説明

インクジェット記録装置

【課題】複数のキャップを共通の負圧供給源に接続する場合に、それらの間の流路抵抗の差に拘わらず、それぞれのキャップに対応する複数の記録ヘッドから、最適な量のインクを吸引排出することができるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決課題】複数の個別吸引路22,23,24,25によって、共通の吸引ポンプ11と、複数のキャップ112,113,114,115のそれぞれを接続する。それぞれのキャップ112,113,114,115に対する負圧の導入条件は、それぞれの個別吸引路22,23,24,25の流路抵抗に応じて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドを複数用いて記録媒体に画像を記録し、前記複数の記録ヘッドの前記インク吐出口のそれぞれからインクを吸引排出可能な回復装置を有するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置としては、記録ヘッドに形成された複数のインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置が広く使用されている。インクの吐出方法としては、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いる方法がある。電気熱変換素子を用いる場合には、駆動パルスに応じて発生する電気熱変換素子の熱エネルギーによってインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用してインク吐出口からインク滴を吐出させることができる。
【0003】
このようなインクジェット記録装置の中には、画像の記録速度を向上させるために、記録ヘッドとして、インク吐出口およびインク流路等からなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを用いるものがある。また、その記録ヘッドを記録媒体の搬送方向と交差する方向に延在するラインヘッドとして、それを記録媒体の搬送方向に沿って複数配列させ、記録媒体の搬送に合わせて、それらのラインヘッドの吐出口からインクを吐出させるタイプ(ラインプリンタ)もある。
【0004】
記録媒体に画像を記録する記録装置には、一般に、高解像度の画像を高速記録することが求められる。上記のラインプリンタをはじめとするインクジェット記録装置を使用することにより、これらの要求を満足させることができる。
【0005】
一方、インクジェット記録装置の場合は、液体であるインクを扱うため、記録ヘッドにおいてインクの物性変化が生じるおそれがある。その物性変化とは、環境温度によるインクの粘性の変化を含む。また、記録装置の放置時間によっては、インク中の水分が蒸発してインクの粘度が増加するおそれがある。このようなインクの粘性の変化は、記録ヘッドの回復性能処理に影響を及ぼし、ひいては記録画像品質に影響を及ぼす。
【0006】
記録ヘッドにおけるインクの吐出状態を良好に維持するための機構としては、記録ヘッドのインク吐出口からインクを吸引排出(吸引回復処理)する吸引回復機構が知られている。その吸引回復機構は、記録ヘッドのインク吐出口をキャップによってキャッピングする。そして、そのキャッピング状態のキャップ内に、吸引ポンプ(負圧供給源)によって発生した負圧をチューブ(吸引路)を介して導入することにより、インク吐出口からインクを吸引排出する構成となっている。
【0007】
特許文献1には、製造誤差による記録ヘッド内のインク流路の流路抵抗の差に応じて、吸引回復処理を行うことができる吸引回復機構が記載されている。すなわち、それぞれの記録ヘッド内におけるインク流路の流路抵抗の差に応じて、それぞれの記録ヘッド毎におけるインクの吸引排出量を制御する構成となっている。その制御は、環境温度に応じたインクの物性変化に起因するインクの粘度変化に対応するようにもなっている。
【0008】
また、特許文献2には、記録ヘッドのインク吐出口の開口面積の違いによるインクの吸引排出量の差異調整するために、インクをリフィルするための供給路の流路抵抗を変化させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−078065号公報
【特許文献2】特開2007−022036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
1つの吸引ポンプに、複数の記録ヘッドに対向する位置に配列された複数のキャップのそれぞれを、吸引路を介して接続した場合には、記録装置の小型化の制約などにより、ポンプと各キャップとを等距離に配置することが困難である。そのため、それぞれの吸引路の長さが異なるものとなる。この場合には、それぞれのキャップと吸引ポンプとの位置関係に応じて、それぞれのキャップに対応する記録ヘッドからのインクの吸引排出量に、ばらつきが生じるおそれがある。その理由は、それぞれのキャップと吸引ポンプとの位置関係に応じて、それぞれのキャップと吸引ポンプとの間を接続するチューブ(吸引路)の長さや曲がり具合が異なり、流路抵抗がキャップ毎に異なるからである。例えば、吸引ポンプから離れているキャップは、比較的長いチューブを介して吸引ポンプに接続されることになり、そのチューブの流路抵抗は比較的大きくなる。一方、吸引ポンプに近いキャップは、比較的短いチューブを介して吸引ポンプに接続されることになり、そのチューブの流路抵抗は比較的小さくなる。
【0011】
たとえ、同じ長のチューブであっても、屈曲部を多く有するチューブは、屈曲部における気泡の流動性が悪い。それは、屈曲部において、異物としてチューブ内に残される気泡の流動性が悪く、その気泡がバッファとして機能して流路抵抗を大きくするからである。そのため、チューブが複数存在すれば、各チューブの配設位置や形態の違いにより、各チューブの流路抵抗を同じにすることは困難である。
【0012】
このようなチューブの流路抵抗の差のために、それぞれのキャップに対応する記録ヘッドからのインクの吸引排出量にばらつきがある。チューブの流路抵抗が高い場合には、そのチューブに対応する記録ヘッドに充分な吸引排出処理ができない。仮に、高い流路抵抗に基づいて、全てのチューブに導入する負圧を設定した場合には、低い流路抵抗のチューブに対応する記録ヘッドに対して必要以上に大きな負圧が付与されて、その記録ヘッドから多くのインクが吸引されて、インクの使用効率が低下する。特に、長尺化された記録ヘッドを用いる場合には、そのようなインクの使用効率の低下が顕著となり、吸引排出するインクの量がさらに増える。
【0013】
本発明は、複数のキャップを共通の負圧供給源に接続する場合に、それぞれのキャップに対応する複数の記録ヘッドから、最適な量のインクを吸引排出することができるインクジェット記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のインクジェット記録装置は、インク吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドを複数用いて記録媒体に画像を記録し、前記複数の記録ヘッドの前記インク吐出口のそれぞれからインクを吸引排出可能な回復手段を備えるインクジェット記録装置において、前記回復手段は、前記複数の記録ヘッド毎に、前記インク吐出口をキャッピング可能な複数のキャップと、前記キャップ内に作用させる負圧を発生させるための負圧発生手段と、前記負圧発生手段に、前記複数のキャップのそれぞれを個別に接続する複数の個別吸引路と、を含み、前記インクジェット記録装置は、さらに、前記複数の個別吸引路毎に、前記負圧発生手段が発生した負圧を各個別吸引路に導入させるための導入条件を設定する設定手段を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、個別吸引路の流路抵抗に差が生じたとしても、それぞれのキャップに対応する複数の記録ヘッドから、最適な量のインクを吸引排出することができる。したがって、記録ヘッドのインクの吐出状態を良好に維持することができると共に、インクの過剰な排出を抑えることによってインクの使用効率を向上することができる。
【0016】
また、個別吸引路に対する負圧の導入時期は、少なくとも部分的にオーバーラップさせることにより吸引回復処理の時間を短縮することができる。また、個別吸引路に対する負圧の導入時期を互いにオーバーラップさせないようにずらすことにより、個別吸引路のそれぞれに対して、それらの流路抵抗に応じた負圧を導入して、より最適な負圧の導入条件を設定することができる。
【0017】
また、インク中の水分が蒸発してインクの粘度が増加した場合に、その粘度の変化に起因するインクの流路抵抗の変化をも加味して吸引回復処理を行うことができる。これにより、吸引回復処理の信頼性を維持しつつ、必要以上にインクを吸引排出することなく効率のよい吸引回復処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置の構成例を説明するための概略正面図である。
【図2】図1の記録装置に備わる吸引回復機構のインク吸引排出経路の説明図である。
【図3】図2の吸引回復機構における要部の構成図である。
【図4】図2の吸引回復機構を含む回復ユニットの斜視図である。
【図5】図2の吸引回復機構における吸引路の流路抵抗とインク流量との関係の説明図である。
【図6】図2の吸引機構における開閉弁の開閉タイミングの説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態のインクジェット記録装置における制御系のブロック構成図である。
【図8】図7のインクジェット記録装置による流路抵抗測定用データの取得処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図7のインクジェット記録装置による流路抵抗測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図8の流路抵抗測定用データの取得処理において検出される負圧の説明図である。
【図11】図9の流路抵抗測定処理において用いられる流路抵抗ランクテーブルの説明図である。
【図12】本発明の第3の実施形態における吸引回復処理の実行タイミングの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明のインクジェット記録装置の構成例を模式的に示す正面図である。
【0021】
本例のインクジェット記録装置100は、この記録装置100に画像情報を送るためのホストPC(パーソナルコンピュータ)101に接続されている。記録装置100には、4つの記録ヘッド102、103、104、105がロール紙(記録媒体)106の搬送方向(矢印X方向)に沿って配列されている。ロール紙106を搬送するための搬送機構109は、ロ−ル紙106を載置して搬送する搬送ベルト109A、搬送ベルト109Aを回転させるための搬送モータ109B、搬送ベルト109Aに張力を与えるローラ(不図示)などから構成されている。ロール紙106は、搬送ベルト109上の搬送ラインLに沿って矢印X方向に搬送される。
【0022】
記録ヘッド102、103、104、105からは、それぞれ、ブラックBk,シアンC,マゼンタM,イエローYのインクが搬送ラインL上のロール紙106に向かって吐出される。これらの記録ヘッド102、103、104、105は、所謂ラインヘッドであり、ロール紙106の搬送方向(矢印X方向)と交差する方向(本例の場合は、直交する方向)に延在している。また、これらの記録ヘッド102、103、104、105は、画像の記録動作中は固定されていて動かない状態(不動状態)にある。
【0023】
記録ヘッド102、103、104、105のそれぞれには、ロール紙106の搬送方向と交差する方向(本例の場合は、直交する方向)に沿って複数のインク吐出口が形成されている。インク吐出口は、インク流路およびインクの吐出エネルギー発生素子などと共にノズルを構成しており、それぞれの記録ヘッド102、103、104、105は、このようなノズルを複数集積したマルチノズルヘッドとなっている。インクの吐出エネルギー発生素子としては、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。電気熱変換素子を用いた場合には、駆動パルスに応じて発生する電気熱変換素子の熱エネルギーによってインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用してインク吐出口からインク滴を吐出させることができる。
【0024】
107は、搬送ラインL上におけるロール紙106の位置を検出するためのセンサであり、108は、搬送ラインL上に搬入されるロール紙106の先端を検出するためのセンサである。
【0025】
それぞれの記録ヘッド102、103、104、105は、図2のように構成されている。図2には、それらの内の1つの記録ヘッド102が代表的に示されており、他の記録ヘッド103,104,105も同様に構成されている。
【0026】
記録ヘッド102には、ブラックインクBkを供給するためのインクタンク102Bkが接続されており、そのインクは、外フィルター1と中フィルター2を介して、ノズル3のインク吐出口から図2中の下方に吐出される。同様に、記録ヘッド103,104,105には、それぞれ、シアンC、マゼンタM、イエローYのインクを供給するためのインクタンク103C,104M,105Yが接続される。記録ヘッド102(103,104,105)は、対応するインクタンク102Bk(103C,104M,105Y)と共に、記録ヘッドユニットを構成することができる。その記録ヘッドユニットは、記録装置100に対して交換可能に組み込むことができる。
【0027】
このような記録ヘッド102、103、104、105に対しては、個別に対応するキャップ112,113,114,115が備えられており、それらのキャップの内部にはインク吸収体112A,113A,114A,115A(図3参照)が収容されている。これらのキャップ112,113,114,115(図3参照)は、対応する記録ヘッド102、103、104、105と相対移動することにより、非記録動作時に、対応する記録ヘッドのインク吐出口をキャッピングすることができる。つまり、それらのキャップ112,113,114,115は、対応する記録ヘッド毎に、インク吐出口をキャッピング可能である。キャップ112に対しては、それと共に移動するブレード4が備えられている。他のキャップ113,114,115に対しても同様に、それらと共に移動するブレード4が備えられている。図3においてはブレード4の図示を省略している。
【0028】
4つのキャップ112,113,114,115は、図2および図3のように、共通の負圧供給源としての吸引ポンプ11に接続されている。吸引ポンプ11としては、チューブポンプなどの種々のタイプのポンプを用いることができる。
【0029】
吸引ポンプ11の吸引口11Aには、共通吸引路21を介してバッファ(空気室)12が接続されている。バッファ12の内部と、それぞれのキャップ112,113,114,115の内部は、それぞれのキャップに対応する個別吸引路22,23,24,25によって個別に連通されている。それらの個別吸引路22,23,24,25には、開閉弁22A,23A,24A,25Aが備えられている。バッファ12には、その内部を大気に解放可能な大気解放弁13が備えられており、また、吸引ポンプ11の排出口11Bには廃インクタンク14が接続されている。これらの吸引ポンプ11、バッファ12、および開閉弁22A,23A,24A,25Aを含めて、負圧発生ユニットともいう。30は、吸引ポンプ11、開閉弁22A,23A,24A,25A、および大気解放弁13を関連的に制御するための制御部である。制御部30は、後述するように、個別吸引路22,23,24,25毎の流路抵抗に応じて、それらの個別吸引路毎に導入する負圧の導入条件を設定する設定手段としての機能と、その導入条件にしたがって吸引回復処理を実行する機能と、を含む。
【0030】
吸引ポンプ11とバッファタンク12は、図4のように、キャップ112,113,114,115およびブレード3などと共に回復ユニットYを構成することができる。この回復ユニットYには、キャップ112,113,114,115およびブレード3の移動機構、開閉弁22A,23A,24A,25A、大気解放弁13も組み込まれている。15は、廃インクタンク14が接続されるための廃インク排出口であり、吸引ポンプ11の排出口11Bに接続されている。図4のユニットYには中継コネクタ16が備えられている。中継コネクタ16は、図3のように個別吸引路22,23,24,25中に介在するように位置し、この中継コネクト16とバッファ12との間は、個別吸引路22,23,24,25のそれぞれに対応する個別の中継吸引路26によって接続されている。
【0031】
本例の場合、中継コネクタ16は、キャップ113と114の間に備えられている。そのため、キャップ113,114の位置は中継コネクタ16に比較的近く、キャップ112,115の位置は中継コネクタ16から比較的遠い。また本例の場合は、個別吸引路22,23,24,25を形成するチューブ等の導管の共通化が図られており、それらの個別吸引路22,23,24,25がほぼ同じ長さとなっている。そのため、中継コネクタ16から比較的遠い位置のキャップ112,115に接続される個別吸引路22,25に関しては、それを形成する導管を広い範囲内において引き回すことができ、それが曲げられる屈曲部27の形成数は少なくなる。一方、中継コネクタ16に比較的近い位置のキャップ113,114に接続される個別吸引路23,24に関しては、それを形成する導管を狭い範囲内において引き回す必要があるため、それが曲げられる屈曲部27の形成数が多くなる。
【0032】
さらに、本例の場合は、キャップ112,113,114,115の共通化が図られており、それらにおいて、個別吸引路22,23,24,25が接続される接続部110は同じ位置にある。中継コネクタ16に比較的近い位置のキャップ113,114において、キャップ113の接続部110の位置は中継コネクタ16から比較的遠く、キャップ114の接続部110の位置は中継コネクタ16に比較的近い。そのため、キャップ114に接続される個別吸引路24に関しては、それを形成する導管をさらに狭い範囲内において引き回す必要があり、それが曲げられる屈曲部27の形成数はさらに多くなる。
【0033】
個別吸引路22,23,24,25を形成する導管として可撓性のチューブを用いた場合には、屈曲部27は円弧状となる。その可撓性のチューブの曲率半径は制限されており、その曲率半径が小さ過ぎた場合にはチューブが潰れるおそれがある。
【0034】
このような個別吸引路22,23,24,25における屈曲部27は、その形成数が多いほど流路抵抗を高めることになる。そのため、キャップ112,115と吸引ポンプ11との間における個別吸引路22,25を含む吸引流路(以下、「吸引路F1,F4」という)の流路抵抗Rは、図5中のAのように最も小さくなる。また、キャップ114と吸引ポンプ11との間における個別吸引路24を含む吸引流路(以下、「吸引路F2」という)の流路抵抗Rは、同図中のCのように最も大きくなる。また、キャップ113と吸引ポンプ11との間における個別吸引路23を含む吸引流路(以下、「吸引路F3」という)の流路抵抗Rは、図5中のBのように、同図中のA,Cの間の大きさとなる。
【0035】
ロ−ル紙106に画像を記録する際には、搬送機構109によって搬送されるロ−ル紙Pの記録開始位置が記録ヘッド102の下に到達したときから、記録データ(画像情報)に基づいて、記録ヘッド102の複数のインク吐出口からブラックインクBkを選択的に吐出する。同様に、ロール紙Pの記録開始位置が記録ヘッド103、104、105の下に到達したときから、それらの記録ヘッドから各色のインクを吐出することによって、ロ−ル紙Pにカラー画像を記録する。
【0036】
非記録動作時に、記録ヘッド102,103,104,105のインク吐出口を対応するキャップ112,113,114,115によってキャッピングしてから、それらのキャップ内に負圧を導入することにより、吸引回復処理を行うことができる。すなわち、キャップ内に導入した負圧によって、対応する記録ヘッドのインク吐出口から、画像の記録に寄与しないインクをキャップ内に吸引排出させることにより、記録ヘッドのノズル内の気泡などの異物をインクと共に除去することができる。これにより、記録ヘッドにおけるインクの吐出状態を良好に維持することができる。
【0037】
本例の場合は、まず、開閉弁22A,23A,24A,25Aと大気解放弁13を閉じた状態で吸引ポンプ11を駆動させて、バッファ12内に負圧を導入する。バッファ12内が所定の負圧となったら、吸引ポンプ11の駆動を継続したまま、開閉弁22A,23A,24A,25Aを開く。これにより、記録ヘッド102,103,104,105のインク吐出口から、それらに対応するキャップ112,113,114,115内にインクを吸引排出させることができる。キャップ112,113,114,115内に吸引されたインクは、吸引路F1,F2,F3,F4から、バッファ12およびポンプ11を通して廃インクタンク14に排出される。
【0038】
キャップ112,113,114,115内に同じ負圧P(=−200gf/cm2)を導入した場合、図5のように、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに応じて、それらを通して吸引排出されるインクの流量が異なる。すなわち、吸引路F1,F4内のインク流量は1g/sec、吸引路F2内のインク流量は0.75g/sec、吸引路F3内のインク流量は0.6g/secとなる。
【0039】
本例においては、図6のように、それらのインク流量に応じて開閉弁22A,23A,24A,25Aを開閉する。すなわち、t0の時点において開閉弁22A,23A,24A,25Aを同時に開いて、キャップ112,113,114,115内に同じ負圧P(=−200gf/cm2)を導入する。開閉弁22A,25Aは、2秒経過後に閉じる。これにより、記録ヘッド22,25から2gのインクが吸引排出される。開閉弁23Aは2.67秒経過後に閉じ、開閉弁24Aは3.33秒経過後に閉じる。これにより、記録ヘッド23,24からも2gのインクを吸引排出することができる。
【0040】
このように、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに応じて、キャップ112,113,114,115内に導入する負圧の導入時間を制御することにより、それぞれの記録ヘッド22,23,24,25から同量のインクを吸引排出することができる。つまり、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに拘わらず、それぞれの記録ヘッド22,23,24,25から適量のインクを吸引排出することができる。したがって、インクの吸引排出量が少な過ぎて、充分な吸引排出処理ができなくなる事態、およびインクの吸引排出量が多すぎて、必要以上にインクが吸引排出される事態を回避することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
個別吸引路22,23,24,25(吸引路F1,F2,F3,F4)の流路抵抗は、インクの粘度やインク残量の変化に応じて変化するおそれがある。インクの粘度は、記録装置の放置期間中に、インク中の水分が蒸発することにより高まる。本実施形態は、記録装置の電源がONとなったとき等、必要に応じて吸引路の流路抵抗を測定する構成となっている。
【0042】
図7は、本実施形態における記録装置100の制御系のブロック構成図である。
【0043】
ホスト装置101から送信された記録データやコマンドは、インターフェイスコントローラ121を介してCPU122に受信される。CPU122は、記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙106のハンドリング等、記録装置100における制御全般を掌る演算処理装置である。CPU122は、受信したコマンドを解析した後に、記録データの成分のイメージデータを記録ヘッド102,103,104,105のそれぞれに割り当てる。CPU122は、記録前に、記録ヘッド102,103,104,105のキャッピングを解除して、それらの記録ヘッドを記録位置に移動させる。具体的には、不図示の出力ポートとモータ駆動部123を介して、キャップ112,113,114,115を移動させるキャッピングモータ124と、記録ヘッド102,103,104,105を上下させるヘッドアップダウンモータ125と、を駆動する。
【0044】
記録時には、まず、不図示の出力ポートとモータ駆動部123を介して、ロ−ル紙106を繰り出すためのロールモータ126と、ロール紙106を搬送するための搬送モータ109B(図1参照)が駆動されて、ロ−ル紙106が記録位置に搬送される。その後、センサ108(図1参照)によるロール紙106の先端の検出時期に基づいて、一定速度で搬送されるロ−ル紙106に対してインクを吐出し始めるタイミング(記録開始タイミング)を決定される。その後、ロ−ル紙106の搬送に同期して、CPU122は、イメージメモリ126から記録データを順次に読み出し、この記録データを、記録ヘッド制御部(制御回路)127を介して対応する記録ヘッド102,103,104,105に転送する。
【0045】
CPU122の動作は、ROM128に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。ROM128には、後述する制御に対応する処理プログラム、およびテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてRAM129が使用される。またCPU122は、記録ヘッド102,103,104,105のクリーニング動作および回復動作時に、モータ駆動部123を介して、吸引ポンプ11を作動させるためのポンプモータ131を駆動することにより吸引回復処理を行う。したがって、CPU122は制御部30(図2参照)に相当する。本例において、バッファ12には、図2および図3中の仮想線で示すように、バッファ12内の圧力を検出するための圧力センサ132が備えられている。CPU122は、後述するように、圧力センサ132の検出結果に基づいて、個別吸引路22,23,24,25(吸引路F1,F2,F3,F4)の流路抵抗を測定し、それらの流路抵抗に応じた吸引回復処理を行う。その際、CPU122は、弁駆動部133を介して吸引弁22A,23A,24A,25Aおよび大気開放弁13を開閉する。
【0046】
CPU122は、図8の流路抵抗測定用データの取得処理と図9の流路抵抗測定処理を実行することにより、個別吸引路の流路抵抗を測定する。このような流路抵抗の測定は、記録装置の初期設置時、定期的、もしくは記録装置の電源ON時に行なうことができる。例えば、記録装置に記録ヘッドとインクタンクが設定された初期設置時に流路抵抗を測定することができる。また、記録装置が毎日使用される場合には、月に一度くらいの頻度で定期的に流路抵抗を測定、また、記録装置が長期間放置された後に電源がONされたときには、その電源ON時に流路抵抗を測定することができる。
【0047】
図8は、吸引路22の流路抵抗測定用のデータを取得する処理を説明するためのフローチャートであり、他の吸引路23,24,25の流路抵抗測定用のデータも同様に処理により取得する。
【0048】
図8の処理においては、まず、記録ヘッド102,103,104,105のそれぞれがキャップ112,113,114,115によってキャッピングされた状態から(ステップS1)、開閉弁(以下、「吸引弁」という)22A,23A,14A,15Aと、大気解放弁(以下、「大気解放弁」という)13を閉じる。その後、ポンプ11を駆動してバッファ12内に負圧を導入し(ステップS3)、圧力センサ132によって検出されるバッファ12内の負圧が流路抵抗測定用の一定の負圧となったときに、ポンプ11の駆動を止める(ステップS3,S4,S5)。次に、吸引路22の吸引弁22Aを一定時間Aだけ開き(ステップS6,S7)、バッファ12内の負圧を吸引路22を通して記録ヘッド102に作用させて、その記録ヘッド102からインクを吸引排出させる。このインクの吸引排出に伴い、バッファ12内の負圧を徐々に小さくなる。そして、一定時間Aの経過後に吸引弁22Aを閉じ(ステップS8)、そのときのバッファ12内の負圧を圧力センサ132により検出して、その検出圧をRAM129などのメモリに格納する(ステップS9)。
【0049】
その後、記録ヘッド102,103,104,105のキャッピングを解除し(ステップS10)、吸引弁22Aを開いてからポンプ11を一定時間駆動することにより(ステップS12,S13,S14)、キャップ112内に吸引されたインクを廃インクタンク14(図3参照)内に排出する。その後、大気解放弁13を開く(ステップS15)。
【0050】
このように、ステップS8にて吸引弁22Aを閉じた直後のバッファ12内の負圧を検出し、その検出した負圧を吸引路22の流路抵抗測定用のデータをしてメモリに記憶する。その検出される負圧は、吸引路22の流路抵抗が大きければ負圧の値が大きくなり、流路抵抗が小さければ負圧の値も小さくなる。このような図8の処理は、他の吸引路23,24,25についても同様に行い、それぞれの吸引路についての流路抵抗測定用のデータを取得する。
【0051】
図10は、このような流路抵抗測定用のデータの取得時における吸引路22,23,24,25(吸引路F1,F2,F3,F4)内の圧力変化の一例の説明図である。図10中の縦軸はバッファ12内の負圧を示し、大気圧P0から縦軸の矢印方向(下方)に向かうにしたがって負圧が高くなる。図10中の横軸(時間軸)において、t1からt2の間が一定時間Aに対応する。図10においては、吸引路F1,F2,F3,F4に対して負圧が同時に導入されるように示されているが、前述したように、それらに対する負圧の導入時期、つまり吸引弁22A,23A,24A,25Aの開閉時期はずれている。吸引弁が開くt1の時点においては、吸引路内の負圧が急激に上昇する。その負圧の急激な上昇の程度は、吸引路の流路抵抗により異なる。その後、吸引路の流路抵抗に応じて、その吸引路内の負圧が徐々に低下する。吸引弁が閉じるt2の時点において、吸引路F1,F2,F3,F4内の負圧はP2,P3,P4,P5となる。これらの負圧P2,P3,P4,P5は、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗に対応する。キャッピングを解除した時点t3において、吸引路内は大気圧となる。
【0052】
次に、以上のようにして取得した流路抵抗測定用のデータに基づいて、図9の流路抵抗測定処理により吸引路22,23,24,25(吸引路F1,F2,F3,F4)の流路抵抗を求める。
【0053】
すなわち、メモリから流路抵抗測定用のデータとしての検出圧(負圧)を読み出し(ステップS21)、図11のような流路抵抗ランクテーブルを参照して、検出圧(負圧)に対応する流路抵抗値を決定する(ステップS22)。本例の場合は、流路抵抗値を検出圧(負圧)に応じて10のランクに分けており、図11中のランク3の流路抵抗値が図5中の吸引路F1,F4の流路抵抗Aに相当する。また、図11中のランク5の流路抵抗値が図5中の吸引路F2の流路抵抗Bに相当し、図11中のランク8の流路抵抗値が図5中の吸引路F3の流路抵抗Cに相当する。このようにして決定した流路抵抗値をRAM129などのメモリに格納する(ステップS23)。
【0054】
このようにして決定した流路抵抗値に基づいて、前述した第1の実施形態と同様に、キャップ112,113,114,115内に導入する負圧の導入時間を制御することにより、それぞれの記録ヘッド22,23,24,25から同量のインクを吸引排出することができる。また、記録装置の放置期間に、インク中の水分の蒸発によってインクの粘性が増加した場合の流路抵抗の変化、およびインクの残量変化による流路抵抗の変化は、同様の処理により検出することができる。
【0055】
このように、本実施形態においては、吸引路に所定の負圧を一定時間導入したときの圧力変化に基づいて、吸引路の流路抵抗を測定する。その圧力変化は、上述したようにバッファ12内の圧力変化の他、吸引路内の圧力変化、キャップ内の圧力変化であってもく、要は、吸引路の流路抵抗に対応する圧力変化であればよい。
【0056】
バッファ12は、前述したように、負圧を貯蓄するために用いられる。バッファ12に負圧を貯蓄せずに、ポンプ11の駆動(例えば、回転)によって発生する負圧を直接キャップ内に導入してインクを吸引した場合には、次のような不具合が生じるおそれがある。例えば、本例で使用しているポンプ11の場合には、記録ヘッドに対する吸引回復処理の信頼性を維持するために必要な負圧(例えば、−0.4kgf/cm2)を得るまでに時間が掛かり、その間に、インクが吸引されて無駄な廃液となってしまうおそれがある。インクの無駄な排出を防止し、且つ、吸引回復処理の信頼性を維持するための必要な負圧を瞬時に記録ヘッドに付与するために、バッファ12は設けられている。
【0057】
(第3の実施形態)
前述した実施形態においては、図6のように、吸引路F1,F2,F3,F4に対する負圧の導入時期をオーバーラップさせた。これにより、吸引弁の開き時間に応じてインクの吸引量は制御できるものの、流路抵抗の大きい吸引路に合わせて、導入する負圧を設定した場合には、流路抵抗の小さい吸引路に対して必要負圧以上の負圧が掛かって、その吸引路からのインクの吸引量が多くなるおそれがある。
【0058】
本実施形態においては、図12のように、吸引路F1,F2,F3,F4に対する負圧の導入時期を互いにオーバーラップしないようにずらすことによって、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに応じて、導入する負圧の大きさと、その負圧の導入時間を制御する。図12において、P11,P21,P31,P41は、バッファ12からの負圧の導入時t11,t13,t15,t17の直後に、流路抵抗に応じて急激に上昇する吸引路F1,F2,F3,F4内の負圧である。それらの負圧の導入時t11,t13,t15,t17には、ポンプ11の駆動時間B1,B2,B3,B4に応じて、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗に対応する負圧P10,P20,P30,P40をバッファ12内に蓄積する。また、吸引路F1,F2,F3,F4に対する負圧の導入時間A1,A2,A3,A4、つまり吸引回復処理を実行する時間は、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗に応じて制御する。t12,t14,t16,t18にて、吸引路F1,F2,F3,F4に対応する吸引弁を閉じてからキャッピングを解除することにより、吸引路F1,F2,F3,F4の負圧が減少して大気圧P0に戻る。
【0059】
ポンプ11は連続的に駆動させて、バッファ12内に吸引回復処理に必要な負圧を貯める。ポンプ11を連続で回転させ続けることにより、先の記録ヘッドの吸引回復処理から、次の記録ヘッドの吸引回復処理までの間に、必要な負圧を貯める時間を短縮することができる。
【0060】
このように、記録ヘッド102,103,104,105に対する吸引回復処理を連続的に実行する。t18にて、吸引路F4の開閉弁25Aを閉じてキャッピングを解除した後は、ポンプ11の駆動を止めてから、バッファ12に備わる大気開放弁13を開放させて、バッファ12内の圧力を大気圧P0に戻す。図12中のP1は、吸引回復処理の信頼性を維持するために必要な負圧である。負圧P10,P20,P30,P40を吸引路の流路抵抗、または、それに対応するランク(図11)に応じて設定する、これにより、流路抵抗に応じた負圧を吸引路に導入して、吸引回復処理の信頼性を維持しつつ、インクの吸引排出量を低減させて、効率のよい吸引回復処理を実行することができる。
【0061】
(他の実施形態)
上述した第1の実施形態においては、個別吸引路22,23,24,25を形成する管路の屈曲部27の数に応じて、それらの流路抵抗が異なる場合について説明した。しかし、個別吸引路22,23,24,25を形成する管路の長さ、巻き数、内径、または屈曲の程度などの少なくとも1つに応じて、それらの流路抵抗が異なる場合も同様に対応することができる。例えば、中継コネクタ16とキャップ112,113,114,115との間の位置関係に応じて、個別吸引路22,23,24,25を形成する管路の長さを異ならせてもよい。この場合にも前述した実施形態と同様に、管路の長さの差によって生じる流路抵抗の差に応じて、開閉弁22A,23A,24A,25Aを制御すればよい。
【0062】
また、インクタンク122、123、124、125内のインク残量と、経時的変化によるインク増粘と、の内の少なくとも1つに応じても、開閉弁22A,23A,24A,25Aを制御してもよい。これにより、インクタンク内のインク残量、および/または経時的変化によるインク増粘に応じても、複数の個別吸引路毎に導入する負圧の導入条件を設定することができる。
【0063】
また、個別吸引路22,23,24,25は、中継コネクタ16を介さずにバッファ12に接続してもよく、あるいは、吸引ポンプ11に直接接続してもよい。要は、吸引ポンプなどの共通の負圧供給源に対して、複数のキャップを個別に接続することができればよい。
【0064】
また、上述した実施形態においては、キャップ112,113,114,115に対して、同じ大きさの負圧を同時に導入し始め、その負圧の導入終了時期は、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに応じてをずらした。つまり、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに応じて、同じ負圧の導入時間(記録ヘッドからのインクの吸引排出時間)を制御した。しかし、キャップ112,113,114,115に対する負圧の導入の開始時期は、必ずしも同時である必要はなく、ずらしてもよい。また、キャップ112,113,114,115に対する負圧の導入の開始時期をずらして、それぞれのキャップに導入する負圧の大きさを吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに応じて異ならせてもよい。この場合には、それぞれのキャップに対する負圧の導入時間(記録ヘッドからのインクの吸引排出時間)を合わせることもできる。要は、吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに拘わらず、記録ヘッド22,23,24,25から同量のインクを吸引排出することができればよい。
【0065】
制御部30は、予め取得した吸引路F1,F2,F3,F4の流路抵抗Rに応じて、ポンプ11、開閉弁22A,23A,24A,25A、および大気解放弁13を関連的に制御することにより、上述したような最適な吸引回復処理を実行することができる。
【0066】
また、制御部30は、インクの流動特性(粘度など)をも考慮して、吸引回復処理を実行することができる。例えば、インクの粘度が高い場合には、そのインクを吸引するために必要な負圧は大きくなる傾向にある。したがって、インクの粘度に応じて、負圧の大きさを制御したり、あるいは同じ大きさの負圧の導入時間を制御することにより、インクの種類に応じたより適正な吸引回復処理を実行することができる。
【0067】
(その他)
本発明は、インク吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドを複数用いて記録媒体に画像を記録し、複数の記録ヘッドのインク吐出口のそれぞれからインクを吸引排出可能なインクジェット記録装置に対して、広く適用することができる。したがって、記録装置の構成は、前述したようなフルラインタイプのみに特定されず、シリアルスキャンタイプなどであってもよい。フルラインタイプの場合には、複数の記録ヘッドを所定方向にずらして装着可能な装着部と、その所定方向に沿って記録媒体を搬送する搬送手段と、を備え、複数のキャップは、複数の記録ヘッドの装着位置に対応するように配備すればよい。
【0068】
また、記録ヘッドの配備数も4つのみに限定されず、任意である。また、キャップ内に負圧を供給するための負圧供給源(負圧供給手段)としては、チューブポンプの他、種々のポンプを用いることができる。また、複数のキャップ内に導入する負圧の導入条件は、それらのキャップのそれぞれに対応する複数の個別吸引路毎の流路抵抗に応じて設定することができればよい。
【0069】
負圧の導入条件としては、複数の個別吸引路のそれぞれに対する負圧の導入時期、または導入する負圧の程度の内の少なくとも一方を設定することができる。負圧の導入時期は、複数の個別吸引路のそれぞれに備えた開閉弁の開閉時期に応じて設定することができる。その場合、複数の個別吸引路毎の開閉弁を開く時期を同時期に設定し、それら開閉弁を閉じる時期は、個別吸引路毎の流路抵抗に応じてずらすことができる。
【0070】
また、負圧の導入条件は、記録ヘッドから吐出されるインクの種類または環境温度の内の少なくとも一方に応じて設定することもできる。
【符号の説明】
【0071】
10 吸引回復機構
11 吸引ポンプ
12 チャンバ(空気室)
14 廃インクタンク
16 中継コネクタ
21 共通吸引路
22,23,24,25 個別吸引路
22A,23A,24A,25A 開閉弁
30 制御部
100 記録装置
102,103,104,105 記録ヘッド
112,113,114,115 キャップ
122、123、124、125 インクタンク
F1,F2,F3,F4 吸引路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドを複数用いて記録媒体に画像を記録し、前記複数の記録ヘッドの前記インク吐出口のそれぞれからインクを吸引排出可能な回復手段を備えるインクジェット記録装置において、
前記回復手段は、
前記複数の記録ヘッド毎に、前記インク吐出口をキャッピング可能な複数のキャップと、
前記キャップ内に作用させる負圧を発生させるための負圧発生手段と、
前記負圧発生手段に、前記複数のキャップのそれぞれを個別に接続する複数の個別吸引路と、
を含み、
前記インクジェット記録装置は、さらに、前記複数の個別吸引路毎に、前記負圧発生手段が発生した負圧を各個別吸引路に導入させるための導入条件を設定する設定手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記複数の個別吸引路毎の流路抵抗に応じて、前記複数の個別吸引路のそれぞれに対する負圧の導入時期、または導入する負圧の大きさの内の少なくとも一方を設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記複数の個別吸引路の内の少なくとも1つは、吸引路の長さ、巻き数、または屈曲の程度の内の少なくとも1つが他のものと異なることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記複数の記録ヘッドを所定方向にずらして装着可能な装着部と、
前記記録媒体を前記所定方向に沿って搬送する搬送手段と、
を備え、
前記複数のキャップは、前記複数の記録ヘッドの装着位置に対応するように、前記所定方向にずらして配備される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記複数の個別吸引路のそれぞれに開閉弁を備え、
前記設定手段は、前記複数の個別吸引路毎の流路抵抗に応じて、前記複数の個別吸引路毎の前記開閉弁の開閉時期を設定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記複数の個別吸引路毎の前記開閉弁を開く時期を同時期に設定し、前記複数の個別吸引路毎の前記開閉弁を閉じる時期は、前記複数の個別吸引路毎の流路抵抗に応じて設定することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記複数の個別吸引路に対する前記の導入時期を互いにオーバーラップしないように設定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記負圧発生手段は、吸引ポンプと、当該吸引ポンプが発生した負圧を蓄積する空気室と、を含み、
前記空気室が前記複数の個別吸引路に接続され、
前記吸引ポンプの排出口が廃インクタンクに接続される
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記記録ヘッドから吐出されるインクの種類または環境温度の内の少なくとも一方に応じて、前記複数の個別吸引路毎に導入する負圧の導入条件を設定することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記設定手段は、前記記録ヘッドの供給するインクを収容するインクタンク内のインク残量と、経時的変化によるインクの増粘と、の内の少なくとも1つに応じて、前記複数の個別吸引路毎に導入する負圧の導入条件を設定することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記負圧発生手段から前記個別吸引路に負圧を導入したときの圧力変化に基づいて、前記個別吸引路の流路抵抗を測定する測定手段を備え、
前記設定手段は、前記測定手段によって測定された前記個別吸引路の流路抵抗に応じて、前記負圧を前記個別吸引路毎に導入する導入条件を設定する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−131982(P2010−131982A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246794(P2009−246794)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】