説明

インクジェット記録装置及びその制御方法

【課題】インクカートリッジが着脱可能に設けられたインクジェット記録装置において、インクカートリッジのインク供給口からインクを導き出す導出部に進入した空気を、インクを廃棄することなく、簡易且つ確実に除去できる手段を提供する。
【解決手段】複合機1は、インク室11からインクを供給するインクカートリッジ40と、インクカートリッジ40を着脱可能に保持するカートリッジ装着部6と、カートリッジ装着部6にインクカートリッジ40が装着されたことを検出する制御部64と、インクジェット記録ヘッド39を搭載した走査キャリッジ38と、インクカートリッジ40と走査キャリッジ38との間でインクを流通可能とするインクチューブ41と、インクチューブ41を流通するインクを双方向へ給送可能な双方向ポンプ7とを備え、インクカートリッジ40の装着を検出した場合に双方向ポンプ7を駆動してインク室11側へ所定量のインクを給送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジからインク通路を通じて供給されたインクを、インクジェット記録ヘッドがインク滴として吐出することにより画像記録を行うインクジェット記録装置及びインクジェット記録装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録ヘッドからインク滴を吐出して記録用紙に着弾させることにより、記録用紙に画像記録を行う所謂インクジェット方式の画像記録装置が知られている。このようなインクジェット記録装置では、インクを貯留するインク室から所定のインク通路を通じて記録ヘッドへインクを供給する構成が採用されている。また、画像記録によってインク室のインクを使い切った場合には、インク室にインクを再充填するか、或いはインクが充填されたインク室と交換できるように構成されている。さらに、後者の場合、空になったインク室を記録ヘッドとともに交換する方式と、インク室をインクカートリッジとして記録ヘッドと別途に構成し、該インクカートリッジのみ交換できる方式とがあり、インク交換のコストを下げるには、インクカートリッジのみを交換するが方式が有利である。
【0003】
インクカートリッジには、インク室からインクを供給するためのインク供給口が設けられており、該インク供給口はゴム等のシール部材により封止されている。そして、インクカートリッジをインクジェット記録装置のカートリッジ装着部に装着する際に、該カートリッジ装着に設けられたインク針が上記シール部材を貫通し、該インク針を通じてインク室内のインクをインク通路へ導き出せるようになっている。
【0004】
このインクカートリッジ交換の際に、インク針内に空気が進入するという問題がある。詳細には、カートリッジ装着部からインクカートリッジを脱離することにより、インク針の先端部分は大気に開放されるので、様々な要因からインク針内の液面が変動する。そして、新たなインクカートリッジをカートリッジ装着部に装着することにより、該インク針は、新たなインクカートリッジのシール部材を貫通して、インクが充填されたインク室内へ進入するが、これら一連の交換作業においてインク針内に進入した空気が残存する。残存した空気は、インク通路内において気泡を成長させる核となり、インク通路内に生じた気泡は、記録ヘッドのインク吐出不良の原因となる。
【0005】
したがって、インク針に残存した空気を除去するために、インク針からインク室側へ空気を押し出す手段や、記録ヘッドからインク通路のインクを吸引することにより、インク通路内の気泡を除去する手段が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−89081号公報
【特許文献2】特開2004−136502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、記録ヘッドを搭載したキャリッジにインクカートリッジを着脱可能とし、該キャリッジにインクカートリッジを装着する際に、インク流路中に設けられた一時インク溜めの弾性壁を変形させて一時インク溜め内のインクを加圧することにより、インクをインク室側へ押し出すこととしている。しかし、一時インク溜めにおいて加えられた圧力は、インクカートリッジと記録ヘッドの双方向へ作用するため、インク流路内に流体制御壁や圧力制御手段を設けて、記録ヘッド側へのインクの流動を防ぐ必要がある。また、一時インク溜めの弾性壁の変形は、インクカートリッジ装着時のみ可能であり、インクカートリッジ装着後にインクをインク室側へ押し出すことができない。つまり、インクとともに残存空気を押し出すことは、インクカートリッジ装着時の1回に限り可能な構成である。
【0008】
しかし、インク針に残存した空気の量が多い場合やインク針の形状によっては、インク室側へインクを押し戻したとしても、インク針に残存した空気が完全に除去されないことがある。そして、除去されずに残った空気が核となって成長し、インク通路内に気泡が生ずるという問題がある。
【0009】
一方、特許文献2では、記録ヘッドのノズル形成面をキャップして負圧ポンプで吸引することにより、インク針に残存した空気を排出することとしている。しかし、記録ヘッドとカートリッジ装着部とが独立に配置されてインクチューブで連結されているような構成では、インク針に残存した空気をインクチューブ及び記録ヘッドを通じて排出することとなり、空気を排出するための廃インク量が多くなるという問題がある。
【0010】
また、インクチューブを記録ヘッドの走査に追従させるために、合成樹脂等からなる可撓性のものを採用すると、その合成樹脂がガス透過性を有する場合には、インクチューブ内において気泡が成長しやすい。したがって、前述したように、インク針から除去できずに残った空気がインクチューブに進入して気泡を形成しないようにするためには、該空気をインクとともに頻繁に吸引除去することとなるが、このような吸引除去を頻繁に行えば、廃インク量が多いという問題が一層顕著に生ずる。
【0011】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、インクカートリッジが着脱可能に設けられたインクジェット記録装置及びその制御方法において、インクカートリッジのインク供給口からインクを導き出す導出部に進入した空気を、インクを廃棄することなく、簡易且つ確実に除去できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インクが貯留されたインク室及び該インク室に形成されたインク供給口を有し、前記インク室から該インク供給口を介してインクを供給するインクカートリッジと、前記インクカートリッジを着脱可能に保持し、前記インク供給口からインク室内のインクを導き出す導出部を有するカートリッジ装着部と、前記カートリッジ装着部に前記インクカートリッジを装着する動作がなされたことを検出するインクカートリッジ検出手段と、前記インクカートリッジから供給されたインクをインク滴として吐出するインクジェット記録ヘッドを有する画像記録部と、前記導出部と前記画像記録部とをつなぎ、前記インクカートリッジのインク室と前記画像記録部のインクジェット記録ヘッドとの間でインクを流通可能とするインク通路と、前記インク通路を流通するインクを双方向へ給送可能な双方向ポンプと、前記インクカートリッジ検出手段が上記インクカートリッジの装着を検出した場合に、前記双方向ポンプを駆動して前記インク室側へ所定量のインクを給送する制御手段とを具備するものである。
【0013】
インクカートリッジのインク室に貯留されたインクが使用によりなくなれば、ユーザは、該インクカートリッジをカートリッジ装着部から脱離して、新たなインクカートリッジを装着する。カートリッジ装着部からインクカートリッジが脱離されることにより、インク室内に挿入されていた導出部が大気に曝され、続いて該導出部が新たなインクカートリッジのインク室内に挿入される一連の交換作業によって、導出部内に空気が進入する。カートリッジ装着部に装着された新たなインクカートリッジは、インクカートリッジ検出手段により検出され、この検出に基づいて、制御部は、双方向ポンプを駆動させてインク通路内のインクをインク室側へ所定量だけ給送する。この給送されたインクにより、導出部に進入した空気はインクカートリッジ内へ押し出される。
【0014】
また、本発明は、上記インクジェット記録装置において、上記画像記録部は、上記カートリッジ装着部と独立に配置されて所定方向に往復移動するものであり、上記インク通路は、該画像記録部の往復移動に追従して姿勢変化する可撓性チューブを備えたものである。
【0015】
画像記録部とカートリッジ装着部とが独立に配置されることにより、画像記録部が軽量化される等の利点があるが、画像記録部とカートリッジ装着部とを一体的に構成するに比べて、カートリッジ装着部から画像記録部までのインク通路が長くなる。仮に、上記導出部に進入した空気が画像記録部側へ排出されるのであれば、該空気とインク通路内のインクとがともにインクジェット記録ヘッドから排出されるので廃インク量が多くなるが、インク通路のインクをインク室側へ給送することにより、インクジェット記録ヘッドからインクを排出することなく導出部から空気を排出させることができる。また、インク通路を構成するインクチューブ内に空気が進入しないので、該空気を核として気泡が成長することがない。
【0016】
また、好ましくは、上記インクジェット記録装置において、上記カートリッジ装着部の導出部は、上記インクカートリッジのインク供給口を封止するシール部材を貫通可能なインク針を備えたものである。
【0017】
また、本発明は、上記インクジェット記録装置において、上記インクカートリッジは、上記インク室を大気開放するラビリンス状通気孔が設けられたものである。
【0018】
インク室が大気開放されることにより、双方向ポンプによりインク室側へインクを給送することが容易となる。また、ラビリンス状通気孔を通じて、導出部からインク室内に排出された空気が外部にリリースされる。
【0019】
また、本発明は、上記インクジェット記録装置において、上記制御手段は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された後には、定期的に上記双方向ポンプを駆動して上記インク室側へ所定量のインクを給送するものである。
【0020】
前述したように、インクカートリッジ装着の際に、制御部が双方向ポンプを駆動してインクをインク室側へ給送しても、導出部の空気が完全に排出されないおそれがある。したがって、インクカートリッジがカートリッジ装着部に装着された後、制御部が、定期的に双方向ポンプを駆動してインク室側へ所定量のインクを給送することにより、残存した空気が気泡として成長したとしても、その成長した気泡は導出部からインク室へ排出される。
【0021】
更に、好ましくは、上記インクジェット記録装置において、前記制御装置は、印刷指令を受けた際、装置電源を投入した際、所定時間が経過した際の少なくとも1つを契機として双方向ポンプを駆動し、前記インク室側へ所定量のインクを給送するものである。
【0022】
この様なタイミングで、適宜インク室側へ所定量のインクを給送することにより、気泡の排出動作がより確実に実行され、常に安定してヘッドへのインク供給を実行することが可能となる。
【0023】
また、本発明は、上記インクジェット記録装置において、前記制御手段は、前記インク室側へのインクの給送動作の後、双方向ポンプを逆に駆動させて、インクをインクジェット記録ヘッド側へほぼ同じ前記所定量だけ給送するものである。
【0024】
この動作により、インク室側へのインクの給送動作によって生じるインク通路内の負圧が元の状態に速やかに戻すことができ、前記負圧に起因するインクジェット記録ヘッド内のインクへの影響を極めて小さくできる。
【0025】
また、本発明は、インクが貯留されたインク室及び該インク室に形成されたインク供給口を有し、前記インク室から該インク供給口を介してインクを供給する複数のインクカートリッジと、前記複数のインクカートリッジを着脱可能に保持し、各インクカートリッジ毎に、前記インク供給口からインク室内のインクを導き出す導出部を有するカートリッジ装着部と、前記複数のインクカートリッジそれぞれに対応して、前記カートリッジ装着部にインクカートリッジを装着する動作がなされたことを検出するインクカートリッジ検出手段と、前記複数のインクカートリッジから供給されたインクをインク滴として吐出するインクジェット記録ヘッドを有する画像記録部と、前記導出部と前記画像記録部とをつなぎ、各インクカートリッジのインク室と前記画像記録部のインクジェット記録ヘッドとの間でインクを独立して流通可能とする複数のインク通路と、各インク通路を流通するインクをそれぞれ独立して双方向へ給送可能な双方向ポンプと、前記インクカートリッジ検出手段が上記インクカートリッジの装着を検出した場合に、前記双方向ポンプを駆動して、各インク通路毎に独立して、前記インク室側へ所定量のインクを給送する制御手段とを具備するものである。
【0026】
例えば、カラー印刷が可能なインクジェット記録装置において、複数色のインクが独立したインクカートリッジにより交換可能に構成されている場合に、制御部が、交換されたインクカートリッジに対応して双方向ポンプを駆動することにより、該インクカートリッジに対応した導出部から確実に空気が排出される。
【0027】
好ましくは、制御装置は、装着が検出されたカートリッジに対してのみ、その対応するインク室への所定量のインクの給送を行うものである。
【0028】
この様に、エア混入の虞のあるカートリッジに対してのみ動作を行うので、装置を効率的に動作させることができる。
【0029】
本発明に係るインクジェット記録装置の制御方法は、インクが貯留されたインク室及び該インク室に形成されたインク供給口を有し、前記インク室から該インク供給口を介してインクを供給するインクカートリッジと、前記インクカートリッジを着脱可能に保持し、前記インク供給口からインク室内のインクを導き出す導出部を有するカートリッジ装着部と、前記インクカートリッジから供給されたインクをインク滴として吐出するインクジェット記録ヘッドを有する画像記録部と、前記導出部と前記画像記録部とをつなぎ、前記インクカートリッジのインク室と前記画像記録部のインクジェット記録ヘッドとの間でインクを流通可能とするインク通路と、前記インク通路を流通するインクを双方向へ給送可能な双方向ポンプと、を備えるインクジェット記録装置の制御方法であって、前記カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されたことを検出するステップと、前記インクカートリッジの装着を検出した場合に、前記双方向ポンプを駆動して前記インク室側へ所定量のインクを給送するステップとを具備するものである
【0030】
インクカートリッジのインク室に貯留されたインクが使用によりなくなれば、ユーザは、該インクカートリッジをカートリッジ装着部から脱離して、新たなインクカートリッジを装着する。カートリッジ装着部からインクカートリッジが脱離されることにより、インク室内に挿入されていた導出部が大気に曝され、続いて該導出部が新たなインクカートリッジのインク室内に挿入される一連の交換作業によって、導出部内に空気が進入する。カートリッジ装着部への新たなインクカートリッジの装着動作は検出され、この検出に基づいて、双方向ポンプが駆動されてインク通路内のインクをインク室側へ所定量だけ給送する。この給送されたインクにより、導出部に進入した空気はインクカートリッジ内へ押し出される。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るインクジェット記録装置及びその制御方法によれば、インクカートリッジ検出手段によるインクカートリッジ装着の検出に基づいて、双方向ポンプを駆動させてインク通路内のインクをインク室側へ所定量だけ給送することとしたので、インクカートリッジの交換作業によって、導出部に進入した空気が導出部に進入した空気が、給送されたインクとともにインクカートリッジ内へ押し出される。これにより、インク通路内のインクを廃棄することなく、導出部に進入した空気を簡易且つ確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る複合機1(インクジェット記録装置)の外観構成を示すものである。本複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。該複合機1のうちプリンタ部2が本発明に係る画像記録装置に相当し、プリンタ機能以外の機能は任意のものである。したがって、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタであってもよい。
【0033】
また、本発明に係る画像記録装置を多機能装置として実施する場合には、本実施の形態に示す複合機1のような小型のものであっても、複数の給紙カセットや自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備えたものであってもよい。また、複合機1は、主に不図示のコンピュータ(外部情報機器)と接続されて、該コンピュータから送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録するものであるが、その他、デジタルカメラ等の外部機器と接続されてデジタルカメラから出力される画像データを記録用紙に記録したり、メモリカード等の各種記録媒体を装填して、該記録媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。また、以下に説明する複合機1の構成は、本発明に係る画像記録装置の一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で構成を適宜変更できることは当然である。
【0034】
図1に示すように、複合機1は高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形であり、複合機1の下部がプリンタ部2である。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されており、該開口2aから一部が露呈するようにして給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20は、被記録媒体である記録用紙を貯蔵するためのものであり、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。また、給紙トレイ20は、図2に示すように、必要に応じてスライドトレイ20aを引き出すことによりトレイ面が拡大される。該給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
【0035】
複合機1の上部はスキャナ部3であり、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2に示すように、複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30の下側に、プラテンガラス31及びイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31は画像読取りを行う原稿を載置するためのものである。該プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向を主走査方向とするイメージセンサ32が、複合機1の幅方向に走査可能に設けられている。
【0036】
複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、該操作パネル4からの操作指示に基づいて動作し、また、コンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても動作する。また、複合機1の正面の左上部には、記録媒体である各種小型メモリカードを装填可能なスロット部5が設けられている。該スロット部5に装填された小型メモリカードに記録された画像データを読み出して該画像データに関する情報を液晶表示部に表示させ、任意の画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させるための入力が、上記操作パネル4から行われる。
【0037】
以下、図2〜図11を参照して複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明する。図2に示すように、複合機1の底側に設けられた給紙トレイ20の奥側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を分離して上方へ案内するための分離傾斜板22が配設されている。また、搬送路23は、該分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がって、複合機1の背面側から正面側へと延び、画像記録ユニット24を通過して排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、該画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0038】
図3に示すように、給紙トレイ20の上側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して搬送路23へ供給するための給紙ローラ25が設けられている。該給紙ローラ25は、給紙トレイ20に接離可能に上下動する給紙アーム26の先端に軸支されており、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27により、LFモータ71(図11参照)の駆動が伝達されて回転する。
【0039】
給紙アーム26は、基端側を軸として上下方向に揺動可能に配設されている。該給紙アーム26は、待機状態では、不図示の給紙クラッチやバネ等により図に示すように上側へ跳ね上げられており、記録用紙を供給する際に下側へ揺動する。給紙アーム26が下側へ揺動することにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙の表面に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転することにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力で最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。該記録用紙は、その前端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、搬送路23へ送り込まれる。また、給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
【0040】
搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、複合機1の背面側の搬送路23は、外側ガイド面が複合機1のフレームと一体に形成され、内側ガイド面がガイド部材28がフレーム内に固定されることにより構成されている。また、搬送路23において、特に搬送路23が曲がっている箇所には、各搬送コロ29が外側ガイド面又は内側ガイド面へローラ面を露出するようにして、搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。これら各搬送コロ29によって、搬送路23が曲がっている箇所においてガイド面に接触する記録用紙の搬送が円滑となる。
【0041】
図3に示すように、搬送路23には、画像記録ユニット24が設けられている。該画像記録ユニット24は、インクジェット記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復移動する走査キャリッジ38(画像記録部)を備えている。インクジェット記録ヘッド39は、複合機1内にインクジェット記録ヘッド39とは独立に配置されたインクカートリッジ40(図6参照)からインクチューブ41(インク通路、可撓性チューブ)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給され、各インクを微小なインク滴として吐出するものである。該インクジェット記録ヘッド39が搭載された走査キャリッジ38が走査されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
【0042】
詳細には、図4に示すように、搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向へ所定間隔で、一対のガイドレール43a,43bが搬送路23の幅方向に延設されている。上記走査キャリッジ38は、ガイドレール43a,43bを跨ぐようにして摺動可能に設けられている。記録用紙の搬送方向の上流側に配設されたガイドレール43aは、搬送路23の幅方向の長さが走査キャリッジ38の走査幅より長い平板状のものであり、該ガイドレール43aの上面が、上記走査キャリッジ38の上流側の端部を摺動自在に担持している。
【0043】
記録用紙の搬送方向の下流側に配設されたガイドレール43bは、搬送路23の幅方向の長さが上記ガイドレール43aとほぼ同じ長さの平板状のものであり、上記走査キャリッジ38の下流側の端部を支持する縁部43cが、上方へ向かって略直角に曲折されている。走査キャリッジ38は、ガイドレール43bの上面に摺動自在に担持されており、且つ、上記縁部43cを不図示のローラ等により狭持している。したがって、走査キャリッジ38は、ガイドレール43a,43b上に摺動自在に担持され、ガイドレール43bの縁部43cを基準として、搬送路23の幅方向に往復移動する。なお、走査キャリッジ38がガイドレール43a,43bの上面と接触する部位には、摩擦を低減するための摺動部材が適宜設けられる。
【0044】
また、図に示すように、ガイドレール43bの上面には、ベルト駆動機構44が配設されている。該ベルト駆動機構44は、搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた従動プーリ45と駆動プーリ46との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト47が張架されてなるものである。駆動プーリ46の軸にはCRモータ73(図11参照)から駆動力が入力され、該駆動プーリ46の回転によりタイミングベルト47が周運動する。なお、タイミングベルト47は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部を走査キャリッジ38に固着するものを用いてもよい。
【0045】
上記走査キャリッジ38は、上記タイミングベルト47に固着されており、該タイミングベルト47の周運動により、走査キャリッジ38が縁部43cを基準としてガイドレール43a,43b上を往復移動する。このような走査キャリッジ38にインクジェット記録ヘッド39が搭載されて、該インクジェット記録ヘッド39が、搬送路23の幅方向を主走査方向として往復移動可能となっている。また、上記縁部43cに沿ってリニアエンコーダ77(図11参照)のエンコーダストリップ33が配設されており、リニアエンコーダ77は、該エンコーダストリップ33をフォトインタラプタにより検出するものであり、このリニアエンコーダ77の検出信号に基づいて、走査キャリッジ38の往復移動が制御される。
【0046】
図3に示すように、搬送路23の下側には、上記インクジェット記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。該プラテン42は、走査キャリッジ38の往復移動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過することとなる。
【0047】
また、図4に示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわちインクジェット記録ヘッド39による画像記録範囲外には、パージ機構48や不図示の廃インクトレイ等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構48は、インクジェット記録ヘッド39のインク吐出口53等から気泡や異物を吸引除去するためのものである。該パージ機構48は、インクジェット記録ヘッド39のインク吐出口53を覆うキャップ49と、該キャップ49を通じてインクジェット記録ヘッド39に接続されるポンプ機構(不図示)と、該キャップ49をインクジェット記録ヘッド39のインク吐出口53に接離させるための移動機構(不図示)とからなる。インクジェット記録ヘッド39の気泡等の吸引除去を行う際には、インクジェット記録ヘッド39がキャップ49上に位置するように走査キャリッジ38が移動され、その状態でキャップ49が上方へ移動してインクジェット記録ヘッド39の下面のインク吐出口53(図7参照)を密閉するように密着し、該キャップ49と連結されたポンプによりインクジェット記録ヘッド39のインク吐出口53等からインクが吸引される。
【0048】
なお、図には示していないが、フラッシングと呼ばれるインクジェット記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるための廃インクトレイも、走査キャリッジ38の往復移動範囲内であって画像記録範囲外に設けられる。これらメンテナンスユニットにより、インクジェット記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。
【0049】
インクカートリッジ40は、図1及び図4に示すように、プリンタ部2の正面側であって左側方(図右側)の筐体内に設けられたカートリッジ装着部6に装着される。図4に示すように、該カートリッジ装着部6は、装置内において、インクジェット記録ヘッド39を搭載する走査キャリッジ38と別途に配置されており、インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部6に装着されたインクカートリッジ40から走査キャリッジ38へインクが供給されるようになっている。
【0050】
インクカートリッジ40は、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクを貯蔵する4個のインクカートリッジ40C,40M,40Y,40Kからなり、装置筐体内に設けられたカートリッジ装着部6内の所定の位置にそれぞれ装填されている。各インクカートリッジ40C,40M,40Y,40Kは、貯留されるインク色が異なる他は同一の構成のものなので、インクカートリッジ40Cを例に詳細に説明する。
【0051】
図5に示すように、インクカートリッジ40Cは、略直方体形状の合成樹脂製の筐体10内にシアンインクが充填されたものであり、カートリッジ装着部6の上方から着脱可能なカートリッジ式である。筐体10の内部空間はインク室11であり、該インク室11にシアンインクが貯留されている。また、筐体10の底部には、インク室11に貯留しているシアンインクを供給するためのインク供給口12が、該底部を貫通して形成されている。インク供給口12が形成される位置は特に限定されないが、ポンプ等を用いてインク室からインクを強制的に供給するものでなければ、インク残量を少なくするために、インク室11の底や下方に形成することが好適である。
【0052】
上記インク供給口12は、シール部材13により封止されている。したがって、インクカートリッジ40Cがカートリッジ装着部6に装着されていない状態では、インク室11内のシアンインクがインク供給口12から流出することはない。シール部材13は、後述するように、インク針17が刺通されることが可能であって、且つ該インク針17が抜かれた後に、刺通跡を封止できる弾性部材からなり、例えばシリコンゴム等が用いられる。
【0053】
また、筐体10の上部には、ラビリンス状の通気孔14が形成されている。該通気孔14により、上記インク室11内のシアンインクが流出することなく、インク室11が大気開放されている。
【0054】
また、筐体10の側部の下端付近には透光性の窓15が設けられている。該窓15を通じて、インク室11内のシアンインクの有無が確認できるようになっている。後述するように、該窓15を通じて光学センサによりインク室11内のシアンインク量が検出される。
【0055】
また、筐体10の上面には、把手16が上方へ突設されている。該把手16は、インクカートリッジ40Cをカートリッジ装着部6へ着脱する際の持ち手となるものであり、特に、カートリッジ装着部6からインクカートリッジ40Cを上方へ引き抜くようにして脱離する場合に有用である。
【0056】
図6は、カートリッジ装着部6に上記インクカートリッジ40Cが装着された状態を示している。カートリッジ装着部6は、上記各インクカートリッジ40を収容可能であって、上部に開口を有する容器状のものであり、図に示すように、インクカートリッジ40Cは、カートリッジ装着部6に嵌合するようにして収容される。この状態がカートリッジ装着部6にインクカートリッジ40Cが装着された状態である。そして、図に示す装着状態から、把手16を持って上方へインクカートリッジ40Cを引き上げると、該インクカートリッジ40Cがカートリッジ装着部6から離脱される。このようにして、カートリッジ装着部6は、各インクカートリッジ40を着脱可能に保持する。
【0057】
また、カートリッジ装着部6の内面の底面には、インク針17(導出部)が先端を上方へ突出するようにして設けられている。該インク針17が設けられた位置は、インクカートリッジ40Cのインク供給口12を封止するシール部材13と対応している。したがって、図に示すように、インクカートリッジ40Cがカートリッジ装着部6に装着されると、インク針17は、シール部材13を貫通して、その先端がインク室11内に進入する。インク針17は中空針であり、その先端付近には中空に通ずる孔が穿設されている。したがって、インク室11内のインクは、該孔からインク針17内に流れ込む。インク針17の基端は、カートリッジ装着部6の底部に水平方向に形成された流路18と連結されており、図には示していないが、流路18は上記インクチューブ41と接続されている。このようにして、インク室11内のインクがインク針17を通じてインクカートリッジ40の外部へ導き出される。
【0058】
また、カートリッジ装着部6の側壁には、インクセンサ19が設けられている。インクセンサ19は、インクカートリッジ40Cの窓15に対応した位置であって、インク室11の底面付近に配置されている。このインクセンサ19は、光学センサであり、インク室11内のインクの有無による反射光の差からインク室11内のインクの有無を検出するためのものである。すなわち、インク室11内のインクの液面がインクセンサ19の検出位置より上側にある場合には、インクセンサ19はインクからの反射光を受光して、該反射光強度を電気信号として出力する。一方、インク室11内のインクの液面がインクセンサ19の検出位置より下側にある場合には、インクセンサ19は空のインク室11内の反射光を受光して、該反射光強度を電気信号として出力する。そして、後述する制御部64により、これらの反射光強度の差に基づいてインク室11内のインクの有無が判断される。
【0059】
なお、本実施の形態では、4色のインクで画像記録を行う複合機1について説明しているが、本発明に係るインクジェット記録装置においてインク色の数は特に限定されず、例えば、6色インクや8色インクにより画像記録を行う場合には、インクカートリッジ40を増やすことが可能であることは勿論である。
【0060】
図4に示すように、カートリッジ装着部6にそれぞれ装着された各インクカートリッジ40C,40M,40Y,40Kから上記インクジェット記録ヘッド39へは、各色毎に独立したインクチューブ41により各色インクが供給される。各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、合成樹脂製のチューブであり、走査キャリッジ38の走査に従って撓む可撓性を有するものである。
【0061】
前述したカートリッジ装着部6の各インクカートリッジ40毎の各流路18は、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kの一端とそれぞれ接続されている。なお、インクチューブ41Cは、上記インクカートリッジ40Cに対応しておりシアン(C)のインクを供給するためのものである。同様に、インクチューブ41M,41Y,41Kは、それぞれ上記インクカートリッジ40M,40Y,40Kに対応しており、それぞれマゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)のインクを供給するためのものである。
【0062】
カートリッジ装着部6から導出された各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置フレーム等の適当な部材に一旦固定されている。そして、該固定箇所から走査キャリッジ38までの部分は、装置フレーム等に固定されておらず、走査キャリッジ38の往復移動に追従して姿勢変化する。すなわち、走査キャリッジ38が往復移動方向の一端(図左側)へ移動するに従い、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、U字形状の湾曲部分の曲げ半径が小さくなるように撓みながら、走査キャリッジ38の移動方向へ移動する。一方、走査キャリッジ38が往復移動方向の他端(図右側)へ移動するに従い、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、湾曲部分の曲げ半径が大きくなるように撓みながら、走査キャリッジ38の移動方向へ移動する。
【0063】
インクジェット記録ヘッド39は、図7に示すように、その下面にインク吐出口53が、CMYBkの各色インク毎に記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、図において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向が走査キャリッジ38の主走査方向である。そして、CMYBkの各色インクのインク吐出口53が主走査方向に並んでいる。また、各インク吐出口53の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定されるものである。また、カラーインクの種類数に応じてインク吐出口53の列数を増減することも可能である。
【0064】
図8に示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面に形成されたインク吐出口53の上流側には、圧電素子54を備えたキャビティ55が形成されている。圧電素子54は所定の電圧が印加されることにより変形されてキャビティ55の容積を縮小する。このキャビティ55の容量の変化によって、キャビティ55内のインクがインク吐出口53からインク滴として吐出される。
【0065】
上記各キャビティ55は、各インク吐出口53毎に設けられており、各色インク毎の複数のキャビティ55に渡ってマニホールド56が形成されている。マニホールド55の上側にはバッファタンク57が配設されている。バッファタンク57は、CMYBkの各色インク毎に設けられている。各バッファタンク57には、インクカートリッジ40からインクチューブ41を通じてインク供給口58からインクが供給される。バッファタンク57に一旦インクが貯留されることにより、インクチューブ41等でインク内に発生した気泡が捕捉され、キャビティ55及びマニホールド56に気泡が進入することが防止される。また、バッファタンク57内で捕捉された気泡は、気泡排出口59から不図示のポンプ機構により吸引除去される。バッファタンク57からマニホールド56へ供給されたインクは、マニホールド56により各キャビティ55に分配される。
【0066】
このようにして、インクカートリッジ40からインクチューブ41を通じて供給された各色インクが、バッファタンク57、マニホールド56を介してキャビティ55へ流れるようにインク通路が構成される。このようなインク通路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、インク吐出口53からインク滴として記録用紙に吐出される。
【0067】
図4に示すように、インクチューブ41のカートリッジ装着部6付近には、双方向ポンプ7が設けられている。双方向ポンプ7は、各色のインクチューブ41C,41M,41Y,41K毎にそれぞれ設けられており、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kを流通する各色インクを双方向へ、すなわちインクジェット記録ヘッド39側へもインクカートリッジ40側へも給送可能なものである。
【0068】
このような双方向ポンプ7には周知且つ任意のポンプが採用できる。例えば、図9に示すように、吸込ポート85と吐出ポート86とが設けられた中空円柱状のケーシング87の軸線方向にドライブシャフト88が貫入されて回転自在に軸支され、該ドライブシャフト88に雄ネジ状のスクリュー羽根89が突設された所謂ネジポンプ90を用いることができる。このネジポンプ90によれば、ドライブシャフト88を正転すれば、吸込ポート85から吸引されたインクがスクリュー羽根89により吐出ポート86側へ給送されて、吐出ポート86からインクが排出される。一方、ドライブシャフト88を逆転すれば、吐出ポート86から吸込ポート85側へ逆方向にインクを給送することができる。
【0069】
また、例えば、図10に示すように、中空円柱状のケーシング91の円周面の対抗位置に吸込ポート92及び吐出ポート93をそれぞれ設け、ケーシング91の軸線に対して軸94を偏心させたロータ95をケーシング91内に回転自在に配設し、該ロータ95に、径方向に出没可能な2枚の羽根板96を対抗位置に設け、各羽根板96を、ケーシング91の内面に当接するように径方向外側へ付勢してなる所謂ベーンポンプ97を用いることができる。軸94が正転されると、ロータ95が図の時計方向に回転し、ロータ95の回転に伴って2枚の羽根板96もケーシング91の内面に当接しながら回転する。そして、この2枚の羽根板96に仕切られた空間のインクも共に時計方向へ送られ、吸込ポート92から吐出ポート93へ給送される。一方、軸94を逆転すれば、ロータ95が反時計回りに回転し、吐出ポート93から吸込ポート92側へインクを給送することができる。
【0070】
上記ネジポンプ90やベーンポンプ97等の双方向ポンプ7を各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kにそれぞれ介設することにより、双方向ポンプ7への駆動入力の正逆によって、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kを流通する各色インクを双方向へ給送することができる。なお、ネジポンプ90及びベーンポンプ97は双方向ポンプ7の一例であり、本発明に係る双方向ポンプがネジポンプ又はベーンポンプに限定されないことは当然である。
【0071】
図3に示すように、上記画像記録ユニット24の上流側には、搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持して、プラテン42上へ搬送する一対の搬送ローラ60及び押さえローラ61が設けられている。一方、画像記録ユニット24の下流側には、記録済みの記録用紙を狭持して搬送する一対の排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転は同期されており、搬送ローラ60に設けられたロータリエンコーダ76(図11参照)が、搬送ローラ60とともに回転するエンコーダディスクをフォトインタラプタで検出することにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。
【0072】
一方、押さえローラ61は搬送ローラ60に所定の押圧力で押圧するように付勢されて回転自在に設けられている。搬送ローラ60と押さえローラ61との間に記録用紙が進入した場合には、押さえローラ61は記録用紙の厚み分だけ退避して該記録用紙を搬送ローラ60とともに狭持する。これにより、搬送ローラ60の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。拍車ローラ63も排紙ローラ62に対して同様に設けられたものであるが、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸したものとなっている。
【0073】
図11は、複合機1の制御部64の構成を示している。該制御部64は、スキャナ部2のみでなくプリンタ部3も含む複合機1の全体動作を制御するものであるが、スキャナ部3は本発明の主要な構成ではないので詳細な説明は省略する。制御部64は、図に示すように、CPU65、ROM66、RAM67、EEPROM68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。この制御部64により、本発明に係る制御手段及びカートリッジ検出手段が実現されている。
【0074】
ROM66には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0075】
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LF(搬送)モータ71に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をLFモータ71の駆動回路72に付与し、該駆動回路72を介して駆動信号をLFモータ71に通電することにより、LFモータ71の回転制御を行っている。
【0076】
駆動回路72は、上記給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構48に接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ71が回転し、該LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構48へ伝達される。
【0077】
同様に、ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CR(キャリッジ)モータ73に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をCRモータ73の駆動回路74に付与し、該駆動回路74を介して駆動信号をCRモータ73に通電することにより、CRモータ73の回転制御を行っている。
【0078】
駆動回路74は、上記走査キャリッジ38に接続されたCRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてCRモータ73が回転し、該CRモータ73の回転力がベルト駆動機構44を介して、走査キャリッジ38へ伝達されことにより走査キャリッジ38が走査される。
【0079】
駆動回路75は、インクジェット記録ヘッド39から所定のタイミングでインクを記録用紙に対して選択的に吐出させるものであり、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいてASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御する。
【0080】
また、ASIC70には、カートリッジ装着部6に配設されたインクセンサ19が接続されている。前述したように、インクセンサ19は、インクカートリッジ40のインク室11内のインクの有無による反射光の差からインク室11内のインクの有無を検出するためのものであり、インクセンサ19の信号がASIC70に出力され、該出力に基づいて、CPU65が各インクカートリッジ40のインク室11内の各色インクの有無を判断する。そして、いずれかのインクカートリッジ40のインクが無いと判断された場合には、操作パネル4や、パラレルI/F78又はUSBI/F79を介して接続されるコンピュータの画面に、インク交換をすべき警告表示が行われる。
【0081】
また、ASIC70には、上記双方向ポンプ7が接続されており、CPU65から出力される制御信号に基づいてASIC70が双方向ポンプ7を駆動するための出力信号を出力して、双方向ポンプ7が駆動制御される。このような駆動制御は、各インクチューブ41毎に接続された各双方向ポンプ7に対して独立して行われる。
【0082】
また、ASIC70には、搬送ローラ60の回転量を検出するためのロータリエンコーダ76、走査キャリッジ38の移動量を検出するためのリニアエンコーダ77が接続されている。
【0083】
また、ASIC70には、スキャナ部3や、複合機1の操作指示を行うための操作パネル4、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部5、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やMODEM81も接続されている。
【0084】
図4に示すように、上記制御部64はメイン基板82により構成されており、該メイン基板82からインクジェット記録ヘッド39へはフラットケーブル83を通じて記録用信号等の伝送が行われる。フラットケーブル83は、記録信号等の電気信号を伝送する導体をポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものであり、メイン基板82とインクジェット記録ヘッド39の制御基板(不図示)と電気的に接続している。また、フラットケーブル83は、走査キャリッジ38から往復移動方向へ導出され、上下方向に略U字形状に曲折されており、この略U形状の部分は、他の部材に固定されておらず、走査キャリッジ38の往復移動に追従して姿勢変化する。
【0085】
以下、上記プリンタ部2における画像記録動作について説明する。
コンピュータや小型メモリカードから印刷データが制御部64に送信されると、複合機1のプリンタ部2は、給紙トレイ20に保持された記録用紙の給紙を開始する。すなわち、LFモータ71が駆動されて給紙ローラ25、搬送ローラ60及び排紙ローラ62に駆動伝達され、給紙トレイ20から搬送路23へ記録用紙が給送される。該記録用紙は、搬送路23に沿って上方へUターンするように反転しながら搬送される。
【0086】
記録用紙の先端がインクジェット記録ヘッド39の直下に搬送されると、走査キャリッジ38を移動しながら、印刷データ及び端部情報に基づいてインクジェット記録ヘッド39からインクを吐出することにより、記録用紙の幅方向に画像記録を行う。そして、所定改行幅だけ記録用紙を搬送し、再び、走査キャリッジ38を移動しながらインクジェット記録ヘッド39からインクを吐出することにより、記録用紙の幅方向に画像記録を行う。これを記録用紙の後端まで繰り返すことにより、記録用紙への画像記録が行われる。
【0087】
つぎに、インクカートリッジ40を交換した際の動作について図12を用いて説明する。
制御部64は、インクセンサ19の出力に基づいて、各インクカートリッジ40C,40M,40Y,40Kのいずれかのインク室11のインクがない判断した場合に(S1)、操作パネル4の液晶表示部、又は複合機1にコンピュータが接続されている場合には該コンピュータのディスプレイにインク交換表示を行う(S2)。このインク交換表示において、制御部は、CMYBk各色の各インクカートリッジ40C,40M,40Y,40Kのうち、いずれのインクが無くなったのかを識別可能に表示する。これにより、ユーザは交換すべきインクカートリッジ40の色を把握することができる。また、この警告表示は、エラー表示として出力してもよく、例えば、インクカートリッジ交換が完了されるまでは、画像記録動作が実行できないように制御してもよい。
【0088】
ユーザは、上記警告表示により、インクが無くなったインクカートリッジ40を交換する。詳細には、空になったインクカートリッジ40をカートリッジ装着部6から引き抜くようにして脱離し、新たなインクカートリッジ40を装着する。カートリッジ装着部6からインクカートリッジ40が脱離されることにより、インク室11内に挿入されていたインク針17の先端は大気に曝される。そして、新たなインクカートリッジ40が装着されることにより、インク針17はシール部材13を貫通して、その先端をインクで満たされたインク室11内に貫入される。これにより、該インク室11のインクがインク針17によりインクチューブ41へ導き出される。
【0089】
このインクカートリッジ40の交換作業によって、図13に示すように、インク針17内に空気Aが進入する。この空気Aの容量は、インクカートリッジ40の交換作業において必ずしも一定ではないが、空気Aの容量が大きければ、インク針17内のインク通路を塞いでしまうことがあり、仮に空気Aの容量が小さくとも、インク針17やインクチューブ41内において気泡を成長させる核となり、インクジェット記録ヘッド39からのインク吐出不良の原因となる。
【0090】
カートリッジ装着部6に新たなインクカートリッジ40が装着されると、上記インクセンサ19の出力に基づいて、制御部64はインク有りと判断する(S3)。これにより、インクカートリッジ40が交換されたことを検出することができる。この検出に基づいて、制御部64は、インク交換を促す警告表示を消去し、エラー表示をしている場合にはエラー表示も消去する。
【0091】
そして、制御部64は、双方向ポンプ7を駆動させてインクカートリッジ40の交換が行われたインクチューブ41内のインクをインクカートリッジ40のインク室11側へ所定量だけ給送する(S4)。インクの給送量は、インク針17に進入すると予想される空気Aの最大容量より大きく設定する。一方、インクの給送量を空気Aの最大空気容量より過大にすれば、インクジェット記録ヘッド39内のインク通路における負圧が過大となり、インク吐出口53のメニスカスが崩れたり、インク吐出口53から空気が進入するおそれがあるので、これらを考慮して適当なインク給送量を設定する。
【0092】
双方向ポンプ7により、インクチューブ41のインクがインク室11側へ給送されることにより、インク針17内からインク室11側へインクが流れ出す。このインクの流れと共に、インク針17内の空気Aもインク室11へ押し出されるように排出される。インク室11へ排出された空気Aは、インク室11内を上昇してインクの液面からインク室11内の空気へ混入する。図5に示したように、インク室11は、ラビリンス状の通気孔14により大気開放されているので、双方向ポンプ7によりインク室11へ押し出されるインク量に対応するインク室11内の空気が外部へリリースされる。したがって、インク室11側へインクを給送してもインク室11内の圧力変化はない。同様に、インク室11内へ排出された空気Aに対応するインク室11内の空気も外部へリリースされる。
【0093】
続いて、制御部64は、双方向ポンプ7を駆動させてインクチューブ41内のインクをインクジェット記録ヘッド39側へ所定量だけ給送する(S5)。このインク給送量はインク室11側へ給送したインク量と同量とする。これにより、インクジェット記録ヘッド39のインク通路における負圧が元の状態へ戻される。そして、制御部64は、双方向ポンプ7を停止して待機状態となる(S6)。
【0094】
このように、インクカートリッジ40が装着された際に、制御部64が、双方向ポンプ7を駆動させてインクチューブ41内のインクをインク室11側へ所定量だけ給送することにより、インクカートリッジ40の交換作業によってインク針17内に進入した空気Aが、給送されたインクとともにインク室11内へ排出される。これにより、インクチューブ41内のインクを廃棄することなく、インク針17に進入した空気Aを簡易且つ確実に除去することができる。
【0095】
特に、本実施の形態にように、インクジェット記録ヘッド39とカートリッジ装着部6とが独立に配置され、カートリッジ装着部6からインクジェット記録ヘッド39までをインクチューブ41で接続した構成ではインク通路が長くなるので、仮に、パージ機構48により空気Aをインクジェット記録ヘッド39側へ排出すると、該空気Aとともに排出されるインク量が多くなるという問題があるが、前述したように、インクチューブ41のインクをインク室11側へ給送することにより、インクを廃棄することなくインク針17内の空気Aを排出することができる。また、該空気Aがインクチューブ41内に進入しないので、該空気Aを核としてインクチューブ41内で気泡が成長することがないという利点がある。
【0096】
なお、本実施の形態にように、CMYBkの各色毎にインクカートリッジ40C,40M,40Y,40Kが設けられている場合には、制御部64は、交換されたインクカートリッジに対応する双方向ポンプ7を駆動すればよい。これにより、交換したインクカートリッジに対応するインク針17から確実に空気Aが排出される。
【0097】
また、本実施の形態では、制御部64は、双方向ポンプ7を駆動させて、インクカートリッジ40交換が行われたインクチューブ41内のインクをインクカートリッジ40のインク室11側へ所定量だけ給送した後(S4)、双方向ポンプ7を逆方向へ駆動させて、インクチューブ41内のインクをインクジェット記録ヘッド39側へ所定量だけ給送することとしているが(S5)、インクジェット記録ヘッド39とインクカートリッジ40との位置関係により、換言すれば、これらのインクの水頭差により、双方向ポンプ7を逆方向へ駆動させなくとも、インクジェット記録ヘッド39のインク通路における負圧が元の状態へ戻る場合には、インクチューブ41内のインクをインクジェット記録ヘッド39側へ所定量だけ給送するステップ(S5)は省略してもよい。
【0098】
また、本実施の形態では、インクカートリッジ40のインク室11からインク針17によりインクが導出されるものとしたが、インクカートリッジ40のインク供給口12からインクを導き出すための導出部はインク針17に限定されるものではなく、例えば逆止弁等のその他の公知の構成を採用することができる。
【0099】
また、本実施の形態では、インクセンサ19によりインク室11のインクの有無を検出することにより、制御部64がインクカートリッジ40の装着を判断することとしたが、本発明に係るカートリッジ検出手段として、例えば、光学的センサ以外のインクセンサを用いることとしたり、また、インクカートリッジ40に電気的接点を設けるとともに、該電気的接点と接触可能な電極をカートリッジ装着部6に設け、これら電極と電気的接点との導通状態によりインクカートリッジ40の装着を判断する構成等、インクカートリッジの装着を検出できるその他の公知の構成を採用することができる。
【0100】
以下、本発明の別の実施形態について説明する。
上記実施の形態では、制御部64は、インクカートリッジ40が交換された際に双方向ポンプ7を駆動して、インクチューブ41内のインクをインク室11側へ給送することとしたが、本実施の形態では、インクカートリッジ40が装着された後、制御部64が、定期的に双方向ポンプ7を駆動して、インクチューブ41内のインクをインク室11側へ給送する。なお、複合機1の構成は上記実施の形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0101】
上記実施の形態にように、インクカートリッジ40の装着の際に、制御部64が双方向ポンプ7を駆動してインクをインク室11側へ給送しても、インク針17内の空気Aが完全に排出されない場合がある。例えば、図15に示すように、インク針17の先端部分は、シール部材13を刺し貫きやすいように尖っており、インク針17の中空部に通ずる孔34は、尖形の先端部分の側面に穿設されている。このような形状は、例えば合成樹脂製のインク針において成形上の理由から採用されたり、インク針をシール部材に刺し入れる際に、インク針内にシール部材の細片が進入し難くするために採用される。例えば、このようなインク針17の形状を理由として、インク針17内の空気Aが完全に排出されず残存することが想定される。
【0102】
このように、インク針17に残存した空気Aは、その容量が小さくとも該空気Aが核となって気泡が成長し、インク針17やインクチューブ41内のインク通路内に気泡が生ずる原因となる。したがって、残存した空気Aが核となって成長した気泡を排出する必要がある。
【0103】
以下、定期的な双方向ポンプ7の駆動について図14を用いて説明する。
制御部64は、ユーザが操作パネル4又はコンピュータに入力した画像記録指令を受けて(S11)、双方向ポンプ7を駆動させてインクチューブ41内のインクをインクカートリッジ40のインク室11側へ所定量だけ給送する(S12)。このインクの給送は、CMYBk各色毎のインクチューブ41にそれぞれ接続された双方向ポンプ7のすべてを駆動して、全インクチューブ41において行う。また、各色インクの給送量は、上記実施の形態と同様に設定する。
【0104】
上記実施の形態と同様に、双方向ポンプ7により、インクチューブ41のインクがインク室11側へ給送されることにより、インク針17内からインク室11側へインクが流れ出し、このインクの流れと共に、インク針17内の残存した空気A又は該空気Aを核として成長した気泡がインク室11へ押し出されるように排出される。そして、インク室11へ排出された空気A又は気泡は、通気孔14を通じて外部へリリースされる。
【0105】
続いて、制御部64は、双方向ポンプ7を駆動させてインクチューブ41内のインクをインクジェット記録ヘッド39側へ所定量だけ給送する(S13)。このインクの給送も、CMYBk各色毎のインクチューブ41にそれぞれ接続された双方向ポンプ7のすべてを駆動して、全インクチューブ41において行う。また、インク給送量はインク室11側へ給送したインク量と同量とする。これにより、インクジェット記録ヘッド39のインク通路における負圧が元の状態へ戻される。そして、制御部64は、双方向ポンプ7を停止する(S14)。そして、上記実施の形態で示した画像記録動作により、記録用紙に画像記録を行う(S15)。
【0106】
これにより、インクカートリッジ40がカートリッジ装着部6に装着された際に排出できずにインク針17内に残存した空気A又は該空気Aを核として成長した気泡を、インク針17からインク室へ排出することができる。
【0107】
なお、本実施の形態では、制御部64が定期的に双方向ポンプ7を駆動するタイミングとして、画像記録動作の際を例に説明したが、本発明に係る定期的な双方向ポンプの駆動は、画像記録動作の際に限定されないことは当然である。したがって、例えば、複合機1の電源投入時に双方向ポンプ7を駆動したり、タイマーを設けて、電源投入後又はインクカートリッジ40の装着後、所定時間経過毎に双方向ポンプを駆動することとしてもよい。
【0108】
上述の双方向ポンプ7は、インクチューブ41の中間地点に設けられて直接インクを給送するものであったが、この様な構成に限定されず、インクタンク40の大気連通孔14にバルブを介して接続されるエアポンプといった構成であっても良い。この形態では、インクタンク40内の空気をバキュームする事で間接的にインク室へのインクの給送を行い、逆にインクタンク40内へ空気を送り込むことでインク室内のインクを加圧して、その圧力でインクジェット記録ヘッドへ39方向へインクを給送する。また、この場合、ポンプは直接インクを扱うわけではないので、複数のカートリッジに対してもポンプを複数揃えなくとも、1つのポンプを用いてバルブ等で切り替えて所望のカートリッジへエアの負圧・加圧を与える構成を取ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る複合機1の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、複合機1の内部構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部2の主要構成を示す拡大断面図である。
【図4】図4は、プリンタ部2の主要構成を示す拡大平面図である。
【図5】図5は、インクカートリッジ40Cの概略構成を示す断面図である。
【図6】図6は、カートリッジ装着部6の概略構成を示す断面図である。
【図7】図7は、インクジェット記録ヘッド39の底面図である。
【図8】図8は、インクジェット記録ヘッド39の内部構成を示す拡大断面図である。
【図9】図9は、ネジポンプ90の概略構成を示す断面図である。
【図10】図10は、ベーンポンプ97の概略構成を示す断面図である。
【図11】図11は、複合機1の制御部64の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、インクカートリッジ交換の際の双方向ポンプ7の駆動を示すフローチャートである。
【図13】図13は、インク針17内に空気Aが進入した状態を示す拡大断面図である。
【図14】図14は、定期的に双方向ポンプ7を駆動させる動作を示すフローチャートである。
【図15】図15は、インク針17内に空気Aが残存した状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1・・・複合機(インクジェット記録装置)
6・・・カートリッジ装着部
7・・・双方向ポンプ
11・・・インク室
12・・・インク供給口
13・・・シール部材
14・・・通気孔
17・・・インク針(導出部)
38・・・走査キャリッジ(画像記録部)
39・・・インクジェット記録ヘッド
40,40C,40M,40Y,40K・・・インクカートリッジ
41,41C,41M,41Y,41K・・・インクチューブ(インク通路,可撓性チューブ)
64・・・制御部(制御手段、インクカートリッジ検出手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが貯留されたインク室及び該インク室に形成されたインク供給口を有し、前記インク室から該インク供給口を介してインクを供給するインクカートリッジと、
前記インクカートリッジを着脱可能に保持し、前記インク供給口からインク室内のインクを導き出す導出部を有するカートリッジ装着部と、
前記カートリッジ装着部に前記インクカートリッジを装着する動作がなされたことを検出するインクカートリッジ検出手段と、
前記インクカートリッジから供給されたインクをインク滴として吐出するインクジェット記録ヘッドを有する画像記録部と、
前記導出部と前記画像記録部とをつなぎ、前記インクカートリッジのインク室と前記画像記録部のインクジェット記録ヘッドとの間でインクを流通可能とするインク通路と、
前記インク通路を流通するインクを双方向へ給送可能な双方向ポンプと、
前記インクカートリッジ検出手段が上記インクカートリッジの装着を検出した場合に、前記双方向ポンプを駆動して前記インク室側へ所定量のインクを給送する制御手段と、
を具備するものであるインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記画像記録部は、上記カートリッジ装着部と独立に配置されて所定方向に往復移動するものであり、
上記インク通路は、該画像記録部の往復移動に追従して姿勢変化する可撓性チューブを備えたものである請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記カートリッジ装着部の導出部は、上記インクカートリッジのインク供給口を封止するシール部材を貫通可能なインク針を備えたものである請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記インクカートリッジは、上記インク室を大気開放するラビリンス状通気孔が設けられたものである請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された後には、定期的に上記双方向ポンプを駆動して上記インク室側へ所定量のインクを給送するものである請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御装置は、印刷指令を受けた際、装置電源を投入した際、所定時間が経過した際の少なくとも1つを契機として双方向ポンプを駆動し、前記インク室側へ所定量のインクを給送するものである請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記インク室側へのインクの給送動作の後、双方向ポンプを逆に駆動させて、インクをインクジェット記録ヘッド側へほぼ同じ前記所定量だけ給送するものである請求項1〜6の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インクが貯留されたインク室及び該インク室に形成されたインク供給口を有し、前記インク室から該インク供給口を介してインクを供給する複数のインクカートリッジと、
前記複数のインクカートリッジを着脱可能に保持し、各インクカートリッジ毎に、前記インク供給口からインク室内のインクを導き出す導出部を有するカートリッジ装着部と、
前記複数のインクカートリッジそれぞれに対応して、前記カートリッジ装着部にインクカートリッジを装着する動作がなされたことを検出するインクカートリッジ検出手段と、
前記複数のインクカートリッジから供給されたインクをインク滴として吐出するインクジェット記録ヘッドを有する画像記録部と、
前記導出部と前記画像記録部とをつなぎ、各インクカートリッジのインク室と前記画像記録部のインクジェット記録ヘッドとの間でインクを独立して流通可能とする複数のインク通路と、
各インク通路を流通するインクをそれぞれ独立して双方向へ給送可能な双方向ポンプと、
前記インクカートリッジ検出手段が上記インクカートリッジの装着を検出した場合に、前記双方向ポンプを駆動して、各インク通路毎に独立して、前記インク室側へ所定量のインクを給送する制御手段と、
を具備するものであるインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御装置は、装着が検出されたカートリッジに対してのみ、その対応するインク室への所定量のインクの給送を行うものである請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
上記制御手段は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された後には、定期的に上記双方向ポンプを駆動して上記インク室側へ所定量のインクを給送するものである請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記制御装置は、印刷指令を受けた際、装置電源を投入した際、所定時間が経過した際の少なくとも1つを契機として双方向ポンプを駆動し、前記インク室側へ所定量のインクを給送するものである請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記インク室側へのインクの給送動作の後、双方向ポンプを逆に駆動させて、インクをインクジェット記録ヘッド側へほぼ同じ前記所定量だけ給送するものである請求項8〜11の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
インクが貯留されたインク室及び該インク室に形成されたインク供給口を有し、前記インク室から該インク供給口を介してインクを供給するインクカートリッジと、前記インクカートリッジを着脱可能に保持し、前記インク供給口からインク室内のインクを導き出す導出部を有するカートリッジ装着部と、前記インクカートリッジから供給されたインクをインク滴として吐出するインクジェット記録ヘッドを有する画像記録部と、前記導出部と前記画像記録部とをつなぎ、前記インクカートリッジのインク室と前記画像記録部のインクジェット記録ヘッドとの間でインクを流通可能とするインク通路と、前記インク通路を流通するインクを双方向へ給送可能な双方向ポンプと、を備えるインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されたことを検出するステップと、
前記インクカートリッジの装着を検出した場合に、前記双方向ポンプを駆動して前記インク室側へ所定量のインクを給送するステップと、
を具備するものであるインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項14】
前記インクカートリッジが前記カートリッジ装着部に装着された後には、
印刷指令の受信、装置電源の投入、所定時間の経過の少なくとも1つを契機として、定期的に上記双方向ポンプを駆動して上記インク室側へ所定量のインクを給送するステップを更に有するものである請求項13に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項15】
前記インク室側へのインクの給送動作の後、双方向ポンプを逆に駆動させて、インクをインクジェット記録ヘッド側へほぼ同じ前記所定量だけ給送するステップを更に具備するものである請求項13又は14に記載のインクジェット記録装置の制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−327186(P2006−327186A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117552(P2006−117552)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】