説明

インクジェット記録装置

【課題】記録ヘッドから排出される廃インクを効率よく収容して、小型化を図ることができるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】記録ヘッドから排出される廃インクから気体を分離する気液分記機構109を備え、分離された廃インクを廃インクタンクとしての使用済みインクタンク110に収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンクから導入したインクを記録ヘッドから吐出することによって、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドのノズルからインクを吐出して記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置においては、記録速度を向上させるために、ノズルを形成する液路や吐出口を複数の集積した記録ヘッドが用いられている。このような記録装置においては、記録ヘッドのノズルからインクを常に安定して吐出するために、増粘あるいは固着したインクをノズルから排出させる回復処理が行われる。この回復処理としては、吸引回復処理や予備吐出などが含まれる。吸引回復処理は、吐出口が形成された吐出口形成面(ノズル面ともいう)をキャップによってキャッピングし、そのキャップ内に、ポンプ等により発生した負圧を導入することにより、増粘インクをノズル内からキャップ内に吸引排出するための処理である。一方、予備吐出は、画像の記録に寄与しないインクをノズルから吐出することにより、増粘インクをノズル内から排出するための処理である。
【0003】
通常、このような吸引回復処理や予備吐出によって排出されたインク(以下、「廃インク」ともいう)は、記録装置内の廃インク貯蔵部に貯蔵される。この廃インク貯蔵部の多くは、記録装置の耐用期間内に排出される廃インクの貯蔵に十分な容量を有する構成、若しくは、交換可能な構成となっている。前者の廃インク貯蔵部を備えた場合には、その容量が大きくなる分、記録装置本体の大型化を招くおそれがある。一方、後者の廃インク貯蔵部を備える場合には、記録装置の耐用期間中に、廃インク貯蔵部を交換するための猥雑な作業がユーザーに求められることになる。また、交換用の廃インク貯蔵部を準備するというサービス側の負担、および廃インク貯蔵部を入手するというユーザー側の負担も生じる。
【0004】
そのため、使い切った交換可能なインクカートリッジを廃インク貯蔵部として再利用する方法が提案されている(特許文献1)。この特許文献1に記載の方法の場合には、使い切ったインクカートリッジの1個を記録装置本体の吸引回復処理機構の排出口に接続することにより、そのインクカートリッジが廃インク貯蔵部として再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−304190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、廃インクと同時に吸引回復処理機構の排出口から排出される気体の扱いについての記載がなく、廃インクのみを効率的に使い切りのインクタンクに収容することができず、気体も同時に収容してしまうおそれがある。また、廃インク貯蔵部として利用されるインクカートリッジが廃インクによって満タンになったことを検出するための検知手段についての具体的な記載がなく、その廃インク貯蔵部としてのインクカートリッジの適切な交換時期を知ることができないおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、記録ヘッドから排出される廃インクを効率よく収容して、小型化を図ることができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット記録装置は、内部に収容したインクに負圧を付与するための負圧発生手段を備えたインクタンクと、前記インクタンクから負圧が付与されたインクを導入して吐出口から吐出可能な記録ヘッドと、を用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドの前記吐出口から画像の記録に寄与しないインクを廃インクとして排出させる回復処理手段と、前記回復処理手段により排出された廃インクから気体を分離させる気液分離手段と、内部に負圧を生じさせるための負圧発生手段を備えた廃インクタンクが装着可能な装着部と、前記装着部に装着された前記廃インクタンクの内部の負圧によって、当該廃インクタンクの内部に、前記気液分離手段によって分離された廃インクが収容されるように、前記気液分離手段によって分離された廃インクを前記廃インクタンクに導く導入手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録ヘッドから排出される廃インクから気体を分離してから、その廃インクを効率よく収容することにより、インクジェット記録装置の小型化を図ることができる。また、廃インクを収容する廃インクタンクとして使用済みのインクタンクを利用することができる。その場合には、インクの使用量と廃インクの収容量をインクタンクに記憶させることにより、使用済みのインクタンクが廃インクタンクとして利用されているときに、それらの記憶情報を利用して、廃インクタンクが満タンになった時期を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の要部の概略斜視図である。
【図2】図1の記録装置に備わる記録ヘッドの吐出口部分の模式図である。
【図3】図1における吸引機構および気液分離機構を矢印A方向から視た模式図である。
【図4】(a)は、図1におけるインクカートリッジの満タン時の断面図、(b)は、そのインクカートリッジの使い切り時の断面図である。
【図5】図1の記録装置の制御系のブロック構成図である。
【図6】図1の記録装置において用いられる使用済みインクカートリッジの記憶データの説明図である。
【図7】(a)は、本発明の第2の実施形態において用いられるインクカートリッジの満タン時の断面図、(b)は、そのインクカートリッジの使い切り時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、インクジェット記録装置100の主要部の構成を示す概略斜視図である。同図において、101はインクカートリッジ(インクタンク)である。本例においては、4色のカラーインク、すなわちブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを12.0gずつ貯留する4つのインクカートリッジ101が用いられる。記録ヘッド102には、図2のように、それらのインクカートリッジ101から供給されたインクを吐出するためのノズル列が形成されている。4つのインクカートリッジは、それぞれ記録ヘッド102に対して交換可能に接続されている。記録ヘッド102は、インクカートリッジ101から、負圧が付与されたインクを導入してノズルから吐出可能である。
【0012】
図2は、ノズルを形成する吐出口を図1中の矢印Z方向から視た模式図である。201は、イエローインクを吐出するためのノズルを形成する吐出口であり、記録ヘッド102の吐出口形成面(以下、「ノズル面」ともいう)上において、1インチ当たりD個のノズル密度でd個形成されている。例えば、吐出口201は、1インチ当たり600個のノズル密度600dpiでd個(例えば、512個形成されており、1ドット当たり5.5ngのイエローインクを吐出可能なノズルを構成する。ノズルは、吐出口、液路、および吐出エネルギー発生素子によって構成されており、その吐出エネルギー発生素子としては、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。電気熱変換体を用いた場合には、その発熱によってインクを発泡させたときの発泡エネルギーを利用して、吐出口からインクを吐出することができる。202、203、および204は、それぞれマゼンタインク、シアンインク、およびブラックインクを吐出するための吐出口であり、イエローインク用の吐出口201と同様にノズルを構成する。
【0013】
再び図1を参照すると、紙送りローラ103は、補助ローラ104と共に記録媒体Pを挾持しながら図の矢印の方向に回転することにより、記録媒体Pを矢印Y方向(副走査方向)に搬送する。105は、記録媒体Pを給紙するための一対の給紙ローラであり、ローラ103および104と同様に、記録媒体Pを挾持しながら回転する。この一対の給紙ローラ105は、その回転速度を紙送りローラ103よりも小さくすることにより、記録媒体Pに張力を作用させることができる。106は、4つのインクカートリッジ101と記録ヘッド102を着脱可能に搭載するキャリッジであり、副走査方向と交差(本例の場合は、直交)する矢印Xの主走査方向に往復移動される。例えば、記録動作時に、キャリッジ106が25インチ/秒の速度で移動しつつ、記録ヘッド102から吐出周波数15kHzでインクを吐出した場合には、記録媒体P上に主走査方向の解像度が600dpiの画像を記録することができる。キャリッジ106は、非記録動作時あるいは記録ヘッド102の回復処理時には、吸引機構107の直上に移動する。この回復処理としては、増粘インクをノズル内から吸引排出するための吸引回復処理、および画像の記録に寄与しないインクをノズルから吐出する予備吐出などを含むことができる。
【0014】
図3は、記録ヘッド102、吸引機構107、および気液分離機構109を図1中の矢印A方向から視た模式図である。
【0015】
図3において、キャリッジ106に搭載されたインクカートリッジ101には、インクを記録ヘッド102へ供給するためのインク供給口301が形成されている。インクカートリッジ101の下部には、インクカートリッジ101内のインクの使用量を記録保持するためのメモリ(記憶手段)302が備えられており、そのメモリ302は、キャリッジ106に備えられたコンタクト部303と電気的に接続される。メモリ302には、後述する第1および第2の記憶部を含む。キャリッジ106に備えられた圧接部304は、インク供給口301に備わる後述のインク吸収体に圧接する。これにより、これらのインク供給口301および圧接部304を通して、インクカートリッジ101からインクが流入し、そのインクがインク流路305を介して記録ヘッド102へ供給される。
【0016】
吸引機構107は、記録ヘッド102のノズル面をキャッピングするキャップ306が備えられており、そのキャップ306は、図示しない駆動機構により上下方向(図3中の矢印B方向)に移動させることができる。記録ヘッド102の吸引回復処理時には、キャップ306が上方向に移動して記録ヘッド102のノズル面をキャップする。また、記録動作の開始等のために、キャリッジ106が吸引機構107の上方から移動する時には、キャップ306が下方に移動してノズル面を開放する。キャップ306の内部は、ポンプチューブ309を通してチューブポンプ307に接続されている。吸引機構107のチューブポンプ307は、吸引回復処理時に駆動されることにより、そのコロ308がポンプチューブ309を圧接して、それを図3中矢印Cの回転方向にしごく。これにより、記録ヘッド102のノズル面、キャップ306、ポンプチューブ309で形成された閉空間に負圧を発生させて、記録ヘッド102のノズルからキャップ306内にインクを吸引排出させることができる。また、予備吐出時においては、画像の記録に寄与しないインクを記録ヘッド102のノズルからキャップ306内に吐出し、そのキャップ306内に溜まったインクは、同様にチューブポンプ307の排出動作によってキャップ306内から排出することができる。このような吸引回復処理、および予備吐出によりキャップ306内に排出されたインクは、キャップ306内およびチューブポンプ307内の空気と共に、チューブポンプ307から排出チューブ108を通して排出される。
【0017】
排出チューブ108内のインクおよび空気は、気液分離機構109に排出される。気液分離機構109の内部は、排出されたインクを廃インク311として一時貯蔵するタンク(廃インク溜まり)となっており、排出された廃インク311は下部に溜まり、同時に排出された気体は上部へと分離される。気液分離機構109の上部には気体排出口310が備えられている。これにより、排出チューブ108から気液分離機構109の内部にインクと気体が排出されて、その気液分離機構109内部が加圧されると同時に、気体が気体排出口310を通して外部に排出される。一方、排出された廃インク311は、気液分離機構109内に備えられた廃インク吸収体312に吸収される。廃インク吸収体312は、その上部が気液分離機構109の上部に露出しており、その上部にまで廃インク311を吸収できるインク吸収性を有している。
【0018】
気液分離機構109の上部には、廃インクタンクとして使用済みのインクカートリッジ110が装着可能な装着部が構成されている。気液分離機構109と使用済みのインクカートリッジ110は、廃インク吸収体312と、インク供給口301に備わる後述のインク吸収体と、を圧接させるようにして接合される。そのため、後述する使用済みインクカートリッジ110の内部の負圧によって、廃インク吸収体312に吸収された廃インク311を使用済みインクカートリッジ110の内部に収容することが可能となる。つまり、廃インク吸収体312の毛管力による負圧は、使用済みインクカートリッジ110内の負圧(廃インクタンク内の負圧)よりも小さく設定されている。また、使用済みインクカートリッジ110に備えられたメモリ302は、気液分離機構109に備えられたコンタクト部313と電気的に接合される。
【0019】
気液分離機構109内の廃インク溜まりは、1区画として1つだけ形成されている。一方、その気液分離機構109には、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのインクの4色分に対応する4つの使用済みインクカートリッジ110が保持されている。気液分離機構109内に排出された廃インク311は、各使用済みインクカートリッジ110に均等に吸収収容されるわけではなく、各使用済みインクカートリッジ110の負圧に応じた量が吸収収容される。
【0020】
図4は、インクカートリッジ101を図3中のIV−IV線に沿って切断した断面図であり、(a)は、満タン時のインクカートリッジ101を示し、(b)は、使用済の空のインクカートリッジ(使用済みインクカートリッジ)110を示す。
【0021】
図4(a)において、401は内部に収容されたインクであり、インク吸収体301Aが備わるインク供給口301、インクカートリッジ外装402、インク袋405、および圧力版404によって囲まれた空間に、保持される。インクカートリッジ外装402に一端が固定されたばね(ばね部材)403は、圧力板404を図4中の右方(インク袋の内容積の拡大方向)に付勢する。これにより、インクカートリッジ101の内部に負圧を発生させ、その負圧によって、インクカートリッジ101はインクを外部に漏らすことなく収容する。インク供給口301に備えられた吸収体301は、毛管力により負圧を発生するため、インクカートリッジ101内の負圧によってインク供給口301から空気が入り込むことはない。
【0022】
図4(b)の使用済みインクカートリッジ110は、インクが使用されたことによりインク袋405が収縮し、それに伴ってばね403も収縮している。そのため、圧力板404に対するばね403付勢力が大きくなり、インクカートリッジ110内には、図4(a)のような満タン時のインクカートリッジ101よりも大きな負圧が生じる。
【0023】
使用済みインクカートリッジ110のインク供給口301に備わる吸収体301Aと、廃インク311を吸い上げた気液分離機構109の吸収体312と、が圧接することにより、それらの間においてインクの連通路が形成される。このとき、使用済みインクカートリッジ110の内部に生じている負圧により、気液分離機構109内の廃インク311を使用済みインクカートリッジ110内へ吸収して収容することができる。
【0024】
図5は、インクジェット記録装置100の制御回路の構成を示すブロック図である。
【0025】
図5において、CPU500は、メインバスライン505を介して、記録装置各部の制御およびデータ処理を実行する。すなわち、CPU500は、ROM501に格納されるプログラムに従い、以下の各部を介して、データ処理、ヘッド駆動、およびキャリッジ駆動を行う。また、CPU500は、インターフェース518を介して、ホスト装置520との通信処理が可能である。RAM502は、CPU500によるデータ処理等のワークエリアとして用いられ、一時的に、上述するインク消費量情報を保存することができる。画像入力部503は、ホスト装置520からインターフェース518を介して入力した画像データを一時的に保持する。画像信号処理部504は、色変換、二値化等のデータ処理を実行する。
【0026】
512,514は、インクカートリッジ101に備わるメモリ302(図3参照)内の第1および第2記憶部である。第1記憶部512は、インクカートリッジ101がキャリッジ上106に保持されたときに、主として読み書きが行われる不揮発性の記憶部であり、インクカートリッジ101のインク使用量が記憶される。第2記憶部514は、インクカートリッジ101が使用済みインクカートリッジ110として気液分離機構109上に保持されたときに、主として読み書きが行われる不揮発性の記憶部である。操作部506にはキー等が備えられており、オペレータによる指示およびデータの入力等を可能にする。
【0027】
回復系制御回路507は、RAM502に格納される回復処理プログラムに従って、予備吐出や吸引動作等の回復動作を制御する。すなわち、回復系モータ508は、記録ヘッド513と、これと相対移動するキャップ306やクリーニングブレード509を駆動すると共に、吸引機構107を駆動する。クリーニングブレード509は、記録ヘッド513と相対移動することにより、ノズル面をワイピングする。ヘッド駆動制御回路515は、記録ヘッド513の吐出エネルギー発生素子(例えば、電気熱変換素子やピエゾ素子など)を駆動して、画像の記録および予備吐出のために、ノズルからインクを吐出させる。キャリッジ駆動制御回路516および紙送り制御回路517は、RAM502に格納されるプログラムに従って、キャリッジ160の移動および記録媒体Pの搬送を制御する。
【0028】
第1記憶部512には、インクカートリッジ101の出荷時に、インク使用量として“0”が記憶されている。その後、インクカートリッジ101がキャリッジ106にされて、画像の記録動作や回復処理動作等によってインクカートリッジ101内のインクが使用されると、その都度、その使用量が第1記憶部512に記憶されているインク使用量に加算される。回復処理動作には、吸引回復処理動作や予備吐出動作などが含まれる。画像の記録動作によるインクの使用量は、例えば、画像データに基づいて求めることができる。すなわち、画像データに基づいて吐出すべきインクの吐出数のカウント値と、インクの1回の吐出時の吐出量と、により、それぞれのインクカートリッジ毎に、インクの使用量を求めることができる。また、吸引回復動作によるインクの使用量は、例えば、1回の吸引回復動作によるインクの吸引量と、吸引回復動作の実施回数と、に基づいて求めることができる。また、予備吐出によるインクの使用量は、例えば、1回の予備吐出によるインクの吐出量と、予備吐出の実施回数と、に基づいて求めることができる。このようなインクの使用量の算出処理、および、その算出したインクの使用量を第1記憶部512に記憶されているインク使用量に加算する処理は、RAM502に格納されるプログラムに従ってCPU500が実行することができる。CPU500は、インクカートリッジ101内のインクの使用量(インクタンク内のインクの使用量)を第1記憶部512に記憶させる第1制御手段としての機能をもつ。インクの使用量を加算するタイミングは、画像の記録動作や回復処理動作等の動作途中、あるいは、それらの動作後であってもよい。
【0029】
インクカートリッジ101の第1記憶部512に記憶されたインク使用量が所定の規定値を超えると、CPU500は、そのインクカートリッジ101内のインクが使い切られたと判断して、インクが無くなったことをユーザーに通知する。その後、その使い切られたインクカートリッジ101は、使用済みインクカートリッジ110として、ユーザーより気液分離機構109に装着される。気液分離機構109に装着される4つの使用済みインクカートリッジ110は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のインクのいずれを収容していたものであってもよく、同色のインクを収容していたものが複数あってもよい。図1においては、それら4つの使用済みインクカートリッジ110がブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のインクを収容していたものとして表されている。
【0030】
気液分離機構109に装着された使用済みインクカートリッジ110においては、第2記憶部514が主として読み書きされる。第2記憶部514には、使用済みインクカートリッジ110に収容される廃インク量を加算したデータが記憶される。CPU500は、インクジェット記録装置の回復処理動作(吸引回復処理動作や予備吐出動作など)が行なわれる都度、その回復動作によって排出される廃インクの量を求め、その量を、第2記憶部514に記憶されている廃インク量に加算する。吸引回復処理動作によって排出される廃インク量は、例えば、1回の吸引回復動作によるインクの吸引量と、吸引回復動作の実施回数と、に基づいて求めることができる。CPU500は、廃インクの収容量を第2記憶部514に記憶させる第2制御部としての機能をもつ。また、予備吐出動作によって排出される廃インク量は、例えば、1回の予備吐出によるインクの吐出量と、予備吐出の実施回数と、に基づいて求めることができる。
【0031】
廃インク量は、気液分離機構109に装着された4つの使用済みインクカートリッジ110の第2記憶部514に対して、分けて加算される。その廃インク量を分ける割合は、{(インク使用量A1)−(廃インク収容量A2)}との値に応じて決める。インク使用量A1は、使用済みインクカートリッジ110がインクカートリッジ101として使用されていたときのインク使用量(第1記憶部512に記憶されているインク使用量)である。また、廃インク収容量A2は、使用済みインクカートリッジ110が現在時点において収容している廃インクの収容量(第2記憶部512に記憶されている廃インク量)である。
【0032】
図6は、4つの使用済みインクカートリッジ110の第2記憶部514に対して、廃インク量を分けて加算する例の説明図である。本例において、気液分離機構109に装着された4つの使用済みインクカートリッジ110は、便宜的に、図1のようにブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のインクを収容していたものであったと仮定する。それらの4つの使用済みインクカートリッジ110は、図6においては、「ブラック」、「シアン」、「マゼンタ」、および「イエロー」として表す。また、以下において、それらを「使用済みインクカートリッジ(K)」、「使用済みインクカートリッジ(C)」、「使用済みインクカートリッジ(M)」、および「使用済みインクカートリッジ(Y)」ともいう。
【0033】
図6の例において、4つの使用済みインクカートリッジのインク使用量A1は14.0gであり、使用済みインクカートリッジ(K)、(C)、(M)、および(Y)の値(A1−A2)は、8.0g、1.0g、2.0g、および4.0gである。加算総廃インク量(As)は、今回実施した回復処理動作(吸引回復処理動作や予備吐出動作など)によって排出された廃インクの総量である。この量Asは、(A1−A2)の値に比例して使用済みインクカートリッジ(K)、(C)、(M)、および(Y)に割り振られた上、加算廃インク量(Ad)として各使用済みインクカートリッジの量A2に加算される。本例の場合、量Asは150mgであり、この150mgを8:1:2:4の割合で振り分けた量Ad(80mg、10mg、20mg、40mg)が使用済みインクカートリッジ(K)、(C)、(M)、および(Y)の量A2に加算される。このように、回復処理動作の都度、その回復処理動作によって排出された廃インクの量Asは、(A1−A2)の値に比例して4つの使用済みインクカートリッジに割り振られて、それらのインクカートリッジの廃インク収容量A2に加算される。量Asの振り分けの割合を決定する方法は、本例のように(A1−A2)の値に比例して決定する方法のみに特定されず、例えば、それぞれの使用済みインクカートリッジ内の負圧の程度に応じて割り振ってもよい。
【0034】
使用済みインクカートリッジの廃インク収容量A2がインク使用量A1に達したときに、その使用済みインクカートリッジは廃インクによって満タンになったと判断し、その交換をユーザーに促す通知を発する。このような通知、および前述した廃インク量の一連のデータ処理は、RAM502に格納されるプログラムに従ってCPU500が実行することができる。CPU500は、使用済みインクカートリッジが廃インクによって満タンになったか否かを判定する判定手段としての機能をもつ。
【0035】
このように、吸引機構から排出された廃インクを、気液分離機構によって気体と分離してから使用済みインクカートリッジに収容することにより、廃インクを効率よく収容することができる。また、インクカートリッジに備えられたメモリ(記憶手段)を用いることにより、使用済みインクカートリッジが廃インクによって満タンとなったときを検出して、その交換時期を報知することができる。これらの結果、インクジェット記録装置の小型化および高性能化を図ることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
前述した第1の実施形態においては、インクカートリッジの内部に負圧を発生させるための負圧発生機構としてばねを用いた。本実施形態においては、その負圧発生機構としてインク吸収体が用いられる。
【0037】
図7(a)は、満タン時のインクカートリッジの断面図であり、図7(b)は、使用済みのインクカートリッジの断面図である。図7(a)において、インクカートリッジの外装402内に備えられた吸収体601は、その毛管力によりインク401を吸収保持する。インク供給口301に備わる吸収体301Aは、吸収体501よりも多孔質部の密度が密であり、吸収体501よりも毛管力が強い。そのため、吸収体301Aに保持されているインク401がインク供給口301から流出すると、その吸収体301Aの強い毛管力によって生じる負圧により、吸収体601内のインク401が吸収体301Aに流入する。このようにして、吸収体601に吸収保持されているインク401は、吸収体301Aを通してインク供給口301から記録ヘッド102に供給される。インクカートリッジ内のインクの消費に伴い、吸収体601に吸収保持されているインク401は減少し、それが使い切られたときには図7(b)のような状態となる。吸収体601内に吸収保持されているインク401の液面は、図7(a)のときよりも図7(b)のときの方が低くなり、両者においてインクの水頭差が異なる。そのため、インク401に付与される負圧は、図7(a)の満タン時よりも図7(b)の使い切り時の方が大きくなる。
【0038】
本例では、インクカートリッジの負圧発生機構として吸収体を用い、その吸収体をインクカートリッジ内部の全てに充填した。しかし、インクカートリッジ内の一部に、負圧発生機構として吸収体を備えてもよい。
【0039】
(他の実施形態)
本発明は、前述したシリアルスキャンタイプの記録装置のみならず、長尺の記録ヘッドを用いるフルラインタイプの記録装置に対しても適用することができる。要は、記録ヘッドから、画像の記録に寄与しないインクが排出される種々の記録装置に対して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
101 インクジェットカートリッジ
102 記録ヘッド
107 吸引機構
109 気液分離機構
306 キャップ
500 CPU
501 ROM
502 RAM
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容したインクに負圧を付与するための負圧発生手段を備えたインクタンクと、前記インクタンクから負圧が付与されたインクを導入して吐出口から吐出可能な記録ヘッドと、を用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドの前記吐出口から画像の記録に寄与しないインクを廃インクとして排出させる回復処理手段と、
前記回復処理手段により排出された廃インクから気体を分離させる気液分離手段と、
内部に負圧を生じさせるための負圧発生手段を備えた廃インクタンクが装着可能な装着部と、
前記装着部に装着された前記廃インクタンクの内部の負圧によって、当該廃インクタンクの内部に、前記気液分離手段によって分離された廃インクが収容されるように、前記気液分離手段によって分離された廃インクを前記廃インクタンクに導く導入手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記廃インクタンクは、内部のインクが使用された後の前記インクタンクであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インクタンクに備わる負圧発生手段は、インクを収容するインク袋と、前記インク袋を内容積の拡大方向に付勢するばね部材と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インクタンクに備わる負圧発生手段は、インクを吸収保持するインク吸収体であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記導入手段は、前記気液分離手段によって分離された廃インクを吸収保持したまま前記廃インクタンクに導く廃インク吸収体を備え、
前記廃インク吸収体の毛管力による負圧は、前記廃インクタンク内の負圧よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記廃インクタンクは、内部のインクが使用された後の前記インクタンクであり、
前記インクタンクは、第1および第2記憶手段を備え、
前記インクジェット記録装置は、
前記インクタンク内のインクの使用量を前記第1手段に記憶させる第1制御手段と、
前記インクタンクが前記廃インクタンクとして利用されるときに、廃インクの収容量を前記第2記憶手段に記憶させる第2制御手段と、
前記インクタンクが前記廃インクタンクとして利用されるときに、前記第1記憶手段に記憶されているインクの使用量と、前記第2記憶手段に記憶されている廃インクの収容量と、の差に基づいて、前記廃インクタンクが廃インクによって満タンになっているか否かを判定する判定手段と、
を備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記導入手段は、前記気液分離手段によって分離された廃インクを複数の前記廃インクタンクに導入し、
前記第2制御手段は、前記複数の廃インクタンクとして複数の前記インクタンクが利用されるときに、前記回復処理手段によって排出された廃インクの量を前記複数の廃インクタンクにおける複数の前記第2記憶手段のそれぞれに振り分けて記憶させ、その振り分けの割合は、前記第1記憶手段に記憶されているインクの使用量と、前記第2記憶手段に記憶されている廃インクの収容量と、の差に応じて決定する
ことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104820(P2011−104820A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260319(P2009−260319)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】