インクジェット記録装置
【課題】インクタンクを介して記録ヘッド内に圧力を付与する圧力付与手段を有し、インクタンクと圧力付与手段とを連通する連通路からインクが漏れ出すことを抑制させることが可能なインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】空気ファン85によって、大気連通管83を通してサブタンク80内に導入する負圧を積極的に制御する負圧制御方式において、サブタンク80内から大気連通管83内にオーバーフローしたインクをオーバーフロー検知部100によって検知する。
【解決手段】空気ファン85によって、大気連通管83を通してサブタンク80内に導入する負圧を積極的に制御する負圧制御方式において、サブタンク80内から大気連通管83内にオーバーフローしたインクをオーバーフロー検知部100によって検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、記録ヘッドのインクの吐出動作を安定化させるために、記録ヘッド内を所定の負圧に維持することが重要である。このため、一般には、記録ヘッドに負圧を付与する圧力付与手段を備えている。圧力付与手段としては、記録ヘッドに接続されるインクタンク内に収容したインク吸収体の毛管作用を利用して負圧を発生する構成、および水頭差を利用してインクに負圧を付与する構成が知られている。さらに、空気ファンの回転を制御することにより、記録ヘッドに接続されるインクタンク内の負圧を積極的に制御する負圧制御方式(特許文献1)が提案されている。
【0003】
このような負圧制御方式によって、記録ヘッドからの単位時間当たりのインクの吐出量の急激な変動に対応して、インクタンクを介して記録ヘッド内の負圧を一定に維持することができる。特に、大判サイズの記録媒体に画像を高速記録するような産業用の記録装置の場合は、単位時間当たりに記録ヘッドから吐出されるインクの量が大きく変化するため、記録ヘッド内の負圧が変動しやすくなる。負圧制御方式によって、このような産業用の記録装置における記録ヘッド内のインクの負圧を安定的に維持することにより、インクの吐出動作を安定させて、高品位の画像を高速に記録することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−326855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の負圧制御方式においては、インクタンク内に過度の負圧が生じた異常時の対処の仕方についての考慮がない。仮に、空気ファンによってインクタンクに導入する負圧が過度に大きくなった場合には、インクタンクから、空気ファンとインクタンクとの間の連通路内にインクが流入され、そのインクが連通路から漏れ出す(オーバーフロー)おそれがある。このようなオーバーフローが生じた場合には、漏れ出たインクにより、記録装置内の汚染や電気部品の破損等が引き起されるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、インクタンクを介して記録ヘッド内に圧力を付与する圧力付与手段を有し、インクタンクと圧力付与手段とを連通する連通路からインクが漏れ出すことを抑制させることが可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、インクタンクから供給されるインクを吐出口から吐出可能な記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記インクタンク内を大気に連通させる大気連通管と、前記インクタンク内の圧力を検出するための圧力センサと、前記大気連通管内に接続され、前記インクタンク内に所定の負圧を付与する圧力付与手段と、記圧力センサによって検出された圧力に基づいて、前記圧力付与手段の駆動を制御する圧力制御手段と、前記インクタンク内から前記大気連通管内にインクが流入したことを検知する検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本明細書でいう「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみに限定されない。すなわち、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する場合、および媒体の加工を行う場合も含むものとする。また、「記録媒体」(シートとも称する)とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを含むものとする。さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきものである。すなわち、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供される液体を含むものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクタンク内から大気連通管内に流入したインクを検知手段で検知することにより、大気連通管からのインクの漏れ出しを抑制することが可能となり、オーバーフローが生じた場合における記録装置内の汚染や電気部品の破損等を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の概略正面図である。
【図2】図1の記録装置の制御系のブロック構成図である。
【図3】(a)は、図1の記録装置におけるインクの供給系の概略構成図、(b)は、(a)における空気ファンの概略構成図である。
【図4】(a)は、オーバーフロー検知部の概略斜視図、(b)は、そのオーバーフロー検知部の配線図である。
【図5】オーバーフロー対策処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるインクの供給系の要部の概略構成図である。
【図7】図6におけるオーバーフロー検知部の概略斜視図である。
【図8】図7のオーバーフロー検知部の配線図である。
【図9】本発明の第3の実施形態におけるオーバーフロー検知部の概略斜視図である。
【図10】図9のオーバーフロー検知部の配線図である。
【図11】本発明の第4の実施形態におけるオーバーフロー検知部の概略構成図である。
【図12】本発明の第6の実施形態におけるインクの供給系の概略構成図である。
【図13】本発明の第6の実施形態におけるインクの排出処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の概略正面図である。
【0012】
記録装置10には、この記録装置10に画像情報を送るためのホスト装置(ホストPC)12が接続されている。記録装置10には、4つの記録ヘッド22K、22C、22M,22Yが記録媒体(ここではロール紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの記録ヘッド22K,22C,22M,22Yからは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクが吐出可能である。これら4つの記録ヘッド22K,22C,22M,22Y(以下、これらをまとめて「記録ヘッド22」ともいう)は所謂ラインヘッドであり、記録媒体としてのロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)と交差する方向に延在している。本例の場合、記録ヘッドは、搬送方向と直交する方向(図1の紙面に対して直交する方向)に延在している。記録ヘッド22は、画像の記録動作中は固定されていて動かない。記録ヘッド22には、その延在方向に沿って複数のノズルが配列されており、それぞれのノズルは、インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などが備えられている。電気熱変換素子を用いた場合には、その発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出することができる。
【0013】
記録ヘッド22がインクを安定して吐出できるように、記録装置10には、回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40の回復動作によって、記録ヘッド22は所期の良好なインク吐出状態に維持される。回復ユニット40に備わるキャッピング機構50には、回復動作のときに記録ヘッド22K,22C,22M,22Yの吐出口形成面(吐出口が形成される面)をワイピングするブレード、および吐出口をキャッピング可能なキャップなどが含まれている。
【0014】
記録媒体としてのロール紙Pは、供給ユニット24から繰り出され、記録装置10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロール紙Pを搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0015】
ロール紙Pに画像を記録する際には、搬送中のロール紙Pの記録開始位置がブラックインク吐出用の記録ヘッド22Kの下方位置に到達したときから、記録データ(画像情報)に基づいて、記録ヘッド22Kのノズルからブラックインクを吐出する。同様に、ロール紙Pの記録開始位置が記録ヘッド22C,記録ヘッド22M,およい記録ヘッド22Yの下方位置に到達したときから、記録データに基づいて、それらノズルから、シアン,マゼンタ,およびイエローのインクを吐出する。これにより、ロール紙Pにカラーの画像を記録する。記録装置10には、記録ヘッド22(22K,22C,22M,22Y)に供給されるインクを貯めておくメインタンク28(28K,28C,28M,28Y)が備えられている。さらに記録装置10には、記録ヘッド22に対してインクの供給および回復動作をするための後述するポンプなどが備えられている。
【0016】
図2は、記録装置10の制御系のブロック構成図である。
【0017】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU150に受信される。CPU150は、記録データの受信、記録動作、ロール紙Pのハンドリング等、記録装置10における制御の全般を掌る演算処理装置である。CPU150は、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描写する。
【0018】
記録動作に際しては、まず、出力ポート114およびモータ駆動部116を介して、キャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、記録ヘッド22をキャッピング機構50から離して記録位置に移動させる。その後、出力ポート114およびモータ駆動部116を介して、ロール紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)および低速度でロール紙Pを搬送する搬送モータ26b等を駆動して、ロール紙Pを記録位置に搬送する。搬送されるロール紙Pの先端を不図示の先端センサ(図示せず)によって検出することにより、一定速度で搬送されるロール紙Pに対して記録ヘッドからのインクの吐出を開始するタイミング(記録タイミング)を決定する。その後、CPU150は、ロール紙Pの搬送に同期してイメージメモリ106から記録データを順次に読み出し、その記録データを記録ヘッド22に対して記録ヘッド制御回路112を経由して転送する。
【0019】
CPU150の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラムの他、テーブルなどが記憶されている。ワークRAM108は、作業用のメモリとして使用される。記録ヘッド22のクリーニングや回復動作時に、CPU150は、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動して、記録ヘッド内のインクの加圧、および記録ヘッド内のインクの吐出口からの吸引等を制御する。
【0020】
図3において、(a)は、記録ヘッド22に対するインクの供給系の概略構成図であり、(b)は、(a)における空気ファンの要部の概略平面図である。
【0021】
記録装置10には、記録装置10の本体に対して着脱自在なメインタンク28、および、このメインタンク28と記録ヘッド22との間のインク供給路62中に配置されたサブタンク(インクタンク)80などが備えられている。サブタンク80の下方に記録ヘッド22が配置されている。サブタンク80は、記録ヘッド22K、22C、22M,22Yおよびメインタンク28K,28C,28M,28Yに個別に対応するように、計4つ配備されている。
【0022】
インク流路64は、サブタンク80の底部と、記録ヘッド22の液室22Aの上部と、の間を接続する。インク流路64には、インク流路64を開閉するための大気バルブ67が取り付けられている。サブタンク80の全体形状は直方体であり、その上部には空間82が形成されている。この空間は、通常、空気によって満たされており、インクによって満たされることはない。インクは、サブタンク80内の下部に位置している。空間82の上部は、上壁82aによって囲まれている。
【0023】
サブタンク80の上壁82aに取り付けられた大気連通管83は、記録ヘッド22内に圧力を付与する圧力付与手段である空気ファン85を通して、空間82内を大気に連通させる。大気連通管83には、それを開閉可能な大気開放バルブ84が取り付けられている。空間82は、大気開放バルブ84が開かれることにより大気と連通し、大気開放バルブ84が閉じられることにより大気と遮断される。記録装置10が稼動していないときに、大気開放バルブ84が閉じられることにより、サブタンク80内のインクの蒸発が防止される。サブタンク80には、その内部に貯められているインクの量を検出するために、インクの液面レベルを検知するための周知の液面センサ86(液体残量検出手段)が取り付けられている。本例の液面センサ86は、サブタンク80内のインク残量に応じて、電極86a,86b,86cの相互間の導通状態が変化し、インクの液面レベルを第1,第2,第3の範囲の3段階に検出する。第1の範囲は下限レベルLA未満、第2の範囲は下限レベルLA以上かつ上限レベルLB未満、第3の範囲は上限レベルLB以上である。
【0024】
大気開放バルブ84を開いて、空気ファン85を一方向(図3(b)中の矢印C1方向)回転させることにより、空間82内の空気の一部が大気連通管83を通って外部に排出される。この結果、空間82内の圧力が大気圧よりも低くなり、この低い圧力は、サブタンク80内、インク流路64内、液室22A内、およびノズルN内に作用して、インクタンクを介して記録ヘッドに負圧(大気圧よりも低い圧力)を与える。一方、大気開放バルブ84を開いて、空気ファン85を他方向(図3(b)中の矢印C2方向)に逆転させることにより、空間82内には、大気連通管83を通して外部の空気が導入される。この結果、空間82内の圧力が大気圧よりも高くなり、この高い圧力は、サブタンク80内、インク流路64内、液室22A内、およびノズルN内のインクに作用して、インクに正圧(大気圧よりも高い圧力)を作用させる。このように、空気ファン85の回転方向に応じて、サブタンク80の空間82内の圧力を減圧方向および加圧方向に制御することができる。さらに、空気ファン85の回転速度に応じて、空間82内の減圧の程度および加圧の程度を積極的に制御することができる。このように、空気ファン85は、その回転方向および回転速度が制御可能である。
【0025】
メインタンク28には、その内部におけるインクの有無を検出するための検出センサ(図示せず)が取り付けられている。メインタンク28は、記録装置10の本体に装着されたときにエアー流路に接続され、そのエアー流路には、メインタンク28の内部に大気圧を導入するための大気開放バルブ(タンクバルブ)74が取り付けられている。液面センサ86によって、サブタンク80内のインクの液面が下限レベルLA未満となったことが検知されたときは、タンクバルブ74が開放され、供給ポンプ72が作動を開始して、メインタンク28内のインクがサブタンク80内に供給される。一方、液面センサ86によって、サブタンク80内のインクの液面が上限レベルLB以上となったことが検知されたときは、供給ポンプ72が停止し、タンクバルブ74が密閉されて、サブタンク80内へのインクの供給が停止する。供給ポンプ72としてはチューブポンプが用いられ、それが作動していないときは、メインタンク28とサブタンク80との間の流路が遮断される。これにより、サブタンク80内のインクの液面は、下限レベルLA以上かつ上限レベルLB未満の所定範囲内に維持される。このように、液面センサ86の検知信号に基づいて供給ポンプ72が作動することにより、メインタンク内(メインインクタンク内)のインクがサブタンク内(インクタンク内)に供給される。
【0026】
記録ヘッド22がインク滴を良好に吐出するために、記録ヘッド22内に所定の負圧を付与して、ノズルNの先端の吐出口にインクのメニスカスを形成する必要がある。このような負圧を付与するためには、前述したように、大気バルブ67と大気開放バルブ84を開放して、サブタンク80内を減圧させるように空気ファン85を矢印C1方向に回転させる。サブタンク80の空間82内の圧力は、圧力センサ103によって検出される。本例の圧力センサ103は、オーバーフロー検知部100とサブタンク80との間における大気連通管83の部分に備えられている。大気連通管内の空気ファン85は、サブタンク内(インクタンク内)に所定の負圧を付与する圧力制御ために、圧力センサ103によって検出された圧力に基づいて回転制御される。
【0027】
記録動作の実行中に、液面センサ86によってサブタンク80内のインクの液面が下限レベルLA未満になったことが検知された場合には、タンクバルブ74を開放し、インク供給ポンプ72を作動させて、サブタンク80内にインクを供給する。このようなサブタンク80内へのインクの供給は、液面センサ86によってインクの液面が上限レベルLB以上となったことが検知されるまで続行する。このようなサブタンク80内へのインクの供給時には、サブタンク80内に流入するインクの体積に相当する空気を空気ファン85によって直ちに外部に排出して、サブタンク80内の圧力の変動を一定の許容範囲内に抑える必要がある。そのサブタンク80内の圧力は、圧力センサ103によって検出される。空気ファン85には、このような条件を満たすようにサブタンク80内の空気を排出する能力が要求される。空気ファン85の設置スペース等の問題から、このような条件を満たす空気ファンが設置できない場合には、一時的に記録動作を休止してから、サブタンク80内にインクを供給してもよい。サブタンク80内へのインクの供給が終了した後は、インク供給ポンプ72が停止し、タンクバルブ74が密閉される。
【0028】
圧力付与手段である空気ファン85は、大気連通管83を通して、サブタンク80の空間82内に所定の圧力を付与することができるものであればよく、その構成は限定されない。例えば、歯車ポンプ(ギアポンプ)、ねじポンプ等、通常の液体移送用のポンプを使用することができる。好ましくは、空気ファン85は、一般的にターボ形ポンプと称されるポンプである。その理由は、ターボ形式の空気ファンであれば、サブタンク80内に一定範囲の負圧を作用させたまま、大気との間で空気の出入りを制御できて、サブタンク80内の負圧に大きな変動を及ぼしにくいからである。上述したように、空気ファン85によってサブタンク80内を減圧した後、記録動作中におけるインクの消費、およびメインタンク28からサブタンク80へのインクの供給によって、サブタンク80に対してインクの流入出がある。
【0029】
大気バルブ67および大気開放バルブ84としては、ソレノイドのプランジャーに一体化されたバルブシート132によって流路を遮断する電磁バルブを採用することができる。勿論、これらのバブルとしては、種々の方式のものを採用することができる。
【0030】
オーバーフロー検知部100は、サブタンク80内から大気連通管83内に流入(オーバーフロー)したインクを検知して、オーバーフロー制御部110にオーバーフローの発生を通知する。
【0031】
図4(a)は、オーバーフロー検知部100の構成を説明するための概略斜視図である。オーバーフロー検知部100は、サブタンク80と大気開放バルブ84との間の大気連通管83に備えられている。サブタンク80内から大気連通管83内にオーバーフローしたインクがオーバーフロー検知部100の内部に達したときに、そのオーバーフローしたインクが対の電極31,32の間に介在して、インクを介して電極を導通状態とする。このように、電極31,32が導通状態となることにより、インクのオーバーフローを検知する。オーバーフロー検知部100は、図4(b)のようにオーバーフロー制御部110に接続されている。すなわち、電極31,32の一方が電源に接続され、他方がオーバーフロー制御部110に接続されており、オーバーフローしたインクによって電極31,32が導通状態となったときに、オーバーフロー制御部110に電圧が印加される。これにより、オーバーフロー制御部110に対して、サブタンク80内から大気連通管83内にインクが流入した状態であるオーバーフローの発生が通知される。
【0032】
オーバーフロー検知部100は、大気連通管83において鉛直方向に延在する部分(サブタンクから上方に延在する部分)に備えられている。これにより、後述するオーバーフロー制御において負圧の維持およびインクの供給を停止したときに、特別な制御を必要とせずに、オーバーフローしたインクをその自重によってサブタンク80内に戻すことができる。
【0033】
図5は、オーバーフローが検知されたときのオーバーフロー対策処理を説明するためのフローチャートである。このオーバーフロー対策処理は、オーバーフロー検知部100がインクのオーバーフローを検出したときに、CPU150(図2参照)の制御下にあるオーバーフロー制御部110によって実行される。オーバーフロー制御部110は、定期的、または、記録装置の起動時等の特定の時期に、オーバーフロー検知部100がインクのオーバーフローを検出したか否かを確認する。
【0034】
オーバーフロー制御部110は、オーバーフロー検知部100からオーバーフローの検知の通知を受けてから、まずは、空気ファン85を停止し(ステップS1)、大気開放バルブ84を閉じ(ステップS2)、供給ポンプ72を停止する(ステップS3)。これらの処理ステップS102,S103,S104においては、ハードウェアによって空気ファン85、大気開放バルブ84、供給ポンプ72を停止させるように、それらの電源を遮断。これらの処理により、サブタンク80内に対して負圧が導入されず、サブタンク80内へのインク供給も停止する。これにより、オーバーフローしたインクの外部への溢れ出し、および、それに伴う電気部品の破損を防止することができる。
【0035】
次に、液面センサ86が上限レベルLB以上のインクの液面を検出しているか否かを判定する。(ステップS4)。上限レベルLB以上のインクの液面が検出されている場合には、液面センサ86が正しく動作していると考えられ、その液面センサ86はオーバーフローの原因ではないと考えられる。その場合には、供給ポンプ72の動作命令(ポンプモータ124の駆動命令)が出ているか否かを判定する(ステップS5)。供給ポンプモータの動作命令が出ていた場合には、液面センサ86が正しく動作して上限レベルLB以上のインクを検知しているにも拘らず、サブタンク80内にインクを供給するように供給ポンプ72が動作していることになる。この場合には、オーバーフローの原因はソフトウェアの暴走であると判定され(ステップS6)、その判定結果がCPU150に通知される(ステップS7)。ステップS12は、後述する第6の実施形態における処理である。
【0036】
ステップS5の判定において、供給ポンプ72の動作命令が出ていない場合には、液面センサ86が正しく動作して上限レベルLB以上のインクを検知し、かつ供給ポンプ72の動作命令が出ていないにも拘わらず、供給ポンプ72が動作していることになる。この場合には、オーバーフローの原因は供給ポンプ72の故障であると判定され(ステップS8)、その判定結果がCPU150に通知される(ステップS7)。
【0037】
ステップS4の判定において、液面センサ86が上限レベルLB以上のインクを検知していない場合には、オーバーフロー検知部100がインクのオーバーフローを検知しているにも拘わらず、液面センサ86が上限レベル以上のインクを検出していない。そのため、この場合には、液面センサ86が正しく動作していないと考えられる。この場合には、供給ポンプ72の動作命令が出ているか否かを判定する(ステップS9)。供給ポンプ72の動作命令が出ていた場合には、液面センサ86が正しく動作しておらず、それが上限レベルLB以上のインクを検出できないために、供給ポンプ72を停止させることができないと考えられる。この場合には、インクのオーバーフローの発生原因は液面センサ86の故障にあると判定し(ステップS10)、その判定結果がCPU150に通知される(ステップS7)。
【0038】
ステップS9の判定において、供給ポンプ72の動作命令が出ていない場合には、液面センサ86が正しく動作せずに上限レベル以上のインクを検知できず、かつ供給ポンプ72の動作命令が出ていないにも拘わらず、供給ポンプ72が動作していると考えられる。この場合には、インクのオーバーフローの原因は、液面センサ86と供給ポンプ72の故障、およびソフトウェアの暴走にあると判定され(S112)、その判定結果がCPU150に通知される(ステップS7)。
【0039】
このように液面センサ86の検出信号および供給ポンプ72の動作状況に基づいて、インクのオーバーフローの発生原因が判定される。その判定結果の通知を受けたCPU150は、その判定結果をユーザーに報知する。例えば、判定結果を記録装置の表示部に表示したり、外部のホスト装置に通知したりすることができる。また、オーバーフローの原因に応じて、その影響を回避するために必要な処理を報知したり、実行したりすることもできる。
【0040】
このように本実施形態においては、記録装置に、サブタンク内からのインクのオーバーフローを検知するためのオーバーフロー検知部を備える。そして、そのオーバーフロー検知部がインクのオーバーフローを検知したときに、サブタンク82とファン85とを連通する大気連通管83を大気開放バルブ84によって閉じると共に、サブタンクに対するインクの供給動作を停止させる。これにより、オーバーフローしたインクの外部への溢れ出し、および、それに伴う電気部品の破損を防止することができる。また、オーバーフローの原因を判定することにより、異常が発生した部分を円滑に修復し、記録装置を早期に復旧させることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
上述した実施形態においては、1つのサブタンク80に対して、1つのオーバーフロー検知部100と1つのオーバーフロー制御部110を備えた。本実施形態においては、図6のように、記録ヘッド22K,22C,22M,22Yに個別に対応する計4つのサブタンク80K,80C,80M,80Yに対して、1つのオーバーフロー検知部200と1つのオーバーフロー制御部210を備える。すなわち、サブタンク80K,80C,80M,80Yのそれぞれに対応する大気連通管83K,83C,83M,83Yに対して、共通のオーバーフロー検知部200が備わる。大気連通管83K,83C,83M,83Yは、1つの集合管87に集合され、その集合管87に、1つのオーバーフロー制御部210によって制御される大気開放バルブ84と空気ファン85が備えられている。図6においては、サブタンク80から記録ヘッド22に対するインクの供給系、およびメインタンク28からサブタンク80に対するインクの供給系の図示は省略している。
【0042】
図7は、オーバーフロー検知部200の概略斜視図、図8は、オーバーフロー検知部200とオーバーフロー制御部210との間の配線図である。
【0043】
ブラック、シアン、マゼンタ、またはイエローのインクのいずれかが対応する大気連通管83K,83C,83M,83Y内にオーバーフローしたときに、そのオーバーフローしたインクによって電極31,32が導通状態となる。したがって、共通のオーバーフロー検知部200によって、ブラック、シアン、マゼンタ、またはイエローのインクのいずれかがオーバーフローしたことが検知できる。オーバーフロー制御部110は、オーバーフロー検知部200がインクのオーバーフローを検知したときに、サブタンク80K,80C,80M,80Yに対する負圧の供給系を閉じると共に、それらのサブクタンクに対するインクの供給動作を停止させる。これにより、オーバーフローしたインクの外部への溢れ出し、および、それに伴う電気部品の破損を防止することができる。また、オーバーフロー制御部110およびCPU150は、オーバーフロー検知部200がインクのオーバーフローを検知したときに、オーバーフローの発生を報知したり、それに対処する必要な処理を促したりすることができる。
【0044】
(第3の実施形態)
図9は、上述した共通のオーバーフロー検知部200の他の構成例を説明するための概略斜視図、図10は、そのオーバーフロー検知部200とオーバーフロー制御部210との間の配線図である。
【0045】
本例のオーバーフロー検知部200は、電極31は、大気連通管83K,83C,83M,83Yに対して共通に備わり、電極32は、大気連通管83K,83C,83M,83Yに対する個別の電極32K,32C,32M,32Yとして備えられている。したがって、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクのオーバーフローを個別に検知することができる。すなわち、ブラックインクがオーバーフローしたときは電極31,32Kが導通状態となり、シアンインクがオーバーフローしたときは電極31,32Cが導通状態となる。同様に、マゼンタインクがオーバーフローしたときは電極31,32Mが導通状態となり、イエローインクがオーバーフローしたときは電極31,32Yが導通状態となる。
【0046】
したがって、前述した第1の実施形態と同様に、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクのオーバーフローを個別に検出して、そのオーバーフローに対処することができる。
【0047】
(第4の実施形態)
上述した実施形態においては、オーバーフロー検知部は電極を用いる構成となっている。しかし、オーバーフロー検知部の構成は、これに限定されるものではなく、本実施形態のように光センサを用いた構成としてもよい。
【0048】
図11は、本例のオーバーフロー検知部301の概略構成図であり、発光素子301Aとしての発光ダイオードと、受光素子301Bとしてのフォトトランジスタが備えられている。このオーバーフロー検知部301は、サブタンク80から大気連通管83内にインクがオーバーフローしたときに、そのインクが発光素子301Aと受光素子301Bとの間の光路中に介在するように備えられている。サブタンク80から大気連通管83内にインクがオーバーフローしたときに、そのインクが発光素子301Aと受光素子301Bとの間の光路中に介在することにより、その光路が遮断されて、電源電圧がオーバーフロー制御部110に印加される。これにより、インクのオーバーフローをオーバーフローが検知されて、オーバーフロー制御部110に通知される。
【0049】
(第5の実施形態)
インクのオーバーフローは、空気ファン85のトルク変化に基づいて検出することもできる。
【0050】
サブタンク80から大気連通管83内にインクがオーバーフローしたときには、空気ファン85に掛かる負荷トルクが増大する。したがって、その空気ファン85の負荷トルクを検出することにより、インクのオーバーフローを検知することができる。その負荷トルクは、例えば、空気ファン85の駆動回路に不図示の検出回路を備え、その検出回路による空気ファン85の駆動電流の検出値から検出することができる。また、空気ファン85に不図示のトルク検出器を直接取り付けてもよい。また、空気ファン85において、オーバーフローしたインクが流入するおそれがある部分に対しては、絶縁性コーティング部材などによってコーティングする。
【0051】
(第6の実施形態)
図12は、本発明の第6の実施形態におけるインクの供給系の概略構成図であり、前述した実施形態における図3(a)と同様の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
本実施形態においては、大気開放バルブ84と空気ファン85との間における大気連通管83の部分から、インク排出管88が分岐されており、その分岐部分に、オーバーフロー検知部100が備えられている。インク排出管88は、ポンプ入口バルブ89および回復ポンプ130を介して、廃インクを収容する廃インクタンク140に接続されており、オーバーフロー検知部100までオーバーフローしたインクを廃インクタンク140に排出できる構成となっている。オーバーフロー検知部100には、対の電極101A,101Bが備えられている。ポンプ入口バルブ89を閉じた状態において、オーバーフローしたインクがオーバーフロー検知部100内に入って、そのインクの液面が電極101A,101Bの位置にまで上昇したときに、それらの電極101A,101Bがインクにより電気的に接続される。電極101A,101Bが電気的に接続されることにより、インクのオーバーフローを検出することができる。オーバーフロー検知部100と空気ファン85との間には、ファン入口バルブ105が備えられている。
【0053】
回復ポンプ130は、吸引管90を介してキャッピング機構50に接続されている。この吸引管90を通して、回復ポンプ130が発生した負圧をキャッピング機構の内部に付与することにより、記録ヘッド22内のインクをノズルNを通してキャップ内に吸引排出したり、キャップ内に排出されたインクを廃インクタンク内に排出可能である。吸引管90には吸引バルブ91が取り付けられている。本例の回復ポンプ130は、正転および逆転可能となっている。すなわち、キャップ内のインクを吸引管90を通して廃インクタンク140内に吸引するときには、回復ポンプ130が一方向に回転(正転)する。一方、大気連通管83内にオーバーフローしたインクをインク排出管88を通して廃インクタンク140内に排出するときには、回復ポンプ130が他方向に回転(逆転)する。サブタンク80とオーバーフロー検知部100との間のインク排出管88の部分には、フィルタ92が備えられている。サブタンク80には、大気開放管93と開放バルブ94が備えられている。
【0054】
本実施形態におけるオーバーフロー制御部110は、基本的に、前述した第1の実施形態における図5と同様のオーバーフロー対策処理を実行する。ただし、本実施形態においては、図5中のステップS12のように、オーバーフローの発生原因を検知した後に、オーバーフローしたインクを排出するための排出処理を行う。
【0055】
図13は、その排出処理を説明するためのフローチャートである。
【0056】
まずは、大気開放バルブ84と開放バルブ94を開き、かつファン入口バルブ105と大気バルブ67と吸引バルブ91を閉じてから(ステップS21)、ポンプ入口バルブ89を開く(ステップS22)。その後、回復ポンプ130を逆転駆動して、大気連通管83内にオーバーフローしたインクを廃インクタンク140内に排出する(ステップS23)。このような排出処理により、開放バルブ94を通してサブタンク80内に外気が導入され、フィルタ92にメニスカスを形成していたインクも強制的に排出される。これにより、フィルタ92はクリーニングされて、インクによる目詰まりのない正常な状態に回復される。フィルタ92にメニスカスを形成していたインクは、そのフィルタ92のインクの通過を阻害するため、回復ポンプ130を用いずに、水頭差を利用してフィルタ92を通してインクを移動させることは困難である。
【0057】
回復ポンプ130を逆転駆動させる時間は、大気連通管83内にオーバーフローしたインクの排出に要する時間に設定すればよく、例えば、オーバーフロー検知部100がオーバーフローしたインクを検出しなくなったときを基準にして設定してもよい。
【0058】
(他の実施形態)
空気ファン85は、サブタンク80毎の大気連通管83に対して個別に備える他、それらの大気連通管83に対して1つだけ共通に備えてもよい。この場合には、サブタンク80毎の大気連通管83にバルブを備え、それらのバルブの開度に応じて、サブタンク80毎の負圧を個別に制御することもできる。
【0059】
また、サブタンク80と記録ヘッド22との間に、循環ポンプを備えたインクの循環路を形成してもよい。この場合には、必要に応じて循環ポンプを作動させることにより、サブタンク80と記録ヘッド22との間において循環路を通してインクを循環させることができる。
【0060】
前述した実施形態は、記録媒体の幅方向に延在する長尺な記録ヘッドを用いたフルラインタイプの記録装置としての適用例である。しかし、本願発明は、記録ヘッドの主走査と、記録媒体の復走査と、を伴うシリアルスキャンタイプの記録装置に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
22(22K、22C、22M、22Y) 記録ヘッド
80 サブタンク(インクタンク)
83 大気連通管
84 大気開放バルブ
85 空気ファン
100 オーバーフロー検知部
103 圧力センサ
110 オーバーフロー制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、記録ヘッドのインクの吐出動作を安定化させるために、記録ヘッド内を所定の負圧に維持することが重要である。このため、一般には、記録ヘッドに負圧を付与する圧力付与手段を備えている。圧力付与手段としては、記録ヘッドに接続されるインクタンク内に収容したインク吸収体の毛管作用を利用して負圧を発生する構成、および水頭差を利用してインクに負圧を付与する構成が知られている。さらに、空気ファンの回転を制御することにより、記録ヘッドに接続されるインクタンク内の負圧を積極的に制御する負圧制御方式(特許文献1)が提案されている。
【0003】
このような負圧制御方式によって、記録ヘッドからの単位時間当たりのインクの吐出量の急激な変動に対応して、インクタンクを介して記録ヘッド内の負圧を一定に維持することができる。特に、大判サイズの記録媒体に画像を高速記録するような産業用の記録装置の場合は、単位時間当たりに記録ヘッドから吐出されるインクの量が大きく変化するため、記録ヘッド内の負圧が変動しやすくなる。負圧制御方式によって、このような産業用の記録装置における記録ヘッド内のインクの負圧を安定的に維持することにより、インクの吐出動作を安定させて、高品位の画像を高速に記録することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−326855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の負圧制御方式においては、インクタンク内に過度の負圧が生じた異常時の対処の仕方についての考慮がない。仮に、空気ファンによってインクタンクに導入する負圧が過度に大きくなった場合には、インクタンクから、空気ファンとインクタンクとの間の連通路内にインクが流入され、そのインクが連通路から漏れ出す(オーバーフロー)おそれがある。このようなオーバーフローが生じた場合には、漏れ出たインクにより、記録装置内の汚染や電気部品の破損等が引き起されるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、インクタンクを介して記録ヘッド内に圧力を付与する圧力付与手段を有し、インクタンクと圧力付与手段とを連通する連通路からインクが漏れ出すことを抑制させることが可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、インクタンクから供給されるインクを吐出口から吐出可能な記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記インクタンク内を大気に連通させる大気連通管と、前記インクタンク内の圧力を検出するための圧力センサと、前記大気連通管内に接続され、前記インクタンク内に所定の負圧を付与する圧力付与手段と、記圧力センサによって検出された圧力に基づいて、前記圧力付与手段の駆動を制御する圧力制御手段と、前記インクタンク内から前記大気連通管内にインクが流入したことを検知する検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本明細書でいう「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみに限定されない。すなわち、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する場合、および媒体の加工を行う場合も含むものとする。また、「記録媒体」(シートとも称する)とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを含むものとする。さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきものである。すなわち、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供される液体を含むものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクタンク内から大気連通管内に流入したインクを検知手段で検知することにより、大気連通管からのインクの漏れ出しを抑制することが可能となり、オーバーフローが生じた場合における記録装置内の汚染や電気部品の破損等を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の概略正面図である。
【図2】図1の記録装置の制御系のブロック構成図である。
【図3】(a)は、図1の記録装置におけるインクの供給系の概略構成図、(b)は、(a)における空気ファンの概略構成図である。
【図4】(a)は、オーバーフロー検知部の概略斜視図、(b)は、そのオーバーフロー検知部の配線図である。
【図5】オーバーフロー対策処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるインクの供給系の要部の概略構成図である。
【図7】図6におけるオーバーフロー検知部の概略斜視図である。
【図8】図7のオーバーフロー検知部の配線図である。
【図9】本発明の第3の実施形態におけるオーバーフロー検知部の概略斜視図である。
【図10】図9のオーバーフロー検知部の配線図である。
【図11】本発明の第4の実施形態におけるオーバーフロー検知部の概略構成図である。
【図12】本発明の第6の実施形態におけるインクの供給系の概略構成図である。
【図13】本発明の第6の実施形態におけるインクの排出処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の概略正面図である。
【0012】
記録装置10には、この記録装置10に画像情報を送るためのホスト装置(ホストPC)12が接続されている。記録装置10には、4つの記録ヘッド22K、22C、22M,22Yが記録媒体(ここではロール紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの記録ヘッド22K,22C,22M,22Yからは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクが吐出可能である。これら4つの記録ヘッド22K,22C,22M,22Y(以下、これらをまとめて「記録ヘッド22」ともいう)は所謂ラインヘッドであり、記録媒体としてのロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)と交差する方向に延在している。本例の場合、記録ヘッドは、搬送方向と直交する方向(図1の紙面に対して直交する方向)に延在している。記録ヘッド22は、画像の記録動作中は固定されていて動かない。記録ヘッド22には、その延在方向に沿って複数のノズルが配列されており、それぞれのノズルは、インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などが備えられている。電気熱変換素子を用いた場合には、その発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出することができる。
【0013】
記録ヘッド22がインクを安定して吐出できるように、記録装置10には、回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40の回復動作によって、記録ヘッド22は所期の良好なインク吐出状態に維持される。回復ユニット40に備わるキャッピング機構50には、回復動作のときに記録ヘッド22K,22C,22M,22Yの吐出口形成面(吐出口が形成される面)をワイピングするブレード、および吐出口をキャッピング可能なキャップなどが含まれている。
【0014】
記録媒体としてのロール紙Pは、供給ユニット24から繰り出され、記録装置10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロール紙Pを搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0015】
ロール紙Pに画像を記録する際には、搬送中のロール紙Pの記録開始位置がブラックインク吐出用の記録ヘッド22Kの下方位置に到達したときから、記録データ(画像情報)に基づいて、記録ヘッド22Kのノズルからブラックインクを吐出する。同様に、ロール紙Pの記録開始位置が記録ヘッド22C,記録ヘッド22M,およい記録ヘッド22Yの下方位置に到達したときから、記録データに基づいて、それらノズルから、シアン,マゼンタ,およびイエローのインクを吐出する。これにより、ロール紙Pにカラーの画像を記録する。記録装置10には、記録ヘッド22(22K,22C,22M,22Y)に供給されるインクを貯めておくメインタンク28(28K,28C,28M,28Y)が備えられている。さらに記録装置10には、記録ヘッド22に対してインクの供給および回復動作をするための後述するポンプなどが備えられている。
【0016】
図2は、記録装置10の制御系のブロック構成図である。
【0017】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU150に受信される。CPU150は、記録データの受信、記録動作、ロール紙Pのハンドリング等、記録装置10における制御の全般を掌る演算処理装置である。CPU150は、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描写する。
【0018】
記録動作に際しては、まず、出力ポート114およびモータ駆動部116を介して、キャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、記録ヘッド22をキャッピング機構50から離して記録位置に移動させる。その後、出力ポート114およびモータ駆動部116を介して、ロール紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)および低速度でロール紙Pを搬送する搬送モータ26b等を駆動して、ロール紙Pを記録位置に搬送する。搬送されるロール紙Pの先端を不図示の先端センサ(図示せず)によって検出することにより、一定速度で搬送されるロール紙Pに対して記録ヘッドからのインクの吐出を開始するタイミング(記録タイミング)を決定する。その後、CPU150は、ロール紙Pの搬送に同期してイメージメモリ106から記録データを順次に読み出し、その記録データを記録ヘッド22に対して記録ヘッド制御回路112を経由して転送する。
【0019】
CPU150の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラムの他、テーブルなどが記憶されている。ワークRAM108は、作業用のメモリとして使用される。記録ヘッド22のクリーニングや回復動作時に、CPU150は、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動して、記録ヘッド内のインクの加圧、および記録ヘッド内のインクの吐出口からの吸引等を制御する。
【0020】
図3において、(a)は、記録ヘッド22に対するインクの供給系の概略構成図であり、(b)は、(a)における空気ファンの要部の概略平面図である。
【0021】
記録装置10には、記録装置10の本体に対して着脱自在なメインタンク28、および、このメインタンク28と記録ヘッド22との間のインク供給路62中に配置されたサブタンク(インクタンク)80などが備えられている。サブタンク80の下方に記録ヘッド22が配置されている。サブタンク80は、記録ヘッド22K、22C、22M,22Yおよびメインタンク28K,28C,28M,28Yに個別に対応するように、計4つ配備されている。
【0022】
インク流路64は、サブタンク80の底部と、記録ヘッド22の液室22Aの上部と、の間を接続する。インク流路64には、インク流路64を開閉するための大気バルブ67が取り付けられている。サブタンク80の全体形状は直方体であり、その上部には空間82が形成されている。この空間は、通常、空気によって満たされており、インクによって満たされることはない。インクは、サブタンク80内の下部に位置している。空間82の上部は、上壁82aによって囲まれている。
【0023】
サブタンク80の上壁82aに取り付けられた大気連通管83は、記録ヘッド22内に圧力を付与する圧力付与手段である空気ファン85を通して、空間82内を大気に連通させる。大気連通管83には、それを開閉可能な大気開放バルブ84が取り付けられている。空間82は、大気開放バルブ84が開かれることにより大気と連通し、大気開放バルブ84が閉じられることにより大気と遮断される。記録装置10が稼動していないときに、大気開放バルブ84が閉じられることにより、サブタンク80内のインクの蒸発が防止される。サブタンク80には、その内部に貯められているインクの量を検出するために、インクの液面レベルを検知するための周知の液面センサ86(液体残量検出手段)が取り付けられている。本例の液面センサ86は、サブタンク80内のインク残量に応じて、電極86a,86b,86cの相互間の導通状態が変化し、インクの液面レベルを第1,第2,第3の範囲の3段階に検出する。第1の範囲は下限レベルLA未満、第2の範囲は下限レベルLA以上かつ上限レベルLB未満、第3の範囲は上限レベルLB以上である。
【0024】
大気開放バルブ84を開いて、空気ファン85を一方向(図3(b)中の矢印C1方向)回転させることにより、空間82内の空気の一部が大気連通管83を通って外部に排出される。この結果、空間82内の圧力が大気圧よりも低くなり、この低い圧力は、サブタンク80内、インク流路64内、液室22A内、およびノズルN内に作用して、インクタンクを介して記録ヘッドに負圧(大気圧よりも低い圧力)を与える。一方、大気開放バルブ84を開いて、空気ファン85を他方向(図3(b)中の矢印C2方向)に逆転させることにより、空間82内には、大気連通管83を通して外部の空気が導入される。この結果、空間82内の圧力が大気圧よりも高くなり、この高い圧力は、サブタンク80内、インク流路64内、液室22A内、およびノズルN内のインクに作用して、インクに正圧(大気圧よりも高い圧力)を作用させる。このように、空気ファン85の回転方向に応じて、サブタンク80の空間82内の圧力を減圧方向および加圧方向に制御することができる。さらに、空気ファン85の回転速度に応じて、空間82内の減圧の程度および加圧の程度を積極的に制御することができる。このように、空気ファン85は、その回転方向および回転速度が制御可能である。
【0025】
メインタンク28には、その内部におけるインクの有無を検出するための検出センサ(図示せず)が取り付けられている。メインタンク28は、記録装置10の本体に装着されたときにエアー流路に接続され、そのエアー流路には、メインタンク28の内部に大気圧を導入するための大気開放バルブ(タンクバルブ)74が取り付けられている。液面センサ86によって、サブタンク80内のインクの液面が下限レベルLA未満となったことが検知されたときは、タンクバルブ74が開放され、供給ポンプ72が作動を開始して、メインタンク28内のインクがサブタンク80内に供給される。一方、液面センサ86によって、サブタンク80内のインクの液面が上限レベルLB以上となったことが検知されたときは、供給ポンプ72が停止し、タンクバルブ74が密閉されて、サブタンク80内へのインクの供給が停止する。供給ポンプ72としてはチューブポンプが用いられ、それが作動していないときは、メインタンク28とサブタンク80との間の流路が遮断される。これにより、サブタンク80内のインクの液面は、下限レベルLA以上かつ上限レベルLB未満の所定範囲内に維持される。このように、液面センサ86の検知信号に基づいて供給ポンプ72が作動することにより、メインタンク内(メインインクタンク内)のインクがサブタンク内(インクタンク内)に供給される。
【0026】
記録ヘッド22がインク滴を良好に吐出するために、記録ヘッド22内に所定の負圧を付与して、ノズルNの先端の吐出口にインクのメニスカスを形成する必要がある。このような負圧を付与するためには、前述したように、大気バルブ67と大気開放バルブ84を開放して、サブタンク80内を減圧させるように空気ファン85を矢印C1方向に回転させる。サブタンク80の空間82内の圧力は、圧力センサ103によって検出される。本例の圧力センサ103は、オーバーフロー検知部100とサブタンク80との間における大気連通管83の部分に備えられている。大気連通管内の空気ファン85は、サブタンク内(インクタンク内)に所定の負圧を付与する圧力制御ために、圧力センサ103によって検出された圧力に基づいて回転制御される。
【0027】
記録動作の実行中に、液面センサ86によってサブタンク80内のインクの液面が下限レベルLA未満になったことが検知された場合には、タンクバルブ74を開放し、インク供給ポンプ72を作動させて、サブタンク80内にインクを供給する。このようなサブタンク80内へのインクの供給は、液面センサ86によってインクの液面が上限レベルLB以上となったことが検知されるまで続行する。このようなサブタンク80内へのインクの供給時には、サブタンク80内に流入するインクの体積に相当する空気を空気ファン85によって直ちに外部に排出して、サブタンク80内の圧力の変動を一定の許容範囲内に抑える必要がある。そのサブタンク80内の圧力は、圧力センサ103によって検出される。空気ファン85には、このような条件を満たすようにサブタンク80内の空気を排出する能力が要求される。空気ファン85の設置スペース等の問題から、このような条件を満たす空気ファンが設置できない場合には、一時的に記録動作を休止してから、サブタンク80内にインクを供給してもよい。サブタンク80内へのインクの供給が終了した後は、インク供給ポンプ72が停止し、タンクバルブ74が密閉される。
【0028】
圧力付与手段である空気ファン85は、大気連通管83を通して、サブタンク80の空間82内に所定の圧力を付与することができるものであればよく、その構成は限定されない。例えば、歯車ポンプ(ギアポンプ)、ねじポンプ等、通常の液体移送用のポンプを使用することができる。好ましくは、空気ファン85は、一般的にターボ形ポンプと称されるポンプである。その理由は、ターボ形式の空気ファンであれば、サブタンク80内に一定範囲の負圧を作用させたまま、大気との間で空気の出入りを制御できて、サブタンク80内の負圧に大きな変動を及ぼしにくいからである。上述したように、空気ファン85によってサブタンク80内を減圧した後、記録動作中におけるインクの消費、およびメインタンク28からサブタンク80へのインクの供給によって、サブタンク80に対してインクの流入出がある。
【0029】
大気バルブ67および大気開放バルブ84としては、ソレノイドのプランジャーに一体化されたバルブシート132によって流路を遮断する電磁バルブを採用することができる。勿論、これらのバブルとしては、種々の方式のものを採用することができる。
【0030】
オーバーフロー検知部100は、サブタンク80内から大気連通管83内に流入(オーバーフロー)したインクを検知して、オーバーフロー制御部110にオーバーフローの発生を通知する。
【0031】
図4(a)は、オーバーフロー検知部100の構成を説明するための概略斜視図である。オーバーフロー検知部100は、サブタンク80と大気開放バルブ84との間の大気連通管83に備えられている。サブタンク80内から大気連通管83内にオーバーフローしたインクがオーバーフロー検知部100の内部に達したときに、そのオーバーフローしたインクが対の電極31,32の間に介在して、インクを介して電極を導通状態とする。このように、電極31,32が導通状態となることにより、インクのオーバーフローを検知する。オーバーフロー検知部100は、図4(b)のようにオーバーフロー制御部110に接続されている。すなわち、電極31,32の一方が電源に接続され、他方がオーバーフロー制御部110に接続されており、オーバーフローしたインクによって電極31,32が導通状態となったときに、オーバーフロー制御部110に電圧が印加される。これにより、オーバーフロー制御部110に対して、サブタンク80内から大気連通管83内にインクが流入した状態であるオーバーフローの発生が通知される。
【0032】
オーバーフロー検知部100は、大気連通管83において鉛直方向に延在する部分(サブタンクから上方に延在する部分)に備えられている。これにより、後述するオーバーフロー制御において負圧の維持およびインクの供給を停止したときに、特別な制御を必要とせずに、オーバーフローしたインクをその自重によってサブタンク80内に戻すことができる。
【0033】
図5は、オーバーフローが検知されたときのオーバーフロー対策処理を説明するためのフローチャートである。このオーバーフロー対策処理は、オーバーフロー検知部100がインクのオーバーフローを検出したときに、CPU150(図2参照)の制御下にあるオーバーフロー制御部110によって実行される。オーバーフロー制御部110は、定期的、または、記録装置の起動時等の特定の時期に、オーバーフロー検知部100がインクのオーバーフローを検出したか否かを確認する。
【0034】
オーバーフロー制御部110は、オーバーフロー検知部100からオーバーフローの検知の通知を受けてから、まずは、空気ファン85を停止し(ステップS1)、大気開放バルブ84を閉じ(ステップS2)、供給ポンプ72を停止する(ステップS3)。これらの処理ステップS102,S103,S104においては、ハードウェアによって空気ファン85、大気開放バルブ84、供給ポンプ72を停止させるように、それらの電源を遮断。これらの処理により、サブタンク80内に対して負圧が導入されず、サブタンク80内へのインク供給も停止する。これにより、オーバーフローしたインクの外部への溢れ出し、および、それに伴う電気部品の破損を防止することができる。
【0035】
次に、液面センサ86が上限レベルLB以上のインクの液面を検出しているか否かを判定する。(ステップS4)。上限レベルLB以上のインクの液面が検出されている場合には、液面センサ86が正しく動作していると考えられ、その液面センサ86はオーバーフローの原因ではないと考えられる。その場合には、供給ポンプ72の動作命令(ポンプモータ124の駆動命令)が出ているか否かを判定する(ステップS5)。供給ポンプモータの動作命令が出ていた場合には、液面センサ86が正しく動作して上限レベルLB以上のインクを検知しているにも拘らず、サブタンク80内にインクを供給するように供給ポンプ72が動作していることになる。この場合には、オーバーフローの原因はソフトウェアの暴走であると判定され(ステップS6)、その判定結果がCPU150に通知される(ステップS7)。ステップS12は、後述する第6の実施形態における処理である。
【0036】
ステップS5の判定において、供給ポンプ72の動作命令が出ていない場合には、液面センサ86が正しく動作して上限レベルLB以上のインクを検知し、かつ供給ポンプ72の動作命令が出ていないにも拘わらず、供給ポンプ72が動作していることになる。この場合には、オーバーフローの原因は供給ポンプ72の故障であると判定され(ステップS8)、その判定結果がCPU150に通知される(ステップS7)。
【0037】
ステップS4の判定において、液面センサ86が上限レベルLB以上のインクを検知していない場合には、オーバーフロー検知部100がインクのオーバーフローを検知しているにも拘わらず、液面センサ86が上限レベル以上のインクを検出していない。そのため、この場合には、液面センサ86が正しく動作していないと考えられる。この場合には、供給ポンプ72の動作命令が出ているか否かを判定する(ステップS9)。供給ポンプ72の動作命令が出ていた場合には、液面センサ86が正しく動作しておらず、それが上限レベルLB以上のインクを検出できないために、供給ポンプ72を停止させることができないと考えられる。この場合には、インクのオーバーフローの発生原因は液面センサ86の故障にあると判定し(ステップS10)、その判定結果がCPU150に通知される(ステップS7)。
【0038】
ステップS9の判定において、供給ポンプ72の動作命令が出ていない場合には、液面センサ86が正しく動作せずに上限レベル以上のインクを検知できず、かつ供給ポンプ72の動作命令が出ていないにも拘わらず、供給ポンプ72が動作していると考えられる。この場合には、インクのオーバーフローの原因は、液面センサ86と供給ポンプ72の故障、およびソフトウェアの暴走にあると判定され(S112)、その判定結果がCPU150に通知される(ステップS7)。
【0039】
このように液面センサ86の検出信号および供給ポンプ72の動作状況に基づいて、インクのオーバーフローの発生原因が判定される。その判定結果の通知を受けたCPU150は、その判定結果をユーザーに報知する。例えば、判定結果を記録装置の表示部に表示したり、外部のホスト装置に通知したりすることができる。また、オーバーフローの原因に応じて、その影響を回避するために必要な処理を報知したり、実行したりすることもできる。
【0040】
このように本実施形態においては、記録装置に、サブタンク内からのインクのオーバーフローを検知するためのオーバーフロー検知部を備える。そして、そのオーバーフロー検知部がインクのオーバーフローを検知したときに、サブタンク82とファン85とを連通する大気連通管83を大気開放バルブ84によって閉じると共に、サブタンクに対するインクの供給動作を停止させる。これにより、オーバーフローしたインクの外部への溢れ出し、および、それに伴う電気部品の破損を防止することができる。また、オーバーフローの原因を判定することにより、異常が発生した部分を円滑に修復し、記録装置を早期に復旧させることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
上述した実施形態においては、1つのサブタンク80に対して、1つのオーバーフロー検知部100と1つのオーバーフロー制御部110を備えた。本実施形態においては、図6のように、記録ヘッド22K,22C,22M,22Yに個別に対応する計4つのサブタンク80K,80C,80M,80Yに対して、1つのオーバーフロー検知部200と1つのオーバーフロー制御部210を備える。すなわち、サブタンク80K,80C,80M,80Yのそれぞれに対応する大気連通管83K,83C,83M,83Yに対して、共通のオーバーフロー検知部200が備わる。大気連通管83K,83C,83M,83Yは、1つの集合管87に集合され、その集合管87に、1つのオーバーフロー制御部210によって制御される大気開放バルブ84と空気ファン85が備えられている。図6においては、サブタンク80から記録ヘッド22に対するインクの供給系、およびメインタンク28からサブタンク80に対するインクの供給系の図示は省略している。
【0042】
図7は、オーバーフロー検知部200の概略斜視図、図8は、オーバーフロー検知部200とオーバーフロー制御部210との間の配線図である。
【0043】
ブラック、シアン、マゼンタ、またはイエローのインクのいずれかが対応する大気連通管83K,83C,83M,83Y内にオーバーフローしたときに、そのオーバーフローしたインクによって電極31,32が導通状態となる。したがって、共通のオーバーフロー検知部200によって、ブラック、シアン、マゼンタ、またはイエローのインクのいずれかがオーバーフローしたことが検知できる。オーバーフロー制御部110は、オーバーフロー検知部200がインクのオーバーフローを検知したときに、サブタンク80K,80C,80M,80Yに対する負圧の供給系を閉じると共に、それらのサブクタンクに対するインクの供給動作を停止させる。これにより、オーバーフローしたインクの外部への溢れ出し、および、それに伴う電気部品の破損を防止することができる。また、オーバーフロー制御部110およびCPU150は、オーバーフロー検知部200がインクのオーバーフローを検知したときに、オーバーフローの発生を報知したり、それに対処する必要な処理を促したりすることができる。
【0044】
(第3の実施形態)
図9は、上述した共通のオーバーフロー検知部200の他の構成例を説明するための概略斜視図、図10は、そのオーバーフロー検知部200とオーバーフロー制御部210との間の配線図である。
【0045】
本例のオーバーフロー検知部200は、電極31は、大気連通管83K,83C,83M,83Yに対して共通に備わり、電極32は、大気連通管83K,83C,83M,83Yに対する個別の電極32K,32C,32M,32Yとして備えられている。したがって、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクのオーバーフローを個別に検知することができる。すなわち、ブラックインクがオーバーフローしたときは電極31,32Kが導通状態となり、シアンインクがオーバーフローしたときは電極31,32Cが導通状態となる。同様に、マゼンタインクがオーバーフローしたときは電極31,32Mが導通状態となり、イエローインクがオーバーフローしたときは電極31,32Yが導通状態となる。
【0046】
したがって、前述した第1の実施形態と同様に、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクのオーバーフローを個別に検出して、そのオーバーフローに対処することができる。
【0047】
(第4の実施形態)
上述した実施形態においては、オーバーフロー検知部は電極を用いる構成となっている。しかし、オーバーフロー検知部の構成は、これに限定されるものではなく、本実施形態のように光センサを用いた構成としてもよい。
【0048】
図11は、本例のオーバーフロー検知部301の概略構成図であり、発光素子301Aとしての発光ダイオードと、受光素子301Bとしてのフォトトランジスタが備えられている。このオーバーフロー検知部301は、サブタンク80から大気連通管83内にインクがオーバーフローしたときに、そのインクが発光素子301Aと受光素子301Bとの間の光路中に介在するように備えられている。サブタンク80から大気連通管83内にインクがオーバーフローしたときに、そのインクが発光素子301Aと受光素子301Bとの間の光路中に介在することにより、その光路が遮断されて、電源電圧がオーバーフロー制御部110に印加される。これにより、インクのオーバーフローをオーバーフローが検知されて、オーバーフロー制御部110に通知される。
【0049】
(第5の実施形態)
インクのオーバーフローは、空気ファン85のトルク変化に基づいて検出することもできる。
【0050】
サブタンク80から大気連通管83内にインクがオーバーフローしたときには、空気ファン85に掛かる負荷トルクが増大する。したがって、その空気ファン85の負荷トルクを検出することにより、インクのオーバーフローを検知することができる。その負荷トルクは、例えば、空気ファン85の駆動回路に不図示の検出回路を備え、その検出回路による空気ファン85の駆動電流の検出値から検出することができる。また、空気ファン85に不図示のトルク検出器を直接取り付けてもよい。また、空気ファン85において、オーバーフローしたインクが流入するおそれがある部分に対しては、絶縁性コーティング部材などによってコーティングする。
【0051】
(第6の実施形態)
図12は、本発明の第6の実施形態におけるインクの供給系の概略構成図であり、前述した実施形態における図3(a)と同様の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
本実施形態においては、大気開放バルブ84と空気ファン85との間における大気連通管83の部分から、インク排出管88が分岐されており、その分岐部分に、オーバーフロー検知部100が備えられている。インク排出管88は、ポンプ入口バルブ89および回復ポンプ130を介して、廃インクを収容する廃インクタンク140に接続されており、オーバーフロー検知部100までオーバーフローしたインクを廃インクタンク140に排出できる構成となっている。オーバーフロー検知部100には、対の電極101A,101Bが備えられている。ポンプ入口バルブ89を閉じた状態において、オーバーフローしたインクがオーバーフロー検知部100内に入って、そのインクの液面が電極101A,101Bの位置にまで上昇したときに、それらの電極101A,101Bがインクにより電気的に接続される。電極101A,101Bが電気的に接続されることにより、インクのオーバーフローを検出することができる。オーバーフロー検知部100と空気ファン85との間には、ファン入口バルブ105が備えられている。
【0053】
回復ポンプ130は、吸引管90を介してキャッピング機構50に接続されている。この吸引管90を通して、回復ポンプ130が発生した負圧をキャッピング機構の内部に付与することにより、記録ヘッド22内のインクをノズルNを通してキャップ内に吸引排出したり、キャップ内に排出されたインクを廃インクタンク内に排出可能である。吸引管90には吸引バルブ91が取り付けられている。本例の回復ポンプ130は、正転および逆転可能となっている。すなわち、キャップ内のインクを吸引管90を通して廃インクタンク140内に吸引するときには、回復ポンプ130が一方向に回転(正転)する。一方、大気連通管83内にオーバーフローしたインクをインク排出管88を通して廃インクタンク140内に排出するときには、回復ポンプ130が他方向に回転(逆転)する。サブタンク80とオーバーフロー検知部100との間のインク排出管88の部分には、フィルタ92が備えられている。サブタンク80には、大気開放管93と開放バルブ94が備えられている。
【0054】
本実施形態におけるオーバーフロー制御部110は、基本的に、前述した第1の実施形態における図5と同様のオーバーフロー対策処理を実行する。ただし、本実施形態においては、図5中のステップS12のように、オーバーフローの発生原因を検知した後に、オーバーフローしたインクを排出するための排出処理を行う。
【0055】
図13は、その排出処理を説明するためのフローチャートである。
【0056】
まずは、大気開放バルブ84と開放バルブ94を開き、かつファン入口バルブ105と大気バルブ67と吸引バルブ91を閉じてから(ステップS21)、ポンプ入口バルブ89を開く(ステップS22)。その後、回復ポンプ130を逆転駆動して、大気連通管83内にオーバーフローしたインクを廃インクタンク140内に排出する(ステップS23)。このような排出処理により、開放バルブ94を通してサブタンク80内に外気が導入され、フィルタ92にメニスカスを形成していたインクも強制的に排出される。これにより、フィルタ92はクリーニングされて、インクによる目詰まりのない正常な状態に回復される。フィルタ92にメニスカスを形成していたインクは、そのフィルタ92のインクの通過を阻害するため、回復ポンプ130を用いずに、水頭差を利用してフィルタ92を通してインクを移動させることは困難である。
【0057】
回復ポンプ130を逆転駆動させる時間は、大気連通管83内にオーバーフローしたインクの排出に要する時間に設定すればよく、例えば、オーバーフロー検知部100がオーバーフローしたインクを検出しなくなったときを基準にして設定してもよい。
【0058】
(他の実施形態)
空気ファン85は、サブタンク80毎の大気連通管83に対して個別に備える他、それらの大気連通管83に対して1つだけ共通に備えてもよい。この場合には、サブタンク80毎の大気連通管83にバルブを備え、それらのバルブの開度に応じて、サブタンク80毎の負圧を個別に制御することもできる。
【0059】
また、サブタンク80と記録ヘッド22との間に、循環ポンプを備えたインクの循環路を形成してもよい。この場合には、必要に応じて循環ポンプを作動させることにより、サブタンク80と記録ヘッド22との間において循環路を通してインクを循環させることができる。
【0060】
前述した実施形態は、記録媒体の幅方向に延在する長尺な記録ヘッドを用いたフルラインタイプの記録装置としての適用例である。しかし、本願発明は、記録ヘッドの主走査と、記録媒体の復走査と、を伴うシリアルスキャンタイプの記録装置に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
22(22K、22C、22M、22Y) 記録ヘッド
80 サブタンク(インクタンク)
83 大気連通管
84 大気開放バルブ
85 空気ファン
100 オーバーフロー検知部
103 圧力センサ
110 オーバーフロー制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクタンクから供給されるインクを吐出口から吐出可能な記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記インクタンク内を大気に連通させる大気連通管と、
前記インクタンク内の圧力を検出するための圧力センサと、
前記大気連通管内に接続され、前記インクタンク内に所定の負圧を付与する圧力付与手段と、
前記圧力センサによって検出された圧力に基づいて、前記圧力付与手段の駆動を制御する圧力制御手段と、
前記インクタンク内から前記大気連通管内にインクが流入したことを検知する検知手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記圧力制御手段は、前記圧力付与手段の駆動を制御することで加圧および負圧を切り替えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記圧力制御手段は、前記検知手段が前記大気連通管内に流入したインクを検知したときに、前記圧力付与手段の駆動を停止することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記インクタンク内から上方に延在する前記大気連通管の部分に備えられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記インクタンク内から前記大気連通管内に流入したインクによって電気的に導通される対の電極を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクタンク内のインクの液面レベルを検知する液面センサと、
前記インクタンク内のインクの液面レベルを所定範囲内に維持するように、前記液面センサの検知信号に基づいて、メインインクタンク内のインクを前記インクタンク内に供給する供給ポンプと、
前記検知手段が前記大気連通管内に流入したインクを検知したときに、前記液面センサの検出信号および前記供給ポンプの動作状況に基づいて、前記液面センサの故障および前記供給ポンプの故障を含むインクの流入が発生した原因を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記供給ポンプは、前記検知手段が前記大気連通管内に流入したインクを検知したときに停止することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクタンクと前記圧力制御手段との間における前記大気連通管の部分に備えられたフィルタと、
前記大気連通管内に流入したインクを前記大気連通管の外に排出するポンプと、
前記ポンプによって排出されたインクを収容する廃インクタンクと、
を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドの前記吐出口をキャッピング可能なキャップを備え、
前記ポンプは、前記キャップ内のインクを前記廃インクタンク内に排出可能である
ことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
インクタンクから供給されるインクを吐出口から吐出可能な記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記インクタンク内を大気に連通させる大気連通管と、
前記インクタンク内の圧力を検出するための圧力センサと、
前記大気連通管内に接続され、前記インクタンク内に所定の負圧を付与する圧力付与手段と、
前記圧力センサによって検出された圧力に基づいて、前記圧力付与手段の駆動を制御する圧力制御手段と、
前記インクタンク内から前記大気連通管内にインクが流入したことを検知する検知手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記圧力制御手段は、前記圧力付与手段の駆動を制御することで加圧および負圧を切り替えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記圧力制御手段は、前記検知手段が前記大気連通管内に流入したインクを検知したときに、前記圧力付与手段の駆動を停止することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記インクタンク内から上方に延在する前記大気連通管の部分に備えられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記インクタンク内から前記大気連通管内に流入したインクによって電気的に導通される対の電極を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクタンク内のインクの液面レベルを検知する液面センサと、
前記インクタンク内のインクの液面レベルを所定範囲内に維持するように、前記液面センサの検知信号に基づいて、メインインクタンク内のインクを前記インクタンク内に供給する供給ポンプと、
前記検知手段が前記大気連通管内に流入したインクを検知したときに、前記液面センサの検出信号および前記供給ポンプの動作状況に基づいて、前記液面センサの故障および前記供給ポンプの故障を含むインクの流入が発生した原因を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記供給ポンプは、前記検知手段が前記大気連通管内に流入したインクを検知したときに停止することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクタンクと前記圧力制御手段との間における前記大気連通管の部分に備えられたフィルタと、
前記大気連通管内に流入したインクを前記大気連通管の外に排出するポンプと、
前記ポンプによって排出されたインクを収容する廃インクタンクと、
を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドの前記吐出口をキャッピング可能なキャップを備え、
前記ポンプは、前記キャップ内のインクを前記廃インクタンク内に排出可能である
ことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−240328(P2012−240328A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113581(P2011−113581)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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