説明

インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法

【課題】インクに含まれる水や溶媒の記録媒体内部への浸透を抑制し、カールやカックルの発生を防止するとともに、乾燥効率の向上、記録の高速化を図るとともに、色ずれや画像ずれを防止して、高画質化を達成する。
【解決手段】搬送手段で搬送される記録媒体に対して、処理液を付与する処理液付与手段と、その搬送方向下流側に配置された水性紫外線硬化型インクを吐出する液体吐出ヘッドと、さらにその下流側に配置された半硬化手段と、さらにその下流側に配置された、前記記録媒体の乾燥手段と、さらに下流側に配置された本硬化手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置を提供することにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に係り、特に、インクジェットヘッドに対して相対搬送される記録媒体に対して、インクジェットヘッドから水性紫外線硬化型インクで印字を行い、記録媒体上に印字されたインクを硬化、定着するインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線硬化型インクを用いるインクジェット記録方法では、カラー画像を形成する場合、各色のインクにより形成された画像に対して、最終的に一括して紫外光を照射する場合と、各色のインクを吐出する毎に紫外光を照射する場合とがある。
【0003】
紫外線硬化型インクは、紫外光を照射しないと固化しないので、記録媒体にインク液滴が着弾すると、そのインクが記録媒体に浸透したり拡散して、隣接したインクドット同士がつながったり、インクドットが流れてドットの位置が移動してしまったりするため、画像がぼけてしまうという不具合が生じる。
【0004】
また、順次インクが吐出されるため、記録媒体上で異なる色のインク液滴が隣接した場合には、ブリードや混色などが生じ、所望の色合いが得られなかったり、色の境界がぼけたりして、画像にシャープさがなくなってしまうという不具合が発生する。
【0005】
そこで従来、これらの不具合を改善するべく、紫外線硬化型インクを用いて印字を行い紫外線で硬化する際、様々な工夫を行ったインクジェット記録装置が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、ブリードや混色、色ずれや滲みを防ぎつつ、装置の小型化を達成する目的で、一部に紫外光を透過する蒲鉾型の曲面を有する、画像が形成された記録媒体を搬送する搬送機構の内側から、記録ヘッド毎に吐出された記録媒体の裏面側に向かって紫外光を照射してインクを順次プレ硬化させて、その後に表面側からさらに紫外光を照射してインクを本硬化させる画像形成装置が提案されている。
【0007】
また、例えば特許文献2では、色間ブリーディングによる画質劣化を防止するとともに、ノズル内インクの硬化を防止する目的で、色別のインクジェットヘッド間に着弾インク液滴を半硬化させる紫外線を照射する硬化手段と、ハンドリング(本硬化の下流搬送工程におけるローラや搬送ガイド等と画像面との擦れ、プリント集積部におけるプリント同士の擦れ、仕上がったプリントを実際に取り扱う時の種々の物体による擦れ等)によって画像劣化を起こらない程度に本硬化させる紫外線を照射する硬化手段を備えた画像形成装置が提案されている。
【0008】
また、例えば、複数回紫外線照射してもインクの半硬化状態を維持させ、確実に中間処理を可能とし、光沢感のある画像定着を実現するとともに、カラー画像形成時における異色インク間の混色による画質劣化を防止する目的で、分光吸収特性の重ならない2種のUV硬化開始剤(半硬化手段による照射のみで硬化開始する開始剤と、本硬化手段による照射で硬化開始する開始剤を含む)と、モノマー及び色材を含む紫外線硬化型インクを吐出することで、インクドットが半硬化手段により複数回照射されても紫外線硬化型インクが記録媒体上で半硬化状態を維持するため、加熱・加圧定着や中間転写などの中間処理を確実に行うことができるフルラインヘッドを備えた画像形成装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−193527号公報
【特許文献2】特開2005−280346号公報
【特許文献3】特開2007−112117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものでは、ドラム内部から記録媒体裏面に向かって紫外光を照射する構成であるので、記録媒体が紫外光を透過できる素材や、紫外光が繊維の隙間を浸透していくコピー用紙のような普通紙等である場合には、インク滴の下部を半硬化することで浸透を抑制することができるが、記録媒体が、例えば厚手のコート紙のように紫外光を大きく吸収する場合にはインクに到達する光量が不足するため、十分な硬化が期待できないという問題がある。
【0011】
また、上記特許文献2に記載のものでは、半硬化手段を色別のインクジェットヘッド間に配置しているため、記録ヘッドを搭載する固定部材、インク供給や信号供給線及び、紫外光照射部からなる一つのヘッドユニットが搬送方向に色数の分だけ並列的に配設されることにより、構造の複雑化及び装置の大型化・高コスト化が招来されるとともに、各記録ヘッド間の距離が長くなることが影響して、色間ずれや輪郭ずれなどの画像ずれが生じるという問題がある。
【0012】
また、上記特許文献3に記載のものでは、一般的な紫外光光源(キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)は分光分布が広帯域であるため、2種のうち一方の開始剤を選択的に硬化開始させることが難しい。代わりとして紫外光領域に狭帯域の発光分布を持つLEDやレーザダイオードなどを用いればよいが、これらの光源は高価であるため、光源を線状に配列して高生産性を実現しようとすると装置の高コスト化が避けられない。また例えば、顔料インクに複数の開始剤を混ぜた場合、分散安定性が劣化するという問題がある。
【0013】
またさらに、水性インクを用いるインクジェット記録方法では、記録媒体にインク滴を吐出して着弾させるため、紙などの記録媒体にはインク水分が染み込むことによって、カックル(記録媒体の吸水による、記録媒体の膨張変形)と呼ばれる現象が発生し、記録品位を低下させてしまうという問題がある。
【0014】
特にインクジェット記録装置の高解像度化、記録の高速化に伴い、インクジェットヘッドは吐出口が高密度に配置され、かつ吐出口の数が多くなり長尺化の傾向にある。このように、高密度に配列され、固定化された長尺ヘッドを用いて一回のパスで高速印刷を行うシステムの場合、記録の高速化における乾燥効率化、及びカックルの抑制を図る必要がある。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、インクに含まれる水や溶媒の記録媒体内部への浸透を抑制し、カールやカックルの発生を防止するとともに、乾燥効率の向上、記録の高速化を図るとともに、色ずれや画像ずれを防止して、高画質化を達成することのできるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送される記録媒体に対して、インク組成物中の成分を凝集させる処理液を付与する処理液付与手段と、前記処理液付与手段に対して前記搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体に対して水性紫外線硬化型インクを吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに対して前記搬送方向下流側に配置され、前記液体吐出ヘッドにより前記記録媒体上に吐出された前記水性紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射して半硬化させる半硬化手段と、前記半硬化手段に対して前記搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、前記乾燥手段に対して前記搬送方向下流側に配置され、前記液体吐出ヘッドにより前記記録媒体上に吐出された前記水性紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射して本硬化させる本硬化手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0017】
このように、本発明においては、描画前に記録媒体に処理液を付与するようにしたため、記録面上での色材流れ、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴同士の着弾干渉等が防止され、また、インクに含まれる固形成分が記録面上に凝集することによって毛管が形成されるため、インクに含まれる水や溶媒の記録媒体内部への浸透を抑制することができる。また描画後乾燥前に半硬化するようにしたため、インクが増粘し、インクに含まれる水や溶媒の記録媒体内部への浸透を抑制でき、浸透によるカールやカックルの発生を抑制することができる。また、水や溶媒は記録面の表面近傍に溜まるため、その後の乾燥における乾燥効率が向上する。
【0018】
また、複数色のインクを打滴した後で一括してインクの半硬化を行うようにしたため、紫外線照射部を各色別のヘッドの間に設置する必要がなく、装置の大型化及び高コスト化を回避することができる。さらに、各色別のヘッドの間隔を狭くすることができるので、色ずれや画像ずれを防止することができるとともに、高速記録が可能となる。
【0019】
また、本硬化により、その下流側の搬送工程におけるローラや搬送ガイド等と画像面との擦れや、プリント集積部におけるプリント同士の擦れ、あるいは仕上がったプリントを取り扱う際の種々の物体による擦れなどを防止して、高画質化を達成することが可能となる。
【0020】
また、請求項2に示すように、前記乾燥手段に対して前記記録媒体を搬送する搬送手段は、前記記録媒体を裏面から負圧吸引するための複数の吸引孔が形成された搬送面を有し、前記記録媒体を前記搬送面上に吸着して搬送することを特徴とする。
【0021】
このように、吸着して乾燥することにより、カールやカックルの発生を抑制することができる。さらに、乾燥の前に半硬化しているため、インクの流動が抑制され、吸着乾燥の際にインクが吸着穴に溜まり難い。
【0022】
また、請求項3に示すように、前記搬送手段は、第1のドラム外周面に対向して前記液体吐出ヘッドが配置され、前記記録媒体を前記第1のドラム外周面に保持して回転搬送しながら、前記液体吐出ヘッドから前記水性紫外線硬化型インクを前記記録媒体に向けて吐出するように構成された描画ドラムと、第2のドラム外周面に対向して前記乾燥手段が配置され、前記記録媒体を前記第2のドラム外周面に保持して回転搬送しながら、前記乾燥手段により前記記録媒体を乾燥するように構成された乾燥ドラムと、前記描画ドラムと前記乾燥ドラムとの間に配置され、前記記録媒体の先端を保持する保持手段を備え、該保持手段により前記記録媒体を保持して回転搬送し、前記描画ドラムから前記乾燥ドラムへ前記記録媒体を受け渡す第1の中間搬送体と、を含むことを特徴とする。
【0023】
このようにドラム搬送方式を採用することにより高生産性、高画質性を実現することが可能となる。
【0024】
また、請求項4に示すように、前記第1の中間搬送体の内部に前記半硬化手段が配置されたことを特徴とする。
【0025】
このように、第1の中間搬送体に半硬化手段を配置することにより、インクジェットヘッドから離れた渡し胴搬送手段によって半硬化させることにより、インクジェットヘッドのノズル面でインクが硬化することにより吐出不良を低減することができる。
【0026】
また、請求項5に示すように、前記乾燥ドラムは、その外周面に前記記録媒体を裏面から負圧吸引するための複数の吸引孔が形成され、前記記録媒体を前記外周面上に吸着して搬送することを特徴とする。
【0027】
このようにドラム搬送の場合にも吸着して乾燥することにより、カールやカックルの発生を抑制することができる。さらに、乾燥の前に半硬化しているため、インクの流動が抑制され、吸着乾燥の際にインクが吸着穴に溜まり難い。
【0028】
また、請求項6に示すように、前記搬送手段は、さらに、第3のドラム外周面に対向して前記本硬化手段が配置され、前記記録媒体を前記第3のドラム外周面に保持して回転搬送しながら、前記本硬化手段により前記記録媒体を本硬化するように構成された定着ドラムと、前記乾燥ドラムと前記定着ドラムとの間に配置され、前記記録媒体の先端を保持する保持手段を備え、該保持手段により前記記録媒体を保持して回転搬送し、前記乾燥ドラムから前記定着ドラムへ前記記録媒体を受け渡す第2の中間搬送体と、を含むことを特徴とする。
【0029】
ドラム搬送することにより高生産性、高画質性を実現することが可能となる。
【0030】
また、同様に前記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、搬送手段により搬送される記録媒体に対して、インク組成物中の成分を凝集させる処理液を付与する工程と、前記処理液付与工程に引き続き、前記記録媒体に対して水性紫外線硬化型インクを吐出して前記記録媒体上に描画する描画工程と、前記描画工程に引き続き、前記記録媒体上に吐出された前記水性紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射して半硬化させる半硬化工程と、前記半硬化工程に引き続き、前記記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程に引き続き、前記記録媒体上に吐出された前記水性紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射して本硬化させる本硬化工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。
【0031】
これにより、インクに含まれる水や溶媒の記録媒体への浸透を抑制し、カールやカックルの発生を抑制し、乾燥効率を向上させ、画質向上及び記録の高速化を達成することができる。
【0032】
また、請求項8に示すように、前記乾燥工程において、前記記録媒体は、複数の吸引孔が形成された搬送面を有する搬送手段によって、前記記録媒体裏面側から前記搬送面に負圧吸引されて搬送されることを特徴とする。
【0033】
このように、吸着して乾燥することにより、カールやカックルの発生を抑制することができる。
【0034】
また、請求項9に示すように、前記各工程において、前記記録媒体は、回転する各搬送ドラムの外周面上に保持されて搬送され、各工程の各搬送ドラム間において、前記記録媒体は、各搬送ドラム間に配置された中間搬送体によって、前段の工程の搬送ドラムから、それに引き続く後段の工程の搬送ドラムへ受け渡されることを特徴とする。
【0035】
このように、ドラム搬送することにより高生産性、高画質性を実現することが可能となる。
【0036】
また、請求項10に示すように、前記描画工程において描画された前記記録媒体は、前記描画工程の搬送ドラムと前記乾燥工程の搬送ドラムの間に配置された中間搬送体によって、前記描画工程の搬送ドラムから前記乾燥工程の搬送ドラムへ受け渡される間に半硬化されることを特徴とする。
【0037】
このように、中間搬送体で搬送している時に半硬化することにより、インクジェットヘッドから離れた渡し胴搬送手段によって半硬化させることになり、インクジェットヘッドのノズル面でインクが硬化することにより吐出不良を低減することができる。
【0038】
また、請求項11に示すように、前記乾燥工程の搬送ドラムは、その外周面に前記記録媒体を裏面から負圧吸引するための複数の吸引孔が形成され、前記記録媒体を前記外周面上に吸着して搬送することを特徴とする。
【0039】
このようにドラム搬送の場合にも吸着して乾燥することにより、カールやカックルの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、インクに含まれる水や溶媒の記録媒体内部への浸透を抑制し、カールやカックルの発生を防止するとともに、乾燥効率の向上、記録の高速化を図るとともに、色ずれや画像ずれを防止して、高画質化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態のインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図3】本実施形態のインクジェット記録装置の主要部を示す構成図である。
【図4】ベルト搬送手段を備えたインクジェット記録装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法について詳細に説明する。
【0043】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0044】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122を備えて構成されている。
【0045】
このインクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体Pの記録面にインクジェットヘッド172(172M(マゼンタ)、172K(ブラック)、172C(シアン)、172Y(イエロー))から複数色の水性紫外線硬化型のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体P上に処理液(インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体P上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0046】
給紙部112は、記録媒体Pを処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体Pが積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体Pが一枚ずつ処理液付与部114に給紙されるようになっている。ここで記録媒体Pの浮き上がりを防止するために、給紙トレイ150は外面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。
【0047】
本実施形態のインクジェット記録装置100においては、記録媒体Pとして、紙種や大きさ(用紙サイズ)の異なる複数種類の記録媒体Pを使用することができる。給紙部112において各種の記録媒体Pをそれぞれ区別して集積する複数の用紙トレイ(図示省略)を備え、これら複数の用紙トレイの中から給紙トレイ150に送る用紙を自動で切り換える態様も可能であるし、必要に応じてオペレータが用紙トレイを選択し、もしくは交換する態様も可能である。なお、本例では、記録媒体Pとして、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0048】
処理液付与部114は、記録媒体Pの記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含み、処理液とインクとが接触することによりインクと凝集反応を起こし、インクは色材と溶媒との分離が促進され、インク着弾後の滲みや着弾干渉(合一)あるいは混色が発生せず高品位画像の形成が可能となる。なお、処理液としては、凝集剤の他に必要に応じてさらに他の成分を用いて構成することもできる。インク組成物とともに処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば、細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。なお、処理液については、後で詳しく述べる。
【0049】
図1に示すように、処理液付与部114は、給紙ドラム152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体Pを保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の外周面の間に記録媒体Pを挟み込むことによって記録媒体Pの先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154には、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体Pを処理液ドラム154の外周面に密着保持することができる。
【0050】
処理液ドラム154の外側には、その外周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。記録媒体Pは、処理液塗布装置156によって記録面に処理液が塗布される。
【0051】
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体Pは、処理液ドラム154から第1渡し胴搬送手段126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。第1渡し胴搬送手段126は、その下側にリブ付きのガイド部材127を備え、回転軸を挟んで180度対向する方向に延びたアームの先端部に設けられた保持爪によって記録媒体Pの先端部を把持して、回転軸の回りを回転し、記録媒体Pの後端部はフリーの状態で、ガイド部材127に沿って記録媒体Pを記録面の裏面側が凸になるように(第1渡し胴搬送手段126の内側を向く記録媒体Pの記録面は凹になるように)して搬送するように構成されている。
【0052】
描画部116は、描画ドラム170、及びインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yを備えている。また、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの手前側(描画ドラム170の回転方向上流側)に記録媒体Pの皺を取るための用紙抑えローラを設置するようにしても良い。
【0053】
描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備え、記録媒体の先端部を保持固定するようになっている。また、描画ドラム170は、外周面に多数の吸引孔を有し、負圧によって記録媒体Pを描画ドラム170の外周面に吸着させる。これにより、用紙浮きによるヘッドとの接触が回避され、用紙ジャムが防止される。また、ヘッドとのクリアランス変動による画像ムラが防止される。
【0054】
このように描画ドラム170に固定された記録媒体Pは、記録面が外側を向くようにして、その記録面側が凸の状態で搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172(172M、172K、172C、172Y)から水性紫外線硬化型のインクが打滴される。
【0055】
インクジェットヘッド172(172M、172K、172C、172Y)は、それぞれ記録媒体Pにおける画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yは、記録媒体Pの搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と略直交する方向に延在するように設置されている。
【0056】
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体Pの記録面に向かって各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体P上での色材流れなどが防止され、記録媒体Pの記録面に画像が形成されるようになっている。
【0057】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定されない。
【0058】
以上のように構成された描画部116により、記録媒体Pに対してシングルパスで描画を行うことができる。これにより、高速記録及び高速出力が可能であり、生産性を高めることができる。
【0059】
描画部116で画像が形成された記録媒体Pは、描画ドラム170から第2渡し胴搬送手段128を介して、乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
【0060】
第2渡し胴搬送手段128も前述した第1渡し胴搬送手段126と同様に、その下側にリブ付きのガイド部材129を備え、回転軸を挟んで180度対向する方向に延びたアームの先端部に設けられた保持爪によって記録媒体Pの先端部を把持して、回転軸の回りを回転し、記録媒体Pの後端部はフリーの状態で、ガイド部材129に沿って記録媒体Pを記録面の裏面側が凸になるように(第2渡し胴搬送手段128の内側を向く記録媒体Pの記録面は凹になるように)して搬送するように構成されている。なお、この第2渡し胴搬送手段128は、請求項3及び4でいう第1の中間搬送体に相当し、その内部に半硬化手段が設けられているが、これについて詳しくは後述する。
【0061】
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム176及び溶媒乾燥装置178を備えている。
【0062】
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体Pの先端を保持するとともに、ドラム外周表面に吸引孔(図示省略)を有し、負圧により記録媒体Pの裏面側を乾燥ドラム176に吸着できるようになっている。
【0063】
乾燥ドラム176は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を有している。これにより記録媒体Pを乾燥ドラム176の周面に密着保持することができる。また、負圧吸引を行うことにより、記録媒体Pを乾燥ドラム176に拘束することができるので、記録媒体Pのカックルを防止することができる。
【0064】
また乾燥ドラム176の外周面に対向するように、送風手段180(平滑化手段)と溶媒乾燥装置178が設けられている。送風手段180は、記録媒体Pの搬送方向下流側に送風し、記録媒体Pの皺を取り、記録媒体Pを乾燥ドラム176へ安定して吸着させる働きを有する。すなわち、送風手段180は、記録媒体Pの後端部側に向かって斜めに風を当てて、保持手段177によってその先端を保持された記録媒体Pを、先端側から後端側に向かって平滑化し、皺の発生を抑制して、より確実に吸着されるようにする。
【0065】
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、IRヒータ等とファンの組み合わせを複数配置した熱風乾燥手段182で構成されている。熱風乾燥手段182の各熱風噴出しノズルから記録媒体Pに向けて吹き付けられる熱風の温度と風量を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。記録媒体Pは記録面が外側を向き、記録面側が凸となるように、乾燥ドラム176の外周面に吸着拘束されて搬送され、この記録面に対して上記IRヒータ及び温風噴出しノズルによる乾燥処理が行われる。
【0066】
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体Pは、乾燥ドラム176から第3渡し胴搬送手段130を介して定着部120の定着ドラム184に受け渡される。
【0067】
第3渡し胴搬送手段130も、第1渡し胴搬送手段126や第2渡し胴搬送手段128と同様に、その下側にリブ付きのガイド部材131を備え、回転軸を挟んで180度対向する方向に延びたアームの先端部に設けられた保持爪によって記録媒体Pの先端部を把持して、回転軸の回りを回転し、記録媒体Pの後端部はフリーの状態で、ガイド部材131に沿って記録媒体Pを記録面の裏面側が凸になるように(第3渡し胴搬送手段130の内側を向く記録媒体Pの記録面は凹になるように)して搬送するように構成されている。なお、この第3渡し胴搬送手段130は、請求項6でいう第2の中間搬送体に相当する。
【0068】
定着部120は、定着ドラム184、押圧ローラ188(平滑化手段)、及び紫外線光源190(本硬化手段)で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体Pの先端を保持できるようになっている。
【0069】
定着ドラム184の回転により、記録媒体Pは記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、押圧ローラ188による平滑化処理が行われた後、紫外線光源190からの紫外線照射による本硬化・定着が行われる。
【0070】
押圧ローラ188は、インクが乾燥された記録媒体Pを加圧することによって記録媒体Pを平滑化するものである。
【0071】
また、紫外線光源190は、記録媒体P上に吐出された水性紫外線硬化型インクによって形成された画像に紫外線を照射して本硬化を行い、インクの定着を行うものである。
【0072】
なお、定着ドラム184の外周面に対向して記録媒体Pに形成された画像の検査を行うインラインセンサを設けてもよい。インラインセンサは、記録媒体Pに定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、例えばCCDラインセンサを好適に用いることができる。
【0073】
定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122には、排紙ユニット192が設置される。定着部120の定着ドラム184から排紙ユニット192までの間に、渡し胴194、搬送チェーン196が設けられている。搬送チェーン196は、張架ローラ198に巻き掛けられている。定着ドラム184を通過した記録媒体Pは、渡し胴194を介して、搬送チェーン196に送られ、搬送チェーン196から排紙ユニット192へと受け渡される。
【0074】
また、図1には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100は、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体Pの位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0075】
図2は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【0076】
インクジェット記録装置100は、通信インターフェース80、システム制御部(システムコントローラ)82、画像メモリ84、モータドライバ86、ヒータドライバ88、プリント制御部90、メンテナンス制御部92、ヘッドドライバ94等を備えている。
【0077】
通信インターフェース80は、ホストコンピュータ96から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース80にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。ホストコンピュータ96から送出された画像データは通信インターフェース80を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦画像メモリ84に記憶される。
【0078】
画像メモリ84は、通信インターフェース80を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システム制御部82を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ84は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0079】
システム制御部82は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムにしたがってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システム制御部82は、通信インターフェース80、画像メモリ84、モータドライバ86、ヒータドライバ88等の各部を制御し、ホストコンピュータ96との間やヒータ99を制御する制御信号を生成する。
【0080】
画像メモリ84には、システム制御部82のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、画像メモリ84は、書き換え不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ84は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域として利用するようにしてもよい。
【0081】
また、システム制御部82には、各種制御プログラムを格納したEEPROM85や画像データに対して各種画像処理を施す画像処理部87が接続されている。システム制御部82からの指令に応じて、EEPROM85から制御プログラムが読み出され、実行される。なお、EEPROM85は、動作パラメータ等の記憶手段と兼用するようにしてもよい。
【0082】
モータドライバ86は、システム制御部82からの指示にしたがってモータ98を駆動するドライバである。図2には、インクジェット記録装置100の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号98で表示している。例えば、図2のモータ98には、図1の中間搬送部126、128、130や渡し胴152、処理液ドラム154、描画ドラム170、乾燥ドラム176、定着ドラム184などを駆動するモータなどが含まれる。
【0083】
ヒータドライバ88は、システム制御部82からの指示にしたがって、ヒータ99を駆動するドライバである。図2には、インクジェット記録装置100に備えられる複数のヒータを代表して符号99で表示している。例えば、図2に示すヒータ99には、図1に示す処理液付与部114のヒータや乾燥部118のIRヒータなどが含まれる。
【0084】
なお、システム制御部82には、この他にメンテナンス制御部92が接続されている。メンテナンス制御部92は、システム制御部82からの指示にしたがって、キャップ及びクリーニングブレードを含むメンテナンスユニット(図示省略)を駆動するメンテナンス駆動部93を制御するものである。
【0085】
プリント制御部90は、システム制御部82の制御に従い、画像メモリ84内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、印字に先立ち、処理液付与ドライバ95を制御して、処理液塗布装置156から記録媒体Pに対して処理液を付与するとともに、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ94に供給する制御部である。プリント制御部90において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ94を介してインクジェットヘッド172(172M、172K、172C、172Y)の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0086】
また、システム制御部82には、紫外線光源(本硬化手段)190及び半硬化手段189を制御するUV照射手段ドライバ97が接続されている。
【0087】
図3に、本実施形態のインクジェット記録装置100の主要部である処理液付与部114、描画部116、乾燥部118及び定着部120を拡大して示し、本発明に係るインクジェット記録装置についてさらに詳しく説明する。
【0088】
図3に示すように、処理液ドラム154、第1渡し胴搬送手段126、描画ドラム170、第2渡し胴搬送手段128(第1の中間搬送体)、乾燥ドラム176、第3渡し胴搬送手段130(第2の中間搬送体)及び定着ドラム184が、並んで配置され、また、第2渡し胴搬送手段128(第1の中間搬送体)の内部には半硬化手段189が設けられ、定着ドラム184には紫外線光源(本硬化手段)190が設けられている。そして、それぞれのドラム及び搬送手段により記録媒体Pを搬送しながら、処理液付与、描画、半硬化、乾燥、本硬化(定着)が順に行われるようになっている。
【0089】
なお、ここでいう本硬化とは、上記本硬化手段190の下流側搬送工程におけるローラや搬送ガイド等と画像面との擦れや、プリント集積部におけるプリント同士の擦れ、あるいは仕上がったプリントを実際に取り扱う時に種々の物体による擦れ等のハンドリングを行っても画像劣化しない程度に記録媒体P上のインク液滴が硬化している状態をいう。従って、本硬化とは必ずしも硬化反応が完了していることを意味するものではない。
【0090】
また、半硬化とは、まだ上記のような意味で本硬化しておらず、柔軟なインク状態となる程度に記録媒体P上のインクを硬化させることをいう。
【0091】
本実施形態のインクジェット記録装置100は、記録媒体Pの記録面上に画像を記録するものであり、記録媒体Pとしては、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、所謂上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本実施形態のインクジェット記録装置100では、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像記録が可能である。
【0092】
なお、記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられる所謂塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本実施形態のインクジェット記録装置100では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【0093】
前述したように、処理液付与部114は、記録媒体Pの記録面に処理液を付与するものである。
【0094】
処理液塗布装置156によって記録面に処理液が塗布される処理液の膜厚は、描画部116のインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから打滴されるインクの液滴径より充分に小さいことが望ましい。例えば、インクの打滴量が2pl(ピコリットル)のときには、液滴の平均直径は15.6μmである。このとき、処理液の膜厚が大きい場合には、インクドットが記録媒体Pの表面に接触することなく、処理液内で浮遊する。そこで、インクの打滴量が2plのときに着弾ドット径を30μm以上得るためには、処理液の膜厚を3μm以下にすることが望ましい。
【0095】
処理液塗布装置156は、図示は省略するが、主として処理液容器、計量ローラ、塗布ローラによって構成されている。処理液容器には、処理液が貯留されており、この処理液に計量ローラの一部が浸漬される。計量ローラとしては、金属ローラ及び金属ローラ表面にセラミックコーティングを施したローラ周面に一定の線数で規則正しく多数のセルが形成されたアニロックスローラが好適に用いられる。金属ローラの材質としては鉄及びSUS等が用いられる。材質として鉄を用いた場合には、表面の親水性の向上、耐磨耗性の向上及び防錆性を向上させるため、表面にクロム等のメッキを施してもよい。アニロックスローラのセル構造としては、例えば、線数150線以上400線以下、セル深さ20μm以上75μm以下、セル容量30cm/m以上60cm/m以下のものを好適に用いることができる。計量ローラの直径は、例えば20mm以上100mm以下で形成される。
【0096】
計量ローラは回動自在に支持されるとともに不図示のモータに連結され、一定の速度で回転駆動される。従って、処理液容器内の処理液を計量ローラの表面に付着させ、この処理液を塗布ローラの表面に転移させることができる。計量ローラの回転方向は塗布ローラと同方向であり、ローラ外周の周速度は塗布ローラと同速、もしくは速度差を設けてもよい。速度差を設ける場合には塗布ローラの周速度に対して計量ローラの周速度を80%以上140%以下が好適に用いられる。塗布ローラと計量ローラとの周速度を調整することにより、計量ローラから塗布ローラへの転移率を調整することが可能であり、記録媒体Pへの塗布膜厚を調整することができる。
【0097】
計量ローラの表面には、計量用のドクターブレードが当接するように設けられている。ドクターブレードは、計量ローラと塗布ローラとの接触位置に対して、計量ローラの回転方向の上流側に配置され、計量ローラの表面の塗布液を掻き落として計量できるようになっている。これにより、ドクターブレードで計量された塗布液を塗布ローラに供給することができる。
【0098】
塗布ローラはEPDMやシリコンなどのゴム層を表面に有するゴムローラが好適に用いられる。塗布ローラは回動自在に支持されるとともに不図示のモータに連結され、一定の速度で回転駆動される。塗布ローラの回転方向は処理液ドラム154と同方向であり、ローラ外周の周速度も処理液ドラム154と同速度で回転する。これによって計量ローラから塗布ローラへ転移された処理液が処理液ドラム154上に保持された記録媒体Pに塗布される。
【0099】
このように、処理液塗布装置156はローラで処理液を塗布するようにしたため、処理液を均一に、かつ塗布量を少なく記録媒体Pに塗布することが可能である。また、処理液塗布装置156は、処理液塗布の搬送ドラム(処理液ドラム154)を汚さないようにするために、処理液塗布手段のローラを記録媒体毎に接触及び離間させるようになっていることが好ましい。処理液ドラム154は、記録媒体Pの先端を保持する保持爪で記録媒体Pを搬送する。これにより、記録媒体Pの高速搬送が可能であり、また用紙搬送ジャムの発生を低減することができる。
【0100】
なお、処理液ドラム154の外周面に対向してIRヒータ及び温風噴出しノズルを設けて、記録媒体Pに塗布された処理液を乾燥するようにしてもよい。IRヒータや温風噴出しノズルを設けた場合には、IRヒータは高温(例えば180℃)に制御され、温風噴出しノズルは高温(例えば70℃)の温風を一定の風量(例えば9m/分)で記録媒体Pに向けて吹き付けるように構成される。このIRヒータ及び温風噴出しノズルによる加熱によって、処理液の溶媒中の水分が蒸発され、処理液の薄膜層が記録媒体Pの記録面に形成される。このように処理液を薄層化することによって、描画部116で打滴するインクのドットが記録媒体Pの記録面と接触し、必要なドット径が得られるとともに、薄層化した処理液成分と反応して色材凝集が起こり、記録媒体Pの記録面に固定する作用が得られやすい。なお、処理液ドラム154を所定の温度(例えば50℃)に制御するようにしてもよい。
【0101】
また、処理液は、描画部116で付与されるインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含んでいる。
【0102】
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。本実施形態においては、インク組成物の凝集性の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、インク組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。インク組成物のpHを低下させ得る化合物としては、水溶性の高い酸性物質(リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、もしくはこれらの化合物の誘導体又はこれらの塩など)が好適に挙げられる。
【0103】
このように、凝集剤としては、水溶性の高い酸性物質が好ましく、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましく、2価以上の有機酸がより好ましい。さらに、2価以上3価以下の酸性物質が特に好ましい。この2価以上の有機酸としては、その第1pKaが3.5以下の有機酸が好ましく、さらに3.0以下の有機酸がより好ましく、具体的には、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。
【0104】
凝集剤で、酸性物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これにより、凝集性を高め、インク全体を固定化することができる。インク組成物を凝集させる凝集剤の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは、3〜45質量%であり、さらに好ましくは、5〜40質量%の範囲である。また、インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4の範囲が好ましい。これにより、画像濃度、解像度及びインクジェット記録の高速化を図ることができる。
【0105】
また、処理液には、その他の添加物を分有することができる。この添加物としては、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤などの公知の添加剤が挙げられる。
【0106】
上述したように本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、処理液の付与は、塗布法に限定されず、インクジェット法や浸漬法などの公知の方法を適用して行うことができる。なお、塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行うことができる。
【0107】
なお、処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。本実施形態においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。具体的には、記録媒体P上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の顔料及び/又は自己分散性ポリマーの粒子を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体P上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像を得ることができる。
【0108】
また処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.2〜0.7g/mとなる量が好ましい。凝集剤は、付与量が0.1g/m以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集剤の付与量が0.7g/m以下であることは、付与した記録媒体Pの表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
【0109】
処理液付与部114は、処理液ドラム154の外周面に設けられた保持手段155により記録媒体Pの先端部を保持して搬送しながら、処理液塗布装置156により、処理液を計量しつつ記録媒体Pに処理液を塗布する。
【0110】
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体Pは、第1渡し胴搬送手段126によって次の描画部116へ搬送される。記録媒体Pは、第1渡し胴搬送手段126の保持爪(図示省略)によってその先端部を保持されて、記録面が内側を向き、裏面側がガイド部材127に沿って凸形状となるように搬送される。
【0111】
また、第1渡し胴搬送手段126は、その内部(回転軸付近)に熱風乾燥手段(図示省略)を有し、搬送中内側を向いている記録媒体Pの記録面(表面)側に熱風を当てて、表面に付与された処理液を乾燥させる。これにより、描画部116において記録媒体Pにインクが打滴された時、インク付着時における記録媒体P上での着弾インクの移動が防止される。
【0112】
描画部116の描画ドラム170は、第1渡し胴搬送手段126によって搬送されてきた記録媒体Pの先端部を、描画ドラム170外周面に設けられた保持手段171により保持するとともに、描画ドラム170外周面に設けられた吸引孔によって記録媒体Pを描画ドラム170外周面に吸着、固定して搬送する。そして、描画ドラム170の外周面に固定された記録媒体Pの、処理液が付与されている表面(記録面)に向けて、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから水性紫外線硬化型のインクが打滴される。
【0113】
ここで、本発明において用いられるインク(水性紫外線硬化型インク)について説明する。
【0114】
水性紫外線硬化型インクは、顔料、ポリマー粒子、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含んでいる。これにより、紫外線を照射することで硬化させることが可能であり、耐擦性に優れ膜強度が高くなっている。
【0115】
本発明におけるインク組成物は、顔料を含んでおり、必要に応じて、さらに分散剤や界面活性剤、その他の成分を用いて構成することができる。インク組成物は、色材成分として顔料の少なくとも一種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。また、顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料であることが好ましい。
【0116】
本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも一種を含有することができる。前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
【0117】
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは、5,000〜50,000であり、さらに好ましくは、5,000〜40,000であり、特に好ましくは、10,000〜40,000である。
【0118】
ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、100KOHmg/g以下が好ましい。さらには、酸価は、25〜100KOHmg/gがより好ましく、25〜80KOHmg/gがさらに好ましく、30〜65KOHmg/gが特に好ましい。ポリマー分散剤の酸価が25以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
【0119】
ポリマー分散剤は、自己分散性と処理液が接触した時の凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜80KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましい。
【0120】
本実施形態においては、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤とを含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、さらに有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。また、顔料は、凝集性の観点からカルボキシル基を有するポリマー分散剤に被覆され、水不溶性であることが好ましい。さらに、凝集性の観点からは、後述の自己分散性ポリマーの粒子の酸価の方が、前記ポリマー分散剤の酸価よりも小さいことが好ましい。
【0121】
顔料の平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好となり、100nm以下であると耐光性が良好になる。また、色材の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。
【0122】
なお、顔料の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0123】
顔料は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。顔料のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
【0124】
(ポリマー粒子)
本発明におけるインク組成物は、ポリマー粒子の少なくとも一種を含有することができる。このポリマー粒子は、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定価して凝集し、インクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。
【0125】
凝集剤と反応するために、アニオン性の表面電荷を有するポリマー粒子が用いられ、充分な反応性、吐出安定性が得られる範囲で、広く一般に知られているラテックスが用いられるが、特に自己分散性のポリマー粒子を用いることが好ましい。
【0126】
(自己分散性ポリマー粒子)
本発明におけるインク組成物は、ポリマー粒子として、自己分散性ポリマー粒子の少なくとも一種を含有することが好ましい。この自己分散性ポリマーは、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定化して凝集しインクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。また、自己分散性ポリマーは、吐出安定性及び前記顔料を含む系の液安定性(特に分散安定性)の観点からも好ましい樹脂粒子である。
【0127】
自己分散性ポリマーの粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
【0128】
本発明における自己分散性ポリマーの酸価としては、処理液が接触した時の凝集性が良好である観点から、50KOHmg/g以下が好ましい。さらには、この酸価は25〜50KOHmg/gがより好ましく、30〜50KOHmg/gがさらに好ましい。自己分散性ポリマーの酸価が25以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
【0129】
本発明における自己分散性ポリマーの粒子は、自己分散性と処理液が接触した時の凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜50KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が30〜50KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましい。
【0130】
自己分散性ポリマーの粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量としては、重量平均分子量で3,000〜20万であることが好ましく、5,000〜15万であることがより好ましく、10,000〜10万であることがさらに好ましい。重量平均分子量を3,000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
【0131】
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35/min.、流速を0.35ml/min.、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー(株)製、「標準試料TSK standard,polystrene」、「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0132】
自己分散性ポリマーの粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径で10nm〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲がさらに好ましい。体積平均粒子径は、10nm以上であると製造適性が向上し、1μm以下であると保存安定性が向上する。
【0133】
なお、自己分散性ポリマーの粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0134】
自己分散性ポリマーの粒子は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。自己分散性ポリマーの粒子のインク組成物中における含有量としては、凝集速度や画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0135】
また、インク組成物中の顔料と自己分散性ポリマーの粒子との含有比率(例えば、水不溶性顔料粒子/自己分散性ポリマーの粒子)としては、画像の耐擦過性などの観点から1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/4であることがより好ましい。
【0136】
(重合性化合物)
本発明におけるインク組成物は、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物の少なくとも一種を含有することができる。
【0137】
重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点で、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましい。また、水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、水に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましく、15質量以上であることがより好ましい。
【0138】
重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点で、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(さらには15質量%以上)の重合性化合物が好ましい。
【0139】
本発明における重合性化合物としては、擦過耐性を高め得る観点から、多官能のモノマーが好ましく、2官能〜6官能のモノマーが好ましく、溶解性と擦過耐性の両立の観点から、2官能〜4官能のモノマーが好ましい。
【0140】
重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0141】
重合性化合物のインク組成物中における含有量としては、顔料及び自己分散性ポリマーの粒子の合計の固形分に対して、30〜300質量%が好ましく、50〜200質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量は、30質量%以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、300質量%以下であるとパイルハイトの点で有利である。
【0142】
インク組成物及び処理液の少なくとも一方が、さらに、活性エネルギー線により重合性化合物の重合を開始する開始剤を含む。
【0143】
(開始剤)
本発明におけるインク組成物は、処理液に含有するとともにあるいは含有せずに、活性エネルギー線により重合性化合物の重合を開始する開始剤の少なくとも1種を含有することができる。光重合開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して、あるいは増感剤と併用して使用することができる。
【0144】
開始剤は、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、例えば、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(例えば、光重合開始剤等)を用いることができる。
【0145】
開始剤を含有する場合、インク組成物中における開始剤の含有量としては、重合性化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐擦過性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以上であると吐出安定性の点で有利である。
【0146】
(水溶性有機溶媒)
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有することができる。水溶性有機溶媒は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
【0147】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。
【0148】
乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク組成物中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
【0149】
浸透促進剤としては、インク組成物を記録媒体(印刷用紙など)により良く浸透させる目的にとって好適である。浸透促進剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。浸透促進剤の含有量は、インク組成物中に5〜30質量%の範囲であるのが好ましい。また、浸透促進剤は、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない量の範囲内で使用することが好ましい。
【0150】
(水)
インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは、30〜80質量%であり、さらに好ましくは、50〜70質量%である。
【0151】
(その他の添加剤)
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0152】
再び図3に戻り、描画部116において、描画ドラム170上に密着保持された記録媒体Pの記録面に向かって各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体P上での色材流れなどが防止され、記録媒体Pの記録面に画像が形成されるようになっている。
【0153】
なお、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1〜10pl(ピコリットル)が好ましく、1.5〜6plがより好ましい。また、画像のムラ、連続階調のつながりを改良する観点で、異なる液滴量を組み合わせて吐出することも有効であり、このような場合でも本発明は好適に適用される。
【0154】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定されない。
【0155】
以上のように構成された描画部116により、記録媒体Pに対してシングルパスで描画を行うことができる。これにより、高速記録、高速出力が可能であり、生産性が高い。
【0156】
描画部116で画像が形成された記録媒体Pは、描画ドラム170から第2渡し胴搬送手段128(第1の中間搬送体)を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。第2渡し胴搬送手段128は、描画ドラム170から受け取った記録媒体Pを、保持爪(図示省略)によってその先端部を保持して、記録媒体Pの記録面が内側を向き、裏面側がガイド部材129に沿って凸形状となるようにして搬送する。
【0157】
第2渡し胴搬送手段128は、その内部に半硬化手段189を有し、第2渡し胴搬送手段128の内部を向いて搬送される記録媒体Pの記録面に向けて紫外光を照射して、記録面に打滴された水性紫外線硬化型インクを半硬化させる。なお、ここで半硬化とは、上述したように、まだ本硬化していない、柔軟なインク状態にすることをいう。
【0158】
半硬化手段189の光源は、特に限定されるものではなく、例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ、エキシマレーザ、紫外線レーザ、ブラックライト、冷陰極管、LED、レーザダイオード等が適用可能であり、定着部120の本硬化手段190の光源と比べて発光波長領域の狭い発光ダイオード、又はレーザダイオードが好適に用いられる。
【0159】
また、光源のピーク波長や発光波長領域は、使用されるインク組成物中の増感色素の吸収特性に応じて適当に選択される。
【0160】
半硬化手段189による半硬化は、描画部116においてインクジェットヘッド172によって記録媒体Pに打滴された水性紫外線硬化型インクを、本硬化していない柔軟なインク状態にする機能を果たすとともに、増粘によりインクに含まれる水や溶媒が記録媒体Pの内部に浸透することによるカールやカックルの発生を抑制する機能を果たす。
【0161】
なお、第2渡し胴搬送手段128(第1の中間搬送体)は、熱風乾燥手段を内部に有してはいない。これはこの後の乾燥部118(乾燥ユニット)においてカックル防止のため、拘束して乾燥させるためである。
【0162】
第2渡し胴搬送手段128(第1の中間搬送体)において半硬化手段189によって半硬化された記録媒体Pは乾燥部118の乾燥ドラム176に引き渡される。
【0163】
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図3に示すように、乾燥ドラム176、及び乾燥ドラム176の外周面に対向する位置にIRヒータ等とファンの組み合わせを複数配置した熱風乾燥手段182で構成されている。また、熱風乾燥手段182の熱風を再利用可能なように整流板を設けて、熱効率向上及び排気性の向上を図るようにしてもよい。
【0164】
また、複数の熱風乾燥手段182のドラム回転方向上流側に、乾燥ドラム176の外周に対向して、送風手段(平滑化手段)180が設けられている。送風手段180は、記録媒体Pに風を吹き付けて、記録媒体Pの乾燥ドラム176への吸着を補助し、乾燥ドラム176に吸着される記録媒体Pを平滑化するためのものである。
【0165】
送風手段180の記録媒体Pへの送風は、記録媒体Pの後端で風力を大きくするように制御する。これにより記録媒体Pの後端での用紙浮きを防止することができる。また、送風手段180は、記録媒体Pの後端側に向かって斜めに当てるように送風する。さらに、送風手段180は、記録媒体Pの用紙幅方向の端部側に向かって斜めに風を当てるように送風する。
【0166】
このように、送風手段180は、用紙後端側に向けて、さらに幅方向後端側に向けて斜めに風を当てるようにすることで記録媒体Pの乾燥ドラム176の吸着皺を取り、均一乾燥及び均一吸着を可能とする。
【0167】
なお、乾燥ドラム176への吸着補助を、このような送風手段180でなく、接触手段で行おうとすると、未乾燥のインクが接触手段に転写されてしまい、画像不良となる虞がある。従って、上記のように送風手段180で、記録媒体Pの乾燥ドラム176への吸着補助を行うことが好ましい。
【0168】
乾燥ドラム176は、保持手段177によって記録媒体Pの先端を保持し、外周面に形成された複数の吸引孔から負圧により記録媒体Pを吸引吸着し、密着するように拘束して搬送する。このように乾燥ドラム176に吸着された記録媒体Pに対して、熱風乾燥手段182の熱風噴出ノズルから熱風を当てて、記録媒体Pを乾燥する。
【0169】
これにより、カックルの発生が防止される。また、記録媒体Pを乾燥ドラム176外周面に密着させることで、熱風乾燥手段182に記録媒体Pが接触することによるジャムの発生や用紙燃えを防止することができる。
【0170】
熱風乾燥手段182の熱風噴出しノズルは、所定の温度(例えば50℃〜70℃)に制御された温風を一定の風量(12m/分)で記録媒体124に向けて吹き付けるように構成され、IRヒータは、それぞれ所定の温度(例えば180℃)に制御される。これらの熱風噴出しノズル及びIRヒータによって、乾燥ドラム176に保持された記録媒体Pの記録面に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。その際、乾燥部118の乾燥ドラム176は、描画部116の描画ドラム170に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド172(172M、172K、172C、172Y)において、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部118の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
【0171】
なお、蒸発した水分は図示を省略した排出手段によりエアとともに機外に排出することが好ましい。また、回収されたエアを冷却器(ラジエータ)などで冷却して液体として回収してもよい。
【0172】
また、乾燥ドラム176は、その外周面を所定の温度に制御することが好ましい。記録媒体Pの裏面から加熱を行うことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。乾燥ドラム176の表面温度の範囲は、50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上である。また、上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム176の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下が好ましい。
【0173】
また、乾燥ドラム176は、記録媒体Pが搬送される前に所定の温度に加熱しておくことが好ましい。乾燥ドラム176を加熱しておくことで、乾燥を促進させることができるので、画像破壊を防止するとともに、カックルを防止することができる。加熱温度は、上記乾燥ドラム176の表面温度と同じ温度範囲とすることが好ましい。
【0174】
加熱は、吸引した際の温度低下を防止するため、吸引した状態で所定の温度とすることが好ましい。また、吸引しないで加熱を行う場合は、吸引した際の温度低下を考慮して、所定の温度より高い温度になるように加熱することが好ましい。また、記録媒体Pの記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体124の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体Pの皺や浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
【0175】
乾燥ドラム176の吸引力は(開口面積)×(単位面積あたりの圧力)で表すことができる。吸引力は、記録媒体吸着保持領域における吸引孔の占める面積、すなわち、開口率を高くすることで吸引力をより高くすることができる。
【0176】
また、乾燥ドラム176の外周面に設けられた吸引孔の開口率は、乾燥ドラム176外周面と記録媒体Pとの接触面積に対して、1%以上75%以下であることが好ましい。これにより、カックルの抑制、防止及び乾燥性能の向上を図ることができる。
【0177】
この開口率が1%未満であると、記録後の吸水による記録媒体Pの膨張変形を充分に抑止することができない。また、乾燥ドラム176自体も温まっており記録媒体Pはこれに接することによっても乾燥が促進されるところ、この開口率が75%を超えると、記録媒体Pの裏面と乾燥ドラム176外周面との接触面積が低下するため、記録媒体Pを吸着保持した状態であっても充分な乾燥性能を得ることができず、カックルも悪化するからである。
【0178】
従って、乾燥ドラム176の外周面における吸引孔の開口率を1%以上75%以下とすることで、カックルの抑制防止及び乾燥性能の向上を図ることができる。
【0179】
なお、開口率は、吸引孔の径、孔ピッチ、孔の形状及び配置により設定される。孔径は、0.4mm以上、また負圧吸引による記録媒体Pの凹み痕(吸着痕)がつかないように、1.5mm以下に設計することが好ましい。孔ピッチは、乾燥ドラム176外周面の熱変形の防止や剛性確保のため、0.1mm以上5mm以下が好ましい。孔の間隔があまり離れすぎると記録媒体Pの変形抑止効果が不足し、皺の発生をそれほど抑制できないからである。また、吸引孔の形状は、角(鋭角)形状があると、角部に応力が集中するので、角部を丸めた形状が好ましい。
【0180】
また、回転搬送体では、吸着圧力による記録媒体Pの変形量は周方向よりも軸方向の方が大きくなる。従って、吸引孔は、周方向を長軸方向、軸方向を短軸方向とした楕円形状又は長穴形状とすることで、記録媒体Pの周方向の変形と軸方向の変形を均等にすることもできる。
【0181】
また、乾燥ドラム176の外周面に、記録媒体Pの記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体Pの記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体Pの皺や浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
【0182】
乾燥部118で乾燥された記録媒体Pは、第3渡し胴搬送手段130(第2の中間搬送体)によって定着部120に搬送される。このとき、記録媒体Pは、第3渡し胴搬送手段130の保持爪(図示省略)によってその先端部を保持されて、記録面が内側を向き、後端側はフリーの状態で、裏面側がガイド部材131に沿って凸形状となるようにして搬送される。
【0183】
これにより、乾燥部118において乾燥ドラム176に吸引拘束されて搬送されつつ乾燥された記録媒体Pの拘束を一旦解除して、記録媒体Pを逆方向に曲げて矯正することで、記録媒体Pをフラット化し、カール防止を図るようにする。
【0184】
また、第3渡し胴搬送手段130は、その内部に不図示の熱風乾燥手段(乾燥手段)を有し、搬送中内側を向いている記録媒体Pの記録面側に熱風を吹き付けて、表面に打滴されたインクを乾燥させる。これにより、乾燥部118における乾燥ドラム176の吸引孔等に起因する乾燥ムラを均一化することができる。
【0185】
この第3渡し胴搬送手段130の内部に設けられる熱風乾燥手段は、送風でもよく、その温度は乾燥部118の熱風乾燥手段182よりも低く、消費電力の低減を図っている。
【0186】
定着部120の定着ドラム184は、第3渡し胴搬送手段130から記録媒体Pを受け取ると、定着ドラム184の外周面に設けられた保持手段185で記録媒体Pの先端部を保持するとともに、ドラム外周面に複数形成された吸引孔から負圧により記録媒体Pを吸引吸着し、密着するように拘束して記録媒体Pを外周面に巻きつけて搬送する。
【0187】
なお、定着ドラム184がその外周面に記録媒体Pを吸着する方法は、このような負圧吸引による方法に限定されるものではなく、例えば静電吸着のような方法でもよい。
【0188】
定着ドラム184の外周面に巻きつけられて搬送される記録媒体Pは、定着ドラム184に対向して配置された押圧ローラ(平滑化手段)188により加圧され、定着ドラム184に押しつけられてカールが矯正され皺が取り除かれる。
【0189】
押圧ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体Pは、押圧ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、平滑化処理が行われる。
【0190】
また、押圧ローラ188は、加熱ローラであってもよい。例えば、押圧ローラ188を、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラとして構成し、所定の温度(例えば、60〜80℃)で制御するようにしてもよい。この加熱ローラとして構成した押圧ローラ188で記録媒体Pを加熱するとともに押圧することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融され、記録媒体Pの画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0191】
次に記録媒体Pは、定着ドラム184に対向して配置された本硬化手段(紫外線光源)190による紫外線照射を受け本硬化が行われ、インクが記録媒体Pに定着される。ここで本硬化手段190は、複数備えるようにしてもよい。これにより、一つ一つの本硬化手段190の照射強度を低減することにより、照射時間で硬化条件を稼ぐことが可能となり、コストダウン及び本硬化手段190の発熱量低減を図ることができる。
【0192】
本硬化手段190としては、特に限定されるものではなく、例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ、エキシマレーザ、紫外線レーザ、ブラックライト、冷陰極管、LED、レーザダイオード等が適用可能であり、特にメタルハライドランプ管、水銀ランプ管もしくはブラックライトが好ましい。またさらに、発光波長ピークが350〜420nmであり、かつ記録媒体表面上での最高照度が10〜2000mW/cmである紫外線を発生する発光ダイオードがより好ましい。
【0193】
本硬化手段190の光源のピーク波長は、インク組成物中の増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、さらに好ましくは、350〜450nmであることが適当である。
本硬化手段190の紫外線照射量(照射エネルギー)としては、例えば、2000mJ/cm以下、好ましくは、10〜2000mJ/cmであり、より好ましくは、20〜1000mJ/cmであり、さらに好ましくは、50〜800mJ/cmであることが適当である。
【0194】
また、本発明のインクジェット記録装置100では、紫外線の照射時間は、記録媒体Pの記録面に対して、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.1〜2秒照射することが適当である。
【0195】
なお、定着ドラム184の表面温度を例えば50℃以上に設定し、定着ドラム184の外周面に保持された記録媒体Pを裏面から加熱するようにしてもよい。これにより、記録媒体Pの乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
【0196】
このように本実施形態では、記録媒体に対してまず処理液を付与して水性紫外線硬化型インクによって描画し、その後紫外線を照射して半硬化してから熱風を吹き付けて乾燥し、最後に再び紫外線を照射して本硬化するようにしている。
【0197】
処理液を付与したことにより、記録面上での色材流れ、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴同士の着弾干渉が防止され、またインクに含まれる固形成分が記録面上に凝集することによって毛管が形成されるため、インクに含まれる水や溶媒の記録媒体内部への浸透を抑制することができる。
【0198】
また、半硬化により、インクが増粘し、インクに含まれる水や溶媒の記録媒体内部への浸透を抑制することができ、浸透によるカールやカックルの発生を抑制することができる。さらに、水や溶媒は記録面の表面近傍に留まるため、半硬化に引き続いて行われる乾燥処理における乾燥効率を向上させることができる。
【0199】
また、半硬化により、インクの流動が抑制されるので、吸着乾燥の際に、インクが吸着孔に溜まり難いという効果もある。
【0200】
また上述したように本実施形態では、複数色のインクを付与した後で一括的にインクを半硬化させるようにしているので、紫外線照射部を各色別のヘッドの間に設置する必要がなくなるため、装置の大型化及び高コスト化を回避することができる。さらに、その結果各色別のヘッドの間隔を短くすることができるので、色ずれや画像ずれを防止することができるとともに、インク付与部での記録媒体の搬送を高速化することができ、高画質化とともに記録の高速化を実現することができる。
【0201】
また、本硬化により、本硬化の下流側搬送工程におけるローラや搬送ガイド等と画像面の擦れ、プリント集積部におけるプリント同士の擦れ、仕上がったプリントを取り扱う際の種々の物体による擦れなどを防止することができる。
【0202】
なお、上で説明した実施形態は、ドラム搬送の例であったが、本発明はドラム搬送の場合にのみ限定されるものではなく、例えばベルト搬送の場合にも好適に適用可能である。
【0203】
次に、ベルト搬送の例について簡単に説明する。
【0204】
図4に、ベルト搬送手段を備えたインクジェット記録装置の概略構成図を示す。
【0205】
図4に示すように、このインクジェット記録装置200は、給紙部212から記録媒体Pを受け取ったベルト搬送手段210が記録媒体Pを搬送する際、その搬送路に沿って、処理液付与部214、描画部216、乾燥部218及び定着部220が配置され、画像が定着された記録媒体Pが排紙部222に排出されるようになっている。
【0206】
処理液付与部214は、ここでは処理液を記録媒体Pに向けて吐出するインクジェット方式の処理液吐出ヘッド256で構成されているが、これに限定されるものではない。
【0207】
描画部216は、各色の水性紫外線硬化型インクを吐出するインクジェットヘッド272(272M、272K、272C、272Y)で構成され、乾燥部218は、記録媒体Pに熱風を吹き付ける熱風乾燥手段282で構成されている。
【0208】
なお、描画部216及び乾燥部218の搬送路の下側には記録媒体Pを搬送路に吸着する吸着手段270、276が、それぞれ設けられている。吸着手段270、276は特に限定されるものではなく、例えば、搬送路を形成する搬送ベルトに無数の穴(吸引孔)を設けておき、搬送ベルトの下側からポンプに連結した吸引部によって真空吸着するようにしてもよいし、静電吸着によって記録媒体Pを搬送路に吸着して搬送するようにしてもよい。
【0209】
なお、描画部216と乾燥部218の間に、描画部216において水性紫外線硬化型インクが打滴された記録媒体Pに対して紫外線を照射して半硬化させる半硬化手段289が設けられている。また、この紫外線がインクジェットヘッド272のノズル内のインクを硬化させないように、インクジェットヘッド272の半硬化手段289側を紫外線から遮蔽する遮蔽板273を配置することが好ましい。
【0210】
乾燥部218の後段には記録媒体P上のインクに紫外線を照射して本硬化させる本硬化手段290を備えた定着部220が配置されている。
【0211】
各部の細かい仕様は、前述したドラム搬送の場合と同様である。
【0212】
このように、ベルト搬送の場合にも、記録媒体P上に水性紫外線硬化型インクを打滴した後、まず半硬化してから乾燥し、その後本硬化することにより、前述したドラム搬送の場合と同様の効果を有する。
【0213】
また、前述したドラム搬送の例では、描画部116、乾燥部118、定着部120はそれぞれ別のドラム(描画ドラム170、乾燥ドラム176、定着ドラム184)で構成されていたが、その他の例として、これら複数のドラムを一つの大きなドラムで構成して、その大きな一つのドラムの外周面に沿って、描画部116(インクジェットヘッド172)、乾燥部118(熱風乾燥手段182)、定着部120(本硬化手段190)を配置するようにしてもよい。またこの場合、描画部116と乾燥部118の間にその大きな一つのドラムの外周面に対向して、半硬化手段189を配置するようにすればよい。
【0214】
このように一つの大きなドラムで搬送する場合やベルト搬送の場合には、前述したドラム搬送の実施形態における中間搬送体の役割をこの一つの大きなドラムや搬送ベルト自体が兼ねている。
【0215】
これらの例においても、前述したドラム搬送の実施形態と同様に、記録媒体へのインクの浸透によるカールやカックルの発生を抑制し、乾燥効率を向上させ、また色ずれや画像ずれを防止し、記録の高速化、高画質化を実現することができる。
【0216】
以上、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0217】
100…インクジェット記録装置、112…給紙部、114…処理液付与部、116…描画部、118…乾燥部、120…定着部、124…記録媒体、126…第1渡し胴搬送手段、128…第2渡し胴搬送手段(第1の中間搬送体)、130…第3渡し胴搬送手段(第2の中間搬送体)、154…処理液ドラム、156…処理液塗布装置、170…描画ドラム、172、172M、172K、172C、172Y…インクジェットヘッド、176…乾燥ドラム、178…溶媒乾燥装置、180…送風手段、182…熱風乾燥手段、184…定着ドラム、189…半硬化手段、190…本硬化手段(紫外線光源)、192…排紙ユニット、200…インクジェット記録装置、210…ベルト搬送手段、P…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送される記録媒体に対して、インク組成物中の成分を凝集させる処理液を付与する処理液付与手段と、
前記処理液付与手段に対して前記搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体に対して水性紫外線硬化型インクを吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに対して前記搬送方向下流側に配置され、前記液体吐出ヘッドにより前記記録媒体上に吐出された前記水性紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射して半硬化させる半硬化手段と、
前記半硬化手段に対して前記搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、
前記乾燥手段に対して前記搬送方向下流側に配置され、前記液体吐出ヘッドにより前記記録媒体上に吐出された前記水性紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射して本硬化させる本硬化手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記乾燥手段に対して前記記録媒体を搬送する搬送手段は、前記記録媒体を裏面から負圧吸引するための複数の吸引孔が形成された搬送面を有し、前記記録媒体を前記搬送面上に吸着して搬送することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、第1のドラム外周面に対向して前記液体吐出ヘッドが配置され、前記記録媒体を前記第1のドラム外周面に保持して回転搬送しながら、前記液体吐出ヘッドから前記水性紫外線硬化型インクを前記記録媒体に向けて吐出するように構成された描画ドラムと、
第2のドラム外周面に対向して前記乾燥手段が配置され、前記記録媒体を前記第2のドラム外周面に保持して回転搬送しながら、前記乾燥手段により前記記録媒体を乾燥するように構成された乾燥ドラムと、
前記描画ドラムと前記乾燥ドラムとの間に配置され、前記記録媒体の先端を保持する保持手段を備え、該保持手段により前記記録媒体を保持して回転搬送し、前記描画ドラムから前記乾燥ドラムへ前記記録媒体を受け渡す第1の中間搬送体と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1の中間搬送体の内部に前記半硬化手段が配置されたことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記乾燥ドラムは、その外周面に前記記録媒体を裏面から負圧吸引するための複数の吸引孔が形成され、前記記録媒体を前記外周面上に吸着して搬送することを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、さらに、第3のドラム外周面に対向して前記本硬化手段が配置され、前記記録媒体を前記第3のドラム外周面に保持して回転搬送しながら、前記本硬化手段により前記記録媒体を本硬化するように構成された定着ドラムと、前記乾燥ドラムと前記定着ドラムとの間に配置され、前記記録媒体の先端を保持する保持手段を備え、該保持手段により前記記録媒体を保持して回転搬送し、前記乾燥ドラムから前記定着ドラムへ前記記録媒体を受け渡す第2の中間搬送体と、を含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
搬送手段により搬送される記録媒体に対して、インク組成物中の成分を凝集させる処理液を付与する工程と、
前記処理液付与工程に引き続き、前記記録媒体に対して水性紫外線硬化型インクを吐出して前記記録媒体上に描画する描画工程と、
前記描画工程に引き続き、前記記録媒体上に吐出された前記水性紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射して半硬化させる半硬化工程と、
前記半硬化工程に引き続き、前記記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程に引き続き、前記記録媒体上に吐出された前記水性紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射して本硬化させる本硬化工程と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記乾燥工程において、前記記録媒体は、複数の吸引孔が形成された搬送面を有する搬送手段によって、前記記録媒体裏面側から前記搬送面に負圧吸引されて搬送されることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記各工程において、前記記録媒体は、回転する各搬送ドラムの外周面上に保持されて搬送され、各工程の各搬送ドラム間において、前記記録媒体は、各搬送ドラム間に配置された中間搬送体によって、前段の工程の搬送ドラムから、それに引き続く後段の工程の搬送ドラムへ受け渡されることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記描画工程において描画された前記記録媒体は、前記描画工程の搬送ドラムと前記乾燥工程の搬送ドラムの間に配置された中間搬送体によって、前記描画工程の搬送ドラムから前記乾燥工程の搬送ドラムへ受け渡される間に半硬化されることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記乾燥工程の搬送ドラムは、その外周面に前記記録媒体を裏面から負圧吸引するための複数の吸引孔が形成され、前記記録媒体を前記外周面上に吸着して搬送することを特徴とする請求項9または10に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−201125(P2011−201125A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70295(P2010−70295)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】