説明

インクジェット記録装置

【課題】本体ハウジングに対するヘッド部の着脱がユーザにとって容易なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】コネクタユニット70とともにヘッド部6を一体的なヘッドユニットとして本体4に着脱可能な構成とする。コネクタユニット70は、昇圧回路73を保持し、電気コネクタ74を介して本体4側の電源回路に昇圧回路73を電気的に接続する。コネクタユニット70に取り付けられたチューブコネクタ71を介して、インク送出管49、補充液送出管54、インク回収管57及び空気流通管66の本体4側及びヘッド部6側を着脱可能に接続する。したがって、チューブコネクタ71と電気コネクタ74を着脱して、コネクタユニット70を本体ハウジング9に対して着脱することにより、本体ハウジング9に対するヘッド部6の着脱を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に係り、更に詳しくは、インクを粒子状にして噴射し、帯電させたインク粒の進行経路に電界を形成することにより、インク粒を偏向させて対象物に記録することができる、いわゆるコンティニュアスタイプのインクジェット記録装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコンティニュアスタイプのインクジェット記録装置は、インクを貯留するためのメインタンクを収容している本体ハウジングと、この本体ハウジングから外部に延びるインク送出管と、インク送出管の先端に形成され、対象物にインク粒を噴射するためのヘッド部とを備えている。ヘッド部には、帯電されたインク粒を生成するための帯電電極及びインク粒の進行経路に電界を形成してインク粒を偏向させるための偏向電極が備えられている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
本体ハウジングには、メインタンク内のインクを送り出すためのインクポンプが備えられている。このインクポンプの動作は、本体ハウジング内に備えられた制御部により制御される。制御部からの制御信号は、本体ハウジングとヘッド部を電気的に接続する配線を介して、帯電電極や偏向電極などのヘッド部内の各部にも与えられるようになっている。
【0004】
このようなコンティニュアスタイプのインクジェット記録装置は、例えば、工場における生産ラインに適用され、食品用の容器などの対象物の表面に、インク粒を適宜に偏向させつつ噴射することにより、製造年月日等の所望の文字やその他の図形を記録することができる。
【特許文献1】特開2001−63064号公報
【特許文献2】特開2001−63065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコンティニュアスタイプのインクジェット記録装置では、インク送出管に対するヘッド部の着脱や、本体ハウジングに対するインク送出管の着脱を、ユーザが容易に行うことができないようになっている。したがって、ヘッド部が故障した場合であっても、本体ハウジングとともにインクジェット記録装置全体を修理に出さなければならず、修理に出している間、長期間にわたって生産ラインを停止させなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、本体ハウジングに対するヘッド部の着脱がユーザにとって容易なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明によるインクジェット記録装置は、電源回路、メインタンク及びインクポンプを収容する本体ハウジングと、上記本体ハウジングに対して着脱可能に連結されるヘッドユニットとを備え、上記インクポンプによって、上記メインタンク内のインクが上記ヘッドユニットへ送り出されるインクジェット記録装置において、上記ヘッドユニットは、上記本体ハウジング内に収容されるコネクタユニットと、上記本体ハウジング外のヘッド部と、上記コネクタユニットから上記ヘッド部へインクを送出する可撓性を有するインク送出管と、上記コネクタユニットから上記ヘッド部へ電圧を供給する高圧給電線とを有し、上記ヘッド部は、帯電されたインク粒を生成する帯電電極と、帯電されたインク粒を偏向させる偏向電極とを有し、上記コネクタユニットは、上記電源回路からの供給電圧を昇圧し、上記高圧給電線を介して上記帯電電極及び上記偏向電極に供給する昇圧回路と、上記インク送出管を上記インクポンプに着脱可能に接続するチューブコネクタと、上記昇圧回路を上記電源回路に着脱可能に接続する電気コネクタとを有するように構成される。
【0008】
このような構成によれば、コネクタユニットに備えられたチューブコネクタ及び電気コネクタを着脱することにより、コネクタユニットを本体ハウジングに対して容易に着脱することができる。コネクタユニットを本体ハウジングに対して着脱することにより、コネクタユニットにインク送出管を介して接続されたヘッド部を、ヘッドユニットとして一体的に着脱することができる。したがって、作業に不慣れなユーザであっても、本体ハウジングに対するヘッド部の着脱を容易に行うことができる。
【0009】
ヘッド部が故障した場合などには、ユーザが、その故障したヘッド部をコネクタユニットとともに本体ハウジングから取り外し、予め用意している予備のヘッドユニットに取り替えることにより、生産ラインを長時間にわたって停止させなくて済む。
【0010】
また、ヘッド部に高電圧を供給する昇圧回路を本体ハウジング内に収容する一方で、ヘッド部及びコネクタユニットを一体的に本体ハウジングから取り外すことができるので、ヘッド部の小型化と低コスト化を両立することができる。
【0011】
すなわち、昇圧回路を本体ハウジング内に収容すれば、ヘッド部内に収容する場合に比べて、ヘッド部を小型化することができる。また、ヘッド部を本体ハウジングから取り外す際、ヘッド部及びコネクタユニットを一体的に本体ハウジングから取り外すことによって、高電圧の導通部で着脱が行われない。このため、本体ハウジング内の電源回路とヘッド部との電気的接続に、高価な高電圧用コネクタを使用する必要がない。したがって、インクジェット記録装置の製造コストを低減することができる。また、高電圧用コネクタは、低電圧用コネクタに比べて大きいため、低コスト化だけでなく、小型化にも寄与する。
【0012】
第2の本発明によるインクジェット記録装置において、上記本体ハウジングには、上記ヘッド部から回収したインクを貯留する回収インクタンクが収容され、上記ヘッドユニットは、上記ヘッド部から上記コネクタユニットへインクを回収する可撓性を有するインク回収管を有し、上記チューブコネクタは、上記インク回収管を上記回収インクタンクに着脱可能に接続するように構成される。
【0013】
このような構成によれば、チューブコネクタを着脱することにより、インク送出管だけでなく、インク回収管も本体ハウジングに対して同時に着脱することができる。したがって、本体ハウジングに対するヘッド部の着脱がユーザにとってさらに容易になる。
【0014】
第3の本発明によるインクジェット記録装置において、上記本体ハウジングには、インクの濃度を調整するために補充される補充液を貯留する補充液タンク及び上記補充液タンク内の補充液を送り出す補充液ポンプが収容され、上記ヘッドユニットは、上記コネクタユニットから上記ヘッド部へ補充液を送出する可撓性を有する補充液送出管を有し、上記チューブコネクタは、上記補充液送出管を上記補充液ポンプに着脱可能に接続するように構成される。
【0015】
このような構成によれば、チューブコネクタを着脱することにより、インク送出管だけでなく、補充液送出管も本体ハウジングに対して同時に着脱することができる。したがって、本体ハウジングに対するヘッド部の着脱がユーザにとってさらに容易になる。
【0016】
第4の本発明によるインクジェット記録装置において、上記ヘッドユニットは、上記ヘッド部から噴射されるインク粒の噴射圧を調整するために、上記コネクタユニット及び上記ヘッド部の間で空気を流通させるための空気流通管を有し、上記チューブコネクタは、上記空気流通管を上記本体ハウジング側に着脱可能に接続するように構成される。
【0017】
このような構成によれば、チューブコネクタを着脱することにより、インク送出管だけでなく、空気流通管も本体ハウジングに対して同時に着脱することができる。したがって、本体ハウジングに対するヘッド部の着脱がユーザにとってさらに容易になる。
【0018】
第5の本発明によるインクジェット記録装置は、上記メインタンク内のインクを排液するための排液管と、ユーザ操作に基づいて、上記排液管を介して上記メインタンク内のインクを排液するための処理を行うメインタンク排液処理手段とを備えて構成される。
【0019】
このような構成によれば、コネクタユニットを取り外す際に、排液管を介してメインタンク内のインクを排液させることにより、メインタンクとヘッド部を接続するインク送出管内のインクも排液させることができる。したがって、コネクタユニットを取り外す際に、インク送出管内のインクが漏れ出すのを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コネクタユニットに備えられたチューブコネクタ及び電気コネクタを着脱することにより、コネクタユニットにインク送出管を介して接続されたヘッド部を、ヘッドユニットとして一体的に着脱することができる。したがって、作業に不慣れなユーザであっても、本体ハウジングに対するヘッド部の着脱を容易に行うことができる。また、コネクタユニットに昇圧回路が備えられているので、ヘッド部の小型化と低コスト化を両立することができる。
【0021】
また、チューブコネクタを着脱することにより、インク送出管だけでなく、インク回収管、補充液送出管、空気流通管などの他の管も本体ハウジングに対して同時に着脱することができるので、本体ハウジングに対するヘッド部の着脱がユーザにとってさらに容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の形態によるインクジェット記録装置1の一構成例を示す斜視図であり、インクジェット記録装置1が生産ラインに適用された状態を示している。このインクジェット記録装置1は、例えば、工場内のベルトコンベア2に併設され、ベルトコンベア2上を搬送される食品用の容器などの対象物3の表面に、インク粒を適宜に偏向させつつ噴射することにより、製造年月日等の所望の文字やその他の図形を記録することができる、いわゆるコンティニュアスタイプのインクジェット記録装置である。
【0023】
このインクジェット記録装置1は、インクを収容している本体4と、本体4に可撓性ホース5を介して接続されたヘッド部6と、本体4に配線ケーブル7を介して接続された操作表示部8とを備えている。本体4は、中空直方体形状の本体ハウジング9内に、インクを貯留するためのメインタンクや、メインタンク内のインクを送り出すインクポンプなどの各部(後述)を収容している。本体ハウジング9内には、プロセッサからなる制御部(図示せず)が備えられており、この制御部によりインクポンプ等の各部が制御されるようになっている。
【0024】
本体ハウジング9の前面は、その上半分程度が前面上扉10により覆われるとともに、下半分程度が前面下扉11により覆われている。前面上扉10は、本体ハウジング9に対して回動可能に取り付けられており、この前面上扉10を回動させて開くことにより、本体ハウジング9内の上部に配置されている部品のメンテナンスを前側から行うことができる。前面上扉10の前面には、このインクジェット記録装置1の電源をオン又はオフに切り替えるための電源ボタン12が形成されている。
【0025】
一方、前面下扉11は、ねじなどの固定具により本体ハウジング9に取り付けられており、本体ハウジング9に対して着脱可能となっている。この前面下扉11を取り外せば、本体ハウジング9内の下部に配置されている部品のメンテナンスを前側から行うことができる。
【0026】
このインクジェット記録装置1において使用されるインクは、例えば、揮発性の溶剤であるメチルエチルケトンに染料を混合することにより生成されている。このインクに、補充液としてメチルエチルケトンからなる揮発性の溶剤が補充されることにより、インクの濃度が調整され、適当な粘度とされたインクが可撓性ホース5を介してヘッド部6へ送り出されるようになっている。
【0027】
ヘッド部6は、対象物3の搬送経路に対向するように配置され、本体4から可撓性ホース5を介して送られてくるインクを粒子状にして対象物3に噴射する。ヘッド部6は、可撓性ホース5を適宜に湾曲させることにより、対象物3の搬送経路に対して所望の距離及び角度で設置することができる。ヘッド部6において粒子状にされたインクは、ヘッド部6内で帯電され、帯電されたインク粒の進行経路に電界が形成されることにより、帯電量に応じた偏向量でインク粒が偏向されて対象物3に噴射されるようになっている。
【0028】
本体4には、速度検出センサ13や通過検出センサ14などの入力装置からの信号が入力される。速度検出センサ13は、ベルトコンベア2の回転速度に基づいて対象物3の搬送速度を検出する。通過検出センサ14は、搬送経路上を通過する対象物3を非接触で光学的に検出する。本体4に備えられた制御部は、速度検出センサ13及び通過検出センサ14からの入力信号に基づいて、ヘッド部6から噴射されるインク粒の帯電量を制御することにより、対象物3の所望の位置に所望の文字や図形を記録することができる。
【0029】
操作表示部8は、タッチパネル付きの液晶表示器により形成され、表示画面上に所定の表示を行うことができるとともに、ユーザが表示画面に触れることにより操作を行うことができるようになっている。本体4における制御部の制御は、操作表示部8の操作によりユーザが設定することができる。操作表示部8は、配線ケーブル7を引き延ばすことにより、本体4から離れた位置、すなわち対象物3の搬送経路から離れた位置に設置することができ、操作表示部8を操作することによりインクジェット記録装置1を遠隔操作することができるようになっている。
【0030】
本体4には、パーソナルコンピュータ15やプログラマブルコントローラ16などの制御装置を接続することができる。このインクジェット記録装置1は、操作表示部8の操作に基づいて動作することもできるし、外部接続機器としての制御装置からの制御信号に基づいて動作することもできる。また、本体4には、回転灯17やブザー18などの出力装置を接続することができる。生産ライン上に異常が生じた場合などには、これらの出力装置を動作させることにより異常報知を行うことができる。
【0031】
図2は、図1の本体4を背面側から見た斜視図である。可撓性ホース5は、本体ハウジング9の背面下部に着脱可能なコネクタユニット70を介して、本体4に接続されるようになっている。可撓性ホース5、ヘッド部6及びコネクタユニット70は、本体ハウジング9に対して一体的に着脱可能なヘッドユニット20を形成している。
【0032】
本体ハウジング9の背面には、制御部に導通する多数の入出力端子21が形成されており、これらの入出力端子21に、パーソナルコンピュータ15やプログラマブルコントローラ16などの制御装置、回転灯17やブザー18などの出力装置を電気的に接続することができるようになっている。
【0033】
図3は、図1のヘッド部6の内部構成を示した斜視図であり、ヘッド部6の外表の一部を省略して示している。ヘッド部6内には、加圧器22、ノズル23、帯電電極24、帯電検出センサ25、偏向電極26及びガター27が備えられている。本体4からヘッド部6へ送り込まれたインクは、加圧器22により加圧され、ノズル23から噴射される。
【0034】
ノズル23は、ピエゾ振動素子(図示せず)を備えており、このピエゾ振動素子により振動を受けながらインクが噴射される。図3において模式的に示すように、帯電電極24は、互いに対向配置された1対の電極板24a,24bを備え、これらの電極板24a,24bに正電位を印加した状態で、ノズル23から電極板24a,24b間にインクを噴射することにより、負電位に帯電されたインク粒が連続的に噴射される。帯電検出センサ25は、帯電電極24を通過したインク粒が正常に帯電されているかどうかを検出するためのものである。
【0035】
偏向電極26は、互いに対向配置された1対の電極板26a,26bからなり、これらの1対の電極板26a,26b間に、帯電電極24で帯電されたインク粒の進行経路が形成されている。一方の電極板26aは、ノズル23からのインク粒の進行方向と平行に延びている。これに対して、他方の電極板26bは、インク粒の進行方向に対して下流側の端部が、下流側に向かうにつれて一方の電極板26aから遠ざかるように斜めに拡がっている。
【0036】
偏向電極26の1対の電極板26a,26bには、約7kVの高電圧が印加され、これにより、1対の電極板26a,26b間に電界が形成される。したがって、帯電電極24で帯電されたインク粒は、偏向電極26の1対の電極板26a,26b間を通過する過程で、その帯電量に応じた力を電界から受けて進行方向が変化し、帯電量に応じた偏向量で偏向することとなる。
【0037】
偏向電極26を通過した各インク粒は、噴射口28を通って対象物3へ噴射される。図3に示すように、対象物3を一定方向に搬送しつつ、その搬送方向に対して直交する方向にインク粒を適宜に偏向させて噴射することにより、対象物3の表面に2次元の文字や図形を記録することができる。偏向電極26において偏向されなかったインク粒は、一方の電極板26aに沿って真っ直ぐに進行し、ガター27で回収される。ガター27で回収されたインクは、ヘッド部6から可撓性ホース5を介して本体4へ送り返され、補充液が補充されて濃度調整が行われるなどした後、本体4からヘッド部6へ送り出すインクとして再利用される。
【0038】
図4は、図1のインクジェット記録装置1におけるインク等の経路を示した経路図である。本体4には、インクタンク31、補充液タンク32、メインタンク33及びコンディショニングタンク34などの各タンクが備えられている。
【0039】
インクタンク31には、ユーザが予めインクを一定量まで貯留しておくことができる。補充液タンク32には、ユーザが予め補充液を一定量まで貯留しておくことができる。メインタンク33は、インクに補充液を補充することにより濃度調整されたインクを貯留しておくことができる。このメインタンク33で濃度調整されたインクがヘッド部6へ送り出されることにより、適当な濃度で対象物3に文字や図形を記録することができる。
【0040】
このインクジェット記録装置1では、補充液タンク32に貯留されている補充液をそのままヘッド部6へ送り出すことにより、補充液を用いてヘッド部6内の各部を洗浄することができるようになっている。洗浄に用いられた補充液は、ガター27で回収されて本体4へ送り返され、コンディショニングタンク34に貯留される。コンディショニングタンク34に貯留された使用後の補充液は、必要に応じてメインタンク33に供給され、インクの濃度調整のために再利用される。
【0041】
メインタンク33及びコンディショニングタンク34は、排気管35を介して本体ハウジング9の外部に連通しており、メインタンク33内及びコンディショニングタンク34内に充満した気体を、排気管35を介して大気中に排気することができるようになっている。
【0042】
メインタンク33には、メインタンク33内のインクを循環させるためのインク循環管36が接続されている。このインク循環管36には、循環供給切替弁V5、循環ポンプ37及び循環送出切替弁V11が、インクの流通方向に沿ってこの順序で介装されており、循環供給切替弁V5及び循環送出切替弁V11を開いた状態で循環ポンプ37を駆動させることにより、メインタンク33内のインクをインク循環管36に循環させることができるようになっている。
【0043】
インク循環管36における循環供給切替弁V5と循環ポンプ37の間には、循環フィルタ38が介装されている。この循環フィルタ38は、インク循環管36内を流れるインクに含まれる異物を捕獲するためのものであり、40μm以上の異物を捕獲することができる。
【0044】
また、インク循環管36における循環送出切替弁V11の下流側には、インク循環管36内を流れるインクの一部を取り込んで、そのインクの粘度を検出するための粘度計39が介装されている。この粘度計39で検出されるインクの粘度に基づいて、メインタンク33内のインクの濃度を検出することができる。
【0045】
インクタンク31内のインクは、インク流入管40を介してメインタンク33に流入する。インク流入管40は、インク流入切替弁V8を介して、インク循環管36における循環ポンプ37の上流側、より具体的には循環フィルタ38の上流側に接続されている。したがって、インク流入切替弁V8及び循環送出切替弁V11を開いた状態で循環ポンプ37を駆動させることにより、インク流入管40及びインク循環管36を介して、インクタンク31内のインクをメインタンク33に流入させることができる。
【0046】
インク流入管40には、インクタンク31から供給されるインクに含まれる異物を捕獲するためのインクタンクフィルタ41が介装されており、40μm以上の異物を捕獲することができるようになっている。
【0047】
補充液タンク32内の補充液は、補充液流入管42を介してメインタンク33に流入する。補充液流入管42には、補充液ポンプ43及び補充液流入切替弁V13が、補充液の流通方向に沿ってこの順序で介装されており、補充液流入切替弁V13を開いた状態で補充液ポンプ43を駆動させることにより、補充液タンク32内の補充液をメインタンク33に流入させることができる。補充液流入管42における補充液ポンプ43の上流側は、補充液タンク32から補充液ポンプ43へ補充液を供給するための補充液供給管44である。
【0048】
補充液流入管42における補充液ポンプ43の上流側、すなわち補充液供給管44には、補充液タンクフィルタ45が介装されている。また、補充液流入管42における補充液ポンプ43の下流側、より具体的には補充液ポンプ43と補充液流入切替弁V13の間には、補充液メインフィルタ46が介装されている。補充液タンクフィルタ45及び補充液メインフィルタ46は、それぞれ、補充液流入管42内を流れる補充液に含まれる異物を捕獲するためのものであり、40μm以上の異物を捕獲することができる。
【0049】
このインクジェット記録装置1を使用する際には、インクタンク31内のインクがインク流入管40を介してメインタンク33に供給されるとともに、補充液タンク32内の補充液が補充液流入管42を介してメインタンク33に供給されることにより、メインタンク33内に濃度調整されたインクが生成される。このとき、メインタンク33内のインクをインク循環管36に循環させて、その濃度を粘度計39の出力から検出し、検出した濃度に応じた量の補充液をメインタンク33内に供給することにより、インクの濃度調整を良好に行うことができる。
【0050】
メインタンク33内のインクは、インク供給管47を介してインクポンプ48に供給され、インクポンプ48から送り出されるインクは、インク送出管49を介してヘッド部6へ導かれる。インク送出管49は、本体4から可撓性ホース5内を通ってヘッド部6まで延びており、インク送出管49の先端は、ヘッド部6に備えられた噴射切替弁V14に接続されている。
【0051】
インク送出管49における本体4側の部分には、減圧弁50及び圧力計51が、インクの流通方向に沿ってこの順序で介装されている。減圧弁50は、インク送出管49内のインクの圧力が高すぎる場合に、流路を拡大して圧力を減少させるためのものである。圧力計51は、インク送出管49内、特に減圧弁50の下流側におけるインクの圧力を検出するものであり、この圧力計51で検出される圧力に応じて、インクポンプ48の吐出圧を調整することができる。
【0052】
インク送出管49におけるインクポンプ48の下流側、より具体的にはインクポンプ48と減圧弁50の間には、インクメインフィルタ52が介装されている。このインクメインフィルタ52は、インクポンプ48からインク送出管49を介してヘッド部6へ供給されるインクに含まれる異物を捕獲するためのものであり、10μm以上の異物を捕獲することができる。また、インク送出管49には、ヘッド部6内において噴射前インクフィルタ53が介装されており、ノズル23から噴射される前のインクに含まれる異物を捕獲することができるようになっている。この噴射前インクフィルタ53は、20μm以上の異物を捕獲することができる。
【0053】
補充液流入管42における補充液ポンプ43の下流側、より具体的には補充液メインフィルタ46と補充液流入切替弁V13の間には、補充液ポンプ43から送り出される補充液をヘッド部6へ導くための補充液送出管54が分岐するように接続されている。補充液送出管54は、本体4から可撓性ホース5内を通ってヘッド部6まで延びており、補充液送出管54の先端は、ヘッド部6に備えられた噴射切替弁V14に接続されている。
【0054】
補充液送出管54における本体4側の部分には、補充液送出切替弁V12及び減圧弁55が、補充液の流通方向に沿ってこの順序で介装されている。減圧弁55は、補充液送出管54内の補充液の圧力が高すぎる場合に、流路を拡大して圧力を減少させるためのものである。補充液流入切替弁V13を閉じ、補充液送出切替弁V12を開いた状態で、補充液ポンプ43を駆動させれば、補充液送出管54を介して補充液タンク32内の補充液をヘッド部6へ供給することができる。
【0055】
補充液送出管54には、ヘッド部6内において噴射前補充液フィルタ56が介装されており、ノズル23から噴射される前の補充液に含まれる異物を捕獲することができるようになっている。この噴射前補充液フィルタ56は、20μm以上の異物を捕獲することができる。噴射切替弁V14を切り替えれば、インク送出管49からのインク又は補充液送出管54からの補充液のいずれかを、選択的にノズル23へ供給することができる。
【0056】
ヘッド部6のガター27で回収されたインクは、インク回収管57を介して、ヘッド部6から本体4へ回収される。インク回収管57は、ヘッド部6から可撓性ホース5内を通って本体4まで延びており、インク回収管57の先端はメインタンク33に接続されている。インク回収管57における本体4側の部分には、ガター流入切替弁V10、ガターフィルタ58、ガターポンプ59及び回収インク供給切替弁V1が、インクの流通方向に沿ってこの順序で介装されており、ガター流入切替弁V10及び回収インク供給切替弁V1を開いた状態でガターポンプ59を駆動させることにより、ヘッド部6から回収されたインクをメインタンク33へ送り込むことができる。ガターフィルタ58は、インク回収管57内を流れるインクに含まれる異物を捕獲するためのものであり、40μm以上の異物を捕獲することができる。
【0057】
ただし、ヘッド部6から回収したインクは、メインタンク33に送り込まれるような構成に限らず、メインタンク33とは別個に設けられた回収インクタンク内に貯留され、この回収インクタンクからメインタンク33内に供給されるようになっていてもよい。
【0058】
このインクジェット記録装置1の立ち上げ時や立ち下げ時には、ノズル23から補充液が噴射されることにより、ノズル23、帯電電極24及び偏向電極26などのヘッド部6内の各部が補充液を用いて洗浄される。洗浄に用いられた補充液は、ガター27で回収され、インク回収管57を介してヘッド部6から本体4へ回収される。
【0059】
コンディショニングタンク34には、ヘッド部6から回収された補充液をコンディショニングタンク34内に供給するための回収補充液供給管60が接続されている。回収補充液供給管60は、回収補充液供給切替弁V3を介して、インク回収管57におけるガターポンプ59の下流側に接続されている。したがって、ガター流入切替弁V10及び回収補充液供給切替弁V3を開いた状態でガターポンプ59を駆動させることにより、インク回収管57及び回収補充液供給管60を介して、回収した補充液をコンディショニングタンク34に供給することができる。
【0060】
コンディショニングタンク34内の補充液は、回収補充液流入管61を介してメインタンク33に流入する。回収補充液流入管61は、回収補充液流入切替弁V9を介して、インク循環管36における循環ポンプ37の上流側、より具体的には循環フィルタ38の上流側に接続されている。したがって、回収補充液流入切替弁V9及び循環送出切替弁V11を開いた状態で循環ポンプ37を駆動させることにより、回収補充液流入管61及びインク循環管36を介して、コンディショニングタンク34内の補充液をメインタンク33に流入させることができる。
【0061】
ヘッド部6から回収された補充液がコンディショニングタンク34に貯留されているときには、このコンディショニングタンク34に貯留されている補充液が、補充液タンク32内の補充液よりも優先してメインタンク33に供給され、インクの濃度調整に使用されるようになっている。
【0062】
インクタンク31、補充液タンク32、メインタンク33及びコンディショニングタンク34にそれぞれ貯留されている液体は、排液管62を介して、本体ハウジング9の外部に排液することができる。排液管62の先端には排液キャップ(図示せず)が形成されており、この排液キャップを排液ボトルに取り付けて排液を行うことにより、排液ボトル内に液体を貯めることができる。排液管62は、排液切替弁V4を介して、インク回収管57におけるガターポンプ59の下流側に接続されている。また、インク回収管57におけるガターポンプ59及び排液切替弁V4の間と、インク循環管36における循環ポンプ37及び循環送出切替弁V11の間とは、接続管63により接続されている。
【0063】
したがって、循環送出切替弁V11を閉じ、インク流入切替弁V8及び排液切替弁V4を開いた状態で、循環ポンプ37を駆動させれば、インク流入管40、インク循環管36、接続管63、インク回収管57及び排液管62を介して、インクタンク31内のインクを排液することができる。また、循環送出切替弁V11を閉じ、循環供給切替弁V5及び排液切替弁V4を開いた状態で、循環ポンプ37を駆動させれば、インク循環管36、接続管63、インク回収管57及び排液管62を介して、メインタンク33内のインクを排液することができる。
【0064】
メインタンク33内のインクを排液する際、補充液流入切替弁V13を開くとともに、補充液ポンプ43を駆動させれば、補充液タンク32内の補充液を補充液流入管42からメインタンク33に流入させ、メインタンク33内のインクとともに排液することができる。循環送出切替弁V11を閉じ、回収補充液流入切替弁V9及び排液切替弁V4を開いた状態で、循環ポンプ37を駆動させれば、回収補充液流入管61、インク循環管36、接続管63、インク回収管57及び排液管62を介して、コンディショニングタンク34内の補充液を排液することができる。
【0065】
インク送出管49におけるインクポンプ48の下流側、より具体的にはインクメインフィルタ52と減圧弁50との間には、インク送出管49内のインクをメインタンク33に送り返すためのインク返送管64が接続されている。このインク返送管64は、メインタンク33に連通しており、その途中にインク返送切替弁V2が介装されている。メインタンク33内のインクを排液する際、インク返送切替弁V2を開いておけば、ヘッド部6に連通するインク送出管49内のインクをインク返送管64からメインタンク33に流入させ、メインタンク33内のインクとともに排液することができる。
【0066】
インク送出管49におけるインク返送管64との接続部よりも下流側、より具体的には当該接続部と減圧弁50の間には、インクサブフィルタ65が介装されている。このインクサブフィルタ65は、インク送出管49からインク返送管64を介してメインタンク33へ送り返されるインクに含まれる異物を捕獲するためのものであり、40μm以上の異物を捕獲することができる。
【0067】
インク循環管36における循環ポンプ37の上流側、より具体的には循環フィルタ38の上流側には、空気流通切替弁V6を介して、空気流通管66が接続されている。この空気流通管66は、本体4から可撓性ホース5内を通ってヘッド部6まで延びており、空気流通管66の先端は、ヘッド部6に備えられたノズル23に接続されている。このインクジェット記録装置1の立ち下げ時などには、空気流通切替弁V6及び排液切替弁V4を開くことにより、空気流通管66、インク循環管36、接続管63、インク回収管57及び排液管62を介して、ノズル23を大気中に連通させることができる。したがって、本体4とヘッド部6との間で空気を流通させて、ノズル23から噴射されるインク粒の噴射圧を調整することにより、インクの切れをよくすることができる。
【0068】
循環ポンプ37、補充液ポンプ43、インクポンプ48及びガターポンプ59などの各ポンプの動作は、本体4に備えられた制御部30により制御される。また、回収インク供給切替弁V1、インク返送切替弁V2、回収補充液供給切替弁V3、排液切替弁V4、循環供給切替弁V5、空気流通切替弁V6、インク流入切替弁V8、回収補充液流入切替弁V9、ガター流入切替弁V10、循環送出切替弁V11、補充液送出切替弁V12、補充液流入切替弁V13及び噴射切替弁V14などの各切替弁の動作は、制御部30により制御される。制御部30には、粘度計39及び圧力計51からの検出信号が入力されるようになっている。
【0069】
図2において説明した通り、可撓性ホース5は、本体ハウジング9に着脱可能なコネクタユニット70を介して、本体4に接続されるようになっている。このコネクタユニット70は、本体4とヘッド部6を接続している可撓性を有するインク送出管49、補充液送出管54、インク回収管57及び空気流通管66の4本の管を、それぞれ本体4側とヘッド部6側とに分離することができる。すなわち、コネクタユニット70に備えられたチューブコネクタ71を、本体4側から延びるチューブコネクタ72に対して着脱することにより、上記4本の管49,54,57,66の本体4側及びヘッド部6側を同時に着脱することができるようになっている。
【0070】
コネクタユニット70には、制御部30と電気的に接続された昇圧回路73が備えられている。コネクタユニット70には、昇圧回路73に接続された電気コネクタ74が備えられており、この電気コネクタ74を本体4側から延びる電気コネクタ75に取り付けることにより、昇圧回路73を制御部30に対して電気的に接続することができるようになっている。
【0071】
昇圧回路73は、可撓性ホース5内を通ってヘッド部6まで延びる配線を介して、帯電電極24、偏向電極26及び噴射切替弁V14に接続されている。昇圧回路73は、制御部30からの供給電圧を昇圧させてヘッド部6へ送り、その電圧を帯電電極24及び偏向電極26などのヘッド部6内の各部に供給する。例えば、昇圧回路73には、制御部30から15Vの電圧が供給されており、この供給電圧が昇圧回路73で約7kVまで昇圧され、高圧給電線29を介して帯電電極24及び偏向電極26に与えられるようになっている。
【0072】
図5は、図1の本体4を正面側から見た斜視図であり、前面上扉10を開くとともに、前面下扉11を取り外した状態を示している。本体ハウジング9内の上部には、インクタンク31、補充液タンク32、ガターフィルタ58、循環フィルタ38、インクメインフィルタ52及び排液キャップ67などが配置されている。したがって、ユーザは、前面上扉10を開いて、これらの各部の着脱等を行うことができる。
【0073】
前面上扉10の裏側には、排液ボタン68が取り付けられている。ユーザは、前面上扉10を開いて、排液キャップ67を排液ボトル(図示せず)に取り付けた後、排液ボタン68を操作することにより、所定のポンプ及び切替弁を動作させて、メインタンク33内のインク及び補充液タンク32内の補充液を排液することができるようになっている。
【0074】
本体ハウジング9内の下部には、循環ポンプ37、補充液ポンプ43、インクポンプ48及びガターポンプ59を一体的に保持するポンプユニット80が配置されている。ユーザは、前面下扉11を取り外して、ポンプユニット80を本体ハウジング9に対して着脱することにより、循環ポンプ37、補充液ポンプ43、インクポンプ48及びガターポンプ59を一体的に着脱することができる。
【0075】
ヘッド部6が故障した場合などには、ユーザは、コネクタユニット70を本体ハウジング9から取り外すことにより、コネクタユニット70及び可撓性ホース5とともに、ヘッド部6を本体4から取り外すことができる。このような作業を行う際には、作業の流れをユーザに分かりやすく説明するための表示が操作表示部8の表示画面上になされ、その表示に従ってユーザが排液ボタン68を操作することにより、メインタンク33内のインク及び補充液タンク32内の補充液の排液処理が行われるようになっている。
【0076】
上記排液処理は、本体ハウジング9からコネクタユニット70が取り外される前に、ユーザによる排液ボタン68の操作に基づいて、制御部30の制御により自動的に行われる。排液処理では、インク返送切替弁V2、循環供給切替弁V5、排液切替弁V4、補充液送出切替弁V12及び補充液流入切替弁V13が開かれた状態で、循環ポンプ37及び補充液ポンプ43が駆動される。これにより、上述したとおり、インク循環管36、接続管63、インク回収管57及び排液管62を介して、メインタンク33内のインクが排液されるとともに、補充液タンク32内の補充液が補充液流入管42からメインタンク33に流入し、メインタンク33内のインクとともに排液される。
【0077】
コネクタユニット70を取り外す際に、排液管62を介してメインタンク33内のインクを排液させることにより、メインタンク33とヘッド部6を接続するインク送出管49内のインクも、インク返送管64を介してメインタンク33に流入させ、メインタンク33内のインクとともに排液させることができる。したがって、コネクタユニット70を取り外す際に、インク送出管49内のインクが漏れ出すのを防止できる。
【0078】
また、補充液送出切替弁V12が開かれているので、補充液タンク32内の補充液だけでなく、補充液送出管54内の補充液もメインタンク33に流入させ、メインタンク33内のインクとともに排液管62から排液させることができる。したがって、コネクタユニット70を取り外す際に、補充液送出管54内の補充液が漏れ出すのを防止できる。
【0079】
図6は、本体ハウジング9から取り外した状態のコネクタユニット70の斜視図である。コネクタユニット70は、中空直方体形状のケーシング76を備え、このケーシング76内に昇圧回路73が配置されている。ケーシング76の上面を形成する上面板(図示せず)は着脱可能になっていて、図6では、この上面板を取り外した状態を示している。
【0080】
ケーシング76の一端面76aの外側には、上述したチューブコネクタ71が取り付けられている。また、可撓性ホース5は、ケーシング76の上記一端面76aに対向する他端面76bに形成された開口76cに連通している。ケーシング76の上記他端面76bには、コネクタユニット70を本体ハウジング9に取り付けるための取付板77が固定されており、ねじなどの固定具を用いて取付板77を本体ハウジング9の背面に取り付けることができるようになっている。
【0081】
図6では図示しないが、チューブコネクタ71には、ヘッド部6側から可撓性ホース5内を通って開口76cからケーシング76内に至るインク送出管49、補充液送出管54、インク回収管57及び空気流通管66の4本の管の端部が接続されている。一方、本体4側から延びる上記4本の管49,54,57,66の端部には、ケーシング76に取り付けられているチューブコネクタ71に対して着脱可能なチューブコネクタ72が接続されている。したがって、これらのチューブコネクタ71,72を互いに着脱することにより、上記4本の管49,54,57,66の本体4側及びヘッド部6側を同時に着脱することができる。
【0082】
図7は、コネクタユニット70を取り外した状態の本体ハウジング9の背面図である。図7に示すように、本体ハウジング9の背面下部には、矩形形状の開口9aが形成されており、本体ハウジング9内には、この開口9aに一部が対向するように電源回路78が配置されている。制御部30としてのプロセッサや本体4側の電気コネクタ75は、この電源回路78上に配置されている。
【0083】
電源回路78上に配置された電気コネクタ75は、本体ハウジング9の開口9aに対向しており、この電気コネクタ75に対してコネクタユニット70の電気コネクタ74を取り付けることにより、コネクタユニット70に備えられた昇圧回路73を制御部30に対して電気的に接続することができる。
【0084】
図6に示したコネクタユニット70は、チューブコネクタ71が形成されている側の一端面76aから、開口9aを介して本体ハウジング9内に挿入することができる。そして、コネクタユニット70の取付板77で開口9aを覆い、取付板77を本体ハウジング9に取り付けることにより、図2に示すように、コネクタユニット70を本体ハウジング9内に収容した状態で固定することができる。
【0085】
図8は、チューブコネクタ71,72の分解斜視図である。図9は、本体4側のチューブコネクタ72の斜視図である。本体4側のチューブコネクタ72は、円板状のコネクタ部721と、このコネクタ部721の外周を覆うように取り付けられる円環状の固定部722とを備えている。固定部722は、その内部にコネクタ部721が嵌め込まれ、コネクタ部721に対して回転可能に取り付けられる。コネクタ部721には、本体4側から延びるインク送出管49、補充液送出管54、インク回収管57及び空気流通管66の4本の管の端部が接続されている。
【0086】
コネクタユニット70側のチューブコネクタ71は、円板状に形成されており、本体4側のチューブコネクタ72に対向する前面711には、円環状に突出する円環リブ712と、この円環リブ712の中心から突出する円柱状の円柱リブ713とが形成されている。このチューブコネクタ71の前面711における円環リブ712の内部には、円筒形状からなる4つの接続部714が、円柱リブ713を中心にして周方向にほぼ等間隔で突出形成されている。これらの4つの接続部714には、ヘッド部6側から延びる上記4本の管49,54,57,66の端部が、チューブコネクタ71の背面側からそれぞれ接続されている。
【0087】
円環リブ712の外径は、本体4側のチューブコネクタ72における固定部722の内径とほぼ一致している。また、円柱リブ713の外周面には、軸線方向に延びる平坦面713aが形成されており、本体4側のチューブコネクタ72におけるコネクタ部721の中央部には、円柱リブ713の外周面に対応する形状の挿通孔723が形成されている。円柱リブ713を挿通孔723内に挿通させるようにして、本体4側のチューブコネクタ72の固定部722を円環リブ712に被せれば、コネクタ部721に接続されている本体4側から延びる上記4本の管49,54,57,66の端部を、コネクタユニット70側のチューブコネクタ71に形成されている4つの接続部714に接続することができる。
【0088】
このとき、円環リブ712の外周面に形成されている突起715が、固定部722に形成されている係止溝724に入り込むようになっている。そして、この状態で固定部722を所定方向に回転させれば、円環リブ712の突起715を固定部722の係止溝724に係止させて、上記4本の管49,54,57,66の本体4側とヘッド部6側とを接続した状態で保持することができる。4つの接続部714の外周面にはそれぞれOリング716が取り付けられており、これらのOリング716を介して上記4本の管49,54,57,66の本体4側及びヘッド部6側を密閉状態で接続することができるようになっている。
【0089】
円環リブ712の突起715を固定部722の係止溝724に係止させた状態で、さらに、本体4側のチューブコネクタ72の固定部722を、コネクタユニット70側のチューブコネクタ71に対してねじなどの固定具725で固定すれば、チューブコネクタ71,72の脱落を防止できる。
【0090】
本実施の形態では、コネクタユニット70に備えられたチューブコネクタ71及び電気コネクタ74を着脱することにより、コネクタユニット70を本体ハウジング9に対して容易に着脱することができる。コネクタユニット70を本体ハウジング9に対して着脱することにより、コネクタユニット70にインク送出管49、補充液送出管54、インク回収管57及び空気流通管66の4本の管を介して接続されたヘッド部6を、ヘッドユニット20として一体的に着脱することができる。したがって、作業に不慣れなユーザであっても、本体ハウジング9に対するヘッド部6の着脱を容易に行うことができる。
【0091】
特に、チューブコネクタ71,72を着脱することにより、インク送出管49、補充液送出管54、インク回収管57及び空気流通管66の4本の管の本体4側及びヘッド部6側を同時に着脱することができるので、本体ハウジング9に対するヘッド部6の着脱がユーザにとってさらに容易になる。
【0092】
ヘッド部6が故障した場合などには、ユーザが、その故障したヘッド部6をコネクタユニット70とともに本体ハウジング9から取り外し、予め用意している予備のヘッドユニットに取り替えることにより、生産ラインを長時間にわたって停止させなくて済む。
【0093】
また、ヘッド部6に高電圧を供給する昇圧回路73を本体ハウジング9内に収容する一方で、ヘッド部6及びコネクタユニット70を一体的に本体ハウジング9から取り外すことができるので、ヘッド部6の小型化と低コスト化を両立することができる。
【0094】
すなわち、昇圧回路73を本体ハウジング9内に収容すれば、ヘッド部6内に収容する場合に比べて、ヘッド部6を小型化することができる。また、ヘッド部6を本体ハウジング9から取り外す際、ヘッド部6及びコネクタユニット70を一体的に本体ハウジング9から取り外すことによって、高電圧の導通部で着脱が行われない。このため、本体ハウジング9内の電源回路78とヘッド部6との電気的接続に、高価な高電圧用コネクタを使用する必要がない。したがって、インクジェット記録装置1の製造コストを低減することができる。また、高電圧用コネクタは、低電圧用コネクタに比べて大きいため、低コスト化だけでなく、小型化にも寄与する。
【0095】
図10は、可撓性ホース5とヘッド部6との接続部の構成を示した斜視図である。可撓性ホース5のヘッド部6側の端部には、当該端部をヘッド部6に取り付けるための取付部材19が形成されている。この取付部材19の端面には、ヘッド部6に当接した状態で取り付けられる矩形板状の当接板191が形成されている。
【0096】
取付部材19の当接板191は、可撓性ホース5が延びる方向に対して45°の傾斜角度で傾斜している。すなわち、図10(a)において可撓性ホース5が延びる方向である上下方向に対して、当接板191は45°の傾斜角度で傾斜している。一方、ヘッド部6は、インク粒が噴射される方向、すなわち図10(a)における上下方向に延びる長尺形状に形成されており、その長手方向の一端面6aに取付部材19が取り付けられるようになっている。ヘッド部6の上記一端面6aは、ヘッド部6の長手方向に対して45°の傾斜角度で傾斜している。
【0097】
したがって、図10(a)に示すように、可撓性ホース5が延びる方向とヘッド部6の長手方向とが平行になるようにして、取付部材19の当接板191をヘッド部6の一端面6aに当接させれば、可撓性ホース5が延びる方向に対して平行な方向に、ヘッド部6からインク粒を噴射することができる。一方、図10(b)に示すように、可撓性ホース5が延びる方向とヘッド部6の長手方向とが直交するようにして、取付部材19の当接板191をヘッド部6の一端面6aに当接させれば、可撓性ホース5が延びる方向に対して直交する方向に、ヘッド部6からインク粒を噴射することができる。
【0098】
取付部材19の当接板191の4隅には、それぞれ貫通孔192が形成されている。また、ヘッド部6の一端面6aの4隅には、それぞれねじ孔6bが形成されている。取付部材19の各貫通孔192と、ヘッド部6の各ねじ孔6bとは、図10(a)に示すような姿勢で当接板191をヘッド部6の一端面6aに当接させた場合であっても互いに一対一に対向するし、図10(b)に示すような姿勢で当接板191をヘッド部6の一端面6aに当接させた場合であっても互いに一対一に対向するようになっている。したがって、各貫通孔192にねじ(図示せず)を通して対向するねじ孔6bにねじ込むことにより、図10(a)に示すような姿勢又は図10(b)に示すような姿勢のどちらかで、可撓性ホース5及びヘッド部6を接続することができる。
【0099】
このような構成により、インクジェット記録装置1が設置される環境に合わせて、可撓性ホース5とヘッド部6の接続態様を、図10(a)に示すような姿勢又は図10(b)に示すような姿勢のどちらかに設定することができるので、ユーザにとって利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施の形態によるインクジェット記録装置の一構成例を示す斜視図であり、インクジェット記録装置が生産ラインに適用された状態を示している。
【図2】図1の本体を背面側から見た斜視図である。
【図3】図1のヘッド部の内部構成を示した斜視図であり、ヘッド部の外表の一部を省略して示している。
【図4】図1のインクジェット記録装置におけるインク等の経路を示した経路図である。
【図5】図1の本体を正面側から見た斜視図であり、前面上扉を開くとともに、前面下扉を取り外した状態を示している。
【図6】本体ハウジングから取り外した状態のコネクタユニットの斜視図である。
【図7】コネクタユニットを取り外した状態の本体ハウジングの背面図である。
【図8】チューブコネクタの分解斜視図である。
【図9】本体側のチューブコネクタの斜視図である。
【図10】可撓性ホースとヘッド部との接続部の構成を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0101】
1 インクジェット記録装置
3 対象物
4 本体
5 可撓性ホース
6 ヘッド部
9 本体ハウジング
20 ヘッドユニット
24 帯電電極
26 偏向電極
30 制御部
31 インクタンク
32 補充液タンク
33 メインタンク
34 コンディショニングタンク
36 インク循環管
37 循環ポンプ
40 インク流入管
42 補充液流入管
43 補充液ポンプ
44 補充液供給管
47 インク供給管
48 インクポンプ
49 インク送出管
54 補充液送出管
57 インク回収管
59 ガターポンプ
60 回収補充液供給管
61 回収補充液流入管
62 排液管
63 接続管
64 インク返送管
66 空気流通管
70 コネクタユニット
71,72 チューブコネクタ
73 昇圧回路
74,75 電気コネクタ
76 ケーシング
77 取付板
78 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源回路、メインタンク及びインクポンプを収容する本体ハウジングと、上記本体ハウジングに対して着脱可能に連結されるヘッドユニットとを備え、上記インクポンプによって、上記メインタンク内のインクが上記ヘッドユニットへ送り出されるインクジェット記録装置において、
上記ヘッドユニットは、上記本体ハウジング内に収容されるコネクタユニットと、上記本体ハウジング外のヘッド部と、上記コネクタユニットから上記ヘッド部へインクを送出する可撓性を有するインク送出管と、上記コネクタユニットから上記ヘッド部へ電圧を供給する高圧給電線とを有し、
上記ヘッド部は、帯電されたインク粒を生成する帯電電極と、帯電されたインク粒を偏向させる偏向電極とを有し、
上記コネクタユニットは、上記電源回路からの供給電圧を昇圧し、上記高圧給電線を介して上記帯電電極及び上記偏向電極に供給する昇圧回路と、上記インク送出管を上記インクポンプに着脱可能に接続するチューブコネクタと、上記昇圧回路を上記電源回路に着脱可能に接続する電気コネクタとを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記本体ハウジングには、上記ヘッド部から回収したインクを貯留する回収インクタンクが収容され、
上記ヘッドユニットは、上記ヘッド部から上記コネクタユニットへインクを回収する可撓性を有するインク回収管を有し、
上記チューブコネクタは、上記インク回収管を上記回収インクタンクに着脱可能に接続することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記本体ハウジングには、インクの濃度を調整するために補充される補充液を貯留する補充液タンク及び上記補充液タンク内の補充液を送り出す補充液ポンプが収容され、
上記ヘッドユニットは、上記コネクタユニットから上記ヘッド部へ補充液を送出する可撓性を有する補充液送出管を有し、
上記チューブコネクタは、上記補充液送出管を上記補充液ポンプに着脱可能に接続することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記ヘッドユニットは、上記ヘッド部から噴射されるインク粒の噴射圧を調整するために、上記コネクタユニット及び上記ヘッド部の間で空気を流通させるための空気流通管を有し、
上記チューブコネクタは、上記空気流通管を上記本体ハウジング側に着脱可能に接続することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記メインタンク内のインクを排液するための排液管と、
ユーザ操作に基づいて、上記排液管を介して上記メインタンク内のインクを排液するための処理を行うメインタンク排液処理手段とを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−190724(P2007−190724A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8947(P2006−8947)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】