説明

インク組成物、これを使用して製造した金属薄膜及びその製造方法

【課題】本発明は、インク組成物、これを使用して製造した金属薄膜及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明によるインク組成物は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)と、金含有錯化合物を分散させる溶媒とを含む。本発明によると、選択的に印刷して低温で焼結可能なインク組成物、これを使用して製造した金属薄膜及びその製造方法を提供することが可能である。
[化1]
AuL'

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、これを使用して製造した金属薄膜及びその製造方法に関し、特に、選択的に印刷して低温で焼結可能なインク組成物、これを使用して製造した金属薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金(gold)材料は、電子装置、特に集積回路、リードフレーム(lead frame)及びプリント回路基板のような電子パッケージ装置を製造するのに有効に使用され、電解メッキまたは無電解置換メッキを通じて導入される。
【0003】
しかしながら、メッキ工程は、パッケージ基板の最終段階で行われる高価な工程であって、さらにメッキ槽の汚染や金イオンの濃度などの管理が非常に困難である。特に、メッキ槽の汚染は、金メッキ不良の原因となり、これによってパッケージ基板を廃棄せねばならなくなるなど、工程不良による損失が非常に大きい。
【0004】
また、高価な金メッキ液が実際の実装部分だけに適用されるのではなく、不必要な部分にも金がメッキされることにより発生する金の損失量が多いため、選択的な金メッキ方法が要求されている。
【0005】
さらに、既存の金属薄膜は、金属有機物を用いて化学気相蒸着(CVD)や原子層蒸着法(ALD)、プラズマ蒸着、スパッタリング法、電解メッキ法、無電解メッキによって形成可能であった。しかし、このような方法は、高真空、高温、露光、エッチングなど多数の段階などを経て金属パターンを製造するという不都合がある。
【0006】
このような多数の段階を簡素化するために、近年、インクジェット方式のようなDOD(drop on demand)技法を利用した金属パターニングについて多くの研究が行われており、特に金属材料に関しては、ナノ金属粒子を分散させてインク化し、基材に印刷する方法が研究されている。しかし、このような方法は、ナノ金属粒子の分散のために含有される多量の分散剤を取り除くために高温で焼結しなければならないため、基材の種類に制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、選択的に印刷して低温で焼結可能なインク組成物、これを使用して製造した金属薄膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)と、金含有錯化合物を分散させる溶媒と、を含むインク組成物を提供する。
[化1]
AuL'
【0009】
ここで、L、L'は、ノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであってもよい。
【0010】
ここで、インク組成物100wt%に対して、金含有錯化合物は0.1wt%以上10wt%以下で添加されてもよい。
【0011】
インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤をさらに含んでもよい。
【0012】
溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の別の態様は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)を含む金属薄膜を提供する。
[化1]
AuL'
【0014】
ここで、L、L'は、ノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであってもよい。
【0015】
ここで、金属薄膜は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷またはオフセット印刷、スピンコーティング、ディップコーティング、フローコーティング、ロールコーティング及びスプレーコーティング方法のうち選択される少なくとも一つの方法で形成されてもよい。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明のまた別の態様は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)を溶媒に分散させて反応溶液を準備する段階と、反応溶液を攪拌して反応物を形成する段階と、反応物を洗浄及び濾過して生成物を収得する段階と、を含むインク組成物の製造方法を提供する。
[化1]
AuL'
【0017】
ここで、L、L'は、ノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであってもよい。
【0018】
ここで、インク組成物100wt%に対して、金含有錯化合物は0.1wt%以上10wt%以下で添加されてもよい。
【0019】
反応溶液を準備する段階で、インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤を添加してもよい。
【0020】
溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも何れか一つであってもよい。
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明のまた別の態様は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)及び溶媒を含むインク組成物を基材上に塗布する段階と、インク組成物を熱処理する段階と、を含む金属薄膜の製造方法を提供する。
[化1]
AuL'
【0022】
インク組成物を基材上に塗布する段階で、基材は、有機物含有基材及び無機物含有基材のうち選択される少なくとも何れか一つからなってもよい。
【0023】
インク組成物を基材上に塗布する段階で、基材は、ビスマレイミドトリアジン(bismaleimide triazine)、ポリエステル、ポリイミド、ガラス及びシリコンのうち選択される少なくとも何れか一つからなってもよい。
【0024】
インク組成物を熱処理する段階で、インク組成物は、空気、窒素、水素、アルゴン、酸素及びこれらの混合ガス雰囲気のうち選択される少なくとも何れか一つの雰囲気の条件で熱処理されてもよい。
【0025】
インク組成物を熱処理する段階で、インク組成物は、0℃超過200℃以下の温度で熱処理されてもよい。
【0026】
L、L'は、ノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つからなってもよい。
【0027】
インク組成物100wt%に対して、金含有錯化合物は0.1wt%以上10wt%以下で添加されてもよい。
【0028】
インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤がさらに添加されてもよい。
【0029】
溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも何れか一つからなってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、選択的に印刷して低温で焼結可能なインク組成物、これを使用して製造した金属薄膜及びその製造方法を提供することができる。
【0031】
また、本発明による金含有錯化合物を含むインク組成物を使用した金属薄膜の製造方法は、既存の化学気象蒸着(CVD)や原子層蒸着法(ALD)、プラズマ蒸着、スパッタリング法の問題点である高真空、高温、露光、エッチングなどの多数の工程段階を簡素化して、工程費用を節減することができ、電解メッキ法、無電解メッキの問題点である高価な金メッキ液の管理が必要ないので、費用の節減が可能である。
【0032】
また、本発明による金属薄膜は、低温で熱処理されることができるので、既存の金属粒子を含有するインク組成物とは異なって、そのインク組成物が適用される基材が制限されず、様々な種類の基材に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態によって製造された金属薄膜の印刷イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は他の様々な形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は当業界における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。よって、図面の要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張される場合があり、図面上の同じ符号は同じ要素を示す。
【0035】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0036】
本発明の実施形態によるインク組成物は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物及び金含有錯化合物を分散させる溶媒を含む。
[化1]
AuL'
【0037】
式中、L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、好ましくはノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであってもよい。そして、Xは、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数である。
【0038】
インク組成物100wt%に対して、金含有錯化合物は0.1wt%〜10wt%で添加できるが、インク組成物のうち金含有錯化合物の量が1wt%未満の場合は、均一な塗膜形成が不可能であり、10wt%を超過する場合は、溶解度の減少によって沈澱が発生するおそれがある。
【0039】
また、反応溶液を準備する段階で、インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤を添加してもよい。ここで、粘度調節剤は、インク組成物の粘性を調節することができるものであれば制限されることなく使用可能であり、市販の粘度調節剤を使用してもよい。
【0040】
一方、インク組成物100wt%に対して、溶媒は、金含有錯化合物を除いた残量で添加されてもよい。また、インク組成物に粘度調節剤がさらに含まれる場合、溶媒は、金含有錯化合物及び粘度調節剤を除いた残量で添加されてもよい。
【0041】
金含有錯化合物を分散させる溶媒の種類は特に限定されるものではないが、溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0042】
本発明の実施形態による金属薄膜は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物を含む。
[化1]
AuL'
【0043】
式中、L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、好ましくはノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであってもよい。そして、Xは、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数である。
【0044】
金属薄膜は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷またはオフセット印刷、スピンコーティング、ディップコーティング、フローコーティング、ロールコーティング及びスプレーコーティング方法のうち選択される少なくとも一つの方法で形成してもよいが、金属薄膜を形成する方法はこれに限定されず、選択的に金属薄膜を形成することができる方法であれば制限されることなく適用可能である。すなわち、本発明の実施形態による金属薄膜の製造方法は、既存の化学気相蒸着(CVD)や原子層蒸着法(ALD)、プラズマ蒸着、スパッタリング法、電解メッキ法、無電解メッキなどの方法を使用して、高真空、高温、露光、エッチングなどの多くの段階を経て金属薄膜を製造するという不都合を改善することができる。
【0045】
本発明の実施形態によるインク組成物の製造方法は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物を第1の溶媒に分散させて反応溶液を準備する段階と、この反応溶液を攪拌して反応物を形成する段階と、この反応物を洗浄及び濾過して生成物を収得する段階とを含む。
[化1]
AuL'
【0046】
式中、L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、好ましくはノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであってもよい。そして、Xは、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数である。
【0047】
インク組成物100wt%に対して、金含有錯化合物は0.1wt%〜10wt%で添加できるが、インク組成物のうち金含有錯化合物の量が1wt%未満の場合は、均一な塗膜形成が不可能であり、10wt%を超過する場合は、溶解度の減少によって沈澱が発生するおそれがある。
【0048】
また、反応溶液を準備する段階で、インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤を添加してもよい。ここで、粘度調節剤は、インク組成物の粘性を調節することができるものであれば制限されることなく使用可能であり、市販の粘度調節剤を使用してもよい。
【0049】
一方、インク組成物100wt%に対して、溶媒は、金含有錯化合物を除いた残量で添加されてもよい。また、インク組成物に粘度調節剤がさらに含まれる場合、溶媒は、金含有錯化合物及び粘度調節剤を除いた残量で添加されてもよい。
【0050】
金含有錯化合物を分散させる溶媒の種類は特に限定されるものではないが、溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0051】
本発明の実施形態による金属薄膜の製造方法は、下記の式(1)で表される金含有錯化合物及び溶媒を含むインク組成物を基材上に塗布する段階と、インク組成物を熱処理する段階とを含む。
[化1]
AuL'
【0052】
式中、L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、好ましくはノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであってもよい。そして、Xは、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数である。
【0053】
インク組成物100wt%に対して、金含有錯化合物は0.1wt%〜10wt%で添加できるが、インク組成物のうち金含有錯化合物の量が1wt%未満の場合は、均一な塗膜形成が不可能であり、10wt%を超過する場合は、溶解度の減少によって沈澱が発生するおそれがある。
【0054】
また、インク組成物のために準備される反応溶液には、インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤を添加してもよい。ここで、粘度調節剤は、インク組成物の粘性を調節することができるものであれば制限されることなく使用可能であり、市販の粘度調節剤を使用してもよい。
【0055】
一方、インク組成物100wt%に対して、溶媒は、金含有錯化合物を除いた残量で添加されてもよい。また、インク組成物に粘度調節剤がさらに含まれる場合、溶媒は、金含有錯化合物及び粘度調節剤を除いた残量で添加されてもよい。
【0056】
金含有錯化合物を分散させる溶媒の種類は特に限定されるものではないが、溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0057】
インク組成物を基材上に塗布する段階で、基材は、有機物含有基材及び無機物含有基材のうち選択される少なくとも何れか一つであってもよい。これは、インク組成物が200℃以下の温度で熱処理されることができるからである。基材は、ビスマレイミドトリアジン(bismaleimide triazine)、ポリエステル、ポリイミド、ガラス及びシリコンのうち選択される少なくとも何れか一つからなってもよい。
【0058】
既存のインク組成物は、金属粒子の分散のための多量の分散剤を含有しており、インク組成物を基材に塗布した後、含有された多量の分散剤を取り除くために250℃以上の高温で焼結を実施しなければならないため、基材の種類が制限される問題点があった。しかし、本発明の実施形態による金属薄膜に含まれるインク組成物が適用される基材は、既存の金属粒子を含有するインク組成物が適用される基材に制限があったこととは異なって、基材の種類が制限されない。
【0059】
また、インク組成物は、空気、窒素、水素、アルゴン、酸素及びこれらの混合ガス雰囲気のうち選択される少なくとも何れか一つの雰囲気の条件で熱処理される。
【0060】
以下、本発明の好ましい実施例及比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
<実施例1>
100mLシュレンク管(schlenk flask)でHAuCl3HO1.8g(4.57ミリモル)をジエチルエーテル(diethyl ether)30mLに溶解し、ノルボルナジエン(norbornadiene)2.3g(24.96ミリモル)を徐々に投入した後、1時間の間攪拌して反応させた。反応が進行されるにつれて、白色固体が生成された。その後、液体をメンブレインフィルタで濾過した後、冷たいジエチルエーテル20mLで3回洗浄し、減圧濾過で溶媒を取り除いて、白色の金含有錯化合物0.8g(収率:53.8%)を得た。
【0062】
<実施例2>
実施例1で製造された金含有錯化合物0.8gを2(2‐ブトキシエトキシ)エタノール(2(2‐butoxyethoxy)ethanol)6.7gに溶解して、粘度が5.3cpで表面張力が30.8mN/mのインク組成物を製造した。製造されたインク組成物をビスマレイミドトリアジンからなる基材上にインクジェット印刷した後、150℃で10分間熱処理して形成した金属薄膜の印刷イメージを図1に示した。
【0063】
<比較例>
100mLシュレンク管でHAuCl3HO1.8g(4.57ミリモル)をジエチルエーテル30mLに溶解し、1,5‐シクロオクタジエン2.7g(25ミリモル)を徐々に投入した後、1時間の間攪拌して反応させた。反応が進行されるにつれて白色固体が生成された。その後、液体をメンブレインフィルタで濾過した後、冷たいジエチルエーテル20mLで3回洗浄した後、減圧下で溶媒を取り除いて白色粉末0.9g(収率:48%)を得た。この白色粉末を2(2‐ブトキシエトキシ)エタノール、トルエン(toluene)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、エタノールなどの溶媒に溶解しようとしたが、溶解されなかった。
【0064】
上述したように、本発明の実施形態によれば、選択的に印刷して低温で焼結可能なインク組成物、これを使用して製造した金属薄膜及びその製造方法を提供することができる。
【0065】
実施例1で製造された金含有錯化合物を含むインク組成物を使用した金属薄膜の製造方法は、既存の高真空、高温、露光、エッチングなどの多くの工程段階を経て金属薄膜を製造するという不都合を改善することができる。
【0066】
また、実施例2で製造された実施例1のインク組成物で形成された金属薄膜は、200℃以下の温度で熱処理できるので、既存の金属粒子を含有するインク組成物が適用される基材が制限されるのとは異なって、制限されることなく、様々な種類の基材に適用されることができる。
【0067】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。よって、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば理解できるはずであり、これも添付の特許請求の範囲に記載した技術的思想に属するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)と、
前記金含有錯化合物を分散させる溶媒と、
を含むことを特徴とするインク組成物。
[化1]
AuL'
【請求項2】
前記L、L'は、ノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記インク組成物100wt%に対して、前記金含有錯化合物は0.1wt%以上10wt%以下で添加されることを特徴とする請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤をさらに含むことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)を含むことを特徴とする金属薄膜。
[化1]
AuL'
【請求項7】
前記L、L'は、ノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであることを特徴とする請求項6に記載の金属薄膜。
【請求項8】
前記金属薄膜は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷またはオフセット印刷、スピンコーティング、ディップコーティング、フローコーティング、ロールコーティング及びスプレーコーティング方法のうち選択される少なくとも一つの方法で形成されたことを特徴とする請求項6または7に記載の金属薄膜。
【請求項9】
下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)を溶媒に分散させて反応溶液を準備する段階と、
前記反応溶液を攪拌して反応物を形成する段階と、
前記反応物を洗浄及び濾過して生成物を収得する段階と、
を含むことを特徴とするインク組成物の製造方法。
[化1]
AuL'
【請求項10】
前記L、L'は、ノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つであることを特徴とする請求項9に記載のインク組成物の製造方法。
【請求項11】
前記インク組成物100wt%に対して、前記金含有錯化合物は0.1wt%以上10wt%以下で添加されることを特徴とする請求項9または10に記載のインク組成物の製造方法。
【請求項12】
前記反応溶液を準備する段階で、前記インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤を添加することを特徴とする請求項9から11の何れか1項に記載のインク組成物の製造方法。
【請求項13】
前記溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも何れか一つからなることを特徴とする請求項9から12の何れか1項に記載のインク組成物の製造方法。
【請求項14】
下記の式(1)で表される金含有錯化合物(L、L'は、ジオレフィン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであり、Xは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択される少なくとも一つであり、m=1〜10の定数、n=1〜10の定数、o=0〜10の定数、p=0〜10の定数)及び溶媒を含むインク組成物を基材上に塗布する段階と、
前記インク組成物を熱処理する段階と、
を含むことを特徴とする金属薄膜の製造方法。
[化1]
AuL'
【請求項15】
前記インク組成物を前記基材上に塗布する段階で、
前記基材は、有機物含有基材及び無機物含有基材のうち選択される少なくとも何れか一つからなることを特徴とする請求項14に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項16】
前記インク組成物を前記基材上に塗布する段階で、
前記基材は、ビスマレイミドトリアジン(bismaleimide triazine)、ポリエステル、ポリイミド、ガラス及びシリコンのうち選択される少なくとも何れか一つからなることを特徴とする請求項14または15に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項17】
前記インク組成物を熱処理する段階で、
前記インク組成物は、空気、窒素、水素、アルゴン、酸素及びこれらの混合ガス雰囲気のうち選択される少なくとも何れか一つの雰囲気の条件で熱処理されることを特徴とする請求項14から16の何れか1項に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項18】
前記インク組成物を熱処理する段階で、
前記インク組成物は、0℃超過200℃以下の温度で熱処理されることを特徴とする請求項14から17の何れか1項に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項19】
前記L、L'は、ノルボルナジエン(norbornadiene)及びその誘導体、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)及びその誘導体、シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene)及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも何れか一つからなることを特徴とする請求項14から18の何れか1項に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項20】
前記インク組成物100wt%に対して、前記金含有錯化合物は0.1wt%以上10wt%以下で添加されることを特徴とする請求項14から19の何れか1項に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項21】
前記インク組成物の粘性を調節する粘度調節剤がさらに添加されることを特徴とする請求項14から20の何れか1項に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項22】
前記溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも何れか一つからなることを特徴とする請求項14から21の何れか1項に記載の金属薄膜の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−208119(P2011−208119A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247786(P2010−247786)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】