説明

インク貯蔵容器

【課題】インク貯蔵容器の内部負圧を高め、インクの出過ぎを防止する。
【解決手段】インクMを貯蔵するインク貯蔵部の内外間で空気流量を制御する空気流量制御部20を具備するインク貯蔵容器であって、空気流量制御部は、インク貯蔵部の上面部10bに設けた物理弁20Aと、物理弁に連通されインク貯蔵部内に収納したインク吸収体20B2とで構成され、物理弁には、通常時は空気を流通させないが、インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる連通多孔質の弁体22が設けられ、インク活用弁20Bには、通常時は空気を流通させないが、内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体が設けられ、さらに、物理弁またはインク吸収体のいずれか一方、または物理弁およびインク吸収体の両方に、通気性を有した撥水膜体20B3を設け、インク吸収体を通過する空気の流入抵抗を増大させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インク貯蔵容器の例としては筆記具のインクタンクや、インクジェットプリンタのインク(タンク)カートリッジなどがある。これらは文字や画像を形成する筆記や印刷に消費されたインク量に対応して外気をタンク内に取込んで空気交換し、タンク内の圧力変化がインクの消費に悪影響を及ぼさないようにした機構とされており、その機構としては、外気の取込み口として単なる孔を形成したものや、必要に応じて通気する弁機構付きの通気路を形成したものを挙げることができる。
【0003】
しかし、外気の取込み口として単なる孔を設けたものでは、この孔からのインクが漏れてしまう可能性がある。また、筆記具においてもインクジェットプリンタにおいてもペン先やプリンタヘッドなどのインク吐出手段にはインクの重さによる水頭圧(液面よりある高さにおける水平な単位面積を底面とし、液面まで立つ液柱の底面に及ぼす力に等しい圧力)がかかるため、外気の取込み口として、単に孔を開けたものや気体は通すが液体は通さない膜を配置しただけのものでは、インクタンク、またはインクカートリッジの内部が大気圧と同一になるため、前述の水頭圧によってインクが吐出口から吹き出してしまう可能性があった。そこで、スポンジなどのインク吸蔵体をインク吐出口上のインク貯蔵部の少なくとも一部に配置することによってインクを保持する必要がある。
【0004】
ところが、このようにスポンジなどのインク吸蔵体によってインクを保持したのでは、インク吸蔵体を有しない空のインク貯蔵部に比べてインク保持量が少なくなり、それだけ同体積におけるインク量の減少による印字数が少なくなる。
【0005】
そこで、必要に応じて空気を通気する弁機構付きの通気路を形成したインク貯蔵容器とすることで、インク吸蔵体を配置したものと比べてインク保持量が少なくなってしまうことを防止し、インクが吹き出てしまうことを防止できるようにしている。
【0006】
従来、上記の空気を通気する弁機構付きの通気路を有する技術として、例えば、特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載のものはインクカートリッジに係り、フタ取付部に形成した凹状の弁取付部に、連通多孔質体である弁体を設け、その上から空気通孔を有するフタをして収納するとともに、孔部の下方にスリット状の開口を有する突出部を設けている。また、フタを超音波溶着によりフタ取付部に接合固定することで、弁体を弁取付部に封入した構成のものである。
【0007】
係る構成により、複数の弁蓋を配置した通孔を形成した弁体として、基本的に弾性材料を利用して連通多孔を形成し、この連通多孔を圧縮によって見かけ上閉塞した状態のものを使用するものであり、微少な圧力変換から大きな圧力変換までの両方に適切なインク吐出制御が可能となるようにしている。
【0008】
また、上記の特許文献2には、通気性は有するものの、インクの通過を阻止、或いは防止するように、インク液面側の面に撥水処理を施した通気膜が一方向弁の下部に設置された構成を有するインクタンクが開示されている。係る通気膜により、インクが上方へ浸入して一方向弁に付着するのを阻止するようにしている。
【特許文献1】特開2001−277777号公報
【特許文献2】特開平8−187874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1や特許文献2に記載の弁体を備えたインク貯蔵器において、インクジェット用カートリッジとしてプリンターにセットして使用される場合の内圧は、時間の経過とともに概ね大気圧に対して一定の負圧状態となるように設定され、これにより大気圧とバランスを保持しつつ無用なインクが漏れ出さないようにしている。ところが、従来の構造では、負圧が不足する場合があり、停止中においてもインクが徐々に漏れだしたり、また、使用中にインクが不必要に出過ぎることで、プリントされた紙がインクでべたついたり、ひいてはインクの消費量が増大してプリントコストが増大したりするという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、インク貯蔵容器の内部負圧を従来技術よりも大幅に高めることで、インクの出過ぎを確実に防止し、インク消費効率を高めることが可能なインク貯蔵容器を提供することをその主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の手段によって、上記目的を達成するものである。
【0012】
(1)上記目的を達成する本発明は、インクを貯蔵するインク貯蔵部の内外間で空気流量を制御する空気流量制御部を具備するインク貯蔵容器であって、前記空気流量制御部は、前記インク貯蔵部の上面部に設けた物理弁と、該物理弁に連通され前記インク貯蔵部内に収納したインク活用弁とを備えて構成され、前記物理弁には、通常時は空気を流通させないが、前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体が設けられ、前記インク活用弁には、前記インクを吸収することにより、通常時は空気を流入させないが前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体が設けられ、さらに、前記物理弁または前記インク活用弁のいずれか一方、または物理弁およびインク活用弁の両方には、通気性を有し、かつ、撥水処理を施されることでインク付着を防止する撥水膜体が設けられ、前記インク吸収体のインク吸収により、前記インク吸収体を通過する空気の流入抵抗を増大させるように構成されたことを特徴とするインク貯蔵容器である。
【0013】
本発明によれば、インク保持量の減量の原因となるような従来のインク貯蔵体を含ませない代わりに、インク貯蔵容器に、弁体を有する物理弁と、インク吸収体を有するインク活用弁とを有する空気流量制御部を設ける。これにより、物理弁が発揮する空気流量の制御機能と、インク活用弁が発揮する空気流入抵抗の制御機能の相乗効果により、インク貯蔵容器内部の生じる負圧を従来技術ものよりも大幅に増大せしめることができ、またその負圧状態を安定させることができる。これにより、インクが不必要に漏れ出すことを効果的に解消でき、インクの消費効率を高めることができるようになる。
【0014】
(2)上記目的を達成する本発明は、インクを貯蔵するインク貯蔵部の内外間で空気流量を制御する空気流量制御部を具備するインク貯蔵容器であって、前記空気流量制御部は、インク貯蔵部の上面部に配設され、インク貯蔵部の内外間で空気流量を制御する物理弁と、前記物理弁に連通され、インク貯蔵部内の前記インクを吸収して、該インク貯蔵部内への空気流入抵抗を増大させて空気流量を制御するインク活用弁と、を備えて構成されたことを特徴とするインク貯蔵容器である。
【0015】
係る構成によれば、インク保持量の減量の原因となるインク貯蔵体を含ませない代わりに、インク貯蔵容器に、空気流量を制御する物理弁と、空気流入抵抗を増大させて空気流量を制御するインク活用弁とによる空気流量制御部を設ける。この結果、物理弁およびインク活用弁が有する空気流量の制御機能により、インク貯蔵容器内部の生じる負圧を従来技術のものよりも大幅に増大せしめることができる。これにより、インクが不必要に漏れ出すことを効果的に解消でき、インクの消費効率を高めることができるようになる。
【0016】
(3)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記インク活用弁は、前記インク貯蔵部または前記物理弁に配設されて、自身の全部または一部が前記インク貯蔵部内の前記インクに浸漬される保持部と、該保持部に装填され、前記インクを吸収するインク吸収体と、を備えて構成されたことを特徴とする。
【0017】
係る構成によれば、保持部によってインク吸収体が装填されるので、インク吸収体によりインク貯蔵容器内部のインクが毛細管現象等により吸収される。すなわち、インクがインク吸収体にしみこむことで、インク吸収体は、インク貯蔵容器内への空気流入抵抗を増大させる。このインク活用弁の有する空気流入抵抗の制御機能により、物理弁との相乗効果によって、内部の負圧が大幅にアップし、例えば、−140mmHO程度まで増大させてバランスさせることが可能となる。この結果、インクの吐出量を最適な量に制御することが可能となり、インク消費量を抑制した効率的なプリントを行うことができるようになる。
【0018】
(4)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記インク活用弁は、前記インク吸収体の上部に配設され、通気性を有し、かつ、撥水処理が施された撥水膜体を有することを特徴とする。
【0019】
係る構成によれば、インク吸収体がインクを完全に吸収しきって飽和状態となった場合でも、インク吸収体に吸収されたインクが撥水膜体の存在により、撥水膜体よりも更に上方へ上昇するのを食い止めることができる。この結果、インクがインク活用弁の上方に配置される物理弁側まで上昇して、物理弁の機能を損傷ないしは低下させるのを確実に阻止できるようになる。また、インク吸収体が飽和しても、物理弁が、容器内を常に所定の負圧状態に維持できる。
【0020】
(5)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記物理弁は、通常時は空気を流通させないが、前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体を備えて構成されたことを特徴とする。
【0021】
係る構成によれば、物理弁の弁体により、外部とインク貯蔵部との間の圧力差に応じて弁体を通過する空気量を変化させて、外部からインク貯蔵部内へ流入する空気量を制御できる。
【0022】
(6)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記物理弁は、前記インク貯蔵部の上面部に形成された凹部にキャップを被着して収納されるようになっており、更に前記物理弁は、前記凹部の底部に載置され、通気性を有しかつ撥水処理を施した撥水膜体と、該撥水膜体の上面に載置され、上下両面に平坦な面を有し、かつ、中央に貫通孔を形成した環状の押圧リングとを具備してなり、前記弁体は、該押圧リングの上面に載置され、前記凹部内において、前記撥水膜体、前記押圧リング、および前記弁体を、前記凹部の底部と前記キャップとの間に挟圧したことを特徴とする。
【0023】
係る構成によれば、インク貯蔵部内部のインクまたはその飛沫が撥水膜体に付着したとしても、撥水膜体自体が有する撥水作用により滴下すると共に、例え滴下しなくても、インクが撥水膜体と底部との間の接触面、および撥水膜体と押圧リングとの間の接触面に浸入することを確実に阻止できる。なお、仮にインクが撥水膜体と押圧リングとの間の接触面を浸入したとしても、弁体と撥水膜体との間に確保される空気層(空隙層)が存在するので、弁体下面にインクが付着することも阻止できる。その結果、弁体の極微細孔がインクで閉塞されることがないので、弁体による空気流量制御部の空気流量制御機能が損なわれることを確実に防止でき、インク活用弁との相乗効果によりインクの出過ぎを効果的に解消できるようになる。
【0024】
(7)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記押圧リングを金属で形成すると共に、前記凹部における前記底部には、前記撥水膜体を着座させる撥水膜体着座部が形成され、前記撥水膜体着座部には、前記撥水膜体と密着する環状の平滑面を形成したことを特徴とする。
【0025】
係る構成によれば、金属素材とすることで押圧リングの上下両面はその平滑度が高められ、かつ、撥水膜体着座部も平滑面を形成しているので、撥水膜体の上下面における相手側部材との間の各接触面はその密着度が極めて高くなる。このため、撥水膜体にインクが付着しても、そのインクが上記の各接触面に浸入することが困難となる。特に、撥水膜体はその濡れ性が低いため、平滑面に密着させると高いシール機能を得ることができ、インクの進入を防止できる。つまり、この撥水膜体を用いることで、中央部分によって通気性を撥水性を確保し、その周囲ではシール特性を確保することができる。なお、この撥水膜体の素材としてはテフロンが好適である。テフロン膜体は柔軟性を併せ持つので、平滑面との密着性が増し、シール性と撥水性を高いレベルで両立させることができる。
【0026】
(8)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記撥水膜体着座部は、オレフィン系樹脂によって構成されることを特徴とする前。
【0027】
係る構成によれば、オレフィン系樹脂自体も濡れ性が低いため、撥水膜体着座部の平滑面にインクが進入することを抑制できる。
【0028】
(9)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記キャップにおける前記天井部の下側面には、前記弁体を支持する弁体着座部が形成されることを特徴とする。
【0029】
係る構成によれば、撥水膜体着座部と弁体着座部とは互いに対向配置されているので、両着座部の間における凹部に、空気流量制御部(撥水膜体、押圧リング、および弁体)を装填して組み込む作業を簡易に行うことができるようになる。
【0030】
(10)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記撥水膜体着座部および前記弁体着座部は、それぞれ環状の窪みで形成されることを特徴とする。
【0031】
係る構成によれば、環状の窪みで形成された撥水膜体着座部には少なくとも撥水膜体が位置ズレすることなく受け止められ、また、環状の窪みで形成された弁体着座部に弁体が位置ズレすることなく受け止められるので、キャップと底部との間の凹部に空気流量制御部をスムーズに装填して収納できるので、空気流量制御部の組み込み作業を能率的に行うことができるようになる。
【0032】
(11)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記キャップの前記天井部に複数の通気孔が設けられることを特徴とする。
【0033】
係る構成によれば、インク貯蔵容器を、プリンターの記録装置におけるキャリッジに取り替え交換して装着する場合に誤って手に付着したインクが、キャップの天井部の弁体着座部に設けた或る通気孔の一個に付着したり、何らかの水滴が通気孔の一部に付着したりしても、残りの通気孔により内外気の通気性能を確保でき、その結果、空気流量制御部の流量制御機能を良好に維持できるようになる。
【0034】
(12)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記キャップは、前記天井部の周縁から軸方向に延在する筒状の周面部を有しており、前記キャップを前記凹部に装着する際に、該周面部の下端が、前記凹部の前記底部に当接してストッパとして機能することを特徴とする。
【0035】
係る構成によれば、キャップの周面部における下端が底部に当接するように形成されているので、キャップを押し込んで空気流量制御部を装填するとき、押し込み力が強すぎても上記下端がストッパとして機能する。このため、キャップにより弁体が不必要に圧縮されたり、引張りをうけたりすることを阻止でき、弁体にいびつな弾性変形を来すことがなく、弁体の空気流量制御機能を損ねることを未然に防止できるようになる。
【0036】
(13)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記周面部における内面側の付け根に、環状の薄肉構造によって形成される弾性ヒンジを設けたことを特徴とする。
【0037】
係る構成によれば、天井部の内側に形成された弾性ヒンジにより、周面部はその付け根を基部として撓み変形し易くなる。このため、キャップを凹部に押し込んで嵌め込むとき、キャップを介して弁体に押し込み時の力を作用させることなく、スムーズに押し込むことができる。また、弁体を保持する弁体着座部(天井部)の変形も少なくすることができるので、弁体はいびつな弾性変形をすることなく、換言すると、弁体の受ける弾性変形を最小限に抑制できる。すなわち、弁体は本来有しなければならない空気流量制御機能を何ら損ねることのない状態で装填でき、無用なインクの漏出を回避できるようになる。
【0038】
(14)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記キャップの前記周面部の外面に係合部を形成し、前記凹部の内周壁には、前記係合部に嵌合可能な被係合部を形成したことを特徴とする。
【0039】
係る構成によれば、キャップ側の係合部は凹部側の内周壁の被係合部に嵌合するので、キャップは凹部に対して軸方向に抜け出すことがなく、また、回転することも阻止される。この結果、キャップは凹部に遊びのない状態で凹部に嵌め込められるため、弁体、押圧リング、および撥水膜体で形成される空気流量制御部に外力を及ぼすことなく安定して保持され、弁体の空気流量制御機能を損ねることを回避できるようになる。
【0040】
(15)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記係合部および前記被係合部で形成される嵌合部を、前記周面部の軸方向に複数段で形成し、前記複数の嵌合部のうち、一の嵌合部を軸方向の抜けを阻止し、他の嵌合部を周方向の回転を阻止することを特徴とする。
【0041】
係る構成によれば、複数個ある係合部と被係合部とでなす嵌合部うち、一つの嵌合部では、軸方向の抜けを阻止するように機能し、また、別の嵌合部では、周方向の回転を阻止するように機能するので、空気流量制御部をより一層安定的に保持できるようになる。
【0042】
(16)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記物理弁は、前記インク活用弁との間に、空気層を介在させて設けたことを特徴とする。
【0043】
係る構成によれば、物理弁とインク活用弁との間に空気層を設けることで、万が一、インク活用弁からインクが漏れ出しても、該空気層により貯留され、物理弁へ到達するのを未然に防止できる。
【0044】
(17)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記インク貯蔵部の底面に堤部が突設され、前記インク活用弁は、前記堤部によって前記底面に残留するインクを吸収可能に構成されることを特徴とする。
【0045】
(18)上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明において、前記インク貯蔵部の底面にインク残留用凹部が突設され、前記インク活用弁は、前記インク残量凹部によって残留するインクを吸収可能に構成されることを特徴とする。
【0046】
係る構成によれば、インクが減少した場合においても、インク活用弁が最後までインクの吸収状態を維持できるように、インクを積極的に残留させることができる。
【0047】
(19) 上記目的を達成する本発明のインク貯蔵容器は、上記発明のいずれかに記載のインク貯蔵容器は、インクジェットプリンタ用インクカートリッジであることを特徴とする。
【0048】
係る構成によれば、インクジェットプリンタ用のインクカートリッジを安価に製作できるようになる。
【発明の効果】
【0049】
本発明は、空気流量制御部として物理弁の他に、インク活用弁を設けることで、インク活用弁による空気流入抵抗を増大させるように制御する。これにより、インク貯蔵容器の内部の負圧を調整可能となり、インクの出過ぎ等を抑制できるとともに、安定した空気流量制御機能を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態に係るインク貯蔵容器を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態におけるインク貯蔵容器は、インクジェットプリンタ用のインクカートリッジに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0051】
<第1実施形態>
【0052】
(インク貯蔵容器)
【0053】
図1は第1実施形態に係るインクジェットプリンタ用のインクカートリッジたるインク貯蔵容器100の概要構成を示す断面模式図である。本第1実施形態に係るインク貯蔵容器100は適宜の合成樹脂材により形成され、内部11にインクMを貯蔵し、上面部12および底面部16を含めたケーシング部で形成されるインク貯蔵部10の内外間で空気流量を制御する空気流量制御部20と、インク吐出部30とが組み込まれている。
【0054】
上記の空気流量制御部20は物理弁20Aと、該物理弁20Aに連通されるインク活用弁20Bとで構成される。
【0055】
上記物理弁20Aは、図2,図4に示すように、上面部12に設置され、外部(大気)からインク貯蔵部10の内部への通気口14における空気流量を制御するもの、換言すると、通常時には空気を流通させないが、インク貯蔵部10の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせるもので、そのために弾性変形可能な連通多孔質の弁体22を有する。なお、物理弁20Aの詳細については後述する。
【0056】
上記インク活用弁20Bは、図1に示されるように、通常時には空気を流通させないが、インク貯蔵部10の内圧変化に応じてインク貯蔵部との間で空気交換を行わせるインク吸収体20B1を有する。なお、インク活用弁20Bの詳細については後述する。
【0057】
上記インク吐出部30は、底面部16に設置され、インク貯蔵部10の内部11に貯えられたインクMがインク吐出口18からの吐出を制御するインク吐出部30とを含む構成である。
【0058】
(インク貯蔵部)
【0059】
インク貯蔵部10の内部11は、ケーシングである上面部12に通気口14,底面部16にインク吐出口18を備え、通気口14およびインク吐出部18以外はケーシングによって密閉された容器となっている。通気口14には通気口14の通気量を制御する空気流量制御部の一構成要素である物理弁20Aが備えられ、インク吐出口18にインク吐出量を制御するインク吐出部30が備えられた構造である。
【0060】
本第1実施形態ではインク保持量の減量の原因となるインク貯蔵体を含ませないことが好適であることから、空の空間中にインクを貯蔵する構造であるが、これに限られることなくインク吸蔵体をインク貯蔵部10の一部または全部に用いてもよい。
【0061】
(空気流量制御部の物理弁20A)
【0062】
図2には空気流量制御部20における物理弁20Aとインク活用弁20B、およびその周辺の要部断面模式図が示される。図3〜図8には後述の空気流量制御部20を構成する部材の上面模式図と上面模式図における点線で切断した面の断面模式図が示される。
【0063】
物理弁20Aは、複数の微細孔が連通している弾性材料からなり、外部と前記インク貯蔵部10との圧力差に応じてこの複数の微細孔を通過する空気量が変化し、この変化によって外部からインク貯蔵部10への空気流量を制御する機能を有する図4に示す弁体22と、弁体22とインク貯蔵部10との間に設けられ、弁体22へインクMが至ることを防止する図6に示す防インク膜24とを含む構造である。さらに本第1実施形態において空気流量制御部20は、防インク膜24と弁体22との間に空気層形成部材としての中空部を有する図5に示す平板(押圧リング)26を含み、平板26は防インク膜24と弁体22とで挟持された構造となっている。さらに、弁体22と外部の間に設けられ、中空部を有する平板であって弁体22へ水分が至ることを防止する図7に示す防水膜28も備えられている。本第1実施形態では防水膜28と平板26が弁体22を押圧して固定する固定部材として機能する構造となり、防水膜28と平板26は、上蓋(キャップ)21と図8に示す台座部23(通気口の端部25)によって押圧される構造となっている。図3に示す上蓋21は、台座部23およびインク貯蔵部の上面部12とボルト孔27を介してボルト27aにより締結され、このボルト27aによる締結によって上蓋21から押圧力とこれに伴う端部25からの反作用が防水膜28と平板26を介して弁体22を均一に押圧する構造となっている。
【0064】
弁体22は、複数の微細孔が連通している弾性材料からなり、外部と前記インク貯蔵部との圧力差に応じてこの複数の微細孔を通過する空気量が変化し、この変化によって外部から前記インク貯蔵部への空気流量を制御する機能を有するものであるが、その材質や構造等は特に限られることがなく、この機能を有する弁体は上記特許文献1などで開示されたものや市販で入手することができる。弁体22の形状は、図4に示されるように略円板形状の平板である。
【0065】
弁体22は、本第1実施形態では圧縮体として、圧縮した場合に通気性がないようにしている。すなわち弾性材料からなる連通多孔体を通気性がなくなるまで圧縮して、圧縮多孔体を作ることで空気流量制御機能をより発揮できるように加工している。このような圧縮多孔体では、内部において、連通多孔体を構成している弾性体が押し潰され折り重なってできた不定形の空間が多数形成されているが、圧縮された状態では通気性がなくなる。ところが、圧縮多孔体内で形成された多数の不定形の空間は連通されているので、内外の圧力差が生じた場合、弁体22が延びることによって生じた所定の圧力差以上によって、外部から圧縮多孔体の内部へと空気が押し込まれ、空気は、圧縮多孔体内にネットワークされた空間を結んでいる通気孔を押し広げながら、弁体を変形させ、圧縮多孔体の反対側、すなわちインク貯蔵部10側へ移動することで通気性を生じる。この通気量(空気流量)は、圧縮多孔体内にネットワークされた空間の通りやすさによって決められるので圧力差が大きい場合には弁体22は大きく伸び、圧縮多孔体内にネットワークされた空間中を空気が通りやすくなり、通気量は大きくなる。一方、所定の圧力差以上であって圧力差が小さい場合には弁体22は小さく伸び、圧縮多孔体内にネットワークされた空間中を空気が通る量は少なくなり、通気量は小さくなる。弁体22による通気によって圧力差が減少した場合、弁体22も縮み、通気量が少なくなる。さらに所定の圧力差未満となった場合、弁体22が再び圧縮されるため弁体22の通気性はなくなる。このように圧力差の大きさに応じて通気量も応じるので迅速で適切なインク貯蔵部10内の圧力を一定化する圧力調整が可能となる。
【0066】
外部(大気)とインク貯蔵部10内部との圧力差がどの程度で弁体22の通気性を生じさせるようにするかは、連通多孔、圧縮の程度などを適宜選択して決めればよいが、例えば、圧力差が20mmHO以下のときは通気性が無く、圧力差が20mmHO以上のときは通気性が有るように圧縮するようにすると好適である。
【0067】
弁体22を構成する弾性材料は複数の微細孔を有するもので伸びた状態でこの微細孔を通過するものであれば足りるが、例えば、ポリプロピレン、各種ゴム、各種エラストマーを挙げることができる。連通多孔孔質体の場合には、ゴム及び/又はプラスチック原料に不活性ガス、分解性発泡剤、揮発性有機液体を混合し、内部に気泡を形成することにより発砲させて連通多孔を形成したものや、ゴム・プラスチック原料に炭酸カルシウムなどの無機粒子を混練りしたものを板状に形成した後、無機粒子を溶出して連通多孔を形成したもの等が挙げられ、前記ゴム及び/又はプラスチック原料としては、弾性材料として、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。中でも特に、液体に対しての耐久性や、連通多孔質体の形成しやすさ、生産性等を考慮するとエーテル系ポリウレタン樹脂などが好適である。
【0068】
弁体22を構成する弾性材料は圧力差が働くと伸び、通気すると圧力差は減少し、ついには元の状態に戻り通気は無くなるという繰り返しによっても、常にはじめの圧縮された通気性のない状態が維持されると好適である。このためには圧縮体であると圧縮永久ひずみ特性が優れていることが好適である。他の特性としては、さらに弁体22のヤング率が1MPa以上5000MPa以下であることが好適である。また、弁体22はアスカーF型硬度計による硬度が30以上100未満であることが好適である。
【0069】
弁体22は、圧縮前の単位長さ当たりの孔数が4個/cm以上1000個/cm以下のものとすることによって、内圧調整を容易にすることができやすい。更に、圧縮を、加熱や高周波による発熱を付与したことにより、成形したものが、厚み8mmの盤状体を検体としたときのアスカーC型硬度計による硬度が20以上100未満であることが望ましい。この圧縮は圧縮率を圧縮前の材料の厚みの5%以上40%以下とすることによって圧力差が所定値未満の場合に確実に閉塞されたものとしやすい。
【0070】
弁体22を空気制御部20に設置する方法は、平板26上に弁体22を載せ、その上から中空形状の平板たる防水膜28を載せることで固定する。このようにして固定することで簡易に設置することが可能となる。本第1実施形態では平板26と同様に平板の防水膜28によって広い面積で弁体22を押圧しているので均一に押圧でき、弁体22の伸び度合いが過剰となり、通気量が過剰となったりすることを防止することができる。
【0071】
防インク膜24は、本第1実施形態では好適であるため通気性の撥水性材料を用いているがこれに限られることなく、防水性材料、弁体22に対してインク成分が接触することを防止する膜であれば足り、臨界表面張力が大きい材料であってもよい。また通気性は、膜が通気口14を全体を塞がず少なくとも一部が貫通している場合については必要ではない場合がある。
【0072】
本第1実施形態で用いられる撥水性材料は、それ自体通気性を有する材料であれば足りる。特に臨界表面張力が25dyn/cm以下である撥水性材料であると好適である。そのような材料として、各種樹脂膜、無機膜が用いられるが、フッ素樹脂、フッ素ゴムなどを好適に用いることができ、テフロン(登録商標)、すなわちポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いるとさらに好適である。
【0073】
防インク膜24は図6のように、通気性を考慮して連通している複数の微細孔を有し、複数の微細孔の孔径は5μm以下、より好ましくは0.1μm以下とすると好適である。
【0074】
防インク膜24を空気流量制御部20に設置する方法は、台座部23上に通気口14を覆うように載せその上から平板26を載せることで固定する。このような固定方法であれば、温度変化、圧力変化、衝撃、振動、経時などの環境変化を伴うことなく、また、接着剤によって接着する必要もなく、ただ載置すればよいだけなので簡易であり容易である。
【0075】
平板26は図5に示されるように、略円板形状で中空部も略円筒状の貫通孔であり、所謂ドーナツ型形状の平板である。平板26は防インク膜24と弁体22の間に空気層29を形成する。この空気層により、例え防インク膜24を通過しても空気層29があるのでより弁体22にインク貯蔵部10に貯えられたインクが達することを防止できるので好適である。なお、本第1実施形態では所謂ドーナツ型形状の平板を例示したがこれにかぎられることなく、空気層29を形成できる構造のものを用いて代用することが可能である。すなわち防インク膜24と弁体22の間に空気層形成できる部材形状、配置であれば代用することが可能である。本第1実施形態では上述の通り、弁体22を均一に押圧するので好適であることから中空略円盤形状の平板を用いた。
【0076】
防水膜28は、図7のように、通気性を確保できる防水性材料であればよく特に限られることがない。勿論フッ素樹脂などの撥水性材料であってもより。本第1実施形態では中空略円盤形状の平板(Oリング)を用い、空気層を形成させることで防水性を向上させているがこれにかぎられることはない。防水膜28は平板26上に置かれ、上蓋21で押圧することで固定される。
【0077】
以上のように、本第1実施形態では空気流量制御部20の物理弁20Aは、台座部23における通気口14の端部25上に防インク膜24/平板26/弁体22/防水膜28/上蓋21の順で載せられ、この上蓋をボルト孔27でボルト締めして止めることで防インク膜24/平板26/弁体22/防水膜28の集合体を固定するという簡易な固定方法が可能となる。
【0078】
本第1実施形態によれば、防インク膜24によって、さらには、平板26による空気層によってインクMが弁体22へ至ることを防止することでき、より精度の高い空気流量の制御が可能となる。また、防水膜28によって外気からの水分が弁体22へ至ることを防止することができより精度の高い空気流量の制御が可能となる。また、弁体22は平板によって両面から幅広い面積で均一に押圧されているので伸縮変化量をより高精度で制御でき、より精度の高い空気流量の制御が可能となる。
【0079】
(空気流量制御部のインク活用弁20B)
【0080】
次に、インク活用弁20Bを説明する。インク活用弁20Bは、物理弁20Aに連通され、インク貯蔵部10内のインク吸収量に応じてインク貯蔵部内への空気流入抵抗を増大させて空気流量を制御する機能を有する。より具体的には、インク活用弁20Bは、物理弁20Aに連通、すなわち、通気孔14の直下に気水密の状態を維持して連通されるとともに、上面部12の内側から下方に懸垂された保持部20B1と、該保持部内に装填されたインク吸収体20B2と、該インク吸収体の上部に着座した撥水膜体20B3とで構成される。
【0081】
保持部20B1は、例えば上端が閉塞され下端を開口させた円筒状体であり、上下方向に所定の長さを有してインクMに浸漬されている。
【0082】
インク吸収体20B2はインクMを吸収する機能を有するウレタン、フェルト等の素材を用いて形成される。換言すると、これら素材を圧縮することで、内部に微少孔を多数有して多孔質体を形成し、これら微少孔が互いに連通し合い、インクMが毛細管現象を利用して吸収されていく機能を有する。こうして、インク吸収体20B2は自体を流通する空気が気泡となって保持部20B1下端からインク貯蔵部10内に流出するのと入れ替わりに、インクMを吸収し、インクMがしみこんでいくが、インク吸収量が増大するに応じて、空気が物理弁20A側から流入する抵抗、すなわち、空気の流入抵抗を増大させるように形成されている。
【0083】
撥水膜体20B3は物理弁20Aに用いる防インク膜24と実質的に同一の素材であるPTFEで形成され、その形態は図6に示されるのとほぼ同様に平面円形状のシートである。換言すると、撥水膜体20B3は、インク成分が接触することを防止する膜で、それ自体通気性を有する材料であれば足り、通気性を考慮して連通する複数の微細孔を有する。撥水膜体20B3により、インク吸収体20B2に吸収されるインクが飽和して上昇しすぎるのを防止できるようになっている。
【0084】
また、撥水膜体20B3と物理弁20Aのインク吸収体20B2との間には空気層S1が介在される。
【0085】
こうして物理弁20Aとインク活用弁20Bとを備えた空気流量制御部20が構成され、これにより、インク貯蔵容器100がプリンターのキャリッジにセットされた使用状態においては、物理弁20Aとインク活用弁20Bとで形成される空気流量制御部20により、空気層S1には、ほぼ−40mmHOの負圧が生じ、空間S2(図2参照)には、略−140mmHOの負圧を生じさせ、空気流量が制御できるようになっている。
【0086】
(インク吐出部)
【0087】
図9はインク吐出部30およびその周辺の断面模式図、図10はその作用説明図である。
【0088】
インク吐出部30は、インク貯蔵部10のインク吐出口18に設けられたものであって、インクジェットプリンタへのインク供給時に圧接される圧接体32と圧接体32と接合され一体化された移動弁34とから主に構成されている。インク吐出口18には底面部16からインク吐出口18の中央へ向かって突出した突出部19a,19b,19cが備えられ、この圧接体32と移動弁34の共同体は、インク供給時以外には移動弁34の端部の下端36が突出部19c上に設置された状態となっている。
【0089】
移動弁34は、インク吐出口18から圧接体32を介してのインク漏れを防止する金属等の防水性部材であるが、インク供給時以外の時において、突出部19aと19bの間であって一体化された圧接体32と接する部分に貫通口38が設けられている。インク供給時以外の時は、移動弁34の上面部39および突出部19aによってインク貯蔵部10内部のインクMがインク吐出口18から漏出することを防止している。
【0090】
その一方で、図10に示されるように圧接体32と移動弁34の共同体は、インク供給時にはインクジェットプリンタに設置することによってインクジェットプリンタの対応部材40によってインク貯蔵部10内部方法へ押し上げられることになる。そうすると貫通口38の少なくとも一部が突出部19aよりも上方向へ移動することになり、突出部19aよりも上方向へ移動した貫通口38の部分を通じて圧接体32へインクが矢印で示されるように圧接体32へ流入し、同様に圧接体32からインクジェットプリンタの対応部材へとインクが供給されることになる。
【0091】
圧接体32と移動弁34の共同体は、インクジェットプリンタから取り外されると下端36が突出部19cに載せられた状態まで戻ることになり、再びインクの漏れを防止することになる。インク吐出口18端部からの漏れについては突出部19aだけでなく19b、19cによって二重、三重に防止する構造となっている。なお突出部19a、19bを設けず、インク吐出口18の側壁に移動弁34の側面を密接させることでインク漏洩を防止する構造であってもよい。
【0092】
このようなインク吐出部30を設けることによってインク吸蔵体を用いなくともインク吐出口18からのインク漏洩を防止することができ、なおかつ、インク供給時には速やかにインクを貫通口38および圧接体32を通じてインクジェットプリンタへ供給できることになる。
【0093】
インク吐出部30は図11に示す構成を有する変形例とすることも可能である。すなわち、インク吐出部30は、インク貯蔵部10のインク吐出口18に設けられたものであって、インクジェットプリンタへのインク供給時に移動する移動弁34から主に構成されている。インク吐出口18には底面部16からインク吐出口18の中央へ向かって突出した突出部19cが備えられている。
【0094】
移動弁34は、下部弁33および上部面39とを含み、下部弁33および上部面39とは弾性体たるバネ39で接続されている。インク供給時以外には下部弁33によってインク漏出が防止されている。
【0095】
移動弁34は、側面に貫通口38が設けられている。図12に示されるように移動弁34の下部弁34は、インク供給時にはインクジェットプリンタに設置することによってインクジェットプリンタの対応部材40によってバネ35が突出部19cよりも上方向へ移動することになり、生じた間隙を通じてインクが矢印で示されるように吐出し、インクジェットプリンタの対応部材40へとインクが供給されることになる。
【0096】
こうして、下部弁33は、インクジェットプリンタから取り外されるとバネ35の伸びによって突出部19cとほぼ同一位置まで戻ることになり、再びインクの漏れを防止することになる。
【0097】
上記変形例のように、インク吐出部30を設けることによってインク吸蔵体および圧接体を用いなくともインク吐出口18からのインク漏洩を防止することができ、なおかつ、インク供給時には速やかにインクを貫通口38および圧接体32を通じてインクジェットプリンタへ供給できることになる。
【0098】
上記したように、第1実施形態は、図2、図13に示すように、インク貯蔵容器100はその吐出口18を受け入れ側のインクジェットプリンタの供給口にセットして使用を開始した場合、所定時間経過した後は、空気層S1における内圧はほぼ−40mmHOに、また、空間S2のそれはほぼ−140mmHOとなって外圧とバランスするように構成されることとなる。
【0099】
第1実施形態によれば、インク貯蔵容器100をインクジェットプリンタにセットして使用するとき、インクMは吐出口18から所定量が吐出されていく。インクMの液面がそれに応じて低下し、空気流量制御部20を通じて外部の空気がインク貯蔵部10内に流入する。すなわち、空気は物理弁20Aを流通し、さらにインク吸収体20B2を経由してインク貯蔵部10内へ流入していく。このため、図13に示されるように、初期時間Tが経過した後、インク貯蔵部10の空間S2における内部負圧は安定状態となる。換言すると、空気層S1における内圧はほぼ−40mmHOであり、空間S2のそれは−140mmHO以上となって外気とバランスする。
【0100】
したがって、第1実施形態では、空気流量制御部20の一構成要素であるインク活用弁20Bにおけるインク吸収体20B2を負圧調整手段、すなわち空気流入抵抗を増大させて空気流量を制御する機能を惹起する手段として追加的に設けたので、従来品に比べてインク貯蔵部10の内部負圧を高めることができる。これにより、従来品には不足していた負圧を十分に補うことができ、その結果、インク吐出口18からのインクの過剰な吐出を円滑に解消することができ、ひいてはインキ消費量を抑制できる効果を有する。
【0101】
また、第1実施形態によれば、インク吸収体20B2の上部に撥水膜体20B3を設けているので、インク吸収体20B2がインクを吸収して飽和しようとするとき、インクが上昇し過ぎるのを効果的に防止できる。
【0102】
<第2実施形態>
【0103】
次に、本発明の第2実施形態を図14〜図21に基づいて説明する。なお、以下では本実施形態の重要な構成要素は別として、第1実施形態と同一部材または均等部材には第1実施形態に用いたと同じ符号を付し、それらの詳細な説明については割愛することとする。
【0104】
インク貯蔵容器100は図14および図15に示されるように、適宜の合成樹脂材で成形した本体部10aと、本体部10aに蓋をして嵌合される上面部10bとで形成され、B部によって両者10a、10bが連結されている。インク貯蔵容器100は、縦方向の寸法に対して奥行き幅の小さな寸法を有する直方体をなし、その内部11には、底部に透孔10cを備えた隔壁10dにより2つの室11a、11bが設けられ、さらに、A部には後述する物理弁20Aとインク活用弁20Bとで構成される空気流量制御部20が、また、C部にはインク吐出部30が設けられている。
【0105】
図14のA部は、図15に拡大して示されるように、物理弁20Aとインク活用弁20Bとで構成される空気流量制御部20を設けた部位を示す。
【0106】
(空気流量制御部の物理弁20A)
【0107】
図15、図16において、物理弁20Aが装填される凹部10eの構成の概要を説明する。すなわち、上面部10bには、陥没する平断面円形状の凹部10eが形成され、この凹部10eをキャップ50により蓋がされるようになっている。凹部10eの底部10fには、その中央においてインク活用弁20Bに連通する通気口14が穿たれている。
【0108】
底部10fにはテフロン膜体着座部10iと下端受容部10jが設けられる。テフロン膜体着座部10iは、空気流量制御部20の構成要素であるテフロン膜体24を位置決めして受け止める環状の窪み(環状の段部)である。下端受容部10jは、このテフロン膜体着座部10iの外周に同心円状に設けられる環状溝であり、上記キャップ50の周面部50aの下端を受容する構造となっている。従って、キャップ50を凹部10eに装着する際に、一時的に周面部50aの下端が下端受容部10jに当接することでストッパとして機能する。この結果、組み立て時においては、弁体22やテフロン膜体24に過負荷が作用することを抑制でき、物理弁20Aの機能低下を低減できる。
【0109】
なお、組み立てを完了した後は、空気流量制御部20の復元力によって、キャップ50が上方に付勢されるので、キャップ50の周面部50aの下端と下端受容部10jの間には微小な隙間が形成される。このようにして、凹部10eにキャップ50が被着されることにより形成される内部空間に、物理弁20Aが挟持される態様で装填される。以下、さらに物理弁20A回りの構成について具体的に説明する。
【0110】
物理弁20Aは、図15〜図17に示されるように、テフロン膜体着座部10iに載置され、通気性を有し、かつ、撥水処理を施した円板状のテフロン膜体(第1実施形態の防インク膜に対応)24と、このテフロン膜体24の上面に載置され、上下両面に平坦な面を有し、かつ、通気口14に対応する内径となる貫通孔26aを中心に備えた環状(ワッシャ状)の押圧リング(第1実施形態の平板に対応)26と、押圧リング26の上面に載置され、通常時は空気を流通させないが、内部11の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体(第1実施形態の弁体に対応)22とを具備する。これら三部材24,26,22が下から順に積み重ねられて物理弁20Aが形成されることとなる。
【0111】
上記の弁体22は、上記第1実施形態の弁体22と実質的に略同じ構成を有する。すなわち、弁体22は、例えばポリウレタン等を素材として円板状の圧縮多孔体として構成され、内部11と外部との間に圧力差がない通常時では、通気性が遮断され空気の出入りはないが、所定値以上の圧力差が生じた場合には、弁体22は微少な弾性変形により伸び、これにより極微細孔が押し広げられて通気性が惹起し、圧力の高い側から低い側へ空気が流入することで、空気流量の制御を行う機能が発揮されるように構成されている。
【0112】
また、押圧リング26は、上記第1実施形態の平板26と異なり金属を素材として形成される。これにより、押圧リング26の上下両面の平滑度が高められ、弁体22やテフロン膜体24に均一な面圧が作用して互いの接触面の密着度を高め、これによりインクが漏れるのを阻止できるようにしている。
【0113】
また、テフロン膜体24は上記第1実施形態の防インク膜24と異なり、テフロンを素材とするシート状のものから形成されており、その撥水性により極力インクの付着が困難となるようにしている。
【0114】
テフロン膜体着座部10iは、オレフィン系樹脂素材によって成型されると共に、平滑度を高めた平滑面として形成され、これにより、テフロン膜体24が着座部10iに着座したときに、テフロン膜体24の着座部10iに対する密着度を高め、インクが接触面の間から浸入するのを極力抑制するように設定される。しかも、テフロン膜体着座部10iの周囲には、下端受容部10jから仕切られる環状の突条部10kが形成され、テフロン膜体24が横方向に位置ズレしないようにすると共に、後述するキャップ50の周面部の進入が円滑になるようなガイドとしても機能するようにしている(図16参照)。特に、オレフィン系樹脂素材は濡れ性が低いため、撥水効果が高い。従って、テフロン膜体24と密着することで、その隙間にインクが進入できないようになっている。なお、オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンや、ポリエチレン等の各種素材があるが、本実施形態ではポリプロピレンを採用している。
【0115】
キャップ50の構造を説明する。図15〜図17に示すように、キャップ50は、適宜の剛性を有する樹脂材で成形され、円状の天井部50aと、その周縁から軸方向に延在する筒状の周面部50bとを有する。天井部50aには、テフロン膜体着座部10iに対向する位置に平坦な面を成す弁体着座部50cが形成され、その弁体着座部50cに3個の通気孔50dが設けられている。もっとも、この通気孔の個数は3個に限定されることはなく、これ以外の複数個であってもよい。
【0116】
また、天井部50aと周面部50bの内側における角部、換言すると、天井部50aの下面側の周縁(周面部50bの内周側の付け根)に、薄肉で形成した弾性ヒンジPが設けられる。こうして、弁体着座部50cを形成する円状の突条部50eの外側近傍に存するヒンジPを基点として周面部50bが弾性変形し易くなるようにしている。さらに、周面部50bの下端は下端受容部10jに当接しうるように形成され、上記下端が下端受容部10jに当接することでキャップ50の押し込み量を一定に制限することで、空気流量制御部20が無理に圧縮されるのを回避している。
【0117】
次に、図16のD部におけるキャップ50と凹部10eとの相互関係の構成を説明する。すなわち、D部を拡大した図18、図19の要部拡大断面図に示されるように、キャップ50の周面部50bの外面に、軸方向に上から順に棚状(断面楔状又は断面鋸歯状)に突出する第1係合部50fと、なだらかな山状に突出する第2係合部50gとで成る係合部が円周方向に形成される。第1係合部50fには、傾斜面50f1が形成され、第2係合部50g共々キャップ50の押し込みをスムーズに行えるようにしている。凹部10eの内周壁には、この係合部に係合する被係合部、すなわち、第1被係合部10lと第2被係合部10mとが内周方向に形成され、これによりそれぞれ第1係合部50fおよび第2係合部50gに係合する嵌合部が形成される。
【0118】
こうして、キャップ50を凹部10eに押し込んで蓋をする場合には、周面部50bは弾性ヒンジPを中心にしてたわみ変形をしながら、凹部10eに進入し、図19の交差するハッチング部で図示するように、第1係合部50fは第1被係合部10lに、第2係合部50gは第2被係合部10mにそれぞれ食い込んで嵌合する。この結果、第1係合部50fと第1被係合部10lとの嵌合により、その楔効果によってキャップ50が軸方向へ抜けるのを防止し、第2係合部50gと第2被係合部10mとの嵌合により、その接触面性の広さによってキャップが周方向へ回転するのを阻止するようにしている。
【0119】
したがって、図15及び図16に示すように、テフロン膜体着座部10iにテフロン膜体24が載置され、その上から押圧リング26が載置され、さらにその上から弁体22が載置され、これら3部材が三層に重ねられることにより、物理弁20Aが凹部10eに装填される。その後、弁体着座部50cを弁体22の上面にあてがい、キャップ50を押し込んで蓋をすることで、物理弁20Aが凹部10eに挟圧された状態で収納保持されることとなる。
【0120】
なお、上記では第1係合部と第1被係合部、および第2係合部と第2被係合部とで係合部、すなわち、嵌合部を形成したが、実質的にキャップ50の抜けと回転を防止する機能を有する態様の嵌合部であれば、一つの係合部と、これに係合可能な一つの被係合部とで嵌合部を形成する態様でもよいのは勿論である。また、上記では第1係合部50fを上方に、第2係合部50gを下方に設定したが、上下位置関係を逆にすることも可能であるのは言うまでもない。同様に、ここでは周面部50b側に係合部を形成し、凹部10e側に被係合部を形成する場合を示すが、これらの関係は反対であってもよい。
【0121】
上記の物理弁20Aが組み込まれる上面部10bは、図14のB部に示すように本体部10aに嵌合して固定される。係る固定は、B部を拡大した図20に示されるように、上面部10b側に形成した膨出部10b1と、本体部10a側に形成した膨出部10a1とが相手側部材に嵌合することで固定される。また、交差するハッチング部で図示するように、上面部10bの全周に亘って形成した突起部10b2が、本体部10aの全周に形成した傾斜部に食い込むことで、インクが外部に漏れないようにシールしている。
【0122】
(空気流量制御部のインク活用弁20B)
【0123】
インク活用弁20Bは、実質的に上記の第1実施形態のそれとほとんど同一の構成を有するが、その連結構造が異なっている。すなわち、図14,図15に示すようにインク活用弁20Bは物理弁20Aの下方に存して連通され、インク貯蔵部10内のインク吸収量に応じてインク貯蔵部内への空気流入抵抗を増大させて空気流量を制御する機能を有する。
【0124】
より具体的には、物理弁20Aの下側には、通気孔14を形成するための連結用筒部14Aが下方に延長形成されている。この連結用筒部14Aの下端縁は、水平方向に対して一定の角度で傾斜している。連結用筒部14Aに対して、筒状の保持部20B1が同軸状に連結される。これにより、インク活用弁20Bは、物理弁20Aに連通、すなわち、通気孔14の直下に気水密の状態を維持して連通されることになる。保持部20B1の下端は、インクMに浸漬される。
【0125】
保持部20B1の内壁には、連結用筒部14Aと当接可能な環状の段部20B4が形成されている。即ち、この段部20B4も、水平面に対して傾斜していることになる。段部20B4が環状となっているのは、内側を空気が通過する必要があるためである。この連結用筒部14Aと段部20B4の間には、撥水膜体20B3が挟み込まれている。これにより、撥水膜体20B3が適切に固定される。
【0126】
インク活用弁20Bは、内部に段部20B4を有する保持部20B1と、該保持部内に装填されたインク吸収体20B2と、該インク吸収体の上部に着座した撥水膜体20B3とで構成される。
【0127】
インク吸収体20B2はインクMを吸収する機能を有するウレタン、フェルト等の素材を用いて形成される。換言すると、これら素材を圧縮することで、内部に微少孔を多数有して多孔質体を形成し、これら微少孔が互いに連通し合い、インクMが毛細管現象を利用して吸収されていく機能を有する。こうして、インク吸収体20B2は自体を流通する空気が気泡となって保持部20B1下端からインク貯蔵部10内に流出するのと入れ替わりに、インクMを吸収し、インクMがしみこんでいくが、インク吸収量が増大するに応じて、空気が物理弁20A側から流入する抵抗、すなわち、空気の流入抵抗を増大させるように形成されている。なお、インク吸収体20B2の材質は、上記例に限定されず、例えば、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン等の繊維を長手方向に沿わせて束ねた繊維集束体、ポリエチレン等の焼結体、羊毛やレーヨンなどの天然繊維フェルトや、ポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維フェルト等から構成されるフェルト材、ウレタンの連通発泡体であるポリウレタンフォームなど、様々なものを利用することができる。
【0128】
撥水膜体20B3は物理弁20Aに用いる防インク膜24と実質的に同一の素材であるPTFEで形成され、その形態は図6に示されるのとほぼ同様に平面円形状のシートである。換言すると、撥水膜体20B3は、インク成分が接触することを防止する膜で、それ自体通気性を有する材料であれば足り、通気性を考慮して連通する複数の微細孔を有する。撥水膜体20B3により、インク吸収体20B2に吸収されるインクが飽和して上昇し、物理弁20A側まで上昇するのを防止できる。また、撥水膜体20B3が傾斜しているので、インク滴が一時的に付着した場合でも、この傾斜面に沿ってインク滴が一方向に偏るので、撥水膜体20B3の通気性が阻害されることを抑制できる。また、撥水膜体20B3と物理弁20Aのインク吸収体20B2との間、及び、撥水膜体20B3とインク吸収体20B2との間には、それぞれ空気層S1,S1が介在される。
【0129】
こうして物理弁20Aとインク活用弁20Bとを備えた空気流量制御部20が構成され、これにより、インク貯蔵容器100がプリンターのキャリッジにセットされた使用状態においては、物理弁20Aとインク活用弁20Bとで形成される空気流量制御部20により、空気層S1,S1には、ほぼ−40mmHOの負圧が生じる。一方、空間S2には、−140mmHO以上のの負圧が生じるようになっている。
【0130】
次に、図14および図21に示されるインク吐出部30を説明する。なお、図21では、圧接体32は図示しない。このインク吐出部30は上記第1実施形態におけるインク吐出部30とほぼ同一の機能を有するように構成される。すなわち、底面部16に横断面円状の吐出口18が突設され、その内部に上下動可能な移動弁34が収容される。移動弁34は小径の下方弁部34aと、大径の上方弁部34bとからなり、下方弁部34a内部に圧接体32が図12のハッチングで示すように一体化されるように収容されている。圧接体32はインクの透過を許容する自体公知の素材で形成されている。上方弁部34bの外側には、スリットを有するガイド部16aが底面部16に立設される。これにより、圧接体32と一体の移動弁34が吐出口18およびガイド部16aに案内されて上下動できるようになっている。
【0131】
吐出口18内周に突出部18aが設けられ、移動弁34に圧接する。また、移動弁34には、その中間壁34cの外面、すなわち、下方弁部34aと上方弁部34bの境に周方向に沿って傾斜面34dが形成され、吐出口18側のシール部18bに当接するようになっている。また、下方弁部34aには、貫通孔口38が設けられ、移動弁34上昇時に、内部11と圧接体32との間が連通するようになっている。
【0132】
一方、移動弁34の中間壁34cと上面部10bとの間にコイルスプリング60が縮設され、移動弁34を常に下方に付勢している。
【0133】
こうして、インク貯蔵容器100を不図示のインクジェットプリンタ側におけるキャリッジにセットされない単体の場合には、コイルスプリング60のばね反力により移動弁34は軸方向(下方向)へ押し下げられ、傾斜面34dがシール部18bに接触することで内部11に封入されたインクが外部へ漏れるのを防止している。
【0134】
インク貯蔵容器100をキャリッジに装填する場合には、インクジェットプリンタのキャリッジにおける不図示の対応部分が圧接体32を介して移動弁34をコイルスプリング60のばね反力に抗して上方へ押し上げる。これにより、圧接体32と一体の移動弁34は、ガイド部16aおよび突出部18aに案内されて上方へ移動し、貫通口38が内部11に連通する。こうして、インク貯蔵容器100内のインクが圧接体32を経由してインクジェットプリンタ側へ供給されるようになっている。
【0135】
本第2実施形態によれば、インク貯蔵容器100をインクジェットプリンタのキャリッジにセットして使用するとき、インクMは吐出口18から所定量が吐出されていく。インクMの液面がそれに応じて低下し、空気流量制御部20を通じて外部の空気がインク貯蔵部10内に流入する。すなわち、空気は物理弁20Aを流通し、さらにインク吸収体20B2を経由してインク貯蔵部10内へ流入していく。このため、図13に示されるように、初期時間Tが経過した後、インク貯蔵部10の空間S2における内部負圧は安定状態となる。換言すると、空気層S1における内圧はほぼ−40mmHOであり、空間S2のそれはほぼ−140mmHOとなって外気とバランスする。
【0136】
したがって、第2実施形態では、空気流量制御部20の一構成要素であるインク活用弁20Bにおけるインク吸収体20B2を負圧調整手段、すなわち空気流入抵抗を増大させて空気流量を制御する機能を惹起する手段として追加的に設けたので、従来品に比べてインク貯蔵部10の内部負圧を高めることができる。これにより、従来品には不足していた負圧を十分に補うことができ、その結果、インク吐出口18からのインクの過剰な吐出を円滑に解消することができ、ひいてはインキ消費量を抑制できる効果を有する。
【0137】
また、第2実施形態によれば、インク吸収体20B2の上部に撥水膜体20B3を設けているので、インク吸収体20B2がインクを吸収して飽和しようとするとき、インクが上昇し過ぎるのを効果的に防止できる。
【0138】
また、本第2実施形態によれば、上記特許文献1記載の技術のように、キャップ50を超音波溶着により凹部10eに固定することで、上記第2実施形態の物理弁20Aに相当する弁を凹部に収納して固定する技術とは異なり、キャップ50で蓋をするだけの簡単な構成により、物理弁20Aを凹部10eに収納できるので、弁体22に熱負荷を受けて変質するのを未然に回避し、その結果、本来的に物理弁20Aが有すべき空気流量制御機能を最適な状態に維持できる。
【0139】
また、本第2実施形態は、押圧リング26の下部にテフロン膜体24を設け、これにより、弁体22が直接に通気口14を介してインク側に露呈するのを回避する構成にしているので、弁体22へのインク付着を効果的に阻止できる利点がある。
【0140】
また、第2実施形態では、周面部50bが弾性ヒンジPを基点としてたわみ変形する構造を利用して、キャップを押し込むことができるように構成したので、弁体22に無用の外力を与えることなく、凹部10eに位置決め固定できるようにしている。また、キャップを機械的に固定しているので、超音波溶着等に起因した熱的負荷を弁体22に付与しないで済む。この結果、弁体22における空気流量制御機能を何ら損ねることなく簡単に固定することができ、ひいては安価にインク貯蔵容器100をコスト安価に製作できる利点を有する。
【0141】
また、一旦、物理弁20Aがキャップ50で固定された後においては、物理弁20Aはキャップ50と底部10fとの間で挟圧された状態にあり、特に、弁体22の外形に歪があっても押圧リング26によってテフロン膜体24に付与する圧力が均一化されるので、密着度が極めて高い状態に維持される。そのため、インクが、テフロン膜体24と底部10fとの間の接触面、およびテフロン膜体24と押圧リング26との間の接触面に浸入することを円滑に抑制できる利点を有する。
【0142】
また、第2実施形態では、仮にインクがテフロン膜体24と押圧リング26との間の接触面を介して浸入したとしても、押圧リング26の貫通孔26aで形成される空気層(空隙層)29の存在により、弁体22下面にインクが付着する事態を阻止できる利点もある。このため、弁体22のインク付着に起因する極微細孔の閉塞を回避でき、弁体22による物理弁20Aの空気流量制御機能を維持することできる。
【0143】
また、押圧リング26は金属で形成されるので、その上下両面における平滑度は高められており、しかも、テフロン膜体着座部10iにも平滑面が形成されているので、テフロン膜体の上下面における相手側部材との間の各接触面はその密着度が高くなり、テフロン膜体24とテフロン膜体着座部10iとの間からインクが浸入するのを抑制できる利点がある。
【0144】
また、第2実施形態においては、テフロン膜体着座部10iと、弁体着座部50cとは互いに対向配置され、かつ、両着座部は環状の窪みで形成されるので、凹部10eへの、物理弁20A(テフロン膜体、押圧リング、および弁体)の装填を位置ズレすることなく組み込めるので、組み込み作業を簡易に行える実用的効果を有する。
【0145】
また、キャップの周面部50bにおける下端部は、下端受容部10jに当接可能に形成されているので、ストッパとして機能する。このため、キャップ50が過度に押し込まれても、ストッパ機能により弁体22が無理に圧縮、あるいは引張り変形を受けることを回避でき、弁体の空気流量制御機能を損ねることを未然に防止できる。
【0146】
さらに、本第2実施形態では、弁体着座部50cに3個の通気孔50dを設けたので、例えば、誤って手に付着したインクが、天井部50aに付着しても、残りの他の通気孔により内外気の通気性能を確保できるので有利である。
【0147】
また、本第2実施形態にあっては、第1係合部50fと第1被係合部10lとの嵌合により、キャップ50が軸方向へ抜けるのを防止し、第2係合部50gと第2被係合部10mとの嵌合により、キャップが周方向へ回転するのを阻止している。このため、弁体22はキャップ50により凹部10e内で位置ズレすることなく収納されるので、弁体22は初期の挟圧された装填状態を安定的に維持でき、その結果、空気流量制御機能を低下することを防止できる。
【0148】
<第3実施形態>
【0149】
次に、本発明の第3実施形態を図22に基づいて説明する。なお、以下では、本実施形態の重要な構成要素は別として、第2実施形態と同一部材または均等部材には第2実施形態に用いたと同じ符号を付し、それらの詳細な説明については割愛する。
【0150】
インク貯蔵容器100は、適宜の合成樹脂材で成形した本体部10aと、本体部10aに蓋をして嵌合される上面部10bとで形成され、B部によって両者10a、10bが連結されている。インク貯蔵容器100は、縦方向の寸法に対して奥行き幅の小さな寸法を有する直方体をなし、その内部11には、底部に透孔10cを備えた隔壁10dにより2つの室11a、11bが設けられ、さらに、A部には後述する物理弁20Aとインク活用弁20Bとで構成される空気流量制御部20が設けられている。また、本体部10aの底にはインク吐出部30が設けられている。
【0151】
本実施形態のインク吐出部30は、底面部16に横断面円状の吐出口18が突設され、その内部に上下動可能な移動弁34が収容される。更に吐出口18の内部には、コイルスプリング60が収容されており、移動弁34を下方(吐出方向)に付勢するようになっている。
【0152】
更に吐出口18の下端には、ゴム材で構成される環状のシール部18bが固定されている。下方に付勢される移動弁34は、このシール部18bに当接しており、不使用状態では、内部のインクが外部に漏れださないようになっている。不図示のインクジェットプリンタ側のキャリッジにこのインク貯蔵容器100がセットされると、コイルスプリング60の付勢力に抗して、移動弁34が上方へ押し上げられ、所定の負圧状態で、インクがインクジェットプリンタに供給されるようになっている。
【0153】
更に、インク吐出部30における底面部16には、堤部18aが内側に突設されている。この堤部18aは、インク吐出部30内のインクが無くなっても、容器内にインクを残存させることで、容器内に最低液面hを確保するためのものである。この最低液面hの確保によって、後述するインク活用弁20Bの負圧機能が最後まで維持される。
【0154】
インク活用弁20Bは、実質的に上記の第2実施形態のそれとほとんど同一の構成を有するが、その長さが異なっている。具体的に、インク活用弁20Bは物理弁20Aの下方に存して連通されるが、その下端が、上記最低液面hよりも下方まで伸びている。換言すると、堤部18aの上端縁よりも、インク活用弁20Bの下端が低くなるようになっている。
【0155】
この結果、インク吐出口18内のインク残量が減った場合であっても、保持部20B1及びインク吸収体20B2の下端は常にインクに浸漬されることになるので、インクの吐出が完全に終了するまで、容器内の負圧を高い状態で維持することが可能になる。
【0156】
なお、第3実施形態では、底面部16に対して内部側に突出する堤部18bを形成することで、最低液面hを確保するようにしたが、本発明はそれに限定されない。例えば、図23に示されるように、底面部16に対して、外側(下側)に凹んで形成されるインク残留用凹部16aを形成することも可能である。このインク残留用凹部16aは、インク活用弁20Bの下方に形成され、インク活用弁20Bの下端が収容可能な大きさであればよい。この場合、インク活用弁20Bは、その下端がインク残留用凹部16a内に収容されるような長さに設定する。このようにすることで、インク吐出部30内のインクが減少しても、インク残留用凹部16a内にインクが残存して、最低液面hを部分的に確保することができる。また、インク吸収体20B2は、インク残留用凹部16a内において最後までインクに浸漬されるので、容器内の負圧を高い状態で維持することが可能となる。また、図22の態様と比較して、最後まで残存するインク量を減らすことができるので、インクを有効活用することができる。
【0157】
以上、本発明を第1、第2、第3実施形態により詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も本発明の範囲に含まれるものである。
【0158】
例えば、上記実施形態においては、共に物理弁20Aに防インク膜(テフロン膜体)24を、インク活用弁20Bに撥水膜体20B3を設けた構成にしたが、撥水膜体20B3をインク活用弁20Bに使用した場合には、他方の物理弁20Aには防インク膜(テフロン膜体)24を省略してもよく、逆に、防インク膜(テフロン膜体)24を物理弁20Aに設ける構成とした場合には、他方のインク活用弁20Bには撥水膜体20B3を設けない構成とすることも可能である。
【0159】
また、上記実施形態では物理弁20Aとインク活用弁20Bとの間に空間層S1を介在して連痛する構成としたが、この代わりに空間層S1を設けない構成としてもよい。
【0160】
上記第2実施形態では、凹部10eは上面部10bから陥没するように形成した場合であったが、この代わりに、図24に示す変形例のように、上面部10bから上方へ突出する突出部70を一体に形成し、そこに物理弁20Aを収納する態様としてもよい。また、図25,図26に示されるように、上面部10bとは別体に形成した突出部70をボルト72で締結して上面部10bへ結合し、その突出部70に物理弁20Aを設ける構成とすることも可能である。この場合には、両者10b、70の当接部にはシール部材71を介在させることでインク貯蔵部10の気水密を保持できる。
【0161】
また、各実施形態においては、インク活用弁20Bの保持部20B1をインク貯蔵部10の上面部12,10bに取り付けたが、図24〜図26に示すように、物理弁20A側の構成要素である台座部23や突出部70に設ける構成とすることも勿論可能である。
【0162】
また、上記各実施形態では、空気流量制御部20とインク吐出部30とがインク貯蔵部10を介してインク貯蔵容器100の対面となるように好適例として配置されているが、これに限られることはなく空気流量制御部20とインク吐出部30との配置は適宜に決められる。
【0163】
さらに、本第1実施形態では、インクジェットプリンタ用のインクカートリッジであるので、インク吐出部30が必要であるが、その他の用途に用いられるものであれば、インク吐出部30は必要でない場合がある。
【0164】
また、第1実施形態では、物理弁20Aはインク貯蔵部10の上面に突出した構成であるが、物理弁20Aは、インク貯蔵部10の上面部12中により埋没し、または第2、第2実施形態のように完全に埋没し、インク貯蔵部10の上面部12に突出した部分のないフラットな面をなすように形成してもよい。
【0165】
(実験例)
【0166】
第1実施形態で示したインク貯蔵容器100を用意し、更に、負圧を高める為に、インク吸収体20B2の直径を5mm、上下方向長さを30mmに設定して、インクジェットプリンタを用いてインクの吐出実験を行った。この結果を図26のラインBに示す。なお、参考に、インク活用弁20Bを設けない状態で、物理弁20Aのみの構造で吐出実験を行った結果をラインAに併せて示す。なお、グラフの縦軸は、容器内の負圧値(mmHO)であり、縦軸は、インクの吐出実験を継続した時間(分)である。
【0167】
この結果から明らかなように、本実施形態のインク貯蔵容器100は、インクの吐出開始から素早く高い負圧状態となり、約−280mmHOまで負圧レベルを高めることが可能であることが分かる。また、この負圧レベルも、吐出開始から、インクが無くなるまで、ほとんど安定した状態を維持できることも分かる。なお、参考例である、物理弁のみのインク貯蔵容器の場合は、負圧レベルは比較的安定しているものの、負圧値が−20〜−40mmHOまでしか下がらないことが分かる。この状態でも使用可能であるが、本実施形態のインク貯蔵容器100の方が、インクを効率的に用いることができる。また、インク吸収体の直径や長さを適宜変更することで、所望の負圧状態を構築できることも分かる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、インク貯蔵容器、特にインクジェットプリンタ用のインクカートリッジとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインク貯蔵容器の断面模式図である。
【図2】同じく、空気流量制御部およびその周辺の断面模式図である。
【図3】同じく、物理弁における上蓋の模式図である。
【図4】同じく、物理弁における弁体の模式図である。
【図5】同じく、物理弁における押圧リングの模式図である。
【図6】同じく、物理弁における防インク膜(テフロン膜体)の模式図である。
【図7】同じく、物理弁における防水膜の模式図である。
【図8】同じく、物理弁における台座部の模式図である。
【図9】同じく、インク吐出部およびその周辺の断面模式図である。
【図10】同じく、インク吐出部の作用を説明する作用説明図である。
【図11】第1実施形態の変形例に係るインク吐出部およびその周辺の断面模式図である。
【図12】同じく、インク吐出部の作用を説明する作用説明図である。
【図13】同じく、インク貯蔵部の内部負圧と使用経過時間との関係を示すグラフである。
【図14】本発明の第2実施形態に係るインク貯蔵容器の縦断面図である。
【図15】図14のA部における拡大断面図である。
【図16】図15における物理弁の図示を省略した図14と同様の拡大断面図である。
【図17】同じく、キャップおよび物理弁の組み立てを分解して示した外観図である。
【図18】図16のD部を分解して示した要部拡大断面図である。
【図19】図16のD部における要部拡大断面図である。
【図20】図14のB部における要部拡大断面図である。
【図21】図14のC部における要部拡大断面図である。
【図22】本発明の第3実施形態に係るインク貯蔵容器の縦断面図である。
【図23】同第3実施形態に係るインク貯蔵容器の変形例に係る縦断面図である。
【図24】本発明の実施形態の変形例における部分断面図である。
【図25】同じく、本発明の実施形態の別の変形例における部分断面図である。
【図26】同じく、本発明の実施形態のさらに別の変形例における部分断面図である。
【図27】第1実施形態のインク貯蔵容器の内部の負圧状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0170】
100 インク貯蔵容器
10 インク貯蔵部
10a 本体部
10b 上面部
10e 凹部
10f 底部
10h 緩衝部
10i テフロン膜体着座部
10j 下端受容部
10l 第1被係合部
10m 第2被係合部
11 内部
12 上面
14 通気口
16 底面部
16a スリット付きガイド部
18 吐出口
20 空気流量制御部
20A 物理弁
20B インク活用弁
20B1 保持部
20B2 インク吸収体
20B3 撥水膜体
22 弁体
24 テフロン膜体(防インク膜)
26 押圧リング
26a 貫通孔
29 空気層
30 インク吐出部
32 圧接体
34 移動弁
34a 下方弁部
34b 上方弁部
50 キャップ
50a 天井部
50b 周面部
50c 弁体着座部
50d 通気孔
50f 第1係合部
50g 第2係合部
60 コイルスプリング
M インク
P 弾性ヒンジ
S1 空気層
S2 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯蔵するインク貯蔵部の内外間で空気流量を制御する空気流量制御部を具備するインク貯蔵容器であって、
前記空気流量制御部は、
前記インク貯蔵部の上面部に設けた物理弁と、該物理弁に連通され前記インク貯蔵部内に収納したインク活用弁とを備えて構成され、
前記物理弁には、通常時は空気を流通させないが、前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体が設けられ、
前記インク活用弁には、前記インクを吸収することにより、通常時は空気を流入させないが前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体が設けられ、
さらに、前記物理弁または前記インク活用弁のいずれか一方、または物理弁およびインク活用弁の両方には、通気性を有し、かつ、撥水処理を施されることでインク付着を防止する撥水膜体が設けられ、
前記インク吸収体のインク吸収により、前記インク吸収体を通過する空気の流入抵抗を増大させるように構成されたことを特徴とするインク貯蔵容器。
【請求項2】
インクを貯蔵するインク貯蔵部の内外間で空気流量を制御する空気流量制御部を具備するインク貯蔵容器であって、
前記空気流量制御部は、
インク貯蔵部の上面部に配設され、インク貯蔵部の内外間で空気流量を制御する物理弁と、
前記物理弁に連通され、インク貯蔵部内の前記インクを吸収して、該インク貯蔵部内への空気流入抵抗を増大させて空気流量を制御するインク活用弁と、
を備えて構成されたことを特徴とするインク貯蔵容器。
【請求項3】
前記インク活用弁は、
前記インク貯蔵部または前記物理弁に配設されて、自身の全部または一部が前記インク貯蔵部内の前記インクに浸漬される保持部と、
該保持部に装填され、前記インクを吸収するインク吸収体と、
を備えて構成されたことを特徴とする請求項2記載のインク貯蔵容器。
【請求項4】
前記インク活用弁は、
前記インク吸収体の上部に配設され、通気性を有し、かつ、撥水処理が施された撥水膜体を有することを特徴とする請求項3記載のインク貯蔵容器。
【請求項5】
前記物理弁は、
通常時は空気を流通させないが、前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体を備えて構成されたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のインク貯蔵容器。
【請求項6】
前記物理弁は、前記インク貯蔵部の上面部に形成された凹部にキャップを被着して収納されるようになっており、
更に前記物理弁は、
前記凹部の底部に載置され、通気性を有しかつ撥水処理を施した撥水膜体と、
該撥水膜体の上面に載置され、上下両面に平坦な面を有し、かつ、中央に貫通孔を形成した環状の押圧リングとを具備してなり、
前記弁体は、該押圧リングの上面に載置され、
前記凹部内において、前記撥水膜体、前記押圧リング、および前記弁体を、前記凹部の底部と前記キャップとの間に挟圧したことを特徴とする請求項5記載のインク貯蔵容器。
【請求項7】
前記押圧リングを金属で形成すると共に、前記凹部における前記底部には、前記撥水膜体を着座させる撥水膜体着座部が形成され、前記撥水膜体着座部には、前記撥水膜体と密着する環状の平滑面を形成したことを特徴とする請求項6記載のインク貯蔵容器。
【請求項8】
前記撥水膜体着座部は、オレフィン系樹脂によって構成されることを特徴とする請求項7記載のインク貯蔵容器。
【請求項9】
前記キャップにおける前記天井部の下側面には、前記弁体を支持する弁体着座部が形成されることを特徴とする請求項8記載のインク貯蔵容器。
【請求項10】
前記撥水膜体着座部および前記弁体着座部は、それぞれ環状の窪みで形成されることを特徴とする請求項9記載のインク貯蔵容器。
【請求項11】
前記キャップの前記天井部に複数の通気孔が設けられることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載のインク貯蔵容器。
【請求項12】
前記キャップは、前記天井部の周縁から軸方向に延在する筒状の周面部を有しており、
前記キャップを前記凹部に装着する際に、該周面部の下端が、前記凹部の前記底部に当接してストッパとして機能することを特徴とする請求項2〜11のいずれか一項に記載のインク貯蔵容器。
【請求項13】
前記周面部における内面側の付け根に、環状の薄肉構造によって形成される弾性ヒンジを設けたことを特徴とする請求項12に記載のインク貯蔵容器。
【請求項14】
前記キャップの前記周面部の外面に係合部を形成し、
前記凹部の内周壁には、前記係合部に嵌合可能な被係合部を形成したことを特徴とする請求項13記載のインク貯蔵容器。
【請求項15】
前記係合部および前記被係合部で形成される嵌合部を、前記周面部の軸方向に複数段で形成し、
前記複数の嵌合部のうち、一の嵌合部を軸方向の抜けを阻止し、他の嵌合部を周方向の回転を阻止することを特徴とする請求項14記載のインク貯蔵容器。
【請求項16】
前記物理弁は、前記インク活用弁との間に、空気層を介在させて設けたことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のインク貯蔵容器。
【請求項17】
前記インク貯蔵部の底面に堤部が突設され、前記インク活用弁は、前記堤部によって前記底面に残留するインクを吸収可能に構成されることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のインク貯蔵容器。
【請求項18】
前記インク貯蔵部の底面にインク残留用凹部が突設され、前記インク活用弁は、前記インク残量凹部によって残留するインクを吸収可能に構成されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のインク貯蔵容器。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のインク貯蔵容器は、インクジェットプリンタ用インクカートリッジであることを特徴とするインク貯蔵容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−233926(P2009−233926A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80402(P2008−80402)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(503401614)ジット株式会社 (15)
【Fターム(参考)】