した実験の結果より各インクの時間差むら発生の寄与率を考慮し、時間差むらの起こりやすいインクにはより高い重み付け係数を掛け、時間差むらの起こりにくいインクに対しては低い重み付け係数を掛けている。具体的には、重み付け係数をNc=1.3、Nm=1.0、Ny=1.5、Nk=0.7とした。例えば所定画像データ領域においてVcが210、Vmが128、Vyが32、Vkが16の入力画素が16個、Vcが160、Vmが100、Vyが128、Vkが64の入力画素が16個の入力値を処理する場合を考える。この場合、各インク色の入力値とその重み付けにより算出されたSは502となり、前記算出されたSと図9(a)に記載の閾値テーブルと比較しインデックスの切り換え個数を決定する。th14以上およびth15以下になるのでインデックスの切り換え個数は15個である。
【0045】
上記のように、所定画像データ領域において多値の入力値から時間差むらが発生し得ると判断した場合は、各インク色の入力値とその重み付けにより算出されたSと閾値テーブルとから任意に定められた所定領域におけるインデックスパターンデータ群Aおよびインデックスパターンデータ群Bの数を可変にできる。その結果、所定領域単位で先打ちおよび後打ちの記録比率を変更した記録が可能である。
【0046】
図10は、上記で説明した機能を用いた記録データの生成処理に関するフローチャートである。S1001では、入力された多値データを取得する。S1002ではS1001で入力されたインク色の画素入力値から、所定画像データ領域において上述した任意の記録方向比率切り換え判定方法を用いインデックス切り換え個数を決定する為の判定値Sを算出する。
【0047】
S1003ではS1002で算出された判定値Sと閾値テーブルに記載の31段階の閾値と比較し、インデックスパターンデータ群Bに切り換える画素数を決定する。S1004ではS1003で決定されたインデックスパターンデータ群Bに切り換える画素数とインデックスパターン群選択マトリクスを参照しインデックスパターンを切り換える画素を決定する。S1005ではS1004での結果を元に所定領域内の各画素においてインデックスパターン群を切り換えるか否かを判断する。S1005でインデックスパターン群を切り換えないと判断された場合、S1006でインデックスパターン群Aが選択される。S1007ではインデックス選択テーブルAを参照し、対応したインデックパターンI〜IVを選択する。S1008ではS1007で選択されたインデックパターンと量子化処理後の結果に応じて2値展開を実行する。一方、S1005でインデックスパターン群を切り換えると判断された場合、S1009でインデックスパターン群Aが選択される。S1010ではインデックス選択テーブルBを参照し、対応したインデックパターンV〜VIIIを選択する。S1011ではS1110で選択されたインデックパターンと量子化処理後の結果に応じて2値展開を実行する。S1012でS1008、S1011で得られた2値展開結果を所定領域の記録データとして生成する。S1013で全入力データについて処理が終了したかを判断し、記録を開始する。
【0048】
図11(a)は、図10のフローチャートに基づき所定領域単位(横8画素、縦4画素)で、領域A〜Pのドット形成比率判定値Sと閾値テーブルと比較し、インデックスパターンデータ群Bに切り換える画素個数を判断した結果を示している。ここでは、説明を簡略にするために、記録ヘッド5の吐出口数(ノズル数)を12,搬送領域を横32画素、縦16画素とし、解像度が600dpiである入力画像データの各画素データを記録するものとする。図10のフローチャートに基づき所定領域単位(横8画素、縦4画素)で、領域A〜Pのドット形成比率判定値Sと閾値テーブルと比較し、インデックスパターンデータ群Bに切り換える画素個数を判断した結果を示している。ここで、決定されたインデックスパターン群切り換え個数に応じて2値展開を実行する。このとき、先打ちで記録される比率は各領域において図11(b)に示す比率となる。一方、後打ちで記録される比率は各領域において図11(c)に示す比率となる。図11(d)は、本実施形態の記録比率の制御を実施する前の各インク色の総ドットデューティを示している。図11(e)は、各領域において図11(d)の総ドットデューティと図11(b)に示す記録比率により求められ、先打ち記録時の各領域においての記録デューティを示している。図11(f)は、各領域において図11(d)の総ドットデューティと図11(c)に示す記録比率により求められ、後打ち記録時の各領域においての記録デューティを示している。
【0049】
図12は、記録媒体の逆搬送を含む搬送制御により各記録領域によらず記録順を一定にする記録動作によって、図11の工程で2値展開された記録データを記録する記録方式を説明する図である。ここでは全長24ノズルの記録ヘッドHが通常の搬送方向(Y1方向)に32ノズル分、逆搬送方向(Y2方向)に8ノズル分の搬送を交互に繰り返し、各記録領域によらず記録順を一定にするものとする。図12(a)は1スキャン目の記録動作を表しており、記録ヘッドHの動作方向は往方向(X1方向)である。このとき図11(a)に記した図中の領域A〜Lが記録され、各領域の記録デューティは図11(e)に示したデューティである。次に記録用紙の搬送(Y2方向)が行われ、図12(b)に示す位置に記録ヘッドが移動する。図12(b)は2スキャン目の記録動作を表しており、記録ヘッドHの動作方向は復方向(X2方向)である。この時図11(a)に記した図中の領域A〜Hが記録され、各領域の記録デューティは図11(f)に示したデューティである。次に記録用紙の搬送(Y1方向)が行われ、図12(c)に示す位置に記録ヘッドが移動する。図12(c)は3スキャン目の記録動作を表しており、記録ヘッドHの動作方向は往方向(X1方向)である。この時図11(a)にしるした図中の領域M〜Pが記録され、各領域の記録デューティは図11(e)に示したデューティである。次に記録用紙の搬送(Y2方向)が行われ、図12(d)に示す位置に記録ヘッドが移動する。図12(b)は4スキャン目の記録動作を表しており、記録ヘッドHの動作方向は復方向(X2方向)である。この時図11(a)に記した図中の領域I〜Pが記録され、各領域の記録デューティは図11(f)に示したデューティである。
【0050】
このように、所定領域毎に入力されたデータ値に応じて先打ちおよび後打ちの記録デューティ比率を可変にできる。時間差むらが発生しないと判断された領域は、2パス分割記録によって、往方向および復方向で均等比率で記録される。これに対し、時間差むらが発生すると判断された領域は、先打ちの記録比率を後打ちの記録比率よりも大きくすることで、双方向記録時に発生する記録順が異なることでの時間差むらを抑制できる。さらに、本実施形態では、時間差むらの発生のし易さ(インク付与量)に応じて、先打ちの記録比率および後打ちの記録比率を段階的に変化させるようにしている。
【0051】
尚、本実施形態では、時間差むらが発生し易い領域では、先打ちの記録比率を後打ちの記録比率よりも大きくしているが、逆に、先打ちの記録比率を後打ちの記録比率よりも小さくしてもよい。すなわち、本実施形態では、インク付与量が相対的に少なく時間差むらが発生し難い領域に比べて、インク付与量が相対的に多く時間差むらが発生し易い領域では、先打ちの記録比率を後打ちの記録比率との差を大きくすることによって、時間差むらを抑制できる。
【0052】
ただし、以下に説明するように、先打ちの記録比率を後打ちの記録比率よりも大きくする方が、時間差むらを抑制する上では、より効果的である。
【0053】
図13、図14は、走査間の時間差によって発生するバンド毎の発色の違いのメカニズムを説明するための図である。この図は記録用紙をモデル化した模式図であり、用紙の中の大毛管と小毛管を表した図である。まず、図13を用いて、各走査で均等なDutyで記録した場合の模式図を示している。図13(a)は、第一の記録媒体搬送領域、図13(b)は、第一の記録媒体搬送領域の近傍に存在する第二の記録媒体搬送領域の状態を示している。まず、図13(a)で示す第一の記録媒体搬送領域において、第1スキャン目でシアン・イエローの順でインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に記録時間差をあけることなく第2スキャン目でイエロー・シアンの順でインク滴が記録用紙に着弾すると第一走査で記録されたインクをよけて記録用紙の奥にインクが浸透し、定着する。この時の浸透深さを1301で示している。一方、図13(b)に示す第二の記録媒体搬送領域においては、第1スキャン目でシアン・イエローの順でインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に走査間の記録時間差が十分にある状態で第4スキャン目でイエロー・シアンの順でインク滴が記録用紙に着弾すると第1スキャン目で記録されたインクは小毛管まで到達、吸収される。そのため、第2スキャン目で記録されたインクは記録用紙表層の大毛管へ浸透し、定着する。この時の浸透深さを1302で示している。1301と1302の浸透深さの違いにより発色が異なり、時間差ムラが発生する。
【0054】
続いて、図14を用いて本実施形態の効果を説明する。図14(a)は、第一記録媒体搬送領域、図14(b)は、第一記録媒体搬送領域の近傍に存在する第二記録媒体搬送領域の状態を示している。まず、図14(a)に示す第一記録媒体搬送領域において、第1スキャン目でシアン・イエローの順でインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に記録時間差をあけることなく第2スキャン目でイエロー・シアンの順でインク滴が記録用紙に着弾すると第1スキャン目で記録されたインクをよけて記録用紙の奥にインクが浸透し、定着する。この時の浸透深さを1401で示している。この際、時間差むらが発生すると判定された領域の第2スキャン目でのインク量を少なく設定することで図13(a)に比べてより記録用紙表層付近でインクが定着する。一方、図14(b)に示す第二記録媒体搬送領域では、第1スキャン目でシアン・イエローの順でインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に走査間の記録時間差が十分にある状態で第4スキャン目でイエロー・シアンの順でインク滴が記録用紙に着弾すると第1スキャン目で記録されたインクは小毛管まで到達、吸収される。そのため、第2スキャン目で記録されたインクは記録用紙表層の大毛管へ浸透し、定着する。この時の浸透深さを1402で示している。1401と1402の浸透深さの違いは、1301と1302の浸透深さの違いに比べて小さいため発色の差が小さく、第一および第二の記録媒体搬送領域の走査間時間差によるむらが低減される。
【0055】
以上説明したように、入力される所定領域単位で往復記録時の時間差むらの発生程度を判定し、時間差むらが発生しやすい領域において記録方向を既定したインデックスパターンデータを設定する。これによって、記録媒体の逆搬送を含む搬送制御により各記録領域によらず記録順を一定にする記録動作においても、各領域を記録する際の先打ちおよび後打ちの最適な記録比率を制御でき時間差むらを低減できる。
【0056】
尚、本実施形態では、縦4画素×横8画素からなる所定画像データ領域を1つの単位として往方向と復方向の記録比率を決定している。しかし、インデックスパターン群選択マトリクスを用いずに、画素領域ごとに入力画像データの値と閾値との比較により、画素領域ごとに往方向と復方向の記録比率を決定するようにしてもよい。また、本実施形態では搬送方向の順方向への搬送と逆方向への逆搬送を含む搬送制御による記録方式を例にとって説明したが、本発明は、この記録方式に限定されるものではない。つまり、本発明は、先打ち記録するスキャンと後打ち記録するスキャンの時間差が異なることによる時間差むらの発生を軽減することを目的としたものであって、このような課題の発生する系に広く適用できるものである。すなわち、本実施形態で重要なことは、先打ち記録(第1走査)と後打ち記録(第2走査)との間の走査回数が異なる領域(第1領域、第2領域)が発生するような構成において、時間差むらが発生しやすい領域では往方向と復方向の記録比率の差を相対的に大きくすることである。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態においても、図1ないし図3に示す構成を備えるものとする。
【0058】
本実施形態では、先打ち記録と後打ち記録の時間差に加え、主走査方向(キャリッジ駆動方向)の時間差も考慮し、より正確な時間差むらの抑制する方法について説明する。つまり、各所定画像データ領域の主走査方向の位置も考慮して、記録比率を設定するものである。なお、この第2の実施形態においても、記録データの生成処理方法に関しては第1の実施形態で上述した方法と同様である。図15は本実施形態で使用する記録データ処理方法について説明するための図である。横32画素、縦16画素の入力画像サイズを有し、解像度が600dpiである入力画像データの各画素データに対し、所定領域単位(横8画素、縦4画素)で、時間差むら判定値Sを判定した結果を示している。図16は本実施形態における記録方法での各領域の記録が実行される経過時間を表したものである。記録開始時が0secとし、キャリッジが横8画素を移動するのに1sec要し、記録媒体搬送に1secを要するものとした。図16(a)および図16(c)は各領域について先打ちを行うスキャンであり、その記録が実行される時間を図中に記載してある。図16(b)および図16(d)は各画像領域について後打ちを行うスキャンであり、その記録が実行される時間を図中に記載してある。
【0059】
図17は、本実施形態で用いる主走査時間差テーブルを説明する図である。図17(a)は、図16に示した各画像領域における先打ちの記録がされる時間と後打ちの記録がされる主走査方向の時間差を示している。図17(b)は図17(a)で示した主走査方向の時間差を考慮して各領域に主走査方向の時間差重み付け係数nを設定する。図17(c)は図15に示した時間差むら判定値Sに図17(b)で設定した主走査方向の時間差重み付け係数nを乗算した結果を示している。本実施形態では、このnSを最終的な判定値としてインデックスパターンデータ群Bに切り換える画素個数の決定に用いる。
【0060】
図18は上記で説明した機能を用いた記録データの生成処理に関するフローチャートである。S1801では、入力された多値データを取得する。S1802ではS1801で入力されたインク色の画素入力値から、所定画像データ領域において上述した任意の記録方向比率切り換え判定方法を用いて判定値Sを算出する。S1803ではS1802で算出された時間差むら判定値Sに主走査方向の時間差を考慮した重み付け係数nを乗算しインデックス切り換え個数を決定する為の判定値nSを算出する。
【0061】
S1804ではS1803で算出された判定値nSと図8(a)に記載の閾値テーブルに記載の31段階の閾値と比較し、インデックスパターンデータ群Bに切り換える画素数を決定する。S1805ではS1804で決定されたインデックスパターンデータ群Bに切り換える画素数とインデックスパターン群選択マトリクスを参照しインデックスパターンを切り換える画素を決定する。S1806ではS1805での結果を元に所定領域内の各画素においてインデックスパターン群を切り換えるか否かを判断する。S1806でインデックスパターン群を切り換えないと判断された場合、S1807でインデックスパターン群Aが選択される。S1808ではインデックス選択テーブルAを参照し、対応したインデックパターンI〜IVを選択する。S1809ではS1808で選択されたインデックパターンと量子化処理後の結果に応じて2値展開を実行する。一方、S1806でインデックスパターン群を切り換えると判断された場合、S1810でインデックスパターン群Aが選択される。S1811ではインデックス選択テーブルBを参照し、対応したインデックパターンV〜VIIIを選択する。S1812ではS1811で選択されたインデックパターンと量子化処理後の結果に応じて2値展開を実行する。S1813でS1809、S1812で得られた2値展開結果を所定領域の記録データとして生成する。S1814で全入力データについて処理が終了したかを判断し、記録を開始する。
【0062】
図19は、本実施形態によって所定領域内の記録データを生成する際の生成工程を説明するための模式図である。図19(a)は、インデックスパターンデータ群Bに切り換える画素個数を判断した結果を示している。ここでは、横32画素、縦16画素、解像度が600dpiである入力画像データの各画素データに対し、図18のフローチャートに基づき所定領域単位で、領域A〜Pの時間差むら判定値nSと図11(c)に記載の閾値テーブルと比較している。そして、決定されたインデックスパターン群切り換え個数に応じて2値展開を実行する。このとき、先打ちで記録される比率は各領域において図19(b)に示す比率となる。一方、後打ちで記録される比率は各領域において図19(c)に示す比率となる。図19(d)は、本実施形態の記録比率の制御を実施する前の各インク色の総ドットデューティを示している。図19(e)は、各領域において図19(d)の総ドットデューティと図19(b)に示す記録比率により求められ、先打ち記録時の各領域においての記録デューティを示している。図19(f)は、各領域において図19(d)の総ドットデューティと図19(c)に示す記録比率により求められ、後打ち記録時の各領域においての記録デューティを示している。図19で示された先打ちおよび後打ちの記録デューティに基づいて生成された記録データを、図12に記載の第1の実施形態で用いた記録方法で記録する。
【0063】
以上説明したように主走査方向の時間差も加味して所定領域毎に入力されたデータ値に応じて先打ちおよび後打ちの記録デューティ比率を可変にすることで、搬送距離毎に加え、主走査方向の所定領域毎の時間差むらも低減することが可能となる。
【0064】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、この第3の実施形態においても、図1ないし図3に示す構成を備えるものとする。ここでは第1の本実施形態で示した記録方向比率切り換え判定方法とは異なる方法について説明する。その他の記録データ生成フローに関しては本実施例1と同様の処理を行なうものとする。
【0065】
(記録方向比率切り換え判定方法2)
本実施形態では、入力された多値データから入力データの色相を加味した記録方向比率切り換え判定方法を採用する。ここでは、入力された多値データが8bit(0〜255階調)のRGB形式の場合を例に挙げ説明するが、入力される多値データの形式によらず、入力データから色相区別が可能であれば良い。図20は、記録方向比率切り換え判定方法2を説明する図である。図20(a)には入力される255階調のデータを任意の階調区分に分類した階調区分表である。図20(b)は入力されるRGB形式の入力値に応じたドット形成比率判定値を既定した色相マトリクス表である。まず、255階調のデータを任意の階調区分A,B,C,Dに分類する。図20(a)に示すように区分Aは255階調のデータの0〜63、区分Bは255階調のデータの64〜127、区分Cは255階調のデータの128〜191、区分Dは255階調のデータの192〜255とする。次に図20(b)に示すように色相マトリクス表にR、G,Bそれぞれの入力値の組み合わせを階調区分A,B,C,Dを用いて色相の分類を行なう。このときの組み合わせは64通りとなり64の色相に分類して換算値Tn(n=整数)を保持することができる。所定画像データ領域のインデックス切り換え個数を決定する為のドット形成比率判定値Sは、式3に示すように32画素のTnの値の平均値とする。
【0066】
【数2】

【0067】
図20(c)には、記録方向比率切り換え判定方法2に用いるインデックス切り換え個数を判定を行なう為の閾値テーブルを示す。上述した工程で求めたドット形成比率判定値Sと閾値テーブルに記載の31段階のドット形成比率閾値と比較し、インデックスパターンデータ群Bに切り換える画素数を決定する。例えば所定画像データ領域においてRGBが50,200,100の入力画素が16個、RGBが100,200,100の入力画素が16個の入力値が入力されたとする。図20(b)に記載の色相マトリクス表よりRGBが50,200,100は色相番号10に、RGBが100,200,100の色相番号28に分類される。合計32画素の平均のドット形成比率判定値Sは27となる。算出されたドット形成比率判定値Sと図20(c)に記載の閾値テーブルと比較しインデックスの切り換え個数を決定する。th14以上およびth15以下になるのでインデックスの切り換え個数は15個である。
【0068】
図20で算出されたドット形成比率判定値Sをもとに第1の実施形態と同様の工程で記録データを生成する。本実施形態においての生成された記録データの記録方法は、第1の実施形態と同様の方法を取る。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、入力された多値データから入力データの色相を加味した記録方向比率切り換え判定方法に基づき各領域を記録する際の色相まで加味した往方向および復方向の最適な記録比率を制御する。これにより、色相毎に最適化された往走査および復走査による記録時の色むらを抑制することが可能となり、記録時間の増大を抑制することも可能になる。
【0070】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。なお、この第4の実施形態においても、図1ないし図3に示す構成を備えるものとする。
【0071】
本実施形態は、第1の実施形態に対して記録データを主走査方向に倍のデータ量を持つことで量子化処理結果のレベルが0から4までの5段階まで対応した系において、往方向および復方向の記録比率を制御するものである。上記第1の実施形態では、横2エリア×縦2エリアのインデックス割付パターンサイズを用いて1画素毎に2値展開を実行していた。横2エリア×縦2エリアにおいて往方向で記録されるエリアは図5で示す左上と左下の2つのエリアである。これに対し、本実施形態では、記録データを主走査方向に倍の解像度を持つ。図21に示す横4エリア×縦2エリアのインデックスパターンにおいて、2101、2103は奇数カラムで打たれるためエリア1,3,5,7は往方向で記録される。一方、2102、2104は偶数カラムで記録されるためエリア2,4,6,8は復方向で記録される。記録方向が既定されたエリアが4つずつ存在するので、レベル0〜5の全てのレベルにおいて往方向および復方向の記録比率を制御することが可能である。
【0072】
所定領域単位のデータ処理の手順は上述した第1の実施形態と同様である。図22は、本実施形態における複数組のインデックスパターンデータ群と、各記録画素に対するインデックスパターンデータの割り付けを規定するインデックス割付パターンの一例を模式的に示した図である。第1の実施形態では、横2エリア×縦2エリアのインデックス割付パターンを使用して0〜2の量子化レベルについて2値化処理を実行していた。これに対し、本実施形態では横4エリア×縦2エリアのインデックス割付パターンを使用して0〜4の量子化レベルについて2値化処理を実行している。本実施形態では図22(a)、22(b)に示す2種類のインデックスパターン群を用いて説明する。
【0073】
図22(a)にインデックスパターン群Aを記す。インデックスパターン群Aはインデックスパターンi〜ivを持つ構成となっている。ここではインデックスパターンi〜ivは各量子化処理結果(レベル1〜4)と対応する横4エリア×縦2エリアのインデックス割付パターンを持つ。インデックスパターンi〜ivは、図22に記載のエリア位置2,3,6,7のいずれかに画像データを生成している。すなわち上述したカラム1302またはカラム1303で記録されるので往走査と復走査とで記録される。また、図22(b)にインデックスパターン群Bを記す。インデックスパターン群Bはインデックスパターンv〜viiiを持つ構成となっている。ここではインデックスパターンi〜ivは各量子化処理結果(レベル1〜4)と対応する横4エリア×縦2エリアのインデックス割付パターンを持つ。インデックスパターンi〜ivは図22に記載のエリア位置1,3,5,7のいずれかに画像データを生成している。すなわち上述したカラム2101またはカラム2103で記録されるので往走査でのみ記録される。
【0074】
これらのインデックスパターン群を用いることで、本実施形態では、横4エリア×縦2エリアのインデックス割付パターンを使用して0〜4の量子化レベルまでの記録方向比率を制御が可能になる。
【0075】
本実施形態の記録データの生成手順に関しては第1の実施形態と同様であり、上述した図10のフローチャートに則して生成した記録データを記録する。また記録動作に関しても第1の実施形態と同様であり図12に示したとおりである。
【0076】
このように、本実施形態においても、所定領域毎に入力されたデータ値に応じて往方向若しくは復方向の記録デューティ比率を可変にできる。すなわち、時間差むらが発生し難いと判断された領域は、2パス分割記録によって、往方向および復方向において均等比率で記録される。これに対し、色むらが発生し易いと判断された領域は、往方向および復方向の最適な記録比率にすることで、双方向記録時に発生する記録順が異なることでの色むらを抑制できる。2パス分割記録の走査を維持しつつ、時間差むらが発生する領域に対しては往方向および復方向の最適な記録比率で記録を行うことで、記録時間を抑制しつつ、時間差むらの発生を抑制することが可能となる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態では記録データを主走査方向に倍のデータ量を持つことで、レベル0〜4の5段階までの量子化結果に対応した往方向および復方向の記録比率を制御することができる。
【0078】
第1の実施形態において、レベル0から4までの5値に量子化をする構成とした場合、横2エリア×縦2エリアに対して4個のドットを記録するレベル4では、往方向の記録比率も復方向の記録比率も50%ずつしか設定できない。これに対して、本実施形態では、レベル4の記録比率を往方向100%、復方向0%のように記録比率の制御が可能になる。これにより、入力される所定領域単位で往復記録時の時間差むらの発生程度を判断し、時間差むらが発生しやすい領域においては、記録方向を既定したインデックスパターンを選択することができる。その結果、記録時間の増大を抑制しつつ、往走査および復走査による記録時の時間差むらを抑制することが可能となる。
【0079】
(その他の実施形態)
上述の各実施形態では、インクジェット記録装置が本発明のデータ処理装置としての機能を有し、ドット配置パターンデータ(インデックスパターンデータ)を用いた2値化処理と、カラム間引き方法を用いた記録方法とを組み合わせた処理を行うものとなっている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、先打ち記録、後打ち記録に記録データの分配を可能とし、所定領域において記録データの設定が可能であるインクジェット記録装置でも構わない。
【0080】
また、上記実施形態では、所定領域を横8画素×縦4画素として32画素の換算値の平均を判定値Sとし、31段階の閾値をもつ閾値テーブルとの比較によりインデックス切り換え個数を可変とすることで、所定領域単位での記録比率を制御していた。しかし所定領域サイズ・閾値テーブル形態はこれに限るものではない。所定領域サイズ内の画素データ数に応じてインデックスパターンの個数を切替えて記録比率を制御できる系であれば良い。また、上述の各実施形態では特許文献1に開示の記録媒体の逆搬送を含む記録方法を用いているが、これに限らず所定領域毎に先打ち記録と後打ち記録に時間差を生じる記録方法であれば良い。例えば、記録中にキャリッジの停止動作を介在させることで、先打ちと後打ちの時間差を抑制した記録方法であっても良い。
【0081】
また、上述の各実施形態において、記録媒体の1ページの全域(全記録領域)に対して記録順を常に一定にする必要はなく、記録順むらが特に視認しやすい、記録領域の一部のみで逆搬送を含む記録方法を採用するようにしてもよい。
【0082】
さらに、本発明は、上述した各実施形態の機能を実現する、図12に示したフローチャートの手順を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現することができる。また、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0083】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含む。
【0084】
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。つまり本実施形態で用いた「インク」とは、記録媒体上に付与されることで、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0085】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口、ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギを発生する素子を総括して言うものとする。
【0086】
また、本発明は、電気熱変換素子を用いてインクを吐出する方式を示したが、ピエゾなどの電気機械変換素子を用いてインクを吐出する方式を採用することも可能である。
【0087】
また本実施形態では、記録媒体の幅寸法を光学式センサを用いて検出し、その検出データを制御手段であるCPUに入力するようにしたが、記録媒体の幅寸法は、予め使用者が入力手段を介してCPUに入力するようにしてもよい。
【0088】
加えて、本発明に係るインクジェット記録装置は、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであっても良い。
【0089】
なお本発明は、前述した実施形態の機能処理を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に対して直接または遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行する場合を含む。この場合、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。また、コンピュータにインストールされるプラグラムは、本発明の機能処理を実現するものであればよく、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態は問わない。
【0090】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットに接続しホームページから本発明のプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをダウンロードすることでも供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範囲に含まれるものである。
【0091】
またコンピュータが読み出したプログラムを実行して、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムによってコンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【符号の説明】
【0092】
101〜104 吐出口列
2 記録装置
5 記録ヘッド
300 主制御部
301 CPU
302 ROM
303 RAM
315 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のノズル列を所定方向に配列した記録ヘッドを前記所定方向の往方向および復方向に走査させることにより、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
記録媒体の第1領域および第2領域に対してインクの吐出を伴う前記往方向への第1走査とインクの吐出を伴う前記復方向への第2走査により記録を完成させるとともに、前記第1走査と第2走査との間に介在するインクの吐出を伴わない走査の回数を前記第1領域と第2領域とで異ならせる記録手段と、
前記第1領域および第2領域の画素領域ごとに入力画像データに基づいてインクの吐出または非吐出を規定する記録データを生成する生成手段と、
複数の前記画素領域において前記入力画像データの値に基づいて前記往方向で記録される記録比率および前記復方向で記録される記録比率を決定する決定手段と、を有し、
前記生成手段は、前記決定手段により決定された前記往方向および前記復方向の記録比率に基づいて前記記録データを生成することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記入力画像データの値が大きいほど、前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率との差を大きくすることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記決定手段は、複数の前記画素領域を単位として、前記画素領域ごとに前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記複数の画素領域の前記入力画像データの値および前記複数の画素領域に対応して定められた閾値テーブルに基づいて、前記画素領域ごとに前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率を決定することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記画素領域に記録すべきドットを前記往方向で記録するか前記復方向で記録するかを規定したドット配置パターンを用いて前記記録データを生成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記入力画像データの値にインク色に定められた係数を重み付けして得られた値に基づいて、前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率を決定することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記画素領域の前記所定方向における位置に基づいて、前記画素領域ごとに前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率を決定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記決定手段は、前記画素領域の色相に基づいて、前記画素領域ごとに前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率を決定することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記記録手段は、前記記録媒体を前記所定方向と交差する方向に搬送するための搬送手段を含み、
前記記録手段は、前記搬送手段による前記交差する方向の順方向への前記記録媒体の搬送と逆方向への搬送とを行うことにより、前記第1領域および第2領域に記録を行わせることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
複数色のノズル列を所定方向に配列した記録ヘッドを前記所定方向の往方向および復方向に走査させることにより、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
記録媒体の第1領域および第2領域に対してインクの吐出を伴う前記往方向への第1走査とインクの吐出を伴う前記復方向への第2走査により記録を完成させるとともに、前記第1走査と第2走査との間に介在するインクの吐出を伴わない走査の回数を前記第1領域と第2領域とで異ならせる記録工程と、
前記第1領域および第2領域の画素領域ごとに入力画像データに基づいてインクの吐出または非吐出を規定する記録データを生成する生成工程と、
複数の前記画素領域において前記入力画像データの値に基づいて前記往方向で記録される記録比率および前記復方向で記録される記録比率を決定する決定工程と、を有し、
前記生成工程では、前記決定工程において決定された前記往方向および前記復方向の記録比率に基づいて前記記録データを生成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記決定工程では、前記入力画像データの値が大きいほど、前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率との差を大きくすることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記決定工程では、複数の前記画素領域を単位として、前記画素領域ごとに前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率を決定することを特徴とする請求項10または11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記決定工程では、前記複数の画素領域の前記入力画像データの値および前記複数の画素領域に対応して定められた閾値テーブルに基づいて、前記画素領域ごとに前記往方向の記録比率と前記復方向の記録比率を決定することを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−131084(P2012−131084A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283775(P2010−283775)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】