説明

インク組成物並びにこれを用いたインクジェット記録方法、印刷物、平版印刷版の作製方法及び平版印刷版

【課題】 感度が高く、良好な画質の画像を与えるインク組成物、インクジェット記録方法、印刷物を提供し、また、滲みがなく、高感度で、特に被記録媒体への密着性が高い画像が記録可能な平版印刷版及びその作製方法を提供する。


【解決手段】 (a)ラジカル重合性化合物、及び(b)光重合開始剤として少なくとも1種の下記一般式(I)で表されるピリチオン化合物、を含有することを特徴とするインク組成物:

(式中、R、R'は水素原子もしくは一価の基を表す。nは1〜4の整数を表し、nが2以上の場合、R'は互いに同一でも異なっていてもよい。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度であり、密着性が良好で高画質の画像を形成することができ、かつ保存安定性の良好なインク組成物、特に放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物、並びにそれを用いるインクジェット記録方法及び印刷物に関する。本発明はまた、現像処理が不要であり、高耐刷性であり、かつ高画質の画像形成が可能な平版印刷版及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高くかつ廃材が出るなどの問題がある。一方インクジェット方式は、安価な装置で、且つ必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
インクジェット方式の画像記録方式において、紫外線などの放射線による硬化可能なインクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつある。
このような放射線硬化型インク組成物では、十分に高い感度および高画質の提供が求められている。高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不十分な硬化に基づく低分子物質の発生の防止等、多くの利益が生じる。また、高感度化は、特に上記インクジェット記録用インク組成物を平版印刷版の画像部として使用した場合、画像部の硬化強度が高まることになり、高耐刷性が得られることになる。
また、インクジェット記録用インク組成物は、それ自体で市場に出回り、様々な条件で保存されるため、高い保存安定性が要求される。
【0004】
放射線硬化型インク組成物では、従来、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン等が光重合開始剤として一般的に用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらの光重合開始剤を用いた場合、光重合性組成物の硬化の感応度が低いので画像形成における像露光に長時間を要した。このため細密な画像の場合には、操作にわずかな振動があると良好な画質の画像が再現されず、さらに露光の光源のエネルギー放射量を増大しなければならないためにそれに伴なう多大な発熱の放射を考慮する必要があった。
【0005】
下記特許文献1には、インクジェット記録方法にて通常直接記録することが困難な支持体に対しても、滲みがなく、高感度で、被記録媒体への密着性が高い画像が記録可能で、かつ皮膚刺激性や感作性の少ない安全性が高いインクジェット記録用インク組成物を提供すること等を目的として、特定のアクリレート化合物群からなる重合性化合物を含有する組成物が提案されている。しかし、硬化感度が十分ではなく、平版印刷版とした時の耐刷性においても劣る。また、インク組成物としての保存安定性にも欠ける。
【0006】
また、従来の高圧水銀ランプやキセノンランプ光源ではなく、発光ダイオードを照射光源として用いたインクジェット硬化システムが提案されている(UV−LED光源、例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、実用に耐え得る高感度な放射線硬化型のインク組成物は、未だ開発されていないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−192943号公報
【特許文献2】特開2004−181951号公報
【非特許文献1】ブルース M.モンロー(Bruce M. Monroe)ら著,ケミカル レビュー(Chemical Reviews),第93巻,(1993年),pp.435−448.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、硬化感度が高く、密着性が良好で高画質の画像を形成することができ、かつ保存安定性の良好なインク組成物、特にインクジェット記録用インク組成物、並びにそれを用いるインクジェット記録方法及び印刷物を提供することである。
他の本発明の目的は、特にUV−LED光源を使用した際に硬化感度が高く、密着性が良好で高画質の画像を形成することができ、かつ保存安定性の良好なインク組成物を提供することである。
また、滲みがなく、高感度で、被記録媒体への密着性が高い画像が記録可能な平版印刷版及びその作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、(a)ラジカル重合性化合物、及び(b)光重合開始剤として少なくとも1種の下記一般式(I)で表されるピリチオン化合物、を含有することを特徴とするインク組成物、により解決される。
【化1】

(式中、R、R'は水素原子もしくは一価の基を表す。nは1〜4の整数を表し、nが2以上の場合、R'は互いに同一でも異なっていてもよい。)
さらに、上記インク組成物は(c)色材を含有することが好ましい。
また、上記インク組成物において、前記(c)色材が顔料または油溶性染料であることが好ましい。
本発明の他の態様では、上記インク組成物は、インクジェット記録用インク組成物である。
更に本発明は、上記インク組成物を被記録媒体に噴射し、着弾させる工程、及び、前記インク組成物に放射線を照射して硬化させる工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、を提供する。
また本発明は、被記録媒体上に、上記インク組成物を噴射し、着弾させた後、放射線を照射して前記インク組成物を硬化させてなる印刷物、を提供する。
また本発明は、上記インク組成物を、親水性支持体上に射出した後、放射線を噴射し、着弾させた後、インクを硬化させることにより疎水性領域を形成することを特徴とする平版印刷版の作製方法、を提供する。
また本発明は、親水性支持体上に、上記インク組成物を噴射し、着弾させた後、放射線を照射してインク組成物を硬化させることにより形成された疎水性領域を有する平版印刷版、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高感度であり、支持体や紙等の被記録媒体への密着性が良好で高画質の画像を形成することができるインク組成物を得ることができる。また、本発明のインク組成物は高い保存安定性を示す。さらに本発明のインク組成物を平版印刷版の画像形成に用いると、現像処理が不要であり、高耐刷性であり、かつ高画質の画像形成が可能な平版印刷版を得ることができる。
本発明のインク組成物が上記の効果を奏する理由は明らかではないが、インク組成物に含有されるピリチオン化合物は、365nm付近に吸収極大を持つため、特に波長365nmの紫外光を出力するUV−LED光源を使用する際に、高効率でラジカルを発生させることができる。これにより重合反応がより速く進み、感度向上が達成されると考えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)インク組成物
本発明のインク組成物は、(a)ラジカル重合性化合物、及び(b)光重合開始剤として少なくとも1種の一般式(I)で表されるピリチオン化合物、を含有する。
(1-1)ラジカル重合性化合物
本発明のインク組成物に含有されるラジカル重合性化合物としては、各種ラジカル重合性モノマーを使用する事ができる。ラジカル重合性モノマーの重合性官能基については重合性やインク及び硬化組成物の物性を調整する目的で任意に選択可能であるが、重合速度や汎用性の観点から、ラジカル重合性モノマーとして(メタ)アクリレートから誘導されるモノマーが好ましく用いられる。
【0012】
本発明に用いられる(メタ)アクリレートから誘導されるモノマー(以下、(メタ)アクリレート類とも呼ぶ)としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレート類としては、ヘキシル(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸ヘキシル、以下同様)、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0013】
二官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
三官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等を挙げることができる。
【0015】
四官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0016】
五官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0017】
六官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0018】
本明細書において、“(メタ)アクリレート”はメタクリレートおよびアクリレートの両方の構造をとり得ることを表す省略的表記である。
【0019】
本発明のラジカル重合性化合物として用いることができる(メタ)アクリレート類以外のモノマーとしては以下のものが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。ここで(メタ)アクリルアミドはメタクリルアミド又はアクリルアミドの両方の構造をとり得る事を示す。
【0020】
オレフィン類としては、具体的には、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、シクロヘキサジエン等が挙げられる。
スチレン類としては具体的には、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0021】
ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0022】
その他モノマーとして、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、ビニルフォルムアミド、ビニリデンクロリド、メチレンマロノニトリル、ビニリデン、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0023】
(1-2)ピリチオン化合物
本発明におけるピリチオン化合物(2−メルカプトピリジン−Nオキシド骨格)は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【化2】

(式中、R、R'は水素原子もしくは一価の基を表す。nは1〜4の整数を表し、nが2以上の場合、R'は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0024】
Rは水素原子または一価の基(原子を含む)を表すが、合成の簡便性、化合物の安定性を考慮すると、以下に示す基が好ましい。好ましい一価の基としては、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基、ホルミル基、アルキル、アリールもしくは複素環アシル基、アルキル、アリールもしくは複素環スルホニル基、アルキル、アリールもしくは複素環スルフィニル基、アルキル、アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、ホスホニル基等を挙げることができる。
【0025】
さらに詳しくは、Rは水素原子、脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1〜36、好ましくは炭素数1〜10の、直鎖、または分岐鎖アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−オクチル)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、さらに好ましくは6〜22のアリール基)、複素環基(中でも好ましくは、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、イオウ原子を1個または2個以上含む芳香族もしくは非芳香族の5、6員環)、ホルミル基、炭素数2〜22のアルキル、アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル)、炭素数1〜22のアルキル、アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)、炭素数1〜22のアルキル、アリールもしくは複素環スルフィニル基(例えば、オクタンスルフィニル、ドデカンスルフィニル、フェニルスルフィニル)、炭素数2〜22のアルキル、アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、2−ペンタデシルオキシカルボニル、2−ピリジンオキシカルボニル)、炭素数2〜22のカルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、)、炭素数1〜22のスルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、炭素数1〜22のホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、などが挙げられる。
【0026】
Rとしてより好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数2〜22のカルバモイル基、炭素数2〜22のアルキルもしくはアリールアシル基が挙げられる。
【0027】
R'は水素原子または一価の基(原子を含む)を表すが、以下に示す基が好ましい。好ましい一価の基としては、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル、アリールもしくは複素環チオ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、スルホニルオキシ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルケニルオキシ基、ホルミル基、アルキル、アリールもしくは複素環アシル基、アルキル、アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、アルキル、アリールもしくは複素環オキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホ基、無置換のアミノ基等をあげることができる。
【0028】
さらに詳しくは、R'は水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1〜36、好ましくは炭素数1〜10の、直鎖、または分岐鎖アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−オクチル)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、さらに好ましくは6〜22のアリール基(例えば、フェニル)、複素環基(中でも好ましくは、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、イオウ原子を1個または2個以上含む芳香族もしくは非芳香族の5、6員環)、炭素数1〜15のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−ドデシルオキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−tert−ブチルフェノキシ)、炭素数1〜22のアルキル、アリールもしくは複素環チオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、テトラデシルチオ、2−フェノキシエチルチオ、3−フェノキシプロピルチオ、フェニルチオ、2−ピリジルチオ)、炭素数2〜22のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ、ヘキサデカノイルオキシ)、炭素数2〜22のカルバモイルオキシ基(例えば、N−エチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、炭素数3〜16のシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、炭素数1〜22のスルホニルオキシ基(例えば、ドデシルスルホニルオキシ)、炭素数2〜22のアシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド)、炭素数1〜22のアルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノドデシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、炭素数6〜30のアリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、炭素数1〜22のウレイド基(例えば、メチルウレイド、フェニルウレイド、N,N−ジブチルウレイド、ジメチルウレイド)、炭素数1〜22のスルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−メチル−N−デシルスルファモイルアミノ)、炭素数2〜22のアルケニルオキシ基(例えば、2−プロペニルオキシ)、ホルミル基、炭素数2〜22のアルキル、アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、3−フェニルプロパノイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、ニコチノイル、3−フロイル)、炭素数2〜22のアルキル、アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、2−ペンタデシルオキシカルボニル、2−ピリジンオキシカルボニル)、炭素数2〜22のアルキル、アリールもしくは複素環オキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、テトラデシルオキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシカルボニルアミノ、2−ピリジンオキシカルボニルアミノ)、炭素数1〜22のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、オクタデカンスルホンアミド、2−メトキシ−5−tert−ブチルベンゼンスルホンアミド)、炭素数2〜22のカルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−〔3−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)プロピル〕カルバモイル)、炭素数1〜22のスルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−(2−ドデシルオキシエチル)スルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホ基、無置換のアミノ基などが挙げられる。
【0029】
これらの中でもR'としてより好ましくは、水素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数2〜22のカルバモイル基が挙げられる。
【0030】
本明細書において、一般式(I)における各「基」は、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても良い。すなわち上記定義において、例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。そのような置換基としては、2−エチルヘキシル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0031】
以下に一般式(I)で表されるピリチオン化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。



































【0032】
【化3】









【0033】
【化4】

【0034】
次にピリチオン化合物の合成について説明する。ピリチオン化合物は市販されているものを用いてもよいし、後述するように合成することもできる。例えば、化合物例I−1は、東京化成工業社製のものを購入することができる。また、ピリチオン骨格の構築は、2−ハロゲノピリジン−N−オキシドを、アルコール中で水硫化ナトリウムと加熱撹拌することで合成することができる。
【0035】
代表的なピリチオン化合物を大きく分類すると、1)>N−OH体、2)>N−OR体、3)>N−O−CO−NR12体、4)>N−O−CO−R3体、となる。以下に簡単にそれぞれの合成方法を示す。
【0036】
1)I―1に代表される、>N−OH型化合物は、対応する2−ハロゲノピリジン−1−オキシドを出発原料として、Journal of American Chemical Society、1950年、4362ページに記載の方法で容易に合成できる。
【化5】

【0037】
2)I―2に代表される、>N−OR型化合物は、対応する>N−OH化合物を出発原料に用い、Journal of Organic Chemistry、1989年、4330〜4334ページに記載の方法で容易に合成できる。
【化6】

【0038】
3)I―14に代表される、>N−O−CO−NR12型化合物は、Tetrahedron Letters、1990年、1675ページに記載の方法で容易に合成できる。
【化7】

【0039】
4)I―17に代表される、>N−O−CO−R3型化合物は、対応する>N−OH化合物を出発原料に用い、Tetrahedron、1996年、9347ページに記載の方法で容易に合成できる。
【化8】

【0040】
例示化合物(I−16)の合成方法を下記スキームに示す。
【化9】

【0041】
(1)中間体(C)の合成
2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン(A)(51.4g、397mmol、Aldrich社製)、ジメチルスルホキシド(200mL)を混合し、氷冷下、水素化ナトリウム(油状含有率約60%、19.1g、476mmol)をジメチルスルホキシド(100mL)で洗い込みながら投入した。続いて、2−ブロモエタノールより常法によりアセチル化して合成した酢酸2−ブロモエチル(B)(66.3g、397mmol)を滴下した。50℃で2時間攪拌した後、水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を水、飽和食塩水で1回ずつ洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:へキサン:酢酸エチル=7:3)で精製し、中間体(C)を油状物として69.9g得た(収率82%)。
中間体(C)
1HNMR(CDCl3):δ2.11(s, 3H),4.27(t,2H),4.50(t,2H),7.22(m,2H),8.03(dd,1H)
【0042】
(2)中間体(D)の合成
中間体(C)(69.2g、321mmol)と塩化メチレン(230mL)を混合し、氷冷下、メチルトリオキソレ二ウム(8.00g、32.1mmol、Aldrich社製)、30%過酸化水素水(72.8g、642mmol)を加えた。室温で15.5時間攪拌後、塩化メチレンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム:メタノール=95:5)で精製し、中間体(D)を白色結晶として44.6g得た(収率60%)。
中間体(D)
1HNMR(CDCl3):δ2.13(s, 3H),4.31(t,2H),4.50(t,2H),6.86(dd,1H),7.12(dd,1H),8.10(dd,1H)
【0043】
(3)中間体(E)の合成
中間体(D)(44.3g、191mmol)とエタノール(150mL)を混合し、水硫化ナトリウムn水和物(21.4g、382mmol)の100mL水溶液を滴下した。46〜47℃で4.5時間攪拌後、放冷し、塩酸水で酸性(pH=3〜4)とした。塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、中間体(E)を白色結晶として28.3g得た(収率65%)。
中間体(E)
1HNMR(CDCl3):δ2.13(s, 3H),4.30(t,2H),4.52(t,2H),6.72(dd,1H),6.84(dd,1H),7.90(dd,1H)
【0044】
(4)例示化合物(I−16)の合成
中間体(E)(10.1g、44.0mmol)とメタノール(120mL)を混合し、氷冷下、炭酸カリウム(12.2g、87.9mmol)を加えた。10℃で1時間攪拌し、ろ過で固形物を除去した。ろ液を濃縮し、析出物をメタノールで洗いながらろ過、乾燥し、例示化合物(I−16)を白色結晶として3.20g得た(収率39%)。
例示化合物(I−16)
1HNMR(D2O):δ3.89(t,2H),4.06(t,2H),6.76(dd,1H),6.84(dd,1H),7.72(dd,1H)
【0045】
上記ピリチオン化合物は、本発明のインク組成物全重量に対して、0.1〜20質量%添加することが好ましく、硬化膜の膜厚、開始剤の光吸収量等を考慮すると、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%添加するとよい。
【0046】
(1-3)他の光重合開始剤
前記ピリチオン化合物に加えて、他のラジカル重合開始剤を併用して用いることもできる。具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、 Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993). や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993). や、J. P. Faussier "Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications" :Rapra Review vol.9, Report, Rapra Technology(1998). や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996). に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。さらには、F. D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993).、H. B. Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990).、I. D. F.Eaton et al, JACS, 102, 3298(1980). 等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0047】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
【0048】
(a)「芳香族ケトン類」の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0049】
(b)「芳香族オニウム塩」としては、周期律表の第V、VIおよびVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、またはIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、および同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、および同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、および特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、および同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0050】
(c)「有機過酸化物」としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0051】
(d)「ヘキサアリールビイミダゾール」としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0052】
(e)「ケトオキシムエステル化合物」としては3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0053】
(f)「ボレート化合物」の例としては米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
【0054】
(g)「アジニウム化合物」の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0055】
(h)「メタロセン化合物」の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0056】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0057】
(i)「活性エステル化合物」の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、および同0388343号各明細書、米国特許3901710号、および同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、および特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、および同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、および同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、および特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、および特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0058】
(j)「炭素ハロゲン結合を有する化合物」の好ましい例としては、たとえば、若林ら著、Bull. Chem. Soc. Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0059】
また、F. C. Schaefer等によるJ. Org. Chem. 29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0060】
上記(a)〜(j)で表される化合物の好ましい具体例として、さらに以下に示すものが挙げられる。
【0061】
【化10】

【0062】
【化11】








【0063】
【化12】
















【0064】
【化13】

【0065】
(1-4)増感色素
本発明おいては、上記ピリチオン化合物および/または光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加しても良い。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0066】
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0067】
【化14】

【0068】
(式(IX)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、L2は隣接するA2及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0069】
(式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。)
【0070】
(式(XI)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。)
【0071】
(式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−または−NR62−または−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。)
【0072】
(式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。)
【0073】
一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【化15】

【0074】
(1-5)共増感剤
さらに本発明のインク組成物には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えても良い。
【0075】
この様な共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0076】
別の例としてはチオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0077】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0078】
(1−6)色材
本発明のインク組成物に色材を添加することが好ましい。本発明のインク組成物に色材を添加することで、可視画像を形成することができるからである。例えば、平版印刷版の画像部領域を形成する場合などには、インク組成物に色材を添加することは必ずしも必要がないが、得られた平版印刷版の検版性の観点からは色材を用いることも好ましい。
本発明において用いることのできる色材としては、特に制限はないが、用途に応じて公知の種々の色材(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。染料としては、水溶性染料及び油溶性染料のいずれも使用できるが、カチオン重合開始剤は水分(湿気)等によって加水分解を受けやすいため、水分を吸収しにくい油溶性染料が好ましい。
本発明の色材としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
【0079】
即ち、赤あるいはマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、緑顔料としては、Pigment Green 7、26、36、50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、黒顔料としては、Pigment Black 7、28、26、白色顔料としては、PigmentWhite 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
【0080】
本発明において色材は、本発明のインク組成物に添加された後、適度に当該インク内で分散されることを要する。色材の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
また、色材の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、好ましくは高分子分散剤を用いることであり、高分子分散剤としては、例えば、Zeneca社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、色材100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0081】
色材は、本発明のインク組成物に直接添加してもよいが、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に係る重合性化合物のような分散媒体に添加してもよい。溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化並びに残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、色材は、本発明の重合性化合物に添加することが好ましい。さらに使用する重合性化合物としては、最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0082】
本発明において、色材粒子の平均粒径は、例えば、0.08〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.45μm、より好ましくは、0.15〜0.4μmであることが適当である。また、色材の最大粒径は、例えば0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmであることが適当である。このような最大粒径となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが適当である。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
本発明において色材を添加する場合には、全インク質量に対し、例えば、1〜10質量%、好ましくは2〜6質量%含有することが適当である。
【0083】
(1-7)その他の成分
本発明のインク組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、溶剤等が挙げられる。
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。また、本発明のインク組成物は、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20000ppm添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0084】
本発明のインク組成物には、耐溶剤性やVOCの問題から溶剤を含まないことが望ましいが、被記録媒体との密着性を改良するため、前述の問題が起こらない範囲で極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、使用される溶剤の量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
また、インク色材の遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、重合開始剤寿命の長いカチオン重合開始剤とカチオン重合性モノマーとを組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも好ましい。
【0085】
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明のインク組成物に添加することができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して添加することができる。また、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0086】
(1-8)インク組成物の性質
インクジェット記録用インク組成物は、射出性を考慮し、射出時の温度(例えば、40〜80℃、好ましくは25〜30℃)において、粘度が、例えば、7〜30mPa・s、好ましくは7〜20mPa・sであることが好ましい。例えば、本発明のインク組成物の室温(25〜30℃)での粘度は、35〜500mPa・s、好ましくは35〜200mPa・sである。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となる。更にインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。
【0087】
本発明のインク組成物をインクジェット記録用インク組成物として使用する場合、表面張力は、例えば20〜30mN/m、好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
【0088】
(2)インクジェット記録方法及び装置
本発明に好適に採用され得るインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について、以下説明する。
(2-1)インクジェット記録方法
本発明は、上記インクジェット記録用インク組成物を、被記録媒体上に噴射し、支持体上に着弾したインクに放射線を照射し、もってインク組成物を硬化して画像を形成する方法を提供する。即ち、本発明は、
(a)被記録媒体上に上記インク組成物を適用する工程;
(b)上記インク組成物に、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは350〜420nmのピーク波長を有する放射線で、2000mJ/cm2以下、好ましくは、10〜2000mJ/cm2、より好ましくは、20〜1000mJ/cm2さらに好ましくは、50〜800mJ/cm2の出力で照射して上記インク組成物を硬化する工程;及び
(c)硬化したインク組成物により被記録媒体上に画像が形成される工程、
を含む方法に関する。
【0089】
被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料或いは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
本発明のインク組成物において、硬化時の熱収縮が少ない材料を選択した場合、硬化したインク組成物と被記録媒体との密着性に優れるため、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成しうるという利点を有する。
【0090】
〔インク組成物を噴射、着弾させる方法についての例〕
被記録媒体にインク組成物を噴射し、着弾させる方法としては、専用インクをノズルから微細な液滴として射出、用紙に付着させるインクジェット方式が好ましい。インクジェットヘッドには、ヒーターに電圧をかけることで気泡を発生させインクを押し出すバブルジェット(登録商標)方式、サーマルインクジェット方式と、ピエゾ素子の振動によりインクを押し出すピエゾ素子方式があるが、本発明のインク組成物は、これら方式のいずれにも使用することができる。
【0091】
さらに、本発明のインクジェット記録方法について、平版印刷版にインク組成物を射出して画像を形成することを含む平版印刷版の作製方法を例に説明する。
本発明の平版印刷版は、親水性支持体と、該親水性支持体上に本発明のインク組成物を用いて形成された疎水性領域(画像)とを有する。この平版印刷版の作製方法は、以下の工程;
(1)本発明のインク組成物を前記親水性支持体上に射出する工程;及び
(2)前記インクを射出した親水性支持体表面に放射線を照射して前記インクを硬化し、以て前記インクが硬化してなる疎水性領域(画像)を前記親水性支持体上に形成する工程、とを有する。
【0092】
(2-1-1)平版印刷版
ここで、平版印刷版は、親水性支持体と、該支持体上に形成された画像とを有する。
従来、平版印刷版としては、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するいわゆるPS版が広く用いられてきた。このPS版の製造方法としては、通常、リスフィルムを介してマスク露光(面露光)した後、非露光部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。しかし、近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力するディジタル化技術が広く普及し、それに対応した新しい画像出力方式が求められるようになった。特に、リスフィルムを使用することなく、レーザー光のような嗜好性の高い光をディジタル化された画像情報に従って走査し、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が開発されている。
このような走査露光を可能にする平版印刷版を得るための方式として、インク組成物によって直接平版印刷版を作製する方法が挙げられる。これは、支持体、好ましくは親水性の支持体上にインクジェット方式等によってインクを吐出し、これを放射線に露光することにより、インク組成物の部分が露光して所望の画像(好ましくは、疎水性画像)を有する印刷版を得るものである。このような方式に適したインク組成物が本件発明のインク組成物である。
【0093】
本発明のインク組成物が射出される支持体(被記録媒体)としては、特に限定されず、寸度的に安定な板状の支持体であればよい。支持体は、親水性の支持体であることが好ましい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0094】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知の素材のものを適宜利用することができる。
【0095】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および画像記録層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0096】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いてもかまわない。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0097】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0098】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号や特開2001−322365号に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろん大処理、封孔処理は、これらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
【0099】
〔封孔処理〕
封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔、熱水による封孔処理でも可能である。
なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0100】
<無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理>
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。なかでも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0101】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、更に、リン酸塩化合物を含有するのが好ましい。リン酸塩化合物を含有すると、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、機上現像性および耐汚れ性を向上させることができる。
【0102】
リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、ン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、機上現像性および耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
【0103】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回又は複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0104】
<水蒸気による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧又は常圧の水蒸気を連続的に又は非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105〜1.043×105Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0105】
<熱水による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)又は有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
本発明に用いられる親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウムなどの水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが挙げられる。
本発明の平版印刷版に用いる支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
【0106】
(2-1-2)インク組成物を前記親水性支持体上に射出する工程
本発明のインク組成物を上記親水性支持体の表面上に射出する場合、インク組成物を40〜80℃、好ましくは25〜30℃に加熱して、インク組成物の粘度を7〜30mPa・s、好ましくは7〜20mPa・sに下げた後に射出することが好ましい。特に、25℃におけるインク粘度が35〜500mPa・sのインク組成物を用いると大きな効果を得ることが出来る。この方法を用いることにより、高い射出安定性を実現することができる。本発明のインクのような放射線硬化型インク組成物は、概して通常のインクジェット記録用インク組成物で使用される水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴射出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。従って、印字時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、温度の制御幅は、設定温度の±5℃、好ましくは設定温度の±2℃、より好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0107】
(2-1-3)インクを射出した親水性支持体上に放射線を照射して前記インクを硬化する工程
親水性支持体の表面上に射出された上記インクは、放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明の上記インク組成物に含まれる重合開始剤(ピリチオン化合物)がラジカルを発生し、それによって重合性化合物がラジカル重合して硬化するためである。
ここで使用される放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
【0108】
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
【0109】
本発明において重合開始系は、低出力の放射線であっても十分な感度を有するものである。従って、放射線の出力は、例えば、2000mJ/cm2以下、好ましくは、10〜2000mJ/cm2、より好ましくは、20〜1000mJ/cm2、さらに好ましくは、50〜800mJ/cm2の照射エネルギーであることが適当である。また、放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2000mW/cm2、好ましくは、20〜1000mW/cm2で照射されることが適当である。
【0110】
本発明の上記インク組成物は、このような放射線に、例えば、0.01〜120秒、好ましくは、0.1〜90秒照射されることが適当である。
放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの射出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは、0.01〜0.3秒、より好ましくは、0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。
【0111】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明の上記インク組成物は、放射線の照射により硬化し、疎水性画像を前記親水性支持体表面上に形成する。
【0112】
(2-2)インクジェット記録装置
本発明に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。即ち、本発明においては、市販のインクジェット記録装置を用いて被記録媒体へ記録することができる。
本発明のインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、放射線源を含む。
インク供給系は、例えば、本発明の上記インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4000×4000dpi、好ましくは、400×400〜1600×1600dpi、より好ましくは、720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0113】
上述したように、放射線硬化型インクは、射出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱および加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。放射線源については上述したとおりである。
【実施例】
【0114】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。
【0115】
実施例1
《顔料分散物の調製》
下記に記載の方法に従って、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各顔料分散物1を調製した。なお、分散条件は、各顔料粒子の平均粒径が0.2〜0.3μmの範囲となるように、公知の分散装置を用いて、分散条件を適宜調整して行い、次いで加熱下でフィルター濾過を行って調製した。
【0116】
(イエロー顔料分散物1)
C.I.ピグメントイエロー12 10質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 5質量部
ステアリルアクリレート 85質量部
(マゼンタ顔料分散物1)
C.I.ピグメントレッド57:1 15質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 5質量部
ステアリルアクリレート 80質量部
(シアン顔料分散物1)
C.I.ピグメントブルー15:3 20質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 5質量部
ステアリルアクリレート 75質量部
(ブラック顔料分散物1)
C.I.ピグメントブラック7 20質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 5質量部
ステアリルアクリレート 75質量部
【0117】
《インクの調製》
上記調製した各分散物1を用いて、下記に記載の方法に従い各色インクを調製した。
(イエローインク1)
イエロー顔料分散物1 20質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 60質量部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10質量部
ピリチオン化合物(I−5) 10質量部
【0118】
(マゼンタインク1)
マゼンタ顔料分散物1 20質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 60質量部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10質量部
ピリチオン化合物(I−5) 10質量部
【0119】
(シアンインク1)
シアン顔料分散物1 15質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 60質量部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15質量部
ピリチオン化合物(I−5) 10質量部
【0120】
(ブラックインク1)
ブラック顔料分散物1 15質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 60質量部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15質量部
ピリチオン化合物(I−5) 10質量部
以上の様にして調製した各色インク1を絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、各色のインク1とした。
【0121】
〔インクジェット画像記録〕
以上のようにして調製したインクを用いて、画像印字を行った。
画像印字は、ピエゾ方式のヘッドを用いて、被記録媒体(メディア)に対して打滴を行った。ヘッドは、25.4mmあたり150のノズル密度で318ノズルを有しており、これを2個ノズル列方向にノズル間隔の1/2ずらして固定することにより、被記録媒体上には、ノズル配列方向に25.4mmあたり300滴打滴される。
ヘッド及びインクは、ヘッド内に温水を循環させることにより、吐出部分近辺が50±0.5℃となるように制御されている。
【0122】
ヘッドからのインク吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、一滴あたり6〜42plの吐出が可能である。本実施例では、ヘッドの下1mmの位置でメディアが搬送されながらヘッドにより打滴される。搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。また、ピエゾ駆動周波数は最大4.6kHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。本実施例では、搬送速度90mm/s、駆動周波数は4.3kHzとすることにより、インク吐出量を制御し、最大23g/m2までの打滴を行った。メディアは打滴された後、露光部に搬送され、紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光される。本実施例では、UV−LEDとして日亜化学工業(株)のNCCU033を用いた。このLEDは、1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、メディア表面で0.3W/cm2のパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、及び露光時間は、メディアの搬送速度及びヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では、着弾後、約0.5秒後に露光される。
【0123】
メディアとの距離、及び搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15Jcm2の間で調整することができる。なお、露光パワー、露光エネルギーの測定には、ウシオ電機(株)製のスペクトロラディオメータURS−40Dを用い、波長220nmから400nmの間を積分した値を用いた。
【0124】
上記調製した各色インクを用い、環境温度25℃にて、ブラック→シアン→マゼンタ→イエローの順に射出、1色毎に紫外線を照射した。被記録媒体としては、砂目立てしたアルミニウム支持体、印刷適性を持たせた表面処理済みの透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム、軟質塩化ビニルシート、キャストコート紙、市販の再生紙に各カラー画像を記録したところ、いずれもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。更に、上質紙においてもインクが裏周りすることなく、十分にインクが硬化し、硬化物の変形や、光照射前後でインクの色に変化は認められなかった。また、未反応モノマーによる臭気が殆どしなかった。また、フィルムに記録したインクには十分な可とう性があり、折り曲げてもインクにクラックが入ることは無く、セロテープ(登録商標)剥離による密着性テストにおいても問題無かった。
また作成したインクを75%RH、60℃で3日保存した後、射出温度でのインク粘度を測定したところ、保存後/保存前の粘度比は1.0〜1.1であり、実用上問題の無い程度であった。
【0125】
実施例2〜5
《インクの調製》
以下に記載の方法に従って、マゼンタインク2〜5を調製した。
【0126】
(マゼンタインク2)
マゼンタ顔料分散物1 20質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 60質量部
下記の2官能芳香族ウレタンアクリレート(分子量1500) 5質量部
下記の6官能脂肪族ウレタンアクリレート(分子量1000) 5質量部
ピリチオン化合物(I−1) 10質量部
【0127】
(マゼンタインク3)
マゼンタ顔料分散物1 20質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 50質量部
下記のラクトン変性アクリレート(分子量458) 15質量部
下記の6官能脂肪族ウレタンアクリレート(分子量1000) 5質量部
ピリチオン化合物(I−17) 10質量部
【0128】
(マゼンタインク4)
マゼンタ顔料分散物1 20質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 60質量部
下記の6官能脂肪族ウレタンアクリレート(分子量1000) 10質量部
ピリチオン化合物(I−16) 10質量部
【0129】
〈マゼンタ顔料分散液2の調製〉
実施例1に記載のマゼンタ顔料分散液1の調製において、ステアリルアクリレートに代えて、イソボルニルアクリレートを用いた以外は同様にしてマゼンタ顔料分散液2を調製した。
【0130】
(マゼンタインク5)
マゼンタ顔料分散物2 20質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 55質量部
テトラメチロールメタントリアクリレート 15質量部
ピリチオン化合物(I−14) 10質量部
【0131】
比較例1〜2
《インクの調製》
以下に記載の方法に従って、マゼンタインク6〜7を調製した。
(マゼンタインク6:比較例1)
マゼンタ顔料分散物2 20質量部
1,6−へキサンジオールジアクリレート 50質量部
下記のラクトン変性アクリレート(分子量458) 20質量部
重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、
IRGACURE 184) 10質量部
【0132】
(マゼンタインク7:比較例2)
マゼンタ顔料分散物2 20質量部
ステアリルアクリレート 60質量部
下記の2官能芳香族ウレタンアクリレート(分子量1500) 5質量部
下記の6官能脂肪族ウレタンアクリレート(分子量1000) 5質量部
重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、
IRGACURE 184) 10質量部










【0133】
【化16】

【0134】
上記実施例および比較例で作成したインク組成物において、射出温度でのインク粘度は、7〜20mPa・sの範囲内であった。
【0135】
《インクジェット画像記録》
以上のようにして調製したマゼンタインク2〜7を用いて、実施例1に記載の方法と同様にして、マゼンタ画像印字を行った。
【0136】
《インクジェット画像の評価》
次いで、各形成した画像について、下記に記載の方法に準じて、硬化に必要な感度、市販の再生紙における浸透性、砂目立てしたアルミニウム支持体でのインク滲み、密着性、耐刷性、保存安定性の評価を行った。
【0137】
(硬化感度の測定)
紫外線照射後の画像面において、粘着感の無くなる露光エネルギー量(mJ/cm2)を硬化感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
【0138】
(市販の再生紙に対する浸透性評価)
市販の再生紙に対し印字した画像について、下記の基準に従い浸透性の評価を行った。
○:殆ど浸透せず、残留モノマー臭もしない
△:僅かに浸透し、残留モノマー臭も僅かに認められる
×:明らかにインクが裏面側に浸透し、残留モノマー臭も強い
【0139】
(砂目立てしたアルミニウム支持体におけるインク滲み評価)
砂目立てしたアルミニウム支持体上に印字した画像について、下記の基準に従いインク滲みの評価を行った。
○:隣接するドット間の滲みが無い
△:僅かにドットが滲む
×:ドットが滲み、明らかに画像がぼやける
【0140】
(砂目立てしたアルミニウム支持体における密着性の評価)
上記作成した印字画像について、全く印字面に傷をつけない試料と、JISK 5400に準拠して、印字面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個作った試料を作製し、各印字面上にセロハンテープを貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った印字画像あるいは碁盤目の状況について、下記の基準に則り評価した。
○:碁盤目テストでも、印字画像の剥がれが全く認められない
△:碁盤目テストでは若干のインク剥がれが認められるが、インク面に傷をつけなければ剥がれは殆ど認められない
×:両条件共に、簡単にセロテープ(登録商標)での剥がれが認められる
【0141】
(耐刷性の評価)
上記で作成した砂目立てしたアルミニウム支持体上に印字した画像を印刷版として、ハイデルKOR−D機で印刷後、刷了枚数を耐刷性の指標として相対比較した(実施例1を100とした)。数値が大きいものほど高耐刷であり好ましい。
【0142】
(保存安定性の評価)
作成したインクを75%RH、60℃で3日保存した後、射出温度でのインク粘度を測定し、インク粘度の増加分を、保存後/保存前の粘度比で表した。粘度が変化せず1.0に近いほうが保存安定性良好であり、1.5を超えると射出時に目詰まりを起こす場合があり好ましくない。
これらの評価結果を表1に示す。










【0143】
【表1】

【0144】
表1の実施例1〜5の結果からわかるように、本発明のインク組成物を用いると、市販の再生紙に対して浸透性を示さず、アルミ支持体での滲み、及び密着性が良好であった。
また、本発明のインク組成物の硬化感度はいずれも非常に高く、インク保存安定性も高かった。また、本発明のインク組成物を用いた平版印刷版の画像は高い耐刷性を示した。
一方、重合開始剤として本発明の所定のピリチオン化合物を用いない場合には、市販の再生紙に対して浸透し、アルミ支持体での滲みも見られた。また密着性も低い結果であった。また、硬化感度も低く、インク保存安定性も低かった。さらに平版印刷版とした場合の耐刷性も本発明のものと比べて低い結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ラジカル重合性化合物、及び(b)光重合開始剤として少なくとも1種の下記一般式(I)で表されるピリチオン化合物、を含有することを特徴とするインク組成物:
【化1】

(式中、R、R'は水素原子もしくは一価の基を表す。nは1〜4の整数を表し、nが2以上の場合、R'は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【請求項2】
さらに、(c)色材を含む請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記(c)色材が顔料または油溶性染料である請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
インクジェット記録用である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物を被記録媒体に噴射し、着弾させる工程、及び、前記インク組成物に放射線を照射して硬化する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項6】
被記録媒体上に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物を噴射し、着弾させた後、放射線を照射してインク組成物を硬化させてなる印刷物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物を、親水性支持体上に噴射し、着弾させた後、放射線を照射してインクを硬化させることにより疎水性領域を形成することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項8】
親水性支持体上に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物を噴射し、着弾させた後、放射線を照射してインク組成物を硬化させることにより形成された疎水性領域を有する平版印刷版。

【公開番号】特開2006−316164(P2006−316164A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139892(P2005−139892)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】