説明

インクジェット記録装置

【課題】カートリッジの誤装着を好適に管理することができる、インクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】インクジェット記録装置では、カートリッジが、収容されたインクの色に対応した第一の装着部に装着されているかが判断される(S118)。カートリッジが、収容されたインクの色に対応した第一の装着部に装着されていないと判断される場合(S118:No)、カートリッジの誤装着に関する色エラー情報が、第一の装着部ではなく、収容されたインクの色に対応していない第二の装着部に装着された該カートリッジが備える記憶素子に記憶される(S120)。カートリッジが第一の装着部に装着されていると判断され(S118:Yes)、色エラー情報が該カートリッジが備える記憶素子に記憶されるように制御されている場合(S120)、該カートリッジのインクが吸引される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット記録装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、インクタンクを誤装着した場合の印刷間違いを防止し得るインクジェット記録装置が開示されている。このインクジェット記録装置は、キャリッジと、検知部とを有する。キャリッジには、複数のインクタンクが着脱自在に搭載される。検知部は、キャリッジに装着されたインクタンクの種類を検知する。インクジェット記録装置では、キャリッジに、正規のインクタンクとは異なるインクタンクが装着されている場合には、ブザーが鳴らされるなどされ、表示手段にエラー表示が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−88322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数色のインクがそれぞれ収容されたカートリッジが装着される複数の装着部を備えたインクジェット記録装置で、所定の色のカートリッジが、別の色の装着部に、誤装着されたとする。この場合、所定の色のカートリッジの流出口には、別の色のインクが付着する。別の色の装着部の接続口には、所定の色のインクが付着する。その後、所定の色のカートリッジが、所定の色の装着部に、正しく装着されたとする。所定の色のカートリッジの流出口には、別の色のインクが付着しているため、所定の色の装着部の接続口では、インクの混色が生じる。同じく、別の色の装着部に、別の色のカートリッジが、正しく装着されたとする。この場合も、別の色の装着部の接続口には、所定の色のインクが付着しているため、インクの混色が生じる。
【0005】
本発明は、カートリッジの誤装着を好適に管理することができる、インクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、複数のカートリッジに収容された各インクの色に各々対応した複数の装着部に、各々装着されたカートリッジのインクを印刷部から吐出し、被記録媒体に画像を印刷するインクジェット記録装置であって、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御する印刷手段と、カートリッジが、収容されたインクの色に対応した第一の装着部に装着されているかを判断する判断手段と、前記判断手段により、カートリッジが、収容されたインクの色に対応した第一の装着部に装着されていないと判断される第一の場合、カートリッジの誤装着に関する色エラー情報が、前記第一の装着部ではなく、収容されたインクの色に対応していない第二の装着部に装着された該カートリッジが備える記憶素子に記憶されるように制御する第一記憶手段と、前記判断手段により、カートリッジが前記第一の装着部に装着されていると判断され、且つ、前記第一記憶手段により、前記色エラー情報が該カートリッジが備える記憶素子に記憶されるように制御されている第二の場合、該カートリッジのインクが前記インクジェット記録装置が備える吸引部で吸引されるように制御する吸引手段と、を備える、インクジェット記録装置である。これによれば、誤装着されたことのあるカートリッジが、適切な装着部に装着されたことを特定することができる。その上で、吸引部での吸引を実行させることができる。好適な品質の印刷を実現することができる。
【0007】
このインクジェット記録装置は、次のようにしてもよい。前記第一の場合、前記色エラー情報が前記インクジェット記録装置が備える記憶部に記憶されるように制御する第二記憶手段を備え、前記吸引手段は、前記判断手段により、カートリッジが前記第一の装着部に装着されていると判断され、且つ、前記第二記憶手段により、前記色エラー情報が前記記憶部に記憶されるように制御されている第三の場合、該カートリッジのインクが前記吸引部で吸引されるように制御する、ようにしてもよい。これによれば、カートリッジが誤装着された装着部に、適切なカートリッジが装着されたことを特定することができる。その上で、吸引部での吸引を実行させることができる。好適な品質の印刷を実現することができる。
【0008】
前記第一の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに関し、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブによる印刷で消費されるインク消費予測量を取得する取得手段と、実行済みの印刷により消費されたインク量を、インクの色毎に管理するカウンタ手段と、前記吸引部で吸引される吸引量を決定する決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量と、該インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量と、を合計した消費合計量が、前記吸引部による吸引のために予め定めた基準量よりも多い場合、前記基準量から、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量を差し引いた基本吸引量より、第一所定量分多い量を、前記吸引量に決定し、前記吸引手段は、前記決定手段により決定された前記吸引量の吸引を制御する、ようにしてもよい。これによれば、好適な吸引量を決定することができる。
【0009】
前記色エラー情報は、前記第一の場合において、前記第二の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに含まれる色剤が顔料であることを示す第一情報と、前記第二の装着部が顔料を含むインクが収容されたカートリッジを装着するための装着部であったことを示す第二情報と、の少なくとも何れかを含み、前記色エラー情報に、前記第一情報又は前記第二情報が含まれているかを特定する特定手段を備え、前記決定手段は、前記特定手段により、前記第一情報又は前記第二情報が特定された場合、前記基本吸引量より、第二所定量分多い量を、前記吸引量に決定する、ようにしてもよい。これによれば、色剤として顔料を含むインクの混色に対し、好適な吸引量を決定することができる。
【0010】
前記第一の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに関し、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブによる印刷で消費されるインク消費予測量を取得する取得手段と、前記吸引部で吸引される吸引量を決定する決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量が、前記吸引部による吸引のために予め定めた基準量よりも多い第四の場合、少なくとも前記基準量に対応した量を、前記吸引量に決定し、前記吸引手段は、前記決定手段により決定された前記吸引量の吸引を制御し、前記取得手段により所得された前記インク消費予測量が、前記基準量よりも少ない第五の場合、前記吸引部での吸引を制御せず、前記印刷手段は、前記第四の場合、前記吸引手段による前記吸引部での吸引を条件として、印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御し、前記第五の場合、前記吸引部での吸引が実行されない状態で、印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御する、ようにしてもよい。これによれば、前述の第四の場合、基準量に対応した量を吸引量として決定し、吸引部で、決定された吸引量に従った吸引を実行することができる。前述の第五の場合には、吸引部での吸引が実行されない。正常なインクが吸引されるような事態の発生を防止することができる。印刷に、混色されたインクが用いられるか否かに従い、吸引部での吸引の実行又は未実行を決定することができる。
【0011】
前記第一の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに関し、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブによる印刷で消費されるインク消費予測量を取得する取得手段と、実行済みの印刷により消費されたインク量を、インクの色毎に管理するカウンタ手段と、前記吸引部で吸引される吸引量を決定する決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量と、該インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量と、を合計した消費合計量が、前記吸引部による吸引のために予め定めた基準量よりも多い第六の場合、少なくとも前記基準量に対応した量を、前記吸引量に決定し、前記吸引手段は、前記決定手段により決定された前記吸引量の吸引を実行し、前記消費合計量が、前記基準量よりも少ない第七の場合、前記吸引部での吸引を制御せず、前記印刷手段は、前記第六の場合、前記吸引手段による前記吸引部での吸引を条件として、印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御し、前記第七の場合、前記吸引部での吸引が実行されない状態で、印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御する、ようにしてもよい。これによれば、前述の第六の場合、基準量に対応した量を吸引量として決定し、吸引部で、決定された吸引量に従った吸引を実行することができる。前述の第七の場合には、吸引部での吸引が実行されない。正常なインクが吸引されるような事態の発生を防止することができる。印刷に、混色されたインクが用いられるか否かを、既に実行済みの印刷も含め管理し、吸引部での吸引の実行又は未実行を決定することができる。
【0012】
前記決定手段は、前記基準量から、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量を差し引いた基本吸引量を、前記吸引量に決定する、ようにしてもよい。これによれば、好適な吸引量を決定することができる。
【0013】
前記第一の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに関し、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブによる印刷で消費されるインク消費予測量を取得する取得手段と、実行済みの印刷により消費されたインク量を、インクの色毎に管理するカウンタ手段と、前記吸引部で吸引される吸引量を決定する決定手段と、前記第一の場合において、前記第二の装着部が顔料を含むインクが収容されたカートリッジを装着するための装着部であったことを示す第二情報が、前記色エラー情報に含まれているかを特定する特定手段と、を備え、前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量と、該インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量と、を合計した消費合計量が、前記吸引部による吸引のために予め定めた基準量よりも多く、且つ、前記特定手段により、前記第二情報が特定された場合、前記基準量から、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量を差し引いた基本吸引量より、第三所定量分多い量を、前記吸引量に決定し、前記吸引手段は、前記決定手段により決定された前記吸引量の吸引を制御する、ようにしてもよい。これによれば、色剤として顔料を含むインクの混色に対し、好適な吸引量を決定することができる。
【0014】
前記色エラー情報は、前記第二の装着部を特定するための第三情報と、前記第二の装着部に装着されたカートリッジを特定するための第四情報と、を含む、ようにしてもよい。これによれば、誤装着に係わる装着部及びカートリッジを特定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カートリッジの誤装着を好適に管理することができる、インクジェット記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】複合機の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】カートリッジ交換時処理のフローチャート(その1)である。
【図3】カートリッジ交換時処理のフローチャート(その2)である。
【図4】カートリッジ交換時処理のフローチャート(その3)である。
【図5】印刷時処理のフローチャート(その1)である。
【図6】印刷時処理のフローチャート(その2)である。
【図7】吸引量決定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0018】
<複合機>
複合機1について、図1等を参照して説明する。複合機1は、例えば、プリント機能と、スキャナ機能と、コピー機能とを有する。プリント機能によって、複合機1は、プリンタとして機能する。後述するように複合機1は、インクジェット記録方式の印刷部18を備える。従って、複合機1は、インクジェット記録装置としての側面を有する。スキャナ機能及びコピー機能によって、複合機1は、それぞれ、スキャナ装置及びコピー機として機能する。
【0019】
複合機1は、CPU10と、プログラムROM12と、RAM14と、フラッシュROM16と、印刷部18と、スキャナ部20と、操作部22と、表示部23と、カバー検出部24と、装着検出部26と、IC読書部28と、接続インターフェース(接続I/F)30とを備える。CPU10は、演算処理を実行し、複合機1を制御する。プログラムROM12は、カートリッジ交換時処理(図2〜図4参照)、印刷時処理(図5及び図6参照)及び吸引量決定処理(図7参照)の他、複合機1で実行される処理のための各種のコンピュータプログラムを記憶する。RAM14は、CPU10が、コンピュータプログラムを実行する際の記憶領域である。RAM14には、各種の処理に用いられるデータ(情報)等が、記憶される。フラッシュROM16は、不揮発性のメモリによって構成され、複合機1で管理されるデータ(情報)を記憶する。CPU10が、プログラムROM12に記憶された各種のコンピュータプログラムを、RAM14上で実行することによって、各種の機能手段が実現され、複合機1において、各種の機能が実行される。
【0020】
印刷部18は、インクジェット記録方式の印刷機構である。印刷部18は、記録ヘッド81C,81M,81Y,81Kと、装着部83C,83M,83Y,83Kとを備える。記録ヘッド81Cは、シアンインクを吐出するための記録ヘッドである。記録ヘッド81Mは、マゼンタインクを吐出するための記録ヘッドである。記録ヘッド81Yは、イエローインクを吐出するための記録ヘッドである。記録ヘッド81Kは、ブラックインクを吐出するための記録ヘッドである。装着部83Cには、シアンインクが収容されたカートリッジ85Cが装着される。装着部83Mには、マゼンタインクが収容されたカートリッジ85Mが装着される。装着部83Yには、イエローインクが収容されたカートリッジ85Yが装着される。装着部83Kには、ブラックインクが収容されたカートリッジ85Kが装着される。シアン、マゼンタ及びイエローの各インクは、染料インクである。ブラックインクは、顔料インクである。
【0021】
装着部83C,83M,83Y,83Kに、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kがそれぞれ装着された場合、印刷部18を構成する各色用の記録ヘッド81は、それぞれ、インク送液用の送液路87にて、対応する色のカートリッジ85と接続された状態となる。このような状態において、カートリッジ85Cに収容されているシアンインクは、送液路87Cを流れて、記録ヘッド81Cに供給される。カートリッジ85Mに収容されているマゼンタインクは、送液路87Mを流れて、記録ヘッド81Mに供給される。カートリッジ85Yに収容されているイエローインクは、送液路87Yを流れて、記録ヘッド81Yに供給される。カートリッジ85Kに収容されているブラックインクは、送液路87Kを流れて、記録ヘッド81Kに供給される。記録ヘッド81C,81M,81Y,81Kでは、供給された各色のインクが、複合機1で受信又は生成等され、複合機1に入力された印刷ジョブに対応して、それぞれ吐出される。
【0022】
カートリッジ85C,85M,85Y,85Kは、それぞれICチップを備える。ICチップには、認証情報が記憶されている。認証情報は、後述するICチップ認証(図2のS110参照)に用いられる。ICチップには、カートリッジ情報が記憶されている。カートリッジ情報としては、少なくとも、カートリッジ85に収容されているインク色に関する色情報が含まれる。この他、カートリッジ情報には、カートリッジ85に固有の情報であって、そのカートリッジ85を識別できるシリアル番号が含まれる。
【0023】
本実施形態では、記録ヘッド81C,81M,81Y,81Kを、区別しない場合又はこれらを総称する場合、記録ヘッド81という。同様に、装着部83C,83M,83Y,83Kは、単に、装着部83という。カートリッジ85C,85M,85Y,85Kは、単に、カートリッジ85という。送液路87C,87M,87Y,87Kは、単に、送液路87という。
【0024】
スキャナ部20は、複合機1にセットされた原稿を読み取る。操作部22は、複数のキーによって構成される。ユーザは、操作部22を操作し、複合機1に対して、所定の指示を入力する。表示部23は、所定の情報を表示する。カバー検出部24は、装着部83のための開閉カバー(図1で不図示)の開閉状態を検出するためのセンサである。装着検出部26は、装着部83へのカートリッジ85の装着を検出するためのセンサである。図1では図示を簡略化しているが、装着検出部26は、装着部83C,83M,83Y,83Kに対して、それぞれ設けられる。従って、複合機1では、カートリッジ85C,85M,85Y,85Kのそれぞれについて、装着の有無を検出することができる。IC読書部28は、カートリッジ85のICチップからのデータ(情報)の読み出しと、ICチップへのデータ(情報)の書き込み(記憶)と、ICチップに記憶されたデータ(情報)の消去を、実行する。図1では図示を簡略化しているが、IC読書部28は、装着部83C,83M,83Y,83Kに装着されるカートリッジ85C,85M,85Y,85Kのそれぞれに対応して、設けられる。
【0025】
接続I/F30は、複合機1と外部装置5とをデータ通信可能に接続するための通信インターフェースである。例えば、複合機1と外部装置5との接続が、LANによって行われる場合、接続I/F30は、ネットワークインターフェースによって構成される。同接続が、USB接続によって行われる場合、接続I/F30は、USBポートによって構成される。複合機1は、接続I/F30として、ネットワークインターフェース及びUSBポートの両方を含む構成であってもよい。
【0026】
<カートリッジ交換時処理>
カートリッジ交換時処理について、図2〜図4等を参照して説明する。カートリッジ交換時処理は、ユーザによって、カートリッジ85が交換される場合に実行される。即ち、CPU10が、カバーが閉じられた場合にカバー検出部24から出力される信号によって、装着部83のための開閉カバーが開の状態から閉の状態となったことを検出した場合に開始される。カバーが閉じられたことを検出した後、CPU10は、全ての装着部83C,83M,83Y,83Kに対して、S104以降の各処理が実行されたかを判断する(S102)。全ての装着部83C,83M,83Y,83Kが処理済みである場合(S102:Yes)、CPU10は、処理を図4のS300に移行する。S300については、後述する。装着部83C,83M,83Y,83Kのうち、何れかの装着部83が未処理である場合(S102:No)、CPU10は、未処理の装着部83の1つを、処理対象の装着部83として選択する(S104)。例えば、今回のS104が、カートリッジ交換時処理を開始した後、初めて実行される場合、装着部83C,83M,83Y,83Kの全てが未処理であるため、CPU10は、予め定められた処理順序に従い、特定色の装着部83を選択する。処理順序が、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの順(以下、この処理順序を「設定順序」という)であったとする。この場合、装着部83Cが処理対象とされる。
【0027】
次に、CPU10は、処理対象とされた装着部83にカートリッジ85が装着されているかを判断する(S106)。処理対象の装着部83について、装着検出部26から出力される信号が、未装着を示す、又は、信号が出力されていない場合、CPU10は、S106の判断を否定する(S106:No)。この場合、CPU10は、発生したエラー(発生エラー)として「カートリッジなし」を決定し、「カートリッジなし」を、処理対象の装着部83に関連付けてRAM14に記憶する(S108)。その後、CPU10は、処理をS102に戻す。処理対象の装着部83について、装着検出部26から出力される信号が、装着済みを示す場合、CPU10は、S106の判断を肯定する(S106:Yes)。この場合、CPU10は、処理対象の装着部83を対象として、ICチップ認証を実行する(S110)。ICチップ認証は、ICチップに含まれる認証情報に従い、処理対象の装着部83に装着されているカートリッジ85が、複合機1の製造者が販売する純正品であるかを認証する処理である。CPU10は、IC読書部28に、認証情報を読み出させる。IC読書部28は、ICチップから認証情報を読み出す。読み出された認証情報は、RAM14に記憶される。CPU10は、RAM14に記憶された認証情報と、フラッシュROM16等に予め記憶されている認証情報とを照らし合わせ、ICチップ認証を実行する。両認証情報が一致した場合、純正品であると認証され、ICチップ認証は、成功したとされる。両認証情報が一致せず、純正品であると認証されなかった場合(純正品ではないと認証された場合)、ICチップ認証は、失敗したとされる。
【0028】
ICチップ認証に失敗した場合(S112:No)、CPU10は、発生エラーとして「カートリッジ検出失敗」を決定し、「カートリッジ検出失敗」を、処理対象の装着部83に関連付けてRAM14に記憶する(S114)。その後、CPU10は、処理をS102に戻す。ICチップ認証に成功した場合(S112:Yes)、CPU10は、IC読書部28に、カートリッジ85のICチップから、カートリッジ情報を読み出させる(S116)。IC読書部28は、カートリッジ情報を読み出す。読み出されたカートリッジ情報は、RAM14に記憶される。続けて、CPU10は、RAM14に記憶されたカートリッジ情報の色情報から、色を特定し、特定された色が、処理対象の装着部83の色に一致した正しい色であるか判断する(S118)。例えば、処理対象の装着部83が、装着部83Cであって、RAM14に記憶されたカートリッジ情報の色情報が、シアンであった場合、正しい色とされる。処理対象の装着部83が、装着部83Cであって、RAM14に記憶されたカートリッジ情報の色情報が、マゼンタ、イエロー又はブラックの何れかであった場合、正しい色ではないとされる。
【0029】
正しい色であった場合(S118:Yes)、CPU10は、処理を図3のS200に移行する。S200については、後述する。正しい色ではない場合(S118:No)、CPU10は、IC読書部28に、ICチップへの色エラー情報の書き込みを実行させる(S120)。IC読書部28は、処理対象の装着部83に装着されたカートリッジ85のICチップに、色エラー情報を書き込む。色エラー情報は、装着部83の色と、この装着部83に装着されたカートリッジ85の色との組み合わせが一致せず、誤装着が発生したことと、装着部83の色及びカートリッジ85の色とを特定することができる情報である。色エラー情報は、装着部83に装着されたカートリッジ85のシリアル番号を含む。シリアル番号は、処理対象の装着部83に装着されているカートリッジ85のICチップから、S116で、読み出され、RAM14に記憶されたカートリッジ情報に含まれるシリアル番号である。色エラー情報によれば、例えば、シリアル番号によって識別される所定のカートリッジ85Mが、装着部83Cに誤装着されたことを特定することができる。続けて、CPU10は、複合機1、具体的には、フラッシュROM16に、処理対象の装着部83に関連付けた状態で、色エラー情報を書き込む(S122)。CPU10は、処理対象の装着部83に関連付けて、発生エラーとして「色違い」を決定し、これを、RAM14に記憶する(S124)。その後、CPU10は、処理をS102に戻す。
【0030】
図3のS200で、CPU10は、処理対象の装着部83に装着されているカートリッジ85のICチップに、色エラー情報が記憶されているかを判断する。処理対象の装着部83に装着されているカートリッジ85が、前回の装着時に、異なる色の装着部83に、誤装着されていたとする。この場合、誤装着されたカートリッジ85には、上述した通り、図2のS120で、前回の誤装着を特定することができる色エラー情報が記憶されている。CPU10は、IC読書部28に、ICチップから色エラー情報を読み出させる。IC読書部28は、ICチップから色エラー情報を読み出す。読み出された色エラー情報は、RAM14に記憶される。CPU10は、RAM14に記憶された色エラー情報によって、S200の判断を実行する。色エラー情報が記憶されていない場合(S200:No)、CPU10は、処理をS210に移行する。
【0031】
色エラー情報が記憶されていた場合(S200:Yes)、CPU10は、処理対象の装着部83に装着されているカートリッジ85に収容されているインクの色剤が、顔料であるか、染料であるかを判断する(S202)。複合機1において使用されるインクのうち、ブラックについては、色剤として顔料が用いられる。従って、S200では、処理対象の装着部83が装着部83Kであるか否かに従い、顔料又は染料が判断される。処理対象の装着部83が装着部83Kである場合、顔料であると判断される(S202:顔料)。処理対象の装着部83が装着部83C,83M,83Yの何れかである場合、染料であると判断される(S202:染料)。顔料であった場合(S202:顔料)、CPU10は、処理をS206に移行する。染料であった場合(S202:染料)、CPU10は、S200の判断に際し、RAM14に記憶された色エラー情報を、複合機1、具体的には、フラッシュROM16に、処理対象の装着部83に関連付けた状態で書き込む(S204)。その後、処理をS206に移行する。
【0032】
S204で書き込み、記憶される色エラー情報は、後述する印刷時処理のS304(図4参照)で、吸引量決定処理(図5のS412、詳細は図7参照)の実行の有無を判断する場合の条件として利用される(図5のS406参照)。吸引量決定処理は、誤装着によるインクの混色対策のための処理であって、混色復帰処理(図5のS414参照)で記録ヘッド81から吸引されるインク量(吸引量)を決定する。色剤が顔料である場合、誤装着程度によって生じる混色は、印刷品質に対する影響が少ない。従って、本実施形態では、S200の判断が肯定されるような場合(S200:Yes)であっても、吸引量決定処理は行わないこととし(図5のS406:NoによりS412未実行)、混色復帰処理の実行に伴うインクの消費を低減させることとしている。S206で、CPU10は、IC読書部28に、ICチップに記憶された色エラー情報を消去させる。IC読書部28は、処理対象の装着部83に装着されたカートリッジ85のICチップに記憶された色エラー情報を消去する。
【0033】
次に、CPU10は、インク消費量カウンタの値を「0」に初期化する(S208)。複合機1では、各色毎のインク消費量カウンタにて、装着部83C,83M,83Y,83K毎に、消費されたインクの量が管理されている。各色毎のインク消費量カウンタは、例えば、フラッシュROM16等に記憶されて管理されている。続けて、CPU10は、発生エラーとして、「エラーなし」を決定し、「エラーなし」を、処理対象の装着部83に関連付けて、RAM14に記憶する(S210)。その後、CPU10は、処理を図2のS102に戻す。
【0034】
図2のS108、S114若しくはS124、又は、図3のS210が実行され、処理が図2のS102に戻された場合、CPU10は、上述した通り、全ての装着部83C,83M,83Y,83Kに対して、S104以降の各処理が実行されたかを判断する。例えば、処理順序が上述の設定順序であって、装着部83Cの処理が終了された段階であったとする。この場合、CPU10は、S102の判断を否定し(S102:No)、マゼンタの装着部83Mを処理対象とし(S104)、上述した各処理を実行する。その後、CPU10は、処理がS102に戻る毎に、装着部83Y、装着部83Kを、順次、処理対象として(S104)、上述した各処理を繰り返す。装着部83Kを処理対象とした、上記処理が終了した場合、S102の判断は肯定され(S102:Yes)、上述した通り、CPU10は、処理を、図4のS300に移行する。
【0035】
図4のS300で、CPU10は、装着部83C,83M,83Y,83Kのそれぞれを処理対象とした、上記処理において、エラーが発生していないかを判断する。S300では、装着部83C,83M,83Y,83Kの何れにおいても、「エラーなし」が決定されている場合(図3のS210参照)、エラーなしと、判断される。装着部83C,83M,83Y,83Kの何れかにおいて、「カートリッジなし」、「カートリッジ検出失敗」又は「色違い」が決定されていた場合(図2のS108,S114,S124参照)、エラーが発生したと判断される。
【0036】
エラーが発生していない場合(S300:No)、CPU10は、印刷時処理を実行する(S304)。印刷時処理については、後述する。エラーが発生している場合(S300:Yes)、CPU10は、決定された「カートリッジなし」、「カートリッジ検出失敗」又は「色違い」と、これに関連付けられた装着部83の色とに従い、発生したエラーの状態を特定し、特定された状態を内容とする情報を、表示部23に表示させる(S306)。ユーザは、表示される情報に従い、発生しているエラーに対応する。例えば、「カートリッジなし」が決定され、装着部83Cに関連付けられていたとする。この場合、表示部23には、シアンのカートリッジ85Cが装着されていないことを内容とする情報が表示される。ユーザは、装着部83Cに、カートリッジ85Cを装着する。「カートリッジ検出失敗」が決定され、装着部83Mに関連付けられていたとする。この場合、表示部23には、例えば、マゼンタのカートリッジ85Mが純正品ではないことを内容とする情報が表示される。ユーザは、装着部83Mに、純正品のカートリッジ85Mを装着し直す。「色違い」が決定され、装着部83Yに関連付けられていたとする。この場合、表示部23には、例えば、装着部83Yに、イエローではない色のカートリッジ85C,85M,85Kが装着されていることを内容とする情報が表示される。ユーザは、装着部83Yに、カートリッジ85Yを装着し直す。S304又はS306を実行した後、CPU10は、カートリッジ交換時処理を終了する。
【0037】
<印刷時処理>
図4のS304で実行される印刷時処理について、図5及び図6を参照して説明する。印刷時処理は、処理がS304に移行した後、複合機1に印刷指示が入力された場合に開始される。印刷指示は、例えば、複合機1に、接続されたパーソナルコンピュータ等のような外部装置5から、接続I/F30を介して入力される。この他、印刷指示は、コピー開始のための操作部22を介した操作によっても入力される。この処理を開始したCPU10は、印刷対象である印刷ジョブを、RAM14に記憶する。印刷指示が、外部装置5から入力される場合、印刷ジョブは、外部装置5から送信され、接続I/F30で受信される。印刷指示が、コピー開始のための操作による場合、印刷ジョブは、複合機1にセットされた原稿がスキャナ部20で読み取られる等して複合機1内で生成される。
【0038】
次に、CPU10は、装着部83C,83M,83Y,83Kに対応した各色を対象として、S404以降の各処理が実行されたかを判断する(S402)。全色処理済みである場合(S402:Yes)、CPU10は、処理を図6のS500に移行する。S500については、後述する。何れかの色が未処理である場合(S402:No)、CPU10は、未処理の色の1色を、処理対象の色として選択する(S404)。例えば、今回のS404が、印刷時処理を開始した後、初めて実行される場合、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの全色が未処理であるため、CPU10は、予め定められた処理順序に従い、特定色を選択する。処理順序が上述の設定順序であったとする。この場合、シアンが処理対象とされる。続けて、CPU10は、処理対象の色の装着部83に関連付けられた色エラー情報が、フラッシュROM16に記憶されているかを判断する(S406)。色エラー情報は、上述した図2のS122又は図3のS204で、フラッシュROM16に記憶される。
【0039】
処理対象の色の装着部83に関連付けて色エラー情報が記憶されていない場合(S406:No)、CPU10は、処理をS402に戻す。処理対象の色の装着部83に関連付けて色エラー情報が記憶されている場合(S406:Yes)、CPU10は、S400で記憶された印刷ジョブによる印刷で消費される、処理対象の色のインクのインク消費予測量を取得する(S408)。処理対象の色のインク消費予測量は、例えば、既に提案されている技術を用いて算出等され、取得することができる。例えば、CPU10は、印刷ジョブに含まれる画像データ等を解析等し、処理対象の色のインクを吐出する画素数等を特定し、インク消費予測量を算出する。S408を実行した後、CPU10は、処理対象の色のインク消費量カウンタで管理されているインク消費量と、S408で取得されたインク消費予測量とを合計した消費合計量と、基準量との大小関係を判断する。具体的に、CPU10は、「消費合計量>基準量」との関係が満足されるかを判断する(S410)。基準量は、1色用の送液路87の容量に従って定められる。例えば、1色用の送液路87の容量が4ccである場合、基準量は4ccとされる。なお、送液路87の容量は、記録ヘッド81に供給されたインクが、記録ヘッド81に形成されたノズルから吐出されるまでに記録ヘッド81内を送液するための流路の容量を含むようにしてもよい。
【0040】
前回のカートリッジ85の装着時に、異なる色のカートリッジ85が装着され、送液路87への流入口となる装着部83の接続口に、異なる色のインクが付着した場合において、今回、この装着部83に、正しい色のカートリッジ85が装着されたとする。この場合、装着部83の接続部に付着している異なる色のインクと、カートリッジ85の正しい色のインクとが、送液路87への流入口(装着部83の接続口)において混色する。また、前回、異なる色の装着部83に、カートリッジ85が装着され、この装着されたカートリッジ85の流出口に、異なる色のインクが付着した場合において、今回、流出口に異なる色のインクが付着したカートリッジ85が、対応する色の装着部83に装着されたとする。この場合、送液路87への流入口となる装着部83の接続口に付着している正しい色のインクと、カートリッジ85の流出口に付着した異なる色のインクとが、送液路87への流入口(装着部83の接続口)において混色する。混色したインクは、送液路87を流れ、記録ヘッド81に供給された後、記録ヘッド81から吐出される。換言すれば、混色したインクは、送液路87に存在しているインクが吐出されるまで、吐出されない。S410は、このような点を考慮した判断であって、S400で記憶された印刷ジョブに従った今回の印刷で、混色したインクが、記録ヘッド81に到達し、吐出されるか否かを判断するものである。
【0041】
S410の条件が満足されない場合(S410:No)、CPU10は、処理をS402に戻す。この場合、S412及びS414は実行されないため、処理対象の色のインクを対象とした混色復帰処理は実行されない。S410の条件が満足される場合(S410:Yes)、CPU10は、吸引量決定処理を実行する(S412)。吸引量決定処理については、後述する。続けて、CPU10は、吸引量決定処理に従った混色復帰処理を実行する(S414)。混色復帰処理は、記録ヘッド81を、走査方向に移動させるための移動機構(図1で不図示)を駆動させて、混色復帰処理のための位置とされた吸引位置に移動させ、記録ヘッド81のインク吐出面を、所定の部材(図1で不図示)でキャップし、ポンプ(図1で不図示)で負圧をかけて、インクを吸引する処理である。S414では、処理対象の色の記録ヘッド81から、その色のインクを吸引するようにするとよい。吸引するインク量は、吸引量決定処理で決定され、RAM14に記憶された吸引量とされる(図7のS618参照)。
【0042】
S414を実行した後、CPU10は、処理対象の色の装着部83に関連付けられた色エラー情報を、フラッシュROM16から削除する(S416)。その後、CPU10は、処理をS402に戻す。S406若しくはS410の判断が否定され(S406,S410:No)、又は、S416が実行され、処理がS402に戻された場合、CPU10は、上述した通り、装着部83C,83M,83Y,83Kに対応した各色を対象として、S404以降の各処理が実行されたかを判断する。例えば、処理順序が上述の設定順序であって、シアンの処理が終了された段階であったとする。この場合、CPU10は、S402の判断を否定し(S402:No)、マゼンタを処理対象とし(S404)、上述した各処理を実行する。その後、CPU10は、処理がS402に戻る毎に、イエロー、ブラックを、順次、処理対象として(S404)、上述した各処理を繰り返す。ブラックを処理対象とした、上記処理が終了した場合、S402の判断は肯定され(S402:Yes)、上述した通り、CPU10は、処理を、図6のS500に移行する。
【0043】
図6のS500で、CPU10は、図5のS400で記憶した印刷ジョブに従った印刷(印刷処理)を実行する。このとき、CPU10は、印刷部18を制御する。これによって、印刷部18の記録ヘッド81からは、各色のインクが適宜吐出され、印刷ジョブに含まれる画像データ等に対応した画像が、複合機1にセットされた用紙等の被記録媒体に印刷される。続けて、CPU10は、装着部83C,83M,83Y,83Kに対応した各色を対象として、S504以降の各処理が実行されたかを判断する(S502)。全色処理済みである場合(S502:Yes)、CPU10は、印刷時処理を終了する。何れかの色が未処理である場合(S502:No)、CPU10は、未処理の色の1色を、処理対象の色として選択する(S504)。例えば、今回のS504が、印刷時処理を開始した後、初めて実行される場合、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの全色が未処理であるため、CPU10は、予め定められた処理順序に従い、特定色を選択する。処理順序が上述の設定順序であったとする。この場合、シアンが処理対象とされる。続けて、CPU10は、処理対象の色の装着部83に関連付けられた色エラー情報が、フラッシュROM16に記憶されているかを判断する(S506)。
【0044】
処理対象の色の装着部83に関連付けて色エラー情報が記憶されていない場合(S506:No)、CPU10は、処理をS502に戻す。処理対象の色の装着部83に関連付けて色エラー情報が記憶されている場合(S506:Yes)、CPU10は、処理対象の色のインク消費量カウンタで管理されているインク消費量に、今回のS500の印刷によって消費された、処理対象の色のインク量を加算し、この色のインク消費量カウンタを更新する。S508を実行した後、CPU10は、処理をS502に戻す。
【0045】
S506の判断が否定され(S506:No)、又は、S508が実行され、処理がS502に戻された場合、CPU10は、上述した通り、装着部83C,83M,83Y,83Kに対応した各色を対象として、S504以降の各処理が実行されたかを判断する。例えば、処理順序が上述の設定順序であって、シアンの処理が終了された段階であったとする。この場合、CPU10は、S502の判断を否定し(S502:No)、マゼンタを処理対象とし(S504)、上述した各処理を実行する。その後、CPU10は、処理がS502に戻る毎に、イエロー、ブラックを、順次、処理対象として(S504)、上述した各処理を繰り返す。ブラックを処理対象とした、上記処理が終了した場合、S502の判断は肯定され(S502:Yes)、上述した通り、CPU10は、印刷時処理を終了する。ところで、複合機1では、図2〜図4に示すカートリッジ交換時処理の実行の有無に係わらず、印刷指示が入力される。例えば、上述したように、処理が図4のS304に移行し、複合機1に印刷指示が入力され、印刷時処理が実行された後、カートリッジ85が交換されることなく、再度、印刷指示が入力されることもある。このような場合、複合機1では、上述した印刷時処理が実行される。
【0046】
<吸引量決定処理>
図5のS412で実行される吸引量決定処理について、図7を参照して説明する。この処理を開始したCPU10は、基本吸引量を決定する(S600)。基本吸引量は、上述した基準量(図5のS410参照)から、処理対象の色(図5のS404参照)のインク消費量カウンタで管理されている、インク消費量を差し引いた量である。続けて、CPU10は、図5のS404で処理対象とされた色の装着部83が、カートリッジ85が誤装着された装着部であるかを判断する(S602)。S602では、図5のS406で記憶されているとされた色エラー情報に、装着部83の色として処理対象の色に一致する色が含まれている場合、処理対象とされた色の装着部83がカートリッジ85が誤装着された装着部であると判断される。処理対象の色の装着部83が誤装着された装着部ではない場合(S602:No)、CPU10は、処理をS610に移行する。処理対象の色の装着部83が誤装着された装着部である場合(S602:Yes)、CPU10は、S600で決定された基本吸引量に、所定の量(A量)を加算する(S604)。
【0047】
次に、CPU10は、図5のS406で記憶されているとされた色エラー情報が顔料インクに関連する要素を含むかを判断する(S606)。顔料インクに関連する要素を含む色エラー情報とは、装着部83の色と、この装着部83に装着されたカートリッジ85の色との組み合わせの不一致において、顔料の色剤を含むインクが誤装着の原因となっている、色エラー情報である。本実施形態では、上述した通り、ブラックインクが、顔料インクである場合を例として説明している。そのため、顔料インクに関連する要素を含む色エラー情報は、カートリッジ85C,85M,85Yの何れかが、装着部83Kに誤装着された場合の色エラー情報、又は、カートリッジ85Kが、装着部83C,83M,83Yの何れかに誤装着された場合の色エラー情報である。
【0048】
色エラー情報が顔料インクの要素を含む場合(S606:Yes)、CPU10は、基本吸引量よりA量分多い量(S604参照)に、所定の量(B量)を加算する(S608)。色エラー情報が顔料インクの要素を含まない場合(S606:No)、又は、S608を実行した後、CPU10は、処理対象の色の装着部83に装着されているカートリッジ85が誤装着されたカートリッジであるかを判断する(S610)。CPU10は、IC読書部28に、処理対象の色の装着部83に装着されているカートリッジ85のICチップから、カートリッジ情報を読み出させる。CPU10は、読み出されたカートリッジ情報に含まれるシリアル番号と、図5のS406で記憶されているとされた色エラー情報に含まれるシリアル番号とを比較する。両シリアル番号が一致する場合、処理対象の色の装着部83に装着されているカートリッジ85は、誤装着されたカートリッジであると判断される。両シリアル番号が一致しない場合、処理対象の色の装着部83に装着されているカートリッジ85は、誤装着されたカートリッジではないと判断される。
【0049】
処理対象の色の装着部83に装着されているカートリッジ85が誤装着されたカートリッジである場合(S610:Yes)、CPU10は、S600の基本吸引量、基本吸引量よりA量分多い量(S604,S606:No)、又は、基本吸引量よりA量及びB量分多い量(S604,S608参照)に、所定の量(C量)を加算する(S612)。続けて、CPU10は、処理対象の色の装着部83に装着されたカートリッジ85が、誤装着された際に、顔料インクのカートリッジ85が装着される装着部83に装着されたものであるかを判断する(S614)。S614では、誤装着されたと判断されたカートリッジ85のシリアル番号が含まれる色エラー情報に、誤装着された装着部83の色として顔料インクの色を特定する情報が含まれている場合、誤装着された際に、顔料インクのカートリッジ85が装着される装着部83に装着されたものであると判断される。本実施形態における例示では、顔料インクのカートリッジ85は、カートリッジ85Kであって、これが装着される装着部83は、装着部83Kである。処理対象の色の装着部83に装着されているカートリッジ85が誤装着された際に装着された装着部83が、顔料インクに対応した装着部83(装着部83K)である場合(S614:Yes)、CPU10は、基本吸引量よりC量分多い量(S602:No,S612参照)、基本吸引量よりA量及びC量分多い量(S604,S606:No,S612参照)、又は、基本吸引量よりA量〜C量分多い量(S604,S608,S612参照)に、所定の量(D量)を加算する(S616)。S610で、処理対象の色の装着部83に装着されているカートリッジ85が誤装着されたカートリッジではないと判断される場合(S610:No)、若しくは、S614で、顔料インクに対応した装着部83(装着部83K)ではないと判断される場合(S614:No)、又は、S616を実行した後、CPU10は、S600、S604、S608、S612及びS616の何れかに基づいた量を、吸引量に決定する(S618)。決定された吸引量は、RAM14に記憶される。S618を実行した後、CPU10は、吸引量決定処理を終了し、処理を図5のS414に戻す。
【0050】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0051】
(1)図2〜図4に示すカートリッジ交換時処理において、所定の色のカートリッジ85が、異なる色の装着部83に装着された場合(図2のS118:No参照)、誤装着されたカートリッジ85と、複合機1の本体(フラッシュROM16)とに、それぞれ色エラー情報を書き込み、記憶させることとした(図2のS120,S122参照)。その後、誤装着が解消された場合(図2のS118:Yes参照)、誤装着されたカートリッジ85に記憶された色エラー情報は、複合機1の本体(フラッシュROM16)に、書き込まれ、記憶されることとした(図3のS204参照)。そのため、複合機1では、装着部83に装着されているカートリッジ85が誤装着されたものであることと、異なる色のカートリッジ85が誤装着された装着部83であることとを、管理することができる。
【0052】
その上で、このような管理に基づき、図5に示す印刷時処理のS412で実行される吸引量決定処理(図7参照)では、誤装着の状態に応じて、吸引量を決定することとした(図7のS600,S604,S608,S612,S616,S618参照)。そのため、混色したインクによる印刷を防止するための吸引量を、好適に決定し、決定された吸引量に従い、混色復帰処理(図5のS414参照)を好適に行うことができる。送液路87に存在している正常なインクが、無駄に吸引されてしまうといった事態の発生を防止することができる。正常なインクを、好適に画像の印刷に利用することができる。
【0053】
所定の色の装着部83に、これとは異なる色のカートリッジ85が誤装着された場合、印刷品質を優先させるユーザにおいては、誤装着されたカートリッジ85を使用せず、例えば新品のカートリッジ85を装着し直すといったことも想定される。新品のカートリッジ85では、その流出口におけるインクの混色は発生していない。このような場合、本実施形態の吸引量決定処理では、シリアル番号を用いて、装着部83に装着されているカートリッジ85が、誤装着されたカートリッジではないことが判断され(図7のS610参照)、誤装着されたカートリッジではない場合(図7のS610:No参照)、吸引量を増加させるといった処理(図7のS612,S616参照)を回避することができる。一方、装着部83に装着されているカートリッジ85が誤装着されたカートリッジである場合(図7のS610:Yes参照)、吸引量を、所定量だけ増加させ(図7のS612,S616参照)、混色したインクを、好適に吸引することができる。
【0054】
(2)図5に示す印刷時処理のS410において、「消費合計量>基準量」との関係が満足されるかを判断することとし、判断が否定される場合(図5のS410:No参照)、S412及びS414を実行させないこととした。そのため、混色復帰処理において混色したインクを吸引するために、混色が確認された時点(図5のS406:Yesの時点)において、カートリッジ85と記録ヘッド81とを接続する送液路87に存在している正常なインクが、無駄に吸引されてしまうといった事態の発生を防止することができる。正常なインクを、好適に画像の印刷に利用することができる。
【0055】
<変形例>
上記では、複合機1を例として説明した。この他、本実施形態は、単独のインクジェット記録装置に適用することもできる。この場合においても、上記同様の効果を得ることができる。色剤として顔料が用いられるインクとして、ブラックインクを例として説明した。この他のインクについても色剤を顔料としてもよい。インクの色として、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックを例に説明した。これ以外の色のインクが採用されてもよい。例えば、シアン、マゼンタ及びイエローの各色を淡色とした、ライトシアン、ライトマゼンタ及びライトイエローのインクが採用されてもよい。この場合、複合機1は、対応したインク色の、記録ヘッド81及び装着部83等を備える。
【0056】
上記では、図5に示す印刷時処理のS410で、「消費合計量>基準量」が満足される場合(S410:Yes参照)、吸引量決定処理(図5のS412、詳細は図7参照)が実行される構成を例として説明した。吸引量決定処理は、省略してもよい。この場合、混色復帰処理(図5のS414参照)での吸引量は、基準量とするとよい。この他、吸引量決定処理では、例えば、S600及びS618だけが実行されるようにしてもよい。S600等に加え、S602〜S608、又は、S610〜S616が実行されるようにしてもよい。なお、S602〜S608における一連の処理においても、例えば、S604、又は、S606及びS608を省略してもよい。S610〜S616における一連の処理においても、例えば、S612、又は、S614及びS616を省略してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 複合機、 5 外部装置、 10 CPU、 12 プログラムROM
14 RAM、 16 フラッシュROM、 18 印刷部、 20 スキャナ部
22 操作部、23 表示部、 24 カバー検出部、 26 装着検出部
28 IC読書部、 30 接続インターフェース(接続I/F)
81,81C,81M,81Y,81K 記録ヘッド
83,83C,83M,83Y,83K 装着部
85,85C,85M,85Y,85K カートリッジ
87,87C,87M,87Y,87K 送液路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカートリッジに収容された各インクの色に各々対応した複数の装着部に、各々装着されたカートリッジのインクを印刷部から吐出し、被記録媒体に画像を印刷するインクジェット記録装置であって、
前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御する印刷手段と、
カートリッジが、収容されたインクの色に対応した第一の装着部に装着されているかを判断する判断手段と、
前記判断手段により、カートリッジが、収容されたインクの色に対応した第一の装着部に装着されていないと判断される第一の場合、カートリッジの誤装着に関する色エラー情報が、前記第一の装着部ではなく、収容されたインクの色に対応していない第二の装着部に装着された該カートリッジが備える記憶素子に記憶されるように制御する第一記憶手段と、
前記判断手段により、カートリッジが前記第一の装着部に装着されていると判断され、且つ、前記第一記憶手段により、前記色エラー情報が該カートリッジが備える記憶素子に記憶されるように制御されている第二の場合、該カートリッジのインクが前記インクジェット記録装置が備える吸引部で吸引されるように制御する吸引手段と、を備える、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第一の場合、前記色エラー情報が前記インクジェット記録装置が備える記憶部に記憶されるように制御する第二記憶手段を備え、
前記吸引手段は、前記判断手段により、カートリッジが前記第一の装着部に装着されていると判断され、且つ、前記第二記憶手段により、前記色エラー情報が前記記憶部に記憶されるように制御されている第三の場合、該カートリッジのインクが前記吸引部で吸引されるように制御する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第一の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに関し、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブによる印刷で消費されるインク消費予測量を取得する取得手段と、
実行済みの印刷により消費されたインク量を、インクの色毎に管理するカウンタ手段と、
前記吸引部で吸引される吸引量を決定する決定手段と、を備え、
前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量と、該インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量と、を合計した消費合計量が、前記吸引部による吸引のために予め定めた基準量よりも多い場合、前記基準量から、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量を差し引いた基本吸引量より、第一所定量分多い量を、前記吸引量に決定し、
前記吸引手段は、前記決定手段により決定された前記吸引量の吸引を制御する、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記色エラー情報は、前記第一の場合において、前記第二の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに含まれる色剤が顔料であることを示す第一情報と、前記第二の装着部が顔料を含むインクが収容されたカートリッジを装着するための装着部であったことを示す第二情報と、の少なくとも何れかを含み、
前記色エラー情報に、前記第一情報又は前記第二情報が含まれているかを特定する特定手段を備え、
前記決定手段は、前記特定手段により、前記第一情報又は前記第二情報が特定された場合、前記基本吸引量より、第二所定量分多い量を、前記吸引量に決定する、請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第一の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに関し、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブによる印刷で消費されるインク消費予測量を取得する取得手段と、
前記吸引部で吸引される吸引量を決定する決定手段と、を備え、
前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量が、前記吸引部による吸引のために予め定めた基準量よりも多い第四の場合、少なくとも前記基準量に対応した量を、前記吸引量に決定し、
前記吸引手段は、
前記決定手段により決定された前記吸引量の吸引を制御し、
前記取得手段により所得された前記インク消費予測量が、前記基準量よりも少ない第五の場合、前記吸引部での吸引を制御せず、
前記印刷手段は、
前記第四の場合、前記吸引手段による前記吸引部での吸引を条件として、印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御し、
前記第五の場合、前記吸引部での吸引が実行されない状態で、印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御する、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第一の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに関し、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブによる印刷で消費されるインク消費予測量を取得する取得手段と、
実行済みの印刷により消費されたインク量を、インクの色毎に管理するカウンタ手段と、
前記吸引部で吸引される吸引量を決定する決定手段と、を備え、
前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量と、該インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量と、を合計した消費合計量が、前記吸引部による吸引のために予め定めた基準量よりも多い第六の場合、少なくとも前記基準量に対応した量を、前記吸引量に決定し、
前記吸引手段は、
前記決定手段により決定された前記吸引量の吸引を実行し、
前記消費合計量が、前記基準量よりも少ない第七の場合、前記吸引部での吸引を制御せず、
前記印刷手段は、
前記第六の場合、前記吸引手段による前記吸引部での吸引を条件として、印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御し、
前記第七の場合、前記吸引部での吸引が実行されない状態で、印刷ジョブに従い、画像が前記印刷部で被記録媒体に印刷されるように制御する、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記基準量から、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量を差し引いた基本吸引量を、前記吸引量に決定する、請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記第一の装着部に装着されたカートリッジに収容されたインクに関し、前記インクジェット記録装置に入力された印刷ジョブによる印刷で消費されるインク消費予測量を取得する取得手段と、
実行済みの印刷により消費されたインク量を、インクの色毎に管理するカウンタ手段と、
前記吸引部で吸引される吸引量を決定する決定手段と、
前記第一の場合において、前記第二の装着部が顔料を含むインクが収容されたカートリッジを装着するための装着部であったことを示す第二情報が、前記色エラー情報に含まれているかを特定する特定手段と、を備え、
前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量と、該インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量と、を合計した消費合計量が、前記吸引部による吸引のために予め定めた基準量よりも多く、且つ、前記特定手段により、前記第二情報が特定された場合、前記基準量から、前記取得手段により取得された前記インク消費予測量の対象であるインクの色に対応した前記カウンタ手段により管理されている前記インク量を差し引いた基本吸引量より、第三所定量分多い量を、前記吸引量に決定し、
前記吸引手段は、前記決定手段により決定された前記吸引量の吸引を制御する、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記色エラー情報は、前記第二の装着部を特定するための第三情報と、前記第二の装着部に装着されたカートリッジを特定するための第四情報と、を含む、請求項1から請求項8の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71266(P2013−71266A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210003(P2011−210003)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】