説明

インクタンク及びインクジェット記録装置

【課題】 インク収納室の容積を小さくすることなく、残留インクを低減する。
【解決手段】 インクカートリッジ21は、インクを収納するインク収納室24が設けられている。このインク収納室24は、インク吸収体28を収納する吸収体収納室26と、インクを貯留する貯留室25とからなり、隔壁27によって仕切られるとともに、その下方に形成された連通口27aで連通している。吸収体収納室26には、記録ヘッド12へインクを供給するための排出口26aが設けられている。貯留室25には、床面25aに残留したインクを排出口26aに向けて送り出す残留インク送り出し機構51が設けられている。残留インク送り出し機構50は、インク切れが検出されたときに作動して、液送部材51のロックを解除する。これにより、液送部材51は、バネ52の付勢によって、図3(B)に示す送り出し位置に向けて移動して、残留インクを送り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出方式の記録ヘッドに供給されるインクを収納するインクタンク及びこのインクタンクを使用したインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する吐出口が設けられたインク吐出方式の記録ヘッドを備え、この記録ヘッドからインクを液滴として吐出しこれを用紙に付着させて画像を記録する、いわゆるインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置には、インクを収納するインクタンクが設けられており、このインクタンクからインク供給路を通じて記録ヘッドへインクが供給される。インクタンクには、インクを収納するインク収納室と、このインク収納室内のインクをインク供給路へ送り込むために前記インク収納室の外部へ取り出すインク取出部とが設けられている。インク取出部は、インク収納室の床面に形成された排出口とこの排出口に接続された排出管とからなる。
【0003】
インクは消耗品であるため、その補充の便宜を考慮して、インクタンクは、インクジェット記録装置に交換可能に取り付けられるカートリッジタイプのものが多い。このカートリッジタイプのインクタンク(以下、インクカートリッジという)は、インクが使い切られて空になると、インクが充填された新しいインクカートリッジに交換される。
【0004】
インクジェット記録装置には、ユーザーにインクカートリッジの交換時期を知らせるために、インクカートリッジのインクを使い切ったかどうかを検出するインク切れ検出センサが設けられている。インク切れ検出センサは、例えば、フォトセンサであり、インクの残量の有無を光学的に検知する。
【0005】
このインク切れ検出センサでインク切れと検出された場合でも、インクカートリッジ内に少量のインクが残留している場合が多い。ユーザーの便宜を考慮すれば、こうした残留インクはできるだけ少ないことが望ましいため、残留インクを低減するための種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載のインクカートリッジでは、インク収納室の床面の面積を小さくするとともに、残留インクが排出口に流れ込むように床面を傾斜させている。
【特許文献1】特開平5−330076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インク収納室の床面を小さくすると、残留インクは少なくなるものの、インク収納室の容積が小さくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、インク収納室の容積を小さくすることなく、残留インクを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクタンクは、吐出方式の記録ヘッドへ供給されるインクを収納するインク収納室と、前記記録ヘッドへインクを供給するために、前記インク収納室の床面に形成されインク収納室内のインクを外部へ排出する排出口とを備えたインクタンクにおいて、前記インク収納室内に配置され前記床面に残留している残留インクを押圧して前記排出口から排出されるように送り出す送り出し位置と、待機位置との間で移動自在な液送部材と、前記液送部材を前記送り出し位置に付勢する付勢部材と、この付勢部材の付勢力に抗して前記液送部材を前記待機位置にロックするロック位置と、このロックを解除する解除位置との間で変位自在なロック部材とからなる残留インク送り出し機構を設けたことを特徴とする。
【0009】
前記インク収納室は、前記排出口が配置されるとともに毛管力によってインクを吸収して保持するインク吸収体を収納する吸収体収納室と、隔壁によって前記吸収体収納室と仕切られるとともに、前記隔壁に形成され前記床面付近に配置された連通口を通じて前記吸収体収納室と連通し、前記吸収体収納室へ送られるインクを貯留する貯留室とからなり、前記残留インク送り出し機構は、前記貯留室に配置されており、前記液送部材は、前記連通口に向けて前記残留インクを送り出すことが好ましい。
【0010】
前記ロック部材は、前記インク収納室の外部に配置された解除装置によって解除されることが好ましい。この場合、前記ロック部材は、例えば、静電吸引や磁力によって吸引されて前記解除位置に向けて変位される。
【0011】
前記解除装置に、前記ロック部材を押圧してそのロックを解除する押圧部材を設けるとともに、前記インク収納室には、前記押圧部材が進入可能な開口が形成してもよい。この場合には、前記開口に弾性膜を設け、前記ロック部材は、前記弾性膜を介して前記押圧部材によって押圧されることが好ましい。
【0012】
本発明のインクジェット記録装置は、吐出方式の記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であり、上記インクタンクを使用することを特徴とする。
【0013】
前記インクタンクのインク切れを検出するインク切れ検出センサと、前記解除装置とを設け、前記インク切れ検出センサがインク切れを検出したときに、前記解除装置によって前記ロック部材を解除することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吐出方式の記録ヘッドにインクを供給するインクタンクの収納室内に、その床面に残留している残留インクを押圧により前記排出口に向けて送る送り出し位置と、待機位置との間で移動自在な液送部材と、前記液送部材を前記送り出し位置に付勢する付勢部材と、この付勢部材の付勢力に抗して前記液送部材を前記待機位置にロックするロック位置と、このロックを解除する解除位置との間で変位自在なロック部材とからなる残留インク送り出し機構を設けたから、インク収納室の床面積を小さくしてインク収納室の容積を小さくすることなく、残留インクを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すインクジェット記録装置10は、記録媒体である用紙11に対してインクを吐出して付着させることにより画像を記録する記録ヘッド12を備えている。記録ヘッド12は、インクを吐出する吐出口が形成された複数のノズルを備えており、これら複数のノズルの吐出口が配列された吐出面が用紙11の記録面と対面するように配置される。記録ヘッド12は、用紙11の幅方向(主走査方向X)に移動自在なキャリッジ13に取り付けられており、キャリッジ13の底面に形成された開口から前記吐出面が露呈される。記録ヘッド12は、キャリッジ13の移動に伴って用紙11の幅方向に沿って往復動しながら、画像をライン記録する。この記録ヘッド12が1往復動する毎に、図示しない搬送ローラによって用紙11が副走査方向Yへ、記録ヘッド12の1往復動による記録幅分送られる。こうした動作が繰り返されて、1画面分の画像が記録される。
【0016】
キャリッジ13は、ガイド棒14a,14bにスライド自在に取り付けられており、ベルト16と1対のプーリ17とからなるベルト機構18によって駆動される。キャリッジ13には、記録ヘッド12の上方に、例えば、Y,M,C,Kの4色のインクがそれぞれ収納された4つのインクカートリッジ21が着脱自在に取り付けられる。
【0017】
キャリッジ13には、各インクカートリッジ21が差し込まれる複数のスロットが形成されている。これら各スロットには、記録ヘッド12へインクを送り込む流路が形成された中空状のインク供給針36(図2参照)が設けられており、スロットへインクカートリッジ21が差し込まれると、インクカートリッジ21の底部に設けられたインク取出部31(図2参照)にインク供給針36が突き刺さるようになっている。インクカートリッジ21に収納されたインクは、このインク供給針36を通じて記録ヘッド12へ供給される。記録ヘッド12には、各ノズルに対応して圧力室と、ピエゾ素子によって駆動される振動板が設けられており、この振動板の振動による圧力室の体積変化により、インクカートリッジ21内のインクがノズルへ吸引され、吐出口から噴射される。
【0018】
図2に示すように、インクカートリッジ21は、インクを収納するインク収納室24が形成された容器本体22と、この容器本体22の上部開口を閉じる蓋部材23とからなる。蓋部材23は、例えば、容器本体22にインクを充填した後、上部開口からのインク漏れが生じないように容器本体22に溶着される。容器本体22は、例えば、透明なプラスチックで形成されており、インクカートリッジ21内のインクの残量を目視で確認できるようになっている。
【0019】
インク収納室24は、毛管力によってインクを吸収して保持するインク吸収体28を収納する吸収体収納室26と、インク吸収体28が吸収するインクを貯留する貯留室25とからなる。吸収体収納室26と、貯留室25とは、隔壁27によって仕切られるとともに、その隔壁27に形成されインク収納室24の床面付近に配置された連通口27aによって、各室25,26は連通されている。
【0020】
また、吸収体収納室26の床面には、吸収体収納室26内のインクを容器本体22外へ排出する排出口26aが形成されている。この排出口26aは、その下方へ延びる排出管29とともに、インク取出部31を構成する。排出管29内には、インクを濾過するフイルタ33が設けられる。
【0021】
インク吸収体28は、毛管力を発生する微細な空隙を含むスポンジ状の部材である。具体的には、ウレタンフォームなどを発泡させた発泡材料や、フエルトなどの繊維材料などの多孔質材料が使用される。インク吸収体28は、その毛管力によって大気に対して吸収体収納室26内のインクを負圧に保つ負圧発生部材である。インクカートリッジ21がキャリッジ13に装着されると、吸収体収納室26は、その下方に配置された記録ヘッド12と供給路を通じて連通する。吸収体収納室26のインクを負圧にすることで、記録ヘッド12のノズル内圧が負圧に維持されて、ノズル内でインクのメニスカスが形成される。これにより、ノズルから不用意にインクが漏れ出ないようにしている。
【0022】
フイルタ33は、インク吸収体28と同様に、毛管力を発生するスポンジ状の部材である。このフイルタ33は、その上面がインク吸収体28の底面と圧接して、その毛管力によって、インク吸収体28が吸収しているインクを吸引する。インクカートリッジ21をキャリッジ13に取り付けると、キャリッジ13のスロットに設けられたインク供給針36が、フイルタ33の下面に突き刺さる。これにより、インク供給針36を介して、インクカートリッジ21から記録ヘッド12のノズルへ至るインク供給路が形成される。
【0023】
記録ヘッド12は、記録時には、吸収体収納室26のインクの負圧に抗する吸引力を発生して、吸収体収納室26からインクを吸引してノズルの吐出口から噴射する。この記録ヘッド12のインク吸引によって吸収体収納室26の圧力が減少して、蓋部材23に形成された大気導入口41から吸収体収納室26内に大気が導入される。インク収納室24に収納されたインクは、吸収体収納室26に充填されたインクから消費され、吸収体収納室26には、消費された分のインクが連通口27aを通じて貯留室25から補充される。貯留室25は、インクが減少するとその内部の圧力が低下するので、連通口27aを通じて大気を取り込む。こうした気液交換動作を繰り返しながら、記録ヘッド12へのインク供給が行われる。
【0024】
蓋部材23の上面には、曲がりくねった溝42が形成されている。この溝42の一端42aは、大気導入口41と接続されており、そこから他端42bに向かう経路上には液溜め部43が設けられている。この溝42のうち、他端42b以外の部分(図上2本の2点鎖線の間の部分)は、その上方がシール45によって封止され、他端42bだけが外部に露呈される。この溝42は、吸収体収納室26内のインクが大気導入口41から漏れ出た場合に、そのインクを液溜め部43に導いて、インクカートリッジ21の外部へのインク漏れを防止する。空気は、他端42bから進入して大気導入口41に導かれる。
【0025】
また、蓋部材23の下面には、下方に突出する複数のリブ46が設けられている。各リブ46は、吸収体収納室26に対応する位置に配置されている。各リブ46は、蓋部材23が容器本体22に取り付けられると、吸収体収納室26内に進入して、インク吸収体28の上面と当接して、その底面を吸収体収納室26の床面に押しつける。そして、インク吸収体28を押さえつけてその位置決めを行うことで、インク吸収体28と蓋部材23との間に空間を確保する。これにより、インク吸収体28が位置ずれして大気導入口41を塞いでしまうことを防止している。
【0026】
貯留室25内には、その床面25aに残留した残留インクを押圧して排出口26aから排出されるように送り出す残留インク送り出し機構50が設けられている。残留インク送り出し機構50は、液送部材51と、バネ52と、ロック部材53とからなる。
【0027】
液送部材51は、略直方体形状のブロックであり、貯留室25の隅の待機位置(図3(A)参照)と、この待機位置から床面25aと水平方向に移動して、前記連通口27aにその前面51aが当接する送り出し位置(図3(B)参照)との間で移動自在に設けられている。液送部材51は、バネ52によって、送り出し位置に向けて付勢されている。液送部材51は、その幅が床面25aの幅とほぼ同じ幅であり、液送部材51の両端面は、貯留室25の側面の内壁と当接している。貯留室25の内壁には、液送部材51の両端面と係合して液送部材51の移動方向をガイドするガイドレール54が設けられている。
【0028】
液送部材51の材料は、例えば、ゴムが使用される。液送部材51は、ガイドレール54によって、その底面が床面25aと接触する位置に規制されており、底面を床面25aと摺接させながら、バネ52の付勢により待機位置から送り出し位置に向けて移動する。液送部材51は、貯留室25内の残留インクを、連通口27aを通じて、吸収体収納室26に向けて送り出す。吸収体収納室26にインクを送ると、そのインクはインク吸収体28に吸収される。吸収されたインクは、排出口26aから排出されて、記録ヘッド12へ供給される。
【0029】
なお、本例では、液送部材27aの移動方向の延長線上に排出口26aが配置されており、液送部材27aを送り出し位置に向けて移動すると、残留インクが排出口26aに向けて送り出されるが、排出口26aは、必ずしも液送部材27aの移動方向の延長線上に配置されていなくてもよい。
【0030】
ロック部材53は、バネ52の付勢に抗して、液送部材51を待機位置にロックする。ロック部材53は、液送部材51の上面に配置されその後方から前方に向けて延びた平坦部と、この平坦部の前端に設けられ前面51aと係合する係合部とからなる。このロック部材53は、前面51aと係合して液送部材51を待機位置にロックするロック位置と、このロック位置から上方に向けて移動し、前面51aとの係合を解除して液送部材51のロックを解除する解除位置との間で移動自在に設けられている。ロック部材53の後端には、その中央位置に凹部が形成されており、この凹部がロック部材53の移動方向をガイドするガイド部材56と係合する。ロック部材53は、バネ57によってロック位置に向けて付勢されている。
【0031】
また、ロック部材53の後端には、被吸引部58が取り付けられている。ロック部材53は、その後端の凹部とこの被吸引部58とによって前記ガイド部材56を挟み込むようにして係合する。被吸引部58は、インクジェット記録装置10に設けられたロック解除装置61とともに、ロック部材53のロック解除機構を構成する。ロック解除装置61は、キャリッジ13に設けられる。
【0032】
ロック解除装置61は、クーロン力による静電吸引を利用して、ロック部材53のロックを解除する。ロック解除装置61は、被吸引部58と対向する位置に配置され、ロック部材53の移動方向と平行に移動する可動棒61aと、この可動棒61aの上端部に設けられ、被吸引部58を容器本体22の側壁を介して引きつける吸引力を発生する吸引部61bとを備えている。被吸引部58及び吸引部61bは、静電気が帯電可能な材料、例えば、金属で形成される。ロック解除装置61は、吸引部61bに吸引力を発生させて被吸引部58を引きつけた状態で、可動棒61aを上昇させることにより、ロック部材53を解除位置に移動させる。
【0033】
また、インクジェット記録装置10には、インクカートリッジ21のインク切れ(インクを使い切ったかどうか)を検知するインク切れ検知センサ66が設けられている。このインク切れ検知センサ66は、インクカートリッジ21がキャリッジ13にセットされたときに貯留室25の底部と対向する位置に配置される。インク切れ検出センサ66は、例えば、貯留室25内に向けて投光する投光部とその反射光を受光する受光部とからなる反射型フォトセンサが使用される。インク切れ検知センサ66は、貯留室25の底面に向けて投光し、そこで反射した反射光量に応じたレベルの信号を出力する。貯留室25内のインク量が変化すると、プリズムで反射する反射光量が変化する。インクジェット記録装置10は、インク切れ検知センサ66の信号の出力レベルに基づいて、貯留室25内のインク切れを判定する。
【0034】
このインク切れ検知センサ66がインク切れを検出した場合でも、貯留室25の床面25a付近には、インクが残留している場合が多い。インクジェット記録装置10は、インク切れ検知センサ66がインク切れを検出したときに、ロック解除装置61を作動させて、ロック部材53のロックを解除する。これにより貯留室25内の残留インクが吸収体収納室26に送り込まれる。残留インクの量は、経験的に把握することができるので、インクジェット記録装置10は、残留インクの送り出しを行った後、記録ヘッド12のノズルの吐出回数をカウントすることによって、残留インクの残量を使い切ったことを検出する。
【0035】
以下、上記構成による作用について、図3を参照しながら説明する。インクカートリッジ21をキャリッジ13にセットして、印画を行うと、記録ヘッド12によってインクカートリッジ21内のインク68が消費されて残量が減少する。図3(A)に示すように、貯留室25内のインク68が残り僅かになると、インク切れ検知センサ66によって、インク切れが検出される。インクジェット記録装置10は、インク切れを検出すると、ロック解除装置61を作動させて、液送部材51のロックを解除する。液送部材51は、バネ52の付勢力により、待機位置から送り出し位置に向けて移動して、床面25aに残留したインク68を吸収体収納室26に送り込む。この後、インクジェット記録装置10は、ノズルの吐出回数をカウントして、それが所定値に達するまで、記録動作を許容し、所定値に達したときに残留インクも含めてインクを使い切ったと判定して、ユーザに対してインク切れを報知して、インクカートリッジ21の交換を促す。
【0036】
上記実施形態で説明した残留インク送り出し機構は、上記形態に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記残留インク送り出し機構50では、ロック部材53を垂直方向に平行移動させて液送部材51のロックを解除するようにしているが、図4に示す残留インク送り出し機構71のように、ロック部材72を回転させて液送部材51のロックを解除するようにしてもよい。なお、便宜上、上記実施形態と同一部材については同一の符合を付す。
【0037】
ロック部材72は、軸72aを中心に回動自在に設けられており、図4(A)に示すように、液送部材51をロックするロック位置と、図4(B)に示すように、ロックを解除する解除位置との間で回動する。ロック部材72は、バネ57によってロック位置に向けて付勢されている。また、ロック部材72には、磁石によって引きつけられる被吸引部74が取り付けられている。被吸引部74は、例えば、金属である。ロック解除装置76は、電磁石を備えている。インク切れ検出センサ66がインク切れを検出するまでの間は、図4(A)に示すように、電磁石はOFFしており、インク切れが検出されると、図4(B)に示すように、電磁石がONして、磁力によって被吸引部74が引きつけられる。これにより、ロック部材72が解除位置に向けて回動し、液送部材51のロックが解除される。
【0038】
また、図5に示す残留インク送り出し機構81のように、ロック部材82を、ロック解除装置83の押圧によって解除するようにしてもよい。ロック部材82は、上記ロック部材51と同様に、液送部材51をロックするロック位置から、ガイド棒84にガイドされながら上方に移動してロックを解除する。ロック部材82は、バネ86によってロック位置に付勢されている。
【0039】
ロック解除装置83は、ロック部材82を押圧して、解除位置に移動して液送部材51のロックを解除する。ロック解除装置83には、上下方向に移動する押圧部材83aが設けられている。容器本体87の底部には、開口87aが形成されており、押圧部材83aは、この開口87aを通じて貯留室25内に進入して、ロック部材82と当接する。ロック部材82の後端には、押圧部材83aの先端と当接してその押圧を受ける被押圧部88が設けられている。開口87aは弾性膜89で覆われており、これにより貯留室25内のインクが外部に漏れないようにしている。押圧部材83aは、この弾性膜89を二点鎖線で示すように変形させながら、貯留室25内に進入し、弾性膜89を介して被押圧部88と当接する。
【0040】
なお、押圧部材83aが貯留室25に進入するタイミングは、インク切れ検知センサ66によってインク切れが検出されたときなので、貯留室25内のインクの残量は僅かであり、押圧部材83aが進入した後は、開口87aが開放されても、インク漏れの懸念は少ない。そのため、開口87aを覆う膜としては、弾性膜でなくてもよく、例えば、開口87aを水密に覆うフイルムなどでもよい。この場合、押圧部材83aは、フイルムを突き破って、貯留室25内に進入する。
【0041】
なお、上記実施形態では、インクジェット記録装置に、ロック解除装置を設け、インク切れが検出されたときに、自動的に液送部材のロックを解除して、残留インクの送り出しが行われるようにしているが、ユーザーのマニュアル操作によって液送部材のロックを解除するようにしてもよい。
【0042】
上記実施形態では、インクカートリッジを記録ヘッドの上方に取り付ける例で説明しているが、記録ヘッドよりも、下方に取り付けるようにしてもよい。記録ヘッドよりも下方に配置した場合には、水頭差によって記録ヘッドの負圧を維持できるため、インクカートリッジに負圧発生機能を持たせなくても、ノズルからのインク漏れを防止することができる。そのため、このような場合には、インクカートリッジに負圧発生部材であるインク吸収体を設ける必要はないため、貯留室のみの1室構造としてもよい。この場合には、排出口は貯留室に設けられ、液送部材は、貯留室内の排出口に向けて残留インクを送り出す。
【0043】
なお、上記実施形態では、インクタンクと記録ヘッドとが分離可能に別体で構成されたインクカートリッジの例で説明したが、インクタンクと記録ヘッドとが一体に構成されたインクカートリッジに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】インクカートリッジの分解斜視図である。
【図3】残留インク送り出し機構の動作説明図である。
【図4】図3とは別の形態の残留インク送り出し機構の説明図である。
【図5】押圧によってロックを解除する場合の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10 インクジェット記録装置
11 用紙
12 記録ヘッド
21 インクカートリッジ
24 インク収納室
25 貯留室
26 吸収体収納室
26a 排出口
27 隔壁
27a 連通口
50 残留インク送り出し機構
51 液送部材
52 バネ
53,72,82 ロック部材
61,76,83 ロック解除装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出方式の記録ヘッドへ供給されるインクを収納するインク収納室と、前記記録ヘッドへインクを供給するために、前記インク収納室の床面に形成されインク収納室内のインクを外部へ排出する排出口とを備えたインクタンクにおいて、
前記インク収納室内に配置され、前記床面に残留している残留インクを押圧して前記排出口から排出されるように送り出す送り出し位置と、待機位置との間で移動自在な液送部材と、前記液送部材を前記送り出し位置に付勢する付勢部材と、この付勢部材の付勢力に抗して前記液送部材を前記待機位置にロックするロック位置と、このロックを解除する解除位置との間で変位自在なロック部材とからなる残留インク送り出し機構を設けたことを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
前記インク収納室は、前記排出口が配置されるとともに毛管力によってインクを吸収して保持するインク吸収体を収納する吸収体収納室と、隔壁によって前記吸収体収納室と仕切られるとともに、前記隔壁に形成され前記床面付近に配置された連通口を通じて前記吸収体収納室と連通し、前記吸収体収納室へ送られるインクを貯留する貯留室とからなり、
前記残留インク送り出し機構は、前記貯留室に配置されており、前記液送部材は、前記連通口に向けて前記残留インクを送り出すことを特徴とする請求項1記載のインクタンク。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記インク収納室の外部に配置された解除装置によって解除されることを特徴とする請求項1又は2記載のインクタンク。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記解除装置によって静電吸引によって吸引されて前記解除位置に向けて変位することを特徴とする請求項3記載のインクタンク。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記解除装置によって磁力によって引きつけられて前記解除位置に向けて変位することを特徴とする請求項3記載のインクタンク。
【請求項6】
前記解除装置には、前記ロック部材を押圧してそのロックを解除する押圧部材が含まれており、前記インク収納室には、前記押圧部材が進入可能な開口が形成されていることを特徴とする請求項3記載のインクタンク。
【請求項7】
前記開口には、弾性膜が設けられており、前記ロック部材は、前記弾性膜を介して前記押圧部材によって押圧されることを特徴とする請求項6記載のインクタンク。
【請求項8】
吐出方式の記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であり、請求項1〜7いずれか記載のインクタンクを使用することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インクタンクのインク切れを検出するインク切れ検出センサと、前記解除装置とを設け、前記インク切れ検出センサがインク切れを検出したときに、前記解除装置によって前記ロック部材を解除することを特徴とする請求項8記載のインクジェット記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−272899(P2006−272899A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99469(P2005−99469)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】